説明

サリドマイドを有効成分とする医薬品製剤

【課題】腫瘍に関連した脈管形成の阻害剤の提供。
【解決手段】有効成分としてサリドマイドを含んでなる、腫瘍と関連した望ましくない脈管形成の阻害剤。サリドマイドは好ましくは0.1から300mg/kg/日の量で投与され、投与ルートは経口、局所、直腸、鼻、バッカル錠、舌下、気管内、膣または眼内である。非経口的な投与ルートは静脈内、筋肉内、皮下または硬膜である。剤型としては錠剤、カプセル剤、トローチ剤、軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、座薬、粉末、スプレー、泡、タンポン、溶液、懸濁液またはペッサリーの形態で投与される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヒトおよび動物の望ましくない脈管形成を防止する方法および組成物に関する。より詳細には、本発明はサリドマイドおよび関連化合物を投与することにより、望ましくない脈管形成、特に腫瘍と関連した望ましくない脈管形成を阻害する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本明細書で使用する“脈管形成”とは新しい血管が組織または器官中に生成することを意味する。正常な生理的条件下で、ヒトまたは動物ではきわめて制限された状況でのみ脈管形成が起こる。例えば、脈管形成は通常、損傷治癒、胎児および胚発生ならびに黄体、子宮内膜および胎盤形成で観察される。脈管形成の制御は脈管形成刺激剤および抑制剤で高度に制御された系である。脈管形成の制御は特定の疾患症状を変化させることが判明し、そして多くの場合、疾患に付随する病理学的傷害は制御されていない脈管形成に関連している。
【0003】
制御された、または制御されていない脈管形成は同様に進行すると考えられる。基底膜に囲まれた内皮細胞および周皮細胞は毛細血管を形成する。脈管形成は内皮細胞および白血球が放出する酵素による基底膜の侵食から始まる。血管の管腔に並ぶ内皮細胞は次に基底膜を貫通する。脈管形成刺激物質は内皮細胞が侵食された基底膜をとおって移動することを誘導する。移動した細胞はもとの血管からの“新芽(sprout)"を形成し、ここで内皮細胞は有糸分裂および増殖する。内皮新芽部はそれぞれ合流し、そして毛細管ループを形成し、そして新たな血管を形成する。疾患状態では、脈管形成の防止は新しい微細血管系の侵入により引き起こされる傷害を防ぐと考えられる。
【0004】
多くの疾患症状、腫瘍転移および内皮細胞による異常増殖では、持続性の制御されていない脈管形成がおこり、そしてこれらの症状に見られる病理学的傷害を支持する。制御されていない脈管形成により起こる悪性の病理学的症状は脈管形成依存症または脈管形成合併症とまとめられる。脈管形成過程を制御することを対象とする治療はこれら疾患の消滅(abrogation)および緩和を導くことができるだろう。
【0005】
脈管形成により媒介される疾患の例の1つに目の新血管新生疾患がある。この疾患は新たな血管の、網膜または角膜のような目の構造への侵入が特徴である。もっとも通常な症例は失明であるが、およそ20種類の目の疾患に関与している。加齢による黄斑変性では、合併する視覚上の問題は、脈絡膜毛細管が網膜色素上皮の下の繊維血管組織を増殖しているブルーフ膜(Bruch's membrane)の欠損を通って内に伸びることにより引き起こされる。脈管形成傷害は糖尿病網膜症、未熟網膜症、角膜移植拒絶、新血管緑内障および水晶体後繊維増殖症も合併する。角膜新血管新生症に合併する他の疾患は、限定するわけではないが、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズ過剰装着、アトピー性角膜炎、上縁角膜炎、翼状片乾性角結膜炎、シェーグレン病、赤鼻、フィレクテヌロシス(phylectenulosis)、梅毒、ミコバクテリア感染、脂質変性、化学品火傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、眼部帯状ヘルペス感染、原虫感染、カポジ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、周縁角質溶解、リウマチ関節炎、狼瘡、多発性動脈炎、外傷、ワーグナーズサルコイドーシス、強膜炎、スティーヴンズ−ジョンソン病、放射状角膜切開および角膜移植拒絶がある。
【0006】
網膜/脈絡膜新血管新生に合併する疾患には、限定するわけではないが、糖尿病網膜症、黄斑変性、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾性線維性仮性黄色腫、ページェット病、血管閉塞症、動脈閉塞症、頸動脈閉塞症、慢性ブドウ膜炎/ヴィトリティス(vitritis)、微生物感染、ライム病、全身性狼瘡エリテマトーデス、未熟網膜症、エーレス病、ベーチェット病、網膜炎または脈絡膜炎を起こす感染、推定眼ヒストプラスマ症、ベスト病、近視、オプティックピット(optic pits)、シュタルガルト病、パースプラニティス(pars planitis)、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラスマ症、外傷およびレーザー後合併症がある。他の疾患には限定するわけではないが、ルベオーシス(角の新血管新生)に合併する疾患、および繊維血管または繊維組織の異常増殖により引き起こされる疾患があり、すべての増殖性硝子体網膜症を含む。
【0007】
脈管形成が関与すると思われる別の疾患は、リウマチ関節炎がある。関節の滑膜内層の血管は脈管形成を行う。新しい血管のネットワークの形成に加え、内皮細胞がパンヌス成長および軟骨破壊を導く因子および反応性酸素種を放出する。脈管形成に関与する因子はリウマチ関節炎の慢性的な炎症状態に積極的に関与し、その炎症状態を維持するのに役立つ。
【0008】
