説明

サイクロン分離装置

【課題】螺旋状の下向き案内部における切欠きから漏れる気流に乗って飛散し,フィルタの目詰まりを生じさせる微粉塵が飛散しないようにすることのできるサイクロン分離装置の提供。
【解決手段】捕集容器の円周部に吸い込まれた空気を前記略円筒状の捕集容器の内周面に沿って旋回させた後,前記捕集容器の中心部からフィルタ手段を経て排気するサイクロン分離装置の前記捕集容器内に,前記捕集容器内に該捕集容器の垂直中心軸を中心とする1あるいは複数の水平円盤からなりその外周端と前記捕集容器の内壁との間に,所定の隙間が設けられてなる分離部材と,前記分離部材の上部に設けられ,前記捕集容器の上部空間と前記捕集容器の下部空間とを隔てる円盤状遮蔽部材であって,前記捕集容器の内壁との間に,所定の隙間が設けられてなる円盤状遮蔽部材とを備えてなるサイクロン分離装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,捕集対象物を遠心分離するサイクロン分離装置に係り,特に,捕集された比較的大きい捕集対象物の捕集量を増加させることの出来るサイクロン分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から,塵埃を含んだ気流を旋回させ,塵埃に遠心力を与えることで気流から分離して,集積室に塵埃を集めるサイクロン集塵装置がある。この集塵装置を備えた電気掃除機として,特許文献1が知られている。
また螺旋形状のような傾斜スロープ構造をもつものとしては特許文献2がある。
上記特許文献2は,空気を吸い込む吸気部と空気を排気する排気部を備えたサイクロン本体と,排気部に取り付けられ,空気をろ過するグリル部材と,サイクロン本体に取り付けられ,吸気部から吸い込まれる空気中に含まれているゴミを収集し貯蔵するゴミ収集筒と,ゴミ収集筒へ収集されたゴミが舞い上がらないように遮断し,空気中に含まれているゴミ中の一定の重量及び/または体積を有するゴミを空気の流れによりゴミ収集筒へ螺旋方向に沿って下向きに導く下向き案内部とを含んで構成されている。また,この技術は,前記下向き案内部に切欠き部を設け,切欠き部により旋回室で遠心分離された塵埃が集塵室に送られることを期待したものである。
また上記特許文献1に記載の発明は,上部が分離室,下部が集積室となり,分離室の中心には排気筒が配置されたサイクロン集塵装置を備え,電動送風機の運転によって発生する気流により塵埃を吸込口から吸い込み,吸い込んだ気流を前記吸込口と連通する吸気路を介して前記サイクロン集塵装置の分離室に,その内周壁に対し接線方向に導入し,前記分離室及び集積室の中で気流を旋回させて塵埃を分離し,分離した塵埃を前記集積室に集積する電気掃除機において,前記分離室と集積室との境界に遮蔽部材を配置し,この遮蔽部材はその外周と集積室の内壁との間に所定の間隙が生じる形状とするとともに,その縁には前記分離室の方向に突出するループ状の障壁が形設され,さらに,前記遮蔽部材の縁に,前記集積室の底面に向かって突出するループ状の障壁を形設されている。
この構成によれば,分離室内において遮蔽部材に沿って旋回する気流が障壁のところで上昇気流となり(以下,第1の旋回気流と記す),集積室から延び出して分離室の中心に迫ろうとする塵埃を排除する。
また,分離室で発生した旋回気流は遮蔽部材と集積室内壁との隙間から集積室に進入し,集積室に塵埃を落とした後分離室に帰還する(以下,第2の旋回気流と記す)のであるが,この時分離室に帰還しようとする旋回気流に塵埃が含まれていれば,その塵埃は気流がリブに衝突して方向転換を行う際に分離され,集積室に留まり,フィルタ部に到達せずサイクロン集積室内に留め置くことが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3788589号公報
【特許文献2】特開2006−75584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
サイクロン分離装置の原理モデルは円筒または円錐状の集塵室で外周に沿った吸気口と円中心に位置した排気口を持ち排気口から外部吸引器で空気を吸い出すことで吸気口から流入した空気が旋回気流を起こし,旋回する気流の遠心分離作用で塵埃等を分離するものである。遠心分離された塵埃は重力の影響で下方に遷移し空気だけが吸い出される仕組みである。
上記のような基本原理に基づくサイクロン分離装置においては,遠心分離されたゴミの捕集は重要な課題である。
その点,上記特許文献2に記載のサイクロン集塵装置では,前記下向き案内部に切欠き部を設け,切欠き部を経て旋回室で遠心分離された塵埃が集塵室に送られることを期待したものであるが,上記切欠き部があるために,下向き案内部の切欠き部から流入した気流は,上昇時に上記切欠き部より再び分離部に流出する。この流れに乗って微細な塵埃は流出してしまっており,上記特許文献2の螺旋状下向き案内部は,微細塵の舞い上がり防止のための遮蔽部材としてはほとんど機能しておらず,HEPAフィルタ等の微細塵の集塵に長けたフィルタを用いて捕集する必要があった。
また,集塵室内には,強い旋回流れが生じているため,集塵室内の静圧分布の特性から,気流の二次的流れが発生し,集塵室内に捕集した塵埃が再飛散を起こし,これにより,集塵室に塵埃を多く捕集するほど,切欠き部からの微細塵の流出量が増加し,フィルタが目詰まりしてしまうという問題があった。
