サンプリングクロック発生装置およびサンプリングクロック発生システム
【課題】外部環境温度やスキャナ周波数が変化しても、光学的走査位置を検出する手段を別途設けることなく光学的走査範囲と電気的走査範囲とを一致させて画像の劣化を防ぐ。
【解決手段】光源からの光を振動しながら反射または屈折して試料に照射する共振スキャナの振動に同期した同期信号S1に対応する位置信号S2を生成するPLL正弦波発生部2と、速度信号S5を絶対値化して絶対値速度信号S7を生成する絶対値処理部7と、絶対値速度信号S7の値に応じた周波数のSCを生成するVCO10と、生成されたSCに基づいて、所定数のSCを含む画像化区間の区間情報を生成するDE生成部16と、画像化区間範囲と共振スキャナの走査範囲とにずれが生じた場合に、走査範囲と画像化区間範囲とが一致するように、位置信号S2の位相を補正する第2PD17とを備えるサンプリングクロック発生装置1を提供する。
【解決手段】光源からの光を振動しながら反射または屈折して試料に照射する共振スキャナの振動に同期した同期信号S1に対応する位置信号S2を生成するPLL正弦波発生部2と、速度信号S5を絶対値化して絶対値速度信号S7を生成する絶対値処理部7と、絶対値速度信号S7の値に応じた周波数のSCを生成するVCO10と、生成されたSCに基づいて、所定数のSCを含む画像化区間の区間情報を生成するDE生成部16と、画像化区間範囲と共振スキャナの走査範囲とにずれが生じた場合に、走査範囲と画像化区間範囲とが一致するように、位置信号S2の位相を補正する第2PD17とを備えるサンプリングクロック発生装置1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリングクロック発生装置およびサンプリングクロック発生システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、振動しながら光を反射または屈折して試料に照射するスキャナを用いた走査型観察装置用のサンプリングクロック発生装置として、VCO(Voltage Controlled Oscillator)にスキャナの速度信号を表す正弦波電圧を入力して、電圧値に応じた周波数でサンプリングクロックを発生させる装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0003】
走査型観察装置においては、スキャナにより試料上で光を走査させる走査範囲(以下、「光学的走査範囲」という。)と、サンプリングクロックに従ってサンプリングする観察画像の範囲(以下、「電気的走査範囲」という。)とを一致させる必要があるが、外部環境温度の変化やスキャナ周波数の変化により、電気的走査範囲の位相が変動し画像が劣化するという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1に記載のサンプリングクロック装置は、温度ごとに補正値を記憶しておき、光学的走査範囲と電気的走査範囲とが一致するように、温度変化に応じてサンプリングクロックの位相を補正することで画像劣化を防止することとしている。また、特許文献2に記載のサンプリングクロック発生装置は、光学的走査範囲を検出する検出手段を別途設け、検出手段により検出された光学的走査位置に対して電気的走査位置が一致するように、サンプリングクロックをリアルタイムに補正することで画像劣化を防止することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−270562号公報
【特許文献2】特開2009−145826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のサンプリングクロック発生装置のように、温度ごとの補正値に基づいてサンプリングクロックを補正するのでは、温度特性には個々にばらつきがあるため、個々の温度特性のバラつきを加味して個別に補正値を求めなければならず作業が煩雑になるという不都合がある。また、特許文献1に記載のサンプリングクロック発生装置は、温度変化に対する補正はできても、スキャナ周波数の変化に対する補正はできないという問題がある。また、特許文献2に記載のサンプリングクロック発生装置は、光学的走査位置を検出する検出手段として、集光レンズ、ピンホール板、光検出器およびアンプ等を別途設けなければならないという不都合がある。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、外部環境温度やスキャナ周波数が変化しても、光学的走査位置を検出する手段を別途設けることなく光学的走査範囲と電気的走査範囲とを一致させて画像の劣化を防ぐことができるサンプリングクロック発生装置およびサンプリングクロック発生システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、光源からの光を振動しながら反射または屈折して試料に照射する走査手段の前記振動に同期した同期信号に対応する速度信号を生成する速度信号生成部と、該速度信号生成部により生成された速度信号を絶対値化して絶対値速度信号を生成する絶対値速度信号生成部と、該絶対値速度信号生成部により生成された絶対値速度信号の値に応じた周波数のサンプリングクロックを生成するサンプリングクロック発振部と、該サンプリングクロック発振部により生成されたサンプリングクロックに基づいて、所定数のサンプリングクロックを含む画像化区間の区間情報を生成する区間情報生成部と、該区間情報生成部により生成された区間情報により特定される画像化区間範囲と前記同期信号出力部から出力された同期信号により特定される前記走査手段の走査範囲とにずれが生じた場合に、該走査範囲と前記画像化区間範囲とが一致するように、前記速度信号の位相を補正する位相補正部とを備えるサンプリングクロック発生装置を提供する。
【0009】
本発明によれば、区間情報生成部により、所定数のサンプリングクロックを含む画像化区間の区間情報を生成することで、走査手段による走査が有効に行われる画像化区間において、画像情報のサンプリングを精度よく行い、サンプリングした画像情報に基づいて鮮明な画像を生成することができる。
【0010】
この場合において、走査手段の走査範囲は、外部環境温度や走査手段の周波数に関わらず、同期信号の特定の位相位置において常に一定であるのに対し、画像化区間範囲は、外部環境温度や走査手段の周波数が変化すると、速度信号の位相が変動することにより位相が変化する。本発明は、走査手段による走査範囲と画像化区間範囲とにずれが生じた場合に、位相補正部により速度信号の位相を補正することで、サンプリングクロック発振部により生成されるサンプリングクロックの位相が修正され、走査範囲と画像化区間範囲とが一致させられる。したがって、外部環境温度の変化や走査手段の周波数変化等に起因して画像化区間範囲の位相が変動しても、走査範囲を検出する手段を別途設けることなく、サンプリングクロックの位相を修正し、走査手段の走査範囲に画像化区間範囲を一致させて画像が劣化するのを防ぐことができる。
【0011】
上記発明においては、前記同期信号の逓倍の周波数のアドレスクロックを発するアドレスクロック発振部と、該アドレスクロック発振部から発せられるアドレスクロックをカウントするアドレスカウンタと、該アドレスカウンタによりカウントされた所定のカウント値の前記アドレスクロックに同期して位相比較パルス信号を発生する位相比較パルス発生部とを備え、前記速度信号生成部が、前記位相比較パルス信号に前記速度信号の位相を関連づけて該速度信号を生成し、前記位相補正部が、前記同期信号と前記速度信号との位相差を比較し、これらの位相差が変化した場合に、該位相差が所定の値を維持するように、前記位相比較パルス信号を発生させる前記所定のカウント値を変更することとしてもよい。
【0012】
このように構成することで、速度信号生成部により生成される速度信号の位相が位相比較パルス信号に関連づけられているので、位相比較パルス信号を発生させるアドレスクロックのカウント値を変更することにより、速度信号の位相が変更される。したがって、外部環境温度の変化や走査手段の周波数変化に起因して速度信号の位相が変動しても、位相補正部により、同期信号と速度信号との位相差が走査手段による走査範囲と画像化区間範囲とが一致しているときの値が維持されるようにアドレスクロックのカウント値を変更することで、速度信号の位相を適正値に戻すことができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記位相補正部が、前記光源の停止期間および/または前記走査手段の帰線期間に前記速度信号の位相を調整することとしてもよい。
画像取得中に位相補正部が作動すると画像に悪影響が出るため、画像を取得していないタイミングである光源の停止期間および/または走査手段の帰線期間に速度信号の位相を補正することで、画像に悪影響を与えるのを回避することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記絶対値速度信号生成部が、前記速度信号生成部により生成された速度信号をA/D変換するA/D変換部と、該A/D変換部によりA/D変換された速度信号を絶対値化するディジタル演算部と、該ディジタル演算部により絶対値化された速度信号をD/A変換するD/A変換部とを備えることとしてもよい。
【0015】
このように構成することで、ディジタル演算部により、アナログ信号を処理する場合のように、信号の立ち上り部分と立ち下り部分での絶対値化後の信号波形における非対称な歪みを発生させずに済む。その結果、非対称な歪みのないディジタルの絶対値化速度信号からD/A変換部において生成されたアナログの絶対値速度信号にも歪みがなく、アナログの絶対値速度信号値に応じた周波数で生成されるサンプリングクロックの間隔も非対称に変化しない。したがって、走査手段の往路側および復路側に取得された信号を両方とも利用して画像を形成しても画像ズレのない鮮明な画像を取得することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記絶対値速度信号生成部が、前記絶対値速度信号のオフセット量を調節する線形性補正演算を行うこととしてもよい。
このように構成することで、付与するオフセット量に応じて、サンプリングクロック発振部に入力される絶対値速度信号が嵩上げまたは嵩下げされることにより、サンプリングクロック発振部により生成されるサンプリングクロックの周波数を調節するように絶対値速度信号の波形を調節することができる。これにより、走査手段の個体差により生じる非線形性によって、サンプリングクロックの間隔が対称的に変化するのを抑制して、画像ズレのない鮮明な画像を取得することを可能とするサンプリングクロックを発生させることができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記絶対値速度信号生成部が、複数の前記速度信号を加算平均して絶対値速度信号を生成することとしてもよい。
このように構成することで、生成した速度信号のノイズを除去し、さらに精度よく、画像ズレのない鮮明な画像を取得することを可能とするサンプリングクロックを発生させることができる。
【0018】
