説明

サッチ分解菌内包マイクロカプセルと、これを用いた芝生地の保全方法、及び該マイクロカプセルの製造方法

【課題】芝生地におけるサッチを長期にわたって安定的に効率よく分解・減容化し得る手段を提供する。
【解決手段】環境分解性ポリマーからなる多孔質のマイクロカプセルに、サッチ分解菌が内包されてなるサッチ分解菌内包マイクロカプセルを調製し,芝生地に撒布する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芝生地に堆積するサッチを分解除去するのに好適なサッチ分解菌内包マイクロカプセルと、このマイクロカプセルを用いた芝生地の保全方法、及び該マイクロカプセルの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ゴルフ場のグリーン、サッカーや野球、競馬等の競技場、庭園等の芝生地では、芝丈を揃えるために定期的に芝刈りを行うが、その際に発生する刈りかすが芝草の間に蓄積してサッチ(thatch) を生じる。このサッチは芝草の前記刈りかすや枯れた葉、茎、根等の堆積層であるが、その堆積が多くなると、土中や芝草の根に対して空気や水が浸透しにくくなると共に、散布した肥料や農薬がサッチに吸収されて効きにくくなり、また病原菌や害虫の繁殖や腐敗による有毒ガスの発生を招き易く、芝草の生育不良や枯死の要因になる。従って、芝生地を健全に保つための手入れとして、サッチの堆積が多くなる前に除去する必要がある。
【0003】
従来、サッチの除去手段として、ゴルフ場や競技場等の広い芝生地ではバーチカルモアと称される自走式又は牽引式の機械のブレードによってサッチを掻き取る方法が採用され、また庭園等の狭い芝生地ではレーキや熊手を用いて人手でサッチを掻き出すのが普通である(非特許文献1)。しかるに、機械的作業と手作業のいずれにしても、サッチ除去作業には非常に手間が掛かる上、その作業で芝草を痛める懸念も多分にあった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】http://www.takii.co.jp/green/howto/howto5.html(2009/9/11) 「芝・緑化・緑肥|芝生なんでも百科.タキイ種苗」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者らは、上述の事情に鑑みて、微生物を用いてサッチを分解・減容化する手段の可否について実験研究を重ねた結果、サッチ分解菌として高い活性を示す微生物が存在し、該微生物を一般的な培養手段によって容易に増殖でき、もって工業的規模での利用が充分に可能であることが判明した。しかるに、このようなサッチ分解菌を芝生地に直接に散布する方法では、日照、温度変化、降雨等の厳しい自然条件の影響を受けるため、該サッチ分解菌が芝生地に定着し難い上に短期間で失活し易く、安定したサッチ分解作用を長期にわたって発揮させることが困難であった。
【0006】
そこで、本発明者らは、更なる実験研究の過程で、マイクロカプセルによる微生物の固定化に着目し、サッチ分解菌への応用について鋭意検討を重ねた。その結果、環境分解性ポリマーからなる多孔質のマイクロカプセルによれば、サッチ分解菌を安定的に担持させて芝生地に効率よく定着させることが可能であり、しかもサッチ分解菌を環境変化から保護できることに加え、マイクロカプセルの環境分解性ポリマーが食餌となるためにサッチ分解菌の失活が抑制され、散布した芝生地への環境負荷を与えることなく、その高いサッチ分解能力を長期間安定的に発揮させ得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明に係るサッチ分解菌内包マイクロカプセルは、環境分解性ポリマーからなる多孔質のマイクロカプセルに、サッチ分解菌が内包されてなるものとしている。
【0008】
そして、上記請求項1のサッチ分解菌内包マイクロカプセルの好適態様として、請求項2の発明はサッチ分解菌がBacillus subtilis属菌であること、請求項3の発明は平均粒子径が10〜3,000μmの範囲にあること、をそれぞれ特定している。
【0009】
また、請求項4の発明は、上記請求項1〜3のいずれかのサッチ分解菌内包マイクロカプセルにおいて、多孔質のマイクロカプセルが内腔部を有し、その内腔部にサッチ分解菌を含む内水相が充満してなる構成としている。そして、この請求項4のサッチ分解菌内包マイクロカプセルの好適態様として、請求項5の発明では多孔質のマイクロカプセルの環境分解性ポリマーがポリ−ε−カプロラクトンを主体とすることを特定している。
【0010】
同じく請求項6の発明は、上記請求項1〜3のいずれかのサッチ分解菌内包マイクロカプセルにおいて、多孔質のマイクロカプセルがアルギン酸−キトサンゲルビーズからなる構成としている。
