説明

サンプルキャリヤの品質を保証する方法

本発明は、体外診断用の分析器具においてサンプルキャリヤにあるサンプルの分析を実行することに関連してサンプルキャリヤの品質を保証する方法であって、前記サンプルキャリヤには前記分析器具に対するサンプルキャリヤの適合性を確認する符号が設けられている方法を提供する。該方法はサンプルキャリヤを分析器具における結像位置まで持ってくること、サンプルキャリヤの像を取得すること、サンプルキャリヤの真正性を識別する符号の存在を検出するために前記の取得した像を分析することを含む。サンプルキャリヤが真正であると識別されると、当該サンプルキャリヤは分析器具での使用が承認され、分析器具はサンプルキャリヤにおけるサンプルの分析を実行できるようにされる。分析はサンプルキャリヤを通して電磁放射線を透過させることによってサンプルを照射することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は体外診断用分析器具(anaysis instrument in vitro diagnosis)におけるサンプルキャリヤ(sample carrier)の使用に関連して該サンプルキャリヤの真正性(genuineness)を保証する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
体外診断用器具は患者の健康状態を診断するために患者から採集したサンプルを分析できるようにする。不正確な分析結果は不正確な診断を導いて、危険な影響を与えかねないので、分析結果は正確であり、特定の誤差範囲にあることが重要である。
【0003】
体外診断医療装置などの使用に関連して患者並びに第三者の健康および環境を保護するために体外診断医療装置に関する指令98/79/EC(Directive 98/79/EC)が最近導入された。体外診断に関する指令に含まれる装置は、所期の状態の下でおよび所期の目的のために使用されるとき、前記装置は患者の臨床状態あるいは安全に対して直接的あるいは間接的に妥協しないように設計および製造されねばならない。それらは製造者によって宣言された分析性能を達成せねばならない。このように、欧州連合は欧州市場において市販されるために体外診断装置が満たすべきある要件を制定した。
【0004】
製造者は分析器具が規定の分析性能内の結果を達成することを保証できることが必要とされる。実際、前記指令によれば、製造者は、患者を危険に陥れる可能性があるかあるいは陥れた何らかの事態の発生を連続的に監視する品質保証システムを有していなければならない。したがって、製造者にとって、分析器具のみならず、当該分析器具に関連して使用されるいずれの付属品も特定の性能要件を満たすことが重要である。従って、診断分析を実行するシステムにおける各部品の品質は製造者が管理する必要性がある。このように、分析器具の製造者は分析器具と共に使用される付属品の品質を管理する必要がある。
【0005】
特に、もしも分析器具がサンプルを保持しているサンプルキャリヤを通して電磁放射線を透過させることによってサンプルを照射することを含む分析を実行するのであれば、サンプルキャリヤの品質が分析の結果に大きく影響しうる。質の悪いサンプルキャリヤは分析結果を不正確としうる。分析性能あるいは分析結果の精度を知るには、製造者はサンプルキャリヤの品質の変動を知っておく必要がある。
【0006】
このように分析器具の性能を保証できるようにするためには、分析器具の製造者には分析器具での分析に使用すべきサンプルキャリヤの品質の管理を増強させることが望まれる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は分析器具の製造者が体外診療に用いられる正確な測定結果を保証できるようにすることである。本発明の別の目的は、分析器具の製造者が分析器具において使用されるべきサンプルキャリヤの出所(origin)を管理できるようにしてやることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のこれら、およびその他の目的は本発明の特許請求の範囲の独立項に記載の方法によって達成される。
【0009】
このように、本発明は、体外診断に使用する分析器具のサンプルキャリヤにおけるサンプルの分析を実行することに関連してサンプルキャリヤの品質を保証する方法であって、このサンプルキャリヤには分析器具に対するサンプルキャリヤの適合性を識別する符号が設けられているサンプルキャリヤの品質を保証する方法を提供する。本方法は、サンプルキャリヤを分析器具における結像位置まで持ってくる段階と、サンプルキャリヤの像(image)を取得する段階と、サンプルキャリヤの真正性を識別するための符号の存在を検出するために取得した像を分析する段階を含む。サンプルキャリヤが真正なものであると識別された場合、該サンプルキャリヤは分析器具において使用することが承認され、分析器具はサンプルキャリヤにあるサンプルの分析を実行することができるようにされる。分析はサンプルキャリヤを通して電磁放射線を透過させることによってサンプルを照射することを含む。