また、本発明は、前記走査手段の往路走査期間と復路走査期間において、それぞれサンプリングクロックと画像化区間の区間情報とを出力する2つの並列接続された上記サンプリングクロック発生装置と、該サンプリングクロック発生装置により出力された往路走査期間におけるサンプリングクロックおよび区間情報と、前記復路走査期間におけるサンプリングクロックおよび区間情報とを合成するクロック情報合成部とを備えるサンプリングクロック発生システムを提供する。
【0019】
本発明によれば、往路走査期間と復路走査期間とにおいて、並列接続された2つのサンプリングクロック発生装置を用いるので、走査手段が往路と復路とで異なる速度を有する場合に、それぞれの走査期間で別個のサンプリングクロックを発生させることができる。そして、生成されたサンプリングクロックおよび画像化区間は、クロック情報合成部において合成されることにより、往復の走査期間全体にわたって、画像ズレのない鮮明な画像を取得することを可能とするサンプリングクロックを発生させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光学的走査位置を検出する手段を別途設けることなく、外部環境温度やスキャナ周波数が変化しても光学的走査範囲と電気的走査範囲とを一致させて画像の劣化を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るサンプリングクロック発生装置を適用する走査型観察装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るサンプリングクロック発生装置を示すブロック図である。
【図3】図2のPLL正弦波発生部を示すブロック図である。
【図4】BPFのゲインと位相の周波数特性をシミュレーションした図である。
【図5】図1のサンプリングクロック発生装置において生成される位置信号と速度信号との同期関係を示すグラフである。
【図6】(a)は共振画像が良好のときの同期信号とコンパレータ信号の位相差を示す図であり、(b)は共振画像にずれが生じたときの同期信号とコンパレータ信号の位相差を示す図である。
【図7】同期信号と位置信号との位相関係を示す図である。
【図8】外乱により速度信号の位相が変動する様子を示す図である。
【図9】走査範囲と画像区画化範囲とが一致しているときの位置信号と速度信号およびサンプリングクロックとの位相関係を示す図である。
【図10】走査範囲と画像区画化範囲とがずれたときの位置信号と速度信号およびサンプリングクロックとの位相関係を示す図である。
【図11】修正により走査範囲と画像区画化範囲とを一致させたときの位置信号と速度信号およびサンプリングクロックとの位相関係を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るサンプリングクロック発生システムを示すブロック図である。
【図13】図12のサンプリングクロック発生システムにより生成されたサンプリングクロックおよび画像化区間情報を示すグラフであり、(a)は往路側のディジタル絶対値速度信号、サンプリングクロックおよび画像化区間情報であり、(b)は復路側のディジタル絶対値速度信号、サンプリングクロックおよび画像化区間情報であり、(c)は往復合成後のディジタル絶対値速度信号、サンプリングクロックおよび画像化区間情報である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、図1に示されるように、走査型観察装置100において使用される。
【0023】
走査型観察装置100は、照明光を発生する光源101と、光源101からの照明光を変調する光変調素子102と、照明光をXY2次元方向に走査する走査ユニット103と、走査された照明光を集光する瞳投影レンズ104、結像レンズ105および対物レンズ106と、対物レンズ106により集光され、結像レンズ105、瞳投影レンズ104および走査ユニット103を介して戻る試料Aからの戻り光を分岐するダイクロイックミラー107と、分岐された戻り光を検出する光検出器108とを備えている。符号109はミラー、符号110はバリアフィルタ、符号111は共焦点レンズ、符号112は共焦点ピンホール、符号113はステージである。
【0024】
走査ユニット103は、照明光をY方向に偏向するガルバノミラー103bと、X方向に偏向する共振スキャナ(走査手段)103aとを備えている。ただし、この構成に限定するものではない。例えば、走査ユニット103は、X方向走査用のスキャナとY方向走査用のスキャナとが独立した構成でもよいし、X方向に偏向する走査手段103aにガルバノミラーを用いてもよい。
図中、符号114は、光変調素子102、走査ユニット103、光検出器108およびステージ113を制御して画像を生成する制御装置、符号115は生成された画像を表示するモニタである。
【0025】
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、共振スキャナ103aから出力される同期信号S1から共振スキャナ103aの動作に同期したサンプリングクロックSCを発生し制御装置114に出力するようになっている。制御装置114は、光検出器108により検出された試料Aからの戻り光の強度を、サンプリングクロック発生装置1から送られてきたサンプリングクロックSCに応じたタイミングでサンプリングして並べることにより、試料Aの2次元的な画像を生成するようになっている。
【0026】
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、約8kHzで共振振動させられる共振スキャナ103aから出力された、その共振振動に同期した同期信号S1が入力されて、サンプリングクロックSCおよび画像化区間信号(以下、DEという。)を出力する装置である。
【0027】
このサンプリングクロック発生装置1は、図2に示されるように、同期信号S1が入力されるとその同期信号S1に同期した正弦波信号からなる位置信号(速度信号)S2を出力するPLL正弦波発生部(速度信号生成部)2と、PLL正弦波発生部2から出力された位置信号S2にかけるゲインを調節する可変ゲイン調節部3と、ゲイン調節された入力位置信号S3からジッターノイズを除去するように、共振スキャナ103aの共振周波数に中心波長を有するバンドパスフィルタ(BPF)4と、バンドパスフィルタ4を通過した位置信号S4を速度信号S5に変換する位置帰還部5とを備えている。
【0028】
PLL正弦波発生部2は、図3に示すように、同期信号S1の整数倍(例えば、1164逓倍。)の周波数のアドレスクロック(アドレスCLK)を生成するPLL回路(アドレスクロック発振部)31と、PLL回路31により生成されたアドレスクロックの数をカウントするアドレスカウンタ33と、正弦波波形データを記憶するRAM(Random Access Memory)35と、アドレスカウンタ33によりカウントされた所定のカウント値のアドレスクロックに同期して位相比較パルス信号S17を発生するデコーダ(位相比較パルス発生部)37と、アドレスカウンタ33によりカウントされたアドレスクロックをアドレスとして、RAM35に記憶されている正弦波波形データを再生し、同期信号S1の波形に同期した正弦波の位置信号S2を生成する位置信号生成部39とを備えている。
【0029】
アドレスカウンタ33は、アドレスクロックのカウント値が、例えば1164に達すると、カウント値をゼロにリセットする動作を繰り返すようになっている。
デコーダ37は、アドレスカウンタ33によるカウント値が所定の値、例えばカウント値ゼロのときに、位相比較パルス信号S17を発生するように設定されている。
位置信号生成部39は、デコーダ37により発生される位相比較パルス信号S17に位置信号S2の位相を関連づけて、位置信号S2を生成するようになっている。
【0030】
図2に戻り、BPF4は、中心周波数に対して、入力された位置信号S3の周波数が変化すると、出力される位置信号S4の位相が変化する周波数−位相特性を有している。例えば、図4は、BPF4のゲインと位相の周波数特性をシミュレーションしたものである。BPF4の中心周波数は8KHzとする。同図に示されるように、入力される位置信号S3の周波数が8KHzに対して±に変化すると、出力される位置信号S4の位相も変化することがわかる。また、BPF4は、その温度特性により、入力される位置信号S3の周波数が変化していなくても、外部環境温度の変化によりBPF4の中心周波数が変動し、出力される位置信号S4の位相が変化することがある。
【0031】
位置帰還部5は、入力された位置信号S4から、後述するVCO10から出力されたサンプリングクロックSCに基づく位置再生信号S11を減算することにより、速度信号S5を算出するようになっている。
【0032】
また、サンプリングクロック発生装置1は、生成された正弦波信号からなるアナログの速度信号S5を80MHzのサンプリングレートでディジタルサンプリングしてディジタル速度信号S6に変換するA/D変換器(AD変換部:絶対値速度信号生成部)6と、A/D変換器6により変換されたディジタル速度信号S6の内、負の振幅部分を正の振幅として折り返してディジタル絶対値速度信号S7を生成する絶対値処理部(ディジタル演算部:絶対値速度信号生成部)7と、ディジタル絶対値速度信号S7に予め設定された量だけオフセット処理を行うリニア補正部(絶対値速度信号生成部)8と、オセット処理されたディジタル絶対値速度信号S8をD/A変換してアナログ絶対値速度信号S9を生成するD/A変換器(D/A変換部:絶対値速度信号生成部)9と、アナログ絶対値速度信号S9の電圧値に応じた周波数のサンプリングクロックSCを発生するVCO(サンプリングクロック発振部)10とを備えている。符合19は、FVC(Frequency to Voltage Converter、周波数/電圧変換器、)を示している。
これにより、VCO10からは、共振スキャナ103aの速度変化に応じて間隔の変化する不等間隔のサンプリングクロックSCが生成されるようになっている。
【0033】
また、サンプリングクロック発生装置1は、VCO10により発生されたサンプリングクロックSCをカウントするアップダウンカウンタ11を備えている。アップダウンカウンタ11は、VCO10から出力されたサンプリングクロックSCを、例えば、カウント値が0〜582までアップカウントし、582の後は0までダウンカウントすることを繰り返すことにより、図5に示されるような共振スキャナ103aの位置に相当する再生位置信号S10を生成するようになっている。
【0034】
アップダウンカウンタ11により生成された再生位置信号S10は、D/A変換器12に入力されることによりアナログの位置再生信号S11に変換されて位置帰還部5に入力されるようになっている。また、アップダウンカウンタ11は、アップカウントのときにはHIGH、ダウンカウントのときにはLOWとなる矩形波からなるアップダウン信号S12およびカウント値S13も出力するようになっている。
【0035】
A/D変換器6により変換されたディジタル速度信号S6は、コンパレータ13にも出力されるようになっている。コンパレータ13は、入力されたディジタル速度信号S6の符号を判定し、符号が負の場合にはHIGH、正の場合にはLOWとなる矩形波からなるコンパレータ信号S14を出力するようになっている。
【0036】
また、サンプリングクロック発生装置1は、コンパレータ13から出力されたコンパレータ信号S14とアップダウンカウンタ11から出力されたアップダウン信号S12との位相ズレを検出する位相検出部(以下、第1PDという。)14と、第1PD14から出力された位相ズレの検出信号S15を鈍らせて可変ゲイン調節部3に入力するローパスフィルタ(以下、LPFという。)15とを備えている。
