説明

サンプル生体材料の1種以上のサンプル成分を分離及び単離するための方法、システム及び装置

サンプル材料を各種サンプル成分に分離した後にサンプル成分の1種以上を後続処理又は分析用に単離するのに使用するためのデバイス、システム及び方法を開示する。デバイスは場合によりサンプル材料を分離導管内の分離マトリックスでサンプル成分に電気泳動分離させる構成を利用する。その後、サンプル成分を分離導管の検出ゾーンで検出した後、検出ゾーンで受信した情報に基づいて選択された成分を後続処理又は分析用に検出ゾーンの下流のデバイス内の成分収集導管に分岐することができる。これらのデバイスを使用する方法と、これらのデバイスを組込んだシステムにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願とのクロスリファレンス)
本願は米国仮特許出願第60/369,371号(出願日2002年4月2日)の優先権を主張し、その開示内容全体を全目的で参考資料として本明細書に組込む。
【背景技術】
【0002】
分離分析は生体研究の重要な部分であり、各種生体サンプル、反応生成物等を特性決定することができる。一般的な分離分析の例としては、高分子種(例えば蛋白質や核酸)の電気泳動分離が挙げられる。キャピラリー電気泳動は高分子種を更に特性決定できるように分離するために非常に有効な方法であると認められている。蛋白質及び核酸分子はキャピラリー電気泳動システムを使用して日常的に分画及び特性決定されている分子種の2大典型例である。これらのシステムは一般に細いキャピラリーの表面積対容量比が高い結果として有効であることが分かっている。この高い表面積対容量比により熱放散が著しく大きくなり、従って、より大きな電場をキャピラリーに印加することができ、その結果、システムに導入された高分子を著しく迅速に分離することができる。
【0003】
分離分析には微細流路デバイスが利用され、速度と確度において実質的な利点が得られている。電気泳動手段による分子種、特に高分子種の分離に使用される新規微細流路デバイス及び方法の例は例えばその開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む米国特許第5,958,694号及び6,032,710号に記載されている。このようなデバイスでは、分離が所望される高分子種を含むサンプルを微細流路基板に配置された分離チャネルの一端に配置し、チャネルの長手方向に電圧勾配を印加する。サンプル成分がチャネルの長手方向にその内部に配置された分離(篩別)マトリックスを通って電気泳動輸送されるにつれてこれらの成分は分解される。その後、分離された成分はチャネルの長手方向の検出点、一般にはサンプルを導入した点の下流の分離チャネルの末端の近傍で検出される。検出後、分離された成分は一般に後続抽出又は廃棄のためにデバイスの収集リザーバー/ウェル(又は、例えばキャピラリーピペットを介してマルチウェルプレート等の外部デバイス)に輸送される。
【0004】
多くの状況では、分離マトリックスでフラグメントをバンドに分離した後に選択された目的フラグメント(例えばDNAフラグメント)を抽出し、後続処理又は分析(例えば制限酵素修飾、T4ライゲーション、PCR増幅、質量分析、又はポリヌクレオチドキナーゼ反応)に具することが望ましい。選択された目的DNAフラグメント(及び他の所望核酸及び蛋白質フラグメント)を分離マトリックス(例えばアガロースゲル)から抽出及び単離するために研究者により使用されている典型的方法はDNAフラグメントを適切なトランスファー媒体に手動で移し、分離されたフラグメントを染色し、発光紫外(UV)光をフラグメントに照射して分離されたバンドを可視化する。次に、カミソリ刃を使用して手動で各目的フラグメントを上下に切断する。回収したDNAをその後、処理又は分析に使用することができる。しかし、このような抽出方法は時間と手間がかかり、DNAを損傷する恐れがある(例えば目的フラグメントを切出すために照射している間にDNAが長時間紫外光に暴露されると、DNAのニッキングが生じる恐れがある)。
【0005】
