説明

サブミリ波反射損失の測定方法及び測定装置

【課題】金属材料サンプルのサブミリ波反射特性(反射損失、反射率)を高精度に測定するための装置、及び方法を提供する。
【解決手段】本発明は、温度の異なる2つの熱放射体それぞれから発生する放射光について、当該放射光が参照経路を進行した場合と金属材料サンプルによる反射を伴って測定対象経路を進行した場合とで異なるサブミリ波の強度を測定し、当該測定結果を用いてサンプルの反射特性を算出するための装置、及び方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属材料を初めとする種々の測定対象サンプルに対するサブミリ波の反射損失を測定するための、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
波長が1mm〜0.1mmの電磁波はサブミリ波と呼ばれ、超新星爆発、天体形成など宇宙空間における現象の解明や、成層圏大気に含まれるClO、HClなど微量物質を検出することによるオゾン層破壊メカニズムの研究など、主には学術研究の目的において、その観測が行われている。
【0003】
一方、上記研究対象の現象に関して放出されるサブミリ波は一般に微弱であり、そのようなサブミリ波を高い精度で観測するためには、観測システム自体が測定対象のサブミリ波に及ぼす影響を無視することができない。具体的には、観測システムに含まれる光学系を構成するレンズや反射鏡によりサブミリ波を収束、反射させた際に生じる損失や、同じく観測システムに含まれる受信機内の種々のデバイスから生じる熱雑音が測定結果へ及ぼす影響などを計算に入れて、測定結果を分析しなければならない。
【0004】
しかしながら、サブミリ波の観測が上記の研究手法として用いられるようになったのは比較的最近であり、そのような観測システムに起因する測定結果への影響を評価するための手法として確立されたものは、未だ存在しない。関連する先行技術文献としては、以下の非特許文献1が挙げられるものの、当該文献において開示されている測定は波長1mm以上の電磁波に関するものである。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】J.J.Bock, M.K.Parikh, M.L.Fischer, and A.E.Lange, ”Emissivity measurements of reflective surfaces at near-millimeter wavelengths”, APPLIED OPTICS/Vol.34, No.22, 4812-4816/ 1 August1995
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで本発明は、金属材料のサブミリ波反射特性(反射損失、反射率)を高精度に測定するための装置、及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、測定対象サンプルの測定対象サブミリ波に対する反射損失を決定するための装置であって、温度が異なる2つの熱放射体のうち、選択された一方から熱放射により放射光を発生させる、放射光発生部と、放射光発生部で発生した放射光の進行経路として、参照経路と、測定対象サンプルにより放射光が少なくとも1回反射される測定対象経路と、のいずれか一方を選択的に提供することにより放射光の進行を制御する、放射光進行制御部と、放射光が入射され、入射された放射光に放射光成分として含まれる測定対象サブミリ波を出力する、測定対象サブミリ波出力部と、局部発振信号を出力する、局部発振信号出力部と、測定対象サブミリ波と局部発振信号とを受信し、受信した測定対象サブミリ波と局部発振信号とを超伝導SISミキサによりミキシングすることで得られる中間周波数信号を測定することによって測定対象サブミリ波の強度を測定する、測定対象サブミリ波測定部とを備え、温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象サブミリ波の強度を測定対象サブミリ波測定部で測定した測定結果と、温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象サブミリ波の強度を測定対象サブミリ波測定部で測定した測定結果と、を用いて反射損失を決定することを可能とすることを特徴とする装置を提供する。
【0008】
上記装置を用いれば、温度が異なる熱放射体から発生する放射光の各々について、当該放射光が参照経路を進行した場合と測定対象経路を進行した場合とでは損失が異なり、すなわち測定対象サブミリ波測定部での測定結果も異なることを利用して、いずれの熱放射体から発生したか、及びいずれの経路を進行したか、に応じて変化するサブミリ波の強度を測定することにより測定対象経路の反射損失を決定することが可能となる。ここで、上記装置を用いて測定対象サンプルの反射損失を決定するために、上記参照経路による損失が既知である必要はない。後述の実施例にて説明するとおり、参照経路を構成する光学系と測定対象経路を構成する光学系との差異が測定対象サンプルの有無のみであるよう、すなわち両経路で生じる損失の違いが測定対象サンプルの存在によるものであるよう、両経路を構成すれば、参照経路による損失が未知であっても当該測定対象サンプルによる損失への寄与を決定できるからである。あるいは、既知の損失を有する光学系によって参照経路を構成し、参照経路における損失と同一の、又は異なる既知の損失を有する光学系と測定対象サンプルとによって測定対象経路を構成するなど、別の態様で上記装置を構成することも可能である。
【0009】
あるいは、本発明の装置を、測定対象サンプルの測定対象波長域光に対する反射損失を決定するための装置であって、温度が異なる2つの熱放射体のうち、選択された一方から熱放射により放射光を発生させる、放射光発生部と、放射光発生部で発生した放射光の進行経路として、参照経路と、測定対象サンプルにより放射光が少なくとも1回反射される測定対象経路と、のいずれか一方を選択的に提供することにより放射光の進行を制御する、放射光進行制御部と、放射光を受信して、受信した放射光に放射光成分として含まれる測定対象波長域光の強度を測定する、測定対象波長域光測定部とを備え、温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を測定対象波長域光測定部で測定した測定結果と、温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を測定対象波長域光測定部で測定した測定結果と、を用いて反射損失を決定することを可能とすることを特徴とする、装置として構成することができる。
【0010】
本発明の装置は、サブミリ波に限らず任意の測定対象波長域光に対する測定対象サンプルの反射損失を決定するための装置として構成することが可能である。サブミリ波のように周波数が非常に高い電磁波を測定する際には、超伝導SIS(Superconductor Insulator Superconductor)ミキサなどを用いて当該電磁波を局部発振信号(LO信号)とミキシングすることにより、当該電磁波を一旦より周波数の低い中間周波数信号(IF信号)へと変換したうえで測定することが一般的であるが、このようなプロセスを経ることは必須ではない。また超伝導SISミキサを用いた超伝導SIS受信機は、典型的には両サイドバンド受信機(DSB受信機)として構成されるが、本発明の装置に用いる測定対象波長域光測定部は任意の片サイドバンド受信機(SSB)であってもよく、したがってイメージバンドの影響を除去するためにMPI干渉計(Martin−Puplett Interferometer)などの測定対象サブミリ波出力部を設けることも必須ではない。
【0011】
