説明

サポニンの生体利用率増進組成物

本発明は、サポニン生体利用率増進高麗人蔘複合組成物を開示する。また、サポニンの生体利用率を増進させる五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上を含む抽出物を開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サポニンの生体利用率が増進された高麗人蔘複合組成物に関する。また、サポニンの生体利用率を増進させる五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上を含む抽出物に関する。
【背景技術】
【0002】
高麗人蔘(Panax ginseng CA Meyer)は、五加皮科高麗人蔘属に属する植物で、韓国、中国、日本等において2000年以上前から使われてきた植物で、経験的に、疾病を予防し、寿命を延ばす目的で使用されてきた。これまでに知られている高麗人蔘の効能と効果としては、中枢神経系に対する作用、抗発癌作用、抗癌活性、免疫機能調節作用、抗糖尿作用、肝機能昂進効能、心血管障害改善、抗動脈硬化作用、血圧調節作用、更年期障害改善、骨粗鬆症に及ぼす効果、抗ストレス及び抗疲労作用、抗酸化活性、並びに老化抑制効能等がある
五味子は、モクレン科の落葉つる植物で、紫紅色、赤色又は暗紫色の果実を乾燥させて食用する。五味子は、口中が乾燥する症状や体から熱が出て胸が苦しくなる症状を改善し、疲労を回復させ、心臓の機能を強化し、血液循環を良くして記憶力減退や思考力鈍化を予防する。また、咳や喘息を沈め、精力に良く、長期服用時に免疫を高める効果がある。薬理実験によって、中枢神経系興奮作用、疲労回復促進作用、心臓血管系機能回復作用、血圧調節作用、胃液分泌調節作用、利胆作用、血糖量を下げる作用、グリコーゲン量を高める作用などが知られている。
【0003】
麦門冬(バクモンドウ)は、山地の日陰に生える多年生草本であり、塊根は津液(しんえき)を補う代表的な成分で、肺陰の損傷による乾いた咳、喀血、痰などに用いられる。抗酸化作用、血流量促進、心臓収縮力増加、免疫増強、血糖降下、抗菌作用などの薬理効果を有すると知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】日本特許公開2005−531533号公報
【特許文献2】韓国登録特許第10−0555652号公報
【特許文献3】日本特許公開2004−049154号公報
【特許文献4】日本特許公開平07−138175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、サポニンの生体利用率を増進させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するために、本発明の一側面は、五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物、及びサポニン含有高麗人蔘抽出物を含み、サポニンの生体利用率が増進された高麗人蔘複合組成物を提供する。
【0007】
本発明の他の一側面は、五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物を有効成分として含むサポニンの生体利用率増進用組成物を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一側面による組成物は、五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物を含み、これらの抽出物は、高麗人蔘サポニンの代謝に関与して人体内における高麗人蔘サポニンの生体利用率を増進させ、これにより、高麗人蔘サポニンの生理活性を増加させる効果を示す。すなわち、五味子抽出物又は麦門冬抽出物は、サポニン、より詳しくは高麗人蔘サポニンの生体利用率を増進させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書において、「抽出物」とは、天然物からその中の成分を抜き出すことにより得られた物質であれば、抜き出す方法や成分の種類に関わらずすべて含む。たとえば、水や有機溶媒を利用して天然物から溶媒に溶解する成分を抽出したもの、天然物の特定成分、たとえば、オイルのような特定成分のみを抽出して得られたものなどをすべて含む広義の概念である。本明細書において、「高麗人蔘抽出物」とは、高麗人蔘の根、茎、葉、実、花及びその他高麗人蔘の部位のうち一以上から由来する抽出物を意味する。
【0010】
本明細書において、「生体利用率」とは、投与量に対する、血流内に吸収される有効成分の量についての測定値を意味する。
【0011】
以下において、本発明について詳細に説明する。
【0012】
本発明の一側面は、五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物、及びサポニン含有高麗人蔘抽出物を含む高麗人蔘複合組成物を提供する。
【0013】
