説明

サスペンションのディスクブレーキ取付部構造

【課題】支持プレート全体の重量を増加させることなく、安価に、しかも、ディスクブレーキ取付部の剛性を向上させることのできるサスペンションのディスクブレーキ取付部構造を提供する。
【解決手段】トーションビーム式サスペンションの端部に取り付けられるスピンドル支持プレート18の端部に少なくとも2つのディスクブレーキへの取付孔32a、32b付きのディスクブレーキ取付部30a、30bを所定間隔を置いて有するサスペンションのディスクブレーキ取付部構造であって、ディスクブレーキ取付部30a、30b間位置のスピンドル支持プレート18をディスクブレーキ取付部30a、30bの外端部位置で切断し、ディスクブレーキ取付部30a、30b間のスピンドル支持プレート18を外方に向けて中高になるように曲折させた補強リブ部34を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サスペンションのディスクブレーキ取付部構造に関し、特に、サスペンションのディスクブレーキ取付部における剛性向上を図るサスペンションのディスクブレーキ取付部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、サスペンション、特に、トーションビーム式サスペンションにおいては、車体の幅方向に延びるトーションビームの両端に、車体の前後方向に延びるトレーリングアームを連結し、このトレーリングアームの一端をトレーリングアーム支持部を介して車体側に連結し、他端側を車輪のスピンドルを支持するスピンドル支持プレートを介して車輪に連結されるようになっている。
【0003】
トレーリングアームとスピンドル支持プレートとは、トレーリングアームの端部をスピンドル支持プレートに突き当てて、トレーリングアームの全周をスピンドル支持プレートに溶接することによって一体化されるようになっている。
【0004】
また、スピンドル支持プレートは、溶接部より外方に突出した複数のディスクブレーキ取付部をディスクブレーキにボルト止めすることで車輪に取り付けられるようになっている(特許文献1、図8参照)。
【特許文献1】特開2005−81905号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなトーションビーム式サスペンションにあっては、ディスクブレーキ取付部がスピンドル支持プレートの溶接部より外方に突出した状態となっているため、ディスクブレーキ取付部の剛性が落ちやすい。
【0006】
そのため、これまでは、スピンドル支持プレートにプレス厚板品を用いることで、ディスクブレーキ取付部の剛性確保に対応するようにしていた。
【0007】
しかし、ディスクブレーキ取付部を厚肉にしたとしても、未だ剛性不足から車両に異音(いわゆる鳴き)が発生した場合、簡単には対応がしにくいものである。
【0008】
また、剛性向上のため、スピンドル支持プレートの板圧をあげることで対応しようとすると、ディスクブレーキ取付部以外の不要な部分の板圧も上がって、それだけ全体の質量が増加し、かつ、コストも高くなってしまうこととなる。
【0009】
本発明の目的は、支持プレート全体の重量を増加させることなく、安価に、しかも、ディスクブレーキ取付部の剛性を向上させることのできるサスペンションのディスクブレーキ取付部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明のサスペンションのディスクブレーキ取付部構造は、サスペンションの端部に取り付けられる支持プレートの端部に少なくとも2つのディスクブレーキへの取付孔付きのディスクブレーキ取付部を所定間隔を置いて有するサスペンションのディスクブレーキ取付部構造であって、
前記ディスクブレーキ取付部間位置の支持プレートをディスクブレーキ取付部の外端部位置で切断し、前記ディスクブレーキ取付部間の支持プレートを外方に向けて中高になるように曲折させた補強リブ部を形成したことを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、ディスクブレーキ取付部間の支持プレートを外方に向けて中高になるように曲折させた補強リブ部を形成することで、補強リブ部によって支持プレート全体の板厚を上げることなく、重量を増加させずに、安価に、しかも、ディスクブレーキ取付部の剛性を向上させることができる。
【0012】
また、補強リブ部は、プレス加工の順送型内で加工可能なため、より安価に加工が可能となる。
【0013】
本発明においては、前記補強リブ部は、基端部が円弧状に曲折形成されるようにすることができる。
【0014】
このような構成とすることにより、補強リブ部の基端部を円弧状に形成することで、直線状の場合に比し、より剛性を高めることができる。
【0015】
本発明においては、前記ディスクブレーキのディスクブレーキ取付部対応位置にはディスクブレーキ取付部を受けるマウンティングが取り付けられ、前記マウンティングの前記補強リブ部対応位置には、前記補強リブ部の内面側を受ける補強受け部が形成されるようにすることができる。
【0016】
このような構成とすることにより、ディスクブレーキ側のマウンティングの剛性も高まり、補強リブ部の剛性向上と共に、より一層の剛性向上が望める。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1〜図3は、本発明の一実施の形態にかかるサスペンションの取付部構造を用いたトーションビーム式サスペンションを示す図である。
【0019】
図1は、トーションビーム式サスペンションの概略図で、このトーションビーム式サスペンション10は、トーションビーム12と、トレーリングアーム14と、トレーリングアーム支持部16と、支持プレートとしてのスピンドル支持プレート18とを有する。
【0020】
トーションビーム12は、車体の幅方向に延びる状態で配設され、このトーションビームの捩れの戻り作用により図示せぬ車輪の上下動を吸収するようになっている。
【0021】
トレーリングアーム14は、中空パイプ状のもので、トーションビーム12の両端に連結されて図示せぬ車体の前後方向に延びる左右一対のものからなり、一対のトレーリングアーム14とトーションビーム12との間には補強用のガセット20が設けられている。
【0022】
また、トレーリングアーム14の中間部とガセット20との間には、図示せぬ懸架ばねの下端を支持するばね座22が設けられている。
【0023】