従って、例えば微細流路デバイスで分離分析を実施するには、分離された成分の相対サイズ及び/又は分子量に関するデータを(例えば標準との比較により)迅速に収集できることが望ましいだけでなく、デバイスの微小寸法は自動化、速度、高価な試薬の消費低減(一般にナノリットルのオーダー)、及びより効率的な労力使用並びにスループットの増加の点で有利であるので、デバイスで更に分析又は処理するようにデバイス自体で分離された成分の1種以上を単離又は抽出できることも望ましい。その後、回収又は単離したフラグメントをデバイスで種々の処理に使用することができ、例えば小〜中サイズDNA鎖を細菌プラスミド、バクテリオファージ、及び小動物ウイルスにクローニングしてその化学分析を可能にするために十分な量の純粋なDNAを生産できるようにするためのライゲーション反応、例えばマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)を使用する質量分析計により更に分析するのに適したマトリックスで分離した蛋白質又は核酸成分を分解するための反応、後続分析用に1種以上の分離した蛋白質又は核酸成分に標識物質を結合するための結合反応、又は他の同様の検出後処理に使用することができる。更に、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)サンプルの場合には、サンプル中の主核酸フラグメントからより小さいダイマー及びプライマー分子を分離した後、より小さいプライマー及びダイマー成分を除去とその後の廃棄のために廃棄物リザーバー/セルに輸送しながら、主核酸フラグメントを後続分析又は処理用に単離及び収集できることが重要である。
【特許文献1】米国特許第5,958,694号
【特許文献2】米国特許第6,032,710号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、サンプル材料を各種サンプル成分又はフラグメントに分離した後にデバイスでの後続処理又は分析用にサンプル成分の1種以上を単離するのに使用するための改良された微細流路デバイス、システム及び方法を提供できるならば有利である。このようなデバイスは場合によりデバイスの分離導管内の分離マトリックスでサンプル材料をサンプル成分に電気泳動分離させる構成を利用することが好ましい。その後、サンプル成分を分離導管の検出ゾーンで検出した後、検出ゾーンで受信した情報(例えばサイズ情報)に基づいて選択された目的フラグメント又は成分を後続処理又は分析用に検出ゾーンの下流のデバイス内の成分収集導管に分岐することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(例えばサンプル成分の相対サイズに基づいて)サンプル材料を各種サンプル成分に分離した後にサンプル成分の1種以上を後続処理又は分析用に単離するのに使用するための方法、デバイス、及び集積システムを開示する。本発明の第1の側面において、本発明は微細流路デバイスでサンプル材料ソース中の1種以上のサンプル成分を単離する方法を提供し、本方法はデバイス内に配置された分離導管でサンプル成分を分離する段階と、分離導管の検出ゾーンでサンプル成分を検出する段階と、検出ゾーンで受信した情報に基づいてサンプル成分の選択された1種以上をデバイスのサンプル成分収集導管に輸送する段階を含む。
【0008】
前記方法は分離マトリックスを内部に配置した分離導管をもつ基板を含むシステムを利用することが好ましい。分離マトリックスの存在下で分離後に分離導管で1種以上のサンプル成分を検出するために分離導管の長手方向の第1の位置に分離導管の検出ゾーンと感覚伝達するように検出器を配置する。第1の位置の下流の第2の位置で分離導管と液体連通するサンプル成分収集導管を基板に形成する。検出器から受信した情報に基づいて分離導管からサンプル成分収集導管へのサンプル成分の移動を制御するように検出器と液体管理システムに作動的に結合したプロセッサーを構成する。具体的には、前記方法は第1のサンプル材料を分離導管に通して輸送し、第1のサンプル材料を複数のサンプル成分に分離する段階と、複数のサンプル成分を第1の位置で検出器により検出する段階と、次に、プロセッサーから液体管理システムへの命令に応答して複数のサンプル成分の選択された1種以上を分離導管からサンプル成分収集導管に移動させる段階を含む。プロセッサー(例えばコンピューター)は検出器から受信したデータを記録し、1組のプレプログラム及び/又はユーザー入力命令(例えば特定サイズ範囲のどのサンプル成分を後続処理及び分析用として成分収集導管に分岐すべきか)に従って液体管理システムのオペレーションをモニター及び命令するようにプログラムされている。
【0009】