従って本発明は上記したような事情に基づいて創案されたものであり,前記したような特許文献2における下向き案内部における切欠きから漏れる気流に乗って飛散し,フィルタの目詰まりを生じさせる微粉塵が飛散しないようにすることのできるサイクロン分離装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために,本発明は,内周面が略円筒状の捕集容器を備え,該捕集容器の円周部にその周方向に設けられた空気流入口から吸い込まれた空気を前記略円筒状の捕集容器の内周面に沿って旋回させた後,前記捕集容器の中心部からフィルタ手段を経て排気することにより,前記空気に含まれる比較的大きい捕集対象物を前記旋回する空気流の遠心力によって前記空気から分離し前記捕集容器の底部で捕集すると共に,比較的小さい捕集対象物を前記フィルタ手段において捕集するサイクロン分離装置において,
前記捕集容器内に該捕集容器の垂直中心軸を中心とする1あるいは複数の水平円盤からなりその外周端と前記捕集容器の内壁との間に,所定の隙間が設けられてなる分離部材と,前記分離部材の上部に設けられ,前記捕集容器の上部空間と前記捕集容器の下部空間とを隔てる円盤状遮蔽部材であって,前記捕集容器の内壁との間に,所定の隙間が設けられてなる円盤状遮蔽部材とを備えてなることを特徴とするサイクロン分離装置として構成することができる。
このような円盤形状分離部材は,前記した螺旋形状分離部材と比べて,どの方向からの上昇流(乱流の場合)に対しても,上昇流の流れを急変する邪魔板が多数配置されている。このため,慣性力による微細塵分離効率がさらに高まる。同様に,円盤形状分離部材下部により上昇する微細塵を含む気流の一部が,サイクロン集積装置内壁方向に押し出され集積装置側面内壁にある旋回気流により再度下方に戻されることによる微細塵の集塵効果もさらに高めることができる。
このような平行の円盤状分離部材を備えたサイクロン分離装置についても,螺旋状分離部材の場合と同様,前記水平円盤の外周端と前記捕集容器の内壁との間における,所定の隙間が必要である。また前記水平円盤の外周端と前記捕集容器の内壁との隙間を下方に向かい小さくなるように構成しても良い。
さらに前記分離部材を,前記円盤状遮蔽部材と連結したりする点についても,前記螺旋状分離部材と同様に構成することができる。
またこれらの発明は,前記捕集対象物が,塵埃であるサイクロン集塵装置に適用可能である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は以上述べたように,内周面が略円筒状の捕集容器を備え,該捕集容器の円周部にその周方向に設けられた空気流入口から吸い込まれた空気を前記略円筒状の捕集容器の内周面に沿って旋回させた後,前記捕集容器の中心部からフィルタ手段を経て排気することにより,前記空気に含まれる比較的大きい捕集対象物を前記旋回する空気流の遠心力によって前記空気から分離し前記捕集容器の底部で捕集すると共に,比較的小さい捕集対象物を前記フィルタ手段において捕集するサイクロン分離装置において,
前記捕集容器内に該捕集容器の垂直中心軸を中心とする1あるいは複数の水平円盤からなりその外周端と前記捕集容器の内壁との間に,所定の隙間が設けられてなる分離部材と,前記分離部材の上部に設けられ,前記捕集容器の上部空間と前記捕集容器の下部空間とを隔てる円盤状遮蔽部材であって,前記捕集容器の内壁との間に,所定の隙間が設けられてなる円盤状遮蔽部材とを備えてなることを特徴とするサイクロン分離装置として構成されている。
ここに円盤形状分離部材は,上昇流に対してほぼ垂直に形成されており,塵埃が含まれる上昇流の方向を急変もしくは衝突させることにより,慣性力の作用で塵埃を分離・捕集することができる。
さらに,円盤形状分離部材を複数設けることにより,分離・捕集効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明の実施の形態に係る電気掃除機Xの外観図。
【図2】本発明の実施の形態に係るサイクロン集塵装置Y(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している)の内部構造を説明するための断面図。
【図3】本発明の実施の形態に係るサイクロン集塵装置Y(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している)の内部構造を説明するための断面図。
【図4】図2及び図3に示したサイクロン集塵装置Yに設けられた螺旋部を説明するための図((a)は,下方から見た斜視図,(b)は,上方から見た斜視図)。
【図5】本発明の実施の形態に係るサイクロン集塵装置Yに設けられた上部フィルタユニット13を説明するための図。
【図6】本発明の実施の形態に係るサイクロン集塵装置Yの内部構造で螺旋形状分離部材を中心として説明するための断面図。
【図7】本発明の実施の形態に係るサイクロン集塵装置Y(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している)の内部構造を説明するための分解斜視図。
【図8】塵埃の貯まり具合を説明するための図(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している)。
【図9】集塵容器が直円筒状の場合を説明するサイクロン集塵装置Y(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している)の断面図。
【図10】円錐台状の集塵容器が用いられた場合のサイクロン集塵装置Y(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している)の断面図。