本発明の一側面において、五味子抽出物、麦門冬抽出物又は高麗人蔘抽出物は、各植物を通常の方法で抽出して得ることができる。本発明の他の一側面において、五味子抽出物、麦門冬抽出物又は高麗人蔘抽出物は、各植物を水又は酒精などの有機溶媒で加熱して抽出した後、濾過及び減圧濃縮する工程によって収得されるものであってもよいが、これに限定されるものではない。本発明のまた他の一側面において、五味子抽出物、麦門冬抽出物又は高麗人蔘抽出物は、各植物を日光乾燥や熱風乾燥した後、水又は有機溶媒で抽出して収得することができる。本発明のまた他の一側面において、前記有機溶媒は、特に制限されるものではなく、C〜Cの低級アルコール、エーテル、酢酸エチル又はクロロホルムであってもよい。前記C〜Cの低級アルコールは、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、n−プロピルアルコール、n−ブタノール及びイソブタノールで構成される群から選択されるいずれか一つ又は複数の混合溶媒であってもよい。
【0014】
高麗人蔘の代表的な生理活性成分であるジンセノサイド(Ginsenoside)は、高麗人蔘の地上及び地下部に均一に分布しているが、根、葉、実などの部位によってジンセノサイドの含有量や組成が異なるものと知られている。
【0015】
現在まで30種類余りのジンセノサイドが高麗人蔘サポニンから分離、同定されており、ジンセノサイドは、プロトパナサジオール(protopanaxadiol)系サポニンに属するジンセノサイドRb1,Rb2,Rc,Rdとプロトパナサトリオール(protopanaxatriol)系サポニンに含まれるジンセノサイドReとRg1が大部分を占めている。
【0016】
高麗人蔘の実は、高麗人蔘の中で最も珍重される部位の一つで、種子の獲得を目的として選別され、収穫される。一般的に、高麗人蔘の実は、高麗人蔘の栽培期間中、4年目のものに限り1度だけ採種する。高麗人蔘の実内に存在するジンセノサイドの含有量の順は、ジンセノサイドRe>Rg1>Rb1>Rc>Rdの順で、高麗人蔘の根とは異なるジンセノサイド組成を示す。特に、高麗人蔘の根にはほとんど存在しないジンセノサイドReの含量が高麗人蔘の実には特異的に多く存在し、高麗人蔘の実と根は、組成的に大きな差異を示す。
【0017】
ジンセノサイドは、高麗人蔘の代表的な生理活性物質であるため、相違するジンセノサイドの組成は、高麗人蔘の根と実が差別的な効果を示し得ることを示唆している。高麗人蔘の実の代表的なサポニンであるジンセノサイドReは、脳虚血再灌流損傷(cerebral ischemia−reperfusion injury)を防止し、細胞の死滅に関与するBcl−2,Bax蛋白質の発現を調節することにより、パーキンソン病(parkinson’s disease)を予防する効能を有するものと知られている。その他にも、ジンセノサイドReは、NO/cGMP/PKG経路を調節することにより、精子受精能(sperm capacitation)を向上させるものと知られている。
【0018】
このように、ジンセノサイドは、多様な生理活性を有しているが、実際に経口摂取した際、その吸収率が比較的低い方であるものと知られており、高麗人蔘の実の代表的な生理活性成分であるジンセノサイドReもまた同様である。このため、高麗人蔘の実固有の効能をより効率的に利用するためには、高麗人蔘のジンセノサイド、特にジンセノサイドReの生体利用率を高めることが必要である。
【0019】
本発明の一側面による組成物において、五味子抽出物と麦門冬抽出物は、高麗人蔘抽出物、特に高麗人蔘の実抽出物中にある高麗人蔘サポニンの生体利用率を増進させて、サポニンの生理活性を増加させる効果を示す。その中でも特に、高麗人蔘の実に最も多く含有しているサポニンであるジンセノサイドReの生体利用率を増進させる効果を示す。
【0020】
こうした五味子抽出物又は麦門冬抽出物の高麗人蔘サポニン生体利用率増加効果は、五味子と麦門冬に含まれているいくつかの成分が高麗人蔘サポニンの吸収及び代謝の過程に影響を及ぼすためであるものと考えられる。経口摂取されたほぼ大部分の物質は、胃腸管から吸収され、血液を介して肝臓へ行く過程を経るが、摂取された物質の相当量が腸で代謝され、このとき腸内では薬物−薬物又は薬物−食品間の相互作用が起こる。このため、共に摂取された物質によって、摂取した成分の吸収及び代謝の過程に大きな差が現れることになる。本発明の場合、五味子、麦門冬に存在する高麗人蔘サポニン類似構造物質が、高麗人蔘サポニンの腸内微生物の代謝及び肝代謝の回避を可能にして、高麗人蔘サポニンの分解を減少させ、腸膜透過率を高めて血中に移行する濃度を高める作用をするものと考えられる。
【0021】
本発明の一側面による組成物において、高麗人蔘抽出物を100重量部としたときに、五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物は、それぞれ10重量部〜1000重量部含まれる。本発明の他の一側面による組成物において、高麗人蔘抽出物を100重量部としたときに、五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物は、それぞれ10重量部〜500重量部の量で含まれる。本発明のまた他の一側面による組成物において、高麗人蔘抽出物を100重量部としたときに、五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物は、それぞれ10重量部〜200重量部の量で含まれる。前記範囲で使用する場合、本発明の意図した効果を示すのに適切であるだけでなく、組成物の安定性及び安全性を共に満すことができ、費用対効果の側面においても、前記範囲で使用することが適切である。より具体的には、サポニンの非特異的作用による生体利用率増加効果を見るためには、高麗人蔘抽出物と共に五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物を十分な濃度で処理することが好ましいため、高麗人蔘抽出物を100重量部とした場合、五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物は、10重量部以上となることが好ましく、また、生体適用可能な総含有量を考慮した場合、1000重量部以上では適用が困難であるものと考えられる。
