説明

サイトケラチン19mRNAの測定方法

【課題】 サイトケラチン19のmRNAを迅速に増幅・検出すること。
【解決手段】 サイトケラチン19 mRNA中の一部と相同的な配列を有する第一のプライマー、相補的な配列を有する第二のプライマー(第一または第二のプライマーのいずれか一方はその5’末端にプロモーター配列が付加されている)からなるオリゴヌクレオチドの組み合わせを用い、逆転写酵素により、プロモーター配列を含む2本鎖DNAを生成し、該2本鎖DNAを鋳型としてRNAポリメラーゼによりRNA転写産物を生成し、該RNA転写産物が引き続き前記逆転写酵素によるDNA合成の鋳型となって前記2本鎖DNAを生成する工程からなるRNA増幅工程において、増幅されたRNA産物量を、増幅されたRNAと相補的2本鎖を形成するとシグナル特性が変化するように設計されたオリゴヌクレオチドプローブで経時的に測定することで前記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸増幅法を利用したサイトケラチン19 mRNAの測定方法に関する。より正確には、本発明は一定温度(40から60℃。好ましくは43℃)でのmRNAの増幅、検出に適したオリゴヌクレオチドを提供し、本発明によって試料中のサイトケラチン19 mRNAを簡便・迅速に測定することができる。また、本発明はサイトケラチン19 mRNA測定のための試薬も提供し、分子生物学、生化学、医学分野などにおける研究・診療に有用である。
【背景技術】
【0002】
サイトケラチンは細胞骨格を形成する中間径フィラメントタンパク質で、上皮組織に特徴的に存在する。現在までに20種以上のサイトケラチンが同定され、また、そのタンパク質の電荷に基づき、酸性のタイプIと、中性から塩基性のタイプIIに分類される。サイトケラチンは種類によって発現部位が異なっており、サイトケラチン8、18、19は主として上皮細胞に発現しており、サイトケラチン5、14は基底細胞に、サイトケラチン2、6、10、11は基底上組織にそれぞれ局在していることが知られている。
【0003】
サイトケラチンが医療などの分野で広く認識されているのは、抗サイトケラチン抗体を用いた免疫染色が多用されていることが一因である。多くの場合、癌の診断は病理学的に行なわれ、癌が疑われる組織や細胞をヘマトキシリン・エオシン染色(HE染色)した標本を用いるのが一般的である。しかしながら、HE染色では癌細胞と正常細胞の区別がつきにくいことがあり、癌細胞の発見を見落とすことがある。そこで、抗サイトケラチン抗体を用いた免疫組織染色が多用されている。上皮組織以外の検体を抗サイトケラチン抗体を用いて免疫組織染色した結果、陽性反応が見られた場合、その組織に本来は上皮組織でしか発現していないはずのサイトケラチンが発現していることとなり、組織学的に異常、つまりは病理学的に癌である判断される。
【0004】
サイトケラチン19(以降CK19と表記)は、主として上皮組織に発現するだけでなく、他の正常組織においても少量発現していることが知られているが、種々の癌でその発現が亢進している事が明らかとなっている。前述の抗サイトケラチン抗体を用いた免疫染色においても、CK19を抗原として認識する抗体を使用することが多い。CK19のこのような発現特性は、腫瘍マーカーとしての条件を満たすものであり、実際に腫瘍マーカーとして広く使用されている。CK19は、種々の癌で発現が亢進することから適用される癌種も多く、使用法も癌の早期診断、転移診断、治療効果のモニタリングなど多岐に亘っており、非常に有用な腫瘍マーカーといえる。
【0005】
前述のように病理診断による癌の診断は、ゴールドスタンダードとして広く汎用されているが、病理医の高い技術が必要とされ、使用する検体によっては癌細胞の見落としがあることが指摘されている。近年、こういった見落としの軽減、また各病院などで均一な診断が行えるように遺伝子検査(核酸増幅法)の使用が提案、あるいは一部実用化がなされている。核酸増幅法が高感度であることはすでに知られており、特定の遺伝子を増幅するため高い特異性を得ることができ、また、測定法によっては試料中の特定遺伝子の定量を行なうことも可能である。つまりは、特定遺伝子の発現量の大小に関する情報も提供することができる。
【0006】
一般に、核酸増幅法を利用した腫瘍マーカー遺伝子mRNAの検出の際には、RT−PCR(Reverse Transcription−Polymerase Chain Reaction)法が核酸増幅法として広く用いられており、CK19 mRNAに対する適用も報告されている(非特許文献1から8、特許文献1から4参照)。当該増幅法は、例えば、腫瘍組織からRNAを抽出後、
(a)抽出したRNAから逆転写酵素によりcDNAを合成する工程、および、
(b)当該cDNAをPCRで増幅し検出する工程、
と二段階の工程(場合によってはさらに検出工程を別個に実施する必要がある)が必要であるため、操作の煩雑性や二次汚染の危険性が示唆される。また、前記二段階の工程を実施するのに通常2時間以上が必要であり、複数の工程の実施による再現性不良、多数検体処理や検査コストの低減の点で問題があった。反応時間短縮のため、前記二段階の工程を同時に行なうOneSTEP RT−PCR法も開発されているが、各工程を別個に行なうRT−PCR法に比べて検出感度の低下や非特異的な増幅産物が産生されやすいことなどが指摘されている。さらに、PCR法による増幅は2本鎖DNAを増幅するため、混入する染色体DNAも増幅する可能性が懸念されるため、厳密にmRNA発現を解析するためにはDNaseなどによる消化を行ない染色体DNAを完全に除く必要があった。このため、操作の更なる煩雑化や再現性不良を招いていた。さらに、PCR法は急激に反応温度を昇降させる必要があり、自動化の際の反応装置の省力化や低コスト化のための障壁となっていた。
【0007】
また、別の核酸増幅法である、RT−LAMP(Reverse Transcription−Loop mediated isothermal AMPlification)法を利用したCK19 mRNAの増幅、検出も報告されている(非特許文献9、10、特許文献5参照)。これは、2種類のインナープライマー、2種類のアウタープライマー、逆転写酵素、鎖置換型DNA合成酵素、基質等を混合し、一定温度(65℃前後)で保温することにより、目的とする核酸を増幅する方法である。しかしながら、前記増幅法は、プライマー設計数が多く、かつ個々のプライマー設計において多くの制約があるため設計が非常に複雑である。例えば、標的遺伝子に対して、3’末端、5’末端においてそれぞれ3つの領域を選定(この際、各領域間の距離などが重要とされている)した上で、各領域の相同的あるいは相補的な配列を組み合わせて長さの異なるプライマーを設計する必要がある。当然ながら、この際各プライマーのTm値やGC含量などが反応性に関連することから、プライマーを設計できる領域はかなり限定される。さらには、反応速度を増加させるためにLoop Primerの使用が可能(Loop Primerの使用で検出時間は30分程度に短縮される)であるが、さらに2つのプライマーを設計する必要がある。このように多数のプライマーを設計するには困難が伴うだけでなく、製造コストの面で不利となる。さらにはLAMP法では、増幅産物を直接的に検出するのではなく、反応溶液の濁度を検出することで、相対的に増幅産物の量を推定している。濁度を検出する方法は、直接的に増幅核酸を検出しているわけではないため、非特異的な増幅産物が産生される場合は定量的な検出が行なえないばかりでなく、測定結果から非特異的な増幅産物が産生されたのかどうかが分からない。また、多数のプライマーが反応に関与するLAMP法では非特異的な増幅産物の産生を完全に抑制することは困難である。したがって、PCR法において一部報告がなされているマルチプレックスPCRのような、複数の腫瘍マーカーを同時に増幅検出するのは不向きといえる。濁度検出法ではどの腫瘍マーカーを増幅検出したのか判断できないからである。また、LAMP法もRT−PCR法と同様、2本鎖DNAを鋳型として増幅を行なうため、染色体DNAを増幅する可能性がある。他にも、LAMP法による増幅時の温度は65℃の一定であるが、一般的には反応前後で高温処理を必要とし、これは反応装置の省力化・低コスト化の障害となっている。
【0008】
