説明

サラダの製造方法及びサラダ

【課題】蒸煮することによって軟らかく又崩れやすくなる野菜類又は芋類を主具材とし、これら蒸煮した主具材と調味液とを和えることなく、サラダを製造しても、サラダ自体が和えられた様に見え、また、具材が崩れることなく、具材の固形部が残存して具材感があり、食感、見た目ともに良好なサラダの製造方法及びサラダを提供する。
【解決手段】蒸煮(ボイル)した野菜類又は芋類を冷凍することにより崩れにくくし、さらにミキサーを使った撹拌を行わず、可撓性容器に前記冷凍した野菜類又は芋類と調味液とを入れた後、脱気することで調味液を野菜類又は芋類になじませ、その後加熱殺菌する。このとき調味液の粘度は、1500cP〜20000cPが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蒸煮することにより軟らかくなる野菜類又は芋類を主具材とするサラダの製造方法及びサラダに係り、可撓性容器内の主具材において、主具材の食感が損なわれることなく、その固形部が残存したサラダの製造方法及びサラダに関する。
【背景技術】
【0002】
マヨネーズやドレッシング類等の調味液を用いた代表的な食材としてサラダがある。このようなサラダは使用する主な食材により、ポテトサラダ、野菜サラダ、パスタサラダ、タマゴサラダ、フルーツサラダ等があり、マヨネーズやドレッシング類等の調味液を用いたサラダは、一般的に主具材と調味液とを和えて作られる。
【0003】
このようなサラダの製造方法としては、例えば、特開昭57−115133号公報に記載の方法が知られている。このサラダの製造方法は、常法のごとく前処理を施した適宜大きさの肉類、野菜類などサラダの固形材料を予め調整し、密封容器に詰め込んだ後に乳化調味料ソースを充填し、その後、密封して高温殺菌を施すとともに該殺菌中の加熱によって同時にサラダを調理するものである。このサラダの製造方法によれば、殺菌と調理との同時処理が可能となる。
【0004】
しかしながら、サラダの主具材としてカボチャ又は芋類等を用いたサラダを製造する場合においては、前記特許文献に記載の製造方法によると、カボチャ又は芋類等は蒸煮することにより軟らかくなるため、このような軟らかくなった具材を密封容器に詰め込んだ後に乳化調味料ソースを充填し、その後、密封して高温殺菌を施すと、前記具材自体の固形性が失われ、具材の一部がペースト状となってソースと混じり合い、具材の特性である食感も失われた状態となる。
【特許文献1】特開昭57−115133号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したように、蒸煮することにより軟らかく又は崩れやすくなる野菜類又は芋類を主具材とするサラダは、これら軟らかく又は崩れやすくなった具材をマヨネーズやドレッシング類等の調味液と和えることによって具材自体が、もしくはその具材の一部が崩れてしまい、ペースト状となって調味液と混じり合ってしまうといった不都合がある。このように、サラダは主具材の固形が崩れてペースト状になってしまうと、具材の特性である食感が失われてしまうと共に、崩れた具材と調味液とが混じり合い、見た目にも悪くなる場合が生じる。
本発明は、これらの事情に鑑みてなされたもので、蒸煮することによって軟らかく又崩れやすくなる野菜類又は芋類を主具材とし、これら蒸煮した主具材と調味液とを和えることなく、サラダを製造しても、サラダ自体が和えられた様に見え、また、具材が崩れることなく、具材の固形部が残存して具材感があり、食感、見た目ともに良好なサラダの製造方法、及びサラダを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため本発明による一態様のサラダの製造方法は、蒸煮することにより軟らかく又崩れやすくなる野菜類又は芋類を5mm〜40mmの大きさに切り、前処理としてそれらを蒸煮した後冷凍する。この冷凍した野菜類又は芋類を可撓性容器に入れ、さらに調味液を充填した後、前記可撓性容器内を脱気することで、前記調味液を前記野菜類又は芋類間、及び可撓性容器内に充分行き渡らせ、その後前記可撓性容器を加熱殺菌し、野菜類又は芋類の固形部が残存した状態とすることを特徴とする。
【0007】
すなわち、
(1)蒸煮した例えば角切り野菜類又は芋類を冷凍することで、調味液と和える時崩れにくくなり、蒸煮することにより軟らかく又崩れやすくなる具材でありながら固形部の残存したサラダを作ることを実現した。
【0008】
(2)可撓性容器に前記(1)に記載の蒸煮した後冷凍した野菜等を入れた後調味液を充填し、脱気することにより、攪拌せずに和える(調味液を野菜類又は芋類間、及び可撓性容器内に行き渡らせて混合させる)ことを可能にした。このとき、調味液の粘度は1500cP〜20000cPが好ましい。
【0009】
(3)脱気後密封し、加熱殺菌することにより、調理が完了すると共に、保存性の高いサラダとなり、さらに味も染み込む。
【0010】
