説明

サイトカイン遺伝子を利用したマルチプレックスRT−PCRによる魚類健康診断法

【課題】病原体側からではなくホストである魚類側から魚類の健康状態を簡便かつ迅速に診断する手段を提供すること。
【解決手段】魚類から採取した被検試料におけるサイトカイン遺伝子の発現量を測定する工程と、測定結果に基づいて魚類の健康状態を診断する工程を含む、魚類の健康診断方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚類の健康状態の診断方法、および当該方法を実施するために用いるプライマーセットに関する。
【背景技術】
【0002】
これまで魚類、特に養殖魚の疾病(魚病)の診断技術としては、病原体の分離・同定といった検査が主体であった。しかしながら、病原体の分離・同定による診断は、非常に時間がかかり、この間に養殖魚が大量死してしまうケースもある。また、ウイルス性の疾病においては、特定のウイルスを検出できる抗体を作成する必要があり、簡便性や汎用性に乏しい。さらに、近年では温暖化の影響で南方系の魚介類の移入が始まっていることから、今後は未知の病原体の侵襲も予測され、この時、現在の魚病診断技術では、新規の病原体を発見できない可能性がある。
【0003】
魚類の病原体は、細菌、ウイルス、真菌類、寄生虫など多岐にわたり、近年では、PCR法やLAMP法といった分子生物学的手法による診断法も開発され、上記のあらゆる病原体の検出が可能にはなっているが、ターゲットとする病原体をあらかじめ決定しておく必要があり、病原体の予測を誤ると診断ができなくなる。
【0004】
このように、従来の魚病診断技術は、病原体の検出に特化しており、ホストである魚類側からのアプローチは専ら発病魚の外部や内部所見によるのみである。
【0005】
魚類の生体制御は、高等動物と同様に自然免疫と獲得性免疫からなっている。しかし、高等動物に比べて、魚類の免疫系は、獲得性免疫よりも自然免疫のほうが重要であると指摘されてきた。サイトカインは自然免疫応答に重要な役割を果たす分子であり、生体内における免疫や炎症などの調整機能に深く関わっていることが知られている。最近のゲノム研究により、魚類にも哺乳類とほぼ同じようなサイトカインが存在することが確認されているが(非特許文献1)、サイトカインの発現を魚類の診断に用いた報告例はこれまでない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】R.Savan, M.Sakai, Genomics of fish cytokines, Comparative Biochemistry and Physiology, Part D 1 (2006) 89-101
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のように、従来の魚病診断技術は時間を要する、病原体の種類を選ぶ、など様々な制限があった。
【0008】
そこで、本発明の課題は、病原体側からではなくホストである魚類側から魚類の健康状態を簡便かつ迅速に診断する手段を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意検討を行った結果、病原体の構成成分の刺激によって複数のサイトカイン遺伝子の発現量が変動することから、それらのサイトカイン遺伝子が魚類の健康状態の指標となることを見出した。そこで、本発明者らは、当該複数のサイトカイン遺伝子をワンアッセイで測定できる系を確立し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明は以下の発明を包含する。
[1] 下記の工程を含む、魚類の健康状態の診断方法。
(1) 魚類から採取した被検試料における、IL-2(配列番号1)、IL-4/13A(配列番号2)、IL-4/13B(配列番号3)、IL-6(配列番号4)、IL-10(配列番号5)、IL-12 p40(配列番号6)、IL-17A/F1(配列番号7)、IL-17A/F2(配列番号8)、IL-17A/F3(配列番号9)、IL-21(配列番号10)、TGF-β1(配列番号11)、IFNγ(配列番号12)、IFNγ2(配列番号13)、TNFα(配列番号14)、TNFβ(配列番号15)、IL-1β(配列番号16)、IL-7(配列番号17)、IL-12 p35(配列番号18)、IL-15(配列番号19)、IL-15Like(配列番号20)、IL-18(配列番号21)、およびI-IFN-1(配列番号22)から成る群から選択されるサイトカイン遺伝子の発現量を測定する工程
(2) 工程(1)の測定結果に基づいて、魚類の健康状態を評価する工程
【0011】
[2] 前記サイトカイン遺伝子の発現量が、該遺伝子より転写されるmRNA量から測定される、[1]に記載の方法。
[3] 前記mRNA量の発現量が、RT-PCR法またはリアルタイムRT-PCR法により測定される、[2]に記載の方法。
[4] 前記RT-PCRがマルチプレックスRT-PCRである、[3]に記載の方法。
【0012】
[5] 以下の(p1)〜(p22)のいずれかに記載のプライマーセットから成る群から選択されるプライマーセットを用いて遺伝子を増幅する、[4]に記載の方法。
(p1)配列番号25に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号26に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p2)配列番号27に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号28に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p3)配列番号29に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号30に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p4)配列番号31に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号32に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p5)配列番号33に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号34に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p6)配列番号35に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号36に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p7)配列番号37に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号38に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p8)配列番号39に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号40に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p9)配列番号41に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号42に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p10)配列番号43に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号44に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p11)配列番号45に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号46に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p12)配列番号47に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号48に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p13)配列番号49に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号50に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p14)配列番号51に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号52に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p15)配列番号53に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号54に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p16)配列番号55に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号56に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p17)配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号58に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p18)配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号60に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p19)配列番号61に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号62に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p20)配列番号63に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号64に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p21)配列番号65に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号66に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p22)配列番号67に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号68に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
