サンプル中の抗原応答性細胞の検出
本発明は、抗原−主要組織適合抗原複合体(MHC)などの多元標識付け抗原提示化合物を用いてサンプル中の抗原応答性細胞を検出するための方法に関する。さらに、本発明は、血液サンプルなどの好ましくは単一のサンプルであるサンプル中の抗原応答性細胞を検出するための、抗原−主要組織適合抗原複合体(MHC)などの本多元標識付け抗原提示化合物の使用に関する。本方法は、T細胞およびB細胞などの特異性抗原応答性細胞の高スループット分析を可能にし、これにより、たとえば、疾患または病状のモニタ、および免疫療法薬、ワクチン、または同定エピトープもしくは免疫原性アミノ酸配列の開発のための高スループットの方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、主要組織適合抗原複合体(MHC)などの多元標識付け抗原提示化合物を用いてサンプル中の抗原応答性細胞を検出するための方法に関する。さらに、本発明は、サンプル、血液サンプルなどの好ましくは単一のサンプルであるサンプル中の抗原応答性細胞を検出するための、抗原−主要組織適合抗原複合体(MHC)などの本多元標識付け抗原提示化合物の使用に関する。本方法は、T細胞およびB細胞などの特異性抗原応答性細胞の高スループット分析を可能にし、それにより、たとえば、疾患または病状のモニタ、および免疫療法薬、ワクチンまたは同定エピトープもしくは免疫原性アミノ酸配列の開発のための高スループットの方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
T細胞およびB細胞などの抗原応答性細胞は、とりわけ、クローン特異性T細胞レセプタ(TCR)を用いて疾患特異性ペプチド−主要組織適合抗原複合体(MHC)の存在をモニタすることにより、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を認識することができる。ヒトT細胞の組合せプール上で発現される異なるTCRのレパートリは広く、約2500万と推定される(Arstila et al., 1999)。
【0003】
疾患または病状のモニタおよび免疫療法薬またはワクチンの開発のためには、無関係な抗原応答性細胞、すなわち抗原特異性レセプタを備えない細胞の大きなプール内で、たとえば、クローン特異性T細胞レセプタ(TCR)、ペプチド−MHC(pMHC)複合体などの特異性抗原−MHC(aMHC)複合体を認識するが、T細胞およびB細胞などのそれらの特異性抗原応答性細胞のみを検出、同定、または単離することができることが必須である。
【0004】
Altman et al., 1996によって初めて示されたように、フローサイトメトリによって抗原特異性T細胞を検出するのに、蛍光色素に結合される可溶性多量化(multimeric)pMHC複合体を用いることができる。これらの蛍光MHCマルチマーの使用は、研究および臨床モニタの両者でT細胞モニタの基礎となっている。
【0005】
しかしながら、単一の生体サンプルについて数個の抗原特異性しか(しばしば1つしか)モニタできないことによって、抗原特異性T細胞の応答性検出のためのMHCマルチマーフローサイトメトリの使用の主な限界が形成されている。この限界は、励起もしくは発光スペクトルのいずれかによって区別可能な、またはフローサイトメトリで検出可能な限られた数の「チャネル」、すなわち蛍光色素などの異なる標識によるものであり、これは一般的に入手可能な単一の末梢血サンプルなどの限られた量の生体材料内で分析可能なT細胞応答の数に対して厳しい限界を形成してしまう。
【0006】
たとえば、生体材料を分析して、感染症または癌の際に起こり得るものなどの自然発生的免疫応答をモニタする。さらに、免疫応答に対するワクチンを含む免疫療法薬の効果について生体材料を分析する。本明細書中で用いられるような免疫療法薬は、ワクチン、非特異性免疫刺激物、免疫抑制剤、細胞に基づいた免疫療法薬、およびその組合せを含む、免疫応答を高めるまたは抑えることを目的とする医学的介入における活性成分として定義される。
【0007】
新たな無機蛍光色素として最近量子ドット(Qdot)が開発され、かつフローサイトメトリ装置の複数パラメータ検出可能性が着実に大きくなっているにもかかわらず、pMHCマルチマー染色による単一のサンプルで分析される異なるT細胞集団の最大数は4に留まっている(Chattopadhyay et al., 2006)。
【0008】
いくつかのグループがいわゆるMHCマイクロアレイを開発しようとしていることにより、抗原特異性T細胞応答のより包括的な分析を可能にする技術の開発の必要性が強調されている。これらの系では、T細胞特異性は蛍光色素によってエンコードされるのではなく、空間的にエンコードされる(Soen et al., 2003およびStone et al., 2005)。それらの有望さにもかかわらず、MHCマイクロアレイは広く採用されておらず、たとえばエピトープ同定などのT細胞応答の多量化測定においてその値が文書化された例を入手できない。
【0009】
単一のサンプルに対して行なうことができる分析の数を増やす多数の設定において組合せコーディング(combinatorial coding)システムが用いられている。Qdotの分野での具体例は、遺伝子型決定を行なうQdotでコードされたマイクロビーズの使用によって形成される(Xu et al., 2003)。さらに、組合せコーディングは、エンコーディングがビーズの大きさ、蛍光色素、および蛍光色素の強度(たとえばBDサイトメトリックビーズアレイ)の変化によって行なわれる、ビーズアレイを用いたサイトカインなどの血清製品の測定に用いられてきた。すべてのこれらの例で、溶質は、予めエンコードされたマイクロビーズへの結合によって分析される。
【0010】
以上を考慮すると、当該技術分野では、高スループットでの抗原特異性T細胞などの特異性抗原応答性細胞の検出、単離および/または同定を可能にする方法の必要性が残る。
【0011】
さらに、利用可能なサンプルの量がしばしば限定されていることを考慮すると、当該技術分野では、単一のサンプル中のT細胞などの特異性抗原応答性細胞の複数の種の検出、単離および/または同定を可能にする方法の必要性が残る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、とりわけ、本発明の目的は、好ましくは高いスループットで、たとえば単一の末梢血サンプルである単一のサンプル中などの比較的少量の生体材料中の抗原特異性細胞の複数の種を検出するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
とりわけ、この目的は、添付の請求項1に規定されるような方法によって満たされる。
具体的に、この目的は、(末梢血サンプルなどの生体材料の)サンプル中の抗原応答性細胞を検出するための方法であって、
少なくとも1つの標識を保持する抗原提示化合物に2つ以上の予め定められた抗原を負荷するなどして付与するステップを備え、各々の抗原は少なくとも2つの異なる標識で表わされ(エンコードされ)、さらに
抗原付与された当該抗原提示化合物を当該サンプルと接触させるステップと、
抗原負荷された当該抗原提示化合物の、当該抗原応答性細胞への結合を検出し、これにより当該抗原に応答する細胞を検出するステップとを備え、
当該抗原は、当該抗原を負荷された当該抗原提示化合物によって抗原応答性細胞に結合される当該少なくとも2つの異なる標識の存在を検出することによって検出される、方法によって満たされる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態に従うと、上記2つ以上の予め定められた抗原は、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、20以上、21以上、22以上、23以上、24以上、25以上、26以上、27以上、および28以上からなる群から選択される。
【0015】
本発明は、抗原提示化合物の規定された組合せの結合によって形成される組合せコードの分析により組合せコーディングの概念を拡張する。
【0016】
具体的に、本発明は、同じ標識を何度も用いて、蛍光色素などの標識の一意な組合せに各々連結される抗原提示化合物の使用により、単一のサンプル中で多数の抗原特異性細胞応答を同時に分析可能であるが、これは毎回蛍光色素などの1つ以上の他の標識との一意な組合せで行なわれるという発見に基づいている。
【0017】
先行技術に対して、これは、アッセイに特異性のあるコードの新規な作製に係り;これは溶質よりもむしろ細胞の分析に係り;かつこれは抗原特異性細胞応答の並列分析のための組合せコーディングの使用に係る。
【0018】
抗原特異性細胞の交差反応性が高いという広く持たれている見方にも拘らず、得られたデータは、組合せコーディングによる細胞の検出が実際的かつ現実的可能性であることを示している。組合せコーディングの値は、メラノーマ患者からの末梢血中のメラノーマ関連抗原特異性T細胞応答の解析により、本発明に従って例示される。
【0019】
先行する研究は、両者ともが異なる蛍光色素に連結される、抗原特異性T細胞を含有する2つのMHCマルチマーまたは関連のペプチドの結合による抗原特異性T細胞を検出すること、したがって単一のサンプル中の単一の抗原の検出、が実施可能であることを示している。MHCマルチマー二重染色法のこの技術を用いて、単一のペプチドエピトープ(の変異体)に特異性のあるT細胞の微細な特異性がわかった(Haanen et al., 1999)。
【0020】
本発明に従うと、「抗原」という用語は、免疫系によって「異物」または「異種」と認識されるような免疫原性ペプチドまたはポリペプチドを示す。
【0021】
本発明者は、そのような2色エンコードされたpMHCの大きなセットを、これらのpMHCのうち1つに特異性のあるT細胞を検出できることと干渉しない単一のサンプル内で組合せることができれば、そのような技術は古典的な単色エンコーディングで可能であるよりもはるかに多数のT細胞特異性をエンコードするのに利用可能であると考えられると企図した。
【0022】
この設定では、特異性T細胞集団は、先行技術のpMHCマルチマー染色の場合のように単一の蛍光信号によって規定されることはもはやないであろうが、そのクローン特異性は、単独のまたは組合せた他の蛍光色素のいずれでもない、存在する2つの予め定められた蛍光色素の結合によって視覚化される。そのような組合せエンコーディングスキームのパワーは、利用可能な蛍光色素の数が増大するにつれてますます明らかになっている。
【0023】
一例として、3つの蛍光色素をエンコードに用いることができる設定では、一重および二重コーディングシステムの両者ともを用いて3つの異なる識別を明らかにすることができる(単色エンコーディングの場合は「A」、「B」および「C」、かつ2色エンコーディングの場合は「A−B」、「A−C」および「B−C」);8つの蛍光色素をエンコードに用いる場合は、一重および二重コーディングシステムはそれぞれ8および28の一意なコードを生じ得る;17(単一のフローサイトメトリ分析に現在利用可能な異なる蛍光色素の最大数)の蛍光色素を用いる場合、一重コーディングシステムは17の一意なコードを生じる一方で、二重コーディングシステムは136までの異なる識別を包含し得る。
【0024】
本発明は二次元組合せコーディング、したがって単一の抗原をコーディングするための2つの蛍光色素を例示するが、4および5などの3以上の次数の組合せコーディングが同じ原則で働くので、利用可能な蛍光色素の数が増えるにつれて特に魅力的である。これを図示するため、17の蛍光色素を利用する後者の例では、より高次のエンコーディングスキームにより、数千の一意な特異性のエンコーディングが可能になる。
【0025】
単一のサンプルにおいて上記組合せエンコーディングを利用可能であるか否かを判定するための重要な要因の1つは、標識が複数回用いられ、複数の別々の抗原−抗原提示化合物にコンジュゲートされる場合に、複数の標識との交互作用によって抗原応答性細胞を測定できることである。別々の抗原−抗原提示化合物にコンジュゲートされる同じ標識の使用は、内在的に、抗原応答性細胞が別々の抗原−抗原提示化合物で標識付けられ、これにより以下の表1に与えられるものなどのコードによってその抗原応答性を明らかにしてしまう可能性を壊してしまい得る恐れが生じる。
【0026】
T細胞の交差反応性が高いという広く持たれている見方とは反対に、本発明者らは、驚くべきことに、別々の抗原−抗原提示化合物にコンジュゲートされた同じ標識を複数回使用することにより確かに抗原応答性細胞の検出が可能になることを発見した。
【0027】
単一のサンプルで上記組合せエンコーディングが利用可能であるか否かを判定する重要な要因の別の1つは、方法の弁別力、または換言すると、蛍光色素などの標識の各個別の組合せを別個に検出できることである。蛍光色素などの標識の使用は、内在的に、それよりも下では特異性検出が不可能であるバックグラウンド信号を与える。このことから、2つの標識を用いる場合、バックグラウンド信号は増大し、こうして検出限界になり、3つの標識などを用いる場合はさらに増大することが内在的にわかる。
【0028】
本発明者らは、驚くべきことに、バックグラウンド(非特異性)信号の増大による予測される弁別力の低下とは反対に、蛍光色素などの2つ以上の標識を用いた複数の抗原のエンコーディングは、2標識抗原コーディングシステムではバックグラウンド信号を10倍低減し、これによりシステムの感受性の実質的な増大が可能になることを発見した。システムのこの増大した感受性により、抗原の複数の検出、すなわち複数種の抗原応答性細胞の検出が可能性となり、これにより本発明に従う方法を提供する。
