説明

サッシ用可分離型給電器

【課題】サッシの障子の発熱ガラスに設けてある発熱体に給電するための可分離型給電器において、障子の閉鎖時位置が変動し、あるいは、取付位置に誤差が生じてもこれに影響されずに、端子同士が確実に接触して給電可能とする。
【解決手段】障子閉鎖時に与電部品Aと受電部品Bの端子同士とが接触して通電可能となるように構成されているサッシ用可分離型給電器1において、与電部品Aは、閉鎖された障子Dの縦框3が縦枠2の当接する位置から僅かに室内側に寄った位置で、障子側面に向かって縦枠2に取付けられ、受電部品Bは、部品本体と、この部品本体にバネにより定位置に復帰するように保持された端子ホルダとからなり、障子Dの縦框3のガラス嵌合溝よりも縦枠2寄りの室内側面に取付けられ、与電部品Aと受電部品Bの一方には端子を、他方には端子受け孔を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固定部側からこれに対して接近離間する可動部側へ給電するための可分離型給電器を利用した、サッシの片引き戸又は引違い戸の発熱手段に給電するためのサッシ用可分離型給電器に関する。
【背景技術】
【0002】
通電すると抵抗により発熱する金属薄膜などからなる発熱体を備えてなる発熱ガラスを窓ガラスに用いることにより、ガラスの結露を防止したり、窓付近の冷却下降気流(コールドドラフト)の発生を防止したり、あるいは、室内暖房をしたりすることが、例えば、特許文献1〜5に開示されている。
【0003】
この発熱ガラスに発熱させるには、当然、発熱体に給電する必要がある。発熱ガラスが嵌め殺しにより固定されている場合は、発熱体の電極と電源に接続された通電制御装置の電極とは導線により容易に接続することができ、何等問題がない。しかし、発熱ガラスが引き戸又は引き違い戸(以下、障子という。)に用いられている場合は、障子は開閉移動されるので、発熱体の電極と通電制御装置の電極との間に、障子開放時は回路を開き、引き戸閉鎖時は回路を閉じる分離可能な給電器(可分離型給電器)を用いている(特許文献6参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−101376号公報
【特許文献2】特開平10−139492号公報
【特許文献3】特開平11−173028号公報
【特許文献4】特開2000−191347号公報
【特許文献5】特開2002−32869号公報
【特許文献6】特開2002−309863号公報
【0005】
上記可分離型給電器は、通電制御装置に電気的に接続された端子を有してサッシの縦枠に取付けられる与電部品と、発熱ガラスの電極に電気的に接続された端子を有して障子の縦框に取付けられる受電部品とからなり、障子閉鎖時には与電部品と受電部品の端子同士とが接触して通電可能となるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、障子は下部がサッシ下枠の下レールに戸車を介して摺動自在に嵌合され、上部はサッシ上枠の上レールに摺動自在に嵌合されるが、障子と上枠及び下枠との間には障子摺動の円滑性を確保するためのクリアランスが設けてあるので、障子の厚み方向(室内外方向)に数mm程度の範囲で揺動可能である。従って、障子を閉鎖する際の障子に対する力の加え方又は障子に加わる風圧の大小などにより、障子が閉鎖位置に到達した時の縦枠に対する位置が変わる場合があり、また、与電部品及び受電部品の取付位置に誤差が生じる場合もあるため、受電部品の端子が常に与電部品の端子と正しく接触するとは限らない。そのため、障子閉鎖状態で通電制御装置が給電動作をしても、発熱体に給電されないという問題がある。また、障子を閉めた時、受電部品の端子と与電部品の端子が一定の接触力で接触できるようにしないと部品が破損し易い。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明の課題は、サッシ枠に取付けられる与電部品と、障子框に取付けられる受電部品とからなり、障子閉鎖時に与電部品の端子と受電部品の端子とが接触して通電可能となるように構成されている、サッシの障子の発熱ガラスに設けてある発熱体に給電するための可分離型給電器において、障子の閉鎖時位置が変動しても、あるいは、取付位置に誤差が生じてもこれに影響されずに、端子同士が確実に接触して給電可能な構成を付加することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明は、通電制御装置に電気的に接続された端子を有