説明

サンプリング装置

【課題】費用をかけずに短時間で試料を採取できるサンプリング装置を提供すること。
【解決手段】試料回収筒3に開口部5が設けられ、開口部5の軸方向に所定の間隔をおいて、上側が開閉するフラップ式の試料かきとりかえし9が取り付けられる。各試料かきとりかえし9の下縁部には、端部23が固定スプリング17に保持された開閉用ワイヤロープ13が取り付けられる。土壌35から試料33を採取するには、まず、試料かきとりかえし9を閉じた状態で、試料回収筒3を土壌35に所定の深度まで挿入する。次に、開閉用ワイヤロープ13を上方に引いて試料かきとりかえし9を開く。そして、試料回収筒3を土壌35から引き上げて、開いた状態の試料かきとりかえし9で土壌35を掻きとり、開口部5から試料回収筒3の内部31に試料33を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプリング装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地盤改良や遮水壁の施工を行う際には、施工終了後に施工機械を移動してボーリングマシンを設置し、所定の深さ毎に鋼管の挿入と引き上げを繰り返して所定深度までコアを採取した後、採取した試料土に対して施工性能確認試験を実施していた。
【0003】
また、簡易な地盤調査として、原位置においてロッドを地盤に貫入して地盤の性状を判断するスウェーデン式サウンディング試験の際に形成された調査孔を利用した土質採取が行われてきた。調査孔から土質を採取するには、相対回転可能な外管および内管に採取口を設けた二重筒式の土質採取装置が用いられていた。この土質採取装置は、調査孔に挿入して外管および内管の採取口が重なるように外管を回転させた後、二重筒を回転させて内管に設けた採取刃で土質を採取口から採取室に採取し、外管を回転させて採取口を閉鎖して調査孔から引き上げるものであった(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3884723号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ボーリングマシンを用いたコアの採取では、例えば1m毎に鋼管の挿入と引き上げを繰り返すため、深度が深くなると作業時間・費用が増大するという問題点があった。また、施工後にコアを採取して試験を行うため、施工時に地盤土質の変化に対応できなかった。
【0006】
本発明は、前述した問題点に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、費用をかけずに短時間で試料を採取できるサンプリング装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために本発明は、側面の一部に開口部が設けられた試料回収筒と、前記試料回収筒の下端部に設けられた錐形または楔形の先端ガイドと、前記開口部付近に設けられた土かき部と、を具備することを特徴とするサンプリング装置である。
【0008】
サンプリング装置の土かき部は、例えば、試料回収筒の軸方向に所定の間隔をおいて開口部に配置された、上側が開閉するフラップ式の部材である。この場合、サンプリング装置は、土かき部を開閉させる開閉用ワイヤロープと、試料回収筒に設けられ、開閉用ワイヤロープの端部を保持する固定機構とをさらに具備し、土かき部を閉じた状態で試料回収筒を土壌に挿入した後、土かき部を開いて試料回収筒を土壌から引き上げることにより、土かき部で試料を掻き取って開口部から試料回収筒内に回収する。固定機構は、例えば、側面の上端付近に取り付けられた固定スプリングである。
【0009】
サンプリング装置の土かき部は、開口部の試料回収筒の軸方向の縁に試料回収筒から突出するように設けられる場合もある。この場合、サンプリング装置は、試料回収筒の上端部に設けられ、試料回収筒を回転させる回転ハンドルをさらに具備し、試料回収筒を土壌に挿入して所定の回数だけ回転させることにより、土かき部で試料を掻き取って、開口部から試料回収筒内に回収する。
【0010】
試料回収筒は、必要に応じて、複数の筒体を継ぎ足して形成される。
【0011】