【0029】
さらに、とりわけ、バックグラウンド信号の上記観察される低下、したがって増大した感受性により、抗原提示化合物非特異性結合によるアッセイの感受性に対する予測される好ましくない影響が大幅に低減され、これにより本発明に従う方法がさらに提供される。
【0030】
本方法の好ましい実施形態に従うと、抗原提示化合物には1つの標識が付与され、抗原は、少なくとも2つの異なって標識付けされた抗原提示化合物によって表わされるかまたはエンコードされる。
【0031】
換言すると、この好ましい実施形態に従うと、検出すべき各個別の抗原(またはエピトープ)は、異なる蛍光発光蛍光色素などの異なって検出可能な標識を各々が有する少なくとも2つの抗原提示化合物に負荷される。
【0032】
本方法の別の好ましい実施形態に従うと、抗原提示化合物は、たとえばMHCにコンジュゲートされるまたは共有結合される、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つなど少なくとも2つの異なる標識を付与され、抗原は1つの複数標識付け抗原提示化合物によって表わされる(またはエンコードされる)。
【0033】
換言すると、この好ましい実施形態に従うと、検出すべき各個別の抗原(またはエピトープ)は、異なる蛍光発光蛍光色素などの少なくとも2つの異なる標識を付与された単一の抗原提示化合物に負荷される。
【0034】
本発明に従う抗原は好ましくはペプチドである。このペプチドは、たとえばウイルスまたは腫瘍細胞などの既知の免疫原性エピトープを表わし、これによりたとえばこの抗原に応答する免疫細胞の存在の検出、およびその後のウイルス感染または癌の診断を可能にすることができる。
【0035】
本ペプチドは未知のエピトープも表わすことができ、このエピトープに応答する細胞の検出は、このペプチド内の免疫原性アミノ酸配列の存在を示し、これにより、たとえばポリペプチドなどの免疫原性領域またはエピトープの同定を可能にする。
【0036】
本発明に従う抗原提示化合物は、好ましくは、添付された標識または複数の標識に抗原をリンクする。T細胞の場合、本発明に従う抗原提示化合物は好ましくは主要組織適合抗原複合体(MHC)であり、好ましくは4以上の多量化主要組織適合抗原複合体(MHC)であることがより好ましい。たとえばB細胞の場合ではなくT細胞の場合、抗原提示化合物は好ましくは抗原と抗原応答性細胞との間の交互作用に強く寄与し、したがってこれを増大させる。
【0037】
主要組織適合抗原複合体(MHC)の使用は、これらの化合物が自然に抗原提示可能であるからだけでなく、本方法で用いるのに本標識付け抗原提示化合物を与えるために、容易に利用可能な技術を利用可能であるからという理由で有利である(Rodenko et al., 2006)。
【0038】
本発明に従う好ましい抗原応答性細胞はT細胞および/またはB細胞であり、より好ましくはT細胞である。
【0039】
本発明に従う標識は好ましくは蛍光標識であり、より好ましくは、当該技術分野のようにQdotとして指定される蛍光標識である。
【0040】
本方法の好ましい実施形態に従うと、単一のアッセイで用いられる異なる標識の数は、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、および8以上からなる群から選択される。
【0041】
さらに別の好ましい実施形態に従うと、各個別の抗原は、少なくとも3つまたは少なくとも4つの異なる標識で表わされる。Qdotなどの3以上または4以上すらの標識を用いて単一の抗原をエンコードすることにより、単一の中で検出すべき潜在的抗原応答性細胞の数が劇的に増大する。これは、単一の抗原をエンコードするまたは表わすのに利用可能なチャネルまたは組合せの数を示す図1に例示されている。
【0042】
単一の抗原をエンコードする単一の標識は、利用可能な標識の数と同数の種の抗原応答性細胞の弁別を可能にするであろう一方で、2つ、3つまたは4つの標識による同じ抗原のエンコーディングは検出可能な抗原を表わす細胞の種の数を劇的に増大させる。
【0043】
本発明に従うと、本方法は好ましくは単一のサンプルにおいて行なわれ、サンプルは好ましくは血液サンプルである。
【0044】
本明細書中で定義されるように、「血液サンプル」という用語は、個体から直接に得られた血液サンプルに限定されるだけではなく、直接に得られた血液サンプル由来のまたはそれらから発するサンプルにも限定される。ただしこれは、これらの由来サンプルが元々存在する抗原応答性細胞を依然として備えるという制限の下でである。
【0045】
本方法の特に好ましい実施形態に従うと、抗原応答性細胞の検出はフローサイトメトリ分析を備える。
【0046】
上記を考慮して、本発明は、別の局面で、サンプル中の抗原応答性細胞の検出のための、単一の抗原を表わす本少なくとも2つの標識の使用にも関する。
【0047】
さらなる局面に従うと、本発明は、癌などの疾患または病状の診断のための本方法の使用に関する。
【0048】
またさらなる局面に従うと、本発明は、免疫療法薬を開発するための本方法の使用に関する。
【0049】
別の局面に従うと、本発明は、ワクチン開発のための本方法の使用に関する。
また別の局面に従うと、本発明は、ポリペプチド中のエピトープまたは免疫原性アミノ酸配列の同定のための本方法の使用に関する。この局面は、本発明に従う方法を用いて、未知のHLA−A3関連T細胞抗原であるQLRALDGGNK,SLYRDPLPR,HAYIQSLLK,RMYNMVPFFおよびGTYEGLLRRの同定に例示される。
【0050】
したがって、本発明は、QLRALDGGNK,SLYRDPLPR,HAYIQSLLK,RMYNMVPFFおよびGTYEGLLRRからなる群から選択されるHLA−A3関連T細胞抗原;免疫療法薬およびワクチンのモニタにおける本HLA−A3関連T細胞抗原またはその機能的誘導体の使用;ならびに、免疫療法薬およびワクチンの開発における本HLA−A3関連T細胞抗原またはその機能的誘導体の使用にも関する。
【0051】
本発明の原則は、本発明の好ましい実施形態を示す実施例でさらに詳細に説明されるであろう。実施例では、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一および二次元(左)または一−四次元(右)コーディングスキームにおける増大する数の蛍光色素を用いて行なうことができる一意な色組合せの理論的数を示す図である。
【図2】8つの蛍光色素の二次元マトリックスを用いて抗原をエンコードするのに使用可能な28の一意な色組合せを示す図である。
【図3】2色エンコードされたpMHCマルチマーの使用によるバックグラウンド信号の低減を示し、灰色の棒は、CMVNLVエピトープ(「CMV」)または対照p*ペプチド(バックグラウンド)のいずれかを含有するMHCマルチマーの25の異なる2色エンコードされた組合せで染色されたPBMCであり、黒の棒は、CMVNLVエピトープ(「CMV」)または対照p*ペプチド(「バックグラウンド」)のいずれかを含有する8つの異なる単色エンコードされたMHCマルチマー(PE、APC、Q565、Q585、Q605、Q655、Q705およびQ800)で染色されたPVMCである、図である。
【図4】2色エンコードされたpMHCマルチマーで染色した後のpMHC特異性T細胞の同定に用いられるゲーティングストラテジーの概略図である。
【図5】組合せコーディングによるウイルス特異性T細胞応答の多重検出を示し、ウイルス特異性T細胞応答は3人の健常なドナーのPBMCにおいて:I)各々が2色コードでエンコードされた25の異なるpMHCマルチマーのミックスで1つのサンプルを染色することによって;II)特異性2色コードに連結された25のペプチドのうち1つを含有するpMHCマルチマーで25の個別のサンプルを染色することによって;III)25のペプチドのうち1つを含有する古典的なPE標識付けMHCマルチマーで25の個別のサンプルを染色することによって;またIV)各々が2色コードでエンコードされた無関係のpMHCマルチマーのミックスで1つのサンプルを染色することによって分析され:I−IVは、′Iでの頻度>0.03%で検出された抗原特異性T細胞集団の点プロットであり、Vは、PE標識付けMHCマルチマー染色(塗り潰し四角)によって;サンプル当たり25の特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(塗り潰し菱形)によって;サンプル当たり1つのpMHC特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(塗り潰し三角)によって;対照ペプチドで負荷された2色エンコードされたMHCマルチマー(白抜き菱形)によって検出されるような、用いる25のエピトープに対して向けられる抗原特異性CD8+T細胞の頻度をグラフで表わす(補足の表1)、図である。
【図6】組合せコーディングによるウイルス特異性T細胞応答の多重検出を示し、ウイルス特異性T細胞応答は3人の健常なドナーのPBMCにおいて:I)各々が2色コードでエンコードされた25の異なるpMHCマルチマーのミックスで1つのサンプルを染色することによって;II)特異性2色コードに連結された25のペプチドのうち1つを含有するpMHCマルチマーで25の個別のサンプルを染色することによって;III)25のペプチドのうち1つを含有する古典的なPE標識付けMHCマルチマーで25の個別のサンプルを染色することによって;またIV)各々が2色コードでエンコードされた無関係のpMHCマルチマーのミックスで1つのサンプルを染色することによって分析され:I−IVは、′Iでの頻度>0.03%で検出された抗原特異性T細胞集団の点プロットであり、Vは、PE標識付けMHCマルチマー染色(塗り潰し四角)によって;サンプル当たり25の特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(塗り潰し菱形)によって;サンプル当たり1つのpMHC特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(塗り潰し三角)によって;対照ペプチドで負荷された2色エンコードされたMHCマルチマー(白抜き菱形)によって検出されるような、用いる25のエピトープに対して向けられる抗原特異性CD8+T細胞の頻度をグラフで表わす(補足の表1)、図である。
【図7】組合せコーディングによるウイルス特異性T細胞応答の多重検出を示し、ウイルス特異性T細胞応答は3人の健常なドナーのPBMCにおいて:I)各々が2色コードでエンコードされた25の異なるpMHCマルチマーのミックスで1つのサンプルを染色することによって;II)特異性2色コードに連結された25のペプチドのうち1つを含有するpMHCマルチマーで25の個別のサンプルを染色することによって;III)25のペプチドのうち1つを含有する古典的なPE標識付けMHCマルチマーで25の個別のサンプルを染色することによって;またIV)各々が2色コードでエンコードされた無関係のpMHCマルチマーのミックスで1つのサンプルを染色することによって分析され:I−IVは、′Iでの頻度>0.03%で検出された抗原特異性T細胞集団の点プロットであり、Vは、PE標識付けMHCマルチマー染色(塗り潰し四角)によって;サンプル当たり25の特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(塗り潰し菱形)によって;サンプル当たり1つのpMHC特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(塗り潰し三角)によって;対照ペプチドで負荷された2色エンコードされたMHCマルチマー(白抜き菱形)によって検出されるような、用いる25のエピトープに対して向けられる抗原特異性CD8+T細胞の頻度をグラフで表わす(補足の表1)、図である。
【図8】異なるT細胞染色アプローチ間の相関を示し、古典的なPE標識付けMHCマルチマー染色(X軸)およびサンプル当たり25の特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー染色(Y軸)によって検出されるような抗原特異性T細胞頻度間の相関を示す、図である。
【図9】異なるT細胞染色アプローチ間の相関を示し、サンプル当たり1つのpMHC特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(X軸)およびサンプル当たり25の特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー染色(Y軸)によって検出されるような抗原特異性T細胞頻度間の相関を示す、図である。
【図10】メラノーマ関連ペプチドに対するT細胞の応答を示し、HLA−A3−拘束性ウイルス由来T細胞エピトープ(EVBRLR、EVBRVR、FLUILR)、直接エクスビボ検出(塗り潰し三角);22のメラノーマ拘束性ペプチド、直接エクスビボ検出(塗り潰し四角);またはT細胞強化およびインビトロ増殖後の22のメラノーマ拘束性ペプチド(*)に対して向けられた、メラノーマ患者および健常ドナーにおいて検出された抗原特異性T細胞応答の要約を示す、図である。