【0010】
本発明は真正なサンプルキャリヤが使用されなければ体外診断用器具が作動しないように体外診断用器具に統合された自動制御を提供する。このことは、当該器具の製造者はサンプルキャリヤの品質とは無関係には当該器具からの正確な結果を保証する責任はないことを意味する。製造者は、サンプルキャリヤの出所が既知である場合にのみ分析器具が分析を実行できるように手配すればよい。このように、製造者は出所並びに品質が未知であるサンプルキャリヤには当該分析器具が使用できないようにすれば良い。分析器具は(例えば分析器具の製造者によってあるいはそれの管理の下に製造された)実際に真正であるサンプルキャリヤに対してのみ使用できるようにされるので、分析器具の製造者は当該器具に使用されているサンプルキャリヤの品質を知っており、その分析器具から得られる結果において誤差を生ぜしめるような品質の悪いサンプルキャリヤについて心配する必要は無い。このように、製造者は分析結果に対するサンプルキャリヤの作用を管理しているので体外診断についての指令によって要求されている品質保証システムはより容易に管理することができる。
【0011】
詳しくは、分析器具は当該分析器具において照射されているサンプルからの光学的応答に基づいて測定を実行するようにしうる。そのような場合、サンプルはサンプルキャリヤを通して照射される必要があり、前記サンプルキャリヤの光学的特性がその結果に影響する。もしもサンプルキャリヤが粗い面を有するか、あるいは望ましくない材質からなる場合、サンプルキャリヤはその結果に顕著に影響を与えうる。分析器具は品質が既知のサンプルキャリヤにおけるサンプルのみ分析できるようにしうるので、正確な結果を受領する可能性が大きく改善される。
【0012】
サンプルキャリヤは分析器具のキャリッジに位置させればよく、前記キャリッジはサンプルキャリヤを結像位置まで、そしてもしも前記サンプルキャリヤが真正なものであると識別されるとすれば更に分析位置まで運ぶように配備すればよい。このことは、サンプルキャリヤが自動的に結像位置と分析位置との間で搬送されること、およびサンプルキャリヤが真正であると識別された後はそのサンプルキャリヤを変えることはできないことを意味している。
【0013】
分析作業は符号における特定の特徴の存在を検出することを含みうる。このように、分析作業は容易に確認しうる符号の何らかの特徴を単に識別すればよいように手配しうる。このことによって像分析に対する要件の達成をかなり簡素化する。
【0014】
符号は、分析器具の製造者が管理しうる品質を有するサンプルキャリヤを分析器具が単に受け入れるようにサンプルキャリヤの出所を示すことが好ましい。したがって、符号は商標、ロゴタイプ、あるいはサンプルキャリヤの製造者を示す文章としてもよい。
【0015】
添付図面を参照して本発明を例として以下詳細に説明する。
【0016】
さて、図1を参照して、サンプルキャリヤの真正性を保証する方法が説明される。本方法はサンプルキャリヤにあるサンプルに対してなされている測定に関連して実行される。したがって、使用者はサンプルをサンプルキャリヤに装入する。サンプルは典型的には、例えば血液のような体液から構成されている。本発明は毛管作用によってサンプルを受け入れる空洞を有するキュベットの形態のサンプルキャリヤに使用するのに適している。サンプルは、キュベットを刺された指からの血液と接触させ、それによってサンプルが毛管作用によりサンプルキャリヤ中へ吸引されて採集することもできる。
【0017】
次いで、ステップ2で、使用者はサンプルを分析するために使用されるべき分析装置を始動させる。ステップ4で、今やキャリッジが分析装置から突出されるので、使用者はサンプルキャリヤをキャリッジに位置させることができる。次いで、ステップ6で、分析器具はサンプルキャリヤが結像位置まで持ってこられるようにキャリッジを動かす。ステップ8で、分析器具におけるデジタルカメラが結像位置においてサンプルキャリヤの像を記録する。鮮明な像を得ることができるように像を記録している間サンプルキャリヤを照射することができる。ステップ10で、取得された像はデジタルカメラから分析器具の処理装置へ伝送される。ステップ12で、処理装置は取得された像を分析する。処理装置は、サンプルキャリヤの真正性すなわち出所を識別する符号を区別する1個以上の特徴を像において検出するようにプログラム化しうる。例えば、具体的な特徴としては符号の外形あるいは外形の一部としうる。符号は、例えば商標、ロゴタイプ、サンプルキャリヤの出所を識別する文章でよく、それによって特定の製造者のみが前記符号の使用が許可される。このように、前記信号の存在は当該サンプルキャリヤがある製造者によって製造されたこと、および前記サンプルキャリヤの品質は既知であり、かつ許容される範囲内にあることを保証する。
