説明

サイトメータ細胞計数及びサイズ測定システム

粒子パラメータを確定するシステムである。本システムは、たとえば血液学分析に共通するパラメータを光学的に確定することができる。こうしたパラメータには、赤血球数、血小板数、平均細胞体積及び赤血球分布幅があり得る。赤血球容積率を計算することも可能である。また、血液試料におけるヘモグロビン測定値も得ることができ、それにより、赤血球中のヘモグロビンの平均質量及び平均細胞ヘモグロビン濃度が計算され得る。本システムを携帯カートリッジタイプのサイトメータで実装することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子の特性を確定することに関する。特に、本発明は、粒子の数及びサイズを確定することに関し、より詳細には、細胞のこうした特性を確定することに関する。
本発明は、2005年4月29日に出願された米国仮特許出願第60/676,403号の利益を主張する。2005年4月29日に出願された米国仮特許出願第60/676,403号は、参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0002】
本発明に関する特許及び出願には、以下が含まれ得る。すなわち、2003年7月22日に出願され「Portable Flow Cytometry」と題する米国特許第6,597,438号、2005年11月29日に出願され「Optical Alignment Detection System」と題する米国特許第6,970,245号、1998年11月17日に出願され「Electrostatically Actuated Mesopump Having a Plurality of Elementary Cells」と題する米国特許第5,836,750号、2004年12月30日に出願され「Optical Detection System with Polarizing Beamsplitter」と題する米国特許出願第11/027,134号、2005年5月16日に出願され「Cytometer Analysis Cartridge Optical Configuration」と題する米国特許出願第10/908,543号及び2005年4月25日に出願され「A Flow Control System of a Cartridge」と題する米国特許出願第10/908,014号であり、それらはすべて参照により本明細書に援用される。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、血液細胞等の粒子を計数し、識別し、測定するシステムであり得る。
本発明を使用して、サイトメータチャネルにおいて光学検知を使用して細胞(たとえばRBC、PLT等)を計数して識別し、細胞サイズ(径、体積)を測定することができる。レーザ源(又は他の放射源)を、細長い線源として、或いは、2つの別個のスポット源として、サイトメータ又はフローチャネル内に集束させてもよい。細胞を、集束光を通ってサイトメータチャネルに流れるようにしてもよい。高品質集光光学系を使用して、細胞の鮮鋭像を形成し、長手方向軸がサイトメータチャネルの流れ方向に対して垂直に配置されることが好ましい1つ、2つ又はそれより多くの平行スリットを含む、マスク、プレート、又は不透明スクリーン上に照明を集束させてもよい。スリット間の距離は、たとえばおよそサイトメータチャネルに予期される平均細胞離隔距離であってもよい。スリットを含む不透明スクリーンを、1つ又は複数の検出器の正面に配置してもよい。細胞の像がスリットを横断する際、スリットに入射する光が部分的に遮られ、検出器における信号の低減をもたらす可能性があり、それにより幅が細胞径に比例するパルス波形が生成される。2つの隔置されたスリットが提供される場合、2つの波形により細胞流速及び細胞サイズの計算が可能になり得る。高い信号対雑音比を得ることができ、これにより、事象の容易な計数及び複数の細胞事象の識別が可能になる。パルス幅及び振幅により、さらに細胞タイプの識別が可能になり得る。
【0004】
場合によっては、細胞と光源との両方の像を検出器の正面に配置された二重スリット開口に投影させてもよい。二重スリット開口は、細胞を計数するために明確な幾何学的開口及び高い信号対雑音比を提供することができる。スリットからの信号により、細胞流速の正確な測定が可能になり得る。それは、細胞径の計算に役立つことができる。
【0005】
図1は、血液学分析のためのパラメータを得るシステム10の図を示す。血液試料に対する光学的手法により、4つの主な又は重要なパラメータ、すなわち赤血球(RBC)数(細胞/μL)、血小板(PLT)数(細胞/μL)、平均細胞体積(MCV)及び赤血球分布幅(RDW)を得ることができる。MCVは、実質上、RBCの平均サイズの測定値である。RDWはRBC間のサイズの変動値である。RBCのサイズの変動が大きいほど、RDWが大きい。
