説明

サンプルホルダー

【課題】円柱状、円筒状、球状の試料をホルダーの所定位置に確実かつ安定的に保持することができるサンプルホルダーを提供することを目的とする。
【解決手段】円筒状のホルダー本体1と、複数の分割部に分割され上記ホルダー本体内に格納された円形ブロック状の治具3とを具備し、かつ上記治具3の上面中央部には断面V字状の保持凹部32が形成されていると共に、該治具3の径が上記ホルダー本体1の内径よりも小さく設定されており、上記保持凹部32に試料を載置すると共に上記治具の各分割部31を外側に移動させて上記ホルダー本体1内周面に当接させ、この状態で上記試料sを治具3の上面に保持するサンプルホルダーを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光X線分析や光学系顕微鏡などによる光学系の測定・検査を行う際に、試料を保持するためのサンプルホルダーに関し、更に詳述すると、円柱状や球状の試料を所定位置に確実かつ安定的に保持することができるサンプルホルダーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、蛍光X線測定を行う際には、測定試料を所定のホルダーに保持してX線を照射することが行われるが、この場合のホルダーとしては、通常図4に示されたものが一般に使用される。
【0003】
即ち、従来用いられているホルダーは、図4の通り、底壁を有する円筒状のホルダー本体1と、該ホルダー本体1内に配設された高さ調節用の円形ブロック状の保持台6と、中央部にX線照射用の貫通穴21が形成された蓋体2とで構成されており、保持台6上に載せた試料sに蓋体2の貫通穴21を通してX線を照射し、その蛍光を測定するようになっている。なお、図4中の5は、高さ調節のためのスペーサである。
【0004】
しかしながら、このようなホルダーの場合、図4のように、試料sが円柱状、円筒状、球状などである場合、保持台6上に安定的に載置保持することが必ずしも容易ではなく、測定位置を上記貫通穴21の中心に位置させた状態で確実に保持することが困難である。
【0005】
この場合、蛍光X線測定では、測定箇所(測定面)の高さや形状がX線強度に影響を与え、試料を所定高さ及び位置に正確に保持して測定を行わなければ、高精度の測定を行うことはできない。特に測定面が曲面となる円柱状、円筒状、球状の試料sの場合、精度よく分析を行うためには、常にホルダーの同一位置に確実に試料を保持する必要があるが、従来のホルダーでは、このような円柱状、円筒状、球状の試料sの場合にはホルダーの中心位置に確実に保持することが困難であった。
【0006】
また、X線分析などに用いられるサンプルホルダーが特開平8−233755号公報(特許文献1)や特開2003−202222号公報(特許文献2)にも開示されているが、いずれも円柱状、円筒状、球状の試料を確実かつ安定的に保持し得るものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−233755号公報
【特許文献2】特開2003−202222号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、円柱状、円筒状、球状の試料をホルダーの所定位置に確実かつ安定的に保持することができ、円柱状、円筒状、球状の試料につき蛍光X線分析や光学系顕微鏡などによる光学系の測定・検査を行う際に好適に使用されるサンプルホルダーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するため、蛍光X線分析や光学系顕微鏡などによる光学系の測定・検査を行う際に試料を所定の測定・検査位置に保持するサンプルホルダーであって、底壁を有する円筒状のホルダー本体と、中心を通る分割面により複数の分割部に分割されており、上記ホルダー本体内に格納された円形ブロック状の治具とを具備し、かつ、上記治具の上面中央部には試料が載置される断面V字状の保持凹部が形成されていると共に、上記各分割部を接合した状態の該治具の径が上記ホルダー本体の内径よりも小さく設定されており、上記保持凹部に試料を載置すると共に上記治具の各分割部を外側に移動させて上記ホルダー本体内周面に当接させ、この状態で上記試料を治具の上面に保持するように構成されたサンプルホルダーを提供する。
【0010】