【図11】組合せコーディングによって規定されるMHCマルチマー応答性T細胞集団のペプチド特異性を確認する細胞内IFNγ染色を示し、ペプチド番号は表2の配列を参照する、図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
実施例
方法
ペプチド−MHC複合体の生成
すべてのペプチドは標準的なFmoc化学を用いて社内で合成した、またはPepscanから購入した(オランダ、レリスタット、Pepscan Presto BV)。UVに感受性のあるビルディングブロックJを記載のように合成した(Toebes et al., 2006)。組換HLA−A1、−A2、−A3、および−B7重鎖およびヒトβ2m軽鎖は大腸菌で生産した。MHCクラスIリフォルディング反応は記載のように行なわれ(Garboczi et al., 1992)、かつMHCクラスI複合体はPBSにおけるゲルろ過HPLCによって精製した(pH7.4)。
【0054】
特異性ペプチド−HLA複合体はMHCペプチド交換によって生成した。p*HLA複合体(100μg/mL)を、示されたペプチド(200μM)の存在下で1時間、366nmのUV光(Camag)に露光した。交換の後、サンプルを5分間16,000gでスピンし、上澄みをMHCマルチマー形成に用いた。
【0055】
MHCマルチマーの生成
MHCマルチマーは、SA−Qdot565、SA−Qdot585、SA−Qdot605、SA−Qdot655、SA−Qdot705、SA−Qdot800、SA−フィコエレクチン(phycoerectin)(PE)およびSA−アロフィコシアニン(APC)という8つの異なる蛍光ストレプトアビジン(SA)コンジュゲート(Invitrogen)を用いて生成した。MHCモノマー(濃度100μg/mL)各100μL毎に、7.08μLのSA−Qdotコンジュゲート(1μM)、10.8μLのSA−PE(1mg/ml)または6μLのSA−APC(1mg/ml)を加え、その後氷の上で20分間インキュベートした。MHCペプチド交換後100%救出されたと仮定すると、これはSA−Qdot当たり30個のMHCモノマーの占有率という結果となるであろう。ビオチン(Sigma)およびNaN3(Sigma)を、26.4μMおよび0.02%の最終濃度にそれぞれ加え、その後氷の上で20分間インキュベートした。PEおよびAPC標識付け複合体を0.02%のNaN3でPBS中で2倍に希釈した。各pMHC複合体毎に、表1および表2のスキームに従って2つの異なる蛍光標識でマルチマーを作った。
【0056】
組合せT細胞染色について、同じ特異性のマルチマー複合体は、Q605、Q655、Q705、PEおよびAPC標識付け複合体については1:1で、任意の他の色と組合せたQ565、Q585およびQ800標識付け複合体については2:1で混合した。Q565、Q585およびQ800の組合せは除外した。組合せコーディングによるT細胞応答の分析のための組合せpMHC混合物はプーリングによって生成し、T細胞染色用の50倍濃縮されたすぐに使える株として4℃で貯蔵した。使用前に、MHCマルチマーを2分間17,000gでスピンし、上澄みを使用した。
【0057】
T細胞染色
約1×106のPBMCまたは2×105の培養されたT細胞のT細胞染色について、2μLの単一のpMHCマルチマーまたは50μLの2色エンコードされたpMHCコレクション(collections)(最終濃度:初期モノマー濃度ベースで別々のpMHC当たり2μg/mL)を用いた。最終染色容量は80μlであり、37℃で10分間細胞をインキュベートした。次に、CD8−Alexa700(Caltech MHCD0289)(最終希釈1/200)、CD4−FITC(BD345768)(最終希釈1/8)、CD14−FITC(BD345784)(最終希釈1/32)、CD19−FITC(BD345776)(最終希釈1/16)、CD40−FITC(Serotech MCA1590F)(最終希釈1/40)、CD16−FITC(BD347523)(最終希釈1/64)からなる5倍抗体ミックス20μLを加え、4℃で20−30分間細胞をインキュベートした。フローサイトメトリの前に細胞を2回洗浄し、死んだ細胞を排除できるようにヨウ化プロピジウムを加えた。
【0058】
フローサイトメトリ
488nmのレーザ:PI:685LP、695/40;PE:550LP、575/26;FITC:505LP、530/30;SSC:488/10.633nmのレーザ:Alexa700:685LP、730/45;APC:660/20.405nmのレーザ:Qdot800:770LP、800/30;Qdot705:680LP、710/50;Qdot655:635LP、660/40;Qdot605:595LP、650/12.355nmのレーザ:Qdot585:575LP、585/15;Qdot565:545LP:560/20という11色器具設定を用いてFacsDivaソフトウェアでLSR−IIフローサイトメータ(Becton Dickinson)に対してデータ取得を行なった。
【0059】
各分析毎に約200,000個のリンパ球が記録された。抗原特異性T細胞を同定するため、以下のゲーティングストラテジーを用いた:1)(PI陰性、FSC−W/Hロー、SSC−W/Hロー、FSC/SSC−Aを用いた)生きた単一細胞リンパ球の選択、2)CD8陽性および「ダンプ(dump)」(CD4、14、16、19、40)陰性細胞の選択、3)2つのMHCマルチマーチャネルで陽性かつ6つの他のMHCマルチマーチャネルで陰性のCD8+T細胞の選択。
【0060】
抗原特異性T細胞の強化
4℃で1時間、PE−マルチマーで抗原特異性T細胞を染色した(107のPBMCについて1.25μLの各個別のPE−マルチマーの100μg/mLの株)。その後、細胞を洗浄し、20μLの抗PE Absコーティングされた磁気ビーズ(Miltenyi)でインキュベートした。次に、LSカラムを用いてかつ製造者のプロトコールに従って、MACS(Miltenyi)によって細胞を単離した。溶出した細胞を洗浄し、5000個の抗CD3/CD28ダイナビーズ(Invitrogen)を用いて、10%のヒト血清(Invitrogen)、100IU/mLのIL−2(Proleukin)、および20ng/mLのIL−15(Peprotech)で、200μLのT細胞媒質(IMDM(Gibco)中で再懸濁した。強化された細胞を96ウェルプレートで培養し、翌日再懸濁した。培養物(cultures)を分け、少なくとも週に2回媒質を取換えた。2、3週間後、組合せコーディングに基づくMHCマルチマーフローサイトメトリによって抗原特異性T細胞応答を測定した。
【0061】
T細胞分類および培養物
関連のpMHCマルチマーでT細胞を染色し、次にMoFlo(Dako)またはFACSAria(Becton Dickinson)上で、105個の照射されたフィーダ細胞(JY plus同種PBMC)に分類した。細胞をスピンし、10%のヒト血清、100IU/mLのIL−2、および0.5μg/mLのPHA(Biochrom AG)でIMDM中に再懸濁した。隔週に培養物に再び刺激を与えた。MHCマルチマー染色により、抗原特異性について樹立された培養物をテストした。
【0062】
サイトカイン放出アッセイ
示されたペプチドを1時間T2−A3細胞に負荷し、これを1回洗浄した。次に、示された培養物からの1×105個のT細胞を、10%のヒト血清およびタンパク質輸送抑制剤(BD GolgiPlug)を用いて、IMDM中で37℃で4時間1×105個のT2−A3細胞とともにインキュベートした。25℃で15分間、PEコンジュゲートされた抗CD8 Ab(SK1、BD)で細胞を染色し、固定しかつ透過処理し(BD Cytofix/Cytopermキット)、4℃で30分間、APCコンジュゲートされた抗IFNガンマAb(25723.11、BD)で染色した。フローサイトメトリでサンプルを分析し(Cyan, Dako)、FlowJoを用いてデータ分析を行なった。
【実施例1】
【0063】
対象の標的細胞に対する規定されたコードのアセンブリに基づく組合せエンコーディングスキームを開発する目的で、まず、抗原特異性T細胞応答の検出用の6つの異なる量子ドット(Qdot、図2に特性を列挙)のセットを用いる可能性を判定した。
【0064】
量子ドットとは、多数の蛍光色素を同時に用いる実験によく適合する非常に狭い発光スペクトル(REF)を呈する直径および組成に基づいて別々の発光波長を有する蛍光ナノ結晶である。
【0065】
末梢血CMV特異性CD8+T細胞応答の分析により、ストレプトアビジンコンジュゲートされたQdot、または標準的なアロフィコシアニン(APC)、またはフィコエリトリン(PE)に連結することによってマルチマー化されたMHC複合体はすべて、抗原特異性T細胞集団を検出するのに利用可能であることが確立された(データ示されず)。
【0066】
その後、同じ抗原性ペプチドを含有するが異なる蛍光色素に連結される2つのMHCマルチマーを結合することによって抗原特異性T細胞集団も確実に同定可能かどうかテストした。異なる2つの蛍光色素のすべての28の可能な組合せにコンジュゲートされたpMHCクラスI複合体のテストは、そのような二重エンコーディングがすべての場合において適切なT細胞集団を同定可能であることを実証した。
【0067】
同じ抗原性ペプチドを含有する2つの異なって標識付けされたMHCマルチマーで同時にT細胞を染色することにより、T細胞表面上の利用可能なTCRの限られたセットに結合するための競合のために、各チャネル毎の蛍光強度に小さな低下が生じる(等モルで2倍)。抗原特異性T細胞集団を視覚化できることに対する競合の好ましくない影響を限定するため、フローサイトメトリックシステム(Q565、Q585およびQ800)において最も強度の低い信号を与えた3つのqDotを、他の蛍光色素に対して1:1の比率よりはむしろ2:1の比率で用い、その後の実験では、比率の調整が実際的でないことが明らかであるQ565+Q585、Q565+Q800、およびQ585+Q800の組合せを用いなかった。
【0068】
本実施例は、同じ抗原で負荷された異なって標識付けされた抗原提示化合物が抗原応答性細胞に結合することができ、それによりこれらの異なる標識の検出を通してサンプル中のこれらの細胞の検出が可能になることを示す。
【実施例2】
【0069】
抗原特異性T細胞集団は非常に低頻度で存在し得、MHCマルチマーはフローサイトメトリにおいてバックグラウンド染色を確かに示す。組合せコードの使用により抗原特異性T細胞の検出がバックグラウンドレベルに影響するか否か、または検出される抗原特異性T細胞の頻度をテストするため、HLA−A2 CMVNLV特異性T細胞を含有するPBMCを、対照マルチマーでまたはHLA−A2 CMVNLVマルチマーで染色し、フローサイトメトリで分析した。
【0070】
具体的に、PBMCは、8つの別個の染色において8つの異なる単一エンコードされたMHCマルチマーで、または25の別個の染色において25の二重エンコードされたMHCマルチマーのいずれかでインキュベートされた。(単色染色の場合)1つのチャネルでバックグラウンドより上に染色された場合、または(2色染色の場合)関連チャネルの両方で陽性の染色の場合、T細胞が陽性と考えられた。
【0071】
図3に見られるように、バックグラウンドサンプル中の(偽陽性)細胞の頻度は、伝統的な単一染色アプローチと比較して二重エンコーディングスキームを用いた場合は約10倍低く、MHCマルチマーの2色エンコーディングがバックグラウンド信号を低減するのに強力なツールであることを示す。
【実施例3】
【0072】
2色エンコーディングの可能性を確立したので、次に、複数の2色エンコードされたpMHCマルチマー染色を単一のサンプルに対して並列に行なうことができるか否かを調べた。単一のサンプル中の2色エンコードされたpMHCマルチマーの任意のものと反応するT細胞を分析するため、ゲーティングストラテジーをまず開発した(図4)。
【0073】
簡単に述べると、前方および側方散乱、細胞の幅/高さ、および陰性ヨウ化プロピジウム染色に基づいて、単一の生細胞を選択した。このプールから、CD8について陽性、CD4、CD14、CD16、CD19およびCD40について陰性(「ダンプ」チャネル、van Oijen et al., 2004)に染色された細胞が関連のCD8+T細胞としてさらに同定された。2色エンコードされたpMHCマルチマーの任意のものと反応する分析されたT細胞集団に対して、MHCマルチマー生成に用いた8つの個別の蛍光色素の各々に基づいてゲートが生成された。
【0074】
2つのチャネルの所与の組合せにおけるバックグラウンドよりも上の信号を示し、残余の6つのチャネルにおいて陰性であるT細胞を同定するこのストラテジーは、バックグラウンド染色を同時に低減しながら、1回のフローサイトメトリ実験において25の異なる組合せの同時分析を可能にする。
【実施例4】
【0075】
T細胞応答の大規模分析において組合せコーディング技術の潜在値をテストするため、MHCペプチド交換(Toebes et al., 2006;Rodenko et al., 2006;Bakker et al., 2008)によってヒトMHC対立遺伝子HLA−A1、−A2,−A3および−B7(表1)のための、分かっているウイルスおよび癌関連のエピトープの範囲を含有する25の異なるMHCマルチマーのパネルを生成した。これらのpMHCマルチマーの各々はその後、表1に記載の一意なコードのセットを生成する2つの蛍光色素に連結された。
【0076】