【0006】
RBC数は、分析中の血液の単位容積当りのRBCの実際の数である。HctはRBC×MCVである赤血球容積率であり、血液の酸素運搬能力(すなわち、分析中の単位容積における細胞のすべての総合的な能力)の測定値になり得る。Hctを、血液においてRBCが占有する空間の量、又は赤血球から構成される血液全体の比率とみなしてもよい。MCHは、事実上各RBCにおけるヘモグロビンの量である「平均細胞ヘモグロビン」である。MCHを、平均値、すなわちピコグラム単位での個々のRBCにおけるヘモグロビンのおよそ平均質量とみなし得る。MCH=Hb÷RBCである。Hbは分析中の試料の単位容積当りのヘモグロビンの量である。MCHCは、RBCの各々における単位容積当りのヘモグロビンの濃度とみなし得る「平均細胞ヘモグロビン濃度」である。MCHC=Hb÷Hctである。
【0007】
システム10は、本質的に光学技法から制御電子装置23を介して、細胞流速(FR)、測定時間(T)、希釈係数(DF)、計数されたRBCの数(NRBC)、計数された血小板の数(NPLT)、ヘモグロビンの量(Hb)及び事実上各細胞iの径(ミクロン)(drbc)を含む測定パラメータのセットを含む情報を提供してもよい。<drbc>は、セット{drbc}によって示される細胞の測定された細胞径の平均である。主要な計算パラメータの一部には以下が含まれ得る。すなわち、RBC=NRBC÷(DF×FR×T)、PLT=NPLT÷(DF×FR×T)、MCV=(π/6)×<drbc>、及びSDが測定量の標準偏差を示す場合、RDW=SD{[(π/6)drbc]}÷MCVである。計算されたパラメータには、以下が含まれ得る。すなわち、Hct=RBC×MCV、MCHC=Hb÷Hct及びMCH=MCHC×MCVである。
【0008】
試験のために血液試料11を取得してもよい。血液試料におけるヘモグロビン(Hb)の量又はヘモグロビン濃度を確定するために別個のモジュール12を使用してもよい。モジュール12は、ヘモグロビン吸収を使用してHbを確定してもよい。血液におけるヘモグロビンの量をグラム/リットルで表してもよい。
【0009】
血液試料11は試料調製モジュール13に進んでもよい。赤血球を非球形状から球形に変えてもよい。赤血球の元の形状は、平坦なカップ形状である傾向がある。この形状変更を、等積球状体化(isovolumetric sphering)と呼んでもよい。球状体化流体を、たとえば米国特許第4,412,004号においてOrnstein及びKimが述べているように、赤血球を球状細胞に形状を変えるために使用してもよい。球状体化流体は、単に試料の赤血球にのみ影響を与えることが分かる。
【0010】
また、試料の調製において、試料11の希釈があってもよい。希釈は、単位容積当りの赤血球の数を低減するためのものである。たとえば、血液はマイクロリットル当り約4百万〜5百万の赤血球を有する。目的は、単位容積当りの細胞の密度を低減し、適当な量、たとえば300対1の比で(それによりその比だけ単位容積当りの赤血球の数を低減することができる)試料を希釈することである。さらに、単位容積当りに血小板及び白血球の数も同様に低減することができる。通常、マイクロリットル当り約300000の血小板とマイクロリットル当り8000の白血球とがある。白血球の方が比較的少ないためそれらを分離する必要はない。それは、赤血球及び血小板の数に対するそれらの影響は最小限であるためである。流体を、図2に示すカード15の試料流体溜め又はチャネル14内に投入してもよい。使い捨てカートリッジ又はカード15は、本発明の実施の一部の単なる例示的な一例である。本発明を、カートリッジ又はカードなしに実現してもよい。試料及び球状体化/希釈流体の流速は、所望の希釈率を達成するように選択される。たとえば、試料は、約1マイクロリットル/分の速度でポート16内に流れ込んでもよく、球状体化流体及び希釈流体が、約300マイクロリットル/分の速度でポート17に押し込まれ、血液と合流するための合流部24に進み、球状体化チャネル25において血液と合流すると、結果として300対1の希釈率が得られることになる。これらの流速を、流体供給装置に配置されるフローセンサによって検知してもよい。流体力学的集束(hydrodynamic focusing)21によってコアを形成するように、試料11の流れを成形するために必要である適当な流速で、シース液をポート19に投入してもよい。試料、球状体化流体及び希釈流体並びにシース液の流速を、制御電子装置23から速度信号を受け取るフローコントローラ22によって制御してもよい。流体力学的集束21を設けたことにより、細胞が、チャネル31内を流れている間にコアに単一列を形成することになる。
【0011】
