説明

サウナ用ガス燃焼ヒーター

【課題】蓄熱体に散水した水量分の蒸気を発生させ、比較的に短い散水間隔で確実に蒸気を発生させ、サウナ室内の入浴者が恐怖感を抱かずに心地よい入浴感やリラックス感を味わえるサウナ用ガス燃焼ヒーターを提供する。
【解決手段】筐体11内の上部空間12及び下部空間21に水供給装置13と熱源装置22とを配置し、水供給装置13は鹿威しの如く揺動可能に支持された水受け容器14を備え、水補給装置16からの給水により所定量の水が溜まると貯水重量により揺動して排水を繰り返す。熱源装置22はガス燃焼装置23及び熱交換ダクト24を備え、これら周囲にこれらを埋め尽くすように下部空間21の高さ方向全体に密集して蓄熱用の多数の石塊27が詰め込まれ、ガス燃焼装置23と熱交換ダクト24とからの放熱により石塊27が加熱されてサウナ室内が加温され、同時に水供給装置13により間欠的に多数の石塊27に降り注がれた水が蒸気化する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サウナ用ガス燃焼ヒーターに関し、更に詳細には、サウナ室内に設置して該サウナ室を加温すると同時に、間欠的に蒸気を発生させてサウナ室を適正湿度に加湿するサウナ用ガス燃焼ヒーターに関する。
【背景技術】
【0002】
ガス燃焼式のサウナ用ヒーターとしては、特許文献1に開示された「ガス炊き湿式遠赤外線放射サウナヒーター」が従来技術として知られている。かかる従来のガス炊き湿式遠赤外線放射サウナヒーターは、サウナヒーター本体の底部にケーシングで覆われたガスバーナ燃焼器を配置し、このガスバーナ燃焼器での燃焼による燃焼炎及び燃焼ガスを通過させて加熱される外部フィン付蓄熱管並びに遠赤外線放射管をサウナヒーター本体内に格納して構成されている。外部フィン付蓄熱管は、ガスバーナ燃焼器に直列に接続された状態でほぼ水平方向に配置され、遠赤外線放射管は、外部フィン付蓄熱管に接続されて蛇行状にサウナヒーター本体内に配置されている。外部フィン付蓄熱管の上にはサウナストーンが配置され、このサウナストーンに噴霧ノズルから断続的に水が噴霧され、これにより発生した蒸気によってサウナ室が所定湿度に維持される。
【0003】
このように従来のガス炊き湿式遠赤外線放射サウナヒーターは、単一のガスバーナ燃焼器でサウナストーンと遠赤外線放射管とを加熱することにより、それぞれ別のガスバーナ燃焼器でサウナストーンの加熱と遠赤外線放射管とを加熱していた旧型の装置に比較して設備費の低減化を図ったものである。このような目的で創作された従来のガス炊き湿式遠赤外線放射サウナヒーターは、サウナヒーター本体の底部に配置されたガスバーナ燃焼器に直列に接続された外部フィン付蓄熱管の上部に蓄熱体としてのサウナストーンを適当量乗せて加熱し、このサウナストーンに断続的に水を掛けて蒸気を発生させるようにしたものであり、サウナ室内は、専らサウナヒーター本体内に蛇行状に屈曲さて配置された遠赤外線放射管により加温される。このサウナヒーター本体の前面には、安全保護柵が取り付けられ、サウナ室に入った入浴者は、安全保護柵を通して蛇行状に屈曲している遠赤外線放射管を見ることになる。
【0004】
また、従来のガス炊き湿式遠赤外線放射サウナヒーターでは、蒸気によりサウナ室の加湿を行う際、コントローラによる自動制御により、給水管に取り付けられた給水電磁弁が断続的に開かれ、これにより噴霧ノズルからサウナストーンに水が噴霧されて蒸気となり、安全保護柵からサウナ室に広がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−029422号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように従来のガス炊き湿式遠赤外線放射サウナヒーターでは、蒸気を発生させる蓄熱体としてのサウナストーンが、外部フィン付蓄熱管の上部に僅かな数だけ乗せられているので、このサウナストーンに多数の噴霧ノズルから一気に水が掛かると、ほぼ全てのサウナストーンが水に濡れ、すぐに温度の低下を招くことになる。そのため、一瞬だけ蒸気が発生するが、噴霧した全ての水量分を蒸気化させることはできず、また温度の低下したサウナストーンの蓄熱が回復するのに時間が掛かる、という問題があった。