一方、一定温度でRNAのみを増幅する方法として、NASBA法(特許文献6および7参照)、およびTMA法(特許文献8参照)などが報告されている。前記RNA増幅方法は、標的となるRNAに対してプロモーター配列を含むプライマー、逆転写酵素及び必要に応じてリボヌクレアーゼH(RNase H)により、プロモーター配列を含む2本鎖DNAを合成し、この2本鎖DNAを鋳型としRNAポリメラーゼによって標的RNA由来の特定塩基配列を含むRNAを生成し、このRNAが引き続きプロモーター配列を含む2本鎖DNA合成の鋳型となる連鎖反応を行なうものである。そして、RNA増幅後、電気泳動または検出可能な標識を結合させた核酸プローブを用いたハイブリダイゼーション法などにより増幅されたRNAを検出する。
【0009】
前記RNA増幅法は一定温度、一段階でRNAのみを増幅することから簡便なRNA測定に適しているが、ハイブリダイゼーション法などによる検出は煩雑な操作を必要とするため、多数検体処理や自動化に不適であるばかりでなく、結果として再現性不良や増幅核酸の二次汚染を招きやすいという課題がある。また、結果が出るまでに通常、NASBA法、TMA法ともに90分以上必要であり、迅速な結果を得るに至っていない。さらに、増幅工程は一定温度であるものの、通例は増幅工程前に予備加温(例えば、65℃)の必要があり、反応装置の省力化や低コスト化のための課題となっていた。
【0010】
簡便にRNAを増幅・測定する方法としては、Ishiguroらの方法(特許文献9および非特許文献11参照)があげられる。前記方法は、インターカレーター性蛍光色素で標識され、かつ標的核酸と相補的に2本鎖を形成するとインターカレーター性蛍光色素部分が前記2本鎖部分にインターカレートすることによって蛍光特性が変更するように設計されたオリゴヌクレオチドプローブ存在下、RNA増幅方法を実施し、蛍光特性の変化を測定するもので、一定温度、一段階かつ密閉容器内でRNA増幅および測定を、同時かつ迅速、簡便に実施することが可能である。この方法では、増幅された核酸に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用するため、増幅された核酸を直接的に検出でき、また、複数のインターカレーター性蛍光色素を使用することで、複数の核酸を増幅後、個々の増幅産物を検出することができる。より具体的な態様としては、任意のRNAに存在し、該RNAを他のRNAから区別し得る特定塩基配列に対して、
(1)当該特定塩基配列の3’末端側に相補的なDNAプライマーとRNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素)を用い、RNAを鋳型として特定配列と相補的なDNAを生成し、
(2)(1)の逆転写反応によって生じるRNA−DNA2本鎖に対して、リボヌクレアーゼH活性を有する酵素を作用させてRNAを分解して、1本鎖DNAを生成させ、
(3)(2)で生成した1本鎖DNAの3’末端に相補的で、かつ、それ自身がその5’末端にRNAポリメラーゼのプロモーター配列を有するDNAプライマーと、DNA依存性DNAポリメラーゼを用い、前記プロモーター配列を含む2本鎖DNAを合成し、
(4)(3)で生成した2本鎖DNAにRNAポリメラーゼを作用させて転写産物(特定塩基配列のRNA)を生成させる方法である。
そして、(4)で生成したRNA転写産物は特定塩基配列に由来するRNAであるため、前記(1)の反応における鋳型となり、前記(1)の反応で用いるDNAプライマーと結合し、(1)から(4)の反応が進行することでRNA増幅の連鎖反応が起きる。
【0011】
当該核酸増幅法の特徴は、PCR法のように反応液の温度を昇降させる必要がなく、またRNAの逆転写と、その後のDNA増幅反応を分けて実施することがない、という点にある。さらに、増幅されたRNA転写産物に対して特異的に結合可能な、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブを反応液に共存させ、特定塩基配列または当該塩基配列に相補的な配列の増幅と同時に、当該増幅の様子を直接的に検出(モニタリング)することができる。したがって、通常のRNA増幅法のように、別個にハイブリダイゼーション検出などを行なう必要がないため、結果を得るまでの時間を大幅に短縮可能である。
【0012】
しかしながら、当該核酸増幅法に適したCK19 mRNA増幅用プライマー配列およびその組み合わせ、さらには検出用のオリゴヌクレオチドプローブ配列については知られていない。これは、反応の開始時に一度反応温度よりも高温にし、標的となるRNAの高次構造を変性させる工程を必要とするPCR法、LAMP法、NASBA法、TMA法などの核酸増幅法と異なり、当該核酸増幅法が、増幅反応を通じて、比較的低温の一定温度(40から60℃、好ましくは43℃)条件下で標的とするmRNAの増幅検出を行なうことに由来する。つまり、一般にmRNAのような1本鎖RNAは高次構造を形成しやすいことが知られており、当該核酸増幅法のような反応条件下では、標的となるmRNAが高次構造を形成し、プライマーおよびプローブの結合を阻害すると考えられるため、最適なプライマーおよびプローブは高次構造フリー領域に設計する必要がある。RNA高次構造の指標として、塩基配列から二次構造を二次構造解析ソフトウェアにより計算・推定することは可能だが、計算上の二次構造から実際の高次構造を推定することは極めて困難である。
【0013】
また、当該核酸増幅法のように比較的低温で核酸増幅を実施する場合、高温で実施されるPCR法に比較してプライマーダイマーといった非特異産物が生産しやすく、非特異産物生成を低減させるためにはプライマーの組み合わせも厳密に選定する必要がある。しかしながら、一般に用いられるプライマーの設計法は、高温で変性する工程を含むこと(例えばPCR法)を前提としているため、既存のプライマー設計技術では、当該核酸増幅法に適したプライマーを設計することは困難である。よって、前記一定温度RNA増幅・測定法による迅速、簡便、高感度なCK19 mRNA測定を実現するためには、一定温度(40から60℃、好ましくは43℃)条件下においても結合効率が低下せず、かつCK19 mRNAの増幅、検出が可能なオリゴヌクレオチドおよびその組み合わせが必要であった。
【0014】
【特許文献1】WO2007/020081号
【特許文献2】特表2003−527098号公報
【特許文献3】特表2005−522231号公報
【特許文献4】特表2008−502330号公報
【特許文献5】特開2004−89180号公報
【特許文献6】特許第2650159号公報
【特許文献7】特許第3152927号公報
【特許文献8】特許第3241717号公報
【特許文献9】特開2000−014400号公報
【非特許文献1】Anne−Marie,C.et al.,Laboratory Investigation,77,213−220(1997).
【非特許文献2】Tao,L.et al.,British Journal of Cancer,94,1164−1169(2006).
【非特許文献3】Wang,H.Y.et al.,International Journal of Gynecological Cancer,16,643−648(2006).
【非特許文献4】Weiggelt,B.et al.,British Journal of Cancer,90,1531−1537(2004).
【非特許文献5】Kamiya,M.et al.,British Journal of Dermatology,149,998−1005(2003).
【非特許文献6】Makino,H.et al.,Hepato−Gastroenterology,50,1407−1410(2003).
【非特許文献7】Bustin,S.A.et al.,British Journal of Cancer,79,1813−1820(1999).
【非特許文献8】Fujita,Y.et al.,Gastric Cancer,9,308−314(2006).
【非特許文献9】Tujimoto,M.et al.,Clinical Cancer Research,13,4807−4816(2007).
【非特許文献10】Mike,V.et al.,International Journal of Cancer,122,2562−2567(2008).
【非特許文献11】Ishiguro,T.et al.,Analytical Biochemistry,314,1247−1252(2003).