試料を、試料チャネル14との接続部分まで延在するに従って先細りとなるような形状のチャネル26に押し込んでもよい。先細り形状により、気泡を抑制し得る。球状体化試薬は、気泡抑制のために押込みチャネル26より幅が狭いか又は小さいチャネル27を通してポート17内に押し込まれる。ポート19から集束チャンバ29までのシースチャネル28は、同様の理由でわずかに小さくてもよい。シース液は、チャネル18から出てチャンバ29内に入る試料の周囲を流れ、サイトメータ光学チャネル31を通る流れのために単一列内に試料の粒子を流体集束(hydro focus)させてもよい。試料及び他の流体は、光学チャネル内を流れた後、チャネル32を介して廃棄物溜め33内に流れ込んでもよい。
【0012】
RBC、血小板及びWBC34は光学チャネル31内を流れてもよい。光学チャネル31内にある間、粒子34はレーザ35からの光ビーム37を横断する可能性がある。位置決め機構36は、レーザ35を、適当に光学チャネル34に向けられるように調整してもよい。位置決め機構を、電子装置モジュール23に接続しそれによって制御してもよい。一組のビーム調整光学系20が、チャネル31に対し光ビーム37のスポット分布及び集束を提供してもよい。集光光学系モジュール38による光ビーム37の集束を、制御電子装置モジュール23に接続され且つそこから制御信号を受け取る集束機構30によって促進してもよい。光37は、チャネル31を通過する際、チャネルを通過する粒子34によって瞬間的に遮られる可能性がある。光37は、光学チャネル31を通過した後、像品質の制御のために集光光学系モジュール38を通ってもよい。光ビーム37は、二重スリット不透明スクリーン、プレート又はマスク39を通りデュアルスリット検出器41まで進んでもよい。検出器41は、デュアルセンサ光検出器であっても通常の単一センサ光検出器であってもよい。3つ以上のスリットを有するマスクのための多センサ検出器であってもよい。たとえばデュアルスリット検出器41からの出力信号は、データの取得及び分析並びに報告生成のために制御電子装置23に進んでもよい。制御電子装置23には、汎用ユーザインタフェース(GUI)キーボード及びプリンタ42が接続されてもよい。制御電子装置モジュール23による出力は、電子装置モジュール23によって処理されたデュアルスリット検出器41からの一組の測定されたパラメータ43であってもよい。制御電子装置23は、フローチャネル31における粒子34の速度、パルスのサンプリングデータポイント及び他のパラメータ等、各用途の時間合せを行う精密クロックを組み込んでもよい。パラメータ43から、一組の計算されたパラメータ44が提供され得る。アルゴリズムモジュール45が、制御電子装置モジュール23に、データ分析、パラメータ計算及び他の処理動作のアルゴリズムを提供してもよい。
【0013】
ここで、システム10の重要な点は、データ又はパラメータの取得及び集計であり得る。アイテム39は、図1及び図3に示すような2つのスロット状開口又はスリット47及び48を有するマスク又は開口構成であってもよい。アイテム39は、任意の数の開口又はスリットを有してもよい。しかしながら、例示の目的で、2つのスリットについて言及するものとする。開口構成上には、単一列粒子34のコアを含むチャネル31の像が存在し得る。図3aに、アイテム39の拡大を示す。粒子34を像49(又はその陰)として表してもよい。
【0014】
図3aには、像46において表されるような1つの粒子34(粒子49として参照されてもよい)が例示の目的で示されており、この粒子は赤血球であってもよい。粒子49は、スリット47を横断する際、スリット47の光37を遮る可能性があり、検出器41は光37の低減を検知し、その遮りを表す信号を制御電子装置23に出力してもよい。この信号を、図3bの振幅対時間の表において波形51によって表すことができる。粒子49は、チャネル像46を通して移動し続ける可能性がある。距離53を移動した後、粒子49はスリット48を横断してスリット48の光37を遮り、検出器は光37の低減を検知してその遮りを表す信号を制御電子装置23に出力してもよい。この信号を、図3bに示すように波形52によって表すことができる。寸法54は、粒子49が距離53を移動するために要した時間である、波形51と波形52との間の時間(遷移時間)を表してもよい。寸法53は、スリットピッチとみなしてもよい。寸法55は、スリット47及び48の幅であってもよい。寸法56は、時間に関して示される波形又はパルス51及び波形又はパルス52の幅を表してもよい。寸法57は、パルス51及びパルス52の大きさ又は振幅を示してもよい。パルス51及び52の幅及び振幅により、細胞径及びタイプを確定することができる。粒子又は細胞34(すなわち粒子34像49)の径58は、較正定数×パルス幅(距離に関する)−幅55に等しくてもよい。いくつかの式には以下が含まれ得る。すなわち、細胞径58=C(パルス幅(距離))−スリット幅55、パルス幅(距離)=流速×パルス幅56(時間)、パルス幅(距離)=((スリットピッチ53)÷(遷移時間54))×パルス幅56(時間)である。