【0022】
本発明の他の一側面は、五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物を有効成分として含むサポニンの生体利用率増進用組成物を提供する。前記サポニンは、高麗人蔘由来サポニンであってもよく、具体的には、高麗人蔘の実由来サポニンであってもよく、さらに具体的には、ジンセノサイドReであってもよい。
【0023】
本発明の一側面による組成物において、五味子抽出物及び麦門冬抽出物は、それぞれ単独で含むことができる。本発明の他の一側面による組成物において、五味子抽出物及び麦門冬抽出物は、共に含むことができる。本発明のまた他の一側面による組成物において、五味子抽出物:麦門冬抽出物の重量比は100:1〜1:100であってもよく、50:1〜1:50であっても、10:1〜1:10であっても、5:1〜1:5であってもよい。前記範囲で使用する場合、本発明の意図した効果を示すのに適切であるだけでなく、組成物の安定性及び安全性を共に満すことができ、費用対効果の側面においても、前記の範囲で使用することが適合である。
【0024】
本発明は、その一側面による組成物を含む健康食品組成物を提供する。前記組成物は、健康食品に多様な形態の通常の賦形剤や添加物を加えるステップを含む方法によって、飲料、丸、顆粒、錠剤、カプセル、ダイエットバーなどの健康補助食品をはじめとする様々な剤型の食品に応用可能である。各剤型の健康食品組成物は、有効成分以外に、当該分野において通常使用される成分を、剤型又は使用目的に応じて、当業者が困難なく適宜選定して配合してもよく、他の原料と同時に適用する場合、相乗効果が起こり得る。
【0025】
前記有効成分の投与量の決定は当業者の水準内にあり、1日の投与容量は、投与しようとする対象の発病時期、年齢、健康状態、合併症などの多様な要因によって変わる。しかしながら、成人を基準にした場合、一般的には、前記組成物を体重1kg当たり、1mg/kg〜500mg/kg、好ましくは30mg/kg〜200mg/kgを、1日1回〜2回に分けて投与すればよく、前記投与量は、いかなる方法によるとしても、本発明の範囲を限定するものではない。
【0026】
また、本発明は、その一側面による組成物を含む薬学組成物を提供する。前記薬学組成物は、常用される無機又は有機の担体を加えて、固体、半固体又は液状の形態で経口投与したり、直腸、局所、経皮、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下などと非経口で投与したりすることができる。本発明の他の一側面において、経口投与が好ましい。
【0027】
前記の経口投与用の剤材としては、錠剤、丸剤、顆粒剤、軟・硬質カプセル剤、散剤、細粒剤、粉剤、乳濁剤、シロップ剤、ペレット剤、液剤などが挙げられる。また、前記非経口投与のための剤材としては、注射剤、点滴剤、軟膏、ローション、スプレー、懸濁剤、乳剤、坐剤、パッチなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
本発明の有効成分を製剤化しようとする場合、常法によって容易に実施することができ、界面活性剤、賦形剤、希釈剤、滑沢剤、結合剤、崩解剤、着色料、香辛料、甘味料、保存料、安定剤、緩衝剤、懸濁剤、その他常用される補助剤を適当に使用することができる。
【0029】
また、前記有効成分の薬剤学的に許容可能な容量、すなわち、投与量は、治療を受ける対象の年齢、性別、体重、治療する特定疾患又は病理状態、疾患又は病理状態の深刻度、投与経路又は処方者の判断によって変わり得る。こうした因子に基づく投与量の決定は、当業者の水準内にある。一般的に、投与量は、0.001mg/kg/日〜2000mg/kg/日であってもよく、より具体的には、0.5mg/kg/日〜2.5mg/kg/日であってもよいが、前記投与量はいかなる方法からも、本発明の範囲を限定するものではない。
【0030】
(実施形態)
以下、実施例及び実験例を挙げて、本発明の構成及び効果をより具体的に説明する。しかし、これらの実施例及び実験例は、本発明に対する理解を助けるために、例示の目的としてのみ提供されているものに過ぎず、本発明のカテゴリ及び範囲が下記実施例及び実験例によって制限されるものではない。
【0031】
[実施例]高麗人蔘実抽出物、五味子抽出物及び麦門冬抽出物の製造
高麗人蔘の実抽出物の場合、生の高麗人蔘の実を収穫し、種子を分離、除去した後、日光乾燥又は熱風乾燥を通じて高麗人蔘の実の果肉と果皮を高麗人蔘の実乾燥物として製造した。その後、高麗人蔘の実乾燥物1kgに水3Lを加えて還流抽出してから濾過し、40〜45℃において減圧濃縮して使用した。五味子抽出物及び麦門冬抽出物もまた、高麗人蔘の実と同一の方法で抽出して使用した。
【0032】
[実験例1]高麗人蔘の実のジンセノサイド成分の分析
実施例において製造した高麗人蔘の実抽出物にエーテル(ether)を処理して脂溶性成分を除去した後、ブタノール(BuOH)で粗サポニンを抽出、濃縮して、HPLCによるジンセノサイド成分分析を実施した。その結果を表1に示す。
【0033】
【表1】