【図11】螺旋部の空気の流れを説明するためのサイクロン集塵装置Y(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している)の斜視図。
【図12】本発明の実施形態に係る集塵装置に用いる分離部材を示す斜視図。
【図13】同実施形態に係る集塵装置の分解斜視図,図14は,同実施形態に係る集塵装置の断面図。
【図14】同実施形態に係る集塵装置の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下添付図面を参照しながら,本発明の実施の形態について説明し,本発明の理解に供する。尚,以下の実施の形態は,本発明を具体化した一例であって,本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
ここに,図1は,本発明の実施の形態に係る電気掃除機Xの外観図,図2及び図3は,本発明の実施の形態に係るサイクロン集塵装置Y(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している)の内部構造を説明するための断面図,図4は,図2及び図3に示したサイクロン集塵装置Yに設けられた螺旋部を説明するための図((a)は,下方から見た斜視図,(b)は,上方から見た斜視図),図5は,本発明の実施の形態に係るサイクロン集塵装置Yに設けられた上部フィルタユニット13を説明するための図,図6は,本発明の実施の形態に係るサイクロン集塵装置Yの内部構造を螺旋形状分離部材を中心として説明するための断面図,図7は,本発明の実施の形態に係るサイクロン集塵装置Y(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している)の内部構造を説明するための分解斜視図,図8は,塵埃の貯まり具合を説明するための図(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している),図9は,集塵容器が直円筒状の場合を説明するサイクロン集塵装置Y(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している)の断面図,図10は,円錐台状の集塵容器が用いられた場合のサイクロン集塵装置Y(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している)の断面図,図11は,螺旋部の空気の流れを説明するためのサイクロン集塵装置Y(但し,円盤形状分離部材に替わって螺旋状分離部材を用いた場合を例示している)の斜視図である。また,図12は本発明の実施形態に係る集塵装置に用いる分離部材を示す斜視図,図13は,同実施形態に係る集塵装置の分解斜視図,図14は,同実施形態に係る集塵装置の断面図である。
【0009】
まず,図1を用いて,本発明の実施の形態に係る電気掃除機Xの概略構成について説明する。
図1に示すように,前記電気掃除機Xは,掃除機本体部1,吸気口部2,接続管3,接続ホース4,操作ハンドル5などを備えて概略構成されている。前記掃除機本体部1には,不図示の電動送風機,サイクロン集塵装置Y,不図示の制御装置などが内蔵されている。なお,前記サイクロン集塵装置Yについては後段で詳述する。
前記電動送風機は,吸気を行うための送風ファン及び該送風ファンを回転駆動する送風駆動モータを有している。前記制御装置は,CPUやRAM,ROMなどの制御機器を有してなり,前記電気掃除機Xを統括的に制御する。具体的には,前記制御装置では,前記CPUが前記ROMに記憶された制御プログラムに従って各種の処理を実行する。
なお,前記操作ハンドル5には,ユーザが前記電気掃除機Xの稼働の有無や運転モードの選択操作などを行うための操作スイッチ(不図示)が設けられている。また,その操作スイッチの近傍には,前記電気掃除機Xの現在の状態を表示するLEDなどの表示部(不図示)も設けられている。
【0010】
前記掃除機本体部1は,該掃除機本体部1の前端に接続された前記接続ホース4と,該接続ホース4に接続された前記接続管3とを介して前記吸気口部2に接続されている。
従って,前記電気掃除機Xでは,前記掃除機本体部1に内蔵された前記電動送風機(不図示)が作動されることにより,前記吸気口部2からの吸気が行われる。そして,前記吸気口部2から吸気された空気は,前記接続管3及び前記接続ホース4を通じて前記サイクロン集塵装置Yに流入する。前記サイクロン集塵装置Yでは,吸い込まれた空気から塵埃が遠心分離される。なお,前記サイクロン集塵装置Yで塵埃が分離された後の空気は,前記掃除機本体部1の後端に設けられた不図示の排気口から排気される。
【0011】
以下,図2〜6を参照しつつ,本発明に係るサイクロン集塵装置の一例であるサイクロン集塵装置Yについて詳説する。
図2及び図3に示すように,前記サイクロン集塵装置Yは,筐体10,内周面が略円筒状で,上記筐体10に対して着脱自在の集塵容器11(捕集容器の一例),内筒12,上部フィルタユニット13,塵埃受部14及び除塵駆動機構15などを備えて概略構成されている。
前記サイクロン集塵装置Yでは,前記集塵容器11,前記内筒12,前記上部フィルタユニット13,及び前記塵埃受部14が,垂直の中心軸Pを中心に同軸状に配置されている。また,前記サイクロン集塵装置Yは,前記掃除機本体部1に着脱可能に構成されている。
上記筐体10は,フィルタ122を備えた内筒12を備えている。