【0015】
図4a及び図4bは、それぞれ細胞像49の単純なモデル及びスリット検出器信号グラフの単純なモデルとを示す。細胞像49は、径寸法58を有する1つの円形細胞であってもよい。図4aにはまた、幅寸法55及び長さ寸法59を有する矩形スリット47又は48も示す。スリット開口の細胞及び照明に対して反対側における検出器からのパルス波形の単純なモデルに対し、細胞34の像49に対する実際の細胞34に対し、照明が回折なしで一様であるものと想定してもよい。パルス幅(距離)は、較正定数×細胞径58の量+スリット幅55に等しくてもよい。較正係数を、1に等しいものとして想定してもよく、それは、回折なしに焦点が合っている細胞像49となる。さまざまなタイプの細胞の相対パルス振幅57のおよその推定値は、光学系開口数(NA)に対しCextが総ミー(Mie)消散断面積であり、Cscaがミー散乱断面積である場合、
ext−Csca(開口数)
に等しい可能性がある。図4bのグラフは、それぞれ4.5ミクロン及び5.5ミクロンの径を有する赤血球を表す検出器パルス61及び62を示す。2ミクロン径を有する血小板のパルスは、パルス61より大幅に小さい。図5は、さまざまな細胞タイプ、すなわち血小板(PBT)、赤血球(RBC)及びビーズに対する、ミクロン寸法での細胞径、細胞断面積及びCext−Csca(NA=0.28)を含む散乱パラメータの表を示す。Cext−Cscaは、相対パルス振幅を推定するための基礎となり得るものである。
【0016】
アルゴリズムを使用してパルス幅、振幅及び較正係数(C)を計算してもよい。適用可能な式には、「パルス幅(距離)=C(径cell+スリット幅)」があり得る。
フォーカス感度に関し、約10ミクロンの焦点変化により、細胞又は粒子径に約0.5ミクロン誤差、すなわち径に約10%誤差又は容積に約30%誤差がもたらされる可能性がある。較正は、カード毎に大幅に変化する可能性がある。たとえば、較正係数(C)を血液分析の開始時に導入される5.43ミクロンビーズを用いて計算し、それを試料の後の血球に適用してもよい。したがって、たとえば精密ビーズを使用して現場で較正係数を確定する手段が必要な場合もある。
【0017】
図6aは、試験システムの放射源路(source leg)69を示す。平行ビーム63を有する670nmレーザ64があってもよい。光制御のための絞り67、ビーム調整光学系、及びサイトメータチャネル31にビーム37を集束させる集束光学系68があってもよい。細胞34内で光37の分散があってもよい。像46を、図6bに示すようにサイトメータチャネル31から二重スリット開口39上に投影させてもよく、図6は、集光光学系モジュール38の例示的な一例を示す。光37は像46と共にチャネル37から平行光学系71(たとえば、Mitutoyo M Plan Apo 10、NA=0.28)まで放射してもよい。光学系71は、チャネル31から距離72にあってもよい。距離72は、この例では約33.5mmであってもよい。平行光37は、光学系71から集束光学系73(たとえば、Mitutoyo M Plan Apo 10、NA=0.28)まで伝播してもよい。光学系73は、像46を含む光37を二重スリット開口39上に集束させてもよい。集光光学系38を通る光の量を制御する絞り74があってもよい。
【0018】
フォーカスモジュール又はオートフォーカスモジュール30があってもよい。オートフォーカスは、検出器41からの波形51信号、52信号に従って、光学系73の位置が光学系71及び/又は開口39に対してどれくらい移動すべきかを確定する閉ループ制御を含んでもよい。構成によっては、光学系71もまたフォーカス30に対して移動可能であってもよい。
【0019】
図7a及び図7bは、開口39上の焦点合せされたか又は焦点合せされていない像46の特徴を表す波形51及び52の図を示す。これらの波形は、検出器41内にもたらされる幾分かの雑音を含む可能性のある実際の検出器41出力波形に似ている。制御電子装置23が像46の焦点を確定するために依存する可能性のある基準は、ゼロ振幅より上の波形51、52の最高振幅75である。この振幅又は急上昇の距離75は、好適な焦点を得るために最小に維持されるべきである。図7aは、像46に焦点が合っている場合の波形52、53の例示的な一例である。図7bは、像46の焦点がずれている場合の波形53、53の例示的な一例である。制御電子装置23は、検出41及びフォーカスモジュール30と共に、波形51、52の振幅75が最小であるようにレンズ73及び/又は74の位置を調整し又は移動させてもよい。スリット開口上に像の焦点を合わせる必要があるのは、こうした焦点がカートリッジ毎に異なる可能性があるためである。焦点合せを、精密ビーズを用いて行ってもよい。その後、較正係数を、精密試験ビーズの径を知ることによって計算してもよい。