【0018】
ステップ14で、サンプルキャリヤが真正なものであることが識別されたなら、分析器具は当該サンプルに対して分析を実行することができる。次いで、ステップ16で、キャリッジは測定位置まで持ってこられる。ここで、サンプルは該サンプルとサンプルキャリヤを通して光線を透過させることによって照射される。ステップ18で、透過された光線が検出され、検出された光線はサンプルを分析するために分析される。
【0019】
図2を参照して、その出所を識別するための符号を有するサンプルキャリヤ100を説明する。サンプルキャリヤ100は該サンプルキャリヤ100におけるサンプルを分析する間光線に照射されない基部分100を含む。したがって、作業者は分析結果に何ら障害を生ぜしめることなく基部分102でサンプルキャリヤ100に触れ、かつ掴むことができる。更に、サンプルキャリヤ100には符号104が設けられており、それは基部分102にプリントされている。したがって、前記のプリントされた符号104はサンプルの分析の間サンプルキャリヤ100を透過されている光線には干渉しない。本図において前記符号104は具体的には絵と「HemoCue」という文字であるヘモキュー社(HemoCue AB)の商標である。この符号104の存在は、像分析によって前記絵の外形および塗りつぶした円並びに「HemoCue」の文字を識別することによって検出することができる。このことは、符号104が前記基部分102の極めて正確な位置にプリントされていることが重要でないことを意味する。更に、符号104の存在はある程度損なわれていても構わない。符号104の全体の外観が完全である限り、符号104の存在は正確に検出しうる。このように、サンプルキャリヤ100上での前記符号104のプリントは極めて正確である必要はない。
【0020】
サンプルキャリヤ100は更に、サンプルを受け取るように配置されたサンプル受取り空洞106を含む。サンプルは毛管作用によって前記サンプル受取り空洞106中へ導入しうる。サンプル受取り空洞106の少なくとも壁は光線透過性であり、そのためサンプルを分析するために光線をサンプル受取り空洞106内のサンプルを通して透過させることができる。
【0021】
さて図3を参照して、分析器具200の構成を説明する。分析器具200は、モータに接続されたキャリッジ202と、キャリッジ202の動きを制御するための制御装置(図示せず)とを含む。分析器具がオンにされると、キャリッジ202はサンプルキャリヤ100を受け取るために突出しうる。代替的に、キャリッジ202は手で突出させるか、あるいはサンプルキャリヤ100をキャリッジ202に位置させうるように蓋を開いてもよい。制御装置はキャリッジ202を結像位置および測定位置まで動かすように配備されており、キャリッジ202は図3ではこれらの位置において点線で示されている。分析器具200は更に、結像位置においてサンプルキャリヤ100を観察するために配置されているカメラ204を含む。前記カメラ204はサンプルキャリヤ100の平面図を記録するように配置されている。分析器具200はまた、取得された像の明るさを向上させ、かつサンプルキャリヤ100の符号104の存在を検出し易くするために結像位置においてサンプルキャリヤ100を照射するための光源(図示せず)を含みうる。カメラ204は符号104の存在を検出するために像分析を実行するように配置された処理装置206に接続されている。分析器具200は更に、測定位置に配置された光源208と検出器210を含む。光源208と検出器210とは測定位置に位置されるとサンプルキャリヤ100の両側に配置される。このように、検出器210はサンプルキャリヤ100におけるサンプルを透過してきた光線を検出する。光源208は一つあるいはそれ以上の特定の波長で光線を発する1個以上の発光ダイオードでもよい。しかしながら、光源208はある範囲の波長あるいは一つあるいはそれ以上の特定の波長で発光するその他のいずれかの種類の光源でもよい。検出器210は透過された光線の量を検出するフォトダイオードを含んでいてもよい。このように、第一の波長で発光され、次いで、フォトダイオードが第一の波長の発光された光線の量を検出しうる。その後、第二の波長が発光され、フォトダイオードが第二の波長の透過光線の量を検出する。代替的に、検出器210はプリズムあるいは回折格子あるいはその他いずれかの種々の波長の光線を分割する手段、および種々波長の光線の量を検出するCCD(電荷結合素子)から構成してもよい。更に、検出器210はサンプルの所望の特徴を確定するために検出された光線を分析しうる処理装置206に接続される。分析器具200は更に、ディスプレイ(図示せず)を含んでもよく、分析装置206は前記ディスプレイ上にサンプルの分析結果を出力するように配置される。