【0007】
さらに、従来のガス炊き湿式遠赤外線放射サウナヒーターでは、サウナヒーター本体内に蛇行状に屈曲された遠赤外線放射管が、サウナ室に露出した構造となっているため、サウナ室内の温度が上昇してガスバーナ燃焼器での燃焼が低燃焼若しくは燃焼停止状態になると、サウナストーンの温度も急速に低下してしまうので十分な蓄熱維持がなされない、という問題があった。
【0008】
しかも、従来のガス炊き湿式遠赤外線放射サウナヒーターでは、サウナ室の加湿が行われる際に、突然、噴霧ノズルから水が噴霧されてサウナストーンに降り注ぎ、蒸気が安全保護柵からサウナ室内に拡がることから、入浴者は、心理的に大きな不安感を抱き、リラックスしてサウナ室内に入っていることができない、という問題もあった。
【0009】
加えて、従来のガス炊き湿式遠赤外線放射サウナヒーターでは、サウナ室に入った入浴者が、サウナヒーター本体を見たとき、安全保護柵を通し内部に配置されている蛇行した遠赤外線放射管を直接見ることになるので、機械室或いはボイラー室にでも入っているような違和感を受け、心地よい入浴感やリラックス感を味わうことができない、という問題があった。
【0010】
本発明の目的は、かかる従来の問題点を解決するためになされたものであり、蓄熱体に散水した水量分の蒸気を発生させることができ、さらに、比較的に短い散水間隔でも確実に蒸気を発生させられ、しかも、サウナ室内の入浴者が恐怖感を抱くことなく、心地よい入浴感やリラックス感を味わうことができるサウナ用ガス燃焼ヒーターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、サウナ室に設置し、可燃ガスの燃焼による熱を用いてサウナ室内を加温するサウナガス燃焼用ヒーターであり、その特徴とするところは筐体内の上部空間に配置され、所定量の水を間欠的に供給する水供給装置と、この水供給装置より下方における前記筐体内の下部空間に配置された熱源装置とを備え、前記水供給装置が、所定量の水が溜まると貯水重量により揺動して排水動作を繰り返す水受け容器と、この水受け容器に水を補給し続ける水補給装置とを備え、前記熱源装置が、前記可燃ガスを燃焼させるガス燃焼装置と、このガス燃焼装置から出る燃焼ガスを通過させる熱交換ダクトと、前記ガス燃焼装置と前記熱交換ダクトとを埋め尽くすように前記筐体の前記下部空間にその高さ方向全体に密集して詰め込まれた蓄熱用の多数の石塊とを備え、前記ガス燃焼装置により前記可燃ガスが燃焼され、前記燃焼ガスが前記熱交換ダクト通過して排気されるとき、前記ガス燃焼装置と前記熱交換ダクトとからの放熱によりその周囲空気と多数の前記石塊とが加熱され、前記サウナ室内が加温されると同時に前記水供給装置により間欠的に供給される水が、多数の前記石塊に降り注がれて蒸気を発生することにある。
【0012】
本発明に係るサウナ用ガス燃焼ヒーターの一実施態様としては、多数の通水穴を形成した散水板を備え、該散水板は、前記筐体内の前記上部空間と前記下部空間との間に設置され、前記水供給装置の前記水受け容器から間欠的に排水された所定量の水が前記散水板の前記各通水穴から前記筐体内の前記下部空間に落ち、前記熱源装置と前記熱交換ダクトとにより加熱された前記石塊全体に降り注ぐ。
【0013】
本発明に係るサウナ用ガス燃焼ヒーターの他の実施態様としては、前記熱交換ダクトが、ジグザグ状に屈曲された前列の放熱管と後列の放熱管とを備え、これら各放熱管が前記下部空間内の下方部から上方部まで配置され、前記ガス燃焼装置と前記熱交換ダクトとの両方からの放熱を利用してそれら周囲の空気と多数の前記石塊を加熱する。
【0014】
本発明に係るサウナ用ガス燃焼ヒーターのさらに他の実施態様としては、前記サウナ用ガス燃焼ヒーターが、前記水受け容器と前記散水板との間に傾斜して立て掛けられた流水板を備え、該流水板の表面には多数の凸部が形成され、前記水受け容器から流れ出た水が前記流水板の前記表面に掛けられて流れ落ちるとき、多数の前記凸部により拡散されながら前記散水板に流れ落ちる。