組合せコーディングによって得られたデータを従来のMHCマルチマー分析と比較できるように、25の異なるpMHCマルチマーのセットをPEにも連結した。さらに、組合せエンコーディングのバックグラウンドを判定するため、すべての2つの色組合せにおける無関係pMHCマルチマーのセットも準備した。その後、1)pMHCマルチマーを含有する2色エンコードされたウイルスおよび癌エピトープのコレクションでの1回の単一染色、2)2色エンコードされた無関係pMHCマルチマーのミックスでの1回の単一染色、3)すべての25のPE標識付けpMHCマルチマーでの25の別個の染色、または4)すべての個別の2色エンコードされたpMHCマルチマーでの25の別個の染色によって、すべての4つのHLA対立遺伝子をカバーする3人の健常ドナーからのPBMCを次に分析した。
【0077】
「1」および「4」の比較は特に関心がある。というのも、これは、同じ蛍光色素で標識付けされる大量の無関係のpMHCマルチマーの同時の存在、または高いpMHC濃度の存在がバックグラウンド信号に影響するか否かを明らかにするからである。
【0078】
実験は、ドナーのHLAハプロタイプに対して、およびこれらのドナーにおける抗原特異性T細胞応答の先の分析に対しての両方について盲検法で行なわれた。これらのアプローチを用いた3人のドナーにおける疾患/病原体特異性T細胞応答の分析は、pMHCマルチマーの組合せエンコーディングにより1つの単一のサンプルにおける多数の抗原特異性T細胞集団の視覚化が可能になることを明らかにした(図5−図7)。
【0079】
重要なことに、多数の一連の個別のPEマルチマー染色によって分析した際に同じウイルス特異性T細胞集団が各ドナーに見つかった。さらに、別個のPE連結MHCマルチマー染色と25の二重コードされたMHCマルチマーのコレクションを用いた多重染色との直接の比較により高頻度および低頻度のT細胞集団を両方調べると(図8)、抗原特異性T細胞集団を視覚化するための2つのアプローチの間に非常に高い相関が明らかになる。
【0080】
さらに、25の別個の染色で用いた2色エンコードされたpMHCマルチマーの同じセットに対する1つのサンプル中の2色エンコードされたpMHCマルチマーのコレクションで染色されたPBMCの分析によって得られたデータの比較も、非常に高い相関を明らかにする(図9)。
【0081】
この後者の発見は、異なるペプチドを含有する多数のMHC複合体に同じ蛍光色素が連結された場合ですら、各pMHCマルチマーが蛍光色素の別々の組合せに連結されるMHCマルチマーのセットを用いたインキュベーションによる複数の抗原特異性の同時測定の可能性があることを示す。
【0082】
このように、染色ミックス中の多くの無関係pMHC複合体のうち任意のものとのT細胞の潜在的な交差反応は問題ではないことが示される。さらに、これらの観察は、高濃度の多量化MHC分子を含有する混合物を用いることがMHCマルチマー染色に干渉しないことを示している。最終的に、疾患/病原体関連エピトープで占有された2色エンコードされたpMHCのセットを用いた場合に観察される信号を25の無関係MHCマルチマーのコレクションを用いた場合に観察される信号と比較することにより、アプローチの感受性が高く、CD8陽性細胞の0.03%程度に頻度の低いT細胞集団を同定可能であることが示される(図5−図7)。
【実施例5】
【0083】
以上の実験は、単一のサンプル中の多数のT細胞集団を視覚化するのに企図される組合せコーディングアプローチを利用可能であることを実証したので、エピトープ同定におけるその潜在値を評価した。
【0084】
潜在的HLA−A3関連メラノーマエピトープを同定するために設置される最新のスクリーンにおいて、HLA−A3について高い結合親和性を表示した4つの異なるメラノーマ関連タンパク質から22のペプチドを同定した。このセットはすべての4つの以前に記載されたHLA−A3関連のエピトープおよび18の潜在的な新規のエピトープを含んだ。
【0085】
(潜在的な)エピトープのセットに対する応答について小さな患者サンプルをスクリーニングする可能性を扱うため、すべての22のエピトープならびに3つのHLA−A3関連EBV−およびインフルエンザA由来エピトープについて、ペプチド交換によってMHC試薬を生成した。低レベルのT細胞応答も明らかにできるように、可能な腫瘍関連エピトープを含有する22のpMHCマルチマーを用いた単一のMACSベースの強化ステップを行ない、その後短期の強化細胞のインビトロ増殖を行なった。
【0086】
次に二次元組合せコーディングスキームにおいて25の異なるpMHCマルチマーを2つの蛍光色素に連結し、27のHLA−A3陽性メラノーマ患者からの強化PBMCをスクリーニングするのに用いた。
【0087】
並列MHCマルチマー染色のこのアプローチを用いて、3つの前述のgp100関連エピトープに対して向けられたT細胞応答の存在を確認することができた。さらに、ヒトgp100(QLRALDGGNK)由来の以前は未知のエピトープに対して、ノーダル(Nodal)(SLYRDPLPRおよびHAYIQSLLK)由来の以前は未知の2つのエピトープに対して、およびTyrp2(RMYNMVPFF)由来の以前は未知の1つのエピトープに対して、CD8+T細胞応答が観察された(表2)。
【0088】
重要なことに、10人の健常なHLA−A3+ドナーからのPBMCを同じ態様で分析した場合、ドナーのいずれにも応答が観察されなかった一方で、ウイルスエピトープに対するT細胞応答は両方のグループで等しく豊富であった(図10)。
【0089】
観察されたT細胞集団が対応のペプチドを表示する標的細胞に対して機能的活性を示すか否かを判定するため、異なる患者からのPBMCから抗原特異性T細胞を分類し、インビトロで増殖した。次に、結果的に得られたT細胞集団を、ペプチドを負荷された標的細胞でのインキュベーション後に細胞内サイトカインアッセイを用いて抗原特異性についてテストした(図11)。
【0090】
すべての培養物は、それらの同源の抗原でインキュベートされるとIFNガンマ発生を表示した(図11)。ペプチドで負荷されなかった細胞でT細胞培養物がインキュベートされた場合、応答は観察されなかった。
【0091】
これらの結果は、HLA−A3に対して高い結合親和性を有する前述のペプチドの一覧が、メラノーマ患者においてT細胞応答を観察可能な少なくとも8つのメラノーマ関連エピトープ、なおそのうち5つは前述されていないが、これを含有していることを示す。さらに、入手可能な患者材料に対して行なわれたスクリーンは、本発明に従う抗原特異性の多色エンコーディングによって与えられる多重分析の可能性なしには見込みがなかったであろう。
【0092】
結論
本発明に従う組合せコーディング技術は、複数の免疫応答の同時検出および分析のための貴重なツールであることが実証される。
【0093】
単一のサンプル内の多数の異なるT細胞集団の並列検出を可能にする組合せコーディングストラテジーが開発された。組合せコーディングによる末梢血からの抗原特異性T細胞の検出は、従来のPE標識付けマルチマーを用いた検出と同程度に効率的であるが、結果的に大幅に増大した感受性をもたらし、最も重要なことには、患者材料に対して包括的なスクリーンを行なえることである。
【0094】
メラノーマ患者の末梢血中の分かっているおよび潜在的なメラノーマ関連抗原に対するT細胞応答を分析することにより、患者材料の大規模スクリーニングの可能性が実証された。これらのスクリーンは、分かっているT細胞エピトープに対するT細胞応答の存在を確認し、HLA−A3の文脈で多数の新規なメラノーマ関連T細胞応答の同定をもたらした。
【0095】
ペプチド−MHCコンジュゲートの組合せコーディングは、単一のサンプル中の抗原特異性T細胞免疫性の高スループット分析を可能にすると結論付けられる。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【技術分野】
【0001】
説明
本発明は、主要組織適合抗原複合体(MHC)などの多元標識付け抗原提示化合物を用いてサンプル中の抗原応答性細胞を検出するための方法に関する。さらに、本発明は、サンプル、血液サンプルなどの好ましくは単一のサンプルであるサンプル中の抗原応答性細胞を検出するための、抗原−主要組織適合抗原複合体(MHC)などの本多元標識付け抗原提示化合物の使用に関する。本方法は、T細胞およびB細胞などの特異性抗原応答性細胞の高スループット分析を可能にし、それにより、たとえば、疾患または病状のモニタ、および免疫療法薬、ワクチンまたは同定エピトープもしくは免疫原性アミノ酸配列の開発のための高スループットの方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
T細胞およびB細胞などの抗原応答性細胞は、とりわけ、クローン特異性T細胞レセプタ(TCR)を用いて疾患特異性ペプチド−主要組織適合抗原複合体(MHC)の存在をモニタすることにより、ウイルス感染細胞および腫瘍細胞を認識することができる。ヒトT細胞の組合せプール上で発現される異なるTCRのレパートリは広く、約2500万と推定される(Arstila et al., 1999)。
【0003】
疾患または病状のモニタおよび免疫療法薬またはワクチンの開発のためには、無関係な抗原応答性細胞、すなわち抗原特異性レセプタを備えない細胞の大きなプール内で、たとえば、クローン特異性T細胞レセプタ(TCR)、ペプチド−MHC(pMHC)複合体などの特異性抗原−MHC(aMHC)複合体を認識するが、T細胞およびB細胞などのそれらの特異性抗原応答性細胞のみを検出、同定、または単離することができることが必須である。
【0004】
Altman et al., 1996によって初めて示されたように、フローサイトメトリによって抗原特異性T細胞を検出するのに、蛍光色素に結合される可溶性多量化(multimeric)pMHC複合体を用いることができる。これらの蛍光MHCマルチマーの使用は、研究および臨床モニタの両者でT細胞モニタの基礎となっている。
【0005】
しかしながら、単一の生体サンプルについて数個の抗原特異性しか(しばしば1つしか)モニタできないことによって、抗原特異性T細胞の応答性検出のためのMHCマルチマーフローサイトメトリの使用の主な限界が形成されている。この限界は、励起もしくは発光スペクトルのいずれかによって区別可能な、またはフローサイトメトリで検出可能な限られた数の「チャネル」、すなわち蛍光色素などの異なる標識によるものであり、これは一般的に入手可能な単一の末梢血サンプルなどの限られた量の生体材料内で分析可能なT細胞応答の数に対して厳しい限界を形成してしまう。
【0006】
たとえば、生体材料を分析して、感染症または癌の際に起こり得るものなどの自然発生的免疫応答をモニタする。さらに、免疫応答に対するワクチンを含む免疫療法薬の効果について生体材料を分析する。本明細書中で用いられるような免疫療法薬は、ワクチン、非特異性免疫刺激物、免疫抑制剤、細胞に基づいた免疫療法薬、およびその組合せを含む、免疫応答を高めるまたは抑えることを目的とする医学的介入における活性成分として定義される。
【0007】
新たな無機蛍光色素として最近量子ドット(Qdot)が開発され、かつフローサイトメトリ装置の複数パラメータ検出可能性が着実に大きくなっているにもかかわらず、pMHCマルチマー染色による単一のサンプルで分析される異なるT細胞集団の最大数は4に留まっている(Chattopadhyay et al., 2006)。
【0008】
いくつかのグループがいわゆるMHCマイクロアレイを開発しようとしていることにより、抗原特異性T細胞応答のより包括的な分析を可能にする技術の開発の必要性が強調されている。これらの系では、T細胞特異性は蛍光色素によってエンコードされるのではなく、空間的にエンコードされる(Soen et al., 2003およびStone et al., 2005)。それらの有望さにもかかわらず、MHCマイクロアレイは広く採用されておらず、たとえばエピトープ同定などのT細胞応答の多量化測定においてその値が文書化された例を入手できない。
【0009】
単一のサンプルに対して行なうことができる分析の数を増やす多数の設定において組合せコーディング(combinatorial coding)システムが用いられている。Qdotの分野での具体例は、遺伝子型決定を行なうQdotでコードされたマイクロビーズの使用によって形成される(Xu et al., 2003)。さらに、組合せコーディングは、エンコーディングがビーズの大きさ、蛍光色素、および蛍光色素の強度(たとえばBDサイトメトリックビーズアレイ)の変化によって行なわれる、ビーズアレイを用いたサイトカインなどの血清製品の測定に用いられてきた。すべてのこれらの例で、溶質は、予めエンコードされたマイクロビーズへの結合によって分析される。
【0010】
以上を考慮すると、当該技術分野では、高スループットでの抗原特異性T細胞などの特異性抗原応答性細胞の検出、単離および/または同定を可能にする方法の必要性が残る。
【0011】
さらに、利用可能なサンプルの量がしばしば限定されていることを考慮すると、当該技術分野では、単一のサンプル中のT細胞などの特異性抗原応答性細胞の複数の種の検出、単離および/または同定を可能にする方法の必要性が残る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、とりわけ、本発明の目的は、好ましくは高いスループットで、たとえば単一の末梢血サンプルである単一のサンプル中などの比較的少量の生体材料中の抗原特異性細胞の複数の種を検出するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