【0013】
[6] 前記サイトカイン遺伝子の発現量が、該遺伝子によってコードされるポリペプチド量から測定される、[1]に記載の方法。
[7] 前記ポリペプチド量が、該ポリペプチド又はその断片に対する抗体を用いて測定される、[6]に記載の方法。
[8] 前記工程(2)において、被検試料における遺伝子発現量と対照試料における遺伝子発現量とを比較することにより遺伝子の発現量を解析し、それにより魚類の健康状態を診断する、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
【0014】
[9] 以下の(p1)〜(p22)の魚類の健康状態診断用プライマーセット。
(p1)配列番号25に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号26に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p2)配列番号27に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号28に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p3)配列番号29に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号30に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p4)配列番号31に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号32に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p5)配列番号33に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号34に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p6)配列番号35に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号36に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p7)配列番号37に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号38に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p8)配列番号39に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号40に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p9)配列番号41に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号42に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p10)配列番号43に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号44に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p11)配列番号45に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号46に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p12)配列番号47に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号48に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p13)配列番号49に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号50に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p14)配列番号51に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号52に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p15)配列番号53に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号54に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p16)配列番号55に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号56に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p17)配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号58に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p18)配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号60に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p19)配列番号61に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号62に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p20)配列番号63に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号64に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p21)配列番号65に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号66に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p22)配列番号67に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号68に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
[10] 配列番号1〜22のいずれかに示す塩基配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための少なくとも15塩基以上の長さを有する魚類の健康状態診断用プローブ。
[11] [9]に記載のプライマーセットを少なくとも含む、魚類の健康状態診断用キット。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、複数のサイトカイン遺伝子の発現動態を同時に解析することにより、魚類の健康状態を迅速かつ簡便に把握することが可能である。よって、本発明は、養殖魚の健康管理や医薬品(抗菌剤、ワクチン、免疫賦活剤)の有効性の評価に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】サイトカイン遺伝子(13種)の発現をマルチプレックスRT-PCRで解析した結果を示す(プライマー濃度:0.5μM)。
【図2】サイトカイン遺伝子(13種)の発現をマルチプレックスRT-PCRで解析した結果を示す(プライマー濃度:各遺伝子の発現量に応じて977pMから2500nMに調整)。
【図3】LPSまたはpolyI:Cで刺激後のフグ頭腎のIL-2遺伝子相対発現量を経時的に測定した結果を示す(control: LPSまたはpolyI:C無刺激)。
【図4】LPSまたはpolyI:Cで刺激後のフグ頭腎のIL-4/13A遺伝子相対発現量を経時的に測定した結果を示す(control: LPSまたはpolyI:C無刺激)。
【図5】LPSまたはpolyI:Cで刺激後のフグ頭腎のIL-4/13B遺伝子相対発現量を経時的に測定した結果を示す(control: LPSまたはpolyI:C無刺激)。
【図6】LPSまたはpolyI:Cで刺激後のフグ頭腎のIL-10遺伝子相対発現量を経時的に測定した結果を示す(control: LPSまたはpolyI:C無刺激)。
【図7】LPSまたはpolyI:Cで刺激後のフグ頭腎のIL-17A/F1遺伝子相対発現量を経時的に測定した結果を示す(control: LPSまたはpolyI:C無刺激)。
【図8】LPSまたはpolyI:Cで刺激後のフグ頭腎のIL-17A/F2遺伝子相対発現量を経時的に測定した結果を示す(control: LPSまたはpolyI:C無刺激)。
【図9】LPSまたはpolyI:Cで刺激後のフグ頭腎のIL-17A/F3遺伝子相対発現量を経時的に測定した結果を示す(control: LPSまたはpolyI:C無刺激)。
【図10】LPSまたはpolyI:Cで刺激後のフグ頭腎のIL-21遺伝子相対発現量を経時的に測定した結果を示す(control: LPSまたはpolyI:C無刺激)。
【図11】LPSまたはpolyI:Cで刺激後のフグ頭腎のTGF-β1遺伝子相対発現量を経時的に測定した結果を示す(control: LPSまたはpolyI:C無刺激)。