【0011】
請求項7の発明に係る芝生地の保全方法は、上記1〜6の何れかに記載のサッチ分解菌内包マイクロカプセルを芝生地に散布することを特徴としている。
【0012】
請求項8の発明に係るサッチ分解菌内包マイクロカプセルの製造方法は、環境分解性の壁材ポリマーが低沸点有機溶媒に溶解されてなる有機相中に、サッチ分解菌を含む環境分解性の保護剤ポリマー水溶液を添加混合することにより、該有機相中に内水相としてサッチ分解菌を含む保護剤ポリマー水溶液の液滴が分散したS/Oエマルションを調製したのち、このS/Oエマルションを水相中に添加混合して所定時間の攪拌を行うことにより、外水相中に前記S/Oエマルションの液滴が分散したS/O/Wエマルションを調製し、次いで有機相中の有機溶媒を加温又は/及び減圧による液中乾燥で除去して壁材ポリマーをゲル化させることにより、環境分解性ポリマーからなる多孔質のマイクロカプセルの内腔部にサッチ分解菌を含む内水相が充満したマイクロカプセルを生成させることを特徴としている。
【0013】
そして、上記請求項8のサッチ分解菌内包マイクロカプセルにおいて、請求項9の発明は、有機相がポリ−ε−カプロラクトンを主体とする環境分解性ポリマーをジクロロメタンを主成分とする低沸点有機溶剤に溶解したものであり、前記保護剤ポリマー水溶液がアルギン酸塩水溶液である構成としている。更に請求項10の発明は、請求項10におけるポリ−ε−カプロラクトンの平均分子量が10,000〜500,000であるものとしている。
【0014】
一方、請求項11の発明に係るサッチ分解菌内包マイクロカプセルの製造方法は、酸成分及び塩化カルシウムを含むキトサン水溶液からなる連続相に、サッチ分解菌を含むアルギン酸塩水溶液を分散相として滴下混合することにより、サッチ分解菌を内包したアルギン酸−キトサンゲルビーズを生成させたのち、ろ過・洗浄して得られたゲルビーズを凍結乾燥することを特徴としている。そして、この請求項11のサッチ分解菌内包マイクロカプセルの製造方法において、請求項12の発明はキトサン水溶液の粘度が10mPa・s以下である構成としている。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明に係るサッチ分解菌内包マイクロカプセルは、サッチ分解菌がマイクロカプセルに安定的に担持されており、芝生地に散布することで効率よく定着させることができると共に、日照、温度変化、降雨等の厳しい自然条件に晒されても内包されたサッチ分解菌は環境変化から保護され、加えてマイクロカプセルを形成している環境分解性ポリマーがサッチ分解菌の食餌となるためにサッチ分解菌の失活が抑制される。従って、該マイクロカプセルを散布した芝生地においては、長期にわたってサッチ分解菌が安定的に放出されて高いサッチ分解能力を持続的に発揮するから、サッチが厚く堆積して土中や芝草の根に対して空気や水が浸透しにくくなったり、散布した肥料や農薬がサッチに吸収されて効きにくくなったりすることがなく、また病原菌や害虫の繁殖や腐敗による有毒ガスの発生も防止され、もって芝草が長期間健全な状態に保持される上、マイクロカプセル自体は自然環境下で経時的に分解されて最終的に消失するから、該マイクロカプセルの散布によって芝生地及びその周辺に環境負荷を与えることもない。
【0016】
請求項2の発明によれば、上記マイクロカプセルに内包するサッチ分解菌が、高いサッチ分解作用を発揮すると共に、マイクロカプセル内包状態で失活しにくく、且つ比較的に培養し易く安価に入手できるという利点がある。
【0017】
請求項3の発明によれば、上記のサッチ分解菌内包マイクロカプセルの平均粒子径が特定範囲にあるため、芝生地に散布後、降雨や撒水によって流失しにくく、且つ芝草の植生状況や土壌状況を変化させることもない。
【0018】
請求項4の発明に係るサッチ分解菌内包マイクロカプセルは、多孔質のマイクロカプセルの内腔部にサッチ分解菌を含む内水相が充満した構成であるため、該内腔部においてサッチ分解菌が環境変化の影響を受けずに盛んに増殖し、マイクロカプセル外への放出による減少分が常時確実に補充され、もって高いサッチ分解能力をより長期にわたって安定的に発揮できる上、高いマイクロカプセル回収率が得られる。
【0019】
請求項5の発明によれば、上記の内腔部を有するマイクロカプセルの環境分解性ポリマーとして用いたポリ−ε−カプロラクトンが生分解性及び生体適合性に優れる上、サッチ分解菌との相性が特によく、サッチ分解菌が代謝ストレスを受けずに高活性を持続するから、より優れたサッチ分解能力が発揮されるという利点がある。
【0020】
請求項6の発明に係るサッチ分解菌内包マイクロカプセルは、多孔質のマイクロカプセルがアルギン酸−キトサンゲルビーズからなり、該ゲルビーズの生分解性及び生体適合性がよいため、サッチ分解菌が代謝ストレスを受けずに高活性を持続でき、もって高いサッチ分解能力がより長期にわたって安定的に発揮される。