本発明の1好適側面では、プロセッサーは検出器を通る分離成分を表す検出器からの信号を受信し、分離導管における分離成分の滞留時間を測定し、分離成分の滞留時間をサンプル材料の既知サイズの標準参照の成分の滞留時間と比較することにより分離成分のサイズを決定するのに適したプログラミングを含むコンピューターを含む。ユーザーは選択された1種以上のサンプル成分の決定されたサイズに基づいて分離された目的成分の選択された1種以上を分離導管からサンプル成分収集導管に移動させるように液体管理システムに指令するようにコンピューターに命令を入力することができる。既知サイズの標準参照は例えばDNA分離用として標準DNAサイジングラダー、又は例えば蛋白質分離用として既知分子量の標準ポリペプチドを分離することにより得られる。一般に、標準サイジングラダーを分離する段階は第1のサンプル材料を分離導管に通して輸送して第1のサンプル材料を複数の第1のサンプル成分に分離する前に実施される。輸送段階の前に参照標準サイジングラダーをサンプル材料と混合することもできる。サンプル収集導管での選択された目的フラグメントの単離は、同一分離サイクルで分離された目的成分の選択された1種以上を分離導管からサンプル成分収集導管に移動させるように液体管理システムに指令するようにコンピューターをプログラムすることにより「進行中に」実施することができる。あるいは、多重サンプルをデバイスに流す場合(即ち特定サイズのフラグメントの適正な選択と単離が不正確になる可能性がある場合)に分離マトリックスにおける個々の泳動変動の問題の潜在的影響を最小限にするためには、各ランの正確なサイズ校正を可能にする(サイジングラダーの最上及び最下バンドに対応する)既知サイズのフランキングサイズマーカーと共にサンプルを流すのが一般的である。コンピューターは当業者に周知のように既知フランキングマーカーのサイズをサイジングラダーに校正することによりサンプルランデータをリサイズするようにプログラムされている。しかし、場合により(特に多重サンプルをデバイスに流す場合には)コンピューター制御サイズ校正はサンプルがその個々のバンドに完全に分画されて上下フランキングマーカーが検出器を通過した後まで実施することができないので、(例えばデバイスの同一サンプルリザーバーから又は外部ピペッターもしくはキャピラリーエレメントによりアクセスされるマルチウェルプレートのサンプルウェルから)分離導管に2種以上のサンプル材料を流すことが必要な場合がある。コンピューターはデバイスに流す1種以上の付加サンプルの各々について再校正されたサイジングデータに基づいて選択された目的成分を(サイジング曲線との比較により)蛍光対時間曲線の特定ピーク(例えば蛍光検出スキームの場合)に対応するものとして識別するようにプログラムすることができる。サンプルを2回目(又は3回目以降)にデバイスに流す場合には、この特定ピークに対応する信号が検出器により登録されるときに収集導管への液体移動を指令するように液体管理コントローラーのオペレーションを命令するようにこの特定サンプルについてコンピューターをプログラムすることができる。従って、所与サイズのフラグメントが正確に収集導管に分岐されるように確保することができる。
【0010】
基板はローディング端と共有廃棄物端を各々もつ少なくとも1個、例えば2個以上、例えば5個(又はそれ以上)のサンプルローディング導管を含むことが好ましく、ローディング端をサンプル材料ソースと接触させ、方法はローディング導管の長手方向に電圧勾配を印加するか及び/又はサンプルローディング導管に第1の差圧を加えてサンプル材料をサンプルローディング導管のローディング端内に移動させ、サンプルローディング導管の廃棄物端に向かって移動させることにより、サンプル材料を動電的にサンプルローディング導管のローディング端内に移動させ、サンプルローディング導管の廃棄物端に向かって移動させる段階を更に含む。サンプルローディング導管と分離導管は第1の液体接点で液体連通しており、液体接点に電圧差を印加してサンプル材料をサンプルローディング導管から分離導管内に動電的に移動させることにより、サンプルローディング導管内のサンプル材料の一部を第1の液体接点に通して分離導管内に移動させる。サンプル材料を分離する段階は場合により適当な分離マトリックスの存在下で分離導管に電圧差を印加してサンプル材料を1種以上のサンプル成分に電気泳動分離する。
【0011】
本発明の1側面では、サンプル成分収集導管は少なくとも第1の物質を収容する1個以上の試薬リザーバー(又は例えば外部ピペッター)と液体結合されたデバイスの少なくとも1個以上の付加チャネルと液体連通しており、方法は所定量の第1の物質をサンプル成分収集導管に輸送して1種以上のサンプル成分と混合する段階を更に含む。第1の物質は多種多様な材料から選択することができ、例えばプラスミド、希釈剤、洗浄剤、質量分析計MALDIマトリックス、緩衝液(例えばライゲーション反応用にATP含有)、蛋白質アフィニティーラベル、ライゲーション剤又は(例えばクローニング操作に備えて特定サイズのサンプル核酸フラグメントとプラスミドのライゲーション反応を開始させるための)上記物質の1種以上の組合せが挙げられる。サンプル成分収集導管はデバイスの少なくとも1個のサンプル成分リザーバー又はウェル、例えば2個以上の収集ウェル、例えば5個の収集ウェルと液体連通しており、方法は収集とその後の回収のために1種以上のサンプル成分を少なくとも1個の収集ウェルに輸送する段階を更に含む。サンプル成分又は反応混合物(例えば収集導管でのライゲーション反応の場合)はその後、場合によりデバイスをボルテックスしてその内部の成分を均質化し、サンプルウェルから取出し易くすることにより、後続分析(例えば質量分析)又は実験用にユーザーが取出すことができる。成分サンプルをウェルから取出す前に洗浄及び精製できるように、1個以上のサンプル成分ウェルに緩衝液(例えば低導電率洗浄用緩衝液)を加えることができる。