本発明のサンプリング装置を用いれば、施工中の作業員により各深度毎の試料を簡単に採取できるため、専門の作業員や大規模な機材が不要となる。また、試料採取後に施工性能確認試験を実施して即時に各深度毎の地盤性状を確認することにより、施工方法を土質変化に対応したものに変更できる。本発明のサンプリング装置は、軟弱地盤の土壌調査にも適用でき、簡易地盤調査が可能である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、費用をかけずに短時間で試料を採取できるサンプリング装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】開閉式のサンプリング装置1の概要図
【図2】試料かきとりかえし9付近の拡大断面図
【図3】サンプリング装置1の水平断面図
【図4】試料採取中のサンプリング装置1を示す図
【図5】回転式のサンプリング装置41の概要図
【図6】試料採取中のサンプリング装置41を示す図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面に基づいて、本発明の第1の実施の形態について詳細に説明する。図1は、開閉式のサンプリング装置1の概要図である。図1の(a)図は、試料かきとりかえし9を閉じた状態でのサンプリング装置1の立面図である。図1の(a)図は、図1の(b)図に示す矢印Cの方向から見た立面図である。図1の(b)図は、試料かきとりかえし9を閉じた状態でのサンプリング装置1の垂直断面図である。図1の(b)図は、図1の(a)図に示す矢印A−Aによる断面図である。図1の(c)図は、試料かきとりかえし9を閉じた状態でのサンプリング装置1の水平断面図である。図1の(c)図は、図1の(a)図に示す矢印B−Bによる断面図である。図1の(d)図は、試料かきとりかえし9を開いた状態でのサンプリング装置1の垂直断面図である。
【0015】
図1に示すように、サンプリング装置1は、試料回収筒3、先端ガイド7、土かき部である試料かきとりかえし9、固定機構である固定スプリング17、開閉用ワイヤロープ13等からなる。試料回収筒3は、断面が矩形の筒体であり、側面21の一部に開口部5が設けられる。試料回収筒3は、必要に応じて、複数の筒体を継ぎ足して形成される。先端ガイド7は、四角錐形の部材であり、試料回収筒3の下端部に固定される。
【0016】
土かき部である試料かきとりかえし9は、試料回収筒3の開口部5の軸方向に所定の間隔をおいて配置される。試料かきとりかえし9は、下側が固定され、上側が開閉するフラップ式の部材である。固定機構である固定スプリング17は、側面21の上方部分21aに固定された取付治具15に取り付けられる。開閉用ワイヤロープ13は、各試料かきとりかえし9の下縁部に設けられた止め具26に取り付けられる。開閉用ワイヤロープ13は、試料回収筒3の上端付近で、側面21の上方部分21aの上端に取り付けられた滑車19に引っ掛けられ、端部23が固定スプリング17に保持される。
【0017】
図2は、試料かきとりかえし9付近の拡大断面図である。図2の(a)図は、図1の(b)図に示す範囲Dの拡大図、図2の(b)図は、図1の(d)図に示す範囲Eの拡大図である。図3は、サンプリング装置1の水平断面図である。図3は、図2の(b)図に示す矢印K−Kによる断面図である。
【0018】
図2および図3に示すように、試料かきとりかえし9の内側面10の下部には、筒体25が固定される。筒体25内にはボルト27が挿入される。試料かきとりかえし9は、試料回収筒3の開口部5の両側方の側面22に設けられたボルト穴(図示せず)にボルト27を通してナット11を締め付けることにより、試料回収筒3に取り付けられる。試料回収筒3の側面22の内側面30には、試料かきとりかえし9の傾斜角度を決定するためのストッパ29が固定される。試料かきとりかえし9の傾斜角度は、土の回収効率と引き上げ抵抗のバランスによって決定される。
【0019】
試料かきとりかえし9を開くには、開閉用ワイヤロープ13を図2の(a)図に示す矢印Jの方向に引く。そして、試料かきとりかえし9を、図2の(b)図に示すように内側面10がストッパ29に接触するまで傾斜させる。
【0020】
次に、サンプリング装置1を用いて試料を採取する方法について説明する。図4は、試料採取中のサンプリング装置1を示す図である。
【0021】
図4の(a)図は、土壌35にサンプリング装置1を挿入する工程を示す。サンプリング装置1を用いて土壌35から試料を採取するには、まず、図4の(a)図に示すように、土かき部である試料かきとりかえし9を閉じた状態で、試料回収筒3を土壌35に所定の深度まで挿入する。挿入には、例えばバイブロハンマを用いる。このとき、先端ガイド7の先端が尖っていることにより、挿入が容易になる。なお、土壌35の深い位置まで試料を採取する場合には、所定の長さ毎に試料回収筒3に筒体を継ぎ足しつつ、土壌35に試料回収筒3を挿入する。