【0021】
請求項7の発明に係る芝生地の保全方法によれば、上記のサッチ分解菌内包マイクロカプセルを芝生地に散布することから、長期にわたってサッチ分解菌が安定的に放出されて高いサッチ分解能力を持続的に発揮するから、サッチが厚く堆積して土中や芝草の根に対して空気や水が浸透しにくくなったり、散布した肥料や農薬がサッチに吸収されて効きにくくなったりすることがなく、また病原菌や害虫の繁殖や腐敗による有毒ガスの発生も防止され、もって芝草が長期間健全な状態に保持されると共に、散布された該マイクロカプセルによる環境負荷も生じない。
【0022】
請求項8の発明に係るサッチ分解菌内包マイクロカプセルの製造方法によれば、環境分解性ポリマーからなる多孔質のマイクロカプセルの内腔部にサッチ分解菌を含む内水相が充満したマイクロカプセルとして、高いサッチ分解能力を長期にわたって安定的に発揮できるものを効率よく容易に量産できる。
【0023】
請求項9の発明によれば、上記のカプセル内腔部にサッチ分解菌を含む内水相が充満したマイクロカプセルとして、該マイクロカプセルがポリ−ε−カプロラクトンを主体として構成され、高いサッチ分解能力をより長期にわたって安定的に発揮できるものが得られる。
【0024】
請求項10の発明によれば、上記のポリ−ε−カプロラクトンを主体として構成されるマイクロカプセルの内腔部にサッチ分解菌を含む内水相が充満したものをより確実に製出できるという利点がある。
【0025】
請求項11の発明によれば、アルギン酸−キトサンゲルビーズからなるサッチ分解菌内包マイクロカプセルを容易に製造できる。
【0026】
請求項12の発明によれば、サッチ分解菌を内包した上記アルギン酸−キトサンゲルビーズとして特に高品位のものを確実に製出できるという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】サッチ分解菌の培養時間と培地中制菌数及び培地中pHとの関係を示し、(a)は培養1回目の相関特性図、(b)は培養2回目の相関特性図である。
【図2】サッチ分解菌の活性評価試験における震とう時間とセルロース分解率の相関特性図である。
【図3】本発明の実施例1〜3で調製したサッチ分解菌内包マイクロカプセルとその断面を示す走査型電子顕微鏡写真図である。
【図4】本発明の実施例4におけるアルギン酸−キトサンゲルビーズの調製試験で得られたゲルビーズを示す走査型電子顕微鏡写真図である。
【図5】同実施例4で調製したサッチ分解菌内包アルギン酸−キトサンゲルビーズとその断面、ならびに前記調製試験で得られた菌なしアルギン酸−キトサンゲルビーズの断面を示す走査型電子顕微鏡写真図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明のサッチ分解菌内包マイクロカプセルは、環境分解性ポリマーからなる多孔質のマイクロカプセルにサッチ分解菌が内包されたものであり、芝生地に散布することにより、長期にわたってサッチ分解菌が安定的に放出されて高いサッチ分解能力を持続的に発揮する。従って、このサッチ分解菌内包マイクロカプセルを散布した芝生地では、サッチが厚く堆積して土中や芝草の根に対して空気や水が浸透しにくくなったり、散布した肥料や農薬がサッチに吸収されて効きにくくなったりすることがなく、また病原菌や害虫の繁殖や腐敗による有毒ガスの発生も防止される結果、芝草が健全な状態で長期間安定的に保持される。そして、マイクロカプセル自体は、これを構成する環境分解性ポリマーがサッチ分解菌の食餌となって該サッチ分解菌の失活防止に寄与する上、自然環境下で経時的に分解されて最終的に消失するから、散布した芝生地及びその周辺に環境負荷を与えることもない。
【0029】
本発明で用いるサッチ分解菌としては、サッチ分解能力を備えるものであれば特に制約はないが、所謂枯草菌として知られるBacillus subtilis 属菌が好適である。すなわち、Bacillus subtilis 属菌は、サッチ分解能力が高く、且つマイクロカプセル内包状態で失活しにくいことに加え、比較的に培養し易く安価に入手できるという利点がある。
【0030】
多孔質のマイクロカプセルを構成する環境分解性ポリマーとしては、土壌中で微生物によって水と二酸化炭素に分解される所謂生分解性ポリマーと共に、自然環境下で日光や水等によって経時的に分解する所謂崩壊性ポリマー成分を包含するが、サッチ分解菌の食餌とする上で生分解性ポリマーが好適である。この生分解性ポリマーは、製法的に化学合成系、天然物系、微生物系に分かれるが、そのいずれであってもよく、具体例としてポリカプロラクトン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネートの如き脂肪族ポリエステル類、ポリビニルアルコール、ポリリン酸、ポリアミノ酸類、キトサン、キチン、セルロース、澱粉、酢酸セルロース、バクテリアセルロース、カードラン、プルランの如き多糖類、バイオポリエステル、これらの複合物等が挙げられる。
