サポートソックス
【課題】足の指の間および土踏まずに対して、マッサージ効果を効果的に付与することができ、しかも簡単に製造することができるサポートソックスを提供すること。
【解決手段】サポートソックス1の爪先部8の足の甲側に、足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口13を足の甲側に区画し、着用状態において、着用者の足指の各間に引っ掛けられる紐状サポート14を形成する。また、フート部7および爪先部8に跨るように、タック編で編成された編地のコースに沿って延びる畦17が形成されることにより、他の編み組織よりも厚さが増していて、着用者が足を接地した状態において、その着用者の荷重により畦17が着用者の足の裏を上側へ押して刺激するタックサポート部3を形成する。
【解決手段】サポートソックス1の爪先部8の足の甲側に、足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口13を足の甲側に区画し、着用状態において、着用者の足指の各間に引っ掛けられる紐状サポート14を形成する。また、フート部7および爪先部8に跨るように、タック編で編成された編地のコースに沿って延びる畦17が形成されることにより、他の編み組織よりも厚さが増していて、着用者が足を接地した状態において、その着用者の荷重により畦17が着用者の足の裏を上側へ押して刺激するタックサポート部3を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サポートソックス、より詳しくは、人の足にマッサージ効果を付与するサポートソックスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な機能が付与された靴下やサポータが注目されている。
たとえば、特許文献1は、中足関節部である第1中足骨骨頭部と第5中足骨骨頭部と、ゴムに絡ませながら織り込まれた強度の強い糸からなり、リスフラン関節部である第1中足骨基底部と第5中足骨基底部を固定し、足の横アーチ(中足関節部)と縦アーチ(リスフラン関節部)を形成するための締め付け部とを有する、外反母趾および内反小指矯正用靴下を開示している。
【0003】
また、特許文献2は、ズレ防止ベルト、各種クッション材、および複数の係止用マジック(登録商標)ファスナを備え、外反母趾と内反小指の患部である親指と第2指間、第4指と第5指間を離すために、親指と第2指間の指間パットおよび第4指と第5指間の指間パットが設けられた、外反母趾および内反小指矯正用サポータを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−161344号公報
【特許文献2】特開2007−167180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術文献として開示された特許文献1および2は、外反母趾対策の機能が付与された靴下やサポータであるが、たとえば、人の足を部分的に刺激してマッサージする機能が付与された靴下やサポータの需要も増加している。
本発明の目的は、足の指の間および土踏まずに対して、マッサージ効果を効果的に付与することができ、しかも簡単に製造することができるサポートソックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、全体が横編機で編成された編み組織からなるサポートソックスであって、前記サポートソックスは、タック編で編成された編地のコースに沿って延びる畦が形成されることにより、他の編み組織よりも厚さが増していて、着用者が足を接地した状態において、その着用者の荷重により前記畦が着用者の足の裏を上側へ押して刺激するタックサポートを足の底側に選択的に有し、足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口を足の甲側に区画し、着用状態において、着用者の足指の各間に引っ掛けられる紐状サポートを有しており、前記タックサポートは、足の土踏まず部分に形成された土踏まずサポートを含む、サポートソックスである。
【0007】
このサポートソックスを履いた着用者は、各開口に足の指を1本ずつ挿入することにより、隣り合う開口を区画する各紐状サポートを足の指の各間にそれぞれ引っ掛けることができる。これにより、着用者は、足の爪先から甲を通って足首に向かう方向に引っ張られる紐状の紐状サポートの働きにより、足の指の間に対するマッサージ効果を得ることができる。
【0008】
しかも、開口が足の甲側に区画されるように紐状サポートが形成されていて、開口の裏側(足の底側)には編み組織が編成されていることから、着用者が歩行する際に、接地するのは当該開口の裏側の編み組織であり、紐状サポートが接地されない。着用者の履き方により紐状サポートの一部が接地される場合もあるが、その場合でも、紐状サポートの端部が接地される程度で済む。そのため、歩行時に、地面の表面に沿う横方向の力がソックスに作用しても、紐状サポートが反対方向(足の爪先から底を通って踵に向かう方向)に引っ張られる力を軽減できるので、上記したマッサージ効果が軽減されてしまうことを防止することができる。また、開口の裏側が編み組織なので、履き心地もよい。
【0009】
さらに、着用者が足を接地した際には、着用者の足と地面との間に挟まれた土踏まずサポートの畦が、着用者の土踏まずを刺激するので、これにより着用者は、土踏まずに対するマッサージ効果を得ることができる。
そして、このようなサポートソックスは、全体を横編機で編成する編み組織により形成し、部分的にタック編などを施すことにより、簡単に製造することができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、前記タックサポートは、前記土踏まずサポートと一体的に形成され、前記土踏まずサポートから足の爪先側へ向かって、足の中指が挿入される前記開口の爪先側の周縁部まで突出した中指サポートをさらに含む、請求項1に記載のサポートソックスである。
この構成によれば、着用者が足を接地した際に、足の5指のうち、中指の根元付近を局所的に中指サポートの畦で押すことができる。これにより、請求項1のマッサージ効果で解れた足の横アーチを、親指から小指にかけて中指付近で膨出するように、正常なアーチ形状に矯正することができ、指上げ足(浮き指)の緩和効果を得ることもできる。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、前記中指サポートは、前記足の中指が挿入される前記開口の前記爪先側の周縁部が頂点となり、前記土踏まずサポートが裾となるように、前記土踏まずサポートから前記開口の前記爪先側の周縁部へ向かうに従ってその幅が徐々に狭まる山状に形成されている、請求項2に記載のサポートソックスである。
この構成によれば、中指サポートの幅を、土踏まずサポートの幅から、中指の根元を局所的に押すために必要な幅に急激に狭めるのではなく、徐々に狭めているので、人が足の裏で感じる違和感を軽減することができ、良好な快適性を維持することができる。また、土踏まずサポートが着用者の土踏まずから多少ずれても、土踏まずサポート付近の中指サポートの幅が、土踏まずサポートよりも若干狭い程度であるため、土踏まずに対するマッサージ効果を十分発現することができる。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、前記サポートソックスは、前記紐状サポートの長手方向における甲側の端部において、4つの前記紐状サポートに跨るように編地のコースに沿って帯状に形成され、弾性糸を用いて編成されることにより、他の編み組織よりも高い伸縮性が付与された高伸縮部をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のサポートソックスである。