脈管形成に付随する因子は変形性関節症にも役割を果たすことができる。脈管形成関連因子による軟骨細胞の活性化は関節の破壊に関与している。後期には、脈管形成因子が新しい骨の形成を促進するだろう。骨の破壊を防止する治療的な介入は疾患の進行を阻止し、そして関節炎にかかっている人の症状を緩和する。
【0009】
慢性的な炎症は病理学的な脈管形成にも関与する。潰瘍性大腸炎およびクローン病(Crohn's disease)のような疾患は、新しい血管が炎症組織内に成長している組織学的変化を示す。バルトネラ症は南米に見られる細菌性の感染であるが、血管内皮細胞の増殖が特徴である慢性状態になることがある。脈管形成に付随する別の病理学的役割はアテローム硬化症に見いだされる。血管の管腔内に形成したプラークは脈管形成刺激活性を有することが示された。
【0010】
子供での最も頻繁な脈管形成疾患は血管腫である。ほとんどの場合、腫瘍は良性であり、そして介入無しで退行する。より重篤な場合には、腫瘍が進行し大きな海綿および浸潤性状態になり、そして臨床的な合併症になる。血管腫の全身的状態、血管腫症は死亡率が高い。現在使用されている治療薬では治療できない治療抵抗性血管腫が存在する。
【0011】
脈管形成は、オースラー−ウェーバー−ランデュ病、すなわち遺伝性の出血性毛細管拡張症のような遺伝性疾患に見られる障害の原因でもある。これは血管またはリンパ管の多くの小さい血管腫が特徴である遺伝性疾患である。血管腫は皮膚および粘膜に見い出され、しばしば鼻出血(鼻血)または胃腸管の出血、そして時々肺または肝の動静脈瘻を持つ。
【0012】
脈管形成は固形腫瘍の形成および転移に顕著である。脈管形成性因子は横紋筋肉腫、網膜芽腫、ユーイング肉腫、神経芽腫および骨肉腫のような数種の固形腫瘍中に見いだされた。腫瘍は栄養を供給し、そして細胞の老廃物を除去するために血液供給無くしては広がることができない。脈管形成が重要な腫瘍には固形腫瘍および聴覚の神経腫、神経芽腫、トラコーマおよび化膿性肉芽腫のような良性腫瘍がある。脈管形成の防止はこれらの腫瘍の成長を止め、結果として腫瘍の存在による動物への障害を阻止する。
【0013】
脈管形成は白血病、無制限に白血球細胞が増殖する種々の急性および慢性の骨髄の新生物形成疾患のような血液の腫瘍(通常、貧血、血液凝固障害ならびにリンパ節、肝臓および脾臓の増大を伴う)にも関連することは注目すべきである。脈管形成は白血病様腫瘍を引き起こす骨髄の異常において役割を果たすと考えられている。
【0014】
脈管形成は腫瘍転移の2つの段階で重要である。脈管形成刺激が重要である第一段階は、腫瘍細胞を血液流れに入れ、そして全身に循環できるようにする腫瘍の血管新生である。腫瘍細胞が第一部位から離れ、そして第二の転移部位に定着した後、脈管形成は新しい腫瘍が成長し、拡大する前に起こらなければならない。したがって脈管形成の防止は腫瘍の転移を阻止でき、そしておそらく新生物を第一部位に含む。
【0015】
腫瘍の維持および転移における脈管形成の役割に関する知見は、乳癌の予後徴候を導いた。一次腫瘍中にみられた新生血管形成の量は、浸潤性の乳癌腫中の最も強い新生血管形成の領域の微細血管密度を測定することにより決定した。高微細血管密度レベルは腫瘍の再発に相関している。治療手段による脈管形成の制御はおそらく腫瘍の再発を停止することができるだろう。
【0016】
脈管形成はまた、再生および損傷治癒のような正常な生理学的プロセスにも関与している。脈管形成は排卵において、および受精後の胞胚の着床においても重要な段階である。脈管形成の防止は無月経の誘発、排卵遮断または胞胚の着床を防止するためにも使用できる。
【0017】
損傷治癒では、繊維増殖の過剰な修復が外科的治療の有害な副作用であり、脈管形成によって引き起こされるか、または悪化することがある。癒着は多くの外科手術の合併症であり、小腸閉塞のような問題を引き起こす。
【0018】
脈管形成を防止するために数種類の化合物が使用された。Taylorら、Nature, 297:307 (1982)を参照にされたい。プロタミンの毒性から、それを治療的に使用することは制限された。Folkmanらは脈管形成を制御するためヘパリンおよびステロイドの使用を開示した。Folkmanら、Science 221:719 (1983)および米国特許第5,001,116号および同4,994,443号明細書を参照にされたい。糖質および鉱質コルチコイド活性を欠いているテトラヒドロコルチゾールのようなステロイドが脈管形成抑制剤であると判明した。
【0019】
ウシ硝子体液由来の4kDa糖タンパク質および軟骨誘導因子(cartilage derived factor)のような動物体内に見いだされる他の因子は、脈管形成を抑制するために使用された。インターフェロンのような細胞性因子は脈管形成を抑制する。例えばインターフェロンαまたはヒトインターフェロンβは、ヒト腫瘍細胞により刺激されたマウス真皮中の腫瘍誘導脈管形成を抑制することが示された。インターフェロンβも異系脾臓細胞により誘発される脈管形成の有力な抑制剤である。Sidkyら、Cancer Research 47:5155-5161 (1987)を参照にされたい。ヒト組み換えαインターフェロン(アルファ/A)は肺の血管腫症、脈管形成誘導疾患に成功裏に使用されたと報告された。Whiteら、New England J. Med. 320:1197-1200 (1989)を参照にされたい。
【0020】
脈管形成の抑制に使用された他の薬剤にはアスコルビン酸エーテルおよび関連化合物がある。特開昭58-131978号公報を参照にされたい。硫酸化多糖DS4152も脈管形成の抑制を示す。特開昭63-119500号公報を参照にされたい。真菌生産物、フマギリンはインビトロでの有力な血管新生剤(angiostatic agent)である。この化合物はインビボで毒性であるが、合成誘導体AGM12470はコラーゲンII関節炎を治療するためにインビボで使用された。フマギリンおよびO−置換フマギリン誘導体は欧州特許出願公開第03251992号および第0357061号に開示される。