【0031】
サッチ分解菌内包マイクロカプセルのサイズは、平均粒子径として10〜3,000μmの範囲が好適であり、小さ過ぎては降雨や撒水によって流失し易く、逆に大き過ぎては芝草の植生状況や土壌状況を変化させる懸念がある。
【0032】
多孔質のマイクロカプセルの形態には特に制約はないが、その好ましい具体例として、多孔質の肉部内に1つ又は複数の空洞状の内腔部を有し、その内腔部にサッチ分解菌を含む内水相が充満したコアーシェル形態と、皮張り状の表面を有して内部全体が荒目のスポンジ状をなし、そのスポンジ状の空隙部にサッチ分解菌を含む内水相が充満したゲルビーズ形態とが挙げられる。とりわけ、前者のコアーシェル形態では、その内腔部においてサッチ分解菌が環境変化の影響を受けずに盛んに増殖し、マイクロカプセル外への放出による減少分が常時確実に補充され、もって高いサッチ分解能力をより長期にわたって安定的に発揮でき、また高いマイクロカプセル回収率が得られるという利点がある。
【0033】
上記前者のコアーシェル形態のマイクロカプセルを製造するには、まず環境分解性の壁材ポリマーを低沸点有機溶媒に溶解した有機相O中に、サッチ分解菌を含む環境分解性の保護剤ポリマー水溶液を添加混合することにより、該有機相O中に内水相Sとしてサッチ分解菌を含む保護剤ポリマー水溶液の液滴が分散したS/Oエマルションを調製する。そして、このS/Oエマルションを水相中に添加混合して所定時間の攪拌を行うことにより、外水相W中にS/Oエマルションの液滴が分散したS/O/Wエマルションを調製する。次に、加温又は/及び減圧による液中乾燥を行い、S/O/Wエマルションの有機相O中の有機溶媒を除去して壁材ポリマーをゲル化させることにより、環境分解性ポリマーからなる多孔質のマイクロカプセルの内腔部にサッチ分解菌を含む内水相Sが充満したマイクロカプセルを生成させる。
【0034】
ここで、上記有機相Oの低沸点有機溶媒としては、加温又は/及び減圧による液中乾燥を行う上で沸点が85℃以下の無極性溶剤が好ましく、例えばジクロロメタン(沸点40℃)、クロロホルム(同61℃)、酢酸エチル(同77℃)、1.2−ジクロロエタン(同83.5℃)等が好適なものとして挙げられ、これらは2種以上を併用してもよいが、ジクロロメタンを単独使用もしくは主体として他と併用することが推奨される。すなわち、ジクロロメタンは特に沸点が低いため、液中乾燥による壁材ポリマーのゲル化が効率よく進行すると共に、液中乾燥に要する温度・圧力条件が緩和されて消費エネルギーを少なくできるという利点がある。
【0035】
上記有機相Oの壁材ポリマーに用いる環境分解性ポリマーは、特に制約されないが、ポリ−ε−カプロラクトンを主体とするものが特に推奨される。これは、ポリ−ε−カプロラクトンを壁材ポリマーとすることにより、回収率及び物理的強度に優れたマイクロカプセルを製出できることに加え、ポリ−ε−カプロラクトンとサッチ分解菌との相性が特によく、これを食餌としてサッチ分解菌の活性が高いレベルで持続するから、より優れたサッチ分解能力が発揮されることによる。なお、このポリ−ε−カプロラクトンとしては、平均分子量が10,000〜500,000であるものが好適である。
【0036】
また、有機相O中には、内水相S添加によるS/Oエマルションの調製のために、適当なエマルション安定剤を配合しておくのがよい。このようなエマルション安定剤としては、ソルビタンモノオレエートの如きスパン系界面活性剤を始めとして、一般的にエマルション調製に用いる種々の界面活性剤、水溶性樹脂、水溶性多糖類等がある。
【0037】
内水相Sに用いる環境分解性の保護剤ポリマーとしては、サッチ分解菌の活動及び増殖を妨げない水溶性ポリマーであればよく、例えばアルギン酸塩、κ−カラギーナン、キトサンの如き水溶性高分子多糖類やポリビニルアルコール等が挙げられるが、特にサッチ分解菌との相性の良さからアルギン酸ナトリウムの如きアルギン酸塩が推奨される。このアルギン酸ナトリウムを用いる場合の水溶液濃度は、0.5〜10質量%程度とするのがよく、高過ぎてはS/Oエマルションの分散安定性が低下して凝集を生じ易くなる。なお、保護剤ポリマー水溶液中には、サッチ分解菌の栄養源として、ポリペプトン、イーストエキス、硫酸マグネシウム等を適宜配合できる。
【0038】