【0013】
この構成によれば、帯状の高伸縮部の弾性力により、着用者の指の根元を締め付けることができる。この締め付けにより高伸縮部が足に固定されるので、足の爪先から甲を通って足首に向かう方向に引っ張られた紐状サポートの状態を維持することができる。その結果、マッサージ効果の持続性を向上させることができる。さらに、この締め付けにより、足の親指を外側に向ける方向に力を加えることができるので、外反母趾の症状の緩和効果を得ることもできる。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、前記足の各指がそれぞれ挿入される5つの前記開口の甲側の端部が、同一のコースで形成されている、請求項4に記載のサポートソックスである。
横編機では、編み組織の各コースに弾性糸を編み込む際には、足の甲側および足の底側の一部のウェールのみに弾性糸を挿入することはできない。したがって、足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口の甲側の端部が同一のコースで形成されておらずバラツキがあると、高伸縮部を形成する際に、一部の開口のウェールにおいては、そのバラツキの差に相当するコース分、弾性糸を挿入することが困難である。その結果、その一部の開口を区画する紐状サポートに関しては、引張り力の持続性が他の紐状サポートよりも低くなる場合がある。
【0015】
そこで、請求項5記載の発明によれば、足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口の甲側の端部が同一のコースで統一されているので、全ての開口のウェールにおいて、甲側の端部を形成するコースの次のコースから弾性糸を同時に挿入することができる。その結果、全ての紐状サポートの引張り力の持続性を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るサポートソックスの平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るサポートソックスの底面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るサポートソックスの正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るサポートソックスの背面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るサポートソックスの右側面図である。
【図6】図3のA−A切断面における断面図である。
【図7】図1〜図6のサポートソックスの着用状態を右斜め上方から見た図である。
【図8】着用状態における爪先部の拡大図である。
【図9】図1〜図6のサポートソックスの着用状態を裏側から見た図である。
【図10】図1〜図6サポートソックスの着用者の歩行状態を示す図である。
【図11】弾性糸の挿入が困難な領域を説明するための図である。
【図12】図1〜図6サポートソックスの変形例を示す図(右側面)である。
【図13】図1〜図6サポートソックスの変形例を示す図(着用状態の図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図6は、本発明の一実施形態に係るサポートソックス1を示す図であって、図1が平面図、図2が底面図、図3が正面図、図4が背面図、図5が右側面図、図6が図3のA−A切断面における断面図である。なお、図1〜図6のサポートソックス1は、左右どちらの足にも使用することができる左右兼用タイプである。
【0018】
本発明の一実施形態に係るサポートソックス1は、たとえば、スニーカーソックスであって、前後方向に対向する少なくとも前後一対の針床を有する横編機(たとえば、株式会社島精機製作所製「SWG061N」)を用いて編成された編み組織からなる。
このサポートソックス1の編み組織は、縫製や接着剤により別々の編み組織からなる複数のパーツが継ぎ接ぎされて編成されたものではなく、当該サポートソックス1の複数の部位を編成する編み組織が互いに編みループで繋がって編成されており、平編(プレーン編)で編成されたベース部2と、タック編で編成されたタックサポート部3とを含んでいる。
【0019】
ベース部2およびタックサポート部3は、本実施形態では、たとえば、ナイロン表糸(たとえば、東レ株式会社製「キュープ(登録商標)」など)およびFTY(Filament Twisted Yarn)裏糸(たとえば、旭化成株式会社製「ポリウレタン×ナイロン=70×70」など)を用いて編成されている。
なお、用いられる糸の太さは、サポートソックス1の各部位に必要な伸縮性に応じて適宜のものを選択すればよい。たとえば、ナイロン表糸としては、70D(デニール)の単糸を2本撚り合わせた双糸の3本使い(双糸3本を表糸として使用)、FTY裏糸は70/70(70D・ポリウレタン×70D・ナイロン)程度の糸、後述するゴム裏糸としては、560D程度の芯糸(ポリウレタン)を70D程度のカバリング糸(ナイロン)でダブルカバリングしたDCY(Double Covering Yarn)を選択することができる。
【0020】
このような編み組織を有する当該サポートソックス1は、複数の部位として、履き口側から爪先側へ向かって順に、口ゴム部4、レッグ部5、踵部6、フート部7および爪先部8を一体的に有している。
口ゴム部4は、筒状に形成されており、この口ゴム部4の下端と連続して、レッグ部5が筒状に形成されている。
【0021】
踵部6には、その編み組織を編成する際に生じるゴアライン9が左右両側に形成されている。ゴアライン9は、足の甲側において、レッグ部5とフート部7との境界(切替え位置)の目安となるものである。具体的には、足の甲側において、レッグ部5とフート部7との切替え位置は、左側のゴアライン9の甲側の端と、右側のゴアライン9の甲側の端とを結ぶコース(横方向の編み目列)によって設定されている。そして、当該コースよりも爪先側がフート部7の編み組織であり、その反対側がレッグ部5の編み組織である。
【0022】
また、ゴアライン9は、フート部7の足甲部10と足底部11との境界の目安にもなっており、足甲部10と足底部11との境界は、両方のゴアライン9の甲側の端を通るウェール(縦方向の編み目列)によって設定されている。
フート部7の足甲部10には、着用状態において着用者の足の甲を露出させる、踵から爪先へ向かう方向(以下、足長方向という。)に長手な略長方形状の開口12が形成されている。
【0023】
この開口12は、たとえば、足長方向に直交する方向(以下、足幅方向という。)における足甲部10の両端(足甲部10と足底部11との境界をなすウェール)からそれぞれ4〜16ウェール目の両ウェール間の領域において、足の甲側におけるレッグ部5とフート部7との切替え位置をなすコースから爪先部8へ向かう方向に8〜16コース分の編み組織が省略されることにより形成されている。
【0024】
爪先部8は、着用者の爪先を覆うものではないが、サポートソックス1の先端に位置する部位であるため、この実施形態では、爪先部8と称している。