【0021】
Kaplenらの国際特許出願公開第WO92/14455号は、サリドマイドまたはサリドマイド誘導体をTNF-αの毒性濃度とともに患者に投与することによりTNF-αの異常濃度を制御する方法を対象としている。
【0022】
上記化合物は局所用または注入用のいずれかの治療薬である。したがって一般的な脈管形成抑制剤として使用することには欠点があり、そして効力を欠いている。例えば過剰な損傷治癒の予防では、体内臓器の手術が、体腔内に含まれる様々な構造の切開を必要とする。これらの傷には脈管形成抑制剤の局所的投与を利用できない。局所デリバリーシステムには、内部の傷には使用できない外傷用の医薬材料が含まれることがよくあり、そして体表上の傷の壊れやすい肉芽組織に対する感染および損傷の危険性が増す。
【特許文献1】米国特許第5,001,116号
【特許文献2】米国特許第4,994,443号
【特許文献3】欧州特許出願公開第03251992号
【特許文献4】欧州特許出願公開第0357061号
【特許文献5】国際特許出願公開第WO92/14455号
【非特許文献1】Taylorら、Nature, 297:307 (1982)
【非特許文献2】Folkmanら、Science 221:719 (1983)
【非特許文献3】Sidkyら、Cancer Research 47:5155-5161 (1987)
【非特許文献4】Whiteら、New England J. Med. 320:1197-1200 (1989)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
したがって、脈管形成を抑制でき、そして容易に投与できる方法および組成物が必要である。簡単で効力のある治療法は経口経路であると思われる。もし脈管形成抑制剤が経口経路から投与できれば、上記に記載した多くの種類の疾患および他の脈管形成依存性病理は容易に治療されうるだろう。最適な投薬は、患者みずからが投与することができる状態で分配されうる。
【0024】
本発明は、望ましくない脈管形成の抑制に効果がある組成物および方法を提供する。これらの組成物は経口を含む様々な経路で容易に投与することができ、そして生体内で安全で、かつ脈管形成の抑制をもたらす投与量を提供することができる。本発明は、抗脈管形成剤を、血管新生を抑制するのに十分な投与量で含んで成る組成物を投与することにより、哺乳類の望ましくない脈管形成を治療する方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、エポキシド基を含む脈管形成阻害剤も含む。これらの脈管形成阻害化合物はヒトまたは動物に単独で、あるいはエポキシドヒドロラーゼ阻害剤と一緒に投与することができる。
【0026】
本発明は特に黄斑変性のようなある種の目の新血管新生疾患を治療するために特に有用である。本発明の一部と考える化合物は、好ましくは患者に経口投与することができ、そしてそれにより疾患が進行するのを停止する。本発明を使用して治療することができる他の疾患は糖尿病網膜症、緑内障および水晶体後繊維増殖症である。
【0027】
したがって本発明の目的はヒトまたは動物の望ましくない脈管形成を抑制する化合物および方法を提供することである。
【0028】
さらに本発明の別の目的は組成物の経口投与により脈管形成を阻害する化合物を提供することである。
【0029】
本発明の別の目的は脈管形成により媒介される疾患を治療することである。
【0030】
さらに本発明の別の目的は黄斑変性の治療を提供することである。
【0031】
さらに本発明の別の目的はすべての増殖性状態を治療することである。さらに本発明の別の目的は糖尿病に付随する状態を含むすべての増殖性硝子体網膜症症状の治療をすることである。
【0032】
さらに本発明の別の目的は固形腫瘍を治療することである。
【0033】
さらに本発明の別の目的は白血病のような血液の腫瘍を治療するための方法および組成物を提供することである。
【0034】
さらに本発明の別の目的は血管腫を治療するための方法および組成物を提供することである。
【0035】
さらに本発明の別の目的は水晶体後繊維増殖症を治療するための方法および組成物を提供することである。
【0036】
さらに本発明の別の目的は乾癬を治療するための方法および組成物を提供することである。
【0037】
さらに本発明の別の目的はカポジ肉腫を治療するための方法および組成物を提供することである。
【0038】
さらに本発明の別の目的はクローン病を治療するための方法および組成物を提供することである。
【0039】
さらに本発明の別の目的は糖尿病網膜症を治療するための方法および組成物を提供することである。
【0040】
本発明の他の特徴および利点は以下の好適な態様から明らかになるだろう。
【0041】
本発明のこれらのおよび他の目的、特徴および利点は以下の開示された態様の詳細な記載および添付の請求の範囲を読むことにより明らかになるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0042】
本発明は、脈管形成により媒介される疾患を治療するための組成物および方法を含む。本発明の1つの態様は、本明細書に開示するサリドマイドまたはサリドマイドの代謝物を望ましくない脈管形成の抑制に使用する。本発明は、胎児に発生する肢異常を起こし、そして抗脈管形成活性を有する化合物を含む。本発明は、ヒトまたは動物における望ましくない脈管形成を治療するための方法を含んでなり、その方法は望ましくない脈管形成を起こしているヒトまたは動物に、抗脈管形成性の催奇性化合物の有効量を含んで成る組成物を投与する段階を含んで成る。
【0043】
本発明に使用できるサリドマイド及びその類縁化合物は以下の一般式に含まれる化合物を含む。以下の3つの式(A)、(B)または(C)の1つを有する抗脈管形成性を有する化合物の例:
【化1】