【0034】
表1に示すように、高麗人蔘の実抽出物のジンセノサイドのうち、ジンセノサイドReの含有量が最も高いということが分かる。
【0035】
[実験例2]五味子抽出物又は麦門冬抽出物、及び高麗人蔘の実抽出物を含む組成物のジンセノサイドRe生体利用率増進効果の評価
以下のような方法で、五味子抽出物又は麦門冬抽出物、及び高麗人蔘抽出物を含む組成物のジンセノサイドRe生体利用率増進効果を評価した。
【0036】
ステップ1.実験動物及び試料の準備と処理
実験動物として、平均体重23.55gの雄ICRマウス48匹を準備し、16匹ずつ3つの群に分けて、それぞれ対照群、実験群1及び2と定め、一般配合飼料で1週間予備飼育した後、評価12時間前に絶食をさせ、表2のような方法で各群に経口投与した。
【0037】
【表2】

【0038】
ステップ2.血液サンプルの採取と血漿(plasma)の分離
経口投与後、10分、20分、30分、60分、2時間、4時間、8時間及び24時間が経過した時に、各実験群の実験動物から毛細管(plain capillary tube)を利用して、眼窩静脈叢(retro−orbital plexus)から採血した。各群16匹を4群に再度分けて、時間帯別に4匹ずつ、1匹当たり2回採血する方法を用いた(10分−2時間;20分−4時間;30分−8時間;60分−24時)。血液は、遠心分離(micro−12、ハンイル社製、韓国)を利用して、13,000rpmで10分間回した後、血清(serum)を抜き出して分析した。
【0039】
ステップ3.薬学的解析
薬学的分析のための血清の処理は、周知のように行っており(Wang BYG et.Al,Biol.Pharm.Bull.30(9)1657−1662)、ジンセノサイドReの含量分析は、UPLC/MS(SIR mode)を利用して算出した。分析の定量は、5ng/mlまで行い(検出限界は1ng/ml)、内部標準としては、ジオールジンセノサイド(diol ginsenoside)である化合物Kを使用した。ジンセノサイドの生体利用率は、Cmax,Tmax,AUCの値を通じて表すことができる。その結果を表3に示した。
【0040】
【表3】