とりわけ、この目的は、添付の請求項1に規定されるような方法によって満たされる。
具体的に、この目的は、(末梢血サンプルなどの生体材料の)サンプル中の抗原応答性細胞を検出するための方法であって、
少なくとも1つの標識を保持する抗原提示化合物に2つ以上の予め定められた抗原を負荷するなどして付与するステップを備え、各々の抗原は少なくとも2つの異なる標識で表わされ(エンコードされ)、さらに
抗原付与された当該抗原提示化合物を当該サンプルと接触させるステップと、
抗原負荷された当該抗原提示化合物の、当該抗原応答性細胞への結合を検出し、これにより当該抗原に応答する細胞を検出するステップとを備え、
当該抗原は、当該抗原を負荷された当該抗原提示化合物によって抗原応答性細胞に結合される当該少なくとも2つの異なる標識の存在を検出することによって検出される、方法によって満たされる。
【0014】
本発明の好ましい実施形態に従うと、上記2つ以上の予め定められた抗原は、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、20以上、21以上、22以上、23以上、24以上、25以上、26以上、27以上、および28以上からなる群から選択される。
【0015】
本発明は、抗原提示化合物の規定された組合せの結合によって形成される組合せコードの分析により組合せコーディングの概念を拡張する。
【0016】
具体的に、本発明は、同じ標識を何度も用いて、蛍光色素などの標識の一意な組合せに各々連結される抗原提示化合物の使用により、単一のサンプル中で多数の抗原特異性細胞応答を同時に分析可能であるが、これは毎回蛍光色素などの1つ以上の他の標識との一意な組合せで行なわれるという発見に基づいている。
【0017】
先行技術に対して、これは、アッセイに特異性のあるコードの新規な作製に係り;これは溶質よりもむしろ細胞の分析に係り;かつこれは抗原特異性細胞応答の並列分析のための組合せコーディングの使用に係る。
【0018】
抗原特異性細胞の交差反応性が高いという広く持たれている見方にも拘らず、得られたデータは、組合せコーディングによる細胞の検出が実際的かつ現実的可能性であることを示している。組合せコーディングの値は、メラノーマ患者からの末梢血中のメラノーマ関連抗原特異性T細胞応答の解析により、本発明に従って例示される。
【0019】
先行する研究は、両者ともが異なる蛍光色素に連結される、抗原特異性T細胞を含有する2つのMHCマルチマーまたは関連のペプチドの結合による抗原特異性T細胞を検出すること、したがって単一のサンプル中の単一の抗原の検出、が実施可能であることを示している。MHCマルチマー二重染色法のこの技術を用いて、単一のペプチドエピトープ(の変異体)に特異性のあるT細胞の微細な特異性がわかった(Haanen et al., 1999)。
【0020】
本発明に従うと、「抗原」という用語は、免疫系によって「異物」または「異種」と認識されるような免疫原性ペプチドまたはポリペプチドを示す。
【0021】
本発明者は、そのような2色エンコードされたpMHCの大きなセットを、これらのpMHCのうち1つに特異性のあるT細胞を検出できることと干渉しない単一のサンプル内で組合せることができれば、そのような技術は古典的な単色エンコーディングで可能であるよりもはるかに多数のT細胞特異性をエンコードするのに利用可能であると考えられると企図した。
【0022】
この設定では、特異性T細胞集団は、先行技術のpMHCマルチマー染色の場合のように単一の蛍光信号によって規定されることはもはやないであろうが、そのクローン特異性は、単独のまたは組合せた他の蛍光色素のいずれでもない、存在する2つの予め定められた蛍光色素の結合によって視覚化される。そのような組合せエンコーディングスキームのパワーは、利用可能な蛍光色素の数が増大するにつれてますます明らかになっている。
【0023】
一例として、3つの蛍光色素をエンコードに用いることができる設定では、一重および二重コーディングシステムの両者ともを用いて3つの異なる識別を明らかにすることができる(単色エンコーディングの場合は「A」、「B」および「C」、かつ2色エンコーディングの場合は「A−B」、「A−C」および「B−C」);8つの蛍光色素をエンコードに用いる場合は、一重および二重コーディングシステムはそれぞれ8および28の一意なコードを生じ得る;17(単一のフローサイトメトリ分析に現在利用可能な異なる蛍光色素の最大数)の蛍光色素を用いる場合、一重コーディングシステムは17の一意なコードを生じる一方で、二重コーディングシステムは136までの異なる識別を包含し得る。
【0024】
本発明は二次元組合せコーディング、したがって単一の抗原をコーディングするための2つの蛍光色素を例示するが、4および5などの3以上の次数の組合せコーディングが同じ原則で働くので、利用可能な蛍光色素の数が増えるにつれて特に魅力的である。これを図示するため、17の蛍光色素を利用する後者の例では、より高次のエンコーディングスキームにより、数千の一意な特異性のエンコーディングが可能になる。
【0025】
単一のサンプルにおいて上記組合せエンコーディングを利用可能であるか否かを判定するための重要な要因の1つは、標識が複数回用いられ、複数の別々の抗原−抗原提示化合物にコンジュゲートされる場合に、複数の標識との交互作用によって抗原応答性細胞を測定できることである。別々の抗原−抗原提示化合物にコンジュゲートされる同じ標識の使用は、内在的に、抗原応答性細胞が別々の抗原−抗原提示化合物で標識付けられ、これにより以下の表1に与えられるものなどのコードによってその抗原応答性を明らかにしてしまう可能性を壊してしまい得る恐れが生じる。
【0026】
T細胞の交差反応性が高いという広く持たれている見方とは反対に、本発明者らは、驚くべきことに、別々の抗原−抗原提示化合物にコンジュゲートされた同じ標識を複数回使用することにより確かに抗原応答性細胞の検出が可能になることを発見した。
【0027】
単一のサンプルで上記組合せエンコーディングが利用可能であるか否かを判定する重要な要因の別の1つは、方法の弁別力、または換言すると、蛍光色素などの標識の各個別の組合せを別個に検出できることである。蛍光色素などの標識の使用は、内在的に、それよりも下では特異性検出が不可能であるバックグラウンド信号を与える。このことから、2つの標識を用いる場合、バックグラウンド信号は増大し、こうして検出限界になり、3つの標識などを用いる場合はさらに増大することが内在的にわかる。
【0028】
本発明者らは、驚くべきことに、バックグラウンド(非特異性)信号の増大による予測される弁別力の低下とは反対に、蛍光色素などの2つ以上の標識を用いた複数の抗原のエンコーディングは、2標識抗原コーディングシステムではバックグラウンド信号を10倍低減し、これによりシステムの感受性の実質的な増大が可能になることを発見した。システムのこの増大した感受性により、抗原の複数の検出、すなわち複数種の抗原応答性細胞の検出が可能性となり、これにより本発明に従う方法を提供する。
【0029】
さらに、とりわけ、バックグラウンド信号の上記観察される低下、したがって増大した感受性により、抗原提示化合物非特異性結合によるアッセイの感受性に対する予測される好ましくない影響が大幅に低減され、これにより本発明に従う方法がさらに提供される。
【0030】
本方法の好ましい実施形態に従うと、抗原提示化合物には1つの標識が付与され、抗原は、少なくとも2つの異なって標識付けされた抗原提示化合物によって表わされるかまたはエンコードされる。
【0031】
換言すると、この好ましい実施形態に従うと、検出すべき各個別の抗原(またはエピトープ)は、異なる蛍光発光蛍光色素などの異なって検出可能な標識を各々が有する少なくとも2つの抗原提示化合物に負荷される。
【0032】
本方法の別の好ましい実施形態に従うと、抗原提示化合物は、たとえばMHCにコンジュゲートされるまたは共有結合される、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、7つ、または8つなど少なくとも2つの異なる標識を付与され、抗原は1つの複数標識付け抗原提示化合物によって表わされる(またはエンコードされる)。
【0033】
換言すると、この好ましい実施形態に従うと、検出すべき各個別の抗原(またはエピトープ)は、異なる蛍光発光蛍光色素などの少なくとも2つの異なる標識を付与された単一の抗原提示化合物に負荷される。
【0034】
本発明に従う抗原は好ましくはペプチドである。このペプチドは、たとえばウイルスまたは腫瘍細胞などの既知の免疫原性エピトープを表わし、これによりたとえばこの抗原に応答する免疫細胞の存在の検出、およびその後のウイルス感染または癌の診断を可能にすることができる。
【0035】
本ペプチドは未知のエピトープも表わすことができ、このエピトープに応答する細胞の検出は、このペプチド内の免疫原性アミノ酸配列の存在を示し、これにより、たとえばポリペプチドなどの免疫原性領域またはエピトープの同定を可能にする。
【0036】
本発明に従う抗原提示化合物は、好ましくは、添付された標識または複数の標識に抗原をリンクする。T細胞の場合、本発明に従う抗原提示化合物は好ましくは主要組織適合抗原複合体(MHC)であり、好ましくは4以上の多量化主要組織適合抗原複合体(MHC)であることがより好ましい。たとえばB細胞の場合ではなくT細胞の場合、抗原提示化合物は好ましくは抗原と抗原応答性細胞との間の交互作用に強く寄与し、したがってこれを増大させる。
【0037】
主要組織適合抗原複合体(MHC)の使用は、これらの化合物が自然に抗原提示可能であるからだけでなく、本方法で用いるのに本標識付け抗原提示化合物を与えるために、容易に利用可能な技術を利用可能であるからという理由で有利である(Rodenko et al., 2006)。
【0038】
本発明に従う好ましい抗原応答性細胞はT細胞および/またはB細胞であり、より好ましくはT細胞である。
【0039】
本発明に従う標識は好ましくは蛍光標識であり、より好ましくは、当該技術分野のようにQdotとして指定される蛍光標識である。
【0040】
本方法の好ましい実施形態に従うと、単一のアッセイで用いられる異なる標識の数は、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、および8以上からなる群から選択される。
【0041】
さらに別の好ましい実施形態に従うと、各個別の抗原は、少なくとも3つまたは少なくとも4つの異なる標識で表わされる。Qdotなどの3以上または4以上すらの標識を用いて単一の抗原をエンコードすることにより、単一の中で検出すべき潜在的抗原応答性細胞の数が劇的に増大する。これは、単一の抗原をエンコードするまたは表わすのに利用可能なチャネルまたは組合せの数を示す図1に例示されている。
【0042】
単一の抗原をエンコードする単一の標識は、利用可能な標識の数と同数の種の抗原応答性細胞の弁別を可能にするであろう一方で、2つ、3つまたは4つの標識による同じ抗原のエンコーディングは検出可能な抗原を表わす細胞の種の数を劇的に増大させる。
【0043】
本発明に従うと、本方法は好ましくは単一のサンプルにおいて行なわれ、サンプルは好ましくは血液サンプルである。
【0044】
本明細書中で定義されるように、「血液サンプル」という用語は、個体から直接に得られた血液サンプルに限定されるだけではなく、直接に得られた血液サンプル由来のまたはそれらから発するサンプルにも限定される。ただしこれは、これらの由来サンプルが元々存在する抗原応答性細胞を依然として備えるという制限の下でである。
【0045】
本方法の特に好ましい実施形態に従うと、抗原応答性細胞の検出はフローサイトメトリ分析を備える。
【0046】
上記を考慮して、本発明は、別の局面で、サンプル中の抗原応答性細胞の検出のための、単一の抗原を表わす本少なくとも2つの標識の使用にも関する。
【0047】
さらなる局面に従うと、本発明は、癌などの疾患または病状の診断のための本方法の使用に関する。
【0048】
またさらなる局面に従うと、本発明は、免疫療法薬を開発するための本方法の使用に関する。
【0049】
別の局面に従うと、本発明は、ワクチン開発のための本方法の使用に関する。
また別の局面に従うと、本発明は、ポリペプチド中のエピトープまたは免疫原性アミノ酸配列の同定のための本方法の使用に関する。この局面は、本発明に従う方法を用いて、未知のHLA−A3関連T細胞抗原であるQLRALDGGNK,SLYRDPLPR,HAYIQSLLK,RMYNMVPFFおよびGTYEGLLRRの同定に例示される。
【0050】
したがって、本発明は、QLRALDGGNK,SLYRDPLPR,HAYIQSLLK,RMYNMVPFFおよびGTYEGLLRRからなる群から選択されるHLA−A3関連T細胞抗原;免疫療法薬およびワクチンのモニタにおける本HLA−A3関連T細胞抗原またはその機能的誘導体の使用;ならびに、免疫療法薬およびワクチンの開発における本HLA−A3関連T細胞抗原またはその機能的誘導体の使用にも関する。
【0051】
本発明の原則は、本発明の好ましい実施形態を示す実施例でさらに詳細に説明されるであろう。実施例では、以下の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一および二次元(左)または一−四次元(右)コーディングスキームにおける増大する数の蛍光色素を用いて行なうことができる一意な色組合せの理論的数を示す図である。