即ち、本発明のサンプルホルダーは、上記のように、試料が載置される治具が中心を通る分割面で複数の分割部に分割された円形ブロック状(短軸円柱状)であり、この治具の上面中央部に断面V字状の保持凹部が形成されているため、各分割部を外側に移動させてホルダー本体の内周面に当接させることにより、上記保持凹部の中心が必ずホルダー本体の中心に位置するようになっている。このため、この保持凹部内に試料を載置して各分割部を上記ホルダー本体内周面に当接させた状態とすることにより、試料を確実かつ安定的にサンプルホルダーの中心にセットすることができ、試料が円柱状、円筒状、球状など、測定・検査面が曲面のものであっても、サンプルホルダーの中心に正確にセットすることができ、高精度の測定・検査を行うことができるものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のサンプルホルダーによれば、蛍光X線分析や光学系顕微鏡などによる光学系の測定・検査を行う際に、試料が円柱状、円筒状、球状などの不安定な形状であっても所定位置に確実かつ安定的に保持することができ、高精度な測定・検査を確実かつ容易に行うことができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明サンプルホルダーの一例を示す一部を断面とした斜視図である。
【図2】同カップホルダーを示す断面図である。
【図3】同カップホルダーに試料をセットした状態を示す断面図である。
【図4】従来のカップホルダーに試料をセットした状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
【実施例】
【0014】
図1〜3は、本発明の一実施例にかかるサンプルホルダーを示すもので、底壁を有する円筒状のホルダー本体1と、中央部に測定用の貫通穴を有する蓋体2と、ホルダー本体1内に収容された治具3と、該治具3の高さを調節するスペーサ4と、該スペーサ4と上記治具3との間に配置された滑りプレート5とを具備している。
【0015】
上記治具3は、上面中央に直径方向に沿ってV字溝状の保持凹部32が形成された円形ブロック状(短軸円柱状)の部材であり、上記保持凹部32の底辺と一致し治具の中心を通る分割面により2つの分割部31,31に分割されている。そしてこの治具3は、上記分割面を接合した状態において、その直径が上記ホルダー本体1の内径よりも小さくなるように設定されている。
【0016】
この治具3は、上記スペーサ4上に上記滑りプレート5を介して載置されており、このスペーサ4によって試料sの大きさや形状に応じて高さが調節されるようになっている。また、上記滑りプレート5は、上記治具3の各分割部31がスムーズにスペーサ4上をスライド移動させるために配設されるものであり、スペーサ4上を直接スムーズにスライド可能であれば省略することができる。
【0017】
上記蓋体2には、その中央部に測定・検査用の貫通穴21が形成されており、図3に示されているように、ホルダー本体1の上部に被せた状態で貫通穴21がホルダー本体の中心位置と一致するようになっている。この場合、特に図示していないが、蓋体2の周壁内周面とホルダー本体1の周壁上部外周面には互いに螺合するネジが形成されており、蓋体2はホルダー本体1上部にネジ式に取り付けられるようになっている。そして、このネジ式の蓋体2をしっかりと廻し込むことにより、試料s、治具3、滑りプレート5及びスペーサ4が押圧され、スペーサ4の作用によって常にサンプルホルダーが一定の高さになり、試料sを確実に保持した状態でサンプルホルダーの高さを常に一定の高さに設定することができるので、各種測定機器のオートサンプラーにも良好に適用し得るようになっている。
【0018】
このサンプルホルダーを用い、例えば円柱状の試料sについて蛍光X線測定等を行う場合、図1に示されているように、上記治具3の保持凹部32状に試料sを載置する。そして、治具3の両分割部31,31を共に外側へと移動させ、図3に示されているように、量分割部31,31をホルダー本体1の内周面に当接させる。この際、試料sにある程度の重量がある場合には、試料sの自重により自然に両分割部31,31が外側へと移動するが、試料sの自重により分割部31がスムーズに移動しない場合には、手作業により両分割部31,31を外側へと移動させればよい。
【0019】