【0015】
本発明に係るサウナ用ガス燃焼ヒーターのさらに他の実施態様としては、前記流水板の前記表面に形成された多数の前記凸部が、石の断片を取り付けて形成されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明のサウナ用ガス燃焼ヒーターによれば、蓄熱用の多数の石塊が、筐体の下部空間に配置されたガス燃焼装置と熱交換ダクトとを埋め尽くすように下部空間の高さ方向全体に密集して詰め込まれているので、水受け容器から流れ出た水は、上方の石塊から下方の石塊に順番に触れながら流れ落ち、これにより水受け容器から流れ出た水量分すべてが瞬時に蒸気化し、しかも多数の石塊の温度回復も早く、水受け容器による次の散水に対してもすぐに蒸気を発生させることができる。
【0017】
また、本発明のサウナ用ガス燃焼ヒーターでは、筐体内に配置された熱交換ダクトが、多数の石塊で埋め尽くされているので、サウナ室に入った入浴者は、筐体の前面に取り付けられた保護柵から石塊しか見えず、従来装置のように機械室或いはボイラー室にでも入っているような違和感を受けることもなく、心地よい入浴感やリラックス感を味わうことができる。更に、入浴者は、水受け容器が定期的に揺動し、該水受け容器に溜まった水が加熱された石塊に流れ落ちる様子を見ることができるので、蒸気発生の仕組みが明瞭に認識でき、その結果、入浴者が心理的な不安感を抱くこともなく、リラックスしてサウナ室内で入浴を楽しむことができる。
【0018】
また、本発明のサウナ用ガス燃焼ヒーターによれば、水供給装置の水受け容器が配置された筐体内の上部空間と熱源装置が配置された下部空間との間に散水板が配置されているので、水受け容器から流れ出た水が散水板により拡散して下部空間内に詰め込まれた石塊全体に均等に降り注がれる。その結果、水受け容器から流れ出た水のすべてが直ちに蒸気となってサウナ室に拡がるので、サウナ室内を所定の湿度に加湿することができる。
【0019】
また、本発明のサウナ用ガス燃焼ヒーターによれば、熱交換ダクトが前列と後列にそれぞれジグザグ状に屈曲した放熱管で構成され、これら放熱管がガス燃焼装置と共に同じ下部空間内の下方部から上方部に亘って配置されているので、下部空間内での放熱量が非常に多く、その結果これらを埋め尽くすように配置された多数の石塊への加熱が早く、また石塊全体としての蓄熱量も非常に大きく、水供給装置から流れ落ちる水の蒸気化が確実になされると共に、石塊も非常に早く元の蓄熱量に回復される。
【0020】
また、本発明のサウナ用ガス燃焼ヒーターによれば、水受け容器から流れ出た水が、流水板の表面を流れて散水板に落ちるようにされているので、入浴者は、蒸気発生の様子が更に分かり易く、かつ風情も感じることから、サウナ室内での入浴をより一層楽しむことができる。そして、流水板の表面に多数の凸部を設けることで、この流水板を流れ落ちる水が多数の凸部によりその流れ方向を様々に変えて散水板に向かうことから、散水板全体に均等に水を落とすことができ、これにより散水板に形成した多数の通水穴から下部空間内の石塊全体に満遍なく水を掛けることができる。その際、流水板表面の凸部が石の断片を流水板に取り付けて形成されることで、入浴者に一層の風情を感じさせることができ、入浴者のリララックスの度合いをさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るサウナ用ガス燃焼ヒーターを正面側から見た斜視図。
【図2】図1のサウナ用ガス燃焼ヒーターにおいて散水板に乗せた石塊と流水板の表面に取り付けた石片とを部分的に取り外して示す斜視図。
【図3】図2のサウナ用ガス燃焼ヒーターにおいてさらに筐体の下部空間に詰め込んだ多数の石塊を取り除いてガス燃焼装置と熱交換ダクトとを示す斜視図。