【0020】
図8aは、正規化信号対スキャン距離のグラフの実線76によって表すように、676.7nmレーザ及びf/50集束光学系を備えるシステムにおいて5ミクロンビーズデータを使用する静的試験タイプの結果を示す。信号対雑音比は約2224であってもよい。破線77は、図4aで説明したモデルビーズを使用する測定プロファイルに適合するものである。図8bは、粒子34が示される像46の投影を示す。
【0021】
RBC及びLPTの光学的確定のためのアルゴリズムがあってもよい。試料11をシステム10に投入し、シース流速度を確定し、希釈係数を計算してもよい。両パルスで閾値が超過する事象を検出してもよい。事象を、単純な事象と複雑な事象とに分離してもよい。図3bは、単純な事象の一例を示す。図9aは、複雑な事象の一例を示す。複雑な事象は、第1のスリット47を横断する第1の粒子又は細胞34の像46と、第1の粒子又は細胞34の像46が第2のスリット48を横断する前に第1のスリット47を横断する別の粒子又は細胞34の少なくとも別の像46と、を含んでもよい。第1の細胞34がスリット47及び48を横断する(図3a)ことにより、波形51及び52がそれぞれもたらされる。第1の粒子34がスリット48を横断する前にスリット47を横断する他の粒子34により、波形78がもたらされる可能性があり、それは図9aにおける波形52の前に現れる。他の粒子34の横断により、波形79がもたらされる可能性がある。波形51及び52の間の距離54は、波形78及び79の間の距離54と同じである可能性がある。それは、第1の粒子34及び第2の粒子34に対する流速が同じであるためである。波形51、52及び78、79に対する振幅57及びパルス幅56は同じであることが分かり、それは、第1の粒子及び第2の粒子がおよそ同じ径及びサイズを有する可能性があることを意味する。これらの粒子は同じ種類である可能性がある。
【0022】
図9bもまた複雑な事象を示す。第1の粒子34の像46は第1のスリット47を横断する可能性があり、像はまた、第1の粒子34が第2のスリット48を横断するように示される前に第1のスリット47を横断する第2の粒子34を示す場合もある。この動作を、検出器41からの波形によって表してもよい。波形51は、第1のスリット47を横断する像46の第1の粒子34を表し、波形81は、第1のスリット47を横断する第2の粒子34を表す。波形52は、第2のスリット48を横断する第1の粒子34の像を示してもよく、波形82は、第2のスリット48を横断する像46の第2の粒子34を示してもよい。
【0023】
波形51と波形52との間の距離54は、波形81と波形82との間の距離54と同じであることが分かる。それは、第1の粒子34及び第2の粒子34に対し流速がおよそ同じである可能性があるためである。波形51及び81のパルス幅56の振幅57は異なることが分かる。波形51のパルス振幅57及び幅56は、波形81のパルス振幅及び幅より著しく大きい。それは、2つのサイズの異なる粒子34を示す可能性がある。たとえば、波形51及び52がRBCを表す場合、波形81及び82は、特に粒子のタイプが血小板であることが分かっている場合、血小板を表す可能性がある。このため、粒子34は互いに識別可能であることが可能であり、制御電子装置23に対する検出器41情報からデータを取得し、パラメータを測定し計算することができる。
【0024】
RBC及びPLTの光学的確定のアルゴリズムに対して試料11を繰り返すために、シース流速を確定してもよく、希釈係数を計算してもよい。両パルスが閾値を超過する関連事象を検出してもよい。事象を、単純な事象と複雑な事象とに分離してもよい。最初に単純な事象を処理してもよい。粒子34の局所流速を測定してもよく、時間におけるパルス幅を測定してもよい。距離におけるパルス幅、すなわち時間÷速度を計算してもよい。パルス振幅を、検出器41からの波形信号から計算してもよい。振幅対径データを生成し表及び/又はグラフの形式で提示してもよい。そして、PLT事象、複数のPLT事象、単一RBC事象及び複数のRBC事象を分類してもよい。RBCパラメータを、1×単一RBC事象+2×デュアルRBC事象+3×トリプルRBC事象+…として累積してもよい。PLTパラメータを、1×単一PLT事象+2×デュアルPLT事象+3×トリプルPLT事象+…として累積してもよい。
【0025】
そして、複雑な事象を処理してもよい。各複雑な事象を、単純な事象に分解してもよい。次に、本明細書で述べるような単純事象プロセスを後者の事象に適用してもよい。希釈係数補正をRBCパラメータ及びPLTパラメータに適用してもよい。そして、RBCパラメータ及びPLTパラメータを報告してもよい。
