説明

サイクルタイムが短いポリプロピレンの射出−延伸−ブロー成形法

【課題】メタロセン触媒を用いて作られたポリプロピレンの射出−延伸−ブロー成形法での使用。
【解決手段】サイクルタイムが短く、光学特性および剛性に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリプロピレン、特に、メタロセン触媒を用いて作られたサイクルタイムが短く、最終製品の光学特性に優れたポリプロピレンの射出−延伸−ブロー成形法での使用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
射出−延伸−ブロー成形で現在最も一般的に使用されている原料はポリエチレンテレフタラート(PET)である。このPETはサイクルタイムが非常に短く、一つのキャビティー当たり一時間で1000〜1500個のボトルが製造できるという利点がある。しかも、光学特性にも優れるという利点もある。
しかし、極めて高価であるという欠点がある。
【0003】
これ以外の熱可塑性プラスチック材料、例えばポリ塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン、アクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリアセタール等も使用できる。
【0004】
これらの材料の中で、チーグラー−ナッタ触媒系を用いて作られたポリプロピレンの使用が成功している。そのサイクルタイム(時間)は悪くはないがPET樹脂で得られるレベルには届かない。また、光学特性も悪くはないがPET樹脂で得られるレベルには届かない。
従って、チーグラー−ナッタ触媒系を用いて作られたポリプロピレンの上記欠点がなく、高価なPET樹脂の代わりとなり得る他の樹脂へのニーズが存在する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、射出−延伸−ブロー成形で極めて短いサイクルタイムで処理可能な樹脂を提供することにある。
本発明の他の目的は、光学特性に優れた樹脂を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、剛性に優れた樹脂を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、耐薬品性に優れた樹脂を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、液体充填温度が高い樹脂を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、耐衝撃性および耐圧縮性に優れた樹脂を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は、優れたバリア特性を有する樹脂を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の対象は、短いサイクルタイムで射出−延伸−ブロー成形によって優れた光学特性および剛性を有する単層または多層の物品製造での、メタロセン触媒を用いて作られたポリプロピレンの使用にある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明で使用されるメタロセン触媒を用いて作られたポリプロピレンはプロピレンのアイソタクチックホモポリマーまたはランダム共重合体であるのが好ましく、2〜100g/10分、好ましくは10〜20g/10分のメルトインデックスを有するのが好ましい。樹脂中に存在するエチレンの比率は0〜10重量%、好ましくは0〜4重量%である。
このメルトフローインデックスMFIはポリプロピレン樹脂に対して230℃、2.16kgの荷重下でISO規格1133に従って測定する。
【0008】
プロピレンのアイソタクチック ホモポリマーまたはランダム共重合体を製造するのに使用されるメタロセン成分は一般式(I)で表され、当業者にブリッジしたメタロセン(bridged ,etallocene)として公知の任意のものにすることができる:
R''s(CpR'k)(C'pR'''k)MQ2 (I)
【0009】
[ここで、
(CpR'k)はシクロペンタジエニルまたは置換シクロペンタジエニルで、各R'は互いに同一でも異なっていてもよく、水素または炭化水素基、例えば1〜20個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルであり、2つの炭素原子が互いに結合してC4−C6環を形成していてもよく、
(C’pR’’’k)は置換または未置換のシクロペンタジエニルまたはインデニルまたはフルオレニル(fluorenyl)基で、R’’’は互いに同一でも異なっていてもよく、水素または1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、例えばアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルであり、
Cp環上の置換基は化合物にC1またはC2対称性を与えるように選択され、
R’’はCpとFlu環との間に構造ブリッジを形成して立体剛性(stereorigidity)を与え、C−C4アルキレン基、ジアルキルゲルマニウムまたはシリコンまたはシロキサン、またはアルキルフォスフィンまたはアミン基にすることができ、
Qは1〜20個の炭素原子を有する炭化水素基、例えばアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリールアルキル、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルボキシル基またはハロゲンで、互いに同一でも異なっていてもよく、
Mは周期律表のIVb族金属で、好ましくはZr、Ti、Hfである]
【0010】
(C’pR’’’k)はフルオレニル(fluorenyl)基であるのが好ましい。
本発明で使用される好ましいメタロセンの中ではプロピレンのアイソタクチックランダムコポリマーを製造するためのプロピリデン−3−tert−ブチル−5−メチル−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドを挙げることができる。
【0011】
このメタロセン触媒成分は公知の任意の方法で支持(担持)できる。
支持体(触媒担体)を使用する場合、本発明で使用可能な支持体は任意の有機または無機の固体、特に多孔質支持体、例えばタルク、無機酸化物、ポリオレフィンのような樹脂の支持体にすることができる。好ましい支持体は微粉砕した無機酸化物である。
【0012】
支持体上には支持体と化学反応し、イオン化作用を有し且つ活性サイトを作る試薬を添加する。
ポリマー化段階で触媒をイオン化するアルミノキサンを使用するのが好ましい。公知の任意のアルミノキサンを使用できる。
【0013】
好ましいアルミノキサンは下記の式で表されるオリゴマー状の直鎖および/または環状のアルキルアルミノキサンから成る。
【0014】
(IV) オリゴマー状直鎖アルミノキサン:
【化1】