【0012】
本発明の関連側面では、サンプル成分をサンプル材料ソースから分離し、サンプル成分の1種以上を単離するため微細流路デバイスが提供され、前記デバイスは一般に、少なくとも1個の表面をもつ基板と、基板の表面に形成された少なくとも第1及び第2のチャネルを含み、前記チャネルは第1のチャネルの長手方向の第1の位置で相互に交差し、第1及び第2のチャネルの少なくとも一方は約0.1〜約500μmの範囲の少なくとも1個の横断面寸法をもつ。分離マトリックスの存在下に第1のチャネルでサンプル材料を1種以上のサンプル成分に分離するのを制御するために少なくとも第1のチャネルにサンプル材料分離システムを作動的に結合する。1種以上のサンプル成分の検出が行われるように第1の位置の上流で第1のチャネルの長手方向の第2の位置に検出ゾーンを配置する。デバイスは検出ゾーンで受信した情報(例えばサイジング情報)に基づいて第1のチャネルから第2のチャネルへの選択された1種以上のサンプル成分の移動を制御するために少なくとも第2のチャネルに作動的に結合した液体管理システムを含む。本発明のデバイスでは微細加工液体ポンプ及びバルブシステムが容易に利用されるが、それらの製造と操作に伴う費用と複雑さにより、本発明が意図するような大量生産型で潜在的に使い捨てのデバイスでは一般に使用できない。従って、本発明のデバイスは一般には動電型液体管理システムを含む。このような液体管理システムは可動部をなくした液体管理システムのエレガンスと製造、液体制御及び廃棄し易さを兼備する。特に好ましい動電型液体管理システムの例としては例えばその開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む米国特許第6,046,056号及び5,976,336号に記載されているものが挙げられる。
【0013】
本発明は更にサンプル材料を複数のサンプル成分に分離後にサンプル材料の1種以上のサンプル成分を単離するための集積システムを提供し、前記システムは一般に少なくとも1個の表面をもつ基板と、前記表面に形成され、分離マトリックスを内部に配置した分離導管を含む。
【0014】
分離導管で1種以上のサンプル成分を検出するために分離導管の長手方向の第1の位置に分離導管と感覚伝達するように検出器(例えば光学検出器)を配置する。第1の位置の下流の第2の位置で分離導管と液体連通するサンプル成分収集導管を表面に形成する。基板は少なくともサンプル成分収集導管内の少なくともサンプル成分の移動を制御するための液体管理システムを少なくとも含む。検出器から受信した情報に基づいて分離導管からサンプル成分収集導管への1種以上のサンプル成分の移動を指令するように液体管理システムに命令するためのプロセッサーを検出器と液体管理システムに作動的に結合する。プロセッサー(例えばコンピューター)は検出器から受信したデータを記録し、1組のプレプログラム及び/又はユーザー入力命令(例えば特定サイズ範囲のどのサンプル成分を後続処理及び分析用として成分収集導管に分岐すべきか)に従って液体管理システムのオペレーションをモニター及び命令するようにプログラムされている。例えば、コンピューターは検出器を通る分離成分を表す検出器からの信号を受信し、分離導管における分離成分の滞留時間を測定し、分離成分の滞留時間をサンプル材料の既知サイズの標準参照(例えばDNA分離の場合にはDNAサイジングラダー)の成分の滞留時間と比較することにより分離成分のサイズを決定するのに適したプログラミングを含むコンピューターを含む。コンピューターは選択された1種以上のサンプル成分の決定されたサイズに基づいて分離された目的成分の選択された1種以上を分離導管からサンプル成分収集導管に移動させるように液体管理システムを制御するようにユーザーがプログラムすることができる。
【0015】
図面の簡単な説明
図1は簡易微細流路デバイスの一部の積層構造の模式図であり、夫々上面図(パネルA)、側面図(パネルB)、及び斜視図(パネルC)である。
【0016】
図2は本発明の分離分析と分離された成分の単離を実施するために特に適した微細流路デバイスのチャネル配置図である。