【0044】
上記式A)、B)およびC)において、R1、R2、R3およびR4は−H;−OH;=O;直鎖および分枝アルカン、アルケン、アルキン;環式アルカン、アルケンおよびアルキン;環式および非環式アルカン、アルケンおよびアルキンの組み合わせ;アルコール、アルデヒド、ケトン、カルボン酸、エステル、または環式、非環式と組み合わせたエーテル部分、あるいは環式/非環式部分の組み合わせ;アザ;アミノ;−XOnまたは−O−XOn[式中、X=Nそしてn=2;X=Sそしてn=2または3;あるいはX=Pそしてn=1−3である];ならびにハロゲンから選択することができ;R5、R6、R7およびR8はそれぞれ独立して、
【化2】

【0045】
または−O−[式中、Yは任意であり、そして上記R1の定義と同じであり;そしてR10は上記R1の定義と同じであるか、または(Yがない場合には)R10は=Oである]から選択され;そしてR9は式D)、E)、F)、G)またはH):
【化3】

[式中、各々のR11−R17は(独立して)上記R5の定義と同じである]
【化4】

[式中、R18、R19およびR20は独立して
【化5】

から選択され、そしてn=1−4である]を有する部分である。
【0046】
したがって本発明の別の態様は、脈管形成を抑制するに十分な投与量の上記化合物の1つを含んで成る治療用組成物を投与することにより哺乳類の脈管形成を抑制することが特徴である。
【0047】
好適な態様において、式B)の化合物は、R5およびR6
【化6】

から成る群から選択され、そしてR9は式F)またはH)を有し、そしてR14およびR16
【化7】

から成る群から選択され;そしてR15
【化8】

であり、式中、R21は−H、−CH3または−OHである。
【0048】
本発明の観点において特に好適な化合物は、サリドマイド、その前駆体、代謝物および類似体を含む。より詳細には、類似体にはEM−12、N−フタロイル−DL−グルタミン酸(PGA)またはN−フタロイル−DL−グルタミン酸無水物を含む。限定されるものでないが、この属の化合物を以下に列挙する:
【化9】

【化10】

【化11】

【0049】
以下の式の化合物は抗脈管形成活性を有する:
【化12】

【0050】
式中、R22およびR23は(独立して)、−H、−F、−Cl、−Br、−I、−CH3または−CH2−CH3であり:そしてR24は−H、−CH3または−CH2−CH3である。
【0051】
また本発明は、脈管形成を抑制するに十分な投与量の上記式の化合物を投与することにより哺乳類の脈管形成を抑制することが特徴である。限定されるものでないが、この属の員である具体的な化合物を以下に列挙する:
【化13】

【0052】
以下の一般式を有する、サリドマイドの脈管形成抑制加水分解産物を、本発明を実施するために使用することができる:
【化14】

式中、Xは上記R6であり、またはXは
【化15】

であり、R25およびR26は独立して、−OH、−HまたはNH2、そしてn=1から4である。限定されるものでないが、そのような化合物の例を以下に列挙する:
【化16】

【0053】
以下の一般式を有するそのような抑制化合物は本発明を実施するために使用できる:
【化17】

【0054】
式(I)の化合物において、式中Rは水素、1−6個の炭素原子のアルキル基、フェニル基およびベンジル基から成る群から選択され;そしてR’は式(II)のフタルイミド基およびスクシイミド基[式中、XはCH2またはC=Oであり;R”はH、−CH2CH3、−C65、−CH265、−CH2CH=CH2、または(a)である]およびこれらの化合物の加水分解産物(式中、R”がHであり、そしてピペリジノ環またはピペリジノ環とイミド環の両方が加水分解されている)から成る群から選択される。
【0055】
本発明の一部であると考えられる別の組の化合物はサリドマイド、EM−12およびEM−138のエポキシドである。代表的エポキシド化合物を以下に示す:
【化18】