【0022】
本明細書において説明した好適実施例は何ら限定的でなく、かつ特許請求の範囲によって規定された保護の範囲内において多数の代替実施例が可能であることを強調しておくべきである。
【0023】
例えば、キャリッジ202は、キャリッジ202にサンプルキャリヤ100を位置させるために使用者がキャリッジ202を手作業で突出させ、次いでキャリッジ202を結像位置および測定位置へ押し込むという点において手作業で制御しうる。別の代替例として、キャリッジ202は、使用者がキャリッジ202をロックされた突出位置から解除すると該キャリッジ202を結像位置まで持ってくるばねに接続してのよい。また、手作業による取り扱いとばねあるいはモータによる作動とのいずれかの組み合わせを使用してキャリッジ202を突出位置、結像位置および測定位置の間に移動させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例によるサンプルキャリヤの真正性を保証する方法のフローチャートである。
【図2】サンプルキャリヤの真正性を識別する符号を示すサンプルキャリヤの概略図である。
【図3】サンプルキャリヤの真正性を分析する構成(set−up)の概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体外診断用の分析器具においてサンプルキャリヤにあるサンプルの分析を実行することに関連してサンプルキャリヤの品質を保証する方法であって、前記サンプルキャリヤには前記分析器具に対する当該サンプルキャリヤの適合性を確認する符号が設けられている方法において、
前記サンプルキャリヤを前記分析器具の結像位置まで持ってくること、
前記サンプルキャリヤの像を取得すること、
前記サンプルキャリヤの真正性を識別する符号の存在を検出するために前記の取得された像を分析すること、
前記サンプルキャリヤが真正であると確認されると、前記サンプルキャリヤを前記分析器具において使用することを承認し、該分析器具が前記サンプルキャリヤにおけるサンプルの分析を実行できるようにさせることと、を含み、
前記分析が前記サンプルキャリヤを通して電磁放射線を透過させることによってサンプルを照射すること、を含むことを特徴とするサンプルキャリヤの品質を保証する方法。
【請求項2】
前記サンプルキャリヤが前記分析器具においてキャリッジに置かれ、前記キャリッジは、前記サンプルキャリヤが真正なものであることが確認されるとすれば、前記サンプルキャリヤを結像位置まで、そして更に分析位置まで運ぶように配置されていることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記分析が前記符号における特定の特徴の存在を検出することを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記符号が商標であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記符号がロゴタイプであることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記符号が文章であることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記像がカメラによって取得されることを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプルキャリヤが血液のサンプルを取得するようにされたキュベットであることを特徴とする請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−524044(P2009−524044A)
【公表日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−551224(P2008−551224)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【国際出願番号】PCT/SE2007/000061
【国際公開番号】WO2007/086794
【国際公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(500154353)ヘモク アクチボラゲット (11)
【Fターム(参考)】