【図12】LPSまたはpolyI:Cで刺激後のフグ頭腎のIFNγ遺伝子相対発現量を経時的に測定した結果を示す(control: LPSまたはpolyI:C 無刺激)。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の魚類の健康状態の診断方法は、魚類から摘出した被検試料におけるサイトカイン遺伝子の発現動態を解析することを特徴とする。
【0018】
本発明の魚類の健康状態の診断方法は、具体的には、魚類から摘出した被検試料におけるサイトカイン遺伝子の発現量を測定する工程と、該測定結果に基づいて、魚類の健康状態を診断する工程を含む。
【0019】
上記のサイトカイン遺伝子は、IL-2(配列番号1; NM_001037994)、IL-4/13A(配列番号2)、IL-4/13B(配列番号3)、IL-6(配列番号4; NM_001032722)、IL-10(配列番号5; AJ539537)、IL-12 p40(配列番号6; NM_001100604)、IL-17A/F1(配列番号7;
AB522594)、IL-17A/F2(配列番号8; AB522595)、IL-17A/F3(配列番号9; AB522596)、IL-21(配列番号10; NM_001037993)、TGF-β1(配列番号11)、IFNγ(配列番号12; AJ616216)、IFNγ2(配列番号13)、TNFα(配列番号14;NM_001037985)、TNFβ(配列番号15; NM_001037986)、IL-1β(配列番号16)、IL-7(配列番号17; NM_001136148)、IL-12 p35(配列番号18; NM_001100605)、IL-15(配列番号19; NM_001033048)、IL-15Like(配列番号20; NM_001033640)、IL-18(配列番号21;NM_001032632)、およびI-IFN-1(配列番号22; AJ583023)から成る群から選択されるサイトカイン遺伝子をいう。本発明における魚類の健康状態の診断は、上記サイトカイン遺伝子のうち、少なくとも1種以上、好ましくは少なくとも2種以上のサイトカイン遺伝子の発現量を測定することにより行う。少なくとも2種以上のサイトカイン遺伝子の発現量を測定する場合、限定はされないが、例えば、5種、10種、15種、20種等のサイトカイン遺伝子を診断対象とする魚種や診断目的に応じて適宜選択すればよい。
【0020】
また、本発明において、サイトカイン遺伝子は、配列番号1〜22に示された塩基配列を有する遺伝子に限定されず、配列番号1〜22に示された塩基配列と実質的に同一の塩基配列を有する遺伝子をも包含する。実質的に同一とは、例えば、配列番号1〜22に示された塩基配列と85%以上、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、さらにより好ましくは98%以上、最も好ましくは99%以上の同一性を意味する。ここで、同一性は、例えば、相同性計算アルゴリズムNCBI BLAST(National Center for Biotechnology Information Basic Local Alignment Search Tool)を用い、以下の条件(期待値=10;ギャップを許す;フィルタリング=ON;マッチスコア=1;ミスマッチスコア=−3)にて計算することができる。
【0021】
本発明において、魚類の健康状態の診断とは、病原微生物感染の有無や程度の判定、病原体保有状態であるか否かの判定を行うことをいう。
【0022】
本発明において診断対象となる魚類としては、海水魚及び淡水魚のいずれであってもよく、好ましくは養殖魚であり、より好ましくは海水で生息する養殖魚である。海水で生息する養殖魚としては、特に限定されないが、ハマチ、ブリ、カンパチ、シマアジ、タイ、トラフグ、ヒラメ、サケ、スズキ、サバなどが挙げられる。本発明の方法はまた、淡水で生息する養殖魚、例えばアユ、フナなど、及び観賞魚、例えば金魚、コイ、メダカなどにも適用可能である。
【0023】
本発明において用いられる被検試料としては、魚類より摘出した組織や体液であれば特に限定はされず、魚種によって異なるが、例えば、頭腎、脾臓、胸腺、鰓、腸、血液などが挙げられる。また、本発明において用いられる対照試料としては、健常であることが確認された魚類由来の上記と同様の組織や体液など挙げられる。これらの試料は分離、抽出、濃縮、精製などの前処理を行ってもよい。
【0024】
遺伝子の発現量とは、遺伝子の転写産物であるmRNA量をいう。本発明において、被検試料および対照試料における遺伝子の発現量は、当業者に公知の任意の方法により測定することができ、また、測定は、各方法の常法に従って実施すればよい。各方法について様々なプロトコルが報告されており、当業者であれば公知のプロトコルに従い、又は公知のプロトコルを適宜修正や変更を行い実施することができる。
【0025】
mRNA量を測定する場合、魚類からのRNAの抽出は、当該技術分野において通常用いられる手法、例えば、グアニジンチオシアネート−トリフルオロ酢酸セシウム法、グアニジン/塩化セシウム法などに従って行うことができる。また、RNA抽出に際しては、RNeasy等の市販のRNA抽出用キットに添付される抽出プロトコルを改良した独自のプロトコルに従って行うことが好ましい。mRNAの調製は、得られた全RNA画分をオリゴdT-セルロースやポリU-セファロース等を用いたアフィニティーカラム法、あるいはバッチ法により処理することによって行う。さらに、ショ糖密度勾配遠心法等によりポリ(A)+RNAをさらに分画してもよい。
【0026】
mRNA量の測定は、所望のmRNA量を測定できる方法であれば特に限定されず、公知の方法から適宜選択して用いることができる。例えば、上記のサイトカイン遺伝子にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドをプライマーとした遺伝子増幅法、または、上記のサイトカイン遺伝子にハイブリダイズするオリゴ(ポリ)ヌクレオチドをプローブとしたハイブリダイゼーション法を利用することができる。具体的には、RT-PCR法、リアルタイムRT-PCR法、マイクロアレイ法、ノーザンブロット法、ドットブロット法、RNアーゼプロテクションアッセイ法などが挙げられる。上記の方法に用いるプライマーやプローブは、標識し、当該標識のシグナル強度を調べることによりmRNA量を測定することができる。なかでも、リアルタイムRT-PCR法はRNAを直接サンプルに使用でき、遺伝子増幅過程を光学的に測定することで増幅に必要な温度サイクルの回数から遺伝子定量が可能である上で好ましい。また、複数のサイカイン遺伝子を同時にかつ迅速に定量できる点で、複数のプライマーセットを同一反応系で用いるマルチプレックスRT-PCR法やマルチプレックスリアルタイムRT-PCR法がさらに好ましい。
【0027】
遺伝子発現量の測定は、データの再現性の観点から、同一の被検試料の各遺伝子に対して複数のデータを得ることが好ましい。その場合、これらのデータの平均値を各遺伝子の発現量とすることができる。また、これらのデータの分散あるいは標準偏差の値から、再現性を検証することができる。
【0028】
次に、上記サイトカイン遺伝子の発現量の測定結果に基づいて魚類の健康状態を診断する。診断は、例えば、上記の各サイトカイン遺伝子について、対照試料における遺伝子発現量に対する被検試料における遺伝子発現量(相対的発現量)を算出することにより行う。ここで、対照試料としては、たとえば、健常魚類より摘出した上記と同様の組織や体液、あるいは、治療用薬剤投与前の疾病罹患魚類より摘出した上記と同様の組織や体液を挙げることができる。また、発現量が一定のGADPHなどのハウスキーピング遺伝子を内部標準遺伝子として被検試料および対照試料においてその発現量を測定し、試料間のRNA量の補正を行なうことが好ましい。測定の結果、被検試料におけるサイトカイン遺伝子の発現量が対照試料におけるサイトカイン遺伝子の発現量に比べて有意に高い場合は、該被検試料を採取した魚類が病原体による疾病に罹患している可能性があり、健康状態が悪いと判定できる。また、被検試料におけるサイトカイン遺伝子の発現量が対照試料におけるサイトカイン遺伝子の発現量と同等か低い場合は、該被検試料を採取した魚類が細病原体による疾病に罹患している可能性が低く、健康状態が良い、あるいは、薬剤治療により病態が改善されたと判定できる。
【0029】
遺伝子発現量の定量をRT-PCR法で行う場合、用いられるプライマー(セット)は、前記のサイトカイン遺伝子の各塩基配列に基づき設計し、合成・精製の各工程を経て調製することができる。プライマーのサイズ(塩基数)は、鋳型DNAとの間の特異的なアニーリングが可能とするために、20〜40塩基である。プライマーの設計は、センス鎖(5'末端側)とアンチセンス鎖(3'末端側)からなる1組あるいは1対(2本)のプライマーが互いにアニールしないよう、両プライマー間の相補的配列を避けると共に、プライマー内のヘアピン構造の形成を防止するため自己相補配列をも避けるようにする。さらに、鋳型DNAとの安定な結合を確保するため、GC含量を約50%にし、プライマー内においてGC-richあるいはAT-richが偏在しないようにする。アニーリング温度はTm(melting temperature)に依存するので、特異性の高いPCR産物を得るため、Tm値が55〜65℃で互いに近似したプライマーを選定する。また、PCRにおけるプライマー使用の最終濃度が約0.1〜1μMになるよう調整する等を留意することも必要である。また、プライマー設計用の市販のソフトウェア、例えばOligoTM[National Bioscience Inc.(米国)製]、GENETYX[ソフトウェア開発(株)(日本)製]等を用いることもできる。
【0030】
本発明における上記の各サイトカイン遺伝子を増幅できるプライマーセットとして、具体的には下記のプライマーセット(大文字:ユニバーサル配列、小文字:遺伝子特異的配列)が例示できる。マルチプレックスPCRの場合は、下記のプライマーセットを複数用いることによって、同時に複数のサイトカイン遺伝子を同一反応液中で増幅することができる。
p1) IL-2遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAggacgatcatcattgcatca(配列番号25)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAggatttctcgatcttcacgc(配列番号26)