【図2】8つの蛍光色素の二次元マトリックスを用いて抗原をエンコードするのに使用可能な28の一意な色組合せを示す図である。
【図3】2色エンコードされたpMHCマルチマーの使用によるバックグラウンド信号の低減を示し、灰色の棒は、CMVNLVエピトープ(「CMV」)または対照p*ペプチド(バックグラウンド)のいずれかを含有するMHCマルチマーの25の異なる2色エンコードされた組合せで染色されたPBMCであり、黒の棒は、CMVNLVエピトープ(「CMV」)または対照p*ペプチド(「バックグラウンド」)のいずれかを含有する8つの異なる単色エンコードされたMHCマルチマー(PE、APC、Q565、Q585、Q605、Q655、Q705およびQ800)で染色されたPVMCである、図である。
【図4】2色エンコードされたpMHCマルチマーで染色した後のpMHC特異性T細胞の同定に用いられるゲーティングストラテジーの概略図である。
【図5】組合せコーディングによるウイルス特異性T細胞応答の多重検出を示し、ウイルス特異性T細胞応答は3人の健常なドナーのPBMCにおいて:I)各々が2色コードでエンコードされた25の異なるpMHCマルチマーのミックスで1つのサンプルを染色することによって;II)特異性2色コードに連結された25のペプチドのうち1つを含有するpMHCマルチマーで25の個別のサンプルを染色することによって;III)25のペプチドのうち1つを含有する古典的なPE標識付けMHCマルチマーで25の個別のサンプルを染色することによって;またIV)各々が2色コードでエンコードされた無関係のpMHCマルチマーのミックスで1つのサンプルを染色することによって分析され:I−IVは、′Iでの頻度>0.03%で検出された抗原特異性T細胞集団の点プロットであり、Vは、PE標識付けMHCマルチマー染色(塗り潰し四角)によって;サンプル当たり25の特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(塗り潰し菱形)によって;サンプル当たり1つのpMHC特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(塗り潰し三角)によって;対照ペプチドで負荷された2色エンコードされたMHCマルチマー(白抜き菱形)によって検出されるような、用いる25のエピトープに対して向けられる抗原特異性CD8+T細胞の頻度をグラフで表わす(補足の表1)、図である。
【図6】組合せコーディングによるウイルス特異性T細胞応答の多重検出を示し、ウイルス特異性T細胞応答は3人の健常なドナーのPBMCにおいて:I)各々が2色コードでエンコードされた25の異なるpMHCマルチマーのミックスで1つのサンプルを染色することによって;II)特異性2色コードに連結された25のペプチドのうち1つを含有するpMHCマルチマーで25の個別のサンプルを染色することによって;III)25のペプチドのうち1つを含有する古典的なPE標識付けMHCマルチマーで25の個別のサンプルを染色することによって;またIV)各々が2色コードでエンコードされた無関係のpMHCマルチマーのミックスで1つのサンプルを染色することによって分析され:I−IVは、′Iでの頻度>0.03%で検出された抗原特異性T細胞集団の点プロットであり、Vは、PE標識付けMHCマルチマー染色(塗り潰し四角)によって;サンプル当たり25の特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(塗り潰し菱形)によって;サンプル当たり1つのpMHC特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(塗り潰し三角)によって;対照ペプチドで負荷された2色エンコードされたMHCマルチマー(白抜き菱形)によって検出されるような、用いる25のエピトープに対して向けられる抗原特異性CD8+T細胞の頻度をグラフで表わす(補足の表1)、図である。
【図7】組合せコーディングによるウイルス特異性T細胞応答の多重検出を示し、ウイルス特異性T細胞応答は3人の健常なドナーのPBMCにおいて:I)各々が2色コードでエンコードされた25の異なるpMHCマルチマーのミックスで1つのサンプルを染色することによって;II)特異性2色コードに連結された25のペプチドのうち1つを含有するpMHCマルチマーで25の個別のサンプルを染色することによって;III)25のペプチドのうち1つを含有する古典的なPE標識付けMHCマルチマーで25の個別のサンプルを染色することによって;またIV)各々が2色コードでエンコードされた無関係のpMHCマルチマーのミックスで1つのサンプルを染色することによって分析され:I−IVは、′Iでの頻度>0.03%で検出された抗原特異性T細胞集団の点プロットであり、Vは、PE標識付けMHCマルチマー染色(塗り潰し四角)によって;サンプル当たり25の特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(塗り潰し菱形)によって;サンプル当たり1つのpMHC特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(塗り潰し三角)によって;対照ペプチドで負荷された2色エンコードされたMHCマルチマー(白抜き菱形)によって検出されるような、用いる25のエピトープに対して向けられる抗原特異性CD8+T細胞の頻度をグラフで表わす(補足の表1)、図である。
【図8】異なるT細胞染色アプローチ間の相関を示し、古典的なPE標識付けMHCマルチマー染色(X軸)およびサンプル当たり25の特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー染色(Y軸)によって検出されるような抗原特異性T細胞頻度間の相関を示す、図である。
【図9】異なるT細胞染色アプローチ間の相関を示し、サンプル当たり1つのpMHC特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー(X軸)およびサンプル当たり25の特異性を有する2色エンコードされたMHCマルチマー染色(Y軸)によって検出されるような抗原特異性T細胞頻度間の相関を示す、図である。
【図10】メラノーマ関連ペプチドに対するT細胞の応答を示し、HLA−A3−拘束性ウイルス由来T細胞エピトープ(EVBRLR、EVBRVR、FLUILR)、直接エクスビボ検出(塗り潰し三角);22のメラノーマ拘束性ペプチド、直接エクスビボ検出(塗り潰し四角);またはT細胞強化およびインビトロ増殖後の22のメラノーマ拘束性ペプチド(*)に対して向けられた、メラノーマ患者および健常ドナーにおいて検出された抗原特異性T細胞応答の要約を示す、図である。
【図11】組合せコーディングによって規定されるMHCマルチマー応答性T細胞集団のペプチド特異性を確認する細胞内IFNγ染色を示し、ペプチド番号は表2の配列を参照する、図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
実施例
方法
ペプチド−MHC複合体の生成
すべてのペプチドは標準的なFmoc化学を用いて社内で合成した、またはPepscanから購入した(オランダ、レリスタット、Pepscan Presto BV)。UVに感受性のあるビルディングブロックJを記載のように合成した(Toebes et al., 2006)。組換HLA−A1、−A2、−A3、および−B7重鎖およびヒトβ2m軽鎖は大腸菌で生産した。MHCクラスIリフォルディング反応は記載のように行なわれ(Garboczi et al., 1992)、かつMHCクラスI複合体はPBSにおけるゲルろ過HPLCによって精製した(pH7.4)。
【0054】
特異性ペプチド−HLA複合体はMHCペプチド交換によって生成した。p*HLA複合体(100μg/mL)を、示されたペプチド(200μM)の存在下で1時間、366nmのUV光(Camag)に露光した。交換の後、サンプルを5分間16,000gでスピンし、上澄みをMHCマルチマー形成に用いた。
【0055】
MHCマルチマーの生成
MHCマルチマーは、SA−Qdot565、SA−Qdot585、SA−Qdot605、SA−Qdot655、SA−Qdot705、SA−Qdot800、SA−フィコエレクチン(phycoerectin)(PE)およびSA−アロフィコシアニン(APC)という8つの異なる蛍光ストレプトアビジン(SA)コンジュゲート(Invitrogen)を用いて生成した。MHCモノマー(濃度100μg/mL)各100μL毎に、7.08μLのSA−Qdotコンジュゲート(1μM)、10.8μLのSA−PE(1mg/ml)または6μLのSA−APC(1mg/ml)を加え、その後氷の上で20分間インキュベートした。MHCペプチド交換後100%救出されたと仮定すると、これはSA−Qdot当たり30個のMHCモノマーの占有率という結果となるであろう。ビオチン(Sigma)およびNaN3(Sigma)を、26.4μMおよび0.02%の最終濃度にそれぞれ加え、その後氷の上で20分間インキュベートした。PEおよびAPC標識付け複合体を0.02%のNaN3でPBS中で2倍に希釈した。各pMHC複合体毎に、表1および表2のスキームに従って2つの異なる蛍光標識でマルチマーを作った。
【0056】
組合せT細胞染色について、同じ特異性のマルチマー複合体は、Q605、Q655、Q705、PEおよびAPC標識付け複合体については1:1で、任意の他の色と組合せたQ565、Q585およびQ800標識付け複合体については2:1で混合した。Q565、Q585およびQ800の組合せは除外した。組合せコーディングによるT細胞応答の分析のための組合せpMHC混合物はプーリングによって生成し、T細胞染色用の50倍濃縮されたすぐに使える株として4℃で貯蔵した。使用前に、MHCマルチマーを2分間17,000gでスピンし、上澄みを使用した。
【0057】
T細胞染色
約1×106のPBMCまたは2×105の培養されたT細胞のT細胞染色について、2μLの単一のpMHCマルチマーまたは50μLの2色エンコードされたpMHCコレクション(collections)(最終濃度:初期モノマー濃度ベースで別々のpMHC当たり2μg/mL)を用いた。最終染色容量は80μlであり、37℃で10分間細胞をインキュベートした。次に、CD8−Alexa700(Caltech MHCD0289)(最終希釈1/200)、CD4−FITC(BD345768)(最終希釈1/8)、CD14−FITC(BD345784)(最終希釈1/32)、CD19−FITC(BD345776)(最終希釈1/16)、CD40−FITC(Serotech MCA1590F)(最終希釈1/40)、CD16−FITC(BD347523)(最終希釈1/64)からなる5倍抗体ミックス20μLを加え、4℃で20−30分間細胞をインキュベートした。フローサイトメトリの前に細胞を2回洗浄し、死んだ細胞を排除できるようにヨウ化プロピジウムを加えた。
【0058】
フローサイトメトリ
488nmのレーザ:PI:685LP、695/40;PE:550LP、575/26;FITC:505LP、530/30;SSC:488/10.633nmのレーザ:Alexa700:685LP、730/45;APC:660/20.405nmのレーザ:Qdot800:770LP、800/30;Qdot705:680LP、710/50;Qdot655:635LP、660/40;Qdot605:595LP、650/12.355nmのレーザ:Qdot585:575LP、585/15;Qdot565:545LP:560/20という11色器具設定を用いてFacsDivaソフトウェアでLSR−IIフローサイトメータ(Becton Dickinson)に対してデータ取得を行なった。
【0059】
各分析毎に約200,000個のリンパ球が記録された。抗原特異性T細胞を同定するため、以下のゲーティングストラテジーを用いた:1)(PI陰性、FSC−W/Hロー、SSC−W/Hロー、FSC/SSC−Aを用いた)生きた単一細胞リンパ球の選択、2)CD8陽性および「ダンプ(dump)」(CD4、14、16、19、40)陰性細胞の選択、3)2つのMHCマルチマーチャネルで陽性かつ6つの他のMHCマルチマーチャネルで陰性のCD8+T細胞の選択。
【0060】
抗原特異性T細胞の強化
4℃で1時間、PE−マルチマーで抗原特異性T細胞を染色した(107のPBMCについて1.25μLの各個別のPE−マルチマーの100μg/mLの株)。その後、細胞を洗浄し、20μLの抗PE Absコーティングされた磁気ビーズ(Miltenyi)でインキュベートした。次に、LSカラムを用いてかつ製造者のプロトコールに従って、MACS(Miltenyi)によって細胞を単離した。溶出した細胞を洗浄し、5000個の抗CD3/CD28ダイナビーズ(Invitrogen)を用いて、10%のヒト血清(Invitrogen)、100IU/mLのIL−2(Proleukin)、および20ng/mLのIL−15(Peprotech)で、200μLのT細胞媒質(IMDM(Gibco)中で再懸濁した。強化された細胞を96ウェルプレートで培養し、翌日再懸濁した。培養物(cultures)を分け、少なくとも週に2回媒質を取換えた。2、3週間後、組合せコーディングに基づくMHCマルチマーフローサイトメトリによって抗原特異性T細胞応答を測定した。
【0061】