【0056】
エポキシドはベンゼン環の6,1位、1,2位、2,3位、3,4位または4,5位に付くことができる。これらの化合物のすべてが本発明の一部であると考えられる。
【0057】
サリドマイドのエポキシドは以下の化合物に加水分解することができる:
【化19】

【0058】
ヒドロキシル基はベンゼン環の炭素1、2、3、4、5および6上に存在することができる。また2つのヒドロキシル基が上記化合物の炭素1、2、3,5および6上に互いにビスで位置するジヒドロキシル化合物も本発明の一部として考えられる。エポキシド、エポキシドの加水分解物およびサリドマイドの加水分解産物はすべて本発明の一部と考えられる。
【0059】
エポキシドはエポキシドヒドロラーゼとして知られている酵素の一群により加水分解されることが知られている。エポキシドヒドロラーゼ阻害剤である化合物の種類が存在する。そのような化合物の例としは、バルプロミド(2−プロピルペンタンアミド)およびバルプル酸(2−プロピルペンタン酸)がある。エポキシドは重要な脈管形成抑制剤であるので、本明細書に述べられた任意の脈管形成抑制化合物とエポキシドヒドロラーゼ阻害剤とを組み合わせて含んで成る組成物は本発明の一部として考えられる。エポキシドヒドロラーゼ阻害剤をヒトまたは動物に一緒に、または連続して投与することができる。エポキシド基は数種の脈管形成抑制剤に共通の重要な置換基である。エポキシドヒドロラーゼ阻害剤を、エポキシドを含む任意の脈管形成抑制剤の活性を強化するために使用することは本発明の一部と考える。例えば、エポキシドヒドロラーゼ阻害剤は以下のエポキシド含有抗脈管形成化合物と一緒に投与できる:AGM1470、エポニマイシン(Eponimycin)、f/2015、fr/111142およびfr/18487と命名されたスコレコバシディウム・アレナリウム(Scolecobasidium arenarium)の微生物代謝物。Oikawa, Biochem. Biophys. Res. Comm. Vol. 81:1070 (1971)およびOtsuka, J. Microbial. Biotech., Vol. 1:163(1991)を参照にされたい。
【0060】
本発明の態様の一部として、エポキシドヒドロラーゼ阻害剤を含むまたは含まないエポキシド含有脈管形成抑制剤を、高TNF-αレベルまたは毒性レベルのTNF-αにより媒介される疾患の治療に使用することは本発明の一部として考えられる。TNF-αは用量依存性毒性を顕在化するとして認識されてきた。もし低レベルで長期間にわたり存在すると、悪液質を引き起こすことがある。悪液質は癌、AIDSの日和見感染、炎症性疾患、寄生疾患、結核および高用量IL治療のような慢性疾患の経過において体重の減少および消耗を生じる。エポキシド含有脈管形成抑制剤は、エポキシドヒドロラーゼを含むと含まないとにかかわらず、敗血症ショック、らい病および移植片対宿主疾患において有効である。
【0061】
他の態様も本発明の範囲にある。例えば、他の肢異常発生化合物を本発明に使用することができ、例えばそれは4−メチルフタル酸、ピリドキシン、バソプレッシン、アセタゾールアミド、または以下の式(式中R=H、−OHまたは−CH3)を有する化合物である:
【化20】