【非特許文献12】Ishiguro,T.et al.,Nucleic Acids Res.,24,4992−4997(1996)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、ヒト細胞や組織などから得られた試料に対し、サイトケラチン19 mRNAを一定温度、一段階操作で、迅速に測定する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、サイトケラチン19(以降CK19と表記)mRNAを特異的かつ迅速に測定する方法を構築するに至った。
【0017】
第一の発明は、試料中のCK19 mRNAの測定方法において、
前記測定方法が、CK19 mRNA内の特定塩基配列の一部と相同的な配列を有する第一のプライマー、および特定塩基配列の一部と相補的な配列を有する第二のプライマー(ここで第一または第二のプライマーのいずれか一方はその5’末端にRNAポリメラーゼのプロモーター配列が付加されたプライマーである)を用いた、
(1)RNAを鋳型とする、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素による特定塩基配列に相補的なcDNAを合成する工程、
(2)リボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素によるRNA−DNA2本鎖のRNAを分解する工程(1本鎖DNAの生成)、
(3)1本鎖DNAを鋳型とする、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素による、特定塩基配列、あるいは特定塩基配列に相補的な配列のRNAを転写可能なプロモーター配列を有する2本鎖DNAを生成する工程、
(4)RNAポリメラーゼ活性を有する酵素による前記2本鎖DNAを鋳型とするRNA転写産物を生成する工程、
(5)該RNA転写産物が、前記(1)の反応におけるcDNA合成の鋳型となることで、連鎖的にRNA転写産物を生成する工程、
(6)前記RNA転写産物量を測定する工程、
からなる測定方法であり、かつ、前記第一および第二のプライマーが、以下のいずれかであることを特徴とする、前記測定方法である:
(i)前記第一のプライマーが配列番号1で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号5で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(ii)前記第一のプライマーが配列番号2で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号6で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(iii)前記第一のプライマーが配列番号3で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号7で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(iv)前記第一のプライマーが配列番号4で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号8で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド。
【0018】
第二の発明は、第一の発明に記載のCK19 mRNAの測定方法において、前記第一および第二のプライマーが、以下のいずれかであることを特徴とする、前記測定方法である:
(i)前記第一のプライマーが配列番号19から22で示されたいずれかの塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号29から32で示されたいずれかの塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(ii)前記第一のプライマーが配列番号23あるいは24で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号33あるいは34で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(iii)前記第一のプライマーが配列番号25あるいは26で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号35あるいは36で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(iv)前記第一のプライマーが配列番号27あるいは28で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号37あるいは38で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド。
【0019】
第三の発明は、第一あるいは第二の発明に記載のCK19 mRNAの測定方法において、前記(6)の工程(RNA転写産物量を測定する工程)が、標的RNAと相補的な2本鎖を形成すると蛍光特性が変化するように設計された蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブ共存下で前記蛍光特性の変化を測定することによってなされることを特徴とする、測定方法である。
【0020】
第四の発明は、前記蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが、インターカレーター性蛍光色素をリンカーを介して結合させたインターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブであることを特徴とする、第三の発明に記載の測定方法である。
【0021】
第五の発明は、前記インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号39から46に示されるいずれかの塩基配列中、あるいは当該相補配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、第四の発明に記載の測定方法である。
【0022】
第六の発明は、第一から第五の発明に記載のCK19 mRNAの測定方法において、前記(1)の工程(RNAを鋳型とする、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素によって特定塩基配列に相補的なcDNAを合成する工程)の前に、CK19 mRNA中の特定塩基配列を鋳型とし、
(i)前記特定塩基配列中の、第一のプライマーとの相同領域の5’末端部位と重複した領域、および当該部位から5’側に隣接する領域に対し相補的な配列を有する、切断用オリゴヌクレオチド、
および、
(ii)リボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素、
を用いて、前記特定塩基配列の5’末端部位で前記RNAを切断する工程を行なうことを特徴とする、測定方法である。
【0023】
第七の発明は、前記切断用オリゴヌクレオチドが配列番号9から18で示されたいずれかの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、第六の発明に記載の測定方法である。
【0024】
第八の発明は、CK19 mRNAを特異的に増幅または検出するためのオリゴヌクレオチドであって、配列番号1から8、または配列番号39から46に示されたいずれかの塩基配列中または当該相補配列中の、少なくとも連続する15塩基からなるオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、前記オリゴヌクレオチドである。
【0025】
第九の発明は、第八の発明に記載のオリゴヌクレオチドを少なくとも一つ含むことを特徴とする、CK19 mRNAの測定試薬である。
【0026】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0027】
本発明中の試料とは、RNAを含む核酸試料を意味する。本発明は、ヒト細胞、ヒト組織、体液、血液、尿、便、リンパ液、乳管液、あるいは腹腔や胸腔の洗浄液等を材料として、例えば特開平7−59572号などに記載された方法に基づいて調製した試料を使用し、当該試料を直接的に測定することで、当該試料の由来元であるヒト細胞や組織などに含まれるCK19 mRNAの測定を行なうものである。
【0028】
本発明中の特定塩基配列とは、CK19 mRNAのうち、第一のプライマーとの相同領域の5’末端から第二のプライマーとの相補領域の3’末端までの塩基配列に相同なRNAまたはDNAの塩基配列を示す。すなわち、CK19 mRNA上で、第一のプライマーは特定塩基配列の5’末端から3’方向に少なくとも連続する15塩基以上と相同的であり、第二のプライマーは特定塩基配列の3’末端から5’方向に少なくとも連続する15塩基以上と相補的である。よって、本発明では前記特定塩基配列に由来するRNA転写産物が増幅されることになる。本発明中の第一のプライマーとの相同領域の5’末端部位とは、特定塩基配列内で該相同領域の5’末端を含む部分配列からなり、当該部位は切断用オリゴヌクレオチドとの相補領域と第一のプライマーとの相同領域が重複する部位である。
【0029】
本発明中のプロモーターとは、RNAポリメラーゼが結合して転写を開始する部位である。種々のRNAポリメラーゼに特異的なプロモーター配列が知られており、本発明の使用において特にプロモーターを限定するものではないが、分子生物学的実験などで通常用いられている、T7プロモーター、SP6プロモーター、T3プロモーターが好ましい。また前記配列に転写効率に関わる付加配列を含んでいてもよい。
【0030】
本発明中の相補的な配列とは、高ストリンジェントな条件において対象となる塩基配列に対してハイブリダイゼーション可能な配列をいう。高ストリンジェントな条件の一例として、本発明の実施例に記載の核酸増幅反応液組成をあげることができる。また、本発明中の相同的な配列とは、高ストリンジェントな条件において対象となる塩基配列の完全相補配列に対してハイブリダイゼーション可能な配列をいう。したがって、本発明でいう相補的あるいは相同的な配列は、高ストリンジェントな条件においてハイブリダイゼーションの特異性および効率に影響を与えない範囲内であれば長さなどを任意に設定することが可能であることはいうまでもない。さらに、ハイブリダイゼーションの特異性および効率に影響を与えない範囲で、1から数塩基の置換・欠失・挿入がなされた塩基配列を用いてもよい。
【0031】
本発明中のヌクレオチドもしくは核酸とは、天然に存在する塩基、糖および糖間結合からなるヌクレオチドまたはヌクレオシド(RNAおよびDNAの双方を含む)のことをいい、そのオリゴマー(オリゴヌクレオチド、例えば、2から100塩基程度)およびポリマー(ポリヌクレオチド、例えば、100塩基以上)を含む総称である。本発明中のヌクレオチドあるいは核酸は、同様に機能する天然に存在しないモノマー、蛍光分子、および放射性同位体で標識されたモノマー、あるいはこれらを含むオリゴマーまたはポリマーなども含む。
【0032】
本発明中のプライマーとは、核酸増幅反応において、鋳型とハイブリダイズし、核酸増幅反応を開始するのに必要なヌクレオチドのことをいい、核酸増幅反応において増幅を所望する鋳型を基に、その鋳型とハイブリダイズし、PCR法、LAMP法、ICAN法、NASBA法、TMA法、3SR法、TRC法(特許文献9および非特許文献11参照)といった核酸増幅反応により、鎖長あるいは配列において特異的な生成物が得られるように、好ましくはプライマー自身がその鋳型に特異的な配列を含むよう設計される。
【0033】