p2) IL-4/13A遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAcaactgtggggatgcttttt(配列番号27)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgtttgagggtctcacgtgct(配列番号28)
p3) IL-4/13B遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtcaaagtctggcactgatcg(配列番号29)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgatgcaggtgtttggtgagtt(配列番号30)
p4) IL-6遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtgaatggtgattcagaccca(配列番号31)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgaaaaagctgctcggctcta(配列番号32)
p5) IL-10遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAgctggacctgctcttcaact(配列番号33)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAactaacggactggcctcctt(配列番号34)
p6) IL12-p40遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtcatctgcttttcccaaacc(配列番号35)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgcccttatttcaagcactgg(配列番号36)
p7) IL-17/F1遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtttggttcaggctgatgttg(配列番号37)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgcgacttcttgtttgccttc(配列番号38)
p8) IL-17A/F2遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAagtgcattgtggggattctc(配列番号39)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAcattcagccaacctctcaca(配列番号40)
p9) IL-17A/F3遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtcaggcccactgttataccc(配列番号41)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgctggctctcttagcgattg(配列番号42)
p10) IL-21遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAagaatatgaagccgctggtg(配列番号43)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAtctcttccagcttcctctgc(配列番号44)
p11) TGF-β1遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAgtcgcagttcccttcaacat(配列番号45)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAtagagttccacccgttggtc(配列番号46)
p12) IFNγ遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtttgcgtggttcagacacat(配列番号47)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgcgagcacaagtgtgaaaaa(配列番号48)
p13) IFNγ2遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATActgtcagcggtacaatgacg(配列番号49)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAaccatgatgtcgtccacctt(配列番号50)
p14) TNFα遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAaagctgctacaacgccattt(配列番号51)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAtgatcttcatgaccgttgga(配列番号52)
p15) TNFβ遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAggaatgcaatttgacgtcct(配列番号53)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAggaaatcagaagagcagcca(配列番号54)
p16) IL-1β遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtgaacctgtcgacctacgtg(配列番号55)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAataccagggtgcagaggttg(配列番号56)
p17) IL-7遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtgacctgcgacagaaatcag(配列番号57)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAcgacacactcgttttggttg(配列番号58)
p18) IL-12p35遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtgttcagtggaatggactgc(配列番号59)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAtcagacaccgttccttgttg(配列番号60)
p19) IL-15 遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAagctgcgcagatgagagact(配列番号61)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAtttgaactccccttgtttcg(配列番号62)
p20) IL-15 Like遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAgcgaatgctgtgtgtcatct(配列番号63)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgcttacggatcaggctgaag(配列番号64)
p21) IL-18遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtcccatgacattgcagaaaa(配列番号65)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAtcatactctttgtggcgcag(配列番号66)
p22) I-IFN-1遺伝子増幅用プライマーセット:
Fw: AGGTGACACTATAGAATAaatctctggagctgctggac(配列番号67)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgcctgttgggtcagaacatt(配列番号68)
【0031】
また、上記プライマーセットを構成する配列番号25〜68の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドは、配列番号25〜68の塩基配列からなるオリゴヌクレオチドと実質的に同一の機能を有する範囲で、その塩基配列に改変を加えたオリゴヌクレオチドであってもよい。そのような改変オリゴヌクレオチドとしては、配列番号25〜68の塩基配列に対して95%以上、好ましくは98%以上の同一性を有する塩基配列からなり、かつ、対応する各サイトカイン遺伝子増幅用プライマーとして機能しうるオリゴヌクレオチドが挙げられる。改変には、欠失、置換、挿入、又は付加が含まれ、改変させる塩基の数は、3個以下、好ましくは2個以下、より好ましくは1個である。また、塩基の付加は、3'側でも5'側でもよい。
【0032】
上記のプライマーセットの各オリゴヌクレオチドは、オリゴヌクレオチドの合成法として当技術分野で公知の方法、例えば、ホスホトリエチル法、ホスホジエステル法等により、通常用いられるDNA/RNA自動合成装置(例えば、Applied Biosystems社製Model 394など)を利用して合成することが可能である。
【0033】