爪先部8には、足の各指がそれぞれ挿入される同一形状の5つの開口13が足の甲側に形成されており、これらの開口13を区画する紐状サポート14が足幅方向に並べて合計4本形成されている。
【0025】
紐状サポート14の長さL1は、たとえば、20〜40コース分であり、幅W1は、たとえば、5〜20ウェール分である。また、紐状サポート14により区画される各開口13は、たとえば、20〜40コース分および5〜20ウェール分の編み組織が省略された部分である。なお、紐状サポート14および開口13の大きさは、サポートソックス1のサイズ(着用者の足の大きさ)に応じて適宜変更することが可能である。
【0026】
4本の紐状サポート14は、同じ長さL1(同じコース数)および同じ幅W1(同じウェール数)で形成されていることが好ましい。これにより、足の指の各間における紐状サポート14による刺激を一定にすることができる。
また、4本の紐状サポート14で区画される5つの開口13は、足長方向における甲に近い側の端部15が、たとえば、同一のコースで形成されていて、足幅方向における当該端部15の位置が、同一直線状に揃っている。
【0027】
足長方向においてフート部7の開口12の爪先側端部と紐状サポート14の甲側端部との間には、ベース部2およびタックサポート部3の他の編み組織よりも高い伸縮性が付与された高伸縮部16が、5つの開口13に跨るように、爪先部8の足の甲側の全ウェールにわたって帯状に形成されている。
この高伸縮部16は、フート部7および紐状サポート14と編み組織が連続している。すなわち、甲から爪先へ向かう方向において、フート部7の最終のコースの次のコースが高伸縮部16の最初のコースであり、高伸縮部16の最終のコースの次のコースが紐状サポート14の最初のコースとなっている。
【0028】
高伸縮部16は、弾性糸を用いて編成されることにより高い伸縮性が付与されており、具体的には、たとえば、ナイロン表糸(たとえば、東レ株式会社製「キュープ(登録商標)」など)および弾性糸としてのゴム裏糸(たとえば、東レ・オペロンテックス株式会社製「ライクラ(登録商標)」、旭化成せんい株式会社製「ロイカ(登録商標)」など」を用いて編成されている。
【0029】
また、ベース部2の他の部分の表糸および高伸縮部16の表糸は、同じ材質および同じ太さのものであることが好ましい。両者に同じ表糸を用いることにより、サポートソックス1全体としての質感や触り心地などのばらつきをなくすことができる。
このような構成を有するサポートソックス1において、タックサポート部3は、フート部7および爪先部8に跨るように選択的に形成されている。
【0030】
タックサポート部3は、タックの全ての表目が外側(接地する側)に出るように、かつ、タックの全ての裏目が内側(着用者の足に接する側)に出るように編成することにより、それぞれが編地のコースに沿って延び、内側に盛り上がる複数の畦17を、足長方向においてタックサポート部3の一端から他端にかけて毎コース有している。すなわち、タックサポート部3が占める領域において、互いに隣り合う畦17と畦17との間には、平編で編成された編み組織が設けられていない。
【0031】
そして、各コースに畦17が形成されて内側に突出することにより、タックサポート部3の厚さは、平編で編成されたベース部2の厚さよりも厚くなっている。また、タックサポート部3の接地面は、タック編の表目が露出することにより、平編のベース部2に比べて固い質感となっている。
タックサポート部3を編成するときのタックの回数(タック編1コース編成するために編み針で保持するループ数)は、編み針の種類や糸の種類によって異なるが、たとえば、8〜10回であり、晒し糸(染めなし)の糸の場合は10回程度、染糸の場合は8回程度であることが好ましい。
【0032】
フート部7および爪先部8に跨るタックサポート部3は、足の土踏まず部分に形成された土踏まずサポート18と、土踏まずサポート18と一体的に形成され、土踏まずサポート18から足の爪先側へ向かって、足の中指が挿入される開口13の爪先側の周縁部22まで突出した中指サポート19とを含む。
土踏まずサポート18は、フート部7の足の底側において足幅方向全体にわたって長方形状に形成されている。土踏まずサポート18の長さL2は、たとえば、15〜35コース分であり、幅W2は、たとえば、60〜80ウェール分である。なお、土踏まずサポート18の大きさは、サポートソックス1のサイズ(着用者の足の大きさ)に応じて適宜変更することが可能である。
【0033】
中指サポート19は、土踏まずサポート18よりも幅狭の長方形状に形成された裾部20と、当該裾部20の爪先側端部から、足の中指が挿入される開口13の爪先側の周縁部22へ向かうに従ってその幅が徐々に狭まる山状(三角形状)の山部21とを含む。
裾部20の長さL3は、たとえば、5〜20コース分であり、幅W3は、たとえば、40〜60ウェール分である。なお、裾部20の大きさは、サポートソックス1のサイズ(着用者の足の大きさ)に応じて適宜変更することが可能である。
【0034】
一方、山部21の長さL4は、たとえば、25〜45コース分であり、幅W4は、たとえば、40〜60ウェールから5〜15ウェールへと、1コース爪先側に進むことにより、1〜6ウェール分ずつ減っている。なお、山部21大きさは、サポートソックス1のサイズ(着用者の足の大きさ)に応じて適宜変更することが可能である。
次に、図7〜図11を参照して、サポートソックス1の着用状態を説明するとともに、このサポートソックス1を履いたときの効果を説明する。
【0035】
図7は、図1〜図6のサポートソックス1の着用状態を右斜め上方から見た図である。図8は、着用状態における爪先部8の拡大図である。図9は、図1〜図6のサポートソックス1の着用状態を裏側から見た図である。図10は、図1〜図6サポートソックス1の着用者の歩行状態を示す図である。図11は、弾性糸の挿入が困難な領域を説明するための図である。
【0036】
図7〜図10を参照して、このサポートソックス1を履いた着用者は、各開口13に足の指を1本ずつ挿入することにより、隣り合う開口13を区画する各紐状サポート14を足の指の各間にそれぞれ引っ掛けることができる。これにより、着用者は、足の爪先から甲を通って足首に向かう方向に引っ張られる(図8の白抜き矢印参照)紐状の紐状サポート14の働きにより、足の指の間に対するマッサージ効果を得ることができる。
【0037】
しかも、図1、図3および図5等に示すように、開口13が足の甲側に区画されるように紐状サポート14が形成されていて、開口13の裏側(足の底側)には編み組織23が編成されていることから、図10に示すように、着用者が歩行する際に、接地するのは当該開口13の裏側の編み組織23(ベース部2)であり、紐状サポート14が接地されない。着用者の履き方により紐状サポート14の一部が接地される場合もあるが、その場合でも、紐状サポート14の端部が接地される程度で済む。
【0038】
そのため、歩行時に、地面の表面に沿う横方向の力(横ズレの力)がソックスに作用しても、紐状サポート14が反対方向(足の爪先から底を通って踵に向かう方向)に引っ張られる力を軽減できるので、上記したマッサージ効果が軽減されてしまうことを防止することができる。また、開口13の裏側が編み組織23なので、履き心地もよい。
さらに、図10に示すように、着用者が足を接地した際には、着用者の足と地面との間に挟まれた土踏まずサポート18の畦17が、着用者の土踏まずを刺激するので(図10の白抜き矢印参照)、これにより着用者は、土踏まずに対するマッサージ効果を得ることができる。
【0039】