上記本発明の装置を、測定対象波長域光として特にサブミリ波を測定するための装置として、放射光進行制御部により進行が制御された放射光が入射され、入射された放射光に放射光成分として含まれる測定対象サブミリ波を出力する、測定対象サブミリ波出力部と、局部発振信号を出力する、局部発振信号出力部とをさらに備えるよう構成し、さらに本発明の装置における測定対象波長域光測定部を、測定対象サブミリ波と局部発振信号とを受信し、受信した測定対象サブミリ波と局部発振信号とを超伝導SISミキサによりミキシングすることで得られる中間周波数信号を測定することによって測定対象サブミリ波の強度を測定する、測定対象サブミリ波測定部として構成することができる。
【0012】
既に述べたとおり、本発明の装置は任意の測定対象波長域光を測定するための装置として構成することができ、したがって測定のプロセスや用いる受信機も本発明の範囲内で適宜選択することが可能である。その一方で、後述の実施例において測定データを用いて説明するとおり、本発明の装置は特にサブミリ波を測定するための装置として優れている。熱放射体から放射されるサブミリ波が微弱な場合、あるいは測定対象サンプルによる損失が微小な場合であっても、本発明の教示に従い参照経路と測定対象経路とを構成した上で、それぞれの経路を進行した放射光に含まれるサブミリ波を超伝導SISミキサによるヘテロダインミキシングを利用して測定すれば、反射損失を高精度で決定できる。
【0013】
本発明において、上記温度が異なる2つの熱放射体は、環境温度に基づいて定められる第1の温度の熱放射体と、第1の温度よりも低い第2の温度の熱放射体とからなるよう構成することができる。
【0014】
後述の実施例において説明するとおり、一方の熱放射体の温度を環境温度に一致させた上で測定を行えば、当該環境温度と他方の熱放射体の温度との具体的数値が未知であっても反射損失を決定できる。また、上記一方の熱放射体の温度と環境温度とが完全に一致していなくても、反射損失決定に際して要求される測定精度などに応じて、環境温度に基づき適宜熱放射体の温度を調整すれば、上記各温度を用いずに反射損失を決定することが可能である。なお、低温側の熱放射体の温度は環境温度と無関係に任意に選択することが可能である。後述の実施例において当該温度は液体窒素温度とされているが、これとは異なる温度の熱放射体を用いることも可能である。この点については、本発明における後述の各態様においても同様である。
【0015】
本発明の装置における上記測定対象経路を、測定対象サンプルにより放射光が一定角度で多重反射されるよう構成することができる。多重反射により損失を累積させれば、より高精度で反射損失を決定することが可能となる。
【0016】
本発明の装置には、測定対象波長域光が入射され、当該入射された測定対象波長域光を偏波方向に応じて選択的に透過させることにより、測定対象波長域光測定部が強度を測定する測定対象波長域光の偏波方向を制御する、偏波方向制御部をさらに備えることができる。
【0017】
このように測定対象波長域光の偏波方向を制御すれば、測定対象波長域光の偏波方向に応じて変化しうる測定対象サンプルの反射損失を正確に決定することが可能となる。
【0018】
また本発明は、測定対象サンプルの測定対象サブミリ波に対する反射損失を決定するための方法であって、放射光発生部により、温度が異なる2つの熱放射体のうち、選択された一方から熱放射により放射光を発生させる段階と、放射光進行制御部により、放射光発生部で発生した放射光の進行経路として、参照経路と、測定対象サンプルにより放射光が少なくとも1回反射される測定対象経路と、のいずれか一方を選択的に提供することにより放射光の進行を制御する段階と、測定対象サブミリ波出力部により、放射光の入射を受け、入射された放射光に放射光成分として含まれる測定対象サブミリ波を出力する段階と、局部発振信号出力部により、局部発振信号を出力する段階と、測定対象サブミリ波測定部により、測定対象サブミリ波と局部発振信号とを受信し、受信した測定対象サブミリ波と局部発振信号とを超伝導SISミキサでミキシングすることにより得られる中間周波数信号を測定することによって測定対象サブミリ波の強度を測定する段階と、温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象サブミリ波の強度を測定対象サブミリ波測定部で測定した測定結果と、温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象サブミリ波の強度を測定対象サブミリ波測定部で測定した測定結果と、を用いて反射損失を決定する段階とを含むことを特徴とする、方法を提供する。
【0019】
上記方法を用いれば、本発明の装置と同様の原理に従い反射損失を決定することが可能となる。すなわち、参照経路による損失が未知であっても(反射損失が既知であるような参照用サンプルを別途用意する必要なく)、サブミリ波に対する測定対象サンプルの反射損失を決定することが可能となる。
【0020】
あるいは本発明の方法を、測定対象サンプルの測定対象波長域光に対する反射損失を決定するための方法であって、放射光発生部により、温度が異なる2つの熱放射体のうち、選択された一方から熱放射により放射光を発生させる段階と、放射光進行制御部により、放射光発生部で発生した放射光の進行経路として、参照経路と、測定対象サンプルにより放射光が少なくとも1回反射される測定対象経路と、のいずれか一方を選択的に提供することにより放射光の進行を制御する段階と、測定対象波長域光測定部により、放射光を受信して、受信した放射光に放射光成分として含まれる測定対象波長域光の強度を測定する段階と、温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を測定対象波長域光測定部で測定した測定結果と、温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を測定対象波長域光測定部で測定した測定結果と、を用いて反射損失を決定する段階とを含むことを特徴とする方法として構成することができる。
【0021】
本発明の方法は、サブミリ波に限らず任意の測定対象波長域光に対する測定対象サンプルの反射損失を決定するための方法として構成することが可能であって、超伝導SISミキサなどによるミキシングやMPI干渉計などによるイメージバンドの影響の除去も必須ではない。
【0022】
上記本発明の方法を、測定対象波長域光として特にサブミリ波を測定するための方法として、測定対象サブミリ波出力部において、放射光進行制御部により進行が制御された放射光が入射され、入射された放射光に放射光成分として含まれる測定対象サブミリ波を出力する段階と、局部発振信号出力部によって局部発振信号を出力する段階とをさらに含むよう構成し、さらに本発明の方法における測定対象波長域光の強度を測定する段階を、測定対象波長域光測定部により測定対象サブミリ波と局部発振信号とを受信し、受信した測定対象サブミリ波と局部発振信号とを超伝導SISミキサによりミキシングすることで得られる中間周波数信号を測定することによって測定対象サブミリ波の強度を測定する段階として構成することができる。
【0023】
本発明の装置と同様に、本発明の方法も、特にサブミリ波を測定するための方法として優れている。上記のとおり本発明の方法を構成すれば、熱放射体から放射されるサブミリ波が微弱な場合、あるいは測定対象サンプルによる損失が微小な場合であっても反射損失を高精度で決定できる。
【0024】
上記方法において放射光を発生させる段階は、環境温度に基づいて定められる第1の温度の熱放射体と、第1の温度よりも低い第2の温度の熱放射体と、のうち、選択された一方から熱放射により放射光を発生させる段階とすることができる。
【0025】
本発明の装置に関して既に述べたことと同様に、このような構成をとれば、環境温度と低温側の熱放射体の温度が未知であっても反射損失を決定できる。高温側の熱放射体の温度を環境温度に完全に一致させる必要はない点についても、本発明の装置に関して述べたとおりである。
【0026】
上記方法における、測定対象経路による上記放射光の進行の制御とは、当該測定対象サンプルにより放射光を一定角度で多重反射させることを含む制御であってよい。多重反射により損失を累積させれば、より高精度で反射損失を決定することが可能となる。