【0062】
バルプル酸(2−プロピルペンタン酸)、シス−レチン酸のようなレチノイド、リファンピンのような他の催奇性化合物も本発明に使用できる。
【0063】
要約すると、好適な化合物は催奇性のある、より詳細には肢異常を引き起こすサリドマイドならびにサリドマイドの類似体、加水分解化合物、代謝物および前駆体である。しかし、本発明の一部であると考えられる化合物が催奇性作用および脈管形成抑制作用の両方を有する必要はないと理解すべきである。肢異常発生化合物はHelm, Arzneimittle-forschung, 31(i/6): 941-949 (1981)の一般的方法により同定され、そこでは子宮中に化合物を暴露した後に子ウサギを検査する。化合物は一般的に例えばメリーランド州、ベルトビレのアンドリウス薬品から購入することができ、あるいは周知方法により合成することができる。本発明の化合物はエナンチオマーとして存在でき、そしてエナンチオマーのラセミ混合物または単離エナンチオマーはすべて本発明の範囲にあると理解すべきである。
【0064】
本発明の一部と考えられる多くの化合物は、上記化合物の光学的に活性なエナンチオマーに濃縮することができる。特に、Blaschkeは、Sエナンチオマーがこれら化合物の肢異常発生に不釣り合いな効果をおよぼす原因であることを報告した。一般的にBlaschke,Arzneimittleforschung 29:1640-1642 (1979)を参照にされたい。上記の文献は光学的に活性な目的化合物の調製物を得るための一般的な方法を記載している。例えば,Shealyら、Chem. Indus. 1030 (1965);およびCasiniら、Farmaco Ed. Sci.19:563 (1964)を参照されたい。
【0065】
上記の化合物は当該技術分野で周知の製剤法を使用して医薬的に許容できる組成物として提供することができる。このような組成物は標準的経路により投与できる。一般的に、混合物は局所、経皮、経口、直腸または非経口(例えば静脈、皮下または筋肉内)経路で投与できる。さらに混合物を生分解性ポリマーに包含して、化合物を持続して放出させることができ、ポリマーは薬剤の運搬が望まれる部位の近くに移植され、例えばそれは腫瘍の部位などである。生分解性ポリマーおよびその使用は、例えばBremら、J. Neurosug. 74:441-446 (1991)に詳細に記載されている。
【0066】
化合物の投与量は治療すべき症状、特定の化合物ならびに体重、ヒトおよび動物の状態、ならびに化合物の投与経路のような他の臨床的因子に依存するであろう。本発明はヒトおよび家畜の両方への投与に使用すると理解すべきである。ヒトへの経口投与のためには約0.1から300mg/kg/日の間、好ましくは約0.5から50mg/kg/日の間、さらに一層好ましくは約1から10mg/kg/日の間の投与量で一般的に十分である。
【0067】
組成物には経口、直腸、目(硝子体内または眼房内を含む)、鼻、局所(頬および舌下を含む)、膣または非経口(皮下、筋肉中、静脈、皮内、気管内および硬膜)投与に適するものである。組成物は都合の良い単位用量形態で与えられ、そして従来の医薬技術を使用して調製できる。そのような技術には有効成分および医薬用キャリアー(1つまたは複数)または賦形剤(1つまたは複数)を混合する工程を含む。一般的に、組成物は、有効成分を液体キャリアーまたは微細な固体キャリアーあるいはその両方と混合し、そして次に必要に応じて生成物を成型することにより調製される。
【0068】
経口投与に適する本発明の組成物は、それぞれが予め定めた量の有効成分を含有するカプセル剤、カシェ剤または錠剤の別個の単位として;粉末または顆粒として;水性液体または非水性液体中の溶液または懸濁液として;または水中油型液体乳剤または油中水型乳剤として、およびボーラス等として与えられる。
【0069】
錠剤は圧縮または成型により、場合によっては1つ以上の補助成分を用いて、製造できる。圧縮錠剤は適当な機械で粉末または顆粒のような自由流動形態に活性成分を場合によっては結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、表面活性剤または分散剤と一緒に圧縮することにより調製することができる。成型錠剤は不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化合物の混合物を適当な機械で成型することにより製造できる。錠剤は場合によっては被覆または刻みをつける(scored)ことができ、そしてその中の有効成分をゆっくりと、または制御して放出させることができる。
【0070】
口腔中の局所投与に適する組成物には、通常スクロースおよびアカシアまたはトラガカントのような芳香基剤中に有効成分を含んで成るトローチ剤;ゼラチンおよびグリセリン、またはスクロースおよびアカシアのような不活性基剤中に有効成分を含んで成る香錠;および適当な液体キャリアー中に投与される有効成分を含んで成る口中洗浄剤がある。
【0071】
皮膚への局所投与に適する組成物は、医薬的に許容できるキャリアー中に投与されるべき成分を含んで成る軟膏、クリーム、ゲルおよびペーストとして与えることができる。好適な局所デリバリーシステムは投与されるべき成分を含む経皮パッチである。
【0072】
直腸投与用の組成物は例えばカカオバターまたはサリチル酸エステルを含んで成る適当な基剤を含む座薬として与えることができる。
【0073】
キャリアーが固体である鼻への投与に適する組成物は、例えば20-500ミクロンの粒子サイズを有する粗い粉末を含み、これは鼻から吸うような様式で、すなわち鼻の近くに持って来た粉末を含む容器から鼻の通路を通って迅速な吸入により投与される。キャリアーが液体であり、例えば鼻スプレーまたは点鼻薬として投与するのに適する組成物は、有効成分の水性または油性溶液である。
【0074】
膣への投与に適する組成物は、有効成分に加えて当該技術分野で適当であるキャリアーを含むペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡末またはスプレー組成物である。
【0075】
非経口投与に適する組成物には酸化防止剤、緩衝液、抗菌剤、および組成物を受容者の血液と等張性にする溶質を含んでもよい水性または非水性の滅菌注射液;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含んでもよい水性および非水性の滅菌懸濁液を含む。組成物は単回投与または複数回投与の容器、例えば密閉アンプルおよびバイアル中に入れて提示することができ、また、例えば使用直前に注射用水のような滅菌水性キャリアーを加えることのみが必要である凍結乾燥状態で保存することができる。即座の注射溶液および懸濁液はすでに記載した種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0076】
好適な単位投薬組成物は、投与される成分の、本明細書に上記したような1日の用量または単位、1日の部分用量、またはその適当な分割量を含むものである。