また、図9に示すように、着用者が足を接地した際に、足の5指のうち、中指の根元付近(図9のハッチング部)を局所的に中指サポート19の畦17で押すことができる。これにより、前述のマッサージ効果で解れた足の横アーチを、親指から小指にかけて中指付近で膨出するように、正常なアーチ形状に矯正することができ、指上げ足(浮き指)の緩和効果を得ることもできる。
【0040】
また、図2に示すように、中指サポート19の幅を、土踏まずサポート18の幅W2から、中指の根元を局所的に押すために必要な幅に急激に狭めるのではなく、裾部20で幅W3へと少し狭めた後、山部21では、たとえば、1コース爪先側に進むことにより、1〜6ウェール分ずつ減るように幅W4を徐々に狭めている。そのため、人が足の裏で感じる違和感を軽減することができ、良好な快適性を維持することができる。
【0041】
また、土踏まずサポート18が着用者の土踏まずから多少ずれても、土踏まずサポート18付近の中指サポート19(裾部20)の幅W3が、土踏まずサポート18の幅W2よりも若干狭い程度であるため、土踏まずに対するマッサージ効果を十分発現することができる。
また、フート部7の開口12の爪先側端部と紐状サポート14の甲側端部との間に帯状の高伸縮部16が形成されているので、図8に示すように、この高伸縮部16の弾性力により、着用者の指の根元を締め付けることができる(図8の黒塗り矢印参照)。この締め付けにより高伸縮部16が足に固定されるので、足の爪先から甲を通って足首に向かう方向に引っ張られた紐状サポート14の状態を維持することができる。その結果、マッサージ効果の持続性を向上させることができる。
【0042】
さらに、この締め付けにより、足の親指を外側に向ける方向に力を加えることができるので(図8のハッチング矢印参照)、外反母趾の症状の緩和効果を得ることもできる。
ところで、横編機では、編み組織の各コースに弾性糸を編み込む際には、足の甲側および足の底側の一部のウェールのみに弾性糸を挿入することはできない。したがって、図11に示すように、足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口13の甲側の端部15が同一のコースで形成されておらずバラツキがあると、高伸縮部16を形成する際に、一部の開口13のウェールにおいては、そのバラツキの差Dに相当するコース分、甲側の端部15を形成するコースの次のコースから弾性糸を挿入することが困難である。その結果、その一部の開口13を区画する紐状サポート14に関しては、引張り力の持続性が他の紐状サポート14よりも低くなる場合がある。
【0043】
そこで、この実施形態によれば、足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口13の甲側の端部15が同一のコースで統一されているので、全ての開口13のウェールにおいて、甲側の端部15を形成するコースの次のコースから弾性糸を同時に挿入することができる。その結果、全ての紐状サポート14の引張り力の持続性を一定にすることができる。
さらに、フート部7の足甲部10に、着用状態において着用者の足の甲を露出させる開口12が形成されているので、この開口12の部分に編み組織が形成されている場合よりも、紐状サポート14の引張り力の分散を抑制することができる。その結果、足の爪先から甲を通って足首に向かう方向に引っ張られた紐状サポート14の状態を維持することができる。また、着用者の足の甲と足底との間に適当な温度差を発生させることができるので、着用後の快適性にも優れる。
【0044】
そして、この実施形態で説明したサポートソックス1は、全体を横編機で編成する編み組織により形成し、部分的にタック編などを施すことにより、簡単に製造することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、スニーカーソックスを一例として採り上げたが、本発明は、たとえば、ひざ下丈のハイソックス、ひざ上丈のオーバーザニーソックス、太もも丈のストッキング、腰丈のタイツ、さらには、爪先部8、フート部7および口ゴム部4のみを有するつま先ソックスなど、各種形態に適用することができる。
【0045】
また、たとえば、図12に示すように、踵部6は省略されていてもよい。踵部6が省略されたサポートソックス1は、着用者が踵を露出させ、地面に対する踏ん張りが効くので、柔道、空手、踊りなどのスポーツ用途に好適である。一方、前述の実施形態で説明した踵部6があるタイプは、家庭で寛ぐときなどに好適である。その場合、弾性糸として比較的弱いものを用いれば、締め付けを軽減できるので、一層快適である。
【0046】
また、タックサポート部3は、図13に示すように、タックの表目および裏目が、外側(接地する側)および内側(着用者の足に接する側)に交互に出るように編成することにより、内側および外側に交互に盛り上がる複数の畦17を有していてもよい。
また、着用者が足の裏で感じる感覚には個人差があるので、中指サポート19は、山状でなく、たとえば、土踏まずサポート18から足の中指が挿入される開口13の爪先側の周縁部22へ向かって延びる帯状であってもよい。このような形状であっても、着用者によっては違和感を覚えない場合もあるからである。
【0047】
また、前述の実施形態では、ベース部2の編み組織は、平編により編成されているとしたが、たとえば、パール編やリブ編などであってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 サポートソックス
2 ベース部
3 タックサポート部
4 口ゴム部
5 レッグ部
6 踵部
7 フート部
8 爪先部
9 ゴアライン
10 (フート部の)足甲部
11 (フート部の)足底部
12 (フート部の)開口
13 (爪先部の)開口
14 紐状サポート
15 開口の端部
16 高伸縮部
17 畦
18 土踏まずサポート
19 中指サポート
20 裾部
21 山部
22 (中指開口の)周縁部
23 編み組織
【技術分野】
【0001】
本発明は、サポートソックス、より詳しくは、人の足にマッサージ効果を付与するサポートソックスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な機能が付与された靴下やサポータが注目されている。
たとえば、特許文献1は、中足関節部である第1中足骨骨頭部と第5中足骨骨頭部と、ゴムに絡ませながら織り込まれた強度の強い糸からなり、リスフラン関節部である第1中足骨基底部と第5中足骨基底部を固定し、足の横アーチ(中足関節部)と縦アーチ(リスフラン関節部)を形成するための締め付け部とを有する、外反母趾および内反小指矯正用靴下を開示している。
【0003】
また、特許文献2は、ズレ防止ベルト、各種クッション材、および複数の係止用マジック(登録商標)ファスナを備え、外反母趾と内反小指の患部である親指と第2指間、第4指と第5指間を離すために、親指と第2指間の指間パットおよび第4指と第5指間の指間パットが設けられた、外反母趾および内反小指矯正用サポータを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−161344号公報
【特許文献2】特開2007−167180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
先行技術文献として開示された特許文献1および2は、外反母趾対策の機能が付与された靴下やサポータであるが、たとえば、人の足を部分的に刺激してマッサージする機能が付与された靴下やサポータの需要も増加している。