試料から抽出したRNAより合成したcDNAを鋳型として、上記のプライマーセットを用いてPCR増幅を行う。PCR増幅は上記のプライマーセットを用いる以外は特に制限はなく、常法に従って行えばよい。具体的には、鋳型DNAの変性、プライマーへの鋳型へのアニーリング、および耐熱性酵素(TaqポリメラーゼやThermus themophilis由来のTth DNAポリメラーゼなどのDNAポリメラーゼ)を用いたプライマーの伸長反応を含むサイクルを繰り返すことにより、目的とする各サイトカイン遺伝子の特定の遺伝子配列を含む断片を増幅させる。PCR反応液の組成、PCR反応条件(温度サイクル、サイクルの回数等)は、上記のプライマーセットを用いたPCRにおいて高感度でPCR増幅産物が得られるような条件を予備実験等により当業者であれば適切に選択および設定することができる。プライマーのTmに基づいて適当なPCR反応条件を選択する方法は、当該技術分野においてよく知られており、例えば、最初に94℃で5分間の変性反応、次に94℃で50秒間(変性)、55℃で50秒間(アニーリング)、72℃で1分間(伸長)を1サイクルとして30サイクル、最後に72℃で1分間の伸長反応により実施することができる。但し、ここに示した条件は一例に過ぎず、用いる酵素、反応温度、反応時間、サイクル数などは適宜変更することも可能である。このようなPCRの一連の操作は、市販のPCRキットやPCR装置を利用して、その操作説明書に従って行うことができる。PCR装置は、例えば、GeneAmp PCR System 9700(Applied Biosystems社製)、GeneAmp PCR System 9600(Applied Biosystems社製)などが使用できるが、本発明方法においては、RNAをcDNA に変換しPCRを行う(RT-PCR)反応を、1本のチューブ内で連続的に実施することのできる、Takara One Step RT-PCR Kit AMV(TAKARA社製)が好適に使用できる。
【0034】
PCR増幅産物の検出は、アガロースゲル電気泳動やキャピラリー電気泳動などの慣用の電気泳動、DNAハイブリダイゼーションやリアルタイムPCR等の方法を用いて行う。また、予め蛍光色素等により標識したプライマーを用いて当該PCRを行い、増幅産物を検出することもできる。また、DNAハイブリダイゼーションでは、マイクロアレイなどの固定化担体にPCR増幅産物を結合させ、蛍光または酵素反応等によりPCR増幅産物を確認する。検出用の固定化担体は、検出すべきサイトカイン遺伝子とハイブリダイズしうる配列を有するDNA断片が固定化されている支持体である。支持体としては、例えば、ナイロン膜、ニトロセルロース膜、ガラス、シリコンチップなどを用いることができる。
【0035】
また、プローブとしては、各サイトカイン遺伝子の塩基配列の連続する部分配列からなるポリ(オリゴ)ヌクレオチド、あるいは、各サイトカイン遺伝子の塩基配列に対する相補配列の連続する部分配列からなるポリ(オリゴ)ヌクレオチド断片が用いられる。プローブの長さは特に限定されないが、例えば15塩基以上、好ましくは20塩基以上であれば目的とする遺伝子の間で特異的なハイブリッドを形成できる。上記ヌクレオチド断片は、例えば、各塩基配列を有するポリヌクレオチド(cDNA)を適当な制限酵素で切断するか、あるいは、周知の化学合成技術により、in vitroにおいて合成することができる。また、前記のサイトカイン遺伝子を特異的に増幅させるプライマーとして利用可能なオリゴヌクレオチドは、当該遺伝子を特異的に検出するためのプローブとしても使用可能であることは当業者にとって周知であるため、この知見を元にブローブとして利用可能なオリゴヌクレオチドを設計すればよい。
【0036】
上記ヌクレオチド断片をプローブとして使用する場合、標識物質により標識化する。標識物質は、特に限定はされないが、例えば、蛍光物質、放射性同位体、酵素、アビジン若しくはビオチンなどを用いることができる。蛍光物質としては、フルオレッセンスイソチオシアネート(FITC)、テトラメチルローダミンイソチオシアネート(TRIC)、シアニン色素(例えば、Cy DyeTMシリーズのCy3、Cy5等)、アセチルアミノフルオレン(AFF)などが挙げられ、酵素としては、ペルオキシダーゼ、β−ガラクトシダーゼ、アルカリホスファターゼなどが挙げられ、放射性同位体としては、125IやHなどが挙げられる。
【0037】
上記のプローブとして用いるポリ(オリゴ)ヌクレオチド断片は、前記サイトカイン遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイゼーションすることを特徴とする。ここで、ストリンジェントな条件とは、前記サイトカイン遺伝子とポリ(オリゴ)ヌクレオチド断片との選択的かつ検出可能な特異的結合を可能とする条件である。ストリンジェント条件は、塩濃度、有機溶媒(例えば、ホルムアミド)、温度、及びその他公知の条件によって定義される。ストリンジェンシーは、塩濃度を減じるか、有機溶媒濃度を増加させるか、又はハイブリダイゼーション温度を上昇させるかによって増加する。例えば、ストリンジェントな塩濃度は、通常、NaCl約750 mM以下及びクエン酸三ナトリウム約75mM以下、より好ましくはNaCl約500 mM以下及びクエン酸三ナトリウム約50 mM以下、最も好ましくはNaCl約250 mM以下及びクエン酸三ナトリウム約25 mM以下である。ストリンジェントな有機溶媒濃度は、ホルムアミド約35%以上、好ましくは約50%以上である。ストリンジェントな温度条件は、約30℃以上、好ましくは約37℃以上、より好ましくは約42℃以上である。その他の条件としては、ハイブリダイゼーション時間、洗浄剤(例えば、SDS)の濃度、及びキャリアーDNAの存否等であり、これらの条件を組み合わせることによって、様々なストリンジェンシーを設定することができる。
【0038】
また、プローブはマイクロアレイなどの固定化担体に固定化して用いてもよい。マイクロアレイの形成方法は特に限定されず、当業者が利用可能ないかなる方法を用いてもよく、例えば、固相担体表面で直接プローブを合成する方法(オン・チップ法)、又は予め調製したプローブを固相担体表面に結合する方法などがある。固相担体表面で直接プローブを合成する場合には、光照射で選択的に除去される保護基を用い、半導体製造に利用されるフォトリソグラフィー技術及び固相合成技術を組み合わせて所定の微少なマトリックス領域でのオリゴヌクレオチドの選択的な合成を行う方法が一般的である。一方、予めプローブを調製して固相担体表面に結合する方法では、プローブ核酸の種類や固相担体の種類に応じて、スポッタ装置によりポリ陽イオン化合物やアミノ基、アルデヒド基、エポキシ基等を有するシランカップリング剤などで表面処理した固相担体の表面に点着する方法、反応活性基を導入したプローブ核酸を合成し、予め反応性基を形成させるように表面処理した固相担体表面に該プローブ核酸を点着して該プローブ核酸を固相担体表面に共有結合により結合固定させる方法などが利用できる。
【0039】
またもう一つの態様として、タンパク質量を測定する場合、その測定法としては、例えば、上記サイトカイン遺伝子によりコードされるポリペプチドに対する抗体または抗体断片を用いて測定する方法を用いることができる。具体的には、ブロッティング法、ドットブロット法、プロテインアレイ、免疫沈降法、酵素免疫測定法 (ELISA; enzyme-linked immunosorbent assay)、放射線免疫測定法(RIA;radioimmuno assay)、蛍光抗体法、免疫細胞染色等を挙げることができる。
【0040】
上記測定に用いられる抗体は、当業者に周知の方法を用いて得ることができる。抗体は、ポリクローナル抗体、あるいはモノクローナル抗体のいずれであってもよい。また、抗体としては、抗体の活性フラグメントであってもよい。活性フラグメントとしては、F(ab')2、Fab'、Fab、Fvなどが挙げられる。
【0041】
例えば、ポリクローナル抗体は、抗原を感作した哺乳動物(例えば、ウサギ、ラット、マウスなど)から血液を採取し、この血液から公知の方法により血清を分離することにより調製できる。また、モノクローナル抗体を得るには、上記抗原を感作した哺乳動物から抗体産生細胞(脾臓細胞、リンパ節細胞など)を取り出して骨髄腫細胞などと細胞融合させる。こうして得られたハイブリドーマをクローニングして、その培養物から抗体を回収しモノクローナル抗体とすることができる。
【0042】
抗原に用いるタンパク質もしくはその部分ペプチドは、例えば前記の塩基配列を有するサイトカイン遺伝子又はその部分遺伝子を発現ベクターに組込み、これを適当な宿主細胞に導入して、形質転換体を作成し、該形質転換体を培養して組み換えタンパク質を発現させ、発現させた組み換えタンパク質を培養体又は培養上清から精製することにより得ることができる。あるいは、これらの遺伝子によってコードされるアミノ酸配列、あるいは全長cDMAによってコードされるアミノ酸配列の部分アミノ酸配列からなるオリゴペプチドを化学的に合成し、免疫原として用いることもできる。
【0043】
本発明の方法に用いる上記サイトカイン遺伝子の発現量を測定するための試薬を予め組み合わせてキット化することもできる。例えば、キットには、前記のプライマーセット、プローブとして用いるポリ(オリゴ)ヌクレオチド、または抗体のいずれかを少なくとも含んでいればよい。また、該キットには、必要に応じて、RNA抽出用試薬、PCR用緩衝液やDNAポリメラーゼ等のPCR用試薬、染色剤や電気泳動用ゲル等の検出用試薬、固定化担体、標識物質、標識の検出に用いられる基質化合物、陽性や陰性の標準試料、キットの使用方法を記載した指示書等を含めることもできる。なお、キット中の試薬は溶液でも凍結乾燥物でもよい。
【実施例】
【0044】
以下、実施例によって本発明を更に具体的に説明するが、これらの実施例は本発明を限定するものでない。
【0045】
(実施例1)魚類診断用マルチプレックスRT-PCRの構築
(1) ターゲット遺伝子
下記表1に示すフグのサイトカイン遺伝子をターゲット遺伝子とした。データベースに登録されていないサイトカイン遺伝子(下表None)については、クローニングし、シークエンシングにより配列を決定した。また、β-actin、GAPDHは内部標準遺伝子として用いた。
【0046】
【表1】

【0047】
(2) 全ターゲット遺伝子が発現するRNA溶液の調製
免疫賦活剤によるin vitro刺激により、上記の全ターゲット遺伝子が発現するRNA溶液を調製した。
【0048】
まず、3尾のフグ(魚体重20g)から頭腎を摘出し、スパチュラ、ステンレスメッシュを用いてすりつぶした。そこに5%FBS(Gibco社製)、1% Streptomycin/Penicillin(MP medicals社製)を含むRPMI培地(wako社製)を加え細胞浮遊液を作製した。得られた細胞浮遊液を1×107cells/mlに調整し4区に分け、最終濃度が10μg/mlになるようにLPS(Sigma社製)、poly I:C(Sigma社製)、PHA(wako社製)、Imiquimod(Lkt Laboratories社製)の免疫賦活剤をそれぞれ添加した。その後、穏やかに懸濁し、22℃で4時間静置した。静置後、4℃で1500rpmの条件で10分間遠心分離し、上清を除去した。その後、RNAlaterに一晩浸し(4℃)、RNAlaterを除いたのち、使用時まで-80℃に保存した。