【0026】
本明細書で説明するアルゴリズムによりMCV及びRDWの光学的確定を行ってもよい。両パルスにおいて閾値を超過する事象を検出してもよい。局所流速及び時間におけるパルス幅を測定してもよい。距離におけるパルス幅を時間÷速度で計算してもよい。パルス振幅を計算してもよい。事象に対し振幅対径を生成してもよい。事象を検査し識別された単一RBC各々を留意してもよい。1つ又は複数の事象がRBCとして識別される場合、パルスを細胞径に変換してもよい。使用される式は、「パルス幅=C(細胞径+スリット幅)」であってもよい。径を累積してもよく、細胞径を細胞体積に変換してもよい。こうした変換に対し、使用される式は、「細胞体積=(π/6)×(細胞径)」であってもよい。そして、MCV及びRDWを計算し報告してもよい。
【0027】
図10a、図10b、図10c及び図10dは、本発明を立証するために構築された研究室試験台に対する典型的なビーズデータを示す、それぞれ測定プロット80、83、90及び98である。図10aは、事象の数対メートル/秒(m/s)での流速の分布を示す。図10bは、事象の数対ミクロンでの細胞径の分布を示す。これらのデータからの結果としての確定により、0.241ミクロンの標準偏差、84.33のMCV及び13.3のRDWで5.430ミクロンの平均径が示され得る。図10cは、136.1のカウント率に対するミリボルトでのパルス振幅対ミクロンでの細胞径を示す。図10dは、事象の数対ミリボルトでのパルス振幅の分布を示す。ここで、平均SN比は61.224であるようと思われる。
【0028】
図11a、図11b、図11c及び図11dは、PLT及びRBCの混合物の試験及び測定に関連する同様の結果である。図11aは、事象の数対m/sでの流速を含むヒストグラム99を示す。図11bは、事象の数対ミクロンでの細胞径を示す。1ミクロンの辺りの棒状の塊84と、4.5ミクロンの辺りの棒状の塊85とを留意することができる。これらの塊84及び85は、それぞれPLT及びRBCを表すことが分かる。RBCに対し、0.462ミクロンの標準偏差、52.57のMCV及び29.7のRDWで平均径が4.602ミクロンであることが分かる。
【0029】
図11cは、事象の数対ミリボルトでのパルス振幅を示す。約−45ミリボルトを中心とする棒状の塊86と約−12ミリボルトを中心とする棒状の塊87とがあることが分かる。平均SN比は約39.911であることが分かる。塊86である最大絶対値はRBCを表すことが分かり、他方の塊87はPLTを表すことが分かる。塊84及び86並びに塊85及び87は、互いに確証するように見える。こうした確証を図11dに示し、そこでは、事象に対するパルス振幅を図11b及び図11cそれぞれからの細胞径でプロットしている。このプロットは、PLT及びRBCに対応する2つのグループ88及び89をもたらすことが分かる。ここでのカウント率は約256.3であってもよい。約2.5ミクロンでの塊84及び85間の分割と、約22ミリボルトでの塊86及び87間の分割とを留意することができる。これらの値を図11dの座標として使用し、その座標を通して約45度で線97を引くことにより、PLTのグループ88とRBCのグループ89との間の適当な分割線を示すことができる。
【0030】
図12a及び図12bは、血液試料における粒子タイプ(すなわち、RBC及びPLT)の光学的識別のための確証を提供する。実験は、試料のタイプとして球状体化前の血液を扱った。これらのプロットから、図12aのおける2つのグループ91及び92と図12bにおけるグループ93及び94がそれぞれPLT及びRBCを表すことが分かる。線95及び96は、図11dにおけるグループ88及び89に対する線97と同様に、2つのグループ91及び92並びにグループ93及び94それぞれを分割することができる。
【0031】
本明細書では、事柄の一部は、仮言的又は予言的性質のものであり得るが、異なる表現様式又は時制で述べられている。
本発明を少なくとも1つの例示的な例に関して説明したが、当業者には、本明細書を読むことにより多くの変形及び変更が明らかとなろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、こうした変形及び変更をすべて包含するように従来技術に鑑みて可能な限り広く解釈されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】粒子計数及びサイズ測定のシステムのブロック図である。
【図2】例示的な血液分析カートリッジを示す図である。
【図3a】フローチャネル及び分析される粒子の像を含むデュアルスリット開口の図である。
【図3b】粒子の像がスリットを横断する際の粒子のデュアルスリット検出器からの信号の波形を示す図である。