【0017】
図3は微細流路デバイス、コントローラー、検出器、選択要素である真空ソース、及びプロセッサーを含む総合システムの模式図である。
【0018】
図4A〜Dはサンプルを成分フラグメントに分離した後に成分単離段階を実施する図2に示したデバイスの一部の拡大模式図である。
【0019】
図5A〜Bは蛍光対時間測定値をDNAバンドプロット形態で示す代表的なコンピューター作成DNAバンドプロットであり、バンド泳動の効果(図5A)とその後の標準DNAサイジングラダーとの比較によるバンドデータの再校正(図B)を示す。
【0020】
図6A〜Dは本発明のデバイスと方法を使用して収集したフラクションを同定するための蛍光対時間プロットである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
I.発明の一般側面
本発明は一般には、例えば分離マトリックスを利用する分離機能と、その後に後続処理又は分析用として目的サンプル材料の選択成分又はフラクションを分岐又は抽出する単離機能を含む分析操作を同一デバイスで実施するための改良方法、デバイス及びシステムに関する。特に、これらの方法及びシステムは核酸フラグメント、蛋白質フラグメント等の分離と単離に特に適している。
【0022】
本発明は更に、分離導管から抽出後に例えばこのような成分を付加試薬(例えばマーカー化合物(例えば分子量標準)、標識化合物、質量分析用としてMALDIマトリックス等、ライゲーション剤(例えばリガーゼ酵素(例えばトポイソメラーゼ))、クローニング操作を実施するためのプラスミド等)と混合することにより、サンプル材料の単離フラクションに付加ライゲーション又は反応段階を実施するための方法を提供する。分離段階に単離機能を兼備することにより、例えばマルチウェルプレート又は個々の試験管で分離システムから一般に別々に実施されている付加サンプルフラグメント処理段階(例えば手動フラグメント抽出、染色、UV照射、物理的切断、プラスミド組込み等)を省略することができる。
【0023】
本明細書に記載するシステムは場合により特定工程及び操作に合わせて多数の付加特徴を含み、これらの全般を以下に詳述する。
II.定義
【0024】
特に指定しない限り、以下の用語については当分野で使用されている定義に以下の定義を追加する。
【0025】
本明細書で使用する「微細流路」とは一般にミクロンからサブミクロン規模で形成され、例えば、一般に約0.1μm〜約500μmの範囲の少なくとも1個の横断面寸法をもつ液体導管又はチャンバーをもつシステム又はデバイスを意味する。本発明の微細流路システムは特定目的実験で使用される液体の成分に適合可能な材料から作成される。通例、このような液体は実質的に水性組成であるが、他の物質又は溶媒(例えばアルコール、アセトン、エーテル、酸、アルカン、又はエステル)を含んでいてもよい。多くの場合、ジメチルスルホキシド(DMSO)又はジメチルホルムアミド(DSF)等の溶媒を純溶媒又は水性混合物として使用し、材料の液体溶解度を高める。更に、液体の条件は各実験で制御されるのが通例である。このような条件としては限定されないが、pH、温度、イオン組成及び濃度、圧力、並びに電場印加が挙げられる。デバイスの材料もデバイスで実施する実験の成分に対して不活性なものが選択される。このような材料としては限定されないが、所期用途に応じてガラスや他のセラミック、石英、シリコン、及びポリマー基板(例えばプラスチック類)が選択される。
【0026】
「マイクロチャネル」は少なくとも1個の上記のような微小規模寸法をもつチャネルである。マイクロチャネルは場合により(例えばゲル又はポリマー溶液に封入した)液体又は半液体成分を移動又は収容するための1個以上の付加構造を結合する。
【0027】
「マイクロウェルプレート」は1種以上液体成分を保持する複数の領域を含む基板である。
【0028】
「ピペッターチャネル」は成分をソースから第2のチャネル又はリザーバー等の微小規模エレメントに移動させることができるチャネルである。ソースはピペッターチャネルを含む微細流路デバイスの本体の内部でも外部でも(又はその両者でも)よい。
III.システム
【0029】