【0027】
本発明の方法は、偏波方向制御部において測定対象波長域光の入射を受け、当該入射された測定対象波長域光を偏波方向に応じて選択的に透過させることにより、測定対象波長域光測定部が強度を測定する測定対象波長域光の偏波方向を制御する段階をさらに含むものであってよい。このような構成により、偏波方向に応じて変化しうる測定対象サンプルの反射損失を正確に決定することが可能となる。
【0028】
本発明の方法においては、上記反射損失を決定する段階を、環境温度と、2つの熱放射体それぞれの温度と、(i)温度が異なる2つの熱放射体の一方から発生して参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、測定対象波長域光測定部からの出力電力と、(ii)温度が異なる2つの熱放射体の他方から発生して参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、測定対象波長域光測定部からの出力電力と、の比と、(iii)温度が異なる2つの熱放射体の一方から発生して測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、測定対象波長域光測定部からの出力電力と、(iv)温度が異なる2つの熱放射体の他方から発生して測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、測定対象波長域光測定部からの出力電力と、の比とを用いて反射損失を決定する段階とすることができる。
【0029】
一実施例として後に説明するとおり、本発明の方法によれば、環境温度、2つの熱放射体それぞれの温度、及び、参照経路と測定対象経路のそれぞれに関して決定される、高温側熱放射体からの放射について測定した場合と低温側熱放射体からの放射について測定した場合での測定対象波長域光測定部からの出力電力の比を用いて、測定対象サンプルの反射損失を算出することが可能である。
【0030】
本発明の方法においては、反射損失を決定する段階を、(i)温度が異なる2つの熱放射体の一方から発生して参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、測定対象波長域光測定部からの出力電力と、(ii)温度が異なる2つの熱放射体の他方から発生して参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、測定対象波長域光測定部からの出力電力と、の比と、(iii)温度が異なる2つの熱放射体の一方から発生して測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、測定対象波長域光測定部からの出力電力と、(iv)温度が異なる2つの熱放射体の他方から発生して測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、測定対象波長域光測定部からの出力電力と、の比とを用いて反射損失を決定する段階とすることができる。
【0031】
2つの熱放射体のうち、高温側の放射体の温度が環境温度に等しいと仮定した場合、本発明の方法によって反射損失を決定するために当該環境温度と低温側の熱放射体の温度とを知ることは不要であり、上記反射損失を決定する段階は単純化される。ただし、高温側の熱放射体の温度と環境温度との一致が完全である必要はなく、反射損失決定の際に要求される測定精度などに応じて、環境温度に基づき適宜熱放射体の温度を調整した上で、上記単純化された方法に従い反射損失を決定することができる。
【0032】
さらに、本発明は、特に偏波方向制御部による測定対象波長域光の偏波方向制御を伴うような上記反射損失の決定方法を用いて、偏波方向制御部により制御された第1の偏波方向を有する測定対象波長域光に対する、測定対象サンプルの第1の反射損失を決定する段階と、当該決定方法を用いて、偏波方向制御部により制御された第2の偏波方向を有する測定対象波長域光に対する、測定対象サンプルの第2の反射損失を決定する段階と、第1の反射損失と第2の反射損失とを用いて、測定対象サンプルを同定する段階とを含む、測定対象サンプルの分析方法を提供する。
【0033】
一実施例として後に説明するとおり、上記第1及び第2の偏波方向それぞれに応じて実験的に決定される反射損失と、種々の材料に対して理論的に計算される反射損失とを照合することにより、測定対象サンプルがどのような材料から構成されているかを分析することが可能である。
【発明の効果】
【0034】
本発明の装置、方法を用いれば、金属材料のサブミリ波反射特性を高精度で決定することが可能となる。測定において反射損失が既知であるような参照用サンプルを用いる必要はなく、反射損失は典型的に、環境温度、2つの熱放射体それぞれの温度、及び、参照経路と測定対象経路のそれぞれについて決定される、受信機からの出力電力の比(高温側熱放射体から発生した放射光に含まれるサブミリ波を受信した受信機からの出力電力と、低温側熱放射体から発生した放射光に含まれるサブミリ波を受信した受信機からの出力電力との比)を用いて算出される。
【0035】
また、測定対象経路においてサブミリ波を多重反射させることにより、反射損失の決定精度を向上させることが可能であるし、さらに決定された反射損失からサンプルを同定することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態である反射損失決定装置の全体構成図である。
【図2】図1の装置を用いて、周波数625.32GHzのサブミリ波に対する、ある測定対象サンプルの反射損失を偏波方向ごとに実験的に決定した結果を表すグラフである。
【図3】図1の装置を用いて、周波数625.32GHzのサブミリ波に対する、ある測定対象サンプルの反射損失を偏波方向ごとに実験的に決定した結果を表すグラフである。
【図4】図1の装置を用いて、周波数625.32GHzのサブミリ波に対する、ある測定対象サンプルの反射損失を偏波方向ごとに実験的に決定した結果を表すグラフである。
【図5】図1の装置を用いて、周波数625.32GHzのサブミリ波に対する、ある測定対象サンプルの反射損失を偏波方向ごとに実験的に決定した結果を表すグラフである。
【図6】図1の装置を用いて、周波数625.32GHzのサブミリ波に対する、ある測定対象サンプルの反射損失を偏波方向ごとに実験的に決定した結果を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
これより図面を用いて、本発明に係る反射損失決定装置、及び決定方法を説明する。但し、本発明に係る装置、方法の構成は、各図面にて示される特定の具体的構成へと限定されるわけではなく、本発明の範囲内で適宜変更可能である。
【0038】
反射損失決定装置1の構成
図1は、本発明の一実施形態である反射損失決定装置1の全体構成図である。反射損失決定装置1は、熱放射体から放射光を発生させてその進行を制御するための放射光制御光学系2と、放射光制御光学系2の制御を受けた放射光の入射を受けて、当該放射光に放射光成分として含まれるサブミリ波を測定するためのサブミリ波測定光学系3と、から構成される。
【0039】
放射光制御光学系2
放射光制御光学系2は、常温に保たれた高温側熱放射体4、及び液体窒素温度(77K)に保たれた低温側熱放射体5のいずれか一方が設けられた放射光発生部と、平面鏡6、凹面鏡7〜10、及び測定対象サンプル11〜13を図1に示す位置に設置するためのサンプル溝(不図示)からなる放射光進行制御部と、から構成される。ここで測定対象サンプル11〜13とは、測定対象サブミリ波に対する反射損失が未知の、典型的にはアルミ合金など任意の金属材料からなる金属板である。
【0040】