【図4a】スリットを横断する際の単一細胞の像を示す図である。
【図4b】細胞の像がスリット開口を横断する際のその細胞の2つのサイズの信号のグラフである。
【図5】さまざまな粒子タイプに対するパラメータの表である。
【図6a】計数及び測定のシステムの放射源部の図である。
【図6b】ビーム調整のための集光光学系モジュールの図である。
【図7a】粒子がデュアルスリット開口を横断するフローチャネルの焦点合せされた像を示すデュアルスリット検出器からの波形を示す図である。
【図7b】粒子がデュアルスリット開口を横断するフローチャネルの焦点合せされていない像を示すデュアルスリット検出器からの波形を示す図である。
【図8a】正規化信号対スキャン距離に関するビーズの静的試験結果及びモデルを示す図である。
【図8b】粒子を含むフローチャネル像の投影を示す図である。
【図9a】およそ同じサイズの粒子の複合波形の検出器波形の図である。
【図9b】サイズの異なる粒子の複合波形の検出器波形の図である。
【図10a】流速のヒストグラムである。
【図10b】測定されたパルス幅(細胞径)のヒストグラムである。
【図10c】測定されたパルス振幅のヒストグラムである。
【図10d】径が5.43ミクロンの精密ビーズに対するパルス振幅対細胞径の散布図である。
【図11a】測定された流速のヒストグラムである。
【図11b】測定された細胞径のヒストグラムである。
【図11c】測定されたパルス振幅のヒストグラムである。
【図11d】血小板及び赤血球の混合物に対するパルス振幅対細胞径の散布図である。
【図12a】試料におけるいくつかのタイプのセルを示すパルス振幅対細胞径の散布図である。
【図12b】試料におけるいくつかのタイプのセルを示すパルス振幅対細胞径の散布図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒子分析システムであって、
チャネルと、
前記チャネルに近接する投影機構と、
前記チャネルに近接するスリット開口を有するスクリーンと、
前記スリット開口に近接する検出器と
を具備する、粒子分析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の粒子分析システムにおいて、
前記チャネルは、血液試料の粒子を搬送するためのものであり、
前記投影機構は、前記チャネルにおける前記粒子の像を前記スクリーンに表示するためのものであり、
前記検出器は、前記スリット開口を通過する前記像の一部を検出するためのものであり、
前記検出器は、前記スリット開口を通過する前記粒子の前記像を検出すると信号を出力する、粒子分析システム。
【請求項3】
請求項2に記載の粒子分析システムにおいて、
前記信号の幅は、前記粒子の径に関する情報を提供し、
前記信号の振幅は、種類の異なる粒子を識別するための情報を提供し、且つ/又は
前記信号の前記振幅は、前記血液試料における前記粒子の数を提供する、粒子分析システム。
【請求項4】
請求項3に記載の粒子分析システムにおいて、
前記粒子は赤血球及び血小板であり、
前記数は赤血球の数及び血小板の数を含み、
前記数の赤血球の該赤血球の径が概略確定され、
前記数の赤血球の平均細胞体積が概略確定され、
前記数の赤血球の赤血球分布幅が概略確定され、且つ/又は
前記赤血球の前記数と前記赤血球分布幅との積から赤血球容積率が概略確定される、粒子分析システム。
【請求項5】
請求項4に記載の粒子分析システムであって、
前記血液試料におけるヘモグロビンの量を概略確定するヘモグロビンモジュールをさらに具備し、
前記ヘモグロビンの量を前記赤血球の数によって割ることにより平均細胞ヘモグロビンが概略確定され、且つ/又は
前記赤血球の数を前記赤血球容積率によって割ることにより平均細胞ヘモグロビン濃度が概略確定される、粒子分析システム。
【請求項6】
粒子パラメータを確定する方法であって、
流体試料の粒子をフローチャネル内で単一列内になるように流体力学的に集束させるステップ、
前記フローチャネル内に光を投影するステップ、
前記フローチャネル内の前記粒子の像を多重スリット開口上に集束させるステップ、
前記開口からの光の遮りを検出するステップ、
前記光の遮りを、該光の遮りを表す波形に変換するステップ、及び
前記波形を前記粒子に関するデータに処理するステップ
を含む、粒子パラメータを確定する方法。
【請求項7】
請求項6に記載の粒子パラメータを確定する方法において、
前記粒子に関する前記データは、
流速、
測定時間、
前記粒子の数、
時間でのパルス幅、
パルス振幅、及び/又は
粒子遷移時間
を含む、粒子パラメータを確定する方法。
【請求項8】
請求項7に記載の粒子パラメータを確定する方法であって、さらに、
前記粒子のヒストグラムを作成するステップであって、それにより前記流体試料における第1のタイプの粒子の数と第2のタイプの粒子の数を得る、ステップ、