【0015】
(V) オリゴマー状環状アルミノキサン:
【化2】

【0016】
(ここで、
nは1〜40、好ましくは10〜20、
mは3〜40、好ましくは3〜20、
RはC1〜C8アルキル基、好ましくはメチルである)
メチルアルモキサン(methylalmoxane, MAO)を使用するのが好ましい。
【0017】
一種または複数のアルミニウムアルキルを反応器中で共触媒として使用することができる。アルミニウムアルキルは式:AlRxで表され、ここで、各Rは互いに同一でも異なっていてもよく、ハロゲン化物または1〜12の炭素原子を有するアルコキシまたはアルキル基から選択でき、xは1〜3である。特に適したアルミニウムアルキルはトリアルキルアルミニウムであり、最も好ましいものはトリイソブチルアルミニウム(TIBAL)である。
【0018】
反応帯域中へ導入する前および/または反応器中で反応条件を安定化する前に触媒をプレポリマー化することもできる。
【0019】
射出−延伸−ブロー成形は2段階プロセスまたは単一プロセスで実行できるが、一般には2段階プロセスが好ましい。これは2つの分離した位置で実行され、以下のステップから成る:
(1) マルチキャビティー金型に射出成形してプレホーム(予備的成形品)を作り、
(2) このプレホームを室温まで冷却し、
(3) プレホームをブロー成形機へ移動させ、
(4) ブロー成形機の輻射加熱オーブンでプレホームを再加熱し、
(5) 加熱されたプレホームを均衡化帯域を通過させてプレホームの壁を介して熱を均一に分散させ、
(6) 中心ロッドを用いてプレホームを軸線方向に延伸し、
(7) 延伸したプレホームを高圧空気によって放射方向に配向させる。
【0020】
このプロセスではプレホームの再熱を必要とする延伸ステップがクリティカルなステップであり、従って、プレホームの最適化が必要である。プレホームを樹脂の溶融温度より約10℃だけ低い温度に再加熱する。
【0021】
本発明に従って製造された物品は各種食品および非食料品の用途で使用可能なコンテナ(容器)およびボトルである。食品用途では水、ジュース、オイル、風味食品(still)、炭酸飲料、等張性(isotonic)飲物、乾燥物およびフレッシュミルク等の貯槽がある。非食料品用途としては化粧品、医薬、皿洗い用洗剤、洗剤、乾燥物の貯槽がある。
【0022】
本発明に従って製造された中空容器およびボトルは優れた光学特性と耐衝撃強度とを有している他に、PET樹脂で作られたボトルやチーグラー−ナッタ触媒系を用いて作られた従来のポリプロピレン樹脂よりもはるかに高い耐圧縮強度(compression strength)を有している。
【0023】
本発明物品の製造に要するサイクルタイムはチーグラー−ナッタ(ZN)ポリプロピレンの場合に必要な時間より大幅に短く、ZN樹脂のサイクルタイムより少なくとも10%、一般的には15%短く、PET樹脂の場合のサイクルタイムとほぼ同じである。
【0024】
メタロセン触媒系を使用することで優れた機械特性(強度、耐圧縮強度および耐衝撃性)を維持したまま、融点の低いポリプロピレン樹脂が製造でき、しかも、光学特性を向上させることができる。最終製品の剛性はチーグラー−ナッタ(ZN)触媒を用いて作られた物品より少なくとも3%増加し、PET作られた物品より少なくとも20%増加する。光学特性はPET作られた物品と同じであり、ヘイズ(haze)はZN触媒系を用いて作られた物品より少なくとも40%向上する。
【実施例】
【0025】
実施例では下記の2つのプレホームデザインを用いた:
デザイン1はボトル製造で使用されている商用ポリエチレンテレフタラート(PET)のプレホームデザインで、重さは20gで、[図1]に示してある。
デザイン2はボトル製造で使用されているBekum PPのプレホームのデザインで、重さは23.8gで、[図2]に示してある。
【0026】
下記の3つのプレホームを作った:
P1は商用のPET樹脂R1からデザイン1で作った。
P2はメタロセン触媒を用いて製造したポリプロピレン樹脂R2からデザイン2で作った。
P3はチーグラー−ナッタ触媒を用いて作ったポリプロピレン樹脂R3からデザイン2で作った。
【0027】
樹脂R2は本発明の実施例で、ブリッジした(3−tBu−5Me−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドと活性化剤とから成るメタロセン触媒系を用いて製造したプロピレンとエチレンとのランダム共重合体(メタロセン−ランダム共重合体)で、そのMFIは14g/10分である。
【0028】
樹脂R3は、従来のチーグラー−ナッタ触媒を用いて製造された商用のプロピレンのランダム共重合体で、そのMFIは10g/10分で、PPR7220(以前はPPR3100MT3とよばれていた)の商品名で市販されている。
【0029】
プレホームP1は市場から購入した。
プレホームP2およびP3は型締力が100トンで、最大射出圧力が1750バールのSynergy100射出成形機を用いて成形した。スクリューのL/D(長さL/直径Dの比)は20、直径Dは45mm、圧縮比は1:2で、2つのキャビティ金型を備えている。
プレホームP2およびP3の成形条件は[表1]にまとめてある。
【0030】
【表1】