【0037】
コンパレータ信号S14は、図5に示されるように、共振スキャナ103aの位置信号から生成したディジタル速度信号S6の位相を表し、アップダウン信号S12は、VCO10により生成されたサンプリングクロックSCから再生される再生位置信号S10の位相を表している。したがって、これらの位相が一致していない場合には、可変ゲイン調節部3のゲインを調節し、一致している場合には、ゲインを固定することにより、共振スキャナ103aの1周期中に存在するサンプリングクロックSCの数を固定することができるようになっている。上記の例では、アップダウンカウンタ11による往復のカウント値S13によって、582+582=1164個のサンプリングクロックSCが、正確に共振スキャナ103aの1周期中に入るゲインに固定されるようになっている。
【0038】
また、サンプリングクロック発生装置1は、アップダウンカウンタ11から出力されるカウント値S13に基づいて、画像化区間の情報を表す画像化区間信号DEを生成するDE生成部(区間情報生成部)16を備えている。
【0039】
これにより、本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、共振スキャナ103aの動作に同期した不等間隔の1164個のサンプリングクロックSCと、当該サンプリングクロックSCの内の画像化区間を示す矩形波の画像化区間信号DEとを出力するようになっている。
走査型観察装置100の光検出器108により検出される試料Aからの戻り光をサンプリングクロック発生装置1により発生された画像化区間内のサンプリングクロックSCに従ってサンプリングすることにより、共振スキャナ103aの往復動作の両方において画像情報を取得することができるようになっている。
【0040】
また、サンプリングクロック発生装置1は、同期信号S1とコンパレータ13から出力されるコンパレータ信号(速度信号)S14との位相差を比較し、この位相差が所定の値を維持するようにPLL正弦波発生部2のアドレスカウンタ33を制御する位相補正部(以下、第2PDという。)17を備えている。
【0041】
第2PD17は、同期信号S1とコンパレータ信号S14との位相差が変化した場合に、同期信号S1により特定される共振スキャナ103aの走査範囲と、DE生成部16により生成される画像化区間信号DEにより特定される画像化区間範囲とが一致しているときの所定の位相差を維持するように、アドレスカウンタ33の位相比較パルス信号S17を発生させるカウント値を変更するようになっている。
【0042】
位置信号生成部39により生成される位置信号S2の位相が位相比較パルス信号S17に関連づけられているので、位相比較パルス信号S17を発生させるアドレスクロックのカウント値が変更されると、位置信号生成部39によるRAM35からの正弦波波形データの読み出し位置が変更されて位置信号S2の位相が変化する。その結果、位置帰還部5により生成される速度信号S5の位相が変更され、VCO10により生成されるサンプリングクロックSCの位相も変更されることとなる。これにより、共振スキャナ103aの走査範囲と画像化区間範囲とにずれが生じた場合に、これら走査範囲と画像化区間範囲とが一致するように、第2PD17によって位置信号S2の位相が補正されるようになっている。
【0043】
同期信号S1とコンパレータ信号S14の位相差は、例えば、適当なチャート標本を顕微鏡観察において顕微鏡視野に設置し、次に、その標本設置状態のまま走査型顕微鏡観察像(LSM像)で画像取得をした際に、このチャート標本の像が顕微鏡観察像とLSM像で一致するようにLSM像側の画像区間範囲を調整した状態における同期信号S1とコンパレータ信号S14の位相差を検出することで取得できる。この所定の位相差のときに走査範囲と画像化区間範囲が一致していることになる。
【0044】
顕微鏡光学系の公差、検出から画像表示手段の電気的遅延などの様々な光学ズレ要因や電気遅延要因があるため、必ずしも位相差がゼロのときに共振画像が良好(走査範囲と画像化区間範囲が一致。)ということではなく、機体差がある。よって、第2PD17には、機体ごとに最適な所定の位相差が調整値として設定されるようになっている。
【0045】
例えば、図6(a)に示すように、共振画像が良好のときに、同期信号S1とコンパレータ信号S14の位相差がアドレスカウント値6であるとする。この場合、図6(b)に示すように、共振画像にずれが生じ、同期信号S1とコンパレータ信号S14の位相差が変化したら(例えば、位相差がアドレスカウント値3に変化。)、これらの位相差がアドレスカウント値6に戻るように、第2PD17により、アドレスカウンタ33が制御されるようになっている。
【0046】
また、第2PD17は、光源101の停止期間および共振スキャナ103aの帰線期間において、位相比較パルス信号S17を発生させるカウント値を変更して、速度信号S5の位相を調整するようになっている。
【0047】
このように構成された本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1の作用について以下に説明する。
走査型観察装置100により試料Aを観察するには、光源101から照明光を発生させ、光変調素子102、走査ユニット103、瞳投影レンズ104および結像レンズ105を介して対物レンズ106により試料Aに照明光を照射する。この場合において、走査ユニット103の作動により、試料A上で照明光が2次元的に走査される。試料Aから戻る戻り光は、対物レンズ106、結像レンズ105、瞳投影レンズ104および走査ユニット103を介して光路を逆方向に戻り、ダイクロイックミラー107により照明光から分岐されて光検出器108により検出される。
【0048】
サンプリングクロック発生装置1においては、走査ユニット103の共振スキャナ103aから出力される同期信号S1から共振スキャナ103aの動作に同期したアドレスクロックが発生される。具体的には、PLL正弦波発生部2において、図7に示すように、PLL回路31により、同期信号S1(ガルバノSync)の整数倍(本実施形態においては、1164逓倍。)のアドレスクロックが生成される。次いで、アドレスカウンタ33により、アドレスクロック数がカウントされ、アドレスカウンタ値が1164カウントになるとゼロにリセットする動作が繰り返される。
【0049】
デコーダ37により、アドレスカウンタ値がゼロのときに位相比較パルス信号S17が発生され、位相比較パルス信号S17が入力の同期信号S1の立ち上りエッジに追従するように制御される。位相比較パルス信号S17の立ち上りが同期信号S1の立ち上りエッジと一致しない場合は、一致するようにクロック周波数を変化させる制御が繰り返される。
【0050】
次いで、位置信号生成部39により、アドレスカウンタ値をアドレスとして、RAM35に記憶されている正弦波波形データが再生される。これにより、同期信号S1に同期し、位相比較パルス信号S17に位相が関連づけられた位置信号S2が生成される。位置信号S2の位相が位相比較パルス信号S17に関連づけられるので、位相比較パルス信号S17を発生させるアドレスカウンタ値を変更すると、RAM35の読み出しアドレスが変更されて位置信号S2の位相がシフト(移相調整)される。
【0051】
位置信号生成部39により生成された位置信号S2は、可変ゲイン調節部3、BPF4を介して位置帰還部5に入力され、位置帰還部5により速度信号S5に変換される。次いで、A/D変換器6により速度信号S5がディジタル速度信号S6に変換され、絶対値処理部7によりディジタル絶対値速度信号S7に変換された後、リニア補正部8を介してD/A変換部9に入力されてアナログ絶対値速度信号S9に変換される。VCO10にアナログ絶対値速度信号S9が入力されると、VCO10によりサンプリングクロックSCが生成されて制御装置114に送られる。
【0052】
制御装置114により、光検出器108により検出された試料Aからの戻り光の強度を、サンプリングクロック発生装置1から送られてきたサンプリングクロックSCに応じたタイミングでサンプリングして並べられる。これにより、試料Aの2次元的な画像が生成される。
【0053】
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1によれば、DE生成部16により、所定数のサンプリングクロックを含む画像化区間信号DEを生成することで、共振スキャナ103aによる走査が有効に行われる画像化区間において、画像情報のサンプリングを精度よく行い、サンプリングした画像情報に基づいて鮮明な画像を生成することができる。これにより、試料Aの観察を良好に行うことができる。
【0054】
ここで、BPF4により出力される速度信号S4は、BPF4の特性により外部環境温度の変化やスキャナ周波数の変化(例えば、走査手段が共振スキャナの場合、環境温度変化によって共振周波数が変化する。)の影響で位相が変化してしまうことがある。例えば、図8に示すように、BPF4通過後の位置信号S4の位相の変動(同図の上から5段目の信号。実線は位相が変動する前の信号を示し、鎖線は位相が変動した後の信号を示している。)は、その後段の速度信号S5,S6、絶対値信号S7,S8,S9、サンプリングクロックSC、そして、画像化区間信号DEにも位相の変動として影響する。
【0055】
その結果、共振スキャナ103aの走査範囲の位相は、外部環境温度やスキャナ周波数に関わらず同期信号S1の特定の位相位置において常に一定であるのに対し、画像化区間範囲の位相は、PLL正弦波発生部2による処理が同期信号S1に同期追従しても、外部環境温度やスキャナ周波数が変化すると、速度信号S5の位相が変動することにより変化してしまう。
【0056】
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、第2PD17により、同期信号S1とコンパレータ信号S14との位相差が比較され、比較結果に応じて、PLL正弦波発生部2により生成される位置信号S2の位相が補正される。例えば、図9に示すように、アドレスクロックのカウント値0で発生させた位相比較パルス信号S17を用いてサンプリングクロックSCを生成した場合において、同期信号S1とコンパレータ信号S14が予め決められた位相差に維持されていると、共振スキャナ103aの走査範囲と画像化区間範囲とが一致している。
【0057】
しかしながら、外部温度変化などの外乱により、図10に示すように、速度信号S5、サンプリングクロックSC、画像有効区間信号DE等の位相が変化すると、共振スキャナ103aの走査範囲と画像化区間範囲にずれが生じる。この場合、同期信号S1とコンパレータ信号S14の位相差が変化することにより、第2PD17によって、図11に示すように、位相比較パルス信号S17を発生させるアドレスカウント値が、例えばカウント値5に変更され、位置信号生成部39により生成される位置信号S2(RAM波形データ)の位相がずらされる。
【0058】
これにより、位置信号S2以降の信号の位相関係が一律にシフトさせられ、最終的なサンプリングクロックSCおよび画像有効区間信号DEの位相もシフトさせられる。同期信号S1の立ち上りエッジとコンパレータ信号S14の立ち上りエッジの時間差が予め決められた位相差に戻されると、共振スキャナ103aの走査範囲に画像化区間範囲が一致させられる。