【図4】図3のサウナ用ガス燃焼ヒーターを4−4線で切断して示す縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明のサウナ用ガス燃焼ヒーターを添付の図に示された好適な実施形態についてさらに詳細に説明する。本発明の一実施形態に係るサウナ用ガス燃焼ヒーター10は、前面側が開放した箱形の筐体11を備えている。すなわち、筐体11は、天板11aとこれに対向する底板11b(図4参照)、相対向する一対の側板11c,11d、及び背面板11eから構成され、背面板11eに対向する前面が開放している。説明の便宜上、図1〜図3に矢印Xで示す方向を横方向、矢印Yで示す方向を縦方向、矢印Zで示す方向を前後方向という。
【0023】
筐体11の内部は、その縦方向Yにおいて上部空間12と下部空間21とに分けられている。上部空間12には、所定量の水を間欠的に供給する水供給装置13と、この水供給装置13からの水を受けて斜面を流す流水板17と、流水板17の表面を伝わって流れ落ちる水を受けて分散させると共に所定の時間を掛けて下部空間21へ落とす散水板19とが配置されている。この水供給装置13は、一般的に「鹿(しし)威し」と言われている機構を備える装置であり、このサウナ用ガス燃焼ヒーター10では、所定量の水を溜める水受け容器14と、この水受け容器14に水を補給し続ける水補給装置16(図4参照)とから構成されている。水受け容器14は、図2〜図4から明らかなように、一端に開放口14aが形成された薄い箱形を呈し、その幅寸法(横方向Xの幅寸法)は、上部空間12内においてこれを設置可能な横方向の最大幅にほぼ一致する。このような水受け容器14は、開放口14aが背面板11e側に向くように、筐体11の上部空間12における上方に配置され、その両側部に取り付けられた支持軸15を筐体11の側板11c,11dに保持されたブラケットに枢着して揺動可能に支持されている。
【0024】
水受け容器14を揺動可能に支持する支持軸15の取り付け位置について説明すると、以下のとおりである。すなわち、水受け容器14は、その内部に水が溜まっていない初期状態のときには図4に実線で示されるように開放口14aがそれとは反対側の底部より若干高い位置にある状態で停止している。水受け容器14は、水補給装置16から流れ出る水を初期位置にある水受け容器14の開放口14aで受けて内部に所定量の水が溜まると、貯水重量により開放口14aが下方向に下がるように支持軸15を支点として揺動して仮想線で示される位置で停止し、水受け容器14からすべての水が排出されると再び初期位置(実線で示される位置)に戻るようなバランス位置に支持軸15を取り付けて揺動可能に支持されている。従って、水受け容器14は、水補給装置16から水受け容器14の開放口14aに連続して供給される水が所定量だけ溜まると、その貯水重量により開放口14aが下方向へ下がるように揺動して溜まった水を排出し、全ての水を排出し終わると再び元の状態に戻って水補給装置16からの水を受ける、という動作を繰り返すことになる。
【0025】
筐体11内の上部空間12に設置された流水板17は、水受け容器14と筐体11の背面板11eとの間で背面板11e側に、上端部17bが後方側、即ち背面板11e側に位置し、下端部17cがそれとは反対側の前方側に位置するように傾斜して立て掛けられ、水受け容器14の揺動により開放口14aから流れ出た水が、前方側の表面17aである傾斜面を流れ落ちるように配置されている。流水板17の傾斜角度は、水受け容器14の揺動により上下運動をする開放口14aが傾斜面に接触しない程度とされる。この流水板17の表面17aには、図1に示されるように多数の石の断片(石片)18が取り付けられている。すなわち、石塊が適宜の大きさに切断され、その平坦な切断面が流水板17の表面17aに密着させられて適切な手段により張り付けられている。
【0026】
これにより、水受け容器14の揺動により開放口14aから流れ出た水は、流水板17の表面17aに取り付けられている多数の石片18に降り掛かる。多数の石片18の表面に降り掛かった水は、各石片18の複雑な外面形状に沿って隣接する石片18の間、即ち谷間に流れ落ち、さらに各石片18間の谷間を通って下方へ流れ落ちる。このように各石片18の複雑な外表面に沿って石片18間の谷間に流れ落ち、その後各石片18間の谷間を流れることにより、水受け容器14から排出した水は、流水板17の横方向Xに均等に拡がって後述する下方の散水板19に流れ落ちる。