プライマーの長さは、通常15から100塩基、好ましくは15から35塩基の鎖長を有するように設計されるが、当該鎖長に限られるものではない。よって、本発明の第一および第二のプライマーは、本願発明に記載する塩基配列の範囲内で、少なくとも連続する15塩基以上の任意の配列の中から選定することができる。すなわち、本発明におけるCK19 mRNA検出のための第一および第二のプライマーは、
(i)第一のプライマーがCK19 mRNAの一部と相同的な配列番号1に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーがCK19 mRNAの一部と相補的な配列番号5に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(ii)第一のプライマーがCK19 mRNAの一部と相同的な配列番号2に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーがCK19 mRNAの一部と相補的な配列番号6に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(iii)第一のプライマーがCK19 mRNAの一部と相同的な配列番号3に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーがCK19 mRNAの一部と相補的な配列番号7に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
または、
(iv)第一のプライマーがCK19 mRNAの一部と相同的な配列番号4に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーがCK19 mRNAの一部と相補的な配列番号8に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
である。
【0034】
本発明におけるCK19 mRNA検出のための第一および第二のプライマーのより好ましい態様は、
(i)第一のプライマーがCK19 mRNAの一部に相同的な配列番号19から22に記載のいずれかの配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーがCK19 mRNAの一部に相補的な配列番号29から32に記載のいずれかの配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(ii)第一のプライマーがCK19 mRNAの一部に相同的な配列番号23あるいは24に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーがCK19 mRNAの一部に相補的な配列番号33あるいは34に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(iii)第一のプライマーがCK19 mRNAの一部に相同的な配列番号25あるいは26に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーがCK19 mRNAの一部に相補的な配列番号35あるいは36に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
または、
(iv)第一のプライマーがCK19 mRNAの一部に相同的な配列番号27あるいは28に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーがCK19 mRNAの一部に相補的な配列番号37あるいは38に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
である。
【0035】
本発明におけるCK19 mRNA検出のための第一および第二のプライマーの好ましい一態様として、
(i)第一のプライマーが配列番号19から22に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが配列番号29から32に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(ii)第一のプライマーが配列番号23あるいは24に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが配列番号33あるいは34に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(iii)第一のプライマーが配列番号25あるいは26に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが配列番号35あるいは36に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(iv)第一のプライマーが配列番号27あるいは28に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが配列番号37あるいは38に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
があげられる。
【0036】
さらに本発明の一態様として、CK19 mRNAはcDNA合成の鋳型となる前に該RNA内の特定核酸配列の前記5’末端部位で切断される。特定核酸配列の5’末端部位で切断されることで、cDNA合成後に、cDNAにハイブリダイズした第一のプライマーのプロモーター配列に相補的なDNA鎖を、前記cDNAの3’末端を伸長することにより効率的に合成することができ、結果として機能的な2本鎖DNAプロモーター構造を形成する。このような切断方法として、CK19 mRNA内の特定塩基配列の5’末端部位(該特定塩基配列内の5’末端部位を含む部分配列)に重複し、かつ5’方向に隣接する領域に対して相補的な配列を有するオリゴヌクレオチド(以下、切断用オリゴヌクレオチドとする)を添加することによって形成されたRNA−DNA2本鎖のRNA部分をリボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素などにより切断する方法があげられる。該切断用オリゴヌクレオチドの3’末端にある水酸基は伸長反応を防止するために適当な修飾を施されたもの、例えばアミノ化等されているものを使用することが好ましい。
【0037】
本発明の好ましい一態様では、切断用オリゴヌクレオチドとして、CK19 mRNAの一部に相補的な配列番号9から18に記載の配列に対して相同的な配列からなるオリゴヌクレオチドがあげられる。
【0038】
本発明中の標的RNAとは、RNA転写産物上の特定塩基配列のうち、前記プライマーとの相同あるいは相補領域以外の配列を示し、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブとの相補的結合が可能である配列を有する。よって、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブは、本発明中の特定塩基配列の一部と相補的、または相同的な配列となる。本発明の一態様として、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブとして、CK19 mRNAの一部に相補的な配列番号39から46に記載の配列に対して相同的、または相補的な配列の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドを含むプローブがあげられる。
【0039】
本発明におけるCK19 mRNA検出のためのオリゴヌクレオチドの組み合わせの一態様として、
(i)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号9から12に記載のいずれかの配列に対して相同的な配列からなるオリゴヌクレオチド、第一のプライマーが配列番号1に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有し、かつ特定核酸配列中の当該プライマーとの相同領域の5’末端部位は配列番号9から12に記載の配列の相補領域と重複する)、第二のプライマーが配列番号5に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基のオリゴヌクレオチド、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号39から41に記載のいずれかの配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドを含むプローブ、
(ii)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号13あるいは14に記載の配列に対して相同的な配列からなるオリゴヌクレオチド、第一のプライマーが配列番号2に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有し、かつ特定核酸配列中の当該プライマーとの相同領域の5’末端部位は配列番号13あるいは14に記載の配列の相補領域と重複する)、第二のプライマーが配列番号6に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基のオリゴヌクレオチド、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号42あるいは43に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドを含むプローブ、
(iii)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号15あるいは16に記載の配列に対して相同的な配列からなるオリゴヌクレオチド、第一のプライマーが配列番号3に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有し、かつ特定核酸配列中の当該プライマーとの相同領域の5’末端部位は配列番号15あるいは16の配列の相補領域と重複する)、第二のプライマーが配列番号7に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基のオリゴヌクレオチド、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号44あるいは45に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドを含むプローブ、
(iv)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号17あるいは18に記載の配列に対して相同的な配列からなるオリゴヌクレオチド、第一のプライマーが配列番号4に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有し、かつ特定核酸配列中の当該プライマーとの相同領域の5’末端部位は配列番号17あるいは18の配列の相補領域と重複する)、第二のプライマーが配列番号8に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基のオリゴヌクレオチド、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号46に記載の配列に対して相同的な配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドを含むプローブ、
があげられる。なお、(i)において、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブの相補配列と、第一のプライマーの相同配列および第二のプライマーの相補配列とは重複しないように設計する必要がある。