【0059】
第2PD17による位置信号S2の位相調整は、光源101の停止期間および共振スキャナ103aの帰線期間に行われる。画像取得中に第2PD17が作動すると画像に悪影響が出るため、画像を取得していないタイミングに位置信号S2の位相を補正することで、画像に悪影響を与えるのを回避することができる。なお、光源101の停止期間または共振スキャナ103aの帰線期間に位置信号S2の位相調整を行うこととしてもよい。
【0060】
以上説明したように本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1によれば、共振スキャナ103aによる走査範囲と画像化区間範囲とにずれが生じた場合に、第2PD17により位置信号S2の位相を補正することで、VCO10により生成されるサンプリングクロックSCの位相が適正値に戻され、走査範囲と画像化区間範囲とが一致させられる。したがって、外部環境温度の変化や走査手段の周波数変化等に起因して画像化区間範囲の位相が変動しても、走査範囲を検出する手段を別途設けることなく、サンプリングクロックSCの位相を修正し、共振スキャナ103aの走査範囲に画像化区間範囲を一致させて画像が劣化するのを防ぐことができる。
【0061】
また、VCO10に入力するアナログ絶対値速度信号S9を生成する際に、アナログ信号処理によることなくディジタル信号処理によって絶対値化するので、アナログ信号処理において発生していた信号の立ち上り部分と立ち下り部分における絶対値化後の速度信号波形の僅かな歪みの発生をも防止することができる。
【0062】
その結果、VCO10によってアナログ絶対値速度信号S9に応じた周波数で生成されるサンプリングクロックSCの間隔が非対称に変化するのを防止することができる。これにより、共振スキャナ103aの往路側および復路側に取得された信号を両方とも利用して画像を形成しても画像ズレのない鮮明な画像を取得することができるという利点がある。
【0063】
また、ディジタル信号処理によって絶対値化されたディジタル絶対値速度信号S7に対してリニア補正部8において、オフセットをディジタル信号処理により簡易に付与することができるという利点もある。例えば、オフセット量を増加させると、その瞬間のディジタル絶対値速度信号S7の振幅もオフセット量分だけ増加するので、VCO10から出力される共振スキャナ103aの1周期中のサンプリングクロックSCの数も1164個以上となる。しかし、上述したように、共振スキャナ103aの1周期中のサンプリングクロックSCの数は正確に1164個となるように可変ゲイン調節部3にフィードバックする制御がなされているので、位置帰還部5に入力される入力位置信号S4の振幅は直ちに減少するようにゲインの調節が行われる。
【0064】
これにより、付与するオフセット量に応じて、VCO10に入力される絶対値速度信号が嵩上げまたは嵩下げされ、共振スキャナ103aの1周期中のサンプリングクロックSCの数を1164個に保ったままサンプリングクロックSCの周波数を調節するように、絶対値速度信号の波形を調節することができる。このようにすることで、共振スキャナ103aの個体差により生じる非線形性によって、サンプリングクロックSCの間隔が対称的に変化するのを抑制して、画像ズレのない鮮明な画像を取得することを可能とするサンプリングクロックSCを発生させることができる。オセット量の設定は、手動で行ってもよいし自動的に行うように構成してもよい。
【0065】
本実施形態においては、同期信号S1とコンパレータ信号S14との位相差を比較することとしたが、画像化区間範囲のドリフト(位相変動)を検出するには、温度等によるドリフト発生前のシグナル位相(BPF4通過前の信号の位相)とドリフト発生後のシグナル位相(BPF4通過後の信号の位相)とを比較して、位相のシフト量を検出すればよい。したがって、比較するシグナルはBPF4の通過前と通過後であればどれを選択しても構わないが、正弦波信号の位相を比較するよりは、方形波状のシグナルの位相を比較する方がデジタル回路で実現しやすいメリットがある。
【0066】
また、PLL正弦波発生部2においては、共振スキャナ103aから出力された同期信号S1に一致する位相を有する正弦波からなる位置信号S2を生成することとしたが、同期信号S1が入力されてから最終的なサンプリングクロックSCが生成されるまでには、無視できない遅延時間が発生する。また、共振スキャナ103aの現実の位置と同期信号S1との間にも遅延時間が存在する。さらに、サンプリングクロックSCに基づいて光検出器108により検出された戻り光の強度をサンプリングする制御装置114においても遅延時間が発生する。したがって、PLL正弦波発生部2においては、これらの様々な遅延時間を考慮して、PLL正弦波発生部2から出力される位置信号S2の位相を調節することとしてもよい。これにより、最終的に得られる画像への遅延時間の影響を抑えることができる。
【0067】
また、本実施形態においては、単一のサンプリングクロック発生装置1によって、共振スキャナ103aの往路および復路のサンプリングクロックSCと画像化区間情報DEとを生成することとした。これに代えて、図12に示されるように、2つのサンプリングクロック発生装置1A,1Bを並列に接続したサンプリングクロック発生システム20を採用してもよい。
【0068】
このサンプリングクロック発生システム20には、各サンプリングクロック発生装置1A,1Bで発生した往路側および復路側のサンプリングクロックSCA,SCBと、往路側および復路側の画像化区間の情報DEA,DEBとを合成する合成部21が設けられている。これにより、図13(a),(b)に示されるように往路および復路のサンプリングクロックSCA,SCBと画像化区間情報DEA,DEBとを別々に発生させ、後段の合成部21において、図13(c)に示されるように、合成された往復のサンプリングクロックSCおよび画像化区間情報DEを出力することができる。
【0069】
このようなサンプリングクロック発生システム20によれば、共振スキャナ103aの走査時間や速度変化が往路と復路とで異なっていても、往路側と復路側で異なるゲイン調整およびオフセット量調整を行って、往路に取得した戻り光の光強度と復路に取得した戻り光の光強度とを用いて画像ズレのない良好な画像を取得することができるという利点がある。
【0070】
また、本実施形態においては、速度信号S5をディジタルサンプリングしてA/D変換し、絶対値化処理を行っているが、ディジタルサンプリングに際して信号にノイズが乗ってしまうことがあるため、ディジタルサンプリングされた複数の速度信号値を加算平均して各ディジタル速度信号S6を生成することにしてもよい。例えば、時刻Tにおけるディジタル速度信号S6(T)は、時刻Tよりも以前の2以上のディジタル信号S6(T−1),S6(T−2)を加算平均して求めることにすればよい。
【0071】
これにより、生成されるディジタル速度信号S6およびディジタル絶対値速度信号S7におけるノイズを大幅に低減することができる。
なお、この場合にも、遅延時間が発生するので、位置信号S2の位相の調整にこの演算における遅延時間に対する調整をも加えることより、最終的に得られる画像への遅延時間の影響を抑えることにすればよい。
【0072】
また、本実施形態においては、ディジタル信号に変換した状態で、絶対値化およびリニア補正を行っているが、ディジタル信号処理によれば、絶対値化およびリニア補正に限らず、比較的簡易に種々の信号調整を行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
A 試料
SC サンプリングクロック
DE 画像化区間信号(画像化区間情報)
S1 同期信号
S2 位置信号(速度信号)
S5 速度信号
S7 ディジタル絶対値速度信号
S9 アナログ絶対値速度信号
1,1A,1B サンプリングクロック発生装置
2 PLL正弦波発生部(速度信号生成部)
6 A/D変換器(A/D変換部:絶対値速度信号生成部)
7 絶対値処理部(ディジタル演算部:絶対値速度信号生成部)
8 リニア補正部(ディジタル演算部)
9 D/A変換器(D/A変換部:絶対値速度信号生成部)
10 VCO(サンプリングクロック発振部)
16 DE生成部(区間情報生成部)
17 第2PD(位相補正部)
20 サンプリングクロック発生システム
21 合成部(クロック情報合成部)
37 デコーダ(位相比較パルス発生部)
101 光源
103a 共振スキャナ(走査手段)
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリングクロック発生装置およびサンプリングクロック発生システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、振動しながら光を反射または屈折して試料に照射するスキャナを用いた走査型観察装置用のサンプリングクロック発生装置として、VCO(Voltage Controlled Oscillator)にスキャナの速度信号を表す正弦波電圧を入力して、電圧値に応じた周波数でサンプリングクロックを発生させる装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0003】
走査型観察装置においては、スキャナにより試料上で光を走査させる走査範囲(以下、「光学的走査範囲」という。)と、サンプリングクロックに従ってサンプリングする観察画像の範囲(以下、「電気的走査範囲」という。)とを一致させる必要があるが、外部環境温度の変化やスキャナ周波数の変化により、電気的走査範囲の位相が変動し画像が劣化するという問題がある。
【0004】
このような問題に対して、特許文献1に記載のサンプリングクロック装置は、温度ごとに補正値を記憶しておき、光学的走査範囲と電気的走査範囲とが一致するように、温度変化に応じてサンプリングクロックの位相を補正することで画像劣化を防止することとしている。また、特許文献2に記載のサンプリングクロック発生装置は、光学的走査範囲を検出する検出手段を別途設け、検出手段により検出された光学的走査位置に対して電気的走査位置が一致するように、サンプリングクロックをリアルタイムに補正することで画像劣化を防止することとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−270562号公報
【特許文献2】特開2009−145826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のサンプリングクロック発生装置のように、温度ごとの補正値に基づいてサンプリングクロックを補正するのでは、温度特性には個々にばらつきがあるため、個々の温度特性のバラつきを加味して個別に補正値を求めなければならず作業が煩雑になるという不都合がある。また、特許文献1に記載のサンプリングクロック発生装置は、温度変化に対する補正はできても、スキャナ周波数の変化に対する補正はできないという問題がある。また、特許文献2に記載のサンプリングクロック発生装置は、光学的走査位置を検出する検出手段として、集光レンズ、ピンホール板、光検出器およびアンプ等を別途設けなければならないという不都合がある。