【0027】
このように多数の石片18を流水板17の表面17aに取り付ける目的の一つは、水受け容器14により降り掛けられた水を流水板17の横方向Xに拡散させることにあるが、他の目的としては、入浴者がサウナ室に据え付けられているサウナ用ガス燃焼ヒーター10を見たとき、上部空間12の流水板17の表面17aを見て無機質な感じを受けないようにすることである。そのため、これらの目的が達成される限り、実際の石片18が流水板17の表面17aに張り付けられる必要はなく、流水板17が金属製板材で形成される場合にはそれをプレス加工することによりその表面17aに不規則な形の凸部を多数形成し、それらの凸部に色彩を施すなどの手段で流水板17の表面17aを形成することもできるし、或いは他の種々の材質の塊を前述した石の断片と同様に加工をして取り付けてもよい。
【0028】
流水板17における下端部17cの直下、即ち上部空間12の最下部には、前述した散水板19が配置されている。この散水板19は、流水板17の表面17aを流れ落ちてきた水を一時的に受け、時間を掛けて下部空間21へ滴り落とすためのものであり、そのため散水板19は、その周囲縁部が、表面側に僅かに立ち上がって皿状に構成され、かつ多数の通水穴19aが形成されている。これにより、流水板17の表面17aを流れ落ちてきた水は、散水板19に一時的に溜まりながら多数の通水穴19aから時間を掛けて下方の下部空間21へ滴り落ちる。流水板17の表面17aを流れ落ちた水が一時的に溜められる散水板19の表面には、この散水板19自体が入浴者の目に入らないように多数の石塊20が配置されている。図2及び図3では、幾つかの石塊20が散水板19上に部分的に配置されているが、これは、筐体11の上部空間12内における他の構成を示すためであって実際に使用する場合には図1に示されるように多数の石塊20が散水板19を隠すようにその上に配置されるので入浴者がこの散水板19を直接見ることはない。
【0029】
他方、散水板19が配置されている位置より下方の筐体内空間が下部空間21であり、この下部空間21には、図3に示されるように熱源装置22が配置されている。この熱源装置22は、可燃ガスを燃焼させるガス燃焼装置23と、このガス燃焼装置23から出る燃焼ガスが保有する熱を筐体11の下部空間21内に放熱させるための熱交換ダクト24とから構成されている。ガス燃焼装置23は、下部空間21内における側板11d寄りに配置され、このガス燃焼装置23は、ダクト状の燃焼筒23a内に設置されたガス燃焼バーナ(図示せず)を備え、筐体11の外部に設置された可燃ガス供給装置(図示せず)からガス管により可燃ガスがこのガス燃焼バーナに供給される。このようなガス燃焼装置23は従来と同様な構造であるのでこれ以上の詳細な説明を省略する。
【0030】
熱交換ダクト24は、図3及び図4から明らかなように前後方向Zに2列に配置された前列及び後列の放熱管24a,24bにより構成され、各前後列の放熱管24a,24bは、それぞれ縦方向Yに向かってジグザグ状に屈曲していると共に、その横方向Xの大きさは、ガス燃焼装置23が配置されている下部空間21内の側部領域を除く残りの全幅(横方向Xにおけるスペース幅)に及んでいる。前列の放熱管24aは、下部空間21の最下部から立ち上がる管部分24cを介してガス燃焼装置23における燃焼筒23aの先端部に接続され、更に前列と後列の各放熱管24a,24bは、下部空間21の上方部に位置する管端部同士を接続管25によって接続されて連通され、更に、後列の放熱管24bは、下部空間21の最下部に位置する管部分の端部が、背面板11eに形成された穴に嵌合されている排気ダクト26の端部に連結されている。
【0031】