してサッシの縦枠に取付けられる与電部品と、発熱ガラスの電極に電気的に接続された端子を有して障子の縦框に取付けられる受電部品とからなり、障子閉鎖時には前記与電部品と前記受電部品の端子同士とが接触して通電可能となるように構成されているサッシ用可分離型給電器において、前記与電部品は、閉鎖された障子の縦框が縦枠に当接する位置から僅かに室内側に寄った位置で、障子側面に向かって縦枠に取付けられ、前記受電部品は、部品本体と、この部品本体にバネにより定位置に復帰するように保持された端子ホルダとからなり、障子の縦框のガラス嵌合溝よりも縦枠寄りの室内側面に取付けられ、前記与電部品と前記受電部品の一方には端子を、他方には端子受け孔を設けたことを特徴としている。
本発明の他の特徴は、与電部品がその一部を縦枠の内部に納めた状態で取付けられていることである。
本発明のさらに他の特徴は、端子が端子受け孔に納まった障子を閉めた状態において、障子に風圧その他の外力が加わって振動しても、磁気吸着手段により吸着されていることである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、与電部品はサッシ縦枠に取付けることで、固着・配線などの取付け施工が容易となり、受電部品がガラス嵌合溝より縦枠寄りの室内側面に取り付けてあるので、受電部品の室内側への張り出しを軽減でき、ガラスの影響を受けない部位で配線を行なうことができる。また、サッシ枠に与電部品を障子の見込み幅の小さい部位に受電部品を取付けるので、取付け、配線の容易性のみならず、張り出しの小さい給電器とすることができる。
また、与電部品の一部を縦枠内部に納めることで、張り出しをさらに小さくすることができる。
さらに、端子接続状態で障子が振れても、与電部品と受電部品は、端子ホルダがバネで小練り運動自在であり、さらに、磁気吸着手段により吸着されているので、両部品が外れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係る可分離型給電器のサッシに対する取付け状態の一例を示す水平断面図。
【図2】配電盤から同給電器を経て発熱ガラスの発熱体の電極に至るまでの配線状態の一例を示す配線図。
【図3】与電部品の正面図。
【図4】同じく正面中央縦断面図。
【図5】受電部品の側面図。
【図6】同じく正面図。
【図7】同じく右側面図。
【図8】図5のX−X線断面図。
【図9】図5のY−Y線断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
続いて、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は本発明に係る可分離型給電器のサッシに対する取付け状態の一例を示す水平断面図、図2は配電盤から同給電器を経て発熱ガラスの発熱体の電極に至るまでの配線状態の一例を示す配線図である。
図3は与電部品の正面図、図4は同じく正面中央縦断面図、図5は受電部品の左側面図、図6は同じく正面図、図7は同じく右側面図、図8は図5のX−X線断面図、図9は図5のY−Y線断面図である。
【0012】
図1及び図2の1は、本発明の一実施例である可分離型給電器であり、固定部に相当すサッシ枠Fの縦枠2に取付けられる与電部品Aと、可動部に相当する障子Dの閉鎖時に縦枠2に密着される縦框3に取付けられる受電部品Bとからなっている。図示されていない電源に接続されている配電盤4に一端が接続され、壁内を配線されている導線5が縦枠2内に挿通され、その導線の他端が与電部品Aの後述される端子(図4の符号14)に接続されている。また、受電部品Bの後述される端子(図5の符号25)には障子縦框内に挿通された導線(図2の符号9)の一端が接続され、他端は障子の発熱ガラス6に担持されている発熱体7の電極に接続されている。図2の8は導線5の途中に、室内から操作できるように設けられたコントローラである。発熱ガラス6は、一例として上記特許文献により知られているものであり、ガラスの表面に通電すると抵抗により発熱する金属薄膜などの発熱体を塗着した既知のものである。
【0013】
与電部品Aは、絶縁性合成樹脂で成形された部品本体11を有する。この部品本体11は、上下に部品本体を縦枠2に固定するためのビスを通す孔12が設けてあり、その上下の孔の間の上下離間した位置において正面側に広く背面側に狭くなるロート状の端子受け孔13が形成されている。そして、各端子受け孔13の底部に端子14が設けられている。この端子には、前記導線5の端部が接続されている。部品本体11の上下の端子14の間には永久磁石15が埋設され、その両磁極に密着された磁性板16の端部が上下の端子受け孔13の間において部品本体11の正面に突出されている。