このサイクロン集塵装置Yでは,略円筒状の集塵容器11の中心部に設けられた前記内筒12から前記集塵容器11内の空気を排気することにより,前記集塵容器11の円周部に設けられた空気流入口111a(図7参照)から吸い込まれた空気を集塵容器11の内周面に沿って旋回させた後,フィルタ手段の一例である前記上部フィルタユニット13などを経て前記内筒12を経て排気し,前記空気に含まれる比較的大きい捕集対象物を前記集塵容器11の底部で捕集すると共に,比較的小さい捕集対象物を前記上部フィルタユニット13などにおいて捕集するものである。
【0012】
前記集塵容器11は,吸い込まれた空気から分離された塵埃を収容するための内周面が円筒状で,且つ外形も円筒状の容器である。前記集塵容器11は,前記サイクロン集塵装置Yの筐体10に着脱可能に構成されている。ユーザは,前記掃除機本体部1から前記サイクロン集塵装置Yを取り出した後,該サイクロン集塵装置Yから前記集塵容器11を取り外して,該集塵容器11内の塵埃を廃棄する。なお,前記サイクロン集塵装置Yの筐体10と前記集塵容器11との間には,環状のシール部材161が設けられている。このシール部材161により,前記筐体10及び前記集塵容器11の間の空気の漏れが防止される。
【0013】
さらに,前記集塵容器11には,前記接続ホース4(図1参照)が接続される接続部111が設けられている。前記吸気口部2から前記接続管3及び前記接続ホース4を通じて吸い込まれた空気は,前記接続部111から前記集塵容器11内に流入する。
ここで,前記接続部111の前記集塵容器11への空気流入口(不図示)は,前記接続ホース4からの空気が前記集塵容器11内で旋回するように形成されている。具体的に,前記空気流入口(不図示)は,前記集塵容器11側の出口が該集塵容器11の円周方向に向くように形成されている。従って,前記集塵容器11では,吸い込まれた空気を旋回させることで該空気に含まれた塵埃が遠心力によって分離(遠心分離)される。そして,前記集塵容器11で遠心分離された塵埃は,該集塵容器11の底部に収容される(図2,3の塵埃D1)。
一方,塵埃が分離された後の空気は,前記集塵容器11から矢印(図2)で示す排気経路112に沿って前記掃除機本体部1に設けられた不図示の排気口から外部に排気される。ここで,前記集塵容器11から前記排気口(不図示)までの前記排気経路112上には,前記内筒12,前記塵埃受部14,及び前記上部フィルタユニット13が順に配置されている。
【0014】
さらに,前記内筒12の上端には,後述の傾斜除塵部材134に設けられた係合部134cに係合する複数の連結部12bが設けられている。前記連結部12bは,前記内筒12の上端の開口縁部に上方に突出して設けられたリブである。
前記内筒12は,前記連結部12b及び前記係合部134cの係合によって,前記傾斜除塵部材134に一体に連結されている。なお,前記内筒12及び前記傾斜除塵部材134の連結構造はこれに限られない。例えば,前記内筒12及び前記傾斜除塵部材134各々に設けられた嵌合部を嵌合させることにより一体に連結する構成が考えられる。
【0015】
また,前記内筒12の上部には,前記集塵容器11で塵埃が分離された後の空気を,前記上部フィルタユニット13に向けて排気するための内筒排気口121が形成されている。そして,前記内筒排気口121には,該内筒排気口121全体を覆う円筒状を成す内筒フィルタ122が設けられている。前記内筒フィルタ122は,前記内筒排気口121を通過する空気を濾過する。
例えば,前記内筒フィルタ122は,メッシュ状のエアフィルタ等である。なお,前記内筒フィルタ122は,前記内筒排気口121の内側又は外側のいずれに設けられていてもよい。また,前記排気口121及び前記内筒フィルタ122に換えて,前記内筒12にメッシュ状の孔を形成する構成も考えられる。その場合は,そのメッシュ状の孔が前記内筒排気口121及び前記内筒フィルタ122として機能する。
【0016】
一方,前記内筒12の下部には,前記集塵容器11内の塵埃を気流の力で圧縮するための螺旋形状分離部材123が設けられている。螺旋形状分離部材123は,図12,図13,図14に示す円盤形状分離部材201に置き換えることができる。
ここで,図2及び図3に加えて螺旋形状分離部材123の斜視図である図4を参照しつつ,前記螺旋形状分離部材123について説明する。
図2〜4に示されているように,前記螺旋形状分離部材123には,螺旋部123a,円筒軸部123b,円盤状遮蔽部材123cが設けられている。
図12に示すように円筒軸部123b,円盤状遮蔽部材123cについては,円盤形状分離部材201についても一体的に設けられている。
前記円筒軸部123bは,前記集塵容器11の底部に設けられた前記嵌合部11aに嵌合される中空円筒である。前述したように,前記円筒軸部123b及び前記嵌合部11aの間には前記シール部材11b(図2,3参照)が介在する。
【0017】
円盤状遮蔽部材123cは,前記集塵容器11内において,後述する旋回流の遠心分離力により塵埃を分離する上側空間の部分(分離部104、図2,図3参照)と,塵埃を蓄積する下側空間の部分(集塵部105,図2参照)との仕切りの役割を果たす。これにより,捕集した塵埃が巻き上がり,内筒フィルタ122を詰まらせる事を防ぐ。また,円盤状であるため,サイクロン気流中に含まれる塵埃が引っかかることが無く,塵埃を効率的に集塵容器11の底部へ誘導することができる。円盤形状分離部材201についても同様である。
【0018】