【0040】
本発明におけるCK19 mRNA検出のためのオリゴヌクレオチドの組み合わせのより好ましい態様として、
(i)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号19に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号29あるいは30に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号39あるいは40に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(ii)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号9に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号19に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号31あるいは32に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号39から41に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(iii)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号10に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号20に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号29あるいは30に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号39あるいは40に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(iv)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号10に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号20に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号31あるいは32に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号39から41に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(v)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号11に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号21に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号29あるいは30に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号40に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド、
(vi)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号11に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号21に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号31あるいは32に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号40あるいは41に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(vii)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号22に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号29あるいは30に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号40に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド、
(viii)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号12に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号22に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号31あるいは32に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号40あるいは41に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(ix)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号13に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号23に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号33あるいは34に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号42あるいは43に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(x)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号14に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号24に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号33あるいは34に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号42あるいは43に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(xi)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号15に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号25に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号35あるいは36に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号44あるいは45に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(xii)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号16に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号26に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号35あるいは36に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号44あるいは45に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチド、
(xiii)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号17に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号27に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号37あるいは38に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号46に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド、
(xiv)切断用オリゴヌクレオチドが配列番号18に記載の配列からなるオリゴヌクレオチドであり、第一のプライマーが配列番号28に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド(なお、第一のプライマーはその5’末端にプロモーター配列を有する)であり、第二のプライマーが配列番号37あるいは38に記載の配列より選ばれる一種のオリゴヌクレオチドであり、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号46に記載の配列からなるオリゴヌクレオチド、
があげられる。
【0041】
本発明のCK19 mRNAの測定方法では、各酵素(1本鎖RNAを鋳型とするRNA依存DNAポリメラーゼ活性を有する酵素(逆転写酵素)、RNase H活性を有する酵素、1本鎖DNAを鋳型とするDNA依存DNAポリメラーゼ活性を有する酵素、およびRNAポリメラーゼ活性を有する酵素)が必要となる。各酵素は、いくつかの活性を合わせ持つ酵素を使用してもよいし、それぞれの活性を持つ複数の酵素を使用してもよい。また、1本鎖RNAを鋳型とするRNA依存DNAポリメラーゼ活性、RNase H活性、および1本鎖DNAを鋳型とするDNA依存DNAポリメラーゼ活性の三つの活性を有する逆転写酵素に、RNAポリメラーゼ活性を有する酵素を添加するのみだけでなく、必要に応じてRNase H活性を有する酵素をさらに添加してもよい。前記逆転写酵素は、分子生物学的実験などで汎用されているAMV逆転写酵素、MMLV逆転写酵素、HIV逆転写酵素、あるいはこれらの誘導体が好ましく、AMV逆転写酵素とその誘導体が最も好ましい。また、前記RNAポリメラーゼ活性を有する酵素としては、分子生物学的実験などで汎用されているバクテリオファージ由来のT7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、SP6 RNAポリメラーゼ、およびこれらの誘導体を例示できる。
【0042】
本発明の一態様では、試料中のCK19 mRNAに前記切断用オリゴヌクレオチドを添加し、前記逆転写酵素のRNase H活性により前記特定塩基配列の5’末端部位で前記RNAを切断する。切断された前記RNAを鋳型として前記第一および第二のプライマーの存在下で前記逆転写酵素による逆転写反応を実施すると、第二のプライマーがCK19 mRNA内の特定塩基配列に結合し、前記逆転写酵素のRNA依存DNAポリメラーゼ活性によりcDNA合成が行なわれる。得られたRNA−DNA2本鎖は前記逆転写酵素のRNase H活性によってRNA部分が分解され、解離することによって第一のプライマーが前記cDNAに結合する。引き続いて、前記逆転写酵素のDNA依存DNAポリメラーゼ活性により特定塩基配列由来で、かつ5’末端にプロモーター配列を有する2本鎖DNAが生成される。該2本鎖DNAは、プロモーター配列下流に特定塩基配列を含み、前記RNAポリメラーゼにより特定塩基配列に由来するRNA転写産物を生産する。該RNA転写産物は、前記第一および第二のプライマーによる前記2本鎖DNA合成のための鋳型となって、一連の反応が連鎖的に進行し、前記RNA転写産物が増幅されていく。