本発明の目的は、足の指の間および土踏まずに対して、マッサージ効果を効果的に付与することができ、しかも簡単に製造することができるサポートソックスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1記載の発明は、全体が横編機で編成された編み組織からなるサポートソックスであって、前記サポートソックスは、タック編で編成された編地のコースに沿って延びる畦が形成されることにより、他の編み組織よりも厚さが増していて、着用者が足を接地した状態において、その着用者の荷重により前記畦が着用者の足の裏を上側へ押して刺激するタックサポートを足の底側に選択的に有し、足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口を足の甲側に区画し、着用状態において、着用者の足指の各間に引っ掛けられる紐状サポートを有しており、前記タックサポートは、足の土踏まず部分に形成された土踏まずサポートを含む、サポートソックスである。
【0007】
このサポートソックスを履いた着用者は、各開口に足の指を1本ずつ挿入することにより、隣り合う開口を区画する各紐状サポートを足の指の各間にそれぞれ引っ掛けることができる。これにより、着用者は、足の爪先から甲を通って足首に向かう方向に引っ張られる紐状の紐状サポートの働きにより、足の指の間に対するマッサージ効果を得ることができる。
【0008】
しかも、開口が足の甲側に区画されるように紐状サポートが形成されていて、開口の裏側(足の底側)には編み組織が編成されていることから、着用者が歩行する際に、接地するのは当該開口の裏側の編み組織であり、紐状サポートが接地されない。着用者の履き方により紐状サポートの一部が接地される場合もあるが、その場合でも、紐状サポートの端部が接地される程度で済む。そのため、歩行時に、地面の表面に沿う横方向の力がソックスに作用しても、紐状サポートが反対方向(足の爪先から底を通って踵に向かう方向)に引っ張られる力を軽減できるので、上記したマッサージ効果が軽減されてしまうことを防止することができる。また、開口の裏側が編み組織なので、履き心地もよい。
【0009】
さらに、着用者が足を接地した際には、着用者の足と地面との間に挟まれた土踏まずサポートの畦が、着用者の土踏まずを刺激するので、これにより着用者は、土踏まずに対するマッサージ効果を得ることができる。
そして、このようなサポートソックスは、全体を横編機で編成する編み組織により形成し、部分的にタック編などを施すことにより、簡単に製造することができる。
【0010】
また、請求項2記載の発明は、前記タックサポートは、前記土踏まずサポートと一体的に形成され、前記土踏まずサポートから足の爪先側へ向かって、足の中指が挿入される前記開口の爪先側の周縁部まで突出した中指サポートをさらに含む、請求項1に記載のサポートソックスである。
この構成によれば、着用者が足を接地した際に、足の5指のうち、中指の根元付近を局所的に中指サポートの畦で押すことができる。これにより、請求項1のマッサージ効果で解れた足の横アーチを、親指から小指にかけて中指付近で膨出するように、正常なアーチ形状に矯正することができ、指上げ足(浮き指)の緩和効果を得ることもできる。
【0011】
また、請求項3記載の発明は、前記中指サポートは、前記足の中指が挿入される前記開口の前記爪先側の周縁部が頂点となり、前記土踏まずサポートが裾となるように、前記土踏まずサポートから前記開口の前記爪先側の周縁部へ向かうに従ってその幅が徐々に狭まる山状に形成されている、請求項2に記載のサポートソックスである。
この構成によれば、中指サポートの幅を、土踏まずサポートの幅から、中指の根元を局所的に押すために必要な幅に急激に狭めるのではなく、徐々に狭めているので、人が足の裏で感じる違和感を軽減することができ、良好な快適性を維持することができる。また、土踏まずサポートが着用者の土踏まずから多少ずれても、土踏まずサポート付近の中指サポートの幅が、土踏まずサポートよりも若干狭い程度であるため、土踏まずに対するマッサージ効果を十分発現することができる。
【0012】
また、請求項4記載の発明は、前記サポートソックスは、前記紐状サポートの長手方向における甲側の端部において、4つの前記紐状サポートに跨るように編地のコースに沿って帯状に形成され、弾性糸を用いて編成されることにより、他の編み組織よりも高い伸縮性が付与された高伸縮部をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のサポートソックスである。
【0013】
この構成によれば、帯状の高伸縮部の弾性力により、着用者の指の根元を締め付けることができる。この締め付けにより高伸縮部が足に固定されるので、足の爪先から甲を通って足首に向かう方向に引っ張られた紐状サポートの状態を維持することができる。その結果、マッサージ効果の持続性を向上させることができる。さらに、この締め付けにより、足の親指を外側に向ける方向に力を加えることができるので、外反母趾の症状の緩和効果を得ることもできる。
【0014】
また、請求項5記載の発明は、前記足の各指がそれぞれ挿入される5つの前記開口の甲側の端部が、同一のコースで形成されている、請求項4に記載のサポートソックスである。
横編機では、編み組織の各コースに弾性糸を編み込む際には、足の甲側および足の底側の一部のウェールのみに弾性糸を挿入することはできない。したがって、足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口の甲側の端部が同一のコースで形成されておらずバラツキがあると、高伸縮部を形成する際に、一部の開口のウェールにおいては、そのバラツキの差に相当するコース分、弾性糸を挿入することが困難である。その結果、その一部の開口を区画する紐状サポートに関しては、引張り力の持続性が他の紐状サポートよりも低くなる場合がある。
【0015】
そこで、請求項5記載の発明によれば、足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口の甲側の端部が同一のコースで統一されているので、全ての開口のウェールにおいて、甲側の端部を形成するコースの次のコースから弾性糸を同時に挿入することができる。その結果、全ての紐状サポートの引張り力の持続性を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るサポートソックスの平面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るサポートソックスの底面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るサポートソックスの正面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るサポートソックスの背面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るサポートソックスの右側面図である。
【図6】図3のA−A切断面における断面図である。
【図7】図1〜図6のサポートソックスの着用状態を右斜め上方から見た図である。
【図8】着用状態における爪先部の拡大図である。
【図9】図1〜図6のサポートソックスの着用状態を裏側から見た図である。
【図10】図1〜図6サポートソックスの着用者の歩行状態を示す図である。
【図11】弾性糸の挿入が困難な領域を説明するための図である。
【図12】図1〜図6サポートソックスの変形例を示す図(右側面)である。