放射光発生部は、いずれかの熱放射体から選択的に放射光を発生させるよう構成される。後述のとおり、高温側熱放射体4の温度を環境温度に一致させれば反射損失の算出方法が単純化されるが、このような温度設定は必須ではなく、任意の温度の熱放射体を用いることができる。低温側熱放射体5も、液体窒素温度とは異なる任意の温度の熱放射体であってよい。なお、熱放射体4、5から発生した放射光は、発生時点では特定の指向性を持たないが、放射光制御光学系2内の凹面鏡7〜10などにより反射される過程で収束し、ビームを形成しながら進行する。図1中の矢印は、このビームの進行方向を表している。本実施例においては、さらに後述の超伝導SIS受信機側に一次放射器(不図示)を設けることで、図1中の矢印により示される方向のビームのみに感度を有するような受信機を構成している。ただし、放射光のビーム化はこれ以外の方法により適宜行うことも可能である。例えば、放射光発生部から発生した放射光に適切なスリット(不図示)などを通過させることにより、放射光ビームを形成することも可能である。以下では、放射光発生部から放射光進行制御部へ入射した放射光を「放射光ビーム」と呼ぶが、この「放射光ビーム」とは、スリットを通過することによりビーム化された放射光であってもよいし、又は放射光制御光学系2内の種々の反射鏡からの作用によりビームへと収束しつつ進行する放射光であってもよい。
【0041】
放射光進行制御部は、発生した放射光ビームに、測定対象サンプル11〜13が設置されていない状態においては参照経路を進行させ、そして測定対象サンプル11〜13が設置されている状態においては測定対象経路を進行させて、放射光ビームの進行を制御する。すなわち、測定対象サンプル11〜13が設置されていない場合、熱放射体4、5のいずれか一方から発生した放射光ビームは、まず平面鏡6により反射され、次に凹面鏡7、8、9により反射されるよう進行し(参照経路を進行し)、サブミリ波測定光学系3に入射する。一方、測定対象サンプル11〜13が設置されている場合、熱放射体4、5のいずれか一方から発生した放射光ビームは、まず平面鏡6により反射され、次に凹面鏡7により反射され、さらに測定対象サンプル11と12との間で多重反射され(図1の例においては5回反射され)、凹面鏡10により反射され、測定対象サンプル11と13との間で多重反射され(図1の例においては5回反射され)、凹面鏡9により反射されるよう進行したうえで(測定対象経路を進行したうえで)、サブミリ波測定光学系3に入射する。
【0042】
なお、参照経路と測定対象経路とは長さが等しく、また凹面鏡8と凹面鏡10とは鏡面の曲率半径が同一のレンズであり、放射光ビームが参照経路を進行する際に凹面鏡8に入射する角度及び凹面鏡8内での入射位置は、放射光ビームが測定対象経路を進行する際に凹面鏡10に入射する角度及び凹面鏡10内での入射位置にそれぞれ等しくなるよう構成される。この場合、放射光ビームがいずれの経路を進行したかに応じて生じる損失の違いは、測定対象サンプル11〜13の存在によるものとなる。
【0043】
また、図1の構成において、測定対象経路を進行する放射光ビームは測定対象サンプル11、12、13により合計10回反射されるが、各反射に際して放射光ビームがサンプルに入射する角度は全て等しい。このように系を構成すれば、一定の入射角に対応した反射損失の累積によるビーム強度の低下を測定することができるため、特定入射角に関する測定対象サンプルの反射特性を高精度で決定することが可能となる。
【0044】
サブミリ波測定光学系3
サブミリ波測定光学系3は、凹面鏡14〜18、ルーフトップミラー19〜20、ワイヤグリッド21〜25、電波吸収体26〜28、局部発振器29、超伝導SISミキサ30、及び1以上の増幅器31から構成される。
【0045】
凹面鏡14〜18はそれぞれ、放射光制御光学系2から入射した放射光に放射光成分として含まれるサブミリ波の強度を測定するために、当該入射した放射光ビーム、当該入射した放射光ビームから分離されたビーム、放射光ビームから取り出された測定対象サブミリ波ビーム、測定対象サブミリ波ビームとミキシングさせるための局部発振信号、及び、超伝導SISミキサ30にてミキシングすべき、当該測定対象サブミリ波ビームと当該局部発振信号のそれぞれの進行方向を調整するための反射鏡である。ワイヤグリッド21〜25は金属ワイヤが一方向に周期的に配列されてなる光学素子であり、入射した放射光ビーム、又はサブミリ波ビームのうち特定の偏波方向を有する成分を選択的に透過・反射させるために用いられる。電波吸収体26〜28は、ワイヤグリッドにより偏波方向に応じて分離された放射光ビーム及びサブミリ波ビームのうち、測定対象ではないものを吸収させるためのものである。
【0046】
ルーフトップミラー19〜20とワイヤグリッド22とは、測定対象サブミリ波出力部としてのMPI干渉計を構成する。MPI干渉計を設けることにより、放射光制御光学系2から入射し、凹面鏡14とワイヤグリッド21による制御を受けて進行した放射光ビームのうち、イメージバンドに対応するサブミリ波成分が抑えられ、測定対象とするサブミリ波成分が出力される。
【0047】
ワイヤグリッド21、23、24は偏波方向制御部を構成し、所定の偏波方向を有するサブミリ波ビームを超伝導SISミキサ30へと入射させ、一方で当該所定の偏波方向とは異なる偏波方向を有するサブミリ波ビームを電波吸収体26〜28へと入射させるよう、サブミリ波ビーム(又は、当該サブミリ波ビームを放射光成分として含む放射光ビーム)の進行を制御する。図1の構成においては偏波方向に関する分離を完全に行うために3つのワイヤグリッドを用いているが、個々のワイヤグリッドの性能や要求される測定精度に応じてその個数は適宜変更可能である。また、偏波方向を特定せずにサブミリ波の強度を測定する場合、これらワイヤグリッドは不要である。
【0048】
局部発振信号出力部として、局部発振器29は、測定対象サブミリ波とのミキシングにより中間周波数信号を発生させるための局部発振信号を出力する。ミキシングによってサブミリ波を周波数の低い中間周波数信号へと変換すれば、その後の増幅や検出処理が容易になる。
【0049】
超伝導SISミキサ30、増幅器31、及び必要に応じて適宜設けられるワイヤグリッド25や凹面鏡18などの光学素子、及びパワーメータ(不図示)などの分析装置は、測定対象サブミリ波測定部としての超伝導SIS受信機を構成する(または、これら要素と局部発振器29とを含めた構成を超伝導SIS受信機としてもよい。)。
【0050】
超伝導SISミキサ30は、Nb/AlOx/Nbのような、超伝導体層、絶縁体層、超伝導体層の各層をトンネル接合してなる素子である。測定対象サブミリ波ビームと局部発振信号とが超伝導SISミキサ30によりミキシングされ、中間周波数信号が発生する。量子トンネル現象を利用した、このヘテロダインミキシングにより、低雑音で高感度の電磁波受信が可能となる。超伝導状態を維持するため、超伝導SISミキサ30はクライオスタット内にて4.5Kに冷却されている。
【0051】
増幅器31は、超伝導SISミキサ30から発生した中間周波数信号を増幅し、パワーメータによる分析を容易にするための素子である。増幅器31としては、HEMT(High−Electron−Mobility−Transistor:高移動度トランジスタ)増幅器を用いることができる。増幅器31により中間周波数信号が増幅され、パワーメータにてその強度が測定される。パワーメータにおけるサブミリ波強度の測定結果(Pout)は適切な計算機(不図示)に送信され、当該計算機により、後述の方法を用いて反射損失が算出される。好ましい一実施形態において、HEMT増幅器は冷凍機を用いて20Kに冷却されており、超伝導SISミキサ30と共に低雑音(高感度)な超伝導SIS受信機を構成する。
【0052】
なお、以下では、測定対象サンプル11〜13がサンプル溝に設置されていない状態の放射光制御光学系2とサブミリ波測定光学系3とからなる系を参照光学系と呼び、測定対象サンプル11〜13がサンプル溝に設置されている状態の放射光制御光学系2とサブミリ波測定光学系3とからなる系を測定対象光学系と呼ぶ。
【0053】
反射損失決定装置1による、反射損失決定処理