容積当りの前記第1のタイプの粒子数を計算するステップ、
容積当りの前記第2のタイプの粒子数を計算するステップ、
前記第1のタイプの粒子の平均粒子体積(MCV)を計算するステップ、及び
前記第1のタイプの粒子の分布幅(RDW)を計算するステップ
を含む、粒子パラメータを確定する方法。
【請求項9】
粒子パラメータ確定システムであって、
フローチャネルと、
前記フローチャネルの第1の側に位置する光源と、
前記フローチャネルの第2の側に位置する検出器と、
前記フローチャネルと前記検出器との間に位置する開口を有するマスクと、
前記フローチャネルにおける粒子の像を前記マスクに投影する光学系構成と
を具備する、粒子パラメータ確定システム。
【請求項10】
請求項9に記載の粒子パラメータ確定システムにおいて、
前記マスクは第1のスリット開口と第2のスリット開口とを備え、
前記粒子の前記像は、該粒子の該像が前記第1のスリット開口及び第2のスリット開口を横断する際に前記検出器への光を遮り、
前記検出器は、前記第1のスリット開口を横断する前記粒子の前記像を表す第1の信号と、前記第2のスリット開口を横断する前記粒子の前記像を表す第2の信号とを出力し、
前記フローチャネルにおける粒子の像の前記信号からの情報は、
第1のタイプの粒子の数、
第2のタイプの粒子の数、
少なくとも1つのタイプの粒子の平均粒子体積、及び/又は
少なくとも1つのタイプの粒子の粒子分布幅
を提供する、粒子パラメータ確定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4A】
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【図4b】
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【図5】
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【図6A】
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【図6b】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8a】
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【図8B】
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【図9a】
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【図9b】
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【図10a】
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【図10b】
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【図10c】
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【図10d】
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【図11a】
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【図11b】
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【図11c】
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【図11d】
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【図12a】
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【図12b】
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【公表番号】特表2008−539446(P2008−539446A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−509209(P2008−509209)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/016440
【国際公開番号】WO2006/119106
【国際公開日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(500575824)ハネウェル・インターナショナル・インコーポレーテッド (1,504)
【Fターム(参考)】