この作業により、図3に示されているように、試料sが治具3の保持凹部32に安定的に保持され、サンプルホルダーの中心部に確実に保持される。この状態で、蓋体2をホルダー本体1に被せ、測定装置の所定位置にサンプルホルダーをセットし、上記蓋体2の貫通穴21を通して所望の測定・検査を行う。例えば、貫通穴21を通して試料sの表面にX線を照射し、蛍光X線測定を行うことができるものである。
【0020】
このように、本例のサンプルホルダーは、試料sが載置される治具3が中心を通る分割面で2つの分割部31,31に分割された円形ブロック状(短軸円柱状)であり、この治具の上面中央部にV字溝状の保持凹部32が形成されているため、各分割部31,31を外側に移動させてホルダー本体1の内周面に当接させることにより、上記保持凹部32の中心が必ずホルダー本体1の中心に位置するようになっている。このため、この保持凹部32に試料sを載置して各分割部31,31を上記ホルダー本体1内周面に当接させた状態とすることにより、試料sを確実かつ安定的にサンプルホルダーの中心にセットすることができ、試料sが円柱状、円筒状など、測定・検査面が曲面のものであっても、サンプルホルダーの中心に正確にセットすることができ、高精度の測定・検査を行うことができるものである。
【0021】
なお、本発明のサンプルホルダーは、光学系の測定や検査を行う際に好適に使用されるものであるが、光学系の測定や検査としては、蛍光X線分析、X線回折、光学系顕微鏡による検査などが例示される。
【0022】
以上、実施例を示して本発明のサンプルホルダーにつき詳述したが、本発明のサンプルホルダーは、上記実施例に限定されるものではなく、種々変更することができる。例えば、上記実施例では、保持凹部32を断面V字状の溝とし、円柱状又は円筒状の試料sを保持するようにしたが、逆円錐状(漏斗状)の凹部として球状の試料を保持するようにしてもよい。この場合、治具3を3等分又はそれ以上の分割部に分割することも試料を中心に保持する上で好適である。また、測定・検査の種類によっては蓋体2を省略することもできる。更に、その他の構成についても本発明の要旨を逸脱いない範囲で適宜変更して差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明のサンプルホルダーは、蛍光X線分析や光学系顕微鏡などによる光学系の測定・検査を行う際に、試料を保持するホルダーとして利用される。
【符号の説明】
【0024】
1 ホルダー本体
2 蓋体
21 貫通穴
3 治具
31 分割部
4 スペーサ
5 滑りプレート
s 試料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光X線分析や光学系顕微鏡などによる光学系の測定・検査を行う際に試料を所定の測定・検査位置に保持するサンプルホルダーであって、
底壁を有する円筒状のホルダー本体と、
中心を通る分割面により複数の分割部に分割されており、上記ホルダー本体内に格納された円形ブロック状の治具とを具備し、
かつ、上記治具の上面中央部には試料が載置される断面V字状の保持凹部が形成されていると共に、上記各分割部を接合した状態の該治具の径が上記ホルダー本体の内径よりも小さく設定されており、上記保持凹部に試料を載置すると共に上記治具の各分割部を外側に移動させて上記ホルダー本体内周面に当接させ、この状態で上記試料を治具の上面に保持するように構成されたサンプルホルダー。
【請求項2】
中央部に測定・検査用の貫通穴を有し、上記ホルダー本体の上部に被せられる蓋体を具備し、上記ホルダー本体に被せられた該蓋体の貫通穴を通して試料の測定・検査を行う請求項1記載のサンプルホルダー。
【請求項3】
上記治具が、上記保持凹部として直径方向に沿ったV字溝が形成されていると共に、該V字溝の中心線に沿って2分割されたものである請求項1又は2記載のサンプルホルダー。
【請求項4】
上記治具の高さを調節するためのスペーサを具備し、該スペーサ上に直接又は滑りプレートを介して上記治具が載置される請求項1〜3のいずれか1項記載のサンプルホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−249760(P2010−249760A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−101591(P2009−101591)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】