T細胞分類および培養物
関連のpMHCマルチマーでT細胞を染色し、次にMoFlo(Dako)またはFACSAria(Becton Dickinson)上で、105個の照射されたフィーダ細胞(JY plus同種PBMC)に分類した。細胞をスピンし、10%のヒト血清、100IU/mLのIL−2、および0.5μg/mLのPHA(Biochrom AG)でIMDM中に再懸濁した。隔週に培養物に再び刺激を与えた。MHCマルチマー染色により、抗原特異性について樹立された培養物をテストした。
【0062】
サイトカイン放出アッセイ
示されたペプチドを1時間T2−A3細胞に負荷し、これを1回洗浄した。次に、示された培養物からの1×105個のT細胞を、10%のヒト血清およびタンパク質輸送抑制剤(BD GolgiPlug)を用いて、IMDM中で37℃で4時間1×105個のT2−A3細胞とともにインキュベートした。25℃で15分間、PEコンジュゲートされた抗CD8 Ab(SK1、BD)で細胞を染色し、固定しかつ透過処理し(BD Cytofix/Cytopermキット)、4℃で30分間、APCコンジュゲートされた抗IFNガンマAb(25723.11、BD)で染色した。フローサイトメトリでサンプルを分析し(Cyan, Dako)、FlowJoを用いてデータ分析を行なった。
【実施例1】
【0063】
対象の標的細胞に対する規定されたコードのアセンブリに基づく組合せエンコーディングスキームを開発する目的で、まず、抗原特異性T細胞応答の検出用の6つの異なる量子ドット(Qdot、図2に特性を列挙)のセットを用いる可能性を判定した。
【0064】
量子ドットとは、多数の蛍光色素を同時に用いる実験によく適合する非常に狭い発光スペクトル(REF)を呈する直径および組成に基づいて別々の発光波長を有する蛍光ナノ結晶である。
【0065】
末梢血CMV特異性CD8+T細胞応答の分析により、ストレプトアビジンコンジュゲートされたQdot、または標準的なアロフィコシアニン(APC)、またはフィコエリトリン(PE)に連結することによってマルチマー化されたMHC複合体はすべて、抗原特異性T細胞集団を検出するのに利用可能であることが確立された(データ示されず)。
【0066】
その後、同じ抗原性ペプチドを含有するが異なる蛍光色素に連結される2つのMHCマルチマーを結合することによって抗原特異性T細胞集団も確実に同定可能かどうかテストした。異なる2つの蛍光色素のすべての28の可能な組合せにコンジュゲートされたpMHCクラスI複合体のテストは、そのような二重エンコーディングがすべての場合において適切なT細胞集団を同定可能であることを実証した。
【0067】
同じ抗原性ペプチドを含有する2つの異なって標識付けされたMHCマルチマーで同時にT細胞を染色することにより、T細胞表面上の利用可能なTCRの限られたセットに結合するための競合のために、各チャネル毎の蛍光強度に小さな低下が生じる(等モルで2倍)。抗原特異性T細胞集団を視覚化できることに対する競合の好ましくない影響を限定するため、フローサイトメトリックシステム(Q565、Q585およびQ800)において最も強度の低い信号を与えた3つのqDotを、他の蛍光色素に対して1:1の比率よりはむしろ2:1の比率で用い、その後の実験では、比率の調整が実際的でないことが明らかであるQ565+Q585、Q565+Q800、およびQ585+Q800の組合せを用いなかった。
【0068】
本実施例は、同じ抗原で負荷された異なって標識付けされた抗原提示化合物が抗原応答性細胞に結合することができ、それによりこれらの異なる標識の検出を通してサンプル中のこれらの細胞の検出が可能になることを示す。
【実施例2】
【0069】
抗原特異性T細胞集団は非常に低頻度で存在し得、MHCマルチマーはフローサイトメトリにおいてバックグラウンド染色を確かに示す。組合せコードの使用により抗原特異性T細胞の検出がバックグラウンドレベルに影響するか否か、または検出される抗原特異性T細胞の頻度をテストするため、HLA−A2 CMVNLV特異性T細胞を含有するPBMCを、対照マルチマーでまたはHLA−A2 CMVNLVマルチマーで染色し、フローサイトメトリで分析した。
【0070】
具体的に、PBMCは、8つの別個の染色において8つの異なる単一エンコードされたMHCマルチマーで、または25の別個の染色において25の二重エンコードされたMHCマルチマーのいずれかでインキュベートされた。(単色染色の場合)1つのチャネルでバックグラウンドより上に染色された場合、または(2色染色の場合)関連チャネルの両方で陽性の染色の場合、T細胞が陽性と考えられた。
【0071】
図3に見られるように、バックグラウンドサンプル中の(偽陽性)細胞の頻度は、伝統的な単一染色アプローチと比較して二重エンコーディングスキームを用いた場合は約10倍低く、MHCマルチマーの2色エンコーディングがバックグラウンド信号を低減するのに強力なツールであることを示す。
【実施例3】
【0072】
2色エンコーディングの可能性を確立したので、次に、複数の2色エンコードされたpMHCマルチマー染色を単一のサンプルに対して並列に行なうことができるか否かを調べた。単一のサンプル中の2色エンコードされたpMHCマルチマーの任意のものと反応するT細胞を分析するため、ゲーティングストラテジーをまず開発した(図4)。
【0073】
簡単に述べると、前方および側方散乱、細胞の幅/高さ、および陰性ヨウ化プロピジウム染色に基づいて、単一の生細胞を選択した。このプールから、CD8について陽性、CD4、CD14、CD16、CD19およびCD40について陰性(「ダンプ」チャネル、van Oijen et al., 2004)に染色された細胞が関連のCD8+T細胞としてさらに同定された。2色エンコードされたpMHCマルチマーの任意のものと反応する分析されたT細胞集団に対して、MHCマルチマー生成に用いた8つの個別の蛍光色素の各々に基づいてゲートが生成された。
【0074】
2つのチャネルの所与の組合せにおけるバックグラウンドよりも上の信号を示し、残余の6つのチャネルにおいて陰性であるT細胞を同定するこのストラテジーは、バックグラウンド染色を同時に低減しながら、1回のフローサイトメトリ実験において25の異なる組合せの同時分析を可能にする。
【実施例4】
【0075】
T細胞応答の大規模分析において組合せコーディング技術の潜在値をテストするため、MHCペプチド交換(Toebes et al., 2006;Rodenko et al., 2006;Bakker et al., 2008)によってヒトMHC対立遺伝子HLA−A1、−A2,−A3および−B7(表1)のための、分かっているウイルスおよび癌関連のエピトープの範囲を含有する25の異なるMHCマルチマーのパネルを生成した。これらのpMHCマルチマーの各々はその後、表1に記載の一意なコードのセットを生成する2つの蛍光色素に連結された。
【0076】
組合せコーディングによって得られたデータを従来のMHCマルチマー分析と比較できるように、25の異なるpMHCマルチマーのセットをPEにも連結した。さらに、組合せエンコーディングのバックグラウンドを判定するため、すべての2つの色組合せにおける無関係pMHCマルチマーのセットも準備した。その後、1)pMHCマルチマーを含有する2色エンコードされたウイルスおよび癌エピトープのコレクションでの1回の単一染色、2)2色エンコードされた無関係pMHCマルチマーのミックスでの1回の単一染色、3)すべての25のPE標識付けpMHCマルチマーでの25の別個の染色、または4)すべての個別の2色エンコードされたpMHCマルチマーでの25の別個の染色によって、すべての4つのHLA対立遺伝子をカバーする3人の健常ドナーからのPBMCを次に分析した。
【0077】
「1」および「4」の比較は特に関心がある。というのも、これは、同じ蛍光色素で標識付けされる大量の無関係のpMHCマルチマーの同時の存在、または高いpMHC濃度の存在がバックグラウンド信号に影響するか否かを明らかにするからである。
【0078】
実験は、ドナーのHLAハプロタイプに対して、およびこれらのドナーにおける抗原特異性T細胞応答の先の分析に対しての両方について盲検法で行なわれた。これらのアプローチを用いた3人のドナーにおける疾患/病原体特異性T細胞応答の分析は、pMHCマルチマーの組合せエンコーディングにより1つの単一のサンプルにおける多数の抗原特異性T細胞集団の視覚化が可能になることを明らかにした(図5−図7)。
【0079】
重要なことに、多数の一連の個別のPEマルチマー染色によって分析した際に同じウイルス特異性T細胞集団が各ドナーに見つかった。さらに、別個のPE連結MHCマルチマー染色と25の二重コードされたMHCマルチマーのコレクションを用いた多重染色との直接の比較により高頻度および低頻度のT細胞集団を両方調べると(図8)、抗原特異性T細胞集団を視覚化するための2つのアプローチの間に非常に高い相関が明らかになる。
【0080】
さらに、25の別個の染色で用いた2色エンコードされたpMHCマルチマーの同じセットに対する1つのサンプル中の2色エンコードされたpMHCマルチマーのコレクションで染色されたPBMCの分析によって得られたデータの比較も、非常に高い相関を明らかにする(図9)。
【0081】
この後者の発見は、異なるペプチドを含有する多数のMHC複合体に同じ蛍光色素が連結された場合ですら、各pMHCマルチマーが蛍光色素の別々の組合せに連結されるMHCマルチマーのセットを用いたインキュベーションによる複数の抗原特異性の同時測定の可能性があることを示す。
【0082】
このように、染色ミックス中の多くの無関係pMHC複合体のうち任意のものとのT細胞の潜在的な交差反応は問題ではないことが示される。さらに、これらの観察は、高濃度の多量化MHC分子を含有する混合物を用いることがMHCマルチマー染色に干渉しないことを示している。最終的に、疾患/病原体関連エピトープで占有された2色エンコードされたpMHCのセットを用いた場合に観察される信号を25の無関係MHCマルチマーのコレクションを用いた場合に観察される信号と比較することにより、アプローチの感受性が高く、CD8陽性細胞の0.03%程度に頻度の低いT細胞集団を同定可能であることが示される(図5−図7)。
【実施例5】
【0083】
以上の実験は、単一のサンプル中の多数のT細胞集団を視覚化するのに企図される組合せコーディングアプローチを利用可能であることを実証したので、エピトープ同定におけるその潜在値を評価した。
【0084】
潜在的HLA−A3関連メラノーマエピトープを同定するために設置される最新のスクリーンにおいて、HLA−A3について高い結合親和性を表示した4つの異なるメラノーマ関連タンパク質から22のペプチドを同定した。このセットはすべての4つの以前に記載されたHLA−A3関連のエピトープおよび18の潜在的な新規のエピトープを含んだ。
【0085】
(潜在的な)エピトープのセットに対する応答について小さな患者サンプルをスクリーニングする可能性を扱うため、すべての22のエピトープならびに3つのHLA−A3関連EBV−およびインフルエンザA由来エピトープについて、ペプチド交換によってMHC試薬を生成した。低レベルのT細胞応答も明らかにできるように、可能な腫瘍関連エピトープを含有する22のpMHCマルチマーを用いた単一のMACSベースの強化ステップを行ない、その後短期の強化細胞のインビトロ増殖を行なった。
【0086】
次に二次元組合せコーディングスキームにおいて25の異なるpMHCマルチマーを2つの蛍光色素に連結し、27のHLA−A3陽性メラノーマ患者からの強化PBMCをスクリーニングするのに用いた。
【0087】
並列MHCマルチマー染色のこのアプローチを用いて、3つの前述のgp100関連エピトープに対して向けられたT細胞応答の存在を確認することができた。さらに、ヒトgp100(QLRALDGGNK)由来の以前は未知のエピトープに対して、ノーダル(Nodal)(SLYRDPLPRおよびHAYIQSLLK)由来の以前は未知の2つのエピトープに対して、およびTyrp2(RMYNMVPFF)由来の以前は未知の1つのエピトープに対して、CD8+T細胞応答が観察された(表2)。
【0088】
重要なことに、10人の健常なHLA−A3+ドナーからのPBMCを同じ態様で分析した場合、ドナーのいずれにも応答が観察されなかった一方で、ウイルスエピトープに対するT細胞応答は両方のグループで等しく豊富であった(図10)。
【0089】
観察されたT細胞集団が対応のペプチドを表示する標的細胞に対して機能的活性を示すか否かを判定するため、異なる患者からのPBMCから抗原特異性T細胞を分類し、インビトロで増殖した。次に、結果的に得られたT細胞集団を、ペプチドを負荷された標的細胞でのインキュベーション後に細胞内サイトカインアッセイを用いて抗原特異性についてテストした(図11)。
【0090】
すべての培養物は、それらの同源の抗原でインキュベートされるとIFNガンマ発生を表示した(図11)。ペプチドで負荷されなかった細胞でT細胞培養物がインキュベートされた場合、応答は観察されなかった。
【0091】
これらの結果は、HLA−A3に対して高い結合親和性を有する前述のペプチドの一覧が、メラノーマ患者においてT細胞応答を観察可能な少なくとも8つのメラノーマ関連エピトープ、なおそのうち5つは前述されていないが、これを含有していることを示す。さらに、入手可能な患者材料に対して行なわれたスクリーンは、本発明に従う抗原特異性の多色エンコーディングによって与えられる多重分析の可能性なしには見込みがなかったであろう。