【0049】
in vitro刺激した頭腎組織からのRNAの抽出は、4区それぞれISOGEN(NIPPON GENE社製)を用いプロトコルに従って行った。抽出した4区それぞれのRNAはRecombinant DNase 1(TAKARA社製)を用いプロトコルに従ってゲノムDNAの除去を行った。その後、DNase処理したRNAは4区それぞれ100ng/μlになるように調整し、刺激したそれぞれのRNAを混合し、これを全ターゲット遺伝子が発現している鋳型RNA(ポジティブコントロールとして使用)とした。
【0050】
(3) マルチプレックスRT-PCR用プライマーの構築
上記のターゲット遺伝子について、各PCR産物の大きさが最低6bp以上離れるようにGenomeLab GeXP eXpress Profiler softwareを用いて、各遺伝子に対してFwプライマーおよびRvプライマーを設計した(大文字:ユニバーサル配列、小文字:遺伝子特異的配列)。
[IL-2遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAggacgatcatcattgcatca(配列番号25)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAggatttctcgatcttcacgc(配列番号26)
[IL-4/13A遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAcaactgtggggatgcttttt(配列番号27)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgtttgagggtctcacgtgct(配列番号28)
[IL-4/13B遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtcaaagtctggcactgatcg(配列番号29)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgatgcaggtgtttggtgagtt(配列番号30)
[IL-6遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtgaatggtgattcagaccca(配列番号31)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgaaaaagctgctcggctcta(配列番号32)
[IL-10遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAgctggacctgctcttcaact(配列番号33)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAactaacggactggcctcctt(配列番号34)
[IL12 p40遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtcatctgcttttcccaaacc(配列番号35)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgcccttatttcaagcactgg(配列番号36)
[IL-17A/F1遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtttggttcaggctgatgttg(配列番号37)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgcgacttcttgtttgccttc(配列番号38)
[IL-17A/F2遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAagtgcattgtggggattctc(配列番号39)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAcattcagccaacctctcaca(配列番号40)
[IL-17A/F3遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtcaggcccactgttataccc(配列番号41)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgctggctctcttagcgattg(配列番号42)
[IL-21遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAagaatatgaagccgctggtg(配列番号43)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAtctcttccagcttcctctgc(配列番号44)
[TGF-β1遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAgtcgcagttcccttcaacat(配列番号45)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAtagagttccacccgttggtc(配列番号46)
[IFNγ遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtttgcgtggttcagacacat(配列番号47)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgcgagcacaagtgtgaaaaa(配列番号48)
[IFNγ2遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATActgtcagcggtacaatgacg(配列番号49)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAaccatgatgtcgtccacctt(配列番号50)
[β-actin遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAcgtcatggactctggtgatg(配列番号69)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAgtcaggcagctcgtagctct(配列番号70)
[GAPDH遺伝子増幅用プライマーセット]
Fw: AGGTGACACTATAGAATAtcactgccactcagaagacg(配列番号71)
Rv: GTACGACTCACTATAGGGAggccttcacaaccttcttga(配列番号72)
【0051】
(4) RT-PCR反応
(4-1) Singlet反応
設計したプライマーの特異性を確認するため、各遺伝子に特異的なプライマーを用いてRT-PCR反応を行った。反応は(2)で作製したRNAを鋳型とし、GenomeLab GeXP Start Kit (ベックマン・コールター社製)を用いて行った。まずRT反応は、DNase/RNase Free H2O(9μl)、RT Buffer 5×(4μl)、KANr RNA with RI(3μl) 、Rv Primer(0.5μM)(2μl)、Reverse Transcriptase(5 units/μl)(1μl)、Template(100ng/μl)(1μl)を混合し、20μlのボリュームで行った。反応条件は、48℃で1分間、42℃で1時間、95℃で5分間とした。
【0052】
続いて、PCR反応は、RT反応産物を鋳型に、25mM MgCl2(1μl)、PCR Buffer 5×(4μl)、PCR Fw Primer(0.2μM)(2μl)、DNA Polymerase(Thermo社製)(0.7μl)、Template (9.3μl)を混合し、20μlのボリュームで行った。反応条件は、最初に95℃、10分間の熱変性、次いで、94℃、30秒の熱変性、55℃、60秒のアニーリング、70℃、90秒の伸長を1サイクルとして計45サイクルを行い、その後室温保存とした。当該PCRは、初期の数サイクルでユニバーサル配列を含むPCR産物を生成し、その後、PCR Buffer中に含まれるユニバーサルプライマーを利用することによって遺伝子を増幅させるものである。RT反応およびPCR反応はC1000 Thermal Cycler(BIORAD社製)を用いて行った。
【0053】
(4-2) マルチプレックス反応
各遺伝子プライマーでの非特異反応の確認を行うため、全ターゲット遺伝子のFwプライマーを混合したFwプライマー混合液と、全ターゲット遺伝子のRvプライマーを混合したRvプライマー混合液をそれぞれ調製し、これらの各混合液をFwプライマーおよびRvプライマーとしてマルチプレックスRT-PCR反応を行った。反応は、(4-1)に記載の条件に従った。
【0054】
さらに、全ターゲット遺伝子の増幅効率を、GenomeLab GeXP softwareの検出最適値となるDye Signal 10,000に近づけるよう、特に発現量の高い遺伝子(20,000以上)および低い遺伝子(5,000以下)について、混合前のRvプライマー濃度を977pM から 2500nMの範囲で調整し、Rvプライマー混合液を作製した。この濃度調製後のRvプライマー混合液を用いる以外は、(4-1)に記載の条件に従い、マルチプレックスRT-PCR反応を行った。
【0055】
(5)電気泳動
RT-PCR反応終了後、サンプル1μlをSample Loading Solution (Beckman coulter社製)(39μl)に混合した。その後、全量をCEQサンプルプレート(Beckman coulter社製)に移し、ミネラルオイル(Beckman coulter社製)を1滴添加した。CEQ8000 Automated Sequencer(Beckman coulter社製)にCEQサンプルプレートをセットし電気泳動した。