【0043】
このような連鎖反応を進行させるために、前記各酵素に必須な既知の要素として、少なくとも、緩衝剤、マグネシウム塩、カリウム塩、ヌクレオシド−三リン酸、リボヌクレオシド−三リン酸を含むことはいうまでもない。また、反応効率を調節するための添加剤として、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジチオスレイトール(DTT)、ウシ血清アルブミン(BSA)、糖などを添加してもよい。
【0044】
たとえば、AMV逆転写酵素およびT7 RNAポリメラーゼを用いる場合は35から65℃の範囲で反応温度を設定することが好ましく、40から60℃の範囲で設定することがより好ましく、さらに好ましい態様は反応温度が43℃である。前記RNA増幅工程は一定温度で進行し、逆転写酵素およびRNAポリメラーゼが活性を示す任意の温度に反応温度を設定することが可能である。
【0045】
増幅されたRNA転写産物量は、既知の核酸測定法により測定することが可能である。前記測定法としては、電気泳動や液体クロマトグラフィーを用いた方法、検出可能な標識で標識された核酸プローブによるハイブリダイゼーション法などがあげられる。しかし、これらは操作が多工程であり、また増幅産物を系外に取り出して分析するため二次汚染の原因となる増幅産物の環境への飛散の危険性が大きい。これらの課題を克服するためには標的核酸と相補結合することによって蛍光特性が変化するように設計されたオリゴヌクレオチドプローブを用いるのが好ましい。該オリゴヌクレオチドプローブとしてモレキュラービーコンといったFRETを利用した既知のプローブを使用することができるが、プローブ設計やプローブ合成の容易性から、より好ましい方法として、インターカレーター性蛍光色素で標識され、かつ標的核酸と相補的2本鎖を形成するとインターカレーター性蛍光色素部分が前記相補的2本鎖部分にインターカレートすることによって蛍光特性が変化するように設計されたオリゴヌクレオチドプローブの存在下、前記核酸増幅工程を実施し、蛍光特性の変化を測定する方法があげられる(特許文献9および非特許文献11参照)。
【0046】
前記インターカレーター性蛍光色素としては特に限定されないが汎用されているオキサゾールイエロー、チアゾールオレンジ、エチジウムブロマイド、およびこれらの誘導体などが利用できる。前記蛍光特性の変化としては蛍光強度の変化があげられる。たとえばオキサゾールイエローの場合、2本鎖DNAにインターカレートすることによって510nmの蛍光(励起波長490nm)が顕著に増加することが知られている。前記インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブは、前記RNA転写産物上の標的RNAに対して相補的なオリゴヌクレオチドで、末端あるいはリン酸ジエステル部あるいは塩基部分に適当なリンカーを介してインターカレーター性蛍光色素が結合され、さらに、3’末端の水酸基からの伸長を防止する目的で該3’末端の水酸基が適当な修飾をなされている構造を有する(特許文献9および非特許文献11参照)。
【0047】
オリゴヌクレオチドへのインターカレーター性蛍光色素の標識は、既知の方法でオリゴヌクレオチドに官能基を導入し、インターカレーター性蛍光色素を結合させることが可能である(特許文献9および非特許文献11参照)。また、前記官能基の導入方法としては、市販されているLabel−ON Reagents(Clontech社製)などを用いても可能である。
【0048】
本発明の一態様として、試料に少なくとも、5’末端にT7プロモーター配列(配列番号47)を有する第一のプライマー、第二のプライマー、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブ、切断用オリゴヌクレオチド、AMV逆転写酵素、T7RNAポリメラーゼ、緩衝剤、マグネシウム塩、カリウム塩、ヌクレオシド−三リン酸、リボヌクレオシド−三リン酸、ジメチルスルホキシド(DMSO)を含む増幅試薬を添加し、反応温度40から60℃(好ましくは43℃)の一定温度で反応させると同時に反応液の蛍光強度を経時的に測定する方法を提供する。
【0049】
前記態様においては、蛍光強度を経時的に測定することから有意な蛍光増加が認められた任意の時間で測定を終了することが可能であり、核酸増幅および測定をあわせて通例30分以内で終了することが可能である。
【0050】
本発明の一態様として、前記試料中のCK19 mRNAを測定し、得られた蛍光強度比の情報と、既知の濃度のCK19 RNAを測定した際の蛍光強度比の情報を比較することで、試料中に存在した特定塩基配列の量(対象となったRNAコピー数)を算出することが可能である。特定塩基配列の検出は、例えば一定時間上記反応を行なった反応液に対して、特定塩基配列に対して相補的に結合し得る固定化および標識化プローブを用いるサンドイッチアッセイ法を適用することもできるが、前述したように、特定塩基配列に特異的に結合する、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブを使用する方法が好ましい。また、このプローブは前記RNA増幅反応を阻害しないため、その存在下で前記特定塩基配列の増幅を実施して、特定塩基配列の増幅の様子をモニタリングする方法が特に好ましい。なお、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブ共存下で特定塩基配列の増幅を行なう場合には、そのプローブ部分が伸長反応のプライマーとして機能しないように、例えばその3’末端にグリコール酸やビオチンを付加するなどするのが好ましい。そして増幅反応中にこのインターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが特定塩基配列と結合して発する蛍光信号を蛍光検出器によって測定し、そのプロファイルから得られる情報(例えば蛍光色素が発する蛍光の強度が一定の強度に達するまでに要した反応時間等)を既知量の標準RNAに関するプロファイルから得られる情報と比較することにより、特定塩基配列の存在の有無の確認、または増幅された特定塩基配列の量(RNAコピー数)から試料中に存在した特定核酸配列の量(対象となったRNAコピー数)を推定することができる。
【0051】
また、前記測定試薬に含まれる全ての試料を単一の容器に封入可能な点は特筆すべきである。即ち、一定量の試料をかかる単一容器に分注するという操作さえ実施すれば、その後は自動的にCK19 mRNAを測定することができる。この容器は、例えば蛍光色素が発する信号を外部から測定可能なように、少なくともその一部分が透明な材料で構成されてさえいればよく、試料を分注した後に密閉することが可能なものはコンタミネーションを防止する上で特に好ましい。
【0052】
前記態様のRNA増幅・測定方法は、一段階、一定温度で実施可能であるため、RT−PCRに比べて簡便で自動化に適した方法であるといえる。本発明によりCK19 mRNAの高特異性、高感度、迅速、簡便、一定温度かつ一段階の直接的増幅・検出が可能となった。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、比較的低温かつ一定温度(40から60℃、好ましくは43℃)条件下で、サイトケラチン19(CK19)RNAを1段階の操作で特異的で、かつ迅速・高感度に増幅し、また増幅産物を直接的に検出することができる。
【0054】
本発明では、試料中の標的RNA(CK19遺伝子のmRNA)をもとにして、DNA依存性RNAポリメラーゼのプロモーター領域を5’末端を有する2本鎖DNAが合成され、前記DNAを鋳型に多量の1本鎖RNAが生成され、さらに生成された1本鎖RNA量は飛躍的に増大し、インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブが、生成した1本鎖RNAと相補結合することにより蛍光増加を測定する工程において、蛍光強度が増加する過程を解析することにより、簡便、かつ迅速に初期RNA量を決定することが可能である。本発明のCK19 mRNA測定方法は、核酸増幅および測定の時間が30分以内であり、これは既存のRT−PCR法(通常2時間以上)、NASBA法(90分以上)、TMA法(90分以上)、RT−LAMP法(通常30から60分程度)による測定よりも同等以上の迅速性を有する。
【0055】
さらに、1段階操作でCK19遺伝子のmRNAを増幅・検出するためのオリゴヌクレオチドを提供すること、すなわちCK19 mRNAを増幅するためのオリゴヌクレオチド、およびCK19 mRNAを検出するためのオリゴヌクレオチドを提供することで、それを利用した簡便、迅速かつ高感度なCK19 mRNA発現細胞の測定方法、ならびに定量試薬を生化学・分子生物学・医療分野などに提供することができる。
【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらは一例であり、本発明はこれら実施例により限定されるものではない。
【0057】
実施例1 標準RNAの調製
後述の実施例で使用したCK19 RNA(以降、標準RNAと表記)は(1)から(2)に示す方法で行なった。
(1)GenBankに登録されているCK19の塩基配列(GenBank Accession No.NM_002276、1490塩基)のうち、160から1353番目の塩基(1194塩基)の2本鎖DNAをクローニングした。
(2)(1)で調製した2本鎖DNAを鋳型として、インビトロ転写を実施した。引き続きDNase I処理によりその2本鎖DNAを完全消化した後、RNAを精製して調製した。当該RNAは、260nmにおける吸光度を測定して定量した。
【0058】
実施例2 インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブの調製
インターカレーター性蛍光色素で標識されたオリゴヌクレオチドプローブを作製した。配列番号39に記載の配列の5’末端から9番目のT、配列番号40に記載の配列の5’末端から12番目のT、配列番号41に記載の配列の5’末端から13番目のA、配列番号42に記載の配列の5’末端から13番目のC、配列番号43に記載の配列の5’末端から7番目のT、配列番号44に記載の配列の5’末端から11番目のG、配列番号45に記載の配列の5’末端から10番目のC、配列番号46に記載の配列の5’末端から9番目のGの位置にLabel−ON Reagents(Clontech社製)を用いてアミノ基を導入し、さらに3’末端をビオチンで修飾した。前記アミノ基にインターカレーター性蛍光色素であるオキサゾールイエローを標識し、オキサゾールイエロー標識オリゴヌクレオチドプローブ(配列番号39から46)を調製した(非特許文献12参照)。
【0059】
実施例3 CK19 RNAの測定(その1)
表1に示す組み合わせのうち[1]から[28]に示す、切断用オリゴヌクレオチド、第一のプライマー、第二のプライマー、インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブ(以降INAFプローブと表記)を用いて、(1)から(4)に示す方法で、標準RNAの測定を行なった。なお表1のうち、配列番号19から22は配列番号1の部分配列、配列番号23および24は配列番号2の部分配列、配列番号25および26は配列番号3の部分配列、配列番号27および28は配列番号4の部分配列、配列番号29から32は配列番号5の部分配列、配列番号33および34は配列番号6の部分配列、配列番号35および36は配列番号7の部分配列、配列番号37および38は配列番号8の部分配列である。
【0060】
【表1】

(1)実施例1で調製した標準RNAをRNA希釈液(10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、0.1mM EDTA、0.5U/μL リボヌクレアーゼインヒビター、5.0mM DTT)を用い、10コピー/5μLになるように希釈し、これをRNA試料として使用した。