【図13】図1〜図6サポートソックスの変形例を示す図(着用状態の図)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下では、本発明の実施の形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1〜図6は、本発明の一実施形態に係るサポートソックス1を示す図であって、図1が平面図、図2が底面図、図3が正面図、図4が背面図、図5が右側面図、図6が図3のA−A切断面における断面図である。なお、図1〜図6のサポートソックス1は、左右どちらの足にも使用することができる左右兼用タイプである。
【0018】
本発明の一実施形態に係るサポートソックス1は、たとえば、スニーカーソックスであって、前後方向に対向する少なくとも前後一対の針床を有する横編機(たとえば、株式会社島精機製作所製「SWG061N」)を用いて編成された編み組織からなる。
このサポートソックス1の編み組織は、縫製や接着剤により別々の編み組織からなる複数のパーツが継ぎ接ぎされて編成されたものではなく、当該サポートソックス1の複数の部位を編成する編み組織が互いに編みループで繋がって編成されており、平編(プレーン編)で編成されたベース部2と、タック編で編成されたタックサポート部3とを含んでいる。
【0019】
ベース部2およびタックサポート部3は、本実施形態では、たとえば、ナイロン表糸(たとえば、東レ株式会社製「キュープ(登録商標)」など)およびFTY(Filament Twisted Yarn)裏糸(たとえば、旭化成株式会社製「ポリウレタン×ナイロン=70×70」など)を用いて編成されている。
なお、用いられる糸の太さは、サポートソックス1の各部位に必要な伸縮性に応じて適宜のものを選択すればよい。たとえば、ナイロン表糸としては、70D(デニール)の単糸を2本撚り合わせた双糸の3本使い(双糸3本を表糸として使用)、FTY裏糸は70/70(70D・ポリウレタン×70D・ナイロン)程度の糸、後述するゴム裏糸としては、560D程度の芯糸(ポリウレタン)を70D程度のカバリング糸(ナイロン)でダブルカバリングしたDCY(Double Covering Yarn)を選択することができる。
【0020】
このような編み組織を有する当該サポートソックス1は、複数の部位として、履き口側から爪先側へ向かって順に、口ゴム部4、レッグ部5、踵部6、フート部7および爪先部8を一体的に有している。
口ゴム部4は、筒状に形成されており、この口ゴム部4の下端と連続して、レッグ部5が筒状に形成されている。
【0021】
踵部6には、その編み組織を編成する際に生じるゴアライン9が左右両側に形成されている。ゴアライン9は、足の甲側において、レッグ部5とフート部7との境界(切替え位置)の目安となるものである。具体的には、足の甲側において、レッグ部5とフート部7との切替え位置は、左側のゴアライン9の甲側の端と、右側のゴアライン9の甲側の端とを結ぶコース(横方向の編み目列)によって設定されている。そして、当該コースよりも爪先側がフート部7の編み組織であり、その反対側がレッグ部5の編み組織である。
【0022】
また、ゴアライン9は、フート部7の足甲部10と足底部11との境界の目安にもなっており、足甲部10と足底部11との境界は、両方のゴアライン9の甲側の端を通るウェール(縦方向の編み目列)によって設定されている。
フート部7の足甲部10には、着用状態において着用者の足の甲を露出させる、踵から爪先へ向かう方向(以下、足長方向という。)に長手な略長方形状の開口12が形成されている。
【0023】
この開口12は、たとえば、足長方向に直交する方向(以下、足幅方向という。)における足甲部10の両端(足甲部10と足底部11との境界をなすウェール)からそれぞれ4〜16ウェール目の両ウェール間の領域において、足の甲側におけるレッグ部5とフート部7との切替え位置をなすコースから爪先部8へ向かう方向に8〜16コース分の編み組織が省略されることにより形成されている。
【0024】
爪先部8は、着用者の爪先を覆うものではないが、サポートソックス1の先端に位置する部位であるため、この実施形態では、爪先部8と称している。
爪先部8には、足の各指がそれぞれ挿入される同一形状の5つの開口13が足の甲側に形成されており、これらの開口13を区画する紐状サポート14が足幅方向に並べて合計4本形成されている。
【0025】
紐状サポート14の長さL1は、たとえば、20〜40コース分であり、幅W1は、たとえば、5〜20ウェール分である。また、紐状サポート14により区画される各開口13は、たとえば、20〜40コース分および5〜20ウェール分の編み組織が省略された部分である。なお、紐状サポート14および開口13の大きさは、サポートソックス1のサイズ(着用者の足の大きさ)に応じて適宜変更することが可能である。
【0026】
4本の紐状サポート14は、同じ長さL1(同じコース数)および同じ幅W1(同じウェール数)で形成されていることが好ましい。これにより、足の指の各間における紐状サポート14による刺激を一定にすることができる。
また、4本の紐状サポート14で区画される5つの開口13は、足長方向における甲に近い側の端部15が、たとえば、同一のコースで形成されていて、足幅方向における当該端部15の位置が、同一直線状に揃っている。
【0027】
足長方向においてフート部7の開口12の爪先側端部と紐状サポート14の甲側端部との間には、ベース部2およびタックサポート部3の他の編み組織よりも高い伸縮性が付与された高伸縮部16が、5つの開口13に跨るように、爪先部8の足の甲側の全ウェールにわたって帯状に形成されている。
この高伸縮部16は、フート部7および紐状サポート14と編み組織が連続している。すなわち、甲から爪先へ向かう方向において、フート部7の最終のコースの次のコースが高伸縮部16の最初のコースであり、高伸縮部16の最終のコースの次のコースが紐状サポート14の最初のコースとなっている。
【0028】
高伸縮部16は、弾性糸を用いて編成されることにより高い伸縮性が付与されており、具体的には、たとえば、ナイロン表糸(たとえば、東レ株式会社製「キュープ(登録商標)」など)および弾性糸としてのゴム裏糸(たとえば、東レ・オペロンテックス株式会社製「ライクラ(登録商標)」、旭化成せんい株式会社製「ロイカ(登録商標)」など」を用いて編成されている。
【0029】
また、ベース部2の他の部分の表糸および高伸縮部16の表糸は、同じ材質および同じ太さのものであることが好ましい。両者に同じ表糸を用いることにより、サポートソックス1全体としての質感や触り心地などのばらつきをなくすことができる。
このような構成を有するサポートソックス1において、タックサポート部3は、フート部7および爪先部8に跨るように選択的に形成されている。
【0030】
タックサポート部3は、タックの全ての表目が外側(接地する側)に出るように、かつ、タックの全ての裏目が内側(着用者の足に接する側)に出るように編成することにより、それぞれが編地のコースに沿って延び、内側に盛り上がる複数の畦17を、足長方向においてタックサポート部3の一端から他端にかけて毎コース有している。すなわち、タックサポート部3が占める領域において、互いに隣り合う畦17と畦17との間には、平編で編成された編み組織が設けられていない。
【0031】
そして、各コースに畦17が形成されて内側に突出することにより、タックサポート部3の厚さは、平編で編成されたベース部2の厚さよりも厚くなっている。また、タックサポート部3の接地面は、タック編の表目が露出することにより、平編のベース部2に比べて固い質感となっている。