熱交換ダクト24のこのような構成により、ガス燃焼装置23で発生した燃焼ガスは、燃焼筒23aから管部分24cを通過して前列の放熱管24aにおける最下部の管部分に流れ、そこから上方に向かって流れることになる。従って、前列の放熱管24aにおける最下部の管部分が、燃焼直後の最も大きな熱エネルギーを保有する燃焼ガスにより加熱されるので、最も温度が高く、引き続いて上方の管部分から後列の放熱管24bが加熱される。ところで、熱交換ダクト24を構成している前列及び後列の各放熱管24a,24bは、管部分に変形などが生じないように図4に示されるように伝熱性の大きい材料で形成された保持パネル29によって支持されている。図3では、熱交換ダクト24の構成を分かりやすく図示するために保持パネル29を外して各放熱管24a,24bの配置状態を示している。
【0032】
ガス燃焼装置23と熱交換ダクト24とが配置された筐体11の下部空間21の内部には、多数の石塊27がガス燃焼装置23と熱交換ダクト24を埋め尽くすように配置される。具体的には、筐体11における下部空間21の前面には格子状の保護柵28が着脱可能に取り付けられ、多数の石塊27は、この保護柵28と筐体11を画成している底板11b,両側板11c,11d、背面板11e、及び上部空間12を仕切っている散水板19とで囲まれる下部空間21においてガス燃焼装置23及び熱交換ダクト24の放熱管や管部分の周囲に隙間なく詰め込まれている。従って、このサウナ用ガス燃焼ヒーター10を正面側から見ると、図1に示されるようにガス燃焼装置23や熱交換ダクト24は石塊27に隠れ、保護柵28を通して見えるのは石塊27のみとなる。
【0033】
次に、このサウナ用ガス燃焼ヒーター10の動作について説明する。サウナ室に設置されたサウナ用ガス燃焼ヒーター10のガス燃焼装置23で可燃ガスが燃焼されると、燃焼ガスがジグザグ状に屈曲した熱交換ダクト24の放熱管24a,24bを通って排気ダクト26から排気される間に熱交換ダクト24が加熱される。ガス燃焼装置23と熱交換ダクト24とから放熱した熱は、それら周囲の空気を加熱してサウナ室内を加温すると共に、筐体11の下部空間21内においてガス燃焼装置23と熱交換ダクト24とを埋め尽くすように配置された石塊27も加熱する。加熱された石塊27の表面からは赤外線が放射され、この赤外線放射によってもサウナ室が加熱される。
【0034】
すなわち、ガス燃焼装置23による可燃ガスの燃焼によって発生する燃焼ガスは、燃焼筒23aからこれに管部分24cで接続されている前列の放熱管24aにおける最下部の管部分に入るので、その管部分が最も加熱され、引き続いて、後列の放熱管24bに入ってその屈曲部を流れる間に放熱管24bを加熱し、最後に排気ダクト26から排気される。このようにして前後列の各放熱管24a,24bが、その内部を流れる燃焼ガスによって加熱されると、各放熱管24a,24bからの放熱がその周囲の空気を加熱すると共にこの空気を介して或いは直接的に周囲の石塊27を加熱すると同時に、ガス燃焼装置23と熱交換ダクト24により直接加熱された空気及び石塊27からの放熱により加熱された空気の対流によりサウナ室内が加温される。その際、前述したように前列の放熱管24aにおける最下部の管部分が最も加熱されることから下部空間21の下部に位置する多数の石塊27が最も加熱され、更にその熱の上昇により上方の石塊27も加熱されるので、下部空間21に詰め込まれた多数の石塊27は効率よく加熱されることになる。
【0035】
他方、筐体11内の上部空間12に配置されている水供給装置13では、水受け容器14内に水補給装置16から常時一定量の水が供給されている。この水補給装置16からの給水により水受け容器14内に所定量の水が溜まると、水受け容器14が貯水重量により揺動し、内部の水が流水板17に向かって排出される。水受け容器14から流水板17の表面17aに流れ落ちた水は、既に説明されているようにこの流水板17の表面17aに取り付けられた多数の石片18により横方向Xに分散して散水板19内の全領域にほぼ均等に拡がって流れ落ちる。散水板19に流れ落ちた水は、それに形成された多数の通水穴19aから下部空間21に時間を掛けて滴下する。
【0036】