次に、図1の反射損失決定装置1を用いた反射損失決定処理を説明する。
【0054】
(1)超伝導SIS受信機による測定対象サブミリ波強度の測定
まず、反射損失を算出するためのパラメータとして、それぞれの熱放射体から発生した放射光ビームがそれぞれの経路を進行した場合について、当該放射光に放射光成分として含まれる測定対象サブミリ波の強度を測定する。具体的には、高温側熱放射体4から発生して参照経路を進行した放射光ビームに含まれる測定対象サブミリ波を受信した超伝導SIS受信機からの出力電力と、低温側熱放射体5から発生して参照経路を進行した放射光ビームに含まれる測定対象サブミリ波を受信した超伝導SIS受信機からの出力電力と、高温側熱放射体4から発生して測定対象経路を進行した放射光ビームに含まれる測定対象サブミリ波を受信した超伝導SIS受信機からの出力電力と、低温側熱放射体5から発生して測定対象経路を進行した放射光ビームに含まれる測定対象サブミリ波を受信した超伝導SIS受信機からの出力電力と、をそれぞれ測定する。
【0055】
一例として、高温側熱放射体4から発生した放射光ビームが参照経路を進行してサブミリ波測定光学系3に入射した場合の、超伝導SIS受信機からの出力電力の測定を説明する。この測定を行うため、放射光発生部には高温側熱放射体4を設ける一方、測定対象サンプル11〜13のサンプル溝への設置は行わない。
【0056】
高温側熱放射体4から発生した放射光ビームは、参照経路を進行してサブミリ波測定光学系3に入射する。ワイヤグリッド21により、入射した放射光ビームは偏波方向に応じて分離される。一方の偏波方向を有する成分はワイヤグリッド22へと入射する一方、もう一方の成分は電波吸収体26により吸収される。このように、MPI干渉計で処理する放射光ビームの偏波方向をあらかじめ整えておけば、SIS受信機での測定結果に対するイメージバンドの影響を更に小さくすることができる。
【0057】
ワイヤグリッド22に入射した放射光ビームのうち、ワイヤグリッド22で反射された後にルーフトップミラー19で反射され、ワイヤグリッド22を透過する成分と、ワイヤグリッド22を透過した後にルーフトップミラー20で反射され、ワイヤグリッド22で反射される成分と、が干渉する結果、凹面鏡16へと進行するビームにおいてはイメージバンドの成分が抑えられる。
【0058】
このようにイメージバンド成分が抑えられたビーム(測定対象サブミリ波ビーム)は凹面鏡16により反射され、ワイヤグリッド23、24に順次入射する。ワイヤグリッド23、24によって、測定対象サブミリ波ビームからは測定対象としない偏波方向の成分が分離され、それら分離された成分は電波吸収体28、27により吸収される。なお、このような偏波方向の制御はSIS受信機内でワイヤグリッド25(及び、図示しない適切な電波吸収体)によっても行えるため、ワイヤグリッド23、24に代わり適当な透過率の誘電体を用いて、SIS受信機に入射するビームの強度を調整してもよい。
【0059】
偏波方向が制御された、又は強度が調整された、測定対象サブミリ波ビームは、ワイヤグリッド25や凹面鏡18による反射などを経て、超伝導SISミキサ30に入射する。超伝導SISミキサ30は、測定対象サブミリ波ビームと、局部発振器29から発生し、電磁ホーンを介して発信された局部発振信号とを、SIS受信機側の電磁ホーンを用いて受信し、これらビームと信号とをミキシングすることにより中間周波数信号を出力する。中間周波数信号は、増幅器31により処理に適したレベルまで増幅され、パワーメータによりその出力電力が測定される。本実施形態においては、局部発振器29から周波数613.32GHzの局部発振信号を出力し、ミキシングにより発生した中間周波数12GHzの中間周波数信号をパワーメータで検出することにより(パワーメータは、11GHzから13GHzまでの2GHzのIF帯域幅を測定対象とするよう設定した。)、周波数625.32GHzのサブミリ波の強度を測定した。
【0060】
その他の場合の測定対象サブミリ波強度測定も、同様に行うことができる。すなわち、高温側熱放射体4から発生した放射光ビームが測定対象経路を進行してサブミリ波測定光学系3に入射した場合の、超伝導SIS受信機からの出力電力を測定するためには、放射光発生部に高温側熱放射体4を設け、さらに測定対象サンプル11〜13をサンプル溝へと設置した上で、上記測定と同様に出力電力を測定すればよい。
【0061】
さらに、放射光発生部に設ける熱放射体を低温側熱放射体5へと交換した上で、放射光ビームが参照経路と測定対象経路のそれぞれを進行してサブミリ波測定光学系3に入射した場合における超伝導SIS受信機からの出力電力の測定を行う。
【0062】
なお、これら4回の出力電力の測定は、任意の順序で行うことが可能である。また、参照経路として損失が既知の経路を用いる態様においては、熱放射光が参照経路を進行した場合の出力電力として、測定値ではなく後述の(1)式から得られる理論値を用いてよい。したがって、上記4回の測定動作を全て行うことも必須ではない。
【0063】
(2)超伝導SIS受信機の出力電力を用いた反射損失の決定
次に、上記4回の測定動作から得られた(または、一部が理論値として得られた)それぞれの出力電力を用いて反射損失を決定するための方法を説明する。なお、以下の方法に含まれる各計算を計算機で行うことは必須ではなく、装置の操作者が行ってもよい。
【0064】
まず、反射損失決定のための計算で用いるパラメータを以下のとおり定義する。
・受信機の入力換算雑音温度と利得:TRXとGRX
・高温側熱放射体の温度と低温側熱放射体の温度:ThとTc
・環境温度:Tamb
・参照経路の利得:Gref
・測定対象経路の利得:Gsmplref
なお、ここにおける利得とは(出力電力/入力電力)を表す量であり、また本実施例においては損失を(1−利得)として、又はそのような量を百分率で表した値として定義する。
【0065】
上記パラメータ中、受信機の入力換算雑音温度TRXとは、サブミリ波受信時に超伝導SIS受信機内で発生する、単位帯域幅あたりの熱雑音電力を温度で表したものである。超伝導SISミキサ30によるミキシング、増幅器31による増幅、及びIFケーブルによる信号の伝達などに起因して超伝導SIS受信機から発生する熱雑音電力は、ボルツマン定数をk、超伝導SIS受信機の周波数帯域幅をBとして、kTRXBで与えられる。ただし、このような熱雑音電力の信号は超伝導SIS受信機を経由してパワーメータへと出力されるため、熱雑音電力による出力電力への寄与はGRXkTRXBと表される。
【0066】
また、特に図1に示される構成においては、参照経路を構成する光学系に測定対象サンプル11〜13を追加することで測定対象経路が構成されている。したがって、測定対象経路の利得は、上記定義したとおり参照経路の利得Grefと測定対象サンプル11〜13による反射に対応する利得Gsmplとの積で表すことができる。
【0067】
これらパラメータを用いれば、放射光に含まれるサブミリ波を測定した超伝導SIS受信機からの出力電力を、放射光が参照経路を進行した場合は以下の(1)式により、測定対象経路を進行した場合は以下の(2)式により、それぞれ表すことができる。
outref(Tin)=[Grefin+(1−Gref)Tamb+TRX]GRXkB
…(1)
outsmpl(Tin
=[Gsmplrefin+(1−Gsmplref)Tamb+TRX]GRXkB
…(2)
ただしTinは、測定に用いた熱放射体の温度(Th又はTc)を表す。
【0068】
上記(1)式を、以下のとおり変形することができる。
outref(Tin
=[Tin+(1/Gref−1)Tamb+TRX/Gref]GrefRXkB
…(3)
【0069】
上記(3)式より、出力電力Poutref(Tin)は、温度Tinの熱放射体による放射に起因する出力と、参照経路による利得も反映した上での環境温度や受信機雑音に起因する出力とに分けられる。後者に対応する雑音温度TRX,refを、以下では入力換算参照光学系雑音温度と呼ぶ。すなわち、TRX,refは以下の(4)式で定義される。