有機相O中に内水相Sを添加混合してS/Oエマルションを調製する際には、サッチ分解菌を保護するために氷冷下で攪拌を行うことが推奨される。また、S/O/Wエマルションの外水相Wに用いる水相には、分散安定剤を含むことが望ましい。この分散安定剤としては、特に制約はなく、一般的にエマルション調製に使用されるものをいずれも使用できるが、高分子量のエマルション安定剤を用いることで優れたエマルション効果が得られる点から、ゼラチンが特に好適なものとして挙げられる。このゼラチンを使用する場合の外水相における濃度は0.1〜10質量%程度が好適である。更に、液中乾燥後には、高分子量のゼラチンを低分子量へ分解し、調製したマイクロカプセルと外水相との濾過特性を向上させる目的で、パパインの如き蛋白質分解酵素を添加してもよい。
【0039】
上記液中乾燥では有機相の低沸点有機溶媒を揮散除去するために、攪拌下で加温と減圧の一方もしくは両方を行うが、処理効率面より加温と減圧を同時に行うことが推奨される。その加温ではエマルションの液温を数時間をかけて段階的又は連続的に昇温してゆけばよいが、最高到達温度は低沸点有機溶媒の沸点より低い温度でよい。また減圧ではエマルションの液面が接する雰囲気の圧力を同様に数時間をかけて段階的又は連続的に減じてゆけばよいが、最高減圧は大気圧の数分の1程度まででよい。しかして、有機相の低沸点有機溶媒がジクロロメタンを主体とする場合、加温と減圧を同時に行う液中乾燥では最高到達温度は30℃程度、最高減圧は400hPa程度で済む。なお、この液中乾燥における攪拌速度は、50〜500rpm程度とするのがよい。
【0040】
一方、ゲルビーズ形態のマイクロカプセルとしては、特に制約されないが、アルギン酸−キトサンゲルビーズが、サッチ分解菌の担持性及び棲息適性に優れ、高いサッチ分解能力をより長期にわたって安定的に発揮できることに加え、ゲルビーズの調製が容易である点から推奨される。
【0041】
このサッチ分解菌を内包したアルギン酸−キトサンゲルビーズからなる多孔質のマイクロカプセルを製造するには、キトサンを水に溶解させるための酸成分とアルギン酸のゲル化剤である塩化カルシウムとを含むキトサン水溶液からなる連続相に、サッチ分解菌を含むアルギン酸塩水溶液を分散相として滴下混合することにより、サッチ分解菌を内包したアルギン酸−キトサンゲルビーズを生成させたのち、ろ過・洗浄して得られるゲルビーズを凍結乾燥して回収すればよい。
【0042】
この製造方法における上記連続相では、サッチ分解菌の活性を高めることと、アルギン酸とキトサンとの間の静電的相互作用による複合膜形成促進のために、水酸化ナトリウム等のアルカリ添加でpHを5〜5.5程度の弱酸性に調整することが望ましい。また、この連続相に分散相のサッチ分解菌を含むアルギン酸塩水溶液を滴下混合する際、サッチ分解菌を保護するのために液温を1〜20℃適度の低温に設定することが望ましい。
【0043】
なお、キトサンとしては、市販のキトサン水溶液を使用できるが、その粘度によって製出するアルギン酸−キトサンゲルビーズの性状に差異を生じる。因みに、キトサン水溶液の市販品として代表的な和光純薬工業社製の商品名キトサン5,キトサン50,キトサン300の3種では、その粘度及びpHが次のように異なっている。
粘度(mPa・s) pH(10g/l水浸液,25℃)
キトサン5 ・・・・ 0〜10 ・・・・・・8.0〜10.0
キトサン50 ・・・・ 10〜100 ・・・・・・7.0〜 9.0
キトサン300・・・・ 100〜500 ・・・・・・6.0〜 8.0
しかして、これら3種のいずれのキトサンを用いてもアルギン酸−キトサンゲルビーズの調製は可能であるが、上記のアルカリ添加で連続相のpHを上げてゆくと、キトサン50及びキトサン300ではゲルビーズの生成と共に一部に凝集を生じ易いが、キトサン5ではpH5.4まで上昇させても凝集を生じないという結果が得られている。従って、pHを弱酸性に調整してサッチ分解菌の活性を高める上では、キトサン水溶液として粘度が10mPa・s以下のものを用いることが推奨される。
【実施例】
【0044】
〔サッチ分解菌の培養〕
減菌処理した702 培地(蒸留水100mlに1gのポリペプトンと0.2gのYeast exract及び0.1g のMgSO4 ・7H2 Oを溶解、PH7.0)に、サッチ分解菌としてBacillus su-btilis NBRC13719を添加し、インキュベーター内においてシェイカーで温度30℃、攪拌速度170rpmの条件で所定日数の培養を行い、培養後の702 培地の液0.1mlを採取して0.9重量%生理食塩水0.9mlに混合し、その混合液の0.1mlを採取して同様の生理食塩水0.9mlに混合する操作を繰り返すことで702 培地を1億容積倍まで希釈し、この希釈液0.1mlを802 寒天培地(蒸留水100mlに1gのポリペプトン、0.2gのYeast extract、0.1g のMgSO4 ・7H2O、1.5gの寒天を溶解、PH7.0)に添加し、インキュベーターで30℃にて静置し、1日、2日,3日後に形成したサッチ分解菌のコロニーをカウントして生菌数を計測すると共に、培地中のpHをpHメーターによって測定した。なお、この培養試験は、再現性を確認するために同一条件で2回行った。その結果、702 培地での培養時間(日数=day )と、1日〜3日の各カウント日における802 寒天培地中の生菌数(CFU/ml)及び培地中pHとの関係は、1回目の試験では図1(a)、2回目の試験では図1(b)に示す通りであった。