また、本発明の一態様によるサラダは、5mm〜40mmの大きさに切って蒸煮した後冷凍した、蒸煮することにより軟らかくなる野菜類又は芋類と、調味液とを可撓性容器に入れ、前記調味液を前記野菜類又は芋類間、及び可撓性容器内に充分行き渡らせるよう前記可撓性容器内を脱気した後、この可撓性容器を加熱殺菌し、野菜類又は芋類の固形部が残存した状態としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、蒸煮することによって軟らかく又崩れやすくなる野菜類又は芋類を主具材とし、これら蒸煮した主具材と調味液とを和えることなく、サラダを製造しても、サラダ自体が和えられた様に見え、また、具材が崩れることなく、具材の固形部が残存して具材感があり、食感、見た目ともに良好なサラダを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施例を説明する。尚、本発明はこれらに限定されるものではない。また、本発明の実施例において「%」は断りのない限り「重量%」を意味する。
【0013】
本発明に用いることができる野菜類又は芋類には、カボチャ、サツマイモ、里芋等崩れやすいものを挙げることができるが、特にこれらに限定されることはなく、サラダにしたとき固形部が残っている方が美味しいと感じる野菜類又は芋類で、蒸煮すると軟らかく又崩れやすい野菜類又は芋類を用いることができる。
【実施例1】
【0014】
パンプキンサラダ<1>
原料の冷凍カボチャは19mm角切りにしたカボチャを4分〜5分、例えば4分30秒蒸煮(ボイル)後、冷凍したものを使用した。原料のカボチャは特に品種、原産地等は制限されることはない。なお、本実施例では、19mm角切りとしたが、これは一例であってこの大きさ及び形に限られることはない。また、本実施例では、前加熱として4分〜5分、例えば4分30秒蒸煮したが、この蒸煮時間も一例であり、蒸煮時間が少ない場合でも少なくともカボチャの中まで少し軟らかくなっていることが好ましく、一方蒸煮時間が長い場合でもカボチャが崩れない程度であることが必要である。
【0015】
実施例1のパンプキンサラダの製造方法
(1)冷凍ダイスカボチャを作る。
例えば、19mm角切りにしたカボチャを4分〜5分、例えば4分30秒蒸煮する(少なくとも硬めであるが中まで火が通っている状態とする。)。
前記蒸煮完了後、急速冷凍する。
【0016】
(2)可撓性容器、例えば一例として可撓性のあるプラスチック製の袋に充填する。
可撓性容器に前記(1)の冷凍カボチャを入れてから、予め用意した調味液を入れる。可撓性容器に占める調味液の量は、サラダの25%〜50%の重量割合であることがよく、カボチャと調味液の割合は、7:3が好適である。
【0017】
(3)脱気及び密封
真空包装機を用いて前記可撓性容器内を脱気した後密封することにより、前記調味液が可撓性容器内全体に広がり、各冷凍カボチャ間に行き渡って混合される。
【0018】
(4)解凍、圧延
前記可撓性容器を水漬けして少し解凍し、圧延して可撓性容器を平らにする。
【0019】
(5)加熱殺菌及び冷却
前記冷凍カボチャが解けないうちに加熱殺菌し、その後冷却する。
【0020】
本実施例のパンプキンサラダにおいては、食味を良好にするために、パンプキンサラダ全体に対する調味液の含有量は、サラダの25%〜50%の重量割合であればよく、30%程度が好ましい。可撓性容器に4分30秒蒸煮後冷凍したカボチャ70%を入れ、次いで調味液30%を入れて真空包装機で脱気した後密封した。充填後、水漬けして冷凍を少し溶かしてから平らに圧延し、これを加熱殺菌し、その後冷却して具材の固形部が残存するパンプキンサラダを得た。このサラダは見た目、食感ともに良好であった。
【0021】
前記パンプキンサラダ用調味液は、清水34.8%に砂糖・キサンタンガム等の調味料15.2%を混ぜ撹拌して溶かして水溶液を得、この水溶液をマヨネーズ50%に少しずつ加え撹拌して馴染ませて生成した。この調味液の粘度は、10000〜20000cPとなる。
【試験例1】
【0022】
調味液の適正粘度の範囲決定
マヨネーズと清水を任意の割合で混合して調味液を作り、様々な粘度の調味液を用いて冷凍カボチャとともに可撓性容器内に充填し、脱気した後密封し、調味液がカボチャ全体に広がる粘度を適正粘度とした。
【0023】
調味液の広がり方の評価は
◎・・・完全に隅まで広がり調味液が付着していない部分は無い。
○・・・わずかに調味液が届かない部分があるが、圧延し平らにすると問題なく隅まで広がり調味液に付着する。
×・・・隅まで調味液が広がらず付着していない部分がある。
と表示した。
【0024】
調味液部の粘度はB型粘度計(東京計器株式会社 型式BH)を用いて測定した。ローターはNo.1、No.2、No.3、No.6のうち一つを選択し回転数2rpmで測定した。B型粘度計の示した数値にそれぞれ換算乗数50(No.1)、200(No.2)、500(No.3)、5000(No.6)を乗じて粘度を求めた。
【0025】
まず、冷凍カボチャ210gと調味液90gで行った(パンプキンサラダ300g)。