【0056】
(6) 解析
得られたピークデータはGenomeLab GeXP softwareを用いて解析し、(4-1)のSinglet反応で得られたデータについては、プライマーの特異性を確認し、(4-2)のマルチプレックス反応で得られたデータについては、各遺伝子の反応及び非特異産物の有無を確認した(図1)。また、プライマー濃度を調整したマルチプレックス反応で得られたデータについては、GenomeLab GeXP softwareの検出限界となるDye Signalが10,000から20,000前後におさまることを確認した(図2)。
【0057】
(実施例2)マルチプレックスRT-PCRによるサイトカイン遺伝子発現量の測定
(1) 疑似感染モデル魚の作製
30gのフグにリポポリサッカライド(LPS)溶液(100μg/ml)100μlまたはpolyI:C溶液(100μg/ml)100μlを腹腔内注射した。その後、継時的(4, 8, 12, 24, 48, 120時間)に取り上げ頭腎を摘出した。摘出した頭腎は使用するまでの間RNAlaterに一晩浸し(4℃)、RNAlaterを除いたのち、使用時まで-80℃に保存した。
【0058】
(2) RNAの調製
摘出した頭腎から、ISOGEN(NIPPON GENE社製)を用いてプロトコルに従って全RNAを抽出した。抽出したRNAはRecombinant Dnase 1(TAKARA社製)を用いてプロトコルに従ってゲノムDNAの除去を行った。
【0059】
(3) マルチプレックスRT-PCR
検量線の作製のための鋳型として(2)で作製したRNAのうち4時間刺激のものを段階希釈したものを用い、測定するサンプルは(2)で作製したRNA用いて行った。
【0060】
マルチプレックスRT-PCRは、IL-2、IL-4/13A、IL-4/13B、IL-6、IL-10、IL-12 p40、IL-17A/F1、IL-17A/F2、IL-17A/F3、IL-21、TGF-β1、IFNγ、IFNγ2の13遺伝子のFwプライマーを混合したFwプライマー混合液と、同13遺伝子のRvプライマーを混合したRvプライマー混合液(実施例1(4-2)で濃度を最適化したプライマー混合液)をそれぞれ調製し、これらの各混合液をFwプライマーおよびRvプライマーとしてGenomeLab GeXP Start Kit (ベックマン・コールター社製)を用いて行った。まずRT反応ではDNase/RN ase Free H2O(9μl)、RT Buffer 5×(4μl)、KANr RNA with RI(3μl)、Rvプライマー混合液 (0.5μM)(2μl)、Reverse Transcriptase(5 units/μl)(1μl)、Template (100ng/μl)(1μl)を混合し、20μlのボリュームで行った。反応条件は、48℃で1分間、42℃で1時間、95℃で5分間とした。次に、PCR反応はRT反応終了後の産物を鋳型に、25mM MgCl2(1μl)、PCR Buffer 5×(4μl)、Fwプライマー混合液(0.2μM)(2μl)、DNA Polymerase(Thermo社製)(0.7μl)、Template (9.3μl)を混合し、20μlのボリュームで行った。反応条件は、最初に95℃、10分間の熱変性、次いで、94℃、30秒の熱変性、55℃、60秒のアニーリング、70℃、90秒の伸長を1サイクルとして計35サイクルを行い、その後室温保存した。RT反応およびPCR反応はC1000 Thermal Cycler(BIORAD社製)を用いて行った。
【0061】
(4) 電気泳動
RT-PCR反応終了後、サンプル1μlをSample Loading Solution (Beckman coulter社製)(39μl)に混合した。その後、全量をCEQサンプルプレート(Beckman coulter社製)に移し、ミネラルオイル(Beckman coulter社製)を1滴添加した。CEQ8000 Automated Sequencer(Beckman coulter社製)にCEQサンプルプレートをセットし電気泳動した。
【0062】
(5) 解析
得られたピークデータはGenomeLab GeXP softwareを用いて解析し、The GeXP eXpress Profilerを用いて対象となる遺伝子のピークデータの決定を行った。同時に、発現データの補正を行うために、発現量の変動が安定している内部標準遺伝子(β-actinまたはGAPDH遺伝子のどちらか)の選択を行った。その後GeXP Quant Toolを用いて解析し、検量線より各遺伝子の発現量を換算し、その後、内部標準遺伝子で補正した各遺伝子の発現量を定量した。結果を図3〜12に示す。IL-2、IL-4/13A、IL-4/13B、IL-10、IL-17A/F1、IL-17A/F2、IL-17A/F3、IL-21、TGF-β1、IFNγの10遺伝子については、LPSおよびpolyI:Cによる刺激によって発現量が有意に増加することが確認された。従って、これらのサイトカイン遺伝子は、魚類の健康状態を評価する指標として用いることができるといえる。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、魚類の増養殖分野、魚類用医薬品の研究および製造開発分野製において利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の工程を含む、魚類の健康状態の診断方法。
(1) 魚類から採取した被検試料における、IL-2(配列番号1)、IL-4/13A(配列番号2)、IL-4/13B(配列番号3)、IL-6(配列番号4)、IL-10(配列番号5)、IL-12 p40(配列番号6)、IL-17A/F1(配列番号7)、IL-17A/F2(配列番号8)、IL-17A/F3(配列番号9)、IL-21(配列番号10)、TGF-β1(配列番号11)、IFNγ(配列番号12)、IFNγ2(配列番号13)、TNFα(配列番号14)、TNFβ(配列番号15)、IL-1β(配列番号16)、IL-7(配列番号17)、IL-12 p35(配列番号18)、IL-15(配列番号19)、IL-15Like(配列番号20)、IL-18(配列番号21)、およびI-IFN-1(配列番号22)から成る群から選択されるサイトカイン遺伝子の発現量を測定する工程
(2) 工程(1)の測定結果に基づいて、魚類の健康状態を評価する工程
【請求項2】
前記サイトカイン遺伝子の発現量が、該遺伝子より転写されるmRNA量から測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記mRNA量の発現量が、RT-PCR法またはリアルタイムRT-PCR法により測定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記RT-PCRがマルチプレックスRT-PCRである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
以下の(p1)〜(p22)のいずれかに記載のプライマーセットから成る群から選択されるプライマーセットを用いて遺伝子を増幅する、請求項4に記載の方法。
(p1)配列番号25に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号26に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p2)配列番号27に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号28に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p3)配列番号29に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号30に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p4)配列番号31に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号32に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p5)配列番号33に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号34に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p6)配列番号35に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号36に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p7)配列番号37に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号38に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p8)配列番号39に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号40に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p9)配列番号41に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号42に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p10)配列番号43に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号44に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p11)配列番号45に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号46に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p12)配列番号47に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号48に