(2)以下の組成の反応液20.0μLを0.5mL容PCR用チューブ(Individual PCR tube with dome cap、SSI製)に分注し、これに前記RNA試料5μLを添加した。
【0061】
反応液の組成(濃度は酵素溶液添加後(30μL中)の最終濃度)
60.0mM Tris−塩酸緩衝液(pH8.6)
18.0mM 塩化マグネシウム
100mM 塩化カリウム
1.0mM DTT
各0.25mM dATP,dCTP,dGTP,dTTP
各3.0mM ATP、CTP、UTP、GTP
3.6mM ITP
1.0μM 第一のプライマー(当該プライマーには、各配列番号記載の塩基配列の5’末端にT7プロモーター配列(配列番号47)が付加されている。)
1.0μM 第二のプライマー
0.16μM 切断用オリゴヌクレオチド(当該オリゴヌクレオチドの3’末端の
水酸基はアミノ化されている。)
20.0nM INAFプローブ
6.0U リボヌクレアーゼ インヒビター(タカラバイオ社製)
13.0% DMSO
容量調整用蒸留水
(3)上記の反応液を、43℃で5分間保温後、以下の組成で、予め43℃で2分間保温した酵素液5.0μLを添加した。
【0062】
酵素液の組成(反応時(30μL中)の最終濃度)
2.0% ソルビトール
6.4U AMV逆転写酵素(ライフサイエンス社製)
142U T7 RNAポリメラーゼ(インビトロジェン社製)
3.6μg 牛血清アルブミン(タカラバイオ社製)
容量調整用蒸留水
(4)引き続きPCRチューブを直接測定可能な温調機能付き蛍光分光光度計を用い、43℃で反応させると同時に反応溶液の蛍光強度(励起波長470nm、蛍光波長510nm)を経時的に30分間測定した。
【0063】
酵素添加時の時刻を0分として、反応液の蛍光強度比(所定時刻の蛍光強度値÷バックグランドの蛍光強度値)が1.2を超えた場合を陽性判定とし、その時の時間を検出時間とした結果を表2に示した。
【0064】
【表2】

表1の組み合わせのうち、
(i)第一のプライマーが配列番号1の部分配列からなり、第二のプライマーが配列番号5の部分配列からなる組み合わせ(組み合わせ[1]から[8])、
(ii)第一のプライマーが配列番号2の部分配列からなり、第二のプライマーが配列番号6の部分配列からなる組み合わせ(組み合わせ[9]から[16])、
(iii)第一のプライマーが配列番号3の部分配列からなり、第二のプライマーが配列番号7の部分配列からなる組み合わせ(組み合わせ[17]から[24])、
および、
(iv)第一のプライマーが配列番号4の部分配列からなり、第二のプライマーが配列番号8の部分配列からなる組み合わせ(組み合わせ[25]から[28])、
いずれも10コピー/5μLの標準RNAを20分以内に検出した。なお、コントロール試験区(標準RNAの代わりにRNA希釈液を反応液に添加して測定)では、反応開始から30分後においても蛍光強度比1.2を超えることはなかった。
当該結果より、
(i)第一のプライマーが配列番号1に示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが配列番号5に示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドである組み合わせ、
(ii)第一のプライマーが配列番号2に示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが配列番号6に示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドである組み合わせ、
(iii)第一のプライマーが配列番号3に示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが配列番号7に示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドである組み合わせ、
または、
(iv)第一のプライマーが配列番号4に示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、第二のプライマーが配列番号8に示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドである組み合わせ、
のいずれかを用いてRNA増幅反応を行なうことにより、従来技術で最も汎用されるRT−PCR法によるCK19 mRNAの検出方法(通常2時間以上)と比較してCK19 RNAを迅速に検出することが示された。
【0065】
実施例4 CK19 RNAの測定(その2)
本発明のオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いて、実施例3よりも低濃度の標準RNAを測定した。
【0066】
(1)実験方法
オリゴヌクレオチドの組み合わせ、およびRNA試料を下記内容に変更した他は、実施例3と同様の方法で実施した。
【0067】
オリゴヌクレオチドの組み合わせ:
表1に示す組み合わせのうち、組み合わせ[5]から[8]、[10]、
[12]、[14]、[16]、[20]から[22]、[24]、[27]から
[30]を使用。
【0068】
RNA試料:
実施例1で調製した標準RNAを、実施例3(1)で使用のRNA希釈液を用い、
50コピー/5μL、10コピー/5μL、および10コピー/5μLに希釈
したものを使用。
【0069】
(2)実験結果
酵素添加時の時刻を0分として、反応液の蛍光強度比(所定時刻の蛍光強度値÷バックグラウンドの蛍光強度値)が1.2を超えた場合を陽性判定とし、そのときの時間を検出時間とした結果を表3に示す。
【0070】
【表3】

今回検討した全てのオリゴヌクレオチドの組み合わせにおいて、50コピー/5μLの標準RNAを20分以内に検出した。以上より、本発明のオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いてCK19 RNAを増幅させることで、50コピー/5μLといった低濃度のCK19 RNAであっても迅速に検出できることが示された。
【0071】
実施例5 特異性評価
本発明のオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いたCK19 RNAの増幅検出系における、他のサイトケラチンRNAに対する交差反応性について検討した。
【0072】
(1)サイトケラチン18(以降CK18と表記)RNA、およびサイトケラチン20(以降CK20と表記)RNAの調製
(1−1)GenBankに登録されているCK18の塩基配列(GenBank Accession No.NM_000224、1485塩基)のうち110から1434番目の塩基(1325塩基)、およびGenBankに登録されているCK20の塩基配列(GenBank Accession No.NM_019010、1817塩基)のうち、40から1710番目の塩基(1671塩基)の2本鎖DNAをクローニングした。
(1−2)(1−1)で調製した2本鎖DNAを鋳型として、インビトロ転写を実施した。引き続きDNase I処理によりその2本鎖DNAを完全消化した後、RNAを精製して調製した。当該RNAは、260nmにおける吸光度を測定して定量した。
(1−3)(1−2)で調製した標準RNAをRNA希釈液(10mM Tris−HCl緩衝液(pH8.0)、0.1mM EDTA、0.5U/μL リボヌクレアーゼインヒビター、5.0mM DTT)を用い、1010コピー/5μLになるように希釈した。
【0073】
(2)実験方法
オリゴヌクレオチドの組み合わせ、およびRNA試料を下記内容に変更した他は、実施例3と同様の方法で実施した。
【0074】
オリゴヌクレオチドの組み合わせ:
表1に示す組み合わせのうち、組み合わせ[8]、[10]、[21]、[28]
を使用。
【0075】
なお、
組み合わせ[8]は、第一のプライマーが配列番号1の部分配列からなり、第二の
プライマーが配列番号5の部分配列からなる組み合わせ、
組み合わせ[10]は、第一のプライマーが配列番号2の部分配列からなり、第二
のプライマーが配列番号6の部分配列からなる組み合わせ、
組み合わせ[21]は、第一のプライマーが配列番号3の部分配列からなり、第二
のプライマーが配列番号7の部分配列からなる組み合わせ、
組み合わせ[28]は、第一のプライマーが配列番号4の部分配列からなり、第二
のプライマーが配列番号8の部分配列からなる組み合わせ、
にそれぞれ相当。
【0076】
RNA試料:
RNA試料のうち、CK19は実施例3で使用した試料、CK18およびCK20
は本実施例の(1)で調製した試料を使用。
【0077】
(3)実験結果
酵素添加時の時刻を0分として、反応液の蛍光強度比(所定時刻の蛍光強度値÷バックグラウンドの蛍光強度値)が1.2を超えた場合を陽性判定とし、そのときの時間を検出時間とした結果を表4に示す。なお、表4においてN.D.とは酵素を添加して30分後の蛍光強度比が1.2未満(陰性判定)であった試料を意味する。
【0078】
【表4】

今回検討したオリゴヌクレオチドの組み合わせはいずれも、CK19 RNAのみを検出し、一方、CK18およびCK20は1010コピー/5μLという非常に多量のRNA試料であっても検出しなかった。以上の結果より、本発明のオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いたCK19 RNAの増幅検出系は、サイトケラチンのうちCK19を特異的に検出することが示された。
【0079】
実施例6 CK19 RNAの測定(その3)
本発明のオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いて、様々な濃度の標準RNAを測定し、検出時間と初期標準RNAとの関係を確認した。
【0080】
(1)実験方法
オリゴヌクレオチドの組み合わせ、RNA試料を下記内容に変更した他は、実施例3と同様の方法で測定した。
【0081】
オリゴヌクレオチドの組み合わせ:
表1に示す組み合わせのうち、[8]、[10]、および[30]を使用。
【0082】
RNA試料:
実施例1で調製した標準RNAを、実施例3(1)で使用のRNA希釈液を用い、
10コピー/5μL、10コピー/5μL、10コピー/5μL、および
10コピー/5μLに希釈したものを使用。
【0083】
(2)実験結果
酵素添加時の時刻を0分として、反応液の蛍光強度比(所定時刻の蛍光強度値÷バックグランドの蛍光強度値)が1.2を超えた場合を陽性判定とし、そのときの時間を検出時間とした結果を表5に、表5の結果を基に検量線を作成した結果を図1に示す。また、10コピー/5μLのRNA試料を測定したときの反応開始後20分後における蛍光強度比も合わせて表5に記載した。
【0084】
【表5】

今回検討した全てのオリゴヌクレオチドの組み合わせにおいて、酵素添加後15分以内に測定した全ての濃度の標準RNAを検出した。また、検出時間を縦軸に、初期の標準RNA濃度量(コピー数をlogで表したもの)を横軸にしてプロットしたところ、今回検討した全ての組み合わせにおいて、10コピーの低コピー領域から検出時間は初期RNA量依存的であり、検量線は線形一次曲線で近似することができた。すなわち、未知試料について、本発明のCK19 mRNAの測定を行ない、得られた検出時間を図1に示す検量線に当てはめることで、未知試料に含まれるCK19 mRNAの量を推測可能であることが示された。
【0085】
実施例7 CK19 RNAの測定(その4)
本発明のオリゴヌクレオチドの組み合わせを用いて、ヒトの肺腺癌由来の培養細胞抽出物中のCK19 mRNAの定量を行なった。
【0086】
(1)培養細胞の入手