RX,ref=(1/Gref−1)Tamb+TRX/Gref …(4)
また、Yref=Poutref(Th)/Poutref(Tc)として与えられる参照光学系のYファクタを用いれば、TRX,refを以下のとおり表すことができる。
RX,ref=(1/Gref−1)Tamb+TRX/Gref
=(Th−Yrefc)/(Yref−1) …(5)
【0070】
(3)式と同様に、上記(2)式を以下のとおり変形することができる。
outsmpl(Tin
=[Tin+{1/(Gsmplref)−1}Tamb+TRX/(Gsmplref)]GsmplrefRXkB …(6)
【0071】
上記(6)式より、出力電力Poutsmpl(Tin)は、温度Tinの熱放射体による放射に起因する出力と、測定対象経路による利得も反映した上での環境温度や受信機雑音に起因する出力とに分けられる。後者に対応する雑音温度TRX,smplを、以下では入力換算測定対象光学系雑音温度と呼ぶ。すなわち、TRX,smplは以下の(7)式で定義される。
RX,smpl={1/(Gsmplref)−1}Tamb+TRX/(Gsmplref) …(7)
また、Ysmpl=Poutsmpl(Th)/Poutsmpl(Tc)として与えられる測定対象光学系のYファクタを用いれば、TRX,smplを以下のとおり表すことができる。
RX,smpl={1/(Gsmplref)−1}Tamb+TRX/(Gsmplref)
=(Th−Ysmplc)/(Ysmpl−1) …(8)
【0072】
(4)式と(7)式から、測定対象経路の利得Gsmplrefのうち測定対象サンプル11〜13による反射に対応する利得Gsmplを、以下のとおり表すことができる。
smpl=(Tamb+TRX,ref)/(Tamb+TRX,smpl) …(9)
したがって、測定対象サンプル11〜13での反射による損失をLsmplとすれば、Lsmplは以下のとおり表される。
smpl=1−Gsmpl
=(TRX,smpl−TRX,ref)/(Tamb+TRX,smpl) …(10)
【0073】
上記(10)式に含まれる変数のうち、まず環境温度Tambは、適当な温度計を用いて測定することができる量である。またTRX,refとTRX,smplは、それぞれの熱放射体の温度Th及びTcと、超伝導SIS受信機の出力電力として測定されるPoutref(Th)、Poutref(Tc)、Poutsmpl(Th)、及びPoutsmpl(Tc)から計算されるYファクタYref及びYsmplとを用いて、上記(5)式、(8)式から決定することができる量である。すなわち、測定対象サンプル11〜13による損失は、環境温度と、2つの熱放射体それぞれの温度と、参照光学系と測定対象光学系のそれぞれにおいて超伝導SIS受信機の出力電力から計算されるYファクタと、から決定される。
【0074】
なお、高温側熱放射体の温度Thが環境温度Tambに一致するとみなす場合、上記(5)式、(8)式から以下の(11)式、(12)式が得られる。
amb+TRX,ref=Yref(Th−Tc)/(Yref−1) …(11)
amb+TRX,smpl=Ysmpl(Th−Tc)/(Ysmpl−1) …(12)
【0075】
これらを上記(9)式に代入すれば、以下の(13)式が得られる。
smpl=[Yref(Ysmpl−1)]/[Ysmpl(Yref−1)] …(13)
また(13)式から、測定対象サンプル11〜13での反射による損失Lsmplを以下のとおり表すことができる。
smpl=1−Gsmpl
=(Yref−Ysmpl)/[Ysmpl(Yref−1)] …(14)
【0076】
すなわち、高温側熱放射体の温度Thが環境温度Tambに一致するとみなす場合、測定対象サンプル11〜13による損失を、参照光学系と測定対象光学系のそれぞれにおいて超伝導SIS受信機の出力電力から計算されるYファクタのみから決定することができる。
【0077】
なお、上記(13)、(14)式により決定されるGsmpl,Lsmplは、図1のように測定対象サンプル11〜13により放射光が10回反射される構成においては、10回の反射により生じる全ての損失を反映した量である。測定対象サンプルによる1回の反射に対応する利得と損失をそれぞれGsmpl,unitとLsmpl,unitとすれば、Gsmpl,unitとLsmpl,unitは以下の(15)式、(16)式で表される。

【0078】
本発明の方法により決定された反射損失と理論値との比較
種々の測定対象サンプルについて、図1の光学系を用いて超伝導SIS受信機の出力電力を測定し、測定値から計算されるYファクタを式(14)、式(16)に代入することで各測定対象サンプルの反射損失を実験的に決定した。当該実験値と、特定の導電率を有する金属材料に対して理論的に計算される反射損失との比較結果が、図2〜図6に示されている。
【0079】
図2中、記号「△」は、周波数625.32GHzのサブミリ波の水平方向偏波成分に対して実験的に決定された、未知のサンプルA7075の反射損失を示している。記号「×」は、同じ周波数のサブミリ波の垂直方向偏波成分に対して実験的に決定された、サンプルの反射損失を示している。なお、偏波方向が「水平」又は「垂直」であるとは、ここでは入射面及び反射面に対して電場の向きが「水平」又は「垂直」であることを意味する。また、図1に示されているとおり、熱放射体から発生した放射光ビームは45°の入射角でサンプルに入射しているが、光学部品の配置などを変更することにより異なる入射角に対応する反射損失を決定することもできる。
【0080】
図2中の実線は、導電率σ=1.69×107S/m(ジーメンス毎メートル)の物質に、周波数625.32GHzで偏波方向が(入射面に対して)水平であるサブミリ波が入射した場合の反射損失を、計算機を用いたシミュレーションにより理論的に計算した結果を示している。また図2中の破線は、同じ周波数で偏波方向が垂直であるサブミリ波について、同様に反射損失を決定した結果を示している。
【0081】
本発明に従って実験的に決定された反射損失と45°の入射角に対して理論的に計算された反射損失とは、水平・垂直の両偏波方向に関してほぼ一致していることが、図2からは読み取れる。したがって、未知のサンプルA7075の導電率はσ=1.69×107S/mに近い値であることが判明するのであって、これによりサンプルA7075を同定することが可能となる。
【0082】
図3〜図6は、上記サンプルA7075に加工処理を施したもの、及びA7075とは別の種々のサンプルに対して同様に反射損失を実験的に決定した結果と、特定の導電率の物質に対して上記図2の場合と同様に計算した反射損失の理論値とを示している。水平・垂直の両偏波方向について実験値と理論値とが一致するような導電率σを見出すことにより、未知のサンプルを同定することが可能となる。
【0083】
なお、上記図1に示される具体的な光学系、及び上記式(1)〜式(16)により与えられる反射損失の算出方法は単なる一例であって、異なる構成及び方法により本発明を実施することが可能である。また、放射光制御光学系2において、参照経路を構成する光学系と測定対象経路を構成する光学系との差異が測定対象サンプルの有無のみであるよう、すなわち両経路で生じる損失の違いが測定対象サンプルの存在によるものであるよう、両経路を構成することも必須ではない。例えば、参照経路を進行した熱放射光は測定対象サンプルにより1回反射され、測定対象経路を進行した熱放射光は測定対象サンプルにより10回反射されるよう、両経路を構成しても、上記式(1)〜式(16)を用いれば測定対象サンプルによる9回の反射に対応する利得としてGsmplを算出することができる。
【0084】
その他、参照経路が既知の利得Gref(1)を有する光学系によって構成され、一方で測定対象経路が、参照経路の利得とは異なる既知の利得Gref(2)を有する光学系と測定対象サンプルとから構成される場合であっても、本発明に従いサンプルの反射損失を決定することができる。具体的には、測定対象サンプルによる反射に対応する利得をGsmpl(2)とし、測定対象サンプルの式(1)〜式(16)においてGrefをGref(1)で、GrefsmplをGref(2)smpl(2)で、それぞれ置き換えることにより、