【0041】
*Cmax:観察された血清濃度又は濃度時間曲線から計算又は評価される最大血清濃度を意味するもので、ng/mlの単位で表される。
*Tmax:投与後のCmaxが発生する時間を意味するもので、時間の単位で表される。
*AUC(area under curve):血漿濃度時間曲線下の面積を意味し、ng・時間/mlの単位で表される。
【0042】

表3から分かるように、実験の結果、Tmaxの値は、3つの群ともに0.4時間〜0.5時間で有意的な差はないが、五味子抽出物と共に摂取した場合に、高麗人蔘実抽出物を単独で摂取した場合と比較すると、生体利用率の指標であるCmax及びAUCの値がそれぞれ13.7倍及び3.32倍増加したことが確認できた。また、麦門冬抽出物を共に摂取した場合にも、高麗人蔘実抽出物を単独で摂取した場合と比較すると、Cmax及びAUCの値がそれぞれ2.56倍及び1.68倍増加したことが確認できた。このことから、五味子抽出物又は麦門冬抽出物を高麗人蔘実抽出物と共に摂取する場合に、高麗人蔘実の有効成分であるジンセノサイドReの生体利用率を高める効果があることが分かった。
【0043】
[実験例3]五味子抽出物と高麗人蔘実抽出物の最適比率算定のための評価
実験例2と同じ方法で、ジンセノサイドRe生体利用率増進効果を最大化するための五味子抽出物と高麗人蔘実抽出物の最適比率算定のための評価を行った。まず、実験群3と4を選定し、五味子抽出物と高麗人蔘実抽出物の比率変化によるジンセノサイドReの生体利用率増進効果の差を評価するために、各群に対し、試験試料を表4のように経口投与した。
【0044】
【表4】

【0045】
実験例2と同じ方法で薬学的分析を実施した結果、表5のような結果が得られた。
【0046】
【表5】

【0047】
実験群3の場合、高麗人蔘実抽出物を単独で摂取した実験例2の対照群と比較すると、生体利用率の指標であるCmax及びAUCの値がそれぞれ8倍及び2.61倍増加したことが確認できた。実験群の4の場合は、実験例2の対照群と比較すると、Cmax及びAUCの値がそれぞれ75.2倍及び22.4倍増加したことが確認できた。すなわち、高麗人蔘の実と五味子抽出物の割合を1:2で混合して処理する場合、ジンセノサイドReの生体利用率が増加することが分かった。
【0048】
実験例2と3の結果を総合すると、高麗人蔘実抽出物に比べて五味子抽出物の含量が多くなるほど、ジンセノサイドReの生体利用率がより増加することを知ることができる。
【0049】
以下、本発明による五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物、及び高麗人蔘抽出物を含む組成物の健康食品及び薬学組成物の剤型例についてより詳細に説明するが、健康食品及び薬学組成物は様々な剤型に応用可能であり、これは本発明を限定しようとするものではなく、単に具体的に説明しようとするものである。
【0050】
[剤型例1]健康食品の製造
高麗人蔘の実抽出物、及び五味子抽出物又は麦門冬抽出物...1000mg
ビタミン混合物
ビタミンAアセテート.....................70μg
ビタミンE.........................1.0mg
ビタミンB1.......................0.13mg
ビタミンB2.......................0.15mg
ビタミンB6........................0.5mg
ビタミンB12.......................0.2μg
ビタミンC..........................10mg
ビオチン...........................10μg
ニコチン酸アミド......................1.7mg
葉酸.............................50μg
パントテン酸カルシウム...................0.5mg
無機質混合物
硫酸第一鉄........................1.75mg
酸化亜鉛.........................0.82mg
炭酸マグネシウム.....................25.3mg
第一リン酸カリウム......................15mg
第二リン酸カルシウム.....................55mg
クエン酸カリウム.......................90mg
炭酸カルシウム.......................100mg
塩化マグネシウム.....................24.8mg