ヒト肺腺癌由来培養細胞(PC−3)は、Health Science Research Resources Bank(HSRRB)より入手した(HSRRB No.JCRB0077)。
【0087】
(2)培養細胞の培養
PC−3細胞の培養は、HSRRBのホームページ(http://cellbank.nibio.go.jp/celldata/jcrb0077.htm)に記載の培地、培養条件に従い培養した。
【0088】
(3)リンパ球の単離
健常人の血液(全血)を採取し、Ficoll−Paque PLUS(GEヘルスケアバイオサイエンス社製)を用いて、付属のマニュアルに従いリンパ球の単離を行なった。
【0089】
(4)RNAの抽出
培養したPC−3細胞は、細胞数を計測し、5cells、50cells、5×10cells、5×10cellsになるように調製し、前記細胞のみ、あるいは前記細胞を5×10Cellsのリンパ球と混合した試料を作製し、RNeasy Mini Kit(QIAGEN社製)にて、キット付属のマニュアルに従い、RNAの抽出を行なった。なお、RNA抽出試料の量は50μLである。
【0090】
(5)CK19 RNAの測定
オリゴヌクレオチドの組み合わせ、RNA試料を下記内容に変更した他は、実施例3を同様の方法で測定した。
【0091】
オリゴヌクレオチドの組み合わせ:
表1に示す組み合わせのうち、組み合わせ[10]を使用。
【0092】
RNA試料:
本実施例の(4)に記載のRNA抽出試料を、実施例3(1)記載のRNA希釈液
を用いて10倍希釈後、そのうちの5μLを使用。
【0093】
(6)実験結果
酵素添加時の時刻を0分として、反応液の蛍光強度比(所定時刻の蛍光強度値÷バックグランドの蛍光強度値)が1.2を超えた場合を陽性判定とし、そのときの時間を検出時間とした結果を表6(PC−3細胞からのRNA抽出試料)および7(PC−3細胞とリンパ球との混合物からのRNA抽出試料)に、また表6および7の検出時間と、実施例6で得られた検量線(図1(b))を基に各RNA試料中に含まれるCK19 RNA量を計算した結果を表8(PC−3細胞からのRNA抽出試料)および9(PC−3細胞とリンパ球との混合物からのRNA抽出試料)に示す。
【0094】
【表6】

【0095】
【表7】

【0096】
【表8】

【0097】
【表9】

培養PC−3細胞からのRNA抽出試料、および前記細胞とリンパ球との混合物からのRNA抽出試料、いずれの試料も、検量線から求められた各RNA試料中のCK19 mRNA量は、使用した培養PC−3細胞の細胞数にほぼ比例しており、本発明のオリゴヌクレオチドを用いたCK19 RNAの増幅検出法が濃度依存的であることが示された。
【0098】
実施例8 CK19 RNA増幅産物の塩基配列解析
実施例7で得られた核酸増幅反応後の試料に含まれる2本鎖DNAの塩基配列解析を実施した。塩基配列解析の結果、全ての試料において、使用したオリゴヌクレオチドの組み合わせによってCK19 mRNAの増幅が起きたときに相当する塩基配列を確認した。
【0099】
つまり、本発明において増幅検出しているのはCK19 RNAであり、他の非特異的なRNAは増幅検出していないことを示している。実施例7に示したRNA抽出物には、CK19 RNAの他に雑多なRNAが混入しているが、本発明の測定方法はCK19 RNAのみを増幅検出しており、非常に特異性が高いといえる。また、多量の夾雑物(CK19 mRNA以外のRNA)存在下でも、使用した培養細胞の数に依存的、かつ非常に少量の培養細胞(5Cells)からの抽出物でも測定可能であり、非常に高感度、かつ正確性に優れた測定方法といえる。
【0100】
以上より、本発明のCK19 mRNAの測定方法は、未知試料中に含まれるCK19 mRNAを特異的に、かつ迅速、高感度に測定可能であり、さらには、検量線を用いることで、定量を行なうことも可能であることが示された。

【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】CK19 RNAの検量線。縦軸は蛍光強度比が1.2を超えた時間(検出時間、分)であり、横軸は測定に用いた初期の標準RNA量(コピー数)をlogで表したものである。また、各点から求めた線形一次曲線の式およびRの値を記載してある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中のサイトケラチン19(以降CK19と表記)mRNAの測定方法において、
前記測定方法が、CK19 mRNA内の特定塩基配列の一部と相同的な配列を有する第一のプライマー、および特定塩基配列の一部と相補的な配列を有する第二のプライマー(ここで第一または第二のプライマーのいずれか一方はその5’末端にRNAポリメラーゼのプロモーター配列が付加されたプライマーである)を用いた、
(1)RNAを鋳型とする、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素による特定塩基配列に相補的なcDNAを合成する工程、
(2)リボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素によるRNA−DNA2本鎖のRNAを分解する工程(1本鎖DNAの生成)、
(3)1本鎖DNAを鋳型とする、DNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素による、特定塩基配列、あるいは特定塩基配列に相補的な配列のRNAを転写可能なプロモーター配列を有する2本鎖DNAを生成する工程、
(4)RNAポリメラーゼ活性を有する酵素による前記2本鎖DNAを鋳型とするRNA転写産物を生成する工程、
(5)該RNA転写産物が、前記(1)の反応におけるcDNA合成の鋳型となることで、連鎖的にRNA転写産物を生成する工程、
(6)前記RNA転写産物量を測定する工程、
からなる測定方法であり、かつ、前記第一および第二のプライマーが、以下のいずれかであることを特徴とする、前記測定方法:
(i)前記第一のプライマーが配列番号1で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号5で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(ii)前記第一のプライマーが配列番号2で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号6で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(iii)前記第一のプライマーが配列番号3で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号7で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(iv)前記第一のプライマーが配列番号4で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号8で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項2】
請求項1に記載のCK19 mRNAの測定方法において、前記第一および第二のプライマーが、以下のいずれかであることを特徴とする、前記測定方法:
(i)前記第一のプライマーが配列番号19から22で示されたいずれかの塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号29から32で示されたいずれかの塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(ii)前記第一のプライマーが配列番号23あるいは24で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号33あるいは34で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(iii)前記第一のプライマーが配列番号25あるいは26で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号35あるいは36で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド、
(iv)前記第一のプライマーが配列番号27あるいは28で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドであり、前記第二のプライマーが配列番号37あるいは38で示された塩基配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチド。
【請求項3】
請求項1あるいは2に記載のCK19 mRNAの測定方法において、前記(6)の工程(RNA転写産物量を測定する工程)が、標的RNAと相補的な2本鎖を形成すると蛍光特性が変化するように設計された蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブ共存下で前記蛍光特性の変化を測定することによってなされることを特徴とする、測定方法。
【請求項4】
前記蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが、インターカレーター性蛍光色素をリンカーを介して結合させたインターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブであることを特徴とする、請求項3に記載の測定方法。
【請求項5】
前記インターカレーター性蛍光色素標識オリゴヌクレオチドプローブが配列番号39から46に示されるいずれかの塩基配列中、あるいは当該相補配列中の少なくとも連続した15塩基からなるオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、請求項4に記載の測定方法。
【請求項6】
請求項1から5に記載のCK19 mRNAの測定方法において、前記(1)の工程(RNAを鋳型とする、RNA依存性DNAポリメラーゼ活性を有する酵素によって特定塩基配列に相補的なcDNAを合成する工程)の前に、CK19 mRNA中の特定塩基配列を鋳型とし、
(i)前記特定塩基配列中の、第一のプライマーとの相同領域の5’末端部位と重複した領域、および当該部位から5’側に隣接する領域に対し相補的な配列を有する、切断用オリゴヌクレオチド、
および、
(ii)リボヌクレアーゼH(RNase H)活性を有する酵素、
を用いて、前記特定塩基配列の5’末端部位で前記RNAを切断する工程を行なうことを特徴とする、測定方法。
【請求項7】
前記切断用オリゴヌクレオチドが配列番号9から18で示されたいずれかの塩基配列からなるオリゴヌクレオチドであることを特徴とする、請求項6に記載の測定方法。
【請求項8】
CK19 mRNAを特異的に増幅または検出するためのオリゴヌクレオチドであって、配列番号1から8、または配列番号39から46に示されたいずれかの塩基配列中または当該相補配列中の、少なくとも連続する15塩基からなるオリゴヌクレオチドを含むことを特徴とする、前記オリゴヌクレオチド。
【請求項9】
請求項8に記載のオリゴヌクレオチドを少なくとも一つ含むことを特徴とする、CK19 mRNAの測定試薬。

【図1】
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【公開番号】特開2010−124770(P2010−124770A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−303637(P2008−303637)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】