【0092】
結論
本発明に従う組合せコーディング技術は、複数の免疫応答の同時検出および分析のための貴重なツールであることが実証される。
【0093】
単一のサンプル内の多数の異なるT細胞集団の並列検出を可能にする組合せコーディングストラテジーが開発された。組合せコーディングによる末梢血からの抗原特異性T細胞の検出は、従来のPE標識付けマルチマーを用いた検出と同程度に効率的であるが、結果的に大幅に増大した感受性をもたらし、最も重要なことには、患者材料に対して包括的なスクリーンを行なえることである。
【0094】
メラノーマ患者の末梢血中の分かっているおよび潜在的なメラノーマ関連抗原に対するT細胞応答を分析することにより、患者材料の大規模スクリーニングの可能性が実証された。これらのスクリーンは、分かっているT細胞エピトープに対するT細胞応答の存在を確認し、HLA−A3の文脈で多数の新規なメラノーマ関連T細胞応答の同定をもたらした。
【0095】
ペプチド−MHCコンジュゲートの組合せコーディングは、単一のサンプル中の抗原特異性T細胞免疫性の高スループット分析を可能にすると結論付けられる。
【0096】
【表1】
【0097】
【表2】
【0098】
【表3】
【0099】
【表4】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の抗原応答性細胞を検出するための方法であって、
少なくとも1つの標識を保持する抗原提示化合物に2つ以上の予め定められた抗原を付与するステップを備え、各々の抗原は少なくとも2つの異なる標識で表わされ、さらに
抗原を担持する前記抗原提示化合物を前記サンプルと接触させるステップと、
抗原を負荷された前記抗原提示化合物の、前記抗原応答性細胞への結合を検出し、これにより前記抗原に応答する細胞を検出するステップとを備え、
前記抗原は、前記抗原を負荷された前記抗原提示化合物によって抗原応答性細胞に結合される前記少なくとも2つの異なる標識の存在を検出することによって検出される、方法。
【請求項2】
前記2つ以上の予め定められた抗原は、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、20以上、21以上、22以上、23以上、24以上、25以上、26以上、27以上、および28以上からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗原提示化合物には1つの標識が付与され、前記抗原は、少なくとも2つの異なって標識付けられた抗原提示化合物によって表わされるかまたはエンコードされる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗原提示化合物には少なくとも2つの異なる標識が付与され、前記抗原は、1つの標識付けされた抗原提示化合物によって表わされるかまたはエンコードされる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記抗原はペプチドである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記抗原提示化合物は主要組織適合抗原複合体(MHC)である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記主要組織適合抗原複合体(MHC)は、好ましくは少なくとも4つのモノマーからなる多量化主要組織適合抗原複合体(MHC)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗原応答性細胞はT細胞および/またはB細胞である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記標識は蛍光標識である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記蛍光標識はqDotを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
異なる標識の数は、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、および8以上からなる群から選択される、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記抗原は少なくとも3つまたは少なくとも4つの異なる標識で表わされる、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルは血液サンプルまたは血液由来のサンプルである、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記検出はフローサイトメトリを備える、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
サンプル中の抗原応答性細胞を検出するための単一の抗原を表わす、請求項1から14のいずれかに規定されるような少なくとも2つの標識の使用。
【請求項16】
好ましくは癌である疾患または病状の診断における、請求項1から14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項17】
免疫療法薬の開発における、請求項1から14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項18】
ワクチンの開発における、請求項1から14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項19】
エピトープの同定のための、請求項1から14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項20】
請求項1から14のいずれかに規定されるような、少なくとも2つの標識を用いてリガンドを標識付けするステップを備える、細胞または細胞結合レセプタへのリガンドの結合を検出するための方法。
【請求項21】
QLRALDGGNK,SLYRDPLPR,HAYIQSLLK,RMYNMVPFF、およびGTYEGLLRRからなる群から選択されるHLA−A3関連T細胞抗原。
【請求項22】
免疫療法薬およびワクチンのモニタにおける、請求項21に記載のHLA−A3関連T細胞抗原またはその機能的誘導体の使用。
【請求項23】
免疫療法薬およびワクチンの開発における、請求項21に記載のHLA−A3関連T細胞抗原またはその機能的誘導体の使用。
【請求項1】
サンプル中の抗原応答性細胞を検出するための方法であって、
少なくとも1つの標識を保持する抗原提示化合物に2つ以上の予め定められた抗原を付与するステップを備え、各々の抗原は少なくとも2つの異なる標識で表わされ、さらに
抗原を担持する前記抗原提示化合物を前記サンプルと接触させるステップと、
抗原を負荷された前記抗原提示化合物の、前記抗原応答性細胞への結合を検出し、これにより前記抗原に応答する細胞を検出するステップとを備え、
前記抗原は、前記抗原を負荷された前記抗原提示化合物によって抗原応答性細胞に結合される前記少なくとも2つの異なる標識の存在を検出することによって検出される、方法。
【請求項2】
前記2つ以上の予め定められた抗原は、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、10以上、11以上、12以上、13以上、14以上、15以上、16以上、17以上、18以上、19以上、20以上、20以上、21以上、22以上、23以上、24以上、25以上、26以上、27以上、および28以上からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗原提示化合物には1つの標識が付与され、前記抗原は、少なくとも2つの異なって標識付けられた抗原提示化合物によって表わされるかまたはエンコードされる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記抗原提示化合物には少なくとも2つの異なる標識が付与され、前記抗原は、1つの標識付けされた抗原提示化合物によって表わされるかまたはエンコードされる、請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記抗原はペプチドである、請求項1から4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記抗原提示化合物は主要組織適合抗原複合体(MHC)である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記主要組織適合抗原複合体(MHC)は、好ましくは少なくとも4つのモノマーからなる多量化主要組織適合抗原複合体(MHC)である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗原応答性細胞はT細胞および/またはB細胞である、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記標識は蛍光標識である、請求項1から8のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記蛍光標識はqDotを備える、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
異なる標識の数は、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、および8以上からなる群から選択される、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記抗原は少なくとも3つまたは少なくとも4つの異なる標識で表わされる、請求項1から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記サンプルは血液サンプルまたは血液由来のサンプルである、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記検出はフローサイトメトリを備える、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
サンプル中の抗原応答性細胞を検出するための単一の抗原を表わす、請求項1から14のいずれかに規定されるような少なくとも2つの標識の使用。
【請求項16】
好ましくは癌である疾患または病状の診断における、請求項1から14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項17】
免疫療法薬の開発における、請求項1から14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項18】
ワクチンの開発における、請求項1から14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項19】
エピトープの同定のための、請求項1から14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項20】
請求項1から14のいずれかに規定されるような、少なくとも2つの標識を用いてリガンドを標識付けするステップを備える、細胞または細胞結合レセプタへのリガンドの結合を検出するための方法。
【請求項21】
QLRALDGGNK,SLYRDPLPR,HAYIQSLLK,RMYNMVPFF、およびGTYEGLLRRからなる群から選択されるHLA−A3関連T細胞抗原。
【請求項22】
免疫療法薬およびワクチンのモニタにおける、請求項21に記載のHLA−A3関連T細胞抗原またはその機能的誘導体の使用。
【請求項23】
免疫療法薬およびワクチンの開発における、請求項21に記載のHLA−A3関連T細胞抗原またはその機能的誘導体の使用。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
【公表番号】特表2012−507267(P2012−507267A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533542(P2011−533542)
【出願日】平成20年11月3日(2008.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009356
【国際公開番号】WO2010/060439
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(504403840)
【出願人】(510050188)スティヒティング ヘット ネーデルランド カンケル インスティテュート (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月3日(2008.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009356
【国際公開番号】WO2010/060439
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(504403840)
【出願人】(510050188)スティヒティング ヘット ネーデルランド カンケル インスティテュート (3)
【Fターム(参考)】
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