また,前記円筒軸部123bには,該円筒軸部123bを中心にして,前記集塵室105の底面に向かって螺旋状に延び,その上下面が,前記垂直中心軸Pを中心とする螺旋状曲面を備えて湾曲した板状の螺旋部123aが設けられている。円盤形状分離部材201については,図12に示すように,該円筒軸部123bを中心にして,平行な平面状の円盤形状分離板201cを備えて構成されている。
この時,前記螺旋部123aの前記螺旋状曲面は図6の矢印Aで示す旋回気流と同様の傾斜方向をもって形成されていることが好ましい。
ただし,前記螺旋部123aの前記螺旋状曲面を,前記集塵容器11の内周面に沿って旋回する気流の傾き方向とは反対の方向に傾斜させることも可能である。
【0019】
一方,前記内筒12の内筒フィルタ122で濾過された後の空気は,該内筒12内を通じて前記上部フィルタユニット13に導かれる。
ここで,図2及び図3に加えて図5を参照しつつ,前記上部フィルタユニット13について説明する。ここに,図5(a)は,前記上部フィルタユニット13を上方から見た斜視図,図5(b)は,前記上部フィルタユニット13を下方から見た斜視図である。
前記上部フィルタユニット13は,HEPAフィルタ(High Efficiency Particulate Air Filter)131,フィルタ除塵部材132及び傾斜除塵部材134などを有している。
【0020】
前記HEPAフィルタ131は,前記内筒12から排気されて前記排気経路112上を流れる空気をさらに濾過するエアフィルタの一種である。
前記HEPAフィルタ131は,前記垂直中心軸Pの周りに環状に配置固定された複数枚のフィルタの集合で構成されている。なお,複数枚のフィルタ各々は,例えば図5(b)に示すような骨組みに固定される。また,前記HEPAフィルタ131に含まれた複数枚のフィルタは,略水平方向に凹凸を繰り返すプリーツ状に配置されている。これにより,前記HEPAフィルタ131におけるフィルタ面積が十分に確保されている。なお,前記HEPAフィルタ131の下端と前記筐体10との間には,環状のシール部材162が設けられている。これにより,前記HEPAフィルタ131と前記筐体10との間の空気の漏れが防止される。
また,図2及び図3に示すように,前記HEPAフィルタ131の中央には,後述のフィルタ除塵部材132に設けられた連結部133が嵌挿される中空部131aが形成されている。また,前記中空部131aには,前記連結部133を支持する支持部131bが設けられている。
【0021】
前述したように,前記サイクロン集塵装置Yでは,前記内筒フィルタ122及び前記HEPAフィルタ131の二段階で空気を濾過することにより塵埃の捕集力が高められている。
但し,前記HEPAフィルタ131に塵埃が堆積して目詰まりが生じると,空気の通過抵抗が大きくなる。そのため,前記電動送風機(不図示)の負荷が大きくなり吸塵力が低下するおそれがある。そこで,前記上部フィルタユニット13には,前記HEPAフィルタ131に付着した塵埃を除去する前記フィルタ除塵部材132が設けられている。
【0022】
前記フィルタ除塵部材132は,前記HEPAフィルタ131の中央部に設けられた前記支持部131bによって支持されている。具体的に,前記フィルタ除塵部材132には,前記支持部131bに支持される連結部材133が設けられている。
また,前記連結部133には,該連結部133に設けられたネジ穴133aに前記傾斜除塵部材134がネジ133bで螺着される。これにより,前記フィルタ除塵部材132及び前記傾斜除塵部材134が一体に連結される。なお,前記傾斜除塵部材134及び前記HEPAフィルタ131の間には,隙間を埋める環状のシール部材163が設けられている。これにより,前記傾斜除塵部材134及び前記HEPAフィルタ131の間の空気の漏れが防止される。
【0023】
前記フィルタ除塵部材132は,図2及び図5(a)に示すように,前記HEPAフィルタ131の上端部に接触するように該HEPAフィルタ131に沿って所定間隔で配置された二つの接触部132aを有している。前記接触部132aは板バネ状の弾性部材である。なお,前記接触部132aは,板バネ状の弾性部材に限られるものではない。また,前記接触部132aは,一つであっても或いはさらに複数であってもよい。
そして,前記フィルタ除塵部材132には,その外周部にギア132bが形成されている。このギア132bは,図2及び図3に示すように,前記サイクロン集塵装置Yに設けられた除塵駆動機構15に設けられたギア15aに噛合される。
【0024】
ここに,前記除塵駆動機構15は,図2に明らかな如く,前記掃除機本体部1側に設けられた不図示の駆動モータ(駆動手段の一例)(以下,「除塵駆動モータ」という)に連結される減速器及び該減速器に連結されたギア15aを有している。前記除塵駆動機構15では,前記除塵駆動モータの回転力が前記減速器を介して前記ギア15aに伝達される。そして,前記除塵駆動機構15のギア15aの回転力は,前記ギア132bに伝達される。これにより,前記フィルタ除塵部材132が回転される。
なお,本実施の形態では,前記除塵駆動モータによって前記フィルタ除塵部材132が回転される場合を例に挙げて説明するが,前記除塵駆動モータに換えて,前記フィルタ除塵部材132を手動で回転させることのできる機構を設けることも他の実施例として考えられる。
【0025】