【0022】
図4の(b)図は、試料かきとりかえし9を開く工程を示す。試料回収筒3を土壌35に挿入した後、開閉用ワイヤロープ13を上方に引いて、図4の(b)図に示すように試料かきとりかえし9を開く。試料かきとりかえし9は、開閉用ワイヤロープ13の端部23を固定スプリング17に固定することにより、開状態に維持される。
【0023】
図4の(c)図は、試料33を試料回収筒3の内部31に回収する工程を示す。試料かきとりかえし9を開いた後、図4の(c)図に示すように試料回収筒3を土壌35から引き上げ、引き上げ方向に開いた状態の試料かきとりかえし9で土壌35を掻きとって、開口部5から試料回収筒3の内部31に試料33を回収する。
【0024】
サンプリング装置1は、地盤改良時や、遮水壁の施工時などの地盤調査に適している。地盤改良時の調査では、サンプリング装置1を用いて施工完了箇所で随時各深度毎の改良土壌の試料33を採取し、施工性能確認試験を行う。これにより、各深度毎の改良土壌の性状が即時に確認できる。また、即時試験結果をフィードバックすることにより、後工程に土質変化に対応した施工方法を用いることができる。
【0025】
このように、サンプリング装置1は、構成が簡単であるため、製作費用が安価である。また、通常の作業員が挿入および引き上げを一回行うだけで各深度毎の試料を簡単に採取できるため、ボーリング専門の作業員や機材が不要となり、費用をかけずに短時間で試料を採取できる。サンプリング装置1では、筒体を試料回収筒3に継ぎ足しつつ試料回収筒3を土壌35に挿入した後、試料回収筒3を一度に引き上げることにより、従来のように挿入と引き上げを繰り返すことなく、土壌35の深い部分の試料33を採取できる。
【0026】
さらに、試料採取後に施工性能確認試験を実施して即時に各深度毎の地盤性状を確認することにより、施工方法を土質変化に対応したものに変更できる。サンプリング装置1は、軟弱地盤の土壌調査にも適用でき、簡易地盤調査が可能である。
【0027】
なお、第1の実施の形態では、2本の開閉用ワイヤロープ13を5箇所の試料かきとりかえし9に取り付けたが、開閉用ワイヤロープ13および試料かきとりかえし9の設置数は、上述したものに限らない。また、先端ガイドは錐形でなく楔形でもよい。さらに、試料かきとりかえし9と試料回収筒3との連結方法は、上述したものに限らない。
【0028】
次に、第2の実施の形態について説明する。図5は、回転式のサンプリング装置41の概要図である。図5の(a)図は、サンプリング装置41の立面図を示す。図5の(b)図は、サンプリング装置41の垂直断面図を示す。図5の(b)図は、図5の(a)図に示す矢印F−Fによる断面図である。図5の(c)図は、サンプリング装置41の水平断面図を示す。図5の(c)図は、図5の(a)図に示す矢印G−Gによる断面図である。
【0029】
図5に示すように、サンプリング装置41は、試料回収筒45、先端ガイド51、土かき部である試料回収フィン47、回転ハンドル43等からなる。試料回収筒45は、断面が円形の筒体であり、側面の一部に開口部53が設けられる。試料回収筒45は、必要に応じて、複数の筒体を継ぎ足して形成される。先端ガイド51は、円錐形の部材であり、試料回収筒45の下端部に固定される。
【0030】
土かき部である試料回収フィン47は、開口部53の試料回収筒45の軸方向の縁52に試料回収筒45から突出するように固定される。開口部53には、所定の間隔をおいて補強材49が設けられる。回転ハンドル43は、試料回収筒45の上端の蓋部55に固定される。
【0031】
次に、サンプリング装置41を用いて試料を採取する方法について説明する。図6は、試料採取中のサンプリング装置41を示す図である。
【0032】
図6の(a)図は、土壌55にサンプリング装置41を挿入する工程を示す。サンプリング装置41を用いて土壌55から試料を採取するには、まず、図6の(a)図に示すように、試料回収筒45を土壌55に所定の深度まで挿入する。挿入は、手動等で行う。このとき、先端ガイド51の先端が尖っていることにより、挿入が容易になる。挿入可能な深度は、挿入抵抗・回転抵抗により変化する。なお、土壌55の深い位置まで試料を採取する場合には、所定の長さ毎に試料回収筒45に筒体を継ぎ足しつつ、土壌55に試料回収筒45を挿入する。
【0033】