タックサポート部3を編成するときのタックの回数(タック編1コース編成するために編み針で保持するループ数)は、編み針の種類や糸の種類によって異なるが、たとえば、8〜10回であり、晒し糸(染めなし)の糸の場合は10回程度、染糸の場合は8回程度であることが好ましい。
【0032】
フート部7および爪先部8に跨るタックサポート部3は、足の土踏まず部分に形成された土踏まずサポート18と、土踏まずサポート18と一体的に形成され、土踏まずサポート18から足の爪先側へ向かって、足の中指が挿入される開口13の爪先側の周縁部22まで突出した中指サポート19とを含む。
土踏まずサポート18は、フート部7の足の底側において足幅方向全体にわたって長方形状に形成されている。土踏まずサポート18の長さL2は、たとえば、15〜35コース分であり、幅W2は、たとえば、60〜80ウェール分である。なお、土踏まずサポート18の大きさは、サポートソックス1のサイズ(着用者の足の大きさ)に応じて適宜変更することが可能である。
【0033】
中指サポート19は、土踏まずサポート18よりも幅狭の長方形状に形成された裾部20と、当該裾部20の爪先側端部から、足の中指が挿入される開口13の爪先側の周縁部22へ向かうに従ってその幅が徐々に狭まる山状(三角形状)の山部21とを含む。
裾部20の長さL3は、たとえば、5〜20コース分であり、幅W3は、たとえば、40〜60ウェール分である。なお、裾部20の大きさは、サポートソックス1のサイズ(着用者の足の大きさ)に応じて適宜変更することが可能である。
【0034】
一方、山部21の長さL4は、たとえば、25〜45コース分であり、幅W4は、たとえば、40〜60ウェールから5〜15ウェールへと、1コース爪先側に進むことにより、1〜6ウェール分ずつ減っている。なお、山部21大きさは、サポートソックス1のサイズ(着用者の足の大きさ)に応じて適宜変更することが可能である。
次に、図7〜図11を参照して、サポートソックス1の着用状態を説明するとともに、このサポートソックス1を履いたときの効果を説明する。
【0035】
図7は、図1〜図6のサポートソックス1の着用状態を右斜め上方から見た図である。図8は、着用状態における爪先部8の拡大図である。図9は、図1〜図6のサポートソックス1の着用状態を裏側から見た図である。図10は、図1〜図6サポートソックス1の着用者の歩行状態を示す図である。図11は、弾性糸の挿入が困難な領域を説明するための図である。
【0036】
図7〜図10を参照して、このサポートソックス1を履いた着用者は、各開口13に足の指を1本ずつ挿入することにより、隣り合う開口13を区画する各紐状サポート14を足の指の各間にそれぞれ引っ掛けることができる。これにより、着用者は、足の爪先から甲を通って足首に向かう方向に引っ張られる(図8の白抜き矢印参照)紐状の紐状サポート14の働きにより、足の指の間に対するマッサージ効果を得ることができる。
【0037】
しかも、図1、図3および図5等に示すように、開口13が足の甲側に区画されるように紐状サポート14が形成されていて、開口13の裏側(足の底側)には編み組織23が編成されていることから、図10に示すように、着用者が歩行する際に、接地するのは当該開口13の裏側の編み組織23(ベース部2)であり、紐状サポート14が接地されない。着用者の履き方により紐状サポート14の一部が接地される場合もあるが、その場合でも、紐状サポート14の端部が接地される程度で済む。
【0038】
そのため、歩行時に、地面の表面に沿う横方向の力(横ズレの力)がソックスに作用しても、紐状サポート14が反対方向(足の爪先から底を通って踵に向かう方向)に引っ張られる力を軽減できるので、上記したマッサージ効果が軽減されてしまうことを防止することができる。また、開口13の裏側が編み組織23なので、履き心地もよい。
さらに、図10に示すように、着用者が足を接地した際には、着用者の足と地面との間に挟まれた土踏まずサポート18の畦17が、着用者の土踏まずを刺激するので(図10の白抜き矢印参照)、これにより着用者は、土踏まずに対するマッサージ効果を得ることができる。
【0039】
また、図9に示すように、着用者が足を接地した際に、足の5指のうち、中指の根元付近(図9のハッチング部)を局所的に中指サポート19の畦17で押すことができる。これにより、前述のマッサージ効果で解れた足の横アーチを、親指から小指にかけて中指付近で膨出するように、正常なアーチ形状に矯正することができ、指上げ足(浮き指)の緩和効果を得ることもできる。
【0040】
また、図2に示すように、中指サポート19の幅を、土踏まずサポート18の幅W2から、中指の根元を局所的に押すために必要な幅に急激に狭めるのではなく、裾部20で幅W3へと少し狭めた後、山部21では、たとえば、1コース爪先側に進むことにより、1〜6ウェール分ずつ減るように幅W4を徐々に狭めている。そのため、人が足の裏で感じる違和感を軽減することができ、良好な快適性を維持することができる。
【0041】
また、土踏まずサポート18が着用者の土踏まずから多少ずれても、土踏まずサポート18付近の中指サポート19(裾部20)の幅W3が、土踏まずサポート18の幅W2よりも若干狭い程度であるため、土踏まずに対するマッサージ効果を十分発現することができる。
また、フート部7の開口12の爪先側端部と紐状サポート14の甲側端部との間に帯状の高伸縮部16が形成されているので、図8に示すように、この高伸縮部16の弾性力により、着用者の指の根元を締め付けることができる(図8の黒塗り矢印参照)。この締め付けにより高伸縮部16が足に固定されるので、足の爪先から甲を通って足首に向かう方向に引っ張られた紐状サポート14の状態を維持することができる。その結果、マッサージ効果の持続性を向上させることができる。
【0042】
さらに、この締め付けにより、足の親指を外側に向ける方向に力を加えることができるので(図8のハッチング矢印参照)、外反母趾の症状の緩和効果を得ることもできる。
ところで、横編機では、編み組織の各コースに弾性糸を編み込む際には、足の甲側および足の底側の一部のウェールのみに弾性糸を挿入することはできない。したがって、図11に示すように、足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口13の甲側の端部15が同一のコースで形成されておらずバラツキがあると、高伸縮部16を形成する際に、一部の開口13のウェールにおいては、そのバラツキの差Dに相当するコース分、甲側の端部15を形成するコースの次のコースから弾性糸を挿入することが困難である。その結果、その一部の開口13を区画する紐状サポート14に関しては、引張り力の持続性が他の紐状サポート14よりも低くなる場合がある。
【0043】
そこで、この実施形態によれば、足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口13の甲側の端部15が同一のコースで統一されているので、全ての開口13のウェールにおいて、甲側の端部15を形成するコースの次のコースから弾性糸を同時に挿入することができる。その結果、全ての紐状サポート14の引張り力の持続性を一定にすることができる。