【0077】
特に上述したような成分に加えて、本発明の組成物は組成物の種類に応じて当該技術分野で慣用されている他の物質を含むことができ、例えば経口投与に適する組成物は芳香剤を含むことができる。
【0078】
角膜新血管形成に合併する疾患は本発明により治療することができ、限定するわけではないが、糖尿病網膜症、未熟網膜症、角膜移植拒絶、新血管緑内障および水晶体後繊維増殖症、流行性角結膜炎、ビタミンA欠乏症、コンタクトレンズ過剰装着、アトピー性角膜炎、上縁角膜炎、翼状片乾性角結膜炎、シェーグレン症候群、赤鼻、フィレクテヌロシス(phylectenulosis)、梅毒、ミコバクテリア感染、脂質変性、化学品火傷、細菌性潰瘍、真菌性潰瘍、単純ヘルペス感染、眼部帯状ヘルペス感染、原虫感染、カポジ肉腫、モーレン潰瘍、テリエン辺縁変性、周縁角質溶解、外傷、リウマチ関節炎、狼瘡、多発性動脈炎、外傷、ワーグナーズサルコイドーシス、強膜炎、スティーヴンズ−ジョンソン病、放射状角膜切開および角膜移植拒絶がある。
【0079】
本発明により治療することができる網膜/脈絡膜血管新生に合併する疾患は限定するわけではないが、糖尿病網膜症、黄斑変性、鎌状赤血球貧血、サルコイド、梅毒、弾性線維性仮性黄色腫、ページェット病、血管閉塞症、動脈閉塞症、頸動脈閉塞症、慢性ブドウ膜炎/ヴィトリティス(vitritis)、微生物感染、ライム病、全身性狼瘡エリテマトーデス、未熟網膜症、エーレス病、ベーチェット病、網膜炎または脈絡膜炎を起こす感染、推定眼ヒストプラスマ症、ベスト病、近視、オプティックピット(optic pits)、シュタルガルト病、パースプラニティス(pars planitis)、慢性網膜剥離、過粘稠度症候群、トキソプラスマ症、外傷およびレーザー後合併症がある。他の疾患には限定するわけではないが、ルベオーシス(角の血管新生)に合併する疾患、および繊維血管または繊維組織の異常増殖により引き起こされる疾患があり、糖尿病に合併している、またはしていないにかかわらず、すべての増殖性硝子体網膜症を含む。
【0080】
本発明により治療できる別の疾患はリウマチ関節炎である。関節の滑膜内層の血管は脈管形成を受ける。新しい血管のネットワークの形成に加え、内皮細胞がパンヌス成長および軟骨破壊を導く因子および反応性酸素種を放出する。脈管形成に関与する因子はリウマチ関節炎の慢性的な炎症状態に積極的に関与し、かかる状態を維持するのに役立つ。
【0081】
本発明により治療できる別の疾患は血管腫、オースラー−ウェーバー−ランデュ病、遺伝性の出血性毛細管拡張症、固形または血液の腫瘍および後天性免疫不全症候群である。
【0082】
図1は、脈管形成のウサギ角膜モデルにおいてサリドマイドおよびEM12が脈管形成に及ぼす効果を表す。
【0083】
図2は、脈管形成のウサギ角膜モデルにおいてサリドマイドが角膜血管形成の領域に及ぼす効果を表す。
【0084】
本発明は以下の実施例でさらに説明されるが、これらは本発明の範囲に制限を与えることを意味していない。反対に本明細書を読んだ後その種々の他の態様、修飾および均等物への手段を考えることができるが、これは本発明の精神および/または請求の範囲から逸脱することなく当業者に示唆を与えるものと理解されるべきである。
【実施例】
【0085】
実施例I
Crum et al.,Science 230:1375以下(1985)に記載のニワトリ胚漿尿膜アッセイを用いて、さらなる代謝変換を必要としない化合物を同定する。米国特許第5,001,116号明細書の第7欄にCAMアッセイを記載しているので、この明細書を参照されたい。その記載事項を参照として本明細書に組み入れる。簡単に言うと、受精したニワトリ胚を3日目又は4日目にその殻から取り出し、化合物を含むメチルセルロース円板を漿尿膜上に埋植する。48時間後に胚を調べ、メチルセルロース円板の回りに明瞭な無血管領域が現れていたら、その領域の直径を測定する。
【0086】
実施例II
ウサギ角膜脈管形成アッセイ
ウサギ角膜に埋植するためのペレットを形成するために、12μgの組み換えbFGF(Takeda Pharmaceuticals−日本)を含む110μlの生理食塩水を、40mgのスクラルファート(Bukh Meditec−デンマーク)と混合した;この懸濁液をエタノール中の12%のヒドロン(Interferon Sciences)80μlに加えた。次いで、この混合物の10μlのアリコートをテフロン(登録商標)の栓(peg)上にピペットで置き、乾燥させて約17個のペレットを製造した。ペレットを、麻酔した雌ニュージーランド白ウサギの各目の角膜ミクロポケット中に、縁から2mmにおいて埋植し、続いて角膜の表面上にエリスロマイシン軟膏を局所的に適用した。埋植後2日から毎日、胃洗浄により0.5%のカルボキシメチルセルロースに懸濁した薬剤又は0.5%のカルボキシメチルセルロースのみを動物に供給した。サリドマイドはAndrulus Pharmaceutical(メリーランド州)から購入し、EM−12及びスピジミド(Supidimide)はGrunenthal GMBH(ドイツ)の好意により提供された。同一の角膜専門家が覆面法(masked manner)でスリットランプにより動物を1日置きに調べた。角膜の新生血管形成の面積を、レチクル(十字線)を用いて、縁からの血管の長さ(L)及び含まれる縁の時計時(clock hours)の数(C)を測定することにより決定した。式:C/12*3.1416[r2−(r−L)2]を用いて環状帯セグメントの面積を決定した(ここでr=6mm、測定されたウサギ角膜の半径である)。血管形成角膜の量を測定するために種々の数学的モデルが用いられたが、この式がペレットに向かって成長する新生血管形成の帯の面積の最も正確な近似値を与えることが見いだされた。
【0087】
ウサギ角膜アッセイは、化合物自体は不活性であるが代謝されて活性化合物を与える化合物を一般的に認識するので好ましい、ことに注意するのが重要である。下記の実施例IIIに示す、サリドマイド関連化合物は催奇性物質であることが既知であり、本発明で用いるための候補である。
【0088】
実施例III
8日目のメジアン対照に対するパーセントとして表されるサリドマイド及び関連類似体によるbFGF誘導角膜新生血管形成の阻害
bFGF及びスクラルファートを含むペレットを、実施例IIに従って、ウサギの両角膜のミクロポケット内に埋植した。縁から透明な角膜内への血管の内方成長が2日目に初めて観察され、この日に処置(200mg/kg経口的)を開始した。角膜新生血管形成の面積を4日目から12日目まで測定した。グループ間の比較のために8日目の測定値を用いた。この時点で血管の退行は見られず、最大に近い新生血管形成が見られた。実験間の変動を説明し、かつノンパラメトリック法を用いることによりデータの異常な分布(すなわち孤立値)を防ぐために、ランクデータ(ranked data)を用いたANOVAにより統計学的分析を行った。
【0089】
調べた化合物は以下の通りであった:
【化21】

