説明

サツマイモ純麺の製造方法

【課題】本発明は、サツマイモの全ての栄養成分を含み、サツマイモの風味が豊かでしかも腰の強い、文字通りのサツマイモ100%麺を提供する。
【手段】 サツマイモを生のままで凍結し、解凍後に圧搾して汁液を分離する。汁液は直ちに加熱して酵素活性を失活させ、固形部は乾燥粉末にする。この汁液と粉を合わせ、真空麺帯機で製麺し、また汁液の一部を調味してタレにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サツマイモ以外の材料使わない麺の製造技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般にサツマイモうどんやサツマイモ素麺、サツマイモ蕎麦、サツマイモ冷麺などの名称で市販されている麺は多いが、これらは小麦粉や澱粉に、切干サツマイモ粉(カンコロ粉)や蒸しイモから作る乾燥フレークを練りこんで作られた麺である。
【0003】
サツマイモの粉は製麺性を損なうので、最大20%ほどしか添加できない。このため、いずれもサツマイモの香味には乏しく、ムラサキ系統やオレンジ系統のサツマイモによる色付けの目的が主体となっている。
【0004】
一方、長崎県にはカンコロ粉を捏ねて麺状に押し出した「六兵衛」という郷土料理があったが、サツマイモ粉だけではほとんど麺状を保ち得ないので、これも現在では小麦粉などが混ぜられている。
【0005】
しかしこれまでに、つなぎ材を用いずにサツマイモのみで麺を作る技術も2,3公開されている。サツマイモは水分が多く粘性が弱いため、そのままでは麺状にはならないので、水分を減らすことが必須要件である。
【0006】
そのひとつは、サツマイモを磨砕して水分を絞った後、蒸して団子状にし、これを麺状に伸ばす方法である。この方法では、麺状にはなるが腰が弱くて弾性に欠け、表面がべたついてしまうなどの欠点があった(特許文献1参照)。
【0007】
もうひとつは、生のサツマイモを凍結し、解凍後に圧搾して汁液を除き、固形部を乾燥粉末にした粉を用いている。その粉の一部を水に溶かして糊状にし、この糊をつなぎとして残りの粉を捏ねて麺状に伸ばす方法である。この方法によれば、小麦粉で作る麺や蕎麦にかなり近い触感の麺が得られる。しかしサツマイモの汁液成分が除かれているために、サツマイモの風味が弱い欠点があった(特許文献2参照)。
【0008】
【特許文献1】公開特許平4−94665
【特許文献2】公開特許平6−296471
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
サツマイモだけを材料とし、小麦や蕎麦の麺に引けをとらない弾力や腰やを有し、しかも十分にサツマイモの風味や栄養成分を保持したサツマイモ100%麺を作ることが課題である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1.まず前処理として、サツマイモを生の状態で凍結し、解凍後に圧搾して固形部と汁液を分離する。固形部は、乾燥して製粉機にかけ、細かい粉末にする。また汁液は、直ちに加熱して酵素を失活させておく。
【0011】
2.粉の一部(1/5程度)に汁液の一部(2/3程度)を混ぜ、加熱して糊状にしたものに残りの粉を入れ、十分に混和する。
【0012】
3.これを押出し式の製麺機に入れ、高温高圧をかけて麺状に押出す。押出し時の温度は、澱粉の糊化温度を上回ることが望ましい。
【0013】
4.押出された麺は、冷風を当ててほぐしながら冷却する。この麺は、直ちに茹でて供するのが望ましいが、時間を置く場合はなるべく早く冷凍しておく。
【0014】
5.さらに残りの汁液は、凝集物を濾し取ってから醤油やダシなどで味付けし、サツマイモの香りや甘味を活かしたつけ汁、あるいはダシ汁にする。
【発明の効果】
【0015】
生のサツマイモは保存性に欠けるので、麺を製造するためには乾燥粉末にしておく必要がある。
【0016】
通常行われている切干方式は、水分を蒸発させるために要する時間や経費が大きい。またサツマイモの可溶性成分は乾固された状態で粉に混じり、酵素活性も残っている。このため、たとえばこの切干粉を団子にした場合、黒褐色で甘い団子になる。また、蒸したり焼いたりしたサツマイモの香りとはまったく異なった匂いになる。
【0017】
これはサツマイモの可溶成分が変性した上、澱粉の一部も糖化されるためであり、従ってこの切干粉は、製麺適性も著しく劣っている。
【0018】