【0045】
図1(a)(b)で示すように、サッチ分解菌の生菌数は2〜3日の培養でピークに達し、培養時間が長くなるに伴って培地中pHは上昇する傾向を示すが、やがてpH9未満で略一定になることが確認された。
【0046】
〔サッチ分解菌の活性評価〕
0.9重量%生理食塩水10mlにセルロース0.25gを溶解させた試料液を試験管に収容して減菌処理し、その試料液中に前記培養試験(試験1回目の培養日数 日、寒天培地静置3日後)で得られたサッチ分解菌を湿潤重量で0.0967g添加混合して試験管を密栓し、これを30℃、150rpmで所定時間(0日、0.5日、1日、2日、3日、4日、5日 )震とうさせたのち、混合液をろ過して回収したセルロースを凍結乾燥させ、その乾燥重量を測定した。そして、震とう0日と震とうn日後の乾燥重量の差をセルロースの重量減少量として、各震とう時間によるセルロース分解率を求めたところ、図2に示す結果が得られた。この図2より、震とう時間(日数)と共にセルロース分解率が上昇し、震とう4日でセルロース分解率50%近くに達しており、このサッチ分解菌が高いサッチ分解能力を備えることが明らかである。
【0047】
実施例1
<S/Oエマルションの調製>
50mlのジクロロメタンに平均分子量10,000のポリ−ε−カプロラクトン5gと0.1重量%のソルビタンモノオレエートを添加混合して有機相Oを調製する一方、1重量%アルギン酸ナトリウム水溶液(粘度80〜120cp)にサッチ分解菌として前記の培養した Bacillus su-btilis NBRC13719を湿潤重量で1g添加混合して内水相Sを調製し、この内水相Sを前記有機相Oに添加して氷冷下でホモジナイザーによって攪拌速度6,000rpmで10分間の攪拌を行うことにより、S/Oエマルションを調製した。
【0048】
<S/O/Wエマルションの調製>
給排気口及びウォータージャケットを備えた密閉式の攪拌槽内に外水相Wとして0.5重量%ゼラチン水溶液200mlを収容し、この攪拌槽内に前記の調製したS/Oエマルションの全量を添加し、水冷によって液温を15℃に保持しつつ、攪拌速度150rpmで10分間の攪拌を行うことにより、外水相W中にS/Oエマルションの液滴が分散したS/O/Wエマルションを調製した。
【0049】
<液中乾燥及びマイクロカプセル回収>
前記の調製したS/O/Wエマルションについて、攪拌速度150rpmを維持しつつ、排気口からの真空吸引とウォータージャケットへの温水流通により、第一段では液温25℃,雰囲気圧600hPaで2時間、第二段階では液温30℃,雰囲気圧600hPaで3時間、第三段階では液温30℃,雰囲気圧500hPaで4時間、第四段階では液温30℃,雰囲気圧400hPaで5時間の四段階の液中乾燥処理を行ったのち、パパインを外水相に対して0.5g/Lの割合で添加混合し、製出したサッチ分解菌内包マイクロカプセルをろ過分離し、蒸留水で洗浄して回収した。
【0050】
実施例2,3
有機相Oのポリ−ε−カプロラクトンとして、実施例2では平均分子量40,000のものを、実施例3では平均分子量70,000〜100,000のものを、それぞれ5g使用した以外は実施例1と同様にしてサッチ分解菌内包マイクロカプセルを調製して、回収した。
【0051】
上記実施例1〜3におけるS/Oエマルション(S/O−EM)及びW/S/Oエマルション(W/S/O-EM)の液滴平均径、得られたマイクロカプセル(MC)の平均粒径と回収量及び回収率を、使用したポリ−ε−カプロラクトン(PCL)の平均分子量と共に次の表1に示す。また、各実施例で得られたマイクロカプセルの全体及び断面の走査型電子顕微鏡写真図を図3に、それぞれ実施例番号に対応した番号(1)〜(3)として示す。なお、表1におけるエマルションの液滴平均径は実体顕微鏡写真から、同じくマイクロカプセルの平均粒子径は走査型電子顕微鏡写真から、それぞれ50個のサンプルを実測して平均値を求めたものである。また、マイクロカプセルの回収率(%)は、(マイクロカプセル乾燥重量×100)/(アルギン酸Na質量+ポリ−ε−カプロラクトン質量+ソルビタンモノオレエート質量)として算出した。












【0052】
【表1】

【0053】