前記フィルタ除塵部材132が回転されると,該フィルタ除塵部材132に設けられた二つの前記接触部132a各々は,プリーツ状に形成された前記HEPAフィルタ131に断続的に衝突して振動を与える。従って,前記HEPAフィルタ131に付着した塵埃は,前記フィルタ除塵部材132から与えられる振動によって叩き落とされる。なお,前記除塵駆動モータ(不図示)が作動されるタイミングは,例えば前記電気掃除機Xにおける集塵動作の開始前や終了後であることが望ましい。これにより,前記電動送風機による吸気によって前記HEPAフィルタ131に下流側への気流がない状態で,前記HEPAフィルタ131の除塵を効果的に行うことができる。
【0026】
次に,前記した螺旋形状分離部材123を参照して円盤形状分離部材201の構造についてさらに詳しく説明する。
前述したように,サイクロン集塵装置Yは,概略円筒形状に形成され,上部に配置された上部フィルタユニット13と,下部に配置された集塵容器11とを備えて構成されている。
集塵容器11内に収納された前記内筒12の下端には,分離部104と集塵部105の境界部である円盤状遮蔽部材123cが一体的に接合されている。上記円盤状遮蔽部材123cとその下部の前記螺旋部123a(あるいは,円盤形状分離板201c)の外径は,ほぼ同じで,分離部104の内径より小さく,円盤状遮蔽部材123c(あるいは,円盤形状分離板201c)の外周と集塵容器11の内壁との間には隙間(クリアランス)106(図6)が存在している。隙間(クリアランス)106は,分離部104において分離した塵埃を集塵部105へ移動する場合に,ある程度の体積を持つ塵埃においてもスムーズに移動することができ,かつ一度集塵部105に移動・蓄積した塵埃を巻き上げ,内筒フィルタ122を詰まらさないようにするに適した値である。実験によれば11mm程度が望ましいことが分かった。
【0027】
さらにまた,上記螺旋部123a(あるいは,円盤形状分離板201c)と集塵容器11内面との間の隙間(クリアランス)107(本発明における略円筒状の空間に相当する)は,集塵容器11の径が集塵容器11の底部に向かい小さくなる部分であるため,集塵容器11の底部に向かって小さくなるように構成されている。
【0028】
また,円盤状遮蔽部材123cは,高さ方向に所定の厚みを持つ。円盤状遮蔽部材123cの高さ方向の厚みは,分離部104における遠心分離性能に影響し,本実施例では,実験により求めた13mm程度としている。
【0029】
また,螺旋形状分離部材123の螺旋部123aは,前記したように上下の螺旋状曲面に挟まれて湾曲した板状に形成されており,円盤状遮蔽部材123cから下方に向かってほぼ垂直に伸びる円筒軸部123bを中心にして,集塵容器11の底面に向かって始端(円盤状遮蔽部材123cとの接続部)から終端(下端)までが1周分以上,円筒軸部123bの周囲に巻き付くように形成されている。上記巻き付き角度の望ましい数字としては,1.6周分である。このような巻き付きによって,螺旋部123aは,集塵容器11の内周面にそったサイクロン旋回気流(図6に矢印Aで示す)の回転方向に沿って下方に向かって傾斜する螺旋状の旋回面が形成されている。
一方,円盤形状分離板201cについては,図12に示されるように,円筒軸部123bを中心として上下方向に等間隔で平行な円盤形状分離板201cが設けられている。
【0030】
また,螺旋形状分離部材123の螺旋部123aの終端(下端)(あるいは,最下段の円盤形状分離板201c)と集塵室105の底面との間には,隙間(クリアランス)108(図6参照)が介在している。また上記隙間108の幅は,気流により運ばれる塵埃が螺旋部123aの終端部(下端部)(あるいは,円盤形状分離板201c)と集塵容器11の底面との間の空間112aに引っかかり(トラップされ),蓄積され,螺旋部123aの螺旋形状の湾曲面に沿って下側から順に積層されていく値であると同時に,塵埃が螺旋部分の終端と集塵室105底部の間に詰まることによる破損や,異物等の詰まりを起こすことを防ぐことができる値である。本実施例では,IEC規格に基づくDMT標準ゴミTYPE8を試験ゴミとして10g使用した実験により求めた上記隙間108の幅を6〜13mm程度としている。
【0031】
以上のように構成された電気掃除機の動作について以下に説明する。
図3,図6に示すように,分離室104の周方向に形成された接続部111の空気流入口111aから集塵容器11の分離室104に入った気流は,図6の矢印Aのように,分離室104の円筒状の内周面に沿って高速で旋回する。旋回気流中の比較的大きい塵埃には遠心力が作用して気流から分離され,集塵容器11の内壁へ押し付けられる。図2に示すように,空気の排気口121が,下方にあるため,その後,気流は旋回しながら,集塵室105に入る。図6において二点鎖線で示す矢印Aのように旋回する気流(主流)は,集塵室105の底面に到達した後は上昇に転じる。
【0032】
また,上昇に転じた気流に含まれる微細塵は,螺旋形状分離部材123(あるいは,円盤形状分離部材201)の螺旋状曲面(あるいは,円盤形状分離板201c)が邪魔板の効果を有することより,慣性力が作用して気流から分離される。ここで,邪魔板とは塵埃が含まれる気流を衝突させることにより,慣性力の作用で塵埃を捕集するものである。螺旋形状分離部材123の螺旋状曲面(あるいは,円盤形状分離板201c)が気流の上昇方向に対して,ほぼ垂直に位置するため,邪魔板として効果的である。これにより,上昇に転じた気流に含まれる微細塵が捕集され,前記内筒フィルタ122及び前記HEPAフィルタ131による捕集の依存度を軽減することができ,フィルタが目詰まりすることによる圧力損失の増加に伴う吸引力の低下,掃除効率の低下,フィルタ寿命の低下,メンテナンスの増加を防ぐことができる。