【0007】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであって、外部環境温度やスキャナ周波数が変化しても、光学的走査位置を検出する手段を別途設けることなく光学的走査範囲と電気的走査範囲とを一致させて画像の劣化を防ぐことができるサンプリングクロック発生装置およびサンプリングクロック発生システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提供する。
本発明は、光源からの光を振動しながら反射または屈折して試料に照射する走査手段の前記振動に同期した同期信号に対応する速度信号を生成する速度信号生成部と、該速度信号生成部により生成された速度信号を絶対値化して絶対値速度信号を生成する絶対値速度信号生成部と、該絶対値速度信号生成部により生成された絶対値速度信号の値に応じた周波数のサンプリングクロックを生成するサンプリングクロック発振部と、該サンプリングクロック発振部により生成されたサンプリングクロックに基づいて、所定数のサンプリングクロックを含む画像化区間の区間情報を生成する区間情報生成部と、該区間情報生成部により生成された区間情報により特定される画像化区間範囲と前記同期信号出力部から出力された同期信号により特定される前記走査手段の走査範囲とにずれが生じた場合に、該走査範囲と前記画像化区間範囲とが一致するように、前記速度信号の位相を補正する位相補正部とを備えるサンプリングクロック発生装置を提供する。
【0009】
本発明によれば、区間情報生成部により、所定数のサンプリングクロックを含む画像化区間の区間情報を生成することで、走査手段による走査が有効に行われる画像化区間において、画像情報のサンプリングを精度よく行い、サンプリングした画像情報に基づいて鮮明な画像を生成することができる。
【0010】
この場合において、走査手段の走査範囲は、外部環境温度や走査手段の周波数に関わらず、同期信号の特定の位相位置において常に一定であるのに対し、画像化区間範囲は、外部環境温度や走査手段の周波数が変化すると、速度信号の位相が変動することにより位相が変化する。本発明は、走査手段による走査範囲と画像化区間範囲とにずれが生じた場合に、位相補正部により速度信号の位相を補正することで、サンプリングクロック発振部により生成されるサンプリングクロックの位相が修正され、走査範囲と画像化区間範囲とが一致させられる。したがって、外部環境温度の変化や走査手段の周波数変化等に起因して画像化区間範囲の位相が変動しても、走査範囲を検出する手段を別途設けることなく、サンプリングクロックの位相を修正し、走査手段の走査範囲に画像化区間範囲を一致させて画像が劣化するのを防ぐことができる。
【0011】
上記発明においては、前記同期信号の逓倍の周波数のアドレスクロックを発するアドレスクロック発振部と、該アドレスクロック発振部から発せられるアドレスクロックをカウントするアドレスカウンタと、該アドレスカウンタによりカウントされた所定のカウント値の前記アドレスクロックに同期して位相比較パルス信号を発生する位相比較パルス発生部とを備え、前記速度信号生成部が、前記位相比較パルス信号に前記速度信号の位相を関連づけて該速度信号を生成し、前記位相補正部が、前記同期信号と前記速度信号との位相差を比較し、これらの位相差が変化した場合に、該位相差が所定の値を維持するように、前記位相比較パルス信号を発生させる前記所定のカウント値を変更することとしてもよい。
【0012】
このように構成することで、速度信号生成部により生成される速度信号の位相が位相比較パルス信号に関連づけられているので、位相比較パルス信号を発生させるアドレスクロックのカウント値を変更することにより、速度信号の位相が変更される。したがって、外部環境温度の変化や走査手段の周波数変化に起因して速度信号の位相が変動しても、位相補正部により、同期信号と速度信号との位相差が走査手段による走査範囲と画像化区間範囲とが一致しているときの値が維持されるようにアドレスクロックのカウント値を変更することで、速度信号の位相を適正値に戻すことができる。
【0013】
また、上記発明においては、前記位相補正部が、前記光源の停止期間および/または前記走査手段の帰線期間に前記速度信号の位相を調整することとしてもよい。
画像取得中に位相補正部が作動すると画像に悪影響が出るため、画像を取得していないタイミングである光源の停止期間および/または走査手段の帰線期間に速度信号の位相を補正することで、画像に悪影響を与えるのを回避することができる。
【0014】
また、上記発明においては、前記絶対値速度信号生成部が、前記速度信号生成部により生成された速度信号をA/D変換するA/D変換部と、該A/D変換部によりA/D変換された速度信号を絶対値化するディジタル演算部と、該ディジタル演算部により絶対値化された速度信号をD/A変換するD/A変換部とを備えることとしてもよい。
【0015】
このように構成することで、ディジタル演算部により、アナログ信号を処理する場合のように、信号の立ち上り部分と立ち下り部分での絶対値化後の信号波形における非対称な歪みを発生させずに済む。その結果、非対称な歪みのないディジタルの絶対値化速度信号からD/A変換部において生成されたアナログの絶対値速度信号にも歪みがなく、アナログの絶対値速度信号値に応じた周波数で生成されるサンプリングクロックの間隔も非対称に変化しない。したがって、走査手段の往路側および復路側に取得された信号を両方とも利用して画像を形成しても画像ズレのない鮮明な画像を取得することができる。
【0016】
また、上記発明においては、前記絶対値速度信号生成部が、前記絶対値速度信号のオフセット量を調節する線形性補正演算を行うこととしてもよい。
このように構成することで、付与するオフセット量に応じて、サンプリングクロック発振部に入力される絶対値速度信号が嵩上げまたは嵩下げされることにより、サンプリングクロック発振部により生成されるサンプリングクロックの周波数を調節するように絶対値速度信号の波形を調節することができる。これにより、走査手段の個体差により生じる非線形性によって、サンプリングクロックの間隔が対称的に変化するのを抑制して、画像ズレのない鮮明な画像を取得することを可能とするサンプリングクロックを発生させることができる。
【0017】
また、上記発明においては、前記絶対値速度信号生成部が、複数の前記速度信号を加算平均して絶対値速度信号を生成することとしてもよい。
このように構成することで、生成した速度信号のノイズを除去し、さらに精度よく、画像ズレのない鮮明な画像を取得することを可能とするサンプリングクロックを発生させることができる。
【0018】
また、本発明は、前記走査手段の往路走査期間と復路走査期間において、それぞれサンプリングクロックと画像化区間の区間情報とを出力する2つの並列接続された上記サンプリングクロック発生装置と、該サンプリングクロック発生装置により出力された往路走査期間におけるサンプリングクロックおよび区間情報と、前記復路走査期間におけるサンプリングクロックおよび区間情報とを合成するクロック情報合成部とを備えるサンプリングクロック発生システムを提供する。
【0019】
本発明によれば、往路走査期間と復路走査期間とにおいて、並列接続された2つのサンプリングクロック発生装置を用いるので、走査手段が往路と復路とで異なる速度を有する場合に、それぞれの走査期間で別個のサンプリングクロックを発生させることができる。そして、生成されたサンプリングクロックおよび画像化区間は、クロック情報合成部において合成されることにより、往復の走査期間全体にわたって、画像ズレのない鮮明な画像を取得することを可能とするサンプリングクロックを発生させることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、光学的走査位置を検出する手段を別途設けることなく、外部環境温度やスキャナ周波数が変化しても光学的走査範囲と電気的走査範囲とを一致させて画像の劣化を防ぐことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施形態に係るサンプリングクロック発生装置を適用する走査型観察装置を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るサンプリングクロック発生装置を示すブロック図である。
【図3】図2のPLL正弦波発生部を示すブロック図である。
【図4】BPFのゲインと位相の周波数特性をシミュレーションした図である。
【図5】図1のサンプリングクロック発生装置において生成される位置信号と速度信号との同期関係を示すグラフである。
【図6】(a)は共振画像が良好のときの同期信号とコンパレータ信号の位相差を示す図であり、(b)は共振画像にずれが生じたときの同期信号とコンパレータ信号の位相差を示す図である。
【図7】同期信号と位置信号との位相関係を示す図である。
【図8】外乱により速度信号の位相が変動する様子を示す図である。
【図9】走査範囲と画像区画化範囲とが一致しているときの位置信号と速度信号およびサンプリングクロックとの位相関係を示す図である。
【図10】走査範囲と画像区画化範囲とがずれたときの位置信号と速度信号およびサンプリングクロックとの位相関係を示す図である。
【図11】修正により走査範囲と画像区画化範囲とを一致させたときの位置信号と速度信号およびサンプリングクロックとの位相関係を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態に係るサンプリングクロック発生システムを示すブロック図である。
【図13】図12のサンプリングクロック発生システムにより生成されたサンプリングクロックおよび画像化区間情報を示すグラフであり、(a)は往路側のディジタル絶対値速度信号、サンプリングクロックおよび画像化区間情報であり、(b)は復路側のディジタル絶対値速度信号、サンプリングクロックおよび画像化区間情報であり、(c)は往復合成後のディジタル絶対値速度信号、サンプリングクロックおよび画像化区間情報である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の一実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、図1に示されるように、走査型観察装置100において使用される。
【0023】
走査型観察装置100は、照明光を発生する光源101と、光源101からの照明光を変調する光変調素子102と、照明光をXY2次元方向に走査する走査ユニット103と、走査された照明光を集光する瞳投影レンズ104、結像レンズ105および対物レンズ106と、対物レンズ106により集光され、結像レンズ105、瞳投影レンズ104および走査ユニット103を介して戻る試料Aからの戻り光を分岐するダイクロイックミラー107と、分岐された戻り光を検出する光検出器108とを備えている。符号109はミラー、符号110はバリアフィルタ、符号111は共焦点レンズ、符号112は共焦点ピンホール、符号113はステージである。
【0024】
走査ユニット103は、照明光をY方向に偏向するガルバノミラー103bと、X方向に偏向する共振スキャナ(走査手段)103aとを備えている。ただし、この構成に限定するものではない。例えば、走査ユニット103は、X方向走査用のスキャナとY方向走査用のスキャナとが独立した構成でもよいし、X方向に偏向する走査手段103aにガルバノミラーを用いてもよい。