前記ビタミン及びミネラル混合物の組成比は、比較的健康食品に適した成分を好ましい実施例で混合組成したが、その配合比を任意に変形実施してもよく、通常の健康食品の製造方法によって前記成分を混合した後、顆粒を製造し、通常の方法によって健康食品組成物の製造に使用することができる。
【0051】
[剤型例2]健康飲料の製造
高麗人蔘実抽出物、及び五味子抽出物又は麦門冬抽出物...1000mg
クエン酸.........................1000mg
オリゴ糖...........................100g
梅果実濃縮液...........................2g
タウリン.............................1g
精製水を加えて全体.....................900ml

通常の健康飲料の製造方法によって前記の成分を混合した後、約1時間、85℃で攪拌、加熱し、作られた溶液を濾過して、滅菌された2L容器に入れ、密封滅菌した後、冷蔵保存して、本発明の健康飲料組成物の製造に使用する。
【0052】
組成比は、比較的嗜好飲料に適した成分を好ましい実施例で混合造成したが、需要階層や、需要国家、使用用途など、地域的、民族的嗜好度に応じてその配合比を任意に変形実施してもよい。
【0053】
[剤型例3]丸剤
高麗人蔘の実抽出物20重量%、五味子抽出物又は麦門冬抽出物10重量%、トウモロコシ澱粉30重量%、グリセリン20重量%及びソルビトール粉末20重量%を混合し、製丸機を使用して丸を製造した。内容物の最終重量は、3.5gであった。
【0054】
[剤型例4]錠剤
高麗人蔘の実抽出物20重量%、五味子抽出物又は麦門冬抽出物10重量%、乳糖20.5重量%、デキストリン20重量%、マルチトール粉末20重量%及びキシリトール粉末7重量%を混合し、流動層乾燥機を利用して顆粒化した後、シュガーエステル(sugar ester)2.5重量%を添加して、打錠機で打錠した。内容物の最終重量は、2gであった。
【0055】
[剤型例5]顆粒剤
高麗人蔘の実抽出物20重量%、五味子抽出物又は麦門冬抽出物10重量%、キシリトール5重量%及びイソマルト65重量%を混合し、流動層顆粒機を使用して顆粒に成形した後、包に充填した。内容物の最終重量は、2gであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物及び、
サポニン含有高麗人蔘抽出物を含む、サポニン生体利用率増進高麗人蔘複合組成物。
【請求項2】
前記高麗人蔘抽出物は、高麗人蔘の実抽出物である、請求項1記載の高麗人蔘複合組成物。
【請求項3】
前記組成物において、前記高麗人蔘抽出物を100重量部としたときに、前記五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物をそれぞれ10重量部〜1000重量部含む、請求項1又は2記載の高麗人蔘複合組成物。
【請求項4】
前記サポニンは、ジンセノサイドReである、請求項1又は2記載の高麗人蔘複合組成物。
【請求項5】
五味子抽出物及び麦門冬抽出物のうち一以上の抽出物を有効成分として含む、サポニンの生体利用率増進用組成物。
【請求項6】
前記サポニンは、高麗人蔘由来サポニンである、請求項5記載の組成物。
【請求項7】
前記サポニンは、高麗人蔘の実由来サポニンである、請求項5記載の組成物。
【請求項8】
前記サポニンは、ジンセノサイドReである、請求項5記載の組成物。

【公表番号】特表2012−528144(P2012−528144A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512958(P2012−512958)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003288
【国際公開番号】WO2010/137846
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(506213681)株式会社アモーレパシフィック (24)
【氏名又は名称原語表記】AMOREPACIFIC CORPORATION
【住所又は居所原語表記】181,2−ga,Hangang−ro,Yongsan−gu,Seoul,Republic of Korea
【Fターム(参考)】