さらに,螺旋形状分離部材123の螺旋状曲面は,円盤状遮蔽部材123cから下方に向かってほぼ垂直に伸びる円筒軸部123bを中心にして,集塵容器11の底面に向かって始端(円盤状遮蔽部材123cとの接続部)から終端(下端)までが1周分以上,円筒軸部123bの周囲に巻き付くように形成されている。そのため,どの方向からの上昇流(乱流の場合)に対しても前述した微細塵捕集効果が得られる。円盤形状分離板201cについても,複数枚上下に所定の隙間を介して重ねて設けられているので,同様のどの方向からの上昇流(乱流の場合)に対しても前述した微細塵捕集効果が得られる。
また,螺旋状曲面(あるいは,円盤形状分離板201c)の切れ目(切欠き)がないので,そこから前記上昇流が漏れるようなことがなく,前記上昇気流に対して万遍なく邪魔板として働き,それが損なわれることが無く,上昇気流に多く含まれる細かい塵埃が直接フィルタに吸い込まれてフィルタを早期に目詰まりさせる問題がない。
【0033】
さらにまた,螺旋部123aは,サイクロン旋回気流の回転方向に沿って下方に向かって傾斜する方向性をもつ螺旋形状であるため,螺旋状曲面123dは,上昇に転じた気流の方向に対して,さらに垂直に近づき,邪魔板としての効果がさらに高まり,微細塵捕集効率もさらに高まる。
【0034】
また,円盤形状分離板201cにおいても,円盤形状分離板201cと集塵容器11内面との間の隙間(クリアランス)107を本実施例と同様に11mm程度とすることで,サイクロン旋回気流をほとんど妨げず,かつ邪魔板としての機能も有するため,慣性力による集塵効果も得られ,上記効果と同等の効果が得られる。(図11に記載)
【0035】
さらにまた,集塵容器11内には,強い旋回流れが生じているため,集塵容器11内の静圧分布の特性から,気流の二次的流れ(図6の矢印B)が発生する。この二次的流れ(図6の矢印B)は,集塵容器11内に捕集した塵埃が再飛散を起こし,前述した上昇時の気流に伴って流出してしまう。
この再飛散した塵埃に関しても,螺旋形状分離部材123の螺旋状曲面は邪魔板の効果により,慣性力が作用して気流から分離される。これにより,一度捕集した塵埃は,再飛散することなく,捕集効率が飛躍的に向上する。さらに,螺旋形状分離部材123の螺旋状曲面は,円盤状遮蔽部材123cから下方に向かってほぼ垂直に伸びる円筒軸部123bを中心にして,集塵容器11の底面に向かって始端(円盤状遮蔽部材123cとの接続部)から終端(下端)までが1周分以上,円筒軸部123bの周囲に巻き付くように連続的に形成されているため(即ち切れ目あるいは切欠きがなく),どの角度からの二次的流れ(図6の矢印B)による再飛散に対しても前述した微細塵捕集効果が得られる。
また,微細塵が再飛散してしまい上昇時の気流に微細塵が含まれてしまう場合においても,前述したように,上昇に転じた気流に含まれる微細塵は,螺旋形状分離部材123の螺旋状曲面(あるいは,円盤形状分離板201c)により,上昇流の流れの方向が急変することで,慣性力が作用して気流から分離されるため,塵埃の流出を最小限に抑えることができる。(図11の気流C)さらに螺旋形状分離部材下部により上昇する微細塵を含む気流の一部がサイクロン集積装置内壁方向に押し出され集積装置側面内壁にある旋回気流により再度下方に戻されることで微細塵の集塵効果を上げることができる。(図11の気流C)
また,円盤状遮蔽部材123cは,塵埃を分離する上側空間の部分(分離部104)と,塵埃を蓄積する下側空間の部分(集塵部105)との仕切りの役割に加えて,上昇流に対しては,前述した慣性力による微細塵分離効果(邪魔板としての効果)と上昇する微細塵を含む気流の一部がサイクロン集積装置内壁方向に押し出され集積装置側面内壁にある旋回気流により再度下方に戻されることで微細塵を集塵する効果を奏する。
【0036】
さらにまた,本実施例では,上記螺旋部123a(あるいは,円盤形状分離板201c)と集塵容器11内面との間の隙間(クリアランス)107は,集塵容器11の径が集塵容器11の底部に向かい小さくなるように構成されているため,集塵容器11の底部に向かって小さくなる。これにより,サイクロンによる遠心分離性能が向上すると同時に,螺旋形状分離部材123についてはその螺旋状曲面の邪魔板効果による再飛散抑制の効果はさらに高まる。
【0037】
また,集塵容器11が直円筒状の場合(図7に示す),螺旋形状分離部材123がない場合,遠心分離性能の向上効果は期待できないため,捕塵性能は低下してしまう。螺旋形状分離部材123(あるいは,円盤形状分離部材201)を備える場合,螺旋形状分離部材123の慣性力集塵により,捕塵性能を向上することができる。このため,集塵容器11の底部に向かい小さくすることによる圧力損失に伴う吸引力の低下を防ぎながら,捕塵性能を向上することが出来る。さらに,集塵容器11を直円筒状にすることによって,集塵容器11の容量を向上することができる。
【0038】
次に,塵埃の空気流による蓄積と積層の作用について図8を用いて説明する。
前述したように,吸引された塵埃200は,分離部104において分離され,隙間106(図6)を通り,集塵部105へ導かれる。集塵部105においては,塵埃は隙間107を通り,隙間108によりせき止められる(トラップされる)ことにより,蓄積される。この蓄積は,螺旋部123aに沿って既に蓄積された塵埃の上に積層されていく。そのため,この集塵装置では,螺旋部123a(あるいは,円盤形状分離板201c)に沿って,偏ることなく積層が成長していくため,集塵部105内で偏って蓄積されていくことがなく,同容積の集塵部と比較して集塵可能容量が飛躍的に向上する。