図中、符号114は、光変調素子102、走査ユニット103、光検出器108およびステージ113を制御して画像を生成する制御装置、符号115は生成された画像を表示するモニタである。
【0025】
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、共振スキャナ103aから出力される同期信号S1から共振スキャナ103aの動作に同期したサンプリングクロックSCを発生し制御装置114に出力するようになっている。制御装置114は、光検出器108により検出された試料Aからの戻り光の強度を、サンプリングクロック発生装置1から送られてきたサンプリングクロックSCに応じたタイミングでサンプリングして並べることにより、試料Aの2次元的な画像を生成するようになっている。
【0026】
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、約8kHzで共振振動させられる共振スキャナ103aから出力された、その共振振動に同期した同期信号S1が入力されて、サンプリングクロックSCおよび画像化区間信号(以下、DEという。)を出力する装置である。
【0027】
このサンプリングクロック発生装置1は、図2に示されるように、同期信号S1が入力されるとその同期信号S1に同期した正弦波信号からなる位置信号(速度信号)S2を出力するPLL正弦波発生部(速度信号生成部)2と、PLL正弦波発生部2から出力された位置信号S2にかけるゲインを調節する可変ゲイン調節部3と、ゲイン調節された入力位置信号S3からジッターノイズを除去するように、共振スキャナ103aの共振周波数に中心波長を有するバンドパスフィルタ(BPF)4と、バンドパスフィルタ4を通過した位置信号S4を速度信号S5に変換する位置帰還部5とを備えている。
【0028】
PLL正弦波発生部2は、図3に示すように、同期信号S1の整数倍(例えば、1164逓倍。)の周波数のアドレスクロック(アドレスCLK)を生成するPLL回路(アドレスクロック発振部)31と、PLL回路31により生成されたアドレスクロックの数をカウントするアドレスカウンタ33と、正弦波波形データを記憶するRAM(Random Access Memory)35と、アドレスカウンタ33によりカウントされた所定のカウント値のアドレスクロックに同期して位相比較パルス信号S17を発生するデコーダ(位相比較パルス発生部)37と、アドレスカウンタ33によりカウントされたアドレスクロックをアドレスとして、RAM35に記憶されている正弦波波形データを再生し、同期信号S1の波形に同期した正弦波の位置信号S2を生成する位置信号生成部39とを備えている。
【0029】
アドレスカウンタ33は、アドレスクロックのカウント値が、例えば1164に達すると、カウント値をゼロにリセットする動作を繰り返すようになっている。
デコーダ37は、アドレスカウンタ33によるカウント値が所定の値、例えばカウント値ゼロのときに、位相比較パルス信号S17を発生するように設定されている。
位置信号生成部39は、デコーダ37により発生される位相比較パルス信号S17に位置信号S2の位相を関連づけて、位置信号S2を生成するようになっている。
【0030】
図2に戻り、BPF4は、中心周波数に対して、入力された位置信号S3の周波数が変化すると、出力される位置信号S4の位相が変化する周波数−位相特性を有している。例えば、図4は、BPF4のゲインと位相の周波数特性をシミュレーションしたものである。BPF4の中心周波数は8KHzとする。同図に示されるように、入力される位置信号S3の周波数が8KHzに対して±に変化すると、出力される位置信号S4の位相も変化することがわかる。また、BPF4は、その温度特性により、入力される位置信号S3の周波数が変化していなくても、外部環境温度の変化によりBPF4の中心周波数が変動し、出力される位置信号S4の位相が変化することがある。
【0031】
位置帰還部5は、入力された位置信号S4から、後述するVCO10から出力されたサンプリングクロックSCに基づく位置再生信号S11を減算することにより、速度信号S5を算出するようになっている。
【0032】
また、サンプリングクロック発生装置1は、生成された正弦波信号からなるアナログの速度信号S5を80MHzのサンプリングレートでディジタルサンプリングしてディジタル速度信号S6に変換するA/D変換器(AD変換部:絶対値速度信号生成部)6と、A/D変換器6により変換されたディジタル速度信号S6の内、負の振幅部分を正の振幅として折り返してディジタル絶対値速度信号S7を生成する絶対値処理部(ディジタル演算部:絶対値速度信号生成部)7と、ディジタル絶対値速度信号S7に予め設定された量だけオフセット処理を行うリニア補正部(絶対値速度信号生成部)8と、オセット処理されたディジタル絶対値速度信号S8をD/A変換してアナログ絶対値速度信号S9を生成するD/A変換器(D/A変換部:絶対値速度信号生成部)9と、アナログ絶対値速度信号S9の電圧値に応じた周波数のサンプリングクロックSCを発生するVCO(サンプリングクロック発振部)10とを備えている。符合19は、FVC(Frequency to Voltage Converter、周波数/電圧変換器、)を示している。
これにより、VCO10からは、共振スキャナ103aの速度変化に応じて間隔の変化する不等間隔のサンプリングクロックSCが生成されるようになっている。
【0033】
また、サンプリングクロック発生装置1は、VCO10により発生されたサンプリングクロックSCをカウントするアップダウンカウンタ11を備えている。アップダウンカウンタ11は、VCO10から出力されたサンプリングクロックSCを、例えば、カウント値が0〜582までアップカウントし、582の後は0までダウンカウントすることを繰り返すことにより、図5に示されるような共振スキャナ103aの位置に相当する再生位置信号S10を生成するようになっている。
【0034】
アップダウンカウンタ11により生成された再生位置信号S10は、D/A変換器12に入力されることによりアナログの位置再生信号S11に変換されて位置帰還部5に入力されるようになっている。また、アップダウンカウンタ11は、アップカウントのときにはHIGH、ダウンカウントのときにはLOWとなる矩形波からなるアップダウン信号S12およびカウント値S13も出力するようになっている。
【0035】
A/D変換器6により変換されたディジタル速度信号S6は、コンパレータ13にも出力されるようになっている。コンパレータ13は、入力されたディジタル速度信号S6の符号を判定し、符号が負の場合にはHIGH、正の場合にはLOWとなる矩形波からなるコンパレータ信号S14を出力するようになっている。
【0036】
また、サンプリングクロック発生装置1は、コンパレータ13から出力されたコンパレータ信号S14とアップダウンカウンタ11から出力されたアップダウン信号S12との位相ズレを検出する位相検出部(以下、第1PDという。)14と、第1PD14から出力された位相ズレの検出信号S15を鈍らせて可変ゲイン調節部3に入力するローパスフィルタ(以下、LPFという。)15とを備えている。
【0037】
コンパレータ信号S14は、図5に示されるように、共振スキャナ103aの位置信号から生成したディジタル速度信号S6の位相を表し、アップダウン信号S12は、VCO10により生成されたサンプリングクロックSCから再生される再生位置信号S10の位相を表している。したがって、これらの位相が一致していない場合には、可変ゲイン調節部3のゲインを調節し、一致している場合には、ゲインを固定することにより、共振スキャナ103aの1周期中に存在するサンプリングクロックSCの数を固定することができるようになっている。上記の例では、アップダウンカウンタ11による往復のカウント値S13によって、582+582=1164個のサンプリングクロックSCが、正確に共振スキャナ103aの1周期中に入るゲインに固定されるようになっている。
【0038】
また、サンプリングクロック発生装置1は、アップダウンカウンタ11から出力されるカウント値S13に基づいて、画像化区間の情報を表す画像化区間信号DEを生成するDE生成部(区間情報生成部)16を備えている。
【0039】
これにより、本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、共振スキャナ103aの動作に同期した不等間隔の1164個のサンプリングクロックSCと、当該サンプリングクロックSCの内の画像化区間を示す矩形波の画像化区間信号DEとを出力するようになっている。
走査型観察装置100の光検出器108により検出される試料Aからの戻り光をサンプリングクロック発生装置1により発生された画像化区間内のサンプリングクロックSCに従ってサンプリングすることにより、共振スキャナ103aの往復動作の両方において画像情報を取得することができるようになっている。
【0040】
また、サンプリングクロック発生装置1は、同期信号S1とコンパレータ13から出力されるコンパレータ信号(速度信号)S14との位相差を比較し、この位相差が所定の値を維持するようにPLL正弦波発生部2のアドレスカウンタ33を制御する位相補正部(以下、第2PDという。)17を備えている。
【0041】
第2PD17は、同期信号S1とコンパレータ信号S14との位相差が変化した場合に、同期信号S1により特定される共振スキャナ103aの走査範囲と、DE生成部16により生成される画像化区間信号DEにより特定される画像化区間範囲とが一致しているときの所定の位相差を維持するように、アドレスカウンタ33の位相比較パルス信号S17を発生させるカウント値を変更するようになっている。
【0042】
位置信号生成部39により生成される位置信号S2の位相が位相比較パルス信号S17に関連づけられているので、位相比較パルス信号S17を発生させるアドレスクロックのカウント値が変更されると、位置信号生成部39によるRAM35からの正弦波波形データの読み出し位置が変更されて位置信号S2の位相が変化する。その結果、位置帰還部5により生成される速度信号S5の位相が変更され、VCO10により生成されるサンプリングクロックSCの位相も変更されることとなる。これにより、共振スキャナ103aの走査範囲と画像化区間範囲とにずれが生じた場合に、これら走査範囲と画像化区間範囲とが一致するように、第2PD17によって位置信号S2の位相が補正されるようになっている。
【0043】
同期信号S1とコンパレータ信号S14の位相差は、例えば、適当なチャート標本を顕微鏡観察において顕微鏡視野に設置し、次に、その標本設置状態のまま走査型顕微鏡観察像(LSM像)で画像取得をした際に、このチャート標本の像が顕微鏡観察像とLSM像で一致するようにLSM像側の画像区間範囲を調整した状態における同期信号S1とコンパレータ信号S14の位相差を検出することで取得できる。この所定の位相差のときに走査範囲と画像化区間範囲が一致していることになる。
【0044】
顕微鏡光学系の公差、検出から画像表示手段の電気的遅延などの様々な光学ズレ要因や電気遅延要因があるため、必ずしも位相差がゼロのときに共振画像が良好(走査範囲と画像化区間範囲が一致。)ということではなく、機体差がある。よって、第2PD17には、機体ごとに最適な所定の位相差が調整値として設定されるようになっている。
【0045】