散水板19の多数の通水穴19aから滴下する水は、下部空間21内において既に蓄熱している無数の石塊27の上に落ち、石塊27が保有する熱により気化して蒸気となりサウナ室内に拡がり、サウナ室内を所定湿度にする。散水板19の多数の通水穴19aから最初に滴下し始めた水が、上部空間21の最も上に位置する石塊27に落ちて蒸気化するとき、その石塊27の温度は低下し、引き続き滴下する水は、最上部の石塊27によっては蒸発されずにさらに下方へ流れ落ち、その下部に位置する別の石塊27に触れて蒸気化する。このように散水板19の多数の通水穴19aから滴下し続ける水は、下部空間21内に詰め込まれた多数の石塊27を上部から下部へと伝わり落ちて蒸気化し、最終的にすべての水が蒸気となってサウナ室内に拡がる。
【0037】
水供給装置13における水受け容器14の一回の揺動により排出された水は、上述したようにその全てが蒸気化され、再び元の位置に復帰した水受け容器14は、水補給装置16からの給水によりその内部に水を溜め、所定水量になると揺動して溜まった水を排出する。このような水受け容器14の間欠的な揺動により、所定の間隔で下部空間21内の石塊27上に所定量の水が滴下されてそれが蒸気化するが、これにより温度が低下した石塊27は、水受け容器14が、次に揺動するまでの間にガス燃焼装置23と熱交換ダクト24とにより加熱され続けて再び所定の蓄熱温度となる。
【0038】
以上説明したように、本発明のサウナ用ガス燃焼ヒーターによれば、筐体の下部空間に配置された熱源装置であるガス燃焼装置と熱交換ダクトとを埋め尽くすように下部空間にその高さ方向である縦方向全体に密集して蓄熱用の石塊が詰め込まれているので、水供給装置により間欠的に供給される水が上方の石塊から下方の石塊に順番に触れながら流れ落ち、その結果、水受け容器から流出した水量分すべてが瞬時に蒸気化し、しかも多数の石塊の温度回復も早く、水受け容器による次の散水に対してもすぐに蒸気を発生させることができ、サウナ室内を所定の湿度に維持することができる。
【0039】
また、本発明のサウナ用ガス燃焼ヒーターによれば、筐体の下部空間内に配置された熱交換ダクトが、多数の石塊で埋め尽くされているので、サウナ室に入った入浴者は、筐体の前面に取り付けられた保護柵から石塊しか見えず、従来装置のように機械室或いはボイラー室にでも入っているような違和感を受けることもなく、心地よい入浴感やリラックス感を味わうことができる。更に、入浴者は、水受け容器が定期的に揺動し、該水受け容器に溜まった水が加熱された石塊に流れ落ちる様子を見ることができるので、蒸気発生の仕組みが明瞭に認識でき、その結果、入浴者が心理的な不安感を抱くこともなく、リラックスしてサウナ室内で入浴を楽しむことができるだけではなく、その情景に風情を感じてそのリラックスの度合いもより向上する。
【0040】
さらに、本発明のサウナ用ガス燃焼ヒーターによれば、水供給装置の水受け容器が配置された筐体内の上部空間と熱源装置が配置された下部空間との間に散水板が配置されているので、水受け容器から流出した水が散水板により拡散し、下部空間内に詰め込まれた石塊全体に時間を掛けて均等に降り注がれる。その結果、水受け容器から流れ出た水のすべてが蒸気となってサウナ室に拡がるので、サウナ室内を所定の湿度に加湿することができる。
【0041】
さらに、本発明のサウナ用ガス燃焼ヒーターによれば、水受け容器から流れ出た水が、流水板の表面を流れて散水板に落ちるようにされているので、入浴者は、蒸気発生の様子が更に分かり易く、かつ一層の風情も感じることから、サウナ室内での入浴をより一層楽しむことができる。さらに、流水板の表面に多数の凸部を設けることで、この流水板を流れ落ちる水が多数の凸部によりその流れ方向を様々に変えて散水板に向かうことから、散水板全体に均等に水を落とすことができ、これにより散水板に形成した多数の通水穴から下部空間内の石塊全体に満遍なく水を掛けることができる。その際、流水板表面の凸部が石の断片を流水板に取り付けて形成されることで、入浴者にさらに一層の風情を感じさせることができ、入浴者のリララックスの度合いをさらに向上させることができる。なお、この明細書で述べている「風情」とは、自然環境の中に居るような感じを受ける感覚であり、例えば、サウナ室に居ながら山間の露天風呂にでも居るような感覚を味合うことができ、その結果、このサウナ用ガス燃焼ヒーターを設置したサウナ室での入浴は極めて大きなリラックス感を味合うことができる。