【0031】
次ぎに、2キャビティ−リニア射出−延伸−ブロー(ISBM)成形機ADS G62を用いて各プレホームから0.5リットルのボトルを製造した。
得られたボトルのサイクルタイム、光学特性および機械特性をテストした。結果は[表2]に示してある。
ボトルB1〜B3はそれぞれプレホームP1〜P3から作られ、ボトルB4は市販の商用ヴィテル(Vittel)のボトルである。
【0032】
【表2】

【0033】
剛性を測定するために用いた圧縮試験はテスト規格ASTM 2659-95の手順に従ってZwich引張り試験機で10mm/分の速度で行った。
衝撃落下強度はUN規格およびテスト規格ASTM 2463-95に基づいて独自に開発した滴下試験で測定した。すなわち、ボトルに水を95%だけ充填し、室温(約25℃)で48時間コンディショニングした後、底をしたにして落下させた。破壊が起こるまで高さを段階的に高くした。このテストの最大落下高さは6メートル(全く破壊なしに測定される最高高さ)である。
ヘイズはテスト規格ISO14782の手順で測定したが、上記のボトルデザインは信頼可能な再測定可能な記録に適したものではない点に注意されたい。同じ所見は本実施例の光学特性にも当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】はボトル製造で使用されている商用ポリエチレンテレフタラート(PET)のプレホームのデザイン1を示す図。
【図2】はボトル製造で使用されているBekum PPのプレホームのデザイン2を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
短いサイクル時間の射出−延伸−ブロー成形による優れた光学特性と剛性とを有する物品の製造での、下記式(I)のメタロセン成分を含むメタロセン触媒系を用いて製造したアイソタクチックポリプロピレンの使用:
上記のメタロセン触媒系が:
R''s(CpR'k)(C'pR'''k)MQ2 (I)
[ここで、
(CpR'k)はシクロペンタジエニルまたは置換シクロペンタジエニルで、各R'は互いに同一でも異なっていてもよい水素または1〜20個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルのような炭化水素基であるか、2つの炭素原子が互いに結合してC4−C6環を形成し、
(C’pR’’’k)は置換または未置換のフルオレニル(fluorenyl)基で、R’’’は互いに同一でも異なっていてもよい水素または1〜20個の炭素原子を有するアルキル、アルケニル、アリール、アルキルアリールまたはアリールアルキルのような炭化水素基であり、
Cp環上の置換基は化合物にC1またはC2対称性を与えるように選択され、
R’’はCpとFlu環との間に構造ブリッジを形成して立体剛性(stereorigidity)を与え、C−C4アルキレン基、ジアルキルゲルマニウムまたはシリコンまたはシロキサン、またはアルキルフォスフィンまたはアミン基にすることができ、
Qは1〜20個の炭素原子を有するアリール、アルキル、アルケニル、アルキルアリール、アリールアルキルのような炭化水素基、1〜20個の炭素原子を有するヒドロカルボキシル基またはハロゲンで、互いに同一でも異なっていてもよく、
Mは周期律表のIVb族金属で、好ましくはZr、Ti、Hfである]
【請求項2】
アイソタクチック ポリプロピレンが、2〜100g/10分のプロピレンのメルトインデックスM12を有する、エチレンの比率が0〜10重量%であるアイソタクチック ホモポリマーまたはアイソタクチックランダム共重合体である請求項1に記載の使用。
【請求項3】
樹脂を製造するのに使用されるメタロセン触媒成分がイソプロピリデン−(3-tert-ブチル-5-メチル−シクロペンタジエニル)(フルオレニル)ジルコニウムジクロライドである請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
単層物品の製造での請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項5】
多層物品の製造での請求項1〜3のいずれか一項に記載の使用。
【請求項6】
最終製品が優れた衝撃強度を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の使用。
【請求項7】
最終製品が優れた耐薬品性を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載の使用。
【請求項8】
最終製品が高温での充填能を有する請求項1〜7のいずれか一項に記載の使用。
【請求項9】
食品用途での請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。
【請求項10】
非食料用途での請求項1〜8のいずれか一項に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−511630(P2007−511630A)
【公表日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−538849(P2006−538849)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【国際出願番号】PCT/EP2004/052821
【国際公開番号】WO2005/046965
【国際公開日】平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願人】(504469606)トータル・ペトロケミカルズ・リサーチ・フエリユイ (180)
【Fターム(参考)】