例えば、図6(a)に示すように、共振画像が良好のときに、同期信号S1とコンパレータ信号S14の位相差がアドレスカウント値6であるとする。この場合、図6(b)に示すように、共振画像にずれが生じ、同期信号S1とコンパレータ信号S14の位相差が変化したら(例えば、位相差がアドレスカウント値3に変化。)、これらの位相差がアドレスカウント値6に戻るように、第2PD17により、アドレスカウンタ33が制御されるようになっている。
【0046】
また、第2PD17は、光源101の停止期間および共振スキャナ103aの帰線期間において、位相比較パルス信号S17を発生させるカウント値を変更して、速度信号S5の位相を調整するようになっている。
【0047】
このように構成された本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1の作用について以下に説明する。
走査型観察装置100により試料Aを観察するには、光源101から照明光を発生させ、光変調素子102、走査ユニット103、瞳投影レンズ104および結像レンズ105を介して対物レンズ106により試料Aに照明光を照射する。この場合において、走査ユニット103の作動により、試料A上で照明光が2次元的に走査される。試料Aから戻る戻り光は、対物レンズ106、結像レンズ105、瞳投影レンズ104および走査ユニット103を介して光路を逆方向に戻り、ダイクロイックミラー107により照明光から分岐されて光検出器108により検出される。
【0048】
サンプリングクロック発生装置1においては、走査ユニット103の共振スキャナ103aから出力される同期信号S1から共振スキャナ103aの動作に同期したアドレスクロックが発生される。具体的には、PLL正弦波発生部2において、図7に示すように、PLL回路31により、同期信号S1(ガルバノSync)の整数倍(本実施形態においては、1164逓倍。)のアドレスクロックが生成される。次いで、アドレスカウンタ33により、アドレスクロック数がカウントされ、アドレスカウンタ値が1164カウントになるとゼロにリセットする動作が繰り返される。
【0049】
デコーダ37により、アドレスカウンタ値がゼロのときに位相比較パルス信号S17が発生され、位相比較パルス信号S17が入力の同期信号S1の立ち上りエッジに追従するように制御される。位相比較パルス信号S17の立ち上りが同期信号S1の立ち上りエッジと一致しない場合は、一致するようにクロック周波数を変化させる制御が繰り返される。
【0050】
次いで、位置信号生成部39により、アドレスカウンタ値をアドレスとして、RAM35に記憶されている正弦波波形データが再生される。これにより、同期信号S1に同期し、位相比較パルス信号S17に位相が関連づけられた位置信号S2が生成される。位置信号S2の位相が位相比較パルス信号S17に関連づけられるので、位相比較パルス信号S17を発生させるアドレスカウンタ値を変更すると、RAM35の読み出しアドレスが変更されて位置信号S2の位相がシフト(移相調整)される。
【0051】
位置信号生成部39により生成された位置信号S2は、可変ゲイン調節部3、BPF4を介して位置帰還部5に入力され、位置帰還部5により速度信号S5に変換される。次いで、A/D変換器6により速度信号S5がディジタル速度信号S6に変換され、絶対値処理部7によりディジタル絶対値速度信号S7に変換された後、リニア補正部8を介してD/A変換部9に入力されてアナログ絶対値速度信号S9に変換される。VCO10にアナログ絶対値速度信号S9が入力されると、VCO10によりサンプリングクロックSCが生成されて制御装置114に送られる。
【0052】
制御装置114により、光検出器108により検出された試料Aからの戻り光の強度を、サンプリングクロック発生装置1から送られてきたサンプリングクロックSCに応じたタイミングでサンプリングして並べられる。これにより、試料Aの2次元的な画像が生成される。
【0053】
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1によれば、DE生成部16により、所定数のサンプリングクロックを含む画像化区間信号DEを生成することで、共振スキャナ103aによる走査が有効に行われる画像化区間において、画像情報のサンプリングを精度よく行い、サンプリングした画像情報に基づいて鮮明な画像を生成することができる。これにより、試料Aの観察を良好に行うことができる。
【0054】
ここで、BPF4により出力される速度信号S4は、BPF4の特性により外部環境温度の変化やスキャナ周波数の変化(例えば、走査手段が共振スキャナの場合、環境温度変化によって共振周波数が変化する。)の影響で位相が変化してしまうことがある。例えば、図8に示すように、BPF4通過後の位置信号S4の位相の変動(同図の上から5段目の信号。実線は位相が変動する前の信号を示し、鎖線は位相が変動した後の信号を示している。)は、その後段の速度信号S5,S6、絶対値信号S7,S8,S9、サンプリングクロックSC、そして、画像化区間信号DEにも位相の変動として影響する。
【0055】
その結果、共振スキャナ103aの走査範囲の位相は、外部環境温度やスキャナ周波数に関わらず同期信号S1の特定の位相位置において常に一定であるのに対し、画像化区間範囲の位相は、PLL正弦波発生部2による処理が同期信号S1に同期追従しても、外部環境温度やスキャナ周波数が変化すると、速度信号S5の位相が変動することにより変化してしまう。
【0056】
本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1は、第2PD17により、同期信号S1とコンパレータ信号S14との位相差が比較され、比較結果に応じて、PLL正弦波発生部2により生成される位置信号S2の位相が補正される。例えば、図9に示すように、アドレスクロックのカウント値0で発生させた位相比較パルス信号S17を用いてサンプリングクロックSCを生成した場合において、同期信号S1とコンパレータ信号S14が予め決められた位相差に維持されていると、共振スキャナ103aの走査範囲と画像化区間範囲とが一致している。
【0057】
しかしながら、外部温度変化などの外乱により、図10に示すように、速度信号S5、サンプリングクロックSC、画像有効区間信号DE等の位相が変化すると、共振スキャナ103aの走査範囲と画像化区間範囲にずれが生じる。この場合、同期信号S1とコンパレータ信号S14の位相差が変化することにより、第2PD17によって、図11に示すように、位相比較パルス信号S17を発生させるアドレスカウント値が、例えばカウント値5に変更され、位置信号生成部39により生成される位置信号S2(RAM波形データ)の位相がずらされる。
【0058】
これにより、位置信号S2以降の信号の位相関係が一律にシフトさせられ、最終的なサンプリングクロックSCおよび画像有効区間信号DEの位相もシフトさせられる。同期信号S1の立ち上りエッジとコンパレータ信号S14の立ち上りエッジの時間差が予め決められた位相差に戻されると、共振スキャナ103aの走査範囲に画像化区間範囲が一致させられる。
【0059】
第2PD17による位置信号S2の位相調整は、光源101の停止期間および共振スキャナ103aの帰線期間に行われる。画像取得中に第2PD17が作動すると画像に悪影響が出るため、画像を取得していないタイミングに位置信号S2の位相を補正することで、画像に悪影響を与えるのを回避することができる。なお、光源101の停止期間または共振スキャナ103aの帰線期間に位置信号S2の位相調整を行うこととしてもよい。
【0060】
以上説明したように本実施形態に係るサンプリングクロック発生装置1によれば、共振スキャナ103aによる走査範囲と画像化区間範囲とにずれが生じた場合に、第2PD17により位置信号S2の位相を補正することで、VCO10により生成されるサンプリングクロックSCの位相が適正値に戻され、走査範囲と画像化区間範囲とが一致させられる。したがって、外部環境温度の変化や走査手段の周波数変化等に起因して画像化区間範囲の位相が変動しても、走査範囲を検出する手段を別途設けることなく、サンプリングクロックSCの位相を修正し、共振スキャナ103aの走査範囲に画像化区間範囲を一致させて画像が劣化するのを防ぐことができる。
【0061】
また、VCO10に入力するアナログ絶対値速度信号S9を生成する際に、アナログ信号処理によることなくディジタル信号処理によって絶対値化するので、アナログ信号処理において発生していた信号の立ち上り部分と立ち下り部分における絶対値化後の速度信号波形の僅かな歪みの発生をも防止することができる。
【0062】
その結果、VCO10によってアナログ絶対値速度信号S9に応じた周波数で生成されるサンプリングクロックSCの間隔が非対称に変化するのを防止することができる。これにより、共振スキャナ103aの往路側および復路側に取得された信号を両方とも利用して画像を形成しても画像ズレのない鮮明な画像を取得することができるという利点がある。
【0063】
また、ディジタル信号処理によって絶対値化されたディジタル絶対値速度信号S7に対してリニア補正部8において、オフセットをディジタル信号処理により簡易に付与することができるという利点もある。例えば、オフセット量を増加させると、その瞬間のディジタル絶対値速度信号S7の振幅もオフセット量分だけ増加するので、VCO10から出力される共振スキャナ103aの1周期中のサンプリングクロックSCの数も1164個以上となる。しかし、上述したように、共振スキャナ103aの1周期中のサンプリングクロックSCの数は正確に1164個となるように可変ゲイン調節部3にフィードバックする制御がなされているので、位置帰還部5に入力される入力位置信号S4の振幅は直ちに減少するようにゲインの調節が行われる。
【0064】
これにより、付与するオフセット量に応じて、VCO10に入力される絶対値速度信号が嵩上げまたは嵩下げされ、共振スキャナ103aの1周期中のサンプリングクロックSCの数を1164個に保ったままサンプリングクロックSCの周波数を調節するように、絶対値速度信号の波形を調節することができる。このようにすることで、共振スキャナ103aの個体差により生じる非線形性によって、サンプリングクロックSCの間隔が対称的に変化するのを抑制して、画像ズレのない鮮明な画像を取得することを可能とするサンプリングクロックSCを発生させることができる。オセット量の設定は、手動で行ってもよいし自動的に行うように構成してもよい。
【0065】
本実施形態においては、同期信号S1とコンパレータ信号S14との位相差を比較することとしたが、画像化区間範囲のドリフト(位相変動)を検出するには、温度等によるドリフト発生前のシグナル位相(BPF4通過前の信号の位相)とドリフト発生後のシグナル位相(BPF4通過後の信号の位相)とを比較して、位相のシフト量を検出すればよい。したがって、比較するシグナルはBPF4の通過前と通過後であればどれを選択しても構わないが、正弦波信号の位相を比較するよりは、方形波状のシグナルの位相を比較する方がデジタル回路で実現しやすいメリットがある。
【0066】