【0026】
次に、冷凍カボチャ700gと調味液300gで行った(パンプキンサラダ1000g)。

【0027】
Table1およびTable2におけるマヨネーズ65〜70%、清水35〜30%の調味液の粘度が、実施例1の調味液部の粘度(10000cP〜20000cP)と同等であった。
【0028】
試験例1の結果(Table1およびTable2)より、適正粘度1500cP〜20000cPと確認した。
【0029】
しかし、マヨネーズと清水だけで作った簡単な調味液では実際の製品と異なり、状態が悪く経時的変化も大きい。そこで、さらに、調味料・増粘剤等を含む実施例1の調味液部をもとにキサンタンガムの配合を増減させ適正粘度も検討した。
【試験例2】
【0030】
実施例1の配合で、増粘剤キサンタンガムの量だけを変えることにより粘度の異なる調味液を調製し、冷凍カボチャ(蒸煮後冷凍)と調味液を重量比7:3の割合で可撓性容器内に充填し、脱気した後密封したときに、調味液が全体に行き渡る粘度を適正粘度とした。全体の重量を合わせるためにキサンタンガムによる増減は清水で調整した。
実施例1の配合ではキサンタンガム0.17%である。
【0031】
まず、冷凍カボチャ210g、調味液90gで行った(パンプキンサラダ300g)。

【0032】
次に、冷凍カボチャ700gと調味液300gで行った(パンプキンサラダ1000g)。

【0033】
試験例2の結果(Table3およびTable4)からも、粘度が20000cP以下の調味液で脱気した後密封したときは、調味液の広がりが良いことを確認した。
【0034】
試験例1と試験例2の結果を踏まえ本発明を利用してサラダを作る上での調味液の適正粘度は1500cP〜20000cPとした。
【試験例3】
【0035】
製造工程の違いによる残存固形部の比較
[実施例1]の製造工程でパンプキンサラダ<1>を作った。
[比較例1]として実施例1の製造工程で冷凍カボチャを解凍して用いたこと以外は実施例1と同じ工程でパンプキンサラダ<2>を作った。
これらのパンプキンサラダを11mmメッシュのざる(食器かご)の上で水洗いし、ざるに残った11mm以上の固形を計量し比較した。
また、併せて官能評価も行った。
【0036】