【0014】
部品本体11には、さらに、例えば、メーク接点を有する近接スイッチ17が設けられ、その近接スイッチの両端子には、一端がコントローラ8に接続された導線18の他端が接続されている。コントローラ8は、この近接スイッチが閉じられたことを導線5を介して与電部品Aに電源を供給する条件の一つとするものである。
【0015】
与電部品Aは、閉鎖された障子の縦框3が縦枠2に当接する位置から僅かに室内側に寄った位置に形成された取付け孔(不図示)に嵌合され、端子受け孔13を障子Dの開閉移動方向と平行な方向に向けた状態で、孔12からねじ込まれるビスで固定される。
【0016】
他方、受電部品Bは、与電部品Aと同様の樹脂材料で成形された部品本体21を有する。この部品本体21も上下に部品本体を障子の縦框3に固定するためのビスを通す孔22が設けてあり、その上下の孔の間に正面側に開口された収容部(ハウジング)23を有している。そして、その収容部の中に、端子ホルダ24が後述するように、回動自在(すなわち、小練り運動可能)に、かつ、定位置に復帰するように保持されている。
【0017】
端子ホルダ24は、上下に与電部品Aの端子受け孔13の間隔と等しい間隔を持って正面側(縦枠側)に突出する端子25を有している。また、端子ホルダ24の正面には、与電部品Aの近接スイッチ17に対応するアクチュエータ26が設けられている。アクチュエータ26は近接スイッチ17の種類によりその形態が異なる。図示の例は、近接スイッチ17のメーク接点を押圧して閉じるように突起で形成されている例に過ぎない。近接スイッチ17がマグネットスイッチである場合は、アクチュエータ26はマグネットで構成され、突出される必要はない。
【0018】
端子ホルダ24を、回動自在に、かつ、定位置に復帰するように保持するための具体的構造は、既知の各種の技術を用いることができるが、その一例を説明すると、端子ホルダ24は収容部23の中まで挿入されていて、その挿入部分には各端子25と反対方向に突出するピン27が設けられ、各ピンに一端が収容部23の背面壁に当接されたコイルバネ28が巻回係止されて、端子ホルダ24が正面方向に付勢されている。また、端子ホルダ24の中間部にコイルバネ28による付勢方向、すなわち、端子25の軸線と平行な方向に長い長孔29が設けられ、その長孔に部品本体21の底部に固着された水平軸210が遊挿されている。従って、端子ホルダ24は水平軸210の軸線周りに所定角度範囲内で回動可能であると同時に、水平軸210と平行な方向及び端子25の軸線と平行な方向に所定距離範囲内で移動可能である。水平軸210には、もう一つのコイルバネ211が巻回されて、端子ホルダ24はそのコイルバネにより収容部の側面側に付勢されている。水平軸210は端子ホルダ24がコイルバネ28の付勢力により収容部23から抜脱されるのを防止する作用をもしている。
【0019】
端子ホルダ24の端子25の間には、磁石に吸着される磁性板212が正面側に向けて取付けられている。与電部品Aの磁石15、磁性板16及び磁性金属板212とで磁気的吸着手段が構成されている。
【0020】
上記構成により、受電部品Bを障子Dの縦框3の与電部品Aと同じ高さにおける室内側面に部品本体21を当接してビスで固定した場合は、端子25はその軸線が与電部品Aの端子受け孔13の軸線と共通の水平線上で合致するように取付けられる。そして、端子25の先端に前記水平線に対して斜め方向の力が加えられると、端子ホルダ24がその力の加えられる方向に傾動し、その力が除かれると、コイルバネ28及び/又はコイルバネ211により力が加えられる前の状態に復帰する。
【0021】
受電部品Bの各端子25の端子ホルダ24内側の端部には導線9が接続され、その導線は部品本体21の背面側に形成してある孔213を経て障子の縦框3内に貫通され、縦框のガラス嵌合溝3aに嵌合されている発熱ガラス6の発熱体の電極に接続されている。
【0022】