さらに、フート部7の足甲部10に、着用状態において着用者の足の甲を露出させる開口12が形成されているので、この開口12の部分に編み組織が形成されている場合よりも、紐状サポート14の引張り力の分散を抑制することができる。その結果、足の爪先から甲を通って足首に向かう方向に引っ張られた紐状サポート14の状態を維持することができる。また、着用者の足の甲と足底との間に適当な温度差を発生させることができるので、着用後の快適性にも優れる。
【0044】
そして、この実施形態で説明したサポートソックス1は、全体を横編機で編成する編み組織により形成し、部分的にタック編などを施すことにより、簡単に製造することができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は、他の形態で実施することもできる。
たとえば、前述の実施形態では、スニーカーソックスを一例として採り上げたが、本発明は、たとえば、ひざ下丈のハイソックス、ひざ上丈のオーバーザニーソックス、太もも丈のストッキング、腰丈のタイツ、さらには、爪先部8、フート部7および口ゴム部4のみを有するつま先ソックスなど、各種形態に適用することができる。
【0045】
また、たとえば、図12に示すように、踵部6は省略されていてもよい。踵部6が省略されたサポートソックス1は、着用者が踵を露出させ、地面に対する踏ん張りが効くので、柔道、空手、踊りなどのスポーツ用途に好適である。一方、前述の実施形態で説明した踵部6があるタイプは、家庭で寛ぐときなどに好適である。その場合、弾性糸として比較的弱いものを用いれば、締め付けを軽減できるので、一層快適である。
【0046】
また、タックサポート部3は、図13に示すように、タックの表目および裏目が、外側(接地する側)および内側(着用者の足に接する側)に交互に出るように編成することにより、内側および外側に交互に盛り上がる複数の畦17を有していてもよい。
また、着用者が足の裏で感じる感覚には個人差があるので、中指サポート19は、山状でなく、たとえば、土踏まずサポート18から足の中指が挿入される開口13の爪先側の周縁部22へ向かって延びる帯状であってもよい。このような形状であっても、着用者によっては違和感を覚えない場合もあるからである。
【0047】
また、前述の実施形態では、ベース部2の編み組織は、平編により編成されているとしたが、たとえば、パール編やリブ編などであってもよい。
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0048】
1 サポートソックス
2 ベース部
3 タックサポート部
4 口ゴム部
5 レッグ部
6 踵部
7 フート部
8 爪先部
9 ゴアライン
10 (フート部の)足甲部
11 (フート部の)足底部
12 (フート部の)開口
13 (爪先部の)開口
14 紐状サポート
15 開口の端部
16 高伸縮部
17 畦
18 土踏まずサポート
19 中指サポート
20 裾部
21 山部
22 (中指開口の)周縁部
23 編み組織
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体が横編機で編成された編み組織からなるサポートソックスであって、
前記サポートソックスは、
タック編で編成された編地のコースに沿って延びる畦が形成されることにより、他の編み組織よりも厚さが増していて、着用者が足を接地した状態において、その着用者の荷重により前記畦が着用者の足の裏を上側へ押して刺激するタックサポートを足の底側に選択的に有し、
足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口を足の甲側に区画し、着用状態において、着用者の足指の各間に引っ掛けられる紐状サポートを有しており、
前記タックサポートは、足の土踏まず部分に形成された土踏まずサポートを含む、サポートソックス。
【請求項2】
前記タックサポートは、前記土踏まずサポートと一体的に形成され、前記土踏まずサポートから足の爪先側へ向かって、足の中指が挿入される前記開口の爪先側の周縁部まで突出した中指サポートをさらに含む、請求項1に記載のサポートソックス。
【請求項3】
前記中指サポートは、前記足の中指が挿入される前記開口の前記爪先側の周縁部が頂点となり、前記土踏まずサポートが裾となるように、前記土踏まずサポートから前記開口の前記爪先側の周縁部へ向かうに従ってその幅が徐々に狭まる山状に形成されている、請求項2に記載のサポートソックス。
【請求項4】
前記サポートソックスは、
前記紐状サポートの長手方向における甲側の端部において、4つの前記紐状サポートに跨るように編地のコースに沿って帯状に形成され、弾性糸を用いて編成されることにより、他の編み組織よりも高い伸縮性が付与された高伸縮部をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のサポートソックス。
【請求項5】
前記足の各指がそれぞれ挿入される5つの前記開口の甲側の端部が、同一のコースで形成されている、請求項4に記載のサポートソックス。
【請求項1】
全体が横編機で編成された編み組織からなるサポートソックスであって、
前記サポートソックスは、
タック編で編成された編地のコースに沿って延びる畦が形成されることにより、他の編み組織よりも厚さが増していて、着用者が足を接地した状態において、その着用者の荷重により前記畦が着用者の足の裏を上側へ押して刺激するタックサポートを足の底側に選択的に有し、
足の各指がそれぞれ挿入される5つの開口を足の甲側に区画し、着用状態において、着用者の足指の各間に引っ掛けられる紐状サポートを有しており、
前記タックサポートは、足の土踏まず部分に形成された土踏まずサポートを含む、サポートソックス。
【請求項2】
前記タックサポートは、前記土踏まずサポートと一体的に形成され、前記土踏まずサポートから足の爪先側へ向かって、足の中指が挿入される前記開口の爪先側の周縁部まで突出した中指サポートをさらに含む、請求項1に記載のサポートソックス。
【請求項3】
前記中指サポートは、前記足の中指が挿入される前記開口の前記爪先側の周縁部が頂点となり、前記土踏まずサポートが裾となるように、前記土踏まずサポートから前記開口の前記爪先側の周縁部へ向かうに従ってその幅が徐々に狭まる山状に形成されている、請求項2に記載のサポートソックス。
【請求項4】
前記サポートソックスは、
前記紐状サポートの長手方向における甲側の端部において、4つの前記紐状サポートに跨るように編地のコースに沿って帯状に形成され、弾性糸を用いて編成されることにより、他の編み組織よりも高い伸縮性が付与された高伸縮部をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のサポートソックス。
【請求項5】
前記足の各指がそれぞれ挿入される5つの前記開口の甲側の端部が、同一のコースで形成されている、請求項4に記載のサポートソックス。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−14857(P2013−14857A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148460(P2011−148460)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(511161823)株式会社レッグニットクリス (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【出願人】(511161823)株式会社レッグニットクリス (1)
【Fターム(参考)】
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