ref(2)smpl(2)/Gref(1)
=(Tamb+TRX,ref)/(Tamb+TRX,smpl) …(17)
として利得の比を決定し、Gref(1)及びGref(2)として既知の値を代入することにより、Gsmpl(2)が決定される。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明を、サブミリ波を利用する天文・宇宙観測分野や地球大気環境分野に利用することができる。観測システムに起因してサブミリ波に生じる損失や熱雑音の影響も計算に入れることで、従来よりも更に高精度でサブミリ波を観測することが可能となる。また本発明を、金属物性を計測する分野に利用することもできる。本発明に従えば、未知のサンプルの反射損失を実験的に決定することでその導電率を決定し、当該サンプルを同定することが可能となる。
【符号の説明】
【0086】
1 反射損失決定装置
2 放射光制御光学系
3 サブミリ波測定光学系
4 高温側熱放射体
5 低温側熱放射体
6 平面鏡
7〜10 凹面鏡
11〜13 測定対象サンプル
14〜18 凹面鏡
19〜20 ルーフトップミラー
21〜25 ワイヤグリッド
26〜28 電波吸収体
29 局部発振器
30 超伝導SISミキサ
31 増幅器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象サンプルの測定対象サブミリ波に対する反射損失を決定するための装置であって、
温度が異なる2つの熱放射体のうち、選択された一方から熱放射により放射光を発生させる、放射光発生部と、
前記放射光発生部で発生した前記放射光の進行経路として、参照経路と、前記測定対象サンプルにより該放射光が少なくとも1回反射される測定対象経路と、のいずれか一方を選択的に提供することにより前記放射光の進行を制御する、放射光進行制御部と、
前記放射光が入射され、該入射された放射光に放射光成分として含まれる測定対象サブミリ波を出力する、測定対象サブミリ波出力部と、
局部発振信号を出力する、局部発振信号出力部と、
前記測定対象サブミリ波と前記局部発振信号とを受信し、受信した該測定対象サブミリ波と該局部発振信号とを超伝導SISミキサによりミキシングすることで得られる中間周波数信号を測定することによって該測定対象サブミリ波の強度を測定する、測定対象サブミリ波測定部と
を備え、
前記温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して前記参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象サブミリ波の強度を前記測定対象サブミリ波測定部で測定した測定結果と、該温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して前記測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象サブミリ波の強度を前記測定対象サブミリ波測定部で測定した測定結果と、を用いて前記反射損失を決定することを可能とする
ことを特徴とする、装置。
【請求項2】
測定対象サンプルの測定対象波長域光に対する反射損失を決定するための装置であって、
温度が異なる2つの熱放射体のうち、選択された一方から熱放射により放射光を発生させる、放射光発生部と、
前記放射光発生部で発生した前記放射光の進行経路として、参照経路と、前記測定対象サンプルにより該放射光が少なくとも1回反射される測定対象経路と、のいずれか一方を選択的に提供することにより前記放射光の進行を制御する、放射光進行制御部と、
前記放射光を受信して、該受信した放射光に放射光成分として含まれる測定対象波長域光の強度を測定する、測定対象波長域光測定部と
を備え、
前記温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して前記参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を前記測定対象波長域光測定部で測定した測定結果と、前記温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して前記測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を前記測定対象波長域光測定部で測定した測定結果と、を用いて前記反射損失を決定することを可能とする
ことを特徴とする、装置。
【請求項3】
前記測定対象波長域光として特にサブミリ波を測定するための、請求項2に記載された装置であって、
前記放射光進行制御部により進行が制御された放射光が入射され、該入射された放射光に放射光成分として含まれる測定対象サブミリ波を出力する、測定対象サブミリ波出力部と、
局部発振信号を出力する、局部発振信号出力部と
をさらに備え、
前記測定対象波長域光測定部は、前記測定対象サブミリ波と前記局部発振信号とを受信し、受信した該測定対象サブミリ波と該局部発振信号とを超伝導SISミキサによりミキシングすることで得られる中間周波数信号を測定することによって該測定対象サブミリ波の強度を測定する、測定対象サブミリ波測定部として構成される
ことを特徴とする、装置。
【請求項4】
前記温度が異なる2つの熱放射体は、環境温度に基づいて定められる第1の温度の熱放射体と、該第1の温度よりも低い第2の温度の熱放射体とからなることを特徴とする、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記測定対象経路は、前記測定対象サンプルにより前記放射光が一定角度で多重反射されるよう構成されることを特徴とする、請求項2乃至4のいずれか一項に記載の装置。
【請求項6】
前記測定対象波長域光が入射され、該入射された測定対象波長域光を偏波方向に応じて選択的に透過させることにより、前記測定対象波長域光測定部が強度を測定する測定対象波長域光の偏波方向を制御する、偏波方向制御部をさらに備えたことを特徴とする、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の装置。
【請求項7】
測定対象サンプルの測定対象サブミリ波に対する反射損失を決定するための方法であって、
放射光発生部により、温度が異なる2つの熱放射体のうち、選択された一方から熱放射により放射光を発生させる段階と、
放射光進行制御部により、前記放射光発生部で発生した前記放射光の進行経路として、参照経路と、前記測定対象サンプルにより該放射光が少なくとも1回反射される測定対象経路と、のいずれか一方を選択的に提供することにより該放射光の進行を制御する段階と、
測定対象サブミリ波出力部により、前記放射光の入射を受け、該入射された放射光に放射光成分として含まれる測定対象サブミリ波を出力する段階と、
局部発振信号出力部により、局部発振信号を出力する段階と、
測定対象サブミリ波測定部により、前記測定対象サブミリ波と前記局部発振信号とを受信し、受信した該測定対象サブミリ波と該局部発振信号とを超伝導SISミキサでミキシングすることにより得られる中間周波数信号を測定することによって該測定対象サブミリ波の強度を測定する段階と、
前記温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して前記参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象サブミリ波の強度を前記測定対象サブミリ波測定部で測定した測定結果と、該温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して前記測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象サブミリ波の強度を前記測定対象サブミリ波測定部で測定した測定結果と、を用いて前記反射損失を決定する段階と