図6の(b)図および図6の(c)図は、試料59を試料回収筒45の内部57に回収する工程を示す。図6の(b)図は、試料59回収中のサンプリング装置41の立面図である。図6の(c)図は、図6の(b)図に示す矢印I−Iによる断面図である。サンプリング装置41は、試料回収筒45を土壌55に挿入した後、回転ハンドル43を用いて図6の(b)図に示す矢印Hの方向に試料回収筒45を手動で1から2回転させて、土かき部である試料回収フィン47で土壌55を掻きとり、開口部53から試料回収筒45の内部57に試料59を回収する。
【0034】
サンプリング装置41は、地盤改良時や、遮水壁の施工時などの地盤調査に適している。地盤改良時の調査では、サンプリング装置41を用いて施工完了箇所で随時各深度毎の改良土壌の試料59を採取し、施工性能確認試験を行う。これにより、各深度毎の改良土壌の性状が即時に確認できる。また、即時試験結果をフィードバックすることにより、後工程に土質変化に対応した施工方法を用いることができる。
【0035】
このように、サンプリング装置41は、構成が簡単であるため、製作費用が安価である。また、通常の作業員が挿入および引き上げを一回行うだけで各深度毎の試料を簡単に採取できるため、ボーリング専門の作業員や機材が不要となり、費用をかけずに短時間で試料を採取できる。サンプリング装置41では、筒体を試料回収筒45に継ぎ足しつつ試料回収筒45を土壌55に挿入した後、試料回収筒45を一度に引き上げることにより、従来のように挿入と引き上げを繰り返すことなく、土壌55の深い部分の試料59を採取できる。
【0036】
さらに、試料採取後に施工性能確認試験を実施して即時に各深度毎の地盤性状を確認することにより、施工方法を土質変化に対応したものに変更できる。サンプリング装置41は、軟弱地盤の土壌調査にも適用でき、簡易地盤調査が可能である。
【0037】
なお、第2の実施の形態では、補強材49を2箇所に設けたが、補強材49の設置数はこれに限らない。また、試料回収フィン47を1枚の板状材としたが、複数の板状材を直列に配置して試料回収フィンを構成してもよい。また、先端ガイドは錐形でなく楔形でもよい。
【符号の説明】
【0038】
1、41………サンプリング装置
3、45………試料回収筒
5、53………開口部
7、51………先端ガイド
9………試料かきとりかえし
13………開閉用ワイヤロープ
17………固定スプリング
21………側面
33、59………試料
43………回転ハンドル
47………試料回収フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
側面の一部に開口部が設けられた試料回収筒と、
前記試料回収筒の下端部に設けられた錐形または楔形の先端ガイドと、
前記開口部付近に設けられた土かき部と、
を具備することを特徴とするサンプリング装置。
【請求項2】
前記試料回収筒の軸方向に所定の間隔をおいて前記開口部に配置された、上側が開閉するフラップ式の前記土かき部を開閉させる開閉用ワイヤロープと、
前記試料回収筒に設けられ、前記開閉用ワイヤロープの端部を保持する固定機構と、
をさらに具備し、
前記土かき部を閉じた状態で前記試料回収筒を土壌に挿入した後、前記土かき部を開いて前記試料回収筒を前記土壌から引き上げることにより、前記土かき部で試料を掻き取って前記開口部から前記試料回収筒内に回収することを特徴とする請求項1記載のサンプリング装置。
【請求項3】
前記固定機構が、前記側面の上端付近に取り付けられた固定スプリングであることを特徴とする請求項2記載のサンプリング装置。
【請求項4】
前記試料回収筒の上端部に設けられ、前記試料回収筒を回転させる回転ハンドルをさらに具備し、
前記試料回収筒を土壌に挿入して所定の回数だけ回転させることにより、前記開口部の前記試料回収筒の軸方向の縁に前記試料回収筒から突出するように設けられた前記土かき部で試料を掻き取って、前記開口部から前記試料回収筒内に回収することを特徴とする請求項1記載のサンプリング装置。
【請求項5】
前記試料回収筒が、複数の筒体を継ぎ足して形成されることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のサンプリング装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−52466(P2011−52466A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−202705(P2009−202705)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【出願人】(000001373)鹿島建設株式会社 (1,387)
【Fターム(参考)】