また、PLL正弦波発生部2においては、共振スキャナ103aから出力された同期信号S1に一致する位相を有する正弦波からなる位置信号S2を生成することとしたが、同期信号S1が入力されてから最終的なサンプリングクロックSCが生成されるまでには、無視できない遅延時間が発生する。また、共振スキャナ103aの現実の位置と同期信号S1との間にも遅延時間が存在する。さらに、サンプリングクロックSCに基づいて光検出器108により検出された戻り光の強度をサンプリングする制御装置114においても遅延時間が発生する。したがって、PLL正弦波発生部2においては、これらの様々な遅延時間を考慮して、PLL正弦波発生部2から出力される位置信号S2の位相を調節することとしてもよい。これにより、最終的に得られる画像への遅延時間の影響を抑えることができる。
【0067】
また、本実施形態においては、単一のサンプリングクロック発生装置1によって、共振スキャナ103aの往路および復路のサンプリングクロックSCと画像化区間情報DEとを生成することとした。これに代えて、図12に示されるように、2つのサンプリングクロック発生装置1A,1Bを並列に接続したサンプリングクロック発生システム20を採用してもよい。
【0068】
このサンプリングクロック発生システム20には、各サンプリングクロック発生装置1A,1Bで発生した往路側および復路側のサンプリングクロックSCA,SCBと、往路側および復路側の画像化区間の情報DEA,DEBとを合成する合成部21が設けられている。これにより、図13(a),(b)に示されるように往路および復路のサンプリングクロックSCA,SCBと画像化区間情報DEA,DEBとを別々に発生させ、後段の合成部21において、図13(c)に示されるように、合成された往復のサンプリングクロックSCおよび画像化区間情報DEを出力することができる。
【0069】
このようなサンプリングクロック発生システム20によれば、共振スキャナ103aの走査時間や速度変化が往路と復路とで異なっていても、往路側と復路側で異なるゲイン調整およびオフセット量調整を行って、往路に取得した戻り光の光強度と復路に取得した戻り光の光強度とを用いて画像ズレのない良好な画像を取得することができるという利点がある。
【0070】
また、本実施形態においては、速度信号S5をディジタルサンプリングしてA/D変換し、絶対値化処理を行っているが、ディジタルサンプリングに際して信号にノイズが乗ってしまうことがあるため、ディジタルサンプリングされた複数の速度信号値を加算平均して各ディジタル速度信号S6を生成することにしてもよい。例えば、時刻Tにおけるディジタル速度信号S6(T)は、時刻Tよりも以前の2以上のディジタル信号S6(T−1),S6(T−2)を加算平均して求めることにすればよい。
【0071】
これにより、生成されるディジタル速度信号S6およびディジタル絶対値速度信号S7におけるノイズを大幅に低減することができる。
なお、この場合にも、遅延時間が発生するので、位置信号S2の位相の調整にこの演算における遅延時間に対する調整をも加えることより、最終的に得られる画像への遅延時間の影響を抑えることにすればよい。
【0072】
また、本実施形態においては、ディジタル信号に変換した状態で、絶対値化およびリニア補正を行っているが、ディジタル信号処理によれば、絶対値化およびリニア補正に限らず、比較的簡易に種々の信号調整を行うことができる。
【符号の説明】
【0073】
A 試料
SC サンプリングクロック
DE 画像化区間信号(画像化区間情報)
S1 同期信号
S2 位置信号(速度信号)
S5 速度信号
S7 ディジタル絶対値速度信号
S9 アナログ絶対値速度信号
1,1A,1B サンプリングクロック発生装置
2 PLL正弦波発生部(速度信号生成部)
6 A/D変換器(A/D変換部:絶対値速度信号生成部)
7 絶対値処理部(ディジタル演算部:絶対値速度信号生成部)
8 リニア補正部(ディジタル演算部)
9 D/A変換器(D/A変換部:絶対値速度信号生成部)
10 VCO(サンプリングクロック発振部)
16 DE生成部(区間情報生成部)
17 第2PD(位相補正部)
20 サンプリングクロック発生システム
21 合成部(クロック情報合成部)
37 デコーダ(位相比較パルス発生部)
101 光源
103a 共振スキャナ(走査手段)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源からの光を振動しながら反射または屈折して試料に照射する走査手段の前記振動に同期した同期信号に対応する速度信号を生成する速度信号生成部と、
該速度信号生成部により生成された速度信号を絶対値化して絶対値速度信号を生成する絶対値速度信号生成部と、
該絶対値速度信号生成部により生成された絶対値速度信号の値に応じた周波数のサンプリングクロックを生成するサンプリングクロック発振部と、
該サンプリングクロック発振部により生成されたサンプリングクロックに基づいて、所定数のサンプリングクロックを含む画像化区間の区間情報を生成する区間情報生成部と、
該区間情報生成部により生成された区間情報により特定される画像化区間範囲と前記同期信号出力部から出力された同期信号により特定される前記走査手段の走査範囲とにずれが生じた場合に、該走査範囲と前記画像化区間範囲とが一致するように、前記速度信号の位相を補正する位相補正部とを備えるサンプリングクロック発生装置。
【請求項2】
前記同期信号の逓倍の周波数のアドレスクロックを発するアドレスクロック発振部と、
該アドレスクロック発振部から発せられるアドレスクロックをカウントするアドレスカウンタと、
該アドレスカウンタによりカウントされた所定のカウント値の前記アドレスクロックに同期して位相比較パルス信号を発生する位相比較パルス発生部とを備え、
前記速度信号生成部が、前記位相比較パルス信号に前記速度信号の位相を関連づけて該速度信号を生成し、
前記位相補正部が、前記同期信号と前記速度信号との位相差を比較し、これらの位相差が変化した場合に、該位相差が所定の値を維持するように、前記位相比較パルス信号を発生させる前記所定のカウント値を変更する請求項1に記載のサンプリングクロック発生装置。
【請求項3】
前記位相補正部が、前記光源の停止期間および/または前記走査手段の帰線期間に前記速度信号の位相を調整する請求項1または請求項2に記載のサンプリングクロック発生装置。
【請求項4】
前記絶対値速度信号生成部が、前記速度信号生成部により生成された速度信号をA/D変換するA/D変換部と、
該A/D変換部によりA/D変換された速度信号を絶対値化するディジタル演算部と、
該ディジタル演算部により絶対値化された速度信号をD/A変換するD/A変換部とを備える請求項1から請求項3のいずれかに記載のサンプリングクロック発生装置。
【請求項5】
前記絶対値速度信号生成部が、前記絶対値速度信号のオフセット量を調節する線形性補正演算を行う請求項1から請求項4のいずれかに記載のサンプリングクロック発生装置。
【請求項6】
前記絶対値速度信号生成部が、複数の前記速度信号を加算平均して絶対値速度信号を生成する請求項1から請求項5のいずれかに記載のサンプリングクロック発生装置。
【請求項7】
前記走査手段の往路走査期間と復路走査期間において、それぞれサンプリングクロックと画像化区間の区間情報とを出力する2つの並列接続された請求項1から請求項6のいずれかに記載のサンプリングクロック発生装置と、
該サンプリングクロック発生装置により出力された往路走査期間におけるサンプリングクロックおよび区間情報と、前記復路走査期間におけるサンプリングクロックおよび区間情報とを合成するクロック情報合成部とを備えるサンプリングクロック発生システム。
【請求項1】
光源からの光を振動しながら反射または屈折して試料に照射する走査手段の前記振動に同期した同期信号に対応する速度信号を生成する速度信号生成部と、
該速度信号生成部により生成された速度信号を絶対値化して絶対値速度信号を生成する絶対値速度信号生成部と、
該絶対値速度信号生成部により生成された絶対値速度信号の値に応じた周波数のサンプリングクロックを生成するサンプリングクロック発振部と、
該サンプリングクロック発振部により生成されたサンプリングクロックに基づいて、所定数のサンプリングクロックを含む画像化区間の区間情報を生成する区間情報生成部と、
該区間情報生成部により生成された区間情報により特定される画像化区間範囲と前記同期信号出力部から出力された同期信号により特定される前記走査手段の走査範囲とにずれが生じた場合に、該走査範囲と前記画像化区間範囲とが一致するように、前記速度信号の位相を補正する位相補正部とを備えるサンプリングクロック発生装置。
【請求項2】
前記同期信号の逓倍の周波数のアドレスクロックを発するアドレスクロック発振部と、
該アドレスクロック発振部から発せられるアドレスクロックをカウントするアドレスカウンタと、
該アドレスカウンタによりカウントされた所定のカウント値の前記アドレスクロックに同期して位相比較パルス信号を発生する位相比較パルス発生部とを備え、
前記速度信号生成部が、前記位相比較パルス信号に前記速度信号の位相を関連づけて該速度信号を生成し、
前記位相補正部が、前記同期信号と前記速度信号との位相差を比較し、これらの位相差が変化した場合に、該位相差が所定の値を維持するように、前記位相比較パルス信号を発生させる前記所定のカウント値を変更する請求項1に記載のサンプリングクロック発生装置。
【請求項3】
前記位相補正部が、前記光源の停止期間および/または前記走査手段の帰線期間に前記速度信号の位相を調整する請求項1または請求項2に記載のサンプリングクロック発生装置。
【請求項4】
前記絶対値速度信号生成部が、前記速度信号生成部により生成された速度信号をA/D変換するA/D変換部と、
該A/D変換部によりA/D変換された速度信号を絶対値化するディジタル演算部と、
該ディジタル演算部により絶対値化された速度信号をD/A変換するD/A変換部とを備える請求項1から請求項3のいずれかに記載のサンプリングクロック発生装置。
【請求項5】
前記絶対値速度信号生成部が、前記絶対値速度信号のオフセット量を調節する線形性補正演算を行う請求項1から請求項4のいずれかに記載のサンプリングクロック発生装置。
【請求項6】
前記絶対値速度信号生成部が、複数の前記速度信号を加算平均して絶対値速度信号を生成する請求項1から請求項5のいずれかに記載のサンプリングクロック発生装置。
【請求項7】
前記走査手段の往路走査期間と復路走査期間において、それぞれサンプリングクロックと画像化区間の区間情報とを出力する2つの並列接続された請求項1から請求項6のいずれかに記載のサンプリングクロック発生装置と、
該サンプリングクロック発生装置により出力された往路走査期間におけるサンプリングクロックおよび区間情報と、前記復路走査期間におけるサンプリングクロックおよび区間情報とを合成するクロック情報合成部とを備えるサンプリングクロック発生システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
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【図11】
【図12】
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【公開番号】特開2012−255978(P2012−255978A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130039(P2011−130039)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】
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