【0039】
また,図6に二点鎖線で示す矢印Aの気流により運ばれる塵埃は,螺旋部123aの終端部(下端部)と集塵容器11の底面との間の空間112aに引っかかり(トラップされ),蓄積され,螺旋部123aの螺旋形状の湾曲面に沿って下側から順に積層されていく。このため,さらに圧力損失の増加を防ぐことができる。また,微細塵を含む気流が湾曲面に沿って下側から順に積層された塵埃の中を通過する際に,微細塵が積層された塵埃によって捕集される。これにより,一度捕集した塵埃が微細塵を捕集するフィルタのような役割を果たす効果が得られる。また,塵埃は湾曲面に沿って下側から順に積層されるため,微細塵を含む気流が効率的に塵埃中を通過するため,従来技術に示した特許第3788589号と比べ,さらに捕集効果が高まる。
【0040】
さらに,螺旋形状分離部材123のまわりの間隙107を旋回する気流の回転方向と螺旋形状分離部材123の螺旋部123aの傾き方向が一致しているため,蓄積・積層された塵埃は,気流によって若干圧縮される。これにより,蓄積・積層された塵埃の容積が小さくなり,より効率的な塵埃捕集を達成できる。また,捕集した塵埃が気流によって圧縮されるため,上述した塵埃による微細塵捕集効果は,さらに高まる。(目の細かいフィルタと同様の効果が得られる。)
【0041】
一般的に慣性力集塵では,固体粒子の場合,付着塵埃の払い落とし(除去)が問題となる。螺旋形状分離部材123(あるいは,円盤形状分離部材201)を回転可能な構成とした場合,螺旋形状分離部材123(あるいは,円盤形状分離部材201)を回転させることにより,螺旋状曲面に付着した粒子を,螺旋状曲面下部に蓄積・積層した塵埃と擦り合わせることにより,除去(剥離)することが可能である。これにより,慣性力集塵の課題であったメンテナンス性を著しく向上することができ,メンテナンス性の非常に高い集塵装置が得られる。
【0042】
例えば図14に示すように,円盤形状分離部材201は,螺旋形状分離部材123と比べて,どの方向からの上昇流(乱流の場合)に対しても,上昇流の流れを急変する邪魔板が多数配置されている。このため,慣性力による微細塵分離効率がさらに高まる。同様に,円盤形状分離部材123c下部により上昇する微細塵を含む気流の一部が,サイクロン集積装置内壁方向に押し出され集積装置側面内壁にある旋回気流により再度下方に戻される(図14のC)ことによる微細塵の集塵効果もさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0043】
10…筐体(分離装置本体)
11…集塵容器(捕集容器)
12…内筒
13…上部フィルタユニット
14…集塵受部
104…分離部
105…集塵部
123…螺旋形状分離部材
123a…螺旋部
123b…円筒軸部
200…塵埃
201…円盤形状分離部材
201c…円盤形状分離部板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周面が略円筒状の捕集容器を備え,該捕集容器の円周部にその周方向に設けられた空気流入口から吸い込まれた空気を前記略円筒状の捕集容器の内周面に沿って旋回させた後,前記捕集容器の中心部からフィルタ手段を経て排気することにより,前記空気に含まれる比較的大きい捕集対象物を前記旋回する空気流の遠心力によって前記空気から分離し前記捕集容器の底部で捕集すると共に,比較的小さい捕集対象物を前記フィルタ手段において捕集するサイクロン分離装置において,
前記捕集容器内に該捕集容器の垂直中心軸を中心とする1あるいは複数の水平円盤からなりその外周端と前記捕集容器の内壁との間に,所定の隙間が設けられてなる分離部材と,前記分離部材の上部に設けられ,前記捕集容器の上部空間と前記捕集容器の下部空間とを隔てる円盤状遮蔽部材であって,前記捕集容器の内壁との間に,所定の隙間が設けられてなる円盤状遮蔽部材とを備えてなることを特徴とするサイクロン分離装置。
【請求項2】
前記最も下にある前記水平円盤の下面と前記捕集容器の底部との間には,所定の隙間が設けられてなる請求項1に記載のサイクロン分離装置。
【請求項3】
前記水平円盤の外周端と前記捕集容器の内壁との隙間が上下方向に一定である請求項1あるいは2のいずれかに記載のサイクロン分離装置。
【請求項4】
前記水平円盤の外周端と前記捕集容器の内壁との隙間が下方に向かい小さくなる請求項1〜3のいずれかに記載のサイクロン分離装置。
【請求項5】
前記分離部材が、前記円盤状遮蔽部材と連結されている請求項1〜4のいずれかに記載のサイクロン分離装置。
【請求項6】
前記捕集対象物が,塵埃であるサイクロン集塵装置に適用されてなる請求項1〜5のいずれかに記載のサイクロン分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−46517(P2010−46517A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251821(P2009−251821)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【分割の表示】特願2008−214033(P2008−214033)の分割
【原出願日】平成20年8月22日(2008.8.22)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】