トレーリングアーム支持部16は、トレーリングアーム14の一端(前端)に取り付けられ、このトレーリングアーム支持部16内に収納した図示せぬゴムブッシュジョイントを介してトレーリングアーム14が車体に上下揺動可能に連結されるようになっている。
【0024】
スピンドル支持プレート18は、トレーリングアーム14の他端(後端)に取り付けられている。
【0025】
このスピンドル支持プレート18のトレーリングアーム14への取り付けは、図2に示すように、トレーリングアーム14の後端をスピンドル支持プレート18に突き当てて、トレーリングアーム14の全周をスピンドル支持プレート18に溶接し、環状の溶接部24を形成することで、十分な強度を持たせるようになっている。
【0026】
また、スピンドル支持プレート18は、図示せぬ車輪のスピンドルを支持するもので、スピンドル支持プレート18の略中央にスピンドル取付孔26が形成されている。
【0027】
さらに、スピンドル支持プレート18には、溶接部24の外側にスピンドル支持プレート18を図示せぬ車輪のディスクブレーキに取り付けるためのディスクブレーキ取付部30a、30bが2箇所に所定間隔を置いて形成され、各ディスクブレーキ取付部30a、30bにはディスクブレーキに取り付けるための取付孔32a、32bが形成されている。
【0028】
このディスクブレーキ取付部30a、30bは、通常はスピンドル支持プレート18より突出した状態となっており、剛性が低く、そのため、スピンドル支持プレート18の板圧を上げることで対応するようにしているが、それでもなおかつ剛性が足りず、車両に異音が発生してしまうと容易に対応できず、そのためスピンドル支持プレート18の板厚をあげることで対応しようとすると、ディスクブレーキ取付部30a、30b以外の不要な部分の板厚も上がって全体の質量が増加し、かつ、コストも高くなってしまうこととなる。
【0029】
そこで、本実施の形態では、ディスクブレーキ取付部30a、30b間位置のスピンドル支持プレート18を、図2及び図3にも示すように、ディスクブレーキ取付部30a、30bの外端部位置で切断し、ディスクブレーキ取付部30a、30b間のスピンドル支持プレート18を外方に向けて中高になるように曲折させた補強リブ部34を形成することで、補強リブ部34によってスピンドル支持プレート18全体の板厚を上げることなく、重量を増加させずに、安価に、しかも、ディスクブレーキ取付部30a、30bの剛性を向上させるようにしている。
【0030】
また、この補強リブ部34は、プレス加工の順送型内で加工可能なため、より安価に加工が可能となる。
【0031】
さらに、補強リブ部34の基端部36を円弧状に曲折形成することで、直線状の場合に比し、より中心位置での剛性を高めるようにしている。
【0032】
この場合、ディスクブレーキのディスクブレーキ取付部30a、30b対応位置には、図3に示すように、ディスクブレーキ取付部30a、30bを受けるマウンティング38が取り付けられるようになっており、基端部36の形状は、このディスクブレーキ側のマウンティング38の形状に合わせて曲折するようにしてもよい。
【0033】
また、補強リブ部34は、外方に向けて中高になるように曲折しているため、マウンティング38側には空隙が生じることとなり、マウンティング38の補強リブ部34対応位置には、補強リブ部34の内面側を受ける補強受け部40を形成するようにしている。
【0034】
このようにマウンティング38に補強受け部40を形成することで、ディスクブレーキ側のマウンティング38の剛性も高まり、補強リブ部34の剛性向上と共に、より一層の剛性向上が望めるようにしている。
【0035】
本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々の形態に変改可能である。
【0036】
例えば、前記実施の形態では、トーションビーム式サスペンションの取付部の構造について説明したが、この例に限らず、種々のサスペンションの取付部構造に適用することが可能である。
【0037】
また、ディスクブレーキ取付部は右側上下に2つある場合について説明したが、ディスクブレーキ取付部の位置及び個数は限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の一実施の形態にかかるトーションビーム式サスペンションの概略斜視図である。
【図2】図1のディスクブレーキ取付部の拡大正面図である。
【図3】図2のIII−III線に沿う拡大断面図である。
【符号の説明】
【0039】
10 トーションビーム式サスペンション
12 トーションビーム
14 トレーリングアーム
16 トレーリングアーム支持部
18 スピンドル支持プレート
24 溶接部
30a、30b ディスクブレーキ取付部
32a、32b 取付孔
34 補強リブ部
36 基端部
38 マウンティング
40 補強受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サスペンションの端部に取り付けられる支持プレートの端部に少なくとも2つのディスクブレーキへの取付孔付きのディスクブレーキ取付部を所定間隔を置いて有するサスペンションのディスクブレーキ取付部構造であって、
前記ディスクブレーキ取付部間位置の支持プレートをディスクブレーキ取付部の外端部位置で切断し、前記ディスクブレーキ取付部間の支持プレートを外方に向けて中高になるように曲折させた補強リブ部を形成したことを特徴とするサスペンションのディスクブレーキ取付部構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記補強リブ部は、基端部が円弧状に曲折形成されていることを特徴とするサスペンションのディスクブレーキ取付部構造。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記ディスクブレーキのディスクブレーキ取付部対応位置にはディスクブレーキ取付部を受けるマウンティングが取り付けられ、
前記マウンティングの前記補強リブ部対応位置には、前記補強リブ部の内面側を受ける補強受け部が形成されていることを特徴とするサスペンションのディスクブレーキ取付部構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−143351(P2009−143351A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−321988(P2007−321988)
【出願日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】