一方、前述の凍結搾汁方式による粉は、汁液成分の大部分が除かれているので乾燥は容易であり、団子にしても色が白く、甘みもない。したがって、その製麺適性も高い。
【0019】
しかしこの粉にはグルテンが含まれていないので、水で捏ねても麺状にはならない。そこで、先ず粉の一部を糊にし、この糊で残りの粉を捏ねることによって粉に接着力を持たせる。
【0020】
さらに高温高圧押出し式の製麺機を用いることにより、硬い麺状になると同時に、残りの澱粉がさらに糊化されてその弾力や腰を強くする。
【0021】
なおこの糊を作る際、水ではなく搾汁液を使用することにより、麺にサツマイモの風味や栄養が付加される。搾汁液は酵素活性を失わせてあるので澱粉を糖化する恐れもなく、製麺適性を損なわない。
【0022】
さらに、搾汁液の一部でつけ汁を作ることは、サツマイモの風味をより強調するとともに、サツマイモの持つ全ての栄養成分を利用することになる。文字通り全成分を活かした100%サツマイモ麺といえる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
イ.サツマイモを生のまま凍結し、解凍した後に圧搾して汁液を分離する。 重量にして約1/3の汁液が得られるので、これを直ちに85度以上にまで加熱し、冷蔵保存する。固形物はそのまま風乾し、粉砕機で細粉にする。粉の収量も約1/3である。
【0024】
ロ.この粉の一部(1/5程度)をとり、その3倍量ほどの汁液を加えて攪拌しながら加熱し、糊を作る。次に、残りの粉をこの糊に入れ、ミキサーで均一に混ぜて“おから”状にする。
【0025】
ハ.上記のようにして作成した混合物を、高温高圧押出し式真空製麺機((株)貴信:TK−FV)に投入し、真空度を保ちながらスパゲティ用ノズルから押出す。押出し温度が上がるに伴い麺が透明状になって安定し、極めて弾力性が強い麺になる。この麺は、押出し直後にポリ袋などに密封して冷凍すれば、この直後の状態を保つことができる。また、麺の茹で時間は約5分間が最適であり、非常に腰の強い麺が得られる。
【0026】
ニ.一方、前述の糊に使用した残りの汁液は、醤油、みりん、顆粒状のかつお調味料などを加えてタレにする。茹でた後水洗した麺をこのタレにつけて食すれば、サツマイモそのままの風味をが味わえる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
サツマイモは食糧自給率の低いわが国にとって、いざという際の最も頼りになる食糧である。しかし甘いことがむしろ欠点になり、主食には不向である。また、パンや麺などに加工することも難しい。
【0028】
本発明になるサツマイモ100%麺は、このようなサツマイモの欠点を克服したものであり、食材としての範囲を著しく広げるものである。
【0029】
また、近年は小麦や米、蕎麦などをアレルギー源とする児童が増え、大きな問題になっている。しかしサツマイモは最もアレルギーになりにくい食品であるので、サツマイモから100%麺ができることは、ノンアレルギー食品としての需要が大きい。
【0030】
サツマイモは穀類と野菜の両面を兼ねそなえた食品といわれ、種々の優れた機能性を備えていることが知られている。これらの有用成分を損なうことなく、すべてが美味しい麺の形で供される意義はきわめて大きい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)サツマイモを生のまま凍結し、解凍後に圧搾して汁液と固形物を分け、汁液は直ちに加熱して酵素を失活させ、一方の固形部は乾燥粉末にする工程と、(ロ)この粉の一部に汁液の一部を加えて糊とし、この糊に残る粉を混ぜたものを真空押出し式の製麺機を用いて製麺する工程との組み合わせによる、サツマイモ純麺の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のサツマイモ純麺と、汁液の一部に醤油その他の調味剤を加えて調味したタレを組み合わせることを特徴とする、サツマイモ純麺の製造方法。

【公開番号】特開2010−158229(P2010−158229A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−24262(P2009−24262)
【出願日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(509035761)株式会社ジーピーフーズ (1)
【Fターム(参考)】