上述の与電部品Aと受電部品Bが図1に示すように適切な位置に取付けられた状態で開放位置にある障子Dを閉める時、与電部品Aと受電部品Bの取付位置が正確であり、かつ、障子の閉鎖位置が正常である場合は、受電部品Bの端子25の先端が端子受け孔13の周辺に接触することなく与電部品Aの端子14に接触する。また、与電部品Aと受電部品Bの取付位置に誤差があり、又は障子の閉鎖位置が正常位置から数mm程度の通常生じやすい範囲でずれている場合は、受電部品Bの端子25の先端が端子受け孔13の周辺に接触するが、これに案内されて与電部品Aの端子14に接触することができる。そして、いずれの場合も、与電部品Aの端子14と受電部品Bの端子25とが接触する状態まで接近した時は、近接スイッチ17がアクチュエータ26によりONされる。従って、コントローラ8が発熱体7に通電させるように設定されている場合は、この近接スイッチ17がONとなる条件が満たされたので、通電が開始される。従って、端子14,25の接触後に通電されるから、端子接触時のスパーク発生が防止される。また、端子ホルダ24は端子の接触方向に摺動でき、コイルバネにより復帰方向に付勢されているので、接触部に無理な力を与えずに接触できる。
【0023】
また、与電部品Aの端子14と受電部品Bの端子25とが接触する状態まで接近した時は、磁気的吸着手段が動作するので、端子ホルダ24の磁性板212も与電部品Aの磁性板16に接近して、吸着されるため、障子Dに風圧その他の外力が加わって振動しても、また、サッシの錠装置による障子の縦枠に対する引付け力が弱いために与電部品Aと受電部品Bが僅かに離間することがあっても、端子ホルダ24は磁気吸着手段により与電部品A側に吸着されているので、端子14,25の電気的接続状態は保持される。
【0024】
以上には、端子ホルダが受電部品Bに設けられた場合について説明したが、端子を受電部品B側に向けた端子ホルダを与電部品A側に小練り運動自在に設け、受電部品Bに端子受け孔を形成して、その孔の底部に端子を設けても上述した場合と同様の作用効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0025】
上には、サッシの障子に設けられた発熱ガラスの発熱体に給電する場合に用いて好適な実施例について説明したが、本発明の用途はこれに限らず、与電部品を固定側に、受電部品を可動側に取付けて固定側から可動側に給電する場合に広く使用することができる。
【符号の説明】
【0026】
F サッシ枠
2 縦枠
D 障子
3 縦框
1 可分離型給電器
A 与電部品
13 端子受け孔
14 端子
15,16 吸着手段
17 近接スイッチ
B 受電部品
24 端子ホルダ
25 端子
26 アクチュエータ
27 ピン
210 水平軸
28,211 コイルバネ(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電制御装置に電気的に接続された端子を有してサッシの縦枠に取付けられる与電部品と、発熱ガラスの電極に電気的に接続された端子を有して障子の縦框に取付けられる受電部品とからなり、障子閉鎖時には前記与電部品と前記受電部品の端子同士とが接触して通電可能となるように構成されているサッシ用可分離型給電器において、
前記与電部品は、閉鎖された障子の縦框が縦枠に当接する位置から僅かに室内側に寄った位置で、障子側面に向かって縦枠に取付けられ、
前記受電部品は、部品本体と、この部品本体にバネにより定位置に復帰するように保持された端子ホルダとからなり、障子の縦框のガラス嵌合溝よりも縦枠寄りの室内側面に取付けられ、
前記与電部品と前記受電部品の一方には端子を、他方には端子受け孔を設けたこと、
を特徴とするサッシ用可分離型給電器。
【請求項2】
与電部品は、一部を縦枠の内部に納めた状態で取付けられていることを特徴とする請求項1に記載のサッシ用可分離型給電器。
【請求項3】
端子が端子受け孔に納まった障子を閉めた状態において、障子に風圧その他の外力が加わって振動しても、磁気吸着手段により吸着されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のサッシ用可分離型給電器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−144511(P2010−144511A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−29156(P2010−29156)
【出願日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【分割の表示】特願2004−69430(P2004−69430)の分割
【原出願日】平成16年3月11日(2004.3.11)
【出願人】(000191065)新日軽株式会社 (545)
【出願人】(000223986)フィグラ株式会社 (68)
【出願人】(505090894)日本軽窓株式会社 (1)
【Fターム(参考)】