表1で示すように、実施例1〜3のいずれにおいても85%以上という高いマイクロカプセル回収率が得られている。また、実施例1〜3の対比より、有機相Oに用いたポリ−ε−カプロラクトンの平均分子量が大きいほど、W/S/Oエマルションの液滴平均径とマイクロカプセルの平均粒子径が大きくなるが、S/Oエマルションの液滴平均径とマイクロカプセル回収率についてはε−カプロラクトンの平均分子量による差異が殆どないことが判る。一方、図4の電子顕微鏡写真図から、実施例1〜3で得られたサッチ分解菌内包マイクロカプセルは、いずれも多孔質の肉部内に複数の空洞状の内腔部を有するコアーシェル形態であることが判る。
【0054】
実施例4
<アルギン酸−キトサンゲルビーズの調製試験>
既述キトサンの規格による3種のキトサンをそれぞれ用い、ウォータージャケットを備えた密閉式の攪拌槽内で、4g/L濃度のキトサン水溶液150mlに0.1重量%相当の塩酸0.417gと0.05M相当の塩化カルシウム0.833gを添加混合して連続相を調製すると共に、1M−水溶液ナトリウム水溶液を加えてpH調整を行い、この連続相を水冷によって液温4℃に維持しつつ、分散相として1.8w/v%のアルギン酸ナトリウム水溶液(粘度500〜600cp)20mlをシリンジによって滴下し、120rpmで緩やかに30分間攪拌してアルギン酸−キトサンゲルビーズを生成させたのち、ろ過・洗浄して得られるゲルビーズを凍結乾燥して回収した。
【0055】
このゲルビーズの回収量及び回収率とゲルビーズ生成状況を、使用したキトサンの粘度及び連続相pHと共に表2に示す。また、図4に、キトサン種と連続相pHが異なる各調製条件で得られたゲルビーズの走査型電子顕微鏡写真図を示す。なお、回収率は、〔回収したゲルビーズ(凝集物を含む)の重量×100〕/(アルギン酸Na質量+キトサン質量)として算出した。なお、ゲルビーズ生成状況は次の5段階で評価した。
◎・・・最も良好な生成状況で、乾燥後の状態もよい。
○・・・良好なゲルビースが生成している。
△・・・ゲルビーズが生成するが、一部に凝集がみられる。
▲・・・ゲルビーズが生成するが、柔らかく脆い。
×・・・ゲルビーズが生成していない。
【0056】
【表2】

【0057】
図4の電子顕微鏡写真図で示すように、3種のキトサン用いて各々連続相のpHを2.2と5.4のいずれに設定した場合でもゲルビーズが生成している。また、表2で示すように、キトサン種及び連続相pHの違いによるゲルビーズ回収量及び回収率の差は殆どない。しかるに、キトサン50,300を用いて水溶液ナトリウム水溶液による連続相のpH調整を行った場合、ゲルビーズの生成と共に一部に凝集を生じている。これに対し、キトサン5を用いた場合では、連続相のpHを5.4まで上昇させても上記凝集を生じていない。この結果から、次のサッチ分解菌内包アルギン酸−キトサンゲルビーズの調製ではキトサン5を使用した。
【0058】
<サッチ分解菌内包アルギン酸−キトサンゲルビーズの調製>
キトサンとしてキトサン5を用いると共に、分散相のアルギン酸ナトリウム水溶液にサッチ分解菌として前記の培養した Bacillus su-btilis NBRC13719を湿潤重量で0.65g添加した以外は、前記アルギン酸−キトサンゲルビーズの調製試験と同様にしてサッチ分解菌内包アルギン酸−キトサンゲルビーズを調製した。
【0059】
得られたサッチ分解菌内包ゲルビーズの回収量及び回収率を連続相pHと共に表3に示す。また、図5に、連続相pHが2.2及び5.4の場合の得られたサッチ分解菌内包ゲルビーズの走査型電子顕微鏡写真図(a)(b)と、連続相pH2.2で得られたサッチ分解菌内包ゲルビーズの断面の走査型電子顕微鏡写真図(c)と、前記調製試験でキトサン5を用いて連続相pH2.2の条件で調製した菌なしのゲルビーズの断面の走査型電子顕微鏡写真図(d)を示す。なお、回収率は、〔回収したゲルビーズ(凝集物を含む)の重量×100〕/(アルギン酸Na質量+キトサン質量+菌重量)として算出した。

【0060】
【表3】

【0061】
図5の電子顕微鏡写真から、調製したサッチ分解菌内包アルギン酸−キトサンゲルビーズは、皮張り状の表面を有して内部全体が荒目のスポンジ状をなし、そのスポンジ状の空隙部にサッチ分解菌を含む内水相が充満したゲルビーズ形態であることが判る。また、表2の結果から、サッチ分解菌内包ゲルビーズの回収率が菌なしゲルビーズの回収率(表1参照)よりも若干低下している。これは、分散相のアルギン酸ナトリウム水溶液がサッチ分解菌を含むことで、連続相に対する分散性が低下する傾向を示している。
【0062】
参考例
既述キトサンの規格による3種のキトサンをそれぞれ用い、その1w/w%濃度のキトサン水溶液10mlに1v/v%相当の酢酸を添加混合して分散相を調製すると共に、ウォータージャケットを備えた密閉式の攪拌槽内に4w/w濃度のポリリン酸水溶液100mlを収容し、1M−水溶液ナトリウム水溶液を加えてpH調整を行い、この連続相を水冷によって液温4℃に維持しつつ、前記分散相のキトサン水溶液をシリンジによって滴下し、120rpmで緩やかに30分間攪拌してポリリン酸−キトサンゲルビーズを生成させたのち、ろ過・洗浄して得られるゲルビーズを凍結乾燥して回収した。