【0090】
1回用量(200mg/kg)のサリドマイドを用いた処置は血管形成角膜の面積の阻害を生じ、それは3回の実験において30〜51%の範囲であり、メジアン阻害は36%であった(図1)(n=30の目、p=0.0001、ランクデータを用いた2要因のANOVA))。サリドマイドによる脈管形成の阻害はわずか2回用量の後に見られた(図2)。ウサギは明白な鎮静を示さず、毒性又は体重低下の兆候はなかった。サリドマイドの他の性質を共有している催奇性類似体EM−12も阻害性であり、メジアン阻害は42%であった(n=10の目、p=0.002、ランクデータを用いた1要因のANOVA)。サリドマイドの鎮静性を保持しているサリドマイドの非催奇性類似体であるスピジミドは活性を示さなかった(対照に対して面積107%、n=10の目、対照と統計的差がない)。他の類似体、PGA及びPG酸はサリドマイドより弱い阻害効果を示した(データは示されていない)。サリドマイド処置動物における血管内方成長の密度も顕著に減少した。
【0091】
実施例IV
ウサギ角膜アッセイにおけるEM−12
実施例IIに記載のウサギ角膜アッセイにおいて、EM−12を100mg/kg/日で調べたところ、21%の阻害を示し、200mg/kg/日ではアッセイは43%の阻害を示した。
【0092】
実施例V
CAMにおけるフタロイルグルタミン酸
フタロイルグルタミン酸を上記のCAMアッセイにおいて調べたところ、控え目な瘢痕を有する無血管領域を示した。
【0093】
実施例VI
ウサギ角膜アッセイにおけるフタロイルグルタミン酸
上記のフタロイルグルタミン酸を200mg/kgで調べたところ、脈管形成の29%阻害を示した。
【0094】
実施例VII
CAMアッセイにおけるフタロイルグルタミン酸無水物
フタロイルグルタミン酸無水物を上記のCAMアッセイにおいて調べたところ、無血管領域を示した。
【0095】
前文はもちろん本発明の好ましい実施態様のみに関しており、本発明では、添付の請求の範囲に示される本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多数の修正又は変更を行うことができることが理解されなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】脈管形成のウサギ角膜モデルにおいてサリドマイドおよびEM12が脈管形成に及ぼす効果を表すグラフである。
【図2】脈管形成のウサギ角膜モデルにおいてサリドマイドが角膜血管形成の領域に及ぼす効果を表すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有効成分としてサリドマイドを含んでなる、腫瘍と関連した望ましくない脈管形成の阻害剤。
【請求項2】
腫瘍が血液の腫瘍である、請求項1に記載の脈管形成の阻害剤。
【請求項3】
腫瘍が白血病である、請求項1に記載の脈管形成の阻害剤。
【請求項4】
腫瘍が骨髄の腫瘍である、請求項1に記載の脈管形成の阻害剤。
【請求項5】
サリドマイドが0.1から300mg/kg/日の量で投与される、請求項1に記載の脈管形成の阻害剤。
【請求項6】
前記投与が経口、局所、直腸、鼻、バッカル錠、舌下、気管内、膣または眼内である、請求項5に記載の脈管形成の阻害剤。
【請求項7】
前記投与が非経口、静脈内、筋肉内、皮下または硬膜である、請求項5に記載の脈管形成の阻害剤。
【請求項8】
サリドマイドが錠剤、カプセル剤、トローチ剤、軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、座薬、粉末、スプレー、泡、タンポン、溶液、懸濁液またはペッサリーの形態で投与される、請求項1に記載の脈管形成の阻害剤。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−88182(P2008−88182A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−289175(P2007−289175)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【分割の表示】特願2001−50214(P2001−50214)の分割
【原出願日】平成6年2月24日(1994.2.24)
【出願人】(501060806)ザ・チルドレンズ・メデイカル・センター・コーポレーシヨン (3)
【Fターム(参考)】