【試験例4】
【0037】
製造工程の違いによる残存固形部の比較2
【実施例2】
【0038】
実施例1と同様の製造工程となるように生カボチャを使用してパンプキンサラダ<3>を作った。生のカボチャを19mm角切りにした。4分30秒蒸煮し放冷後、冷凍した。この冷凍カボチャを700g、調味液を300g可撓性容器内に充填し、脱気した後密封した。調味液は実施例1と同配合で作った。平らに圧延し加熱殺菌してパンプキンサラダ<3>を得た。
【比較例2】
【0039】
蒸煮した角切りカボチャを放冷し、冷凍せずにそのまま調味液とともに可撓性容器に入れ脱気した後密封したこと以外は実施例2と同じ工程でパンプキンサラダ<4>を作った。
【比較例3】
【0040】
4分30秒蒸煮し放冷したカボチャ1400gに調味液600gを加え関東ミキサーで低速10回転まわし、固形部と調味液を混ぜ合わせた。混合したものをバランスよく1000gとり可撓性容器に入れ脱気した後密封した。
同様に加熱殺菌してパンプキンサラダ<5>を得た。
【0041】
これらのパンプキンサラダを11mmメッシュのざる(食器かご)の上で水洗いし、ざるに残った11mm以上の固形を計量し比較した。
また、併せて官能評価も行った。
【0042】
調味液部の充填前の粘度:19000cP (調味液部温度 21.9℃)

試験例3においても試験例4においてもカボチャを蒸煮した後冷凍したとき、最も固形部が残ることがわかる。したがって本発明の実施例を用いると、より固形感のあるサラダの製造が可能である。
【0043】

<評価法>
◎非常に良い
○良い
△良いとも悪いとも言えない
×悪い
【0044】
前記パンプキンサラダ<1>〜<5>について味も比較してみたがどれもほとんど差は無く、冷凍しても味が落ちることはなかった。食感、固形感は、冷凍したほうが良かった。
【0045】
ミキサーを使うと白い調味液が潰れたカボチャと混ざり合い黄色くなり見た目も良くない。本発明を用いて作ったパンプキンサラダは調味液の白とカボチャの黄が色鮮やかで見た目も良い。
また、大量生産する場合でも冷凍する方が優れている。
【0046】
なおここで、カボチャを例に挙げると収穫の時期や産地により野菜の質が大きく異なる。そのため製品にバラツキが出てしまう。しかし一時期に収穫された品質の良いカボチャを冷凍保存しておけば品質にバラツキが出ない。本発明を利用して一年中同等の品質で固形部の残った野菜サラダを供給できる。
【0047】
なお、上述した各例では、カボチャを例に挙げて説明したが、本発明に用いることができる野菜類又は芋類には、カボチャ、サツマイモ、里芋等がある。本発明に用いる野菜類又は芋類としては、特にこれらに限定されることはなく、サラダにしたとき固形部が残っている方が美味しいと感じる野菜類又は芋類で、蒸煮すると軟らかくなり崩れ易い野菜類又は芋類を用いることができる。また、上述した実施例は、一例であり、本発明は請求項で限定した以外に限定されることはなく、広範囲にわたっての実施態様が考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸煮することにより軟らかくなる野菜類又は芋類を5mm〜40mmの大きさに切り、前処理としてそれらを蒸煮した後冷凍し、この冷凍した野菜類又は芋類を可撓性容器に入れ、さらに調味液を入れた後、前記可撓性容器内を脱気することで、前記調味液を前記野菜類又は芋類間、及び可撓性容器内に充分行き渡らせ、その後前記可撓性容器を加熱殺菌し、野菜類又は芋類の固形部が残存した状態とすることを特徴とするサラダの製造方法。
【請求項2】
前記調味液は、1500cP〜20000cPの粘度を有するものを用いることを特徴とする請求項1に記載のサラダの製造方法。
【請求項3】
可撓性容器に占める前記調味液の量は、全量の25%〜50%の重量割合であることを特徴とする請求項1に記載のサラダの製造方法。
【請求項4】
5mm〜40mmの大きさに切って蒸煮した後冷凍した、蒸煮することにより軟らかくなる野菜類又は芋類と、調味液とを可撓性容器に入れ、前記調味液を前記野菜類又は芋類間、及び可撓性容器内に充分行き渡らせるよう前記可撓性容器内を脱気した後、この可撓性容器を加熱殺菌し、野菜類又は芋類の固形部が残存した状態としたことを特徴とするサラダ。

【公開番号】特開2007−61018(P2007−61018A)
【公開日】平成19年3月15日(2007.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−252499(P2005−252499)
【出願日】平成17年8月31日(2005.8.31)
【出願人】(598045863)ケンコーマヨネーズ株式会社 (2)
【Fターム(参考)】