【0063】
このゲルビーズの回収量及び回収率とゲルビーズ生成状況を、使用したキトサンの粘度及び連続相pHと共に表4に示す。なお、回収率(%)は、〔回収したゲルビーズ(凝集物を含む)の重量×100〕/(ポリリン酸質量+キトサン質量)として算出した。また、ゲルビーズ生成状況は前記アルギン酸−キトサンゲルビーズの場合と同じ5段階で評価した。














【0064】
【表4】

【0065】
表4に示すように、キトサン50,300を用いて連続相のpHを5.4に調整した場合はゲルビーズが生成するが、キトサン5を用いた場合やキトサン50,300を用いても連続相のpHが未調整(pH2.2)である場合は良好なゲルビーズを生成できない。そこで、キトサン50,300を用いて連続相のpHを5.4に調整する条件で、分散相のキトサン水溶液にサッチ分解菌を添加混合し、前記同様にしてポリリン酸−キトサンゲルビーズを調製することを試みたが、連続相に分散相を分散させることが困難であり、良好なサッチ分解菌内包ゲルビーズを調製できなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境分解性ポリマーからなる多孔質のマイクロカプセルに、サッチ分解菌が内包されてなるサッチ分解菌内包マイクロカプセル。
【請求項2】
サッチ分解菌がBacillus subtilis属菌である請求項1に記載のサッチ分解菌内包マイクロカプセル。
【請求項3】
平均粒子径が10〜3,000μmの範囲にある請求項1又は2に記載のサッチ分解菌内包マイクロカプセル。
【請求項4】
前記多孔質のマイクロカプセルが内腔部を有し、その内腔部にサッチ分解菌を含む内水相が充満してなる請求項1〜3の何れかに記載のサッチ分解菌内包マイクロカプセル。
【請求項5】
前記多孔質のマイクロカプセルの環境分解性ポリマーがポリ−ε−カプロラクトンを主体とする請求項4に記載のサッチ分解菌内包マイクロカプセル。
【請求項6】
前記多孔質のマイクロカプセルがアルギン酸−キトサンゲルビーズからなる請求項1〜3の何れかに記載のサッチ分解菌内包マイクロカプセル。
【請求項7】
前記請求項1〜6の何れかに記載のサッチ分解菌内包マイクロカプセルを芝生地に散布することを特徴とする芝生地の保全方法。
【請求項8】
環境分解性の壁材ポリマーが低沸点有機溶媒に溶解されてなる有機相中に、サッチ分解菌を含む環境分解性の保護剤ポリマー水溶液を添加混合することにより、該有機相中に内水相としてサッチ分解菌を含む保護剤ポリマー水溶液の液滴が分散したS/Oエマルションを調製したのち、このS/Oエマルションを水相中に添加混合して所定時間の攪拌を行うことにより、外水相中に前記S/Oエマルションの液滴が分散したS/O/Wエマルションを調製し、次いで有機相中の有機溶媒を加温又は/及び減圧による液中乾燥で除去して壁材ポリマーをゲル化させることにより、環境分解性ポリマーからなる多孔質のマイクロカプセルの内腔部にサッチ分解菌を含む内水相が充満したマイクロカプセルを生成させることを特徴とするサッチ分解菌内包マイクロカプセルの製造方法。
【請求項9】
前記有機相がポリ−ε−カプロラクトンを主体とする環境分解性ポリマーをジクロロメタンを主成分とする低沸点有機溶剤に溶解したものであり、前記保護剤ポリマー水溶液がアルギン酸塩水溶液である請求項8に記載のサッチ分解菌内包マイクロカプセルの製造方法。
【請求項10】
前記ポリ−ε−カプロラクトンの平均分子量が10,000〜500,000である請求項9に記載のサッチ分解菌内包マイクロカプセルの製造方法。
【請求項11】
酸成分及び塩化カルシウムを含むキトサン水溶液からなる連続相に、サッチ分解菌を含むアルギン酸塩水溶液を分散相として滴下混合することにより、サッチ分解菌を内包したアルギン酸−キトサンゲルビーズを生成させたのち、ろ過・洗浄して得られたゲルビーズを凍結乾燥することを特徴とするサッチ分解菌内包マイクロカプセルの製造方法。
【請求項12】
前記キトサン水溶液の粘度が10mPa・s以下である請求項11に記載のサッチ分解菌内包マイクロカプセルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−83222(P2011−83222A)
【公開日】平成23年4月28日(2011.4.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−237984(P2009−237984)
【出願日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(504258527)国立大学法人 鹿児島大学 (284)
【Fターム(参考)】