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p13)配列番号49に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号50に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p14)配列番号51に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号52に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p15)配列番号53に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号54に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p16)配列番号55に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号56に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p17)配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号58に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p18)配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号60に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p19)配列番号61に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号62に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p20)配列番号63に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号64に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p21)配列番号65に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号66に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p22)配列番号67に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号68に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
【請求項6】
前記サイトカイン遺伝子の発現量が、該遺伝子によりコードされるポリペプチド量から測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ポリペプチド量が、該ポリペプチド又はその断片に対する抗体を用いて測定される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記工程(2)において、被検試料における遺伝子発現量と対照試料における遺伝子発現量とを比較することにより遺伝子の発現量を解析し、それにより魚類の健康状態を診断する、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
以下の(p1)〜(p22)の魚類の健康状態診断用プライマーセット。
(p1)配列番号25に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号26に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p2)配列番号27に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号28に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p3)配列番号29に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号30に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p4)配列番号31に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号32に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p5)配列番号33に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号34に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p6)配列番号35に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号36に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p7)配列番号37に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号38に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p8)配列番号39に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号40に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p9)配列番号41に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号42に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p10)配列番号43に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号44に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p11)配列番号45に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号46に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p12)配列番号47に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号48に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p13)配列番号49に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号50に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p14)配列番号51に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号52に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p15)配列番号53に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号54に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p16)配列番号55に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号56に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p17)配列番号57に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号58に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p18)配列番号59に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号60に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p19)配列番号61に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号62に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p20)配列番号63に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号64に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p21)配列番号65に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号66に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
(p22)配列番号67に示す塩基配列からなるプライマーと配列番号68に示す塩基配列からなるプライマーとから構成されるプライマーセット
【請求項10】
配列番号1〜22のいずれかに示す塩基配列からなるポリヌクレオチドにハイブリダイズし、該ポリヌクレオチドを検出するための少なくとも15塩基以上の長さを有する魚類の健康状態診断用プローブ。
【請求項11】
請求項9に記載のプライマーセットを少なくとも含む、魚類の健康状態診断用キット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−51909(P2013−51909A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191778(P2011−191778)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(504224153)国立大学法人 宮崎大学 (239)
【Fターム(参考)】