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項8】
測定対象サンプルの測定対象波長域光に対する反射損失を決定するための方法であって、
放射光発生部により、温度が異なる2つの熱放射体のうち、選択された一方から熱放射により放射光を発生させる段階と、
放射光進行制御部により、前記放射光発生部で発生した前記放射光の進行経路として、参照経路と、前記測定対象サンプルにより該放射光が少なくとも1回反射される測定対象経路と、のいずれか一方を選択的に提供することにより該放射光の進行を制御する段階と、
測定対象波長域光測定部により、前記放射光を受信して、該受信した放射光に放射光成分として含まれる測定対象波長域光の強度を測定する段階と、
前記温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して前記参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を前記測定対象波長域光測定部で測定した測定結果と、前記温度が異なる2つの熱放射体のそれぞれから発生して前記測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を前記測定対象波長域光測定部で測定した測定結果と、を用いて前記反射損失を決定する段階と
を含むことを特徴とする、方法。
【請求項9】
前記測定対象波長域光として特にサブミリ波を測定するための、請求項8に記載された方法であって、
測定対象サブミリ波出力部において、前記放射光進行制御部により進行が制御された放射光が入射され、該入射された放射光に放射光成分として含まれる測定対象サブミリ波を出力する段階と、
局部発振信号出力部によって局部発振信号を出力する段階と
をさらに含み、
前記測定対象波長域光の強度を測定する段階は、前記測定対象波長域光測定部により前記測定対象サブミリ波と前記局部発振信号とを受信し、受信した該測定対象サブミリ波と該局部発振信号とを超伝導SISミキサによりミキシングすることで得られる中間周波数信号を測定することによって該測定対象サブミリ波の強度を測定する段階として構成される
ことを特徴とする、方法。
【請求項10】
前記放射光を発生させる段階は、環境温度に基づいて定められる第1の温度の熱放射体と、該第1の温度よりも低い第2の温度の熱放射体と、のうち、選択された一方から熱放射により放射光を発生させる段階であることを特徴とする、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記測定対象経路による前記放射光の進行の制御は、前記測定対象サンプルにより前記放射光を一定角度で多重反射させることを含む制御であることを特徴とする、請求項8乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
偏波方向制御部において、前記測定対象波長域光の入射を受け、該入射された測定対象波長域光を偏波方向に応じて選択的に透過させることにより、前記測定対象波長域光測定部が強度を測定する測定対象波長域光の偏波方向を制御する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項8乃至11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記反射損失を決定する段階は、
環境温度と、
前記2つの熱放射体それぞれの温度と、
(i)前記温度が異なる2つの熱放射体の一方から発生して前記参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を前記測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、該測定対象波長域光測定部からの出力電力と、(ii)前記温度が異なる2つの熱放射体の他方から発生して前記参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を前記測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、該測定対象波長域光測定部からの出力電力と、の比と、
(iii)前記温度が異なる2つの熱放射体の一方から発生して前記測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を前記測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、該測定対象波長域光測定部からの出力電力と、(iv)前記温度が異なる2つの熱放射体の他方から発生して前記測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を前記測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、該測定対象波長域光測定部からの出力電力と、の比と
を用いて前記反射損失を決定する段階であることを特徴とする、請求項8、9、11、及び12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記反射損失を決定する段階は、
(i)前記温度が異なる2つの熱放射体の一方から発生して前記参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を前記測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、該測定対象波長域光測定部からの出力電力と、(ii)前記温度が異なる2つの熱放射体の他方から発生して前記参照経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を前記測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、該測定対象波長域光測定部からの出力電力と、の比と、
(iii)前記温度が異なる2つの熱放射体の一方から発生して前記測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を前記測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、該測定対象波長域光測定部からの出力電力と、(iv)前記温度が異なる2つの熱放射体の他方から発生して前記測定対象経路を進行した放射光に含まれる測定対象波長域光の強度を前記測定対象波長域光測定部で測定した測定結果としての、該測定対象波長域光測定部からの出力電力と、の比と
を用いて前記反射損失を決定する段階であることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
請求項12に記載の方法を用いて、前記偏波方向制御部により制御された第1の偏波方向を有する測定対象波長域光に対する、前記測定対象サンプルの第1の反射損失を決定する段階と、
請求項12に記載の方法を用いて、前記偏波方向制御部により制御された第2の偏波方向を有する測定対象波長域光に対する、前記測定対象サンプルの第2の反射損失を決定する段階と、
前記第1の反射損失と前記第2の反射損失とを用いて、前記測定対象サンプルを同定する段階と
を含む、前記測定対象サンプルの分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−78249(P2012−78249A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−224939(P2010−224939)
【出願日】平成22年10月4日(2010.10.4)
【出願人】(503361400)独立行政法人 宇宙航空研究開発機構 (453)
【Fターム(参考)】