【符号の説明】
【0042】
10 サウナ用ガス燃焼ヒーター
11 筐体
12 上部空間
13 水供給装置
14 水受け容器
16 水補給装置
17 流水板
17a 流水板の表面(傾斜面)
18 石の断片(石片)
19 散水板
19a 通水穴
20 石塊
21 下部空間
22 熱源装置
23 ガス燃焼装置
24 熱交換ダクト
24a,24b 放熱管
26 排気ダクト
27 石塊
28 格子状の保護柵

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サウナ室に設置し、可燃ガスの燃焼による熱を用いてサウナ室内を加温するサウナ用ガス燃焼ヒーターにおいて、
筐体内の上部空間に配置され、所定量の水を間欠的に供給する水供給装置と、この水供給装置より下方における前記筐体内の下部空間に配置された熱源装置とを備え、
前記水供給装置が、所定量の水が溜まると貯水重量により揺動して排水動作を繰り返す水受け容器と、この水受け容器に水を補給し続ける水補給装置とを備え、
前記熱源装置が、前記可燃ガスを燃焼させるガス燃焼装置と、このガス燃焼装置から出る燃焼ガスを通過させる熱交換ダクトと、前記ガス燃焼装置と前記熱交換ダクトとを埋め尽くすように前記筐体の前記下部空間にその高さ方向全体に密集して詰め込まれた蓄熱用の多数の石塊とを備え、
前記ガス燃焼装置により前記可燃ガスが燃焼され、前記燃焼ガスが前記熱交換ダクトを通過して排気されるとき、前記ガス燃焼装置と前記熱交換ダクトとからの放熱によりその周囲空気と多数の前記石塊とが加熱され、前記サウナ室内が加温されると同時に前記水供給装置により間欠的に供給される水が、多数の前記石塊に降り注がれて蒸気を発生することを特徴とするサウナ用ガス燃焼ヒーター。
【請求項2】
前記サウナ用ガス燃焼ヒーターが、多数の通水穴を形成した散水板を備え、該散水板は、前記筐体内の前記上部空間と前記下部空間との間に設置され、前記水供給装置の前記水受け容器から間欠的に排水された所定量の水が前記散水板の前記各通水穴から前記筐体内の前記下部空間に落ち、前記燃焼装置と前記熱交換ダクトとにより加熱された前記石塊全体に降り注ぐ請求項1に記載のサウナ用ガス燃焼ヒーター。
【請求項3】
前記熱交換ダクトが、ジグザグ状に屈曲された前列の放熱管と後列の放熱管とを備え、これら各放熱管が前記下部空間内の下方部から上方部まで配置され、前記ガス燃焼装置と前記熱交換ダクトとの両方からの放熱を利用してそれら周囲の空気と多数の前記石塊を加熱する請求項1又は2に記載のサウナ用ガス燃焼ヒーター。
【請求項4】
前記サウナ用ガス燃焼ヒーターは、前記水受け容器と前記散水板との間に傾斜して立て掛けられた流水板を備え、該流水板の表面には多数の凸部が形成され、前記水受け容器から流れ出た水が前記流水板の前記表面に掛けられて流れ落ちるとき、多数の前記凸部により拡散されながら前記散水板に流れ落ちる請求項2又は3に記載のサウナ用ガス燃焼ヒーター。
【請求項5】
前記流水板の前記表面に形成された多数の前記凸部が、石の断片を取り付けて形成されている請求項4に記載のサウナ用ガス燃焼ヒーター。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−92408(P2011−92408A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−249157(P2009−249157)
【出願日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(591148174)日精オーバル株式会社 (8)
【出願人】(392010120)株式会社メトス (3)
【Fターム(参考)】