本発明によると、選択された目的成分又はフラグメントの分離と単離を実施するのに使用するためのシステムが提供される。従って、これらのシステムは一般にその内部に分離マトリックスを配置した分離導管を利用する。分離操作と一般に分析の一部として検出を行う分離導管に1種以上のサンプル材料を送達できるように分離導管と1個以上のサンプルリザーバー/ウェルに液体結合した少なくとも1個のサンプルローディング導管を配置する。分離された成分を後続分析又は処理のために分離導管から抽出できるように、一般に分離導管の検出部分の下流で少なくとも1個のサンプル成分収集導管を分離導管に液体結合する。サンプル導管、分離導管、及び収集導管は種々の形態をとることができ、例えば単純管でもよいし、複数の毛細管を相互に結合して本明細書に記載する相互結合導管を形成してもよい。しかし、好適側面では、このようなシステムは導管がモノリシック基板に形成された集積本体構造又は微細流路デバイスの範囲内で具体化される。
【0030】
一般に、このような本体構造は積層構造で形成され、基板の平坦表面にエッチング、カービング、エンボシング、成形、又は他の方法で作成された1個以上の溝を含むように第1の平面基板を形成する。これらの溝は一般に、微細流路デバイスの本体構造の相互結合チャネルネットワークの少なくとも一部の配置を規定する。次に、第1の基板の平坦表面に第2の基板を重層し、結合して溝を密封することによりデバイスの閉鎖導管又はチャネルを規定する。
【0031】
本発明の教示を例証するために簡易微細流路デバイスの一部の積層構造の模式図を図1に示す。図例のデバイスは例証し易くするために通常の操作と逆に示している。図面から明らかなように、デバイス全体100は2個の平坦基板層102及び104から作成される。場合により、デバイスは最終構造に結合したサンプリングエレメント又はキャピラリー(図示せず)を更に含むことができる。図示したデバイスを作成する場合には、溝106,108,110のネットワークを基板102に形成する。溝はデバイスで実施する操作の型に応じて種々多様な構造又はネットワーク配置に形成することができる。図面から明らかなように、各溝は基板102を貫通するように配置されたアパーチャー又はポート(例えばポート112−122)で終端している。基板102及び104を対にして結合すると、溝ネットワークは密閉されて閉鎖チャネルネットワークを規定する。ポート112−122は片側を密閉されて液体リザーバーとチャネルネットワークへのアクセスポイントを規定する。組立て後の適正な向きのデバイスを図1Bに示す。図1に示す簡易微細流路デバイスでは、密閉溝106がサンプルローディング導管を規定し、溝108が分離導管を規定し、溝110が抽出された目的フラグメントを収集するための収集導管を規定している。
【0032】
本発明によると、サンプルローディング導管106,分離導管108,及び収集導管110は実質的に集積本体構造内に配置される。特に好ましい側面では、これらの導管は微小規模の寸法であり、即ち500μm未満、例えば約0.1〜約500μm、好ましくは約1μm〜約200μm、より好ましくは約1μm〜約100μmの少なくとも1個の横断面寸法をもつ。このような集積デバイスは公差精度が高く、その操作を制御できる確度も高い結果として一般に大型システムに勝る多数の利点がある。
【0033】
サンプルローディング導管106は分離導管108と液体連通していると共に、少なくとも第1のサンプル材料ソースとも液体連通している。集積本体構造の場合には、サンプル材料ソースは例えば本体構造に配置され且つローディングチャネルと液体連通する1個以上のリザーバー又はウェル112として本体構造と集積することができる。あるいは、サンプル材料ソースは本体構造の外部でもよく、例えばそれ自体サンプルローディングチャネルと連通するか又はその一部であるサンプリングピペッター又はキャピラリーエレメントを介してサンプルローディング導管と液体連通させた試験管又はマルチウェルプレートのウェルでもよい。サンプルローディング導管106は例えば以下に記載する図2に示すように、別個のチャネルを介して複数の別個のリザーバーと個々に液体結合してもよい。各リザーバーは各々別個の被分析サンプル(例えば種々の核酸フラグメント又は蛋白質)を収容することができる。その後、適当な液体案内スキームを使用して種々のサンプル材料を各リザーバーからサンプルチャネルに輸送する。
【0034】
本発明の実施に特に適した微細流路デバイスの1例を図2に示す。図面から明らかなように、デバイス200は本体構造201を含む。本体構造201は分離チャネル214,サンプルローディングチャネル212,及び収集導管216を内蔵している。図面から明らかなように、サンプルローディングチャネル212全体は夫々ウェルと液体結合した別個のチャネル202,204,206,208及び210のチャネルネットワークを介して5個のサンプル材料リザーバー/ウェル240,242,244,246,及び248と液体結合されている。5個のサンプルリザーバー240−248を示すが、システムの特定設計要件に応じてデバイスのサンプル材料ウェルを増減することができる。一般に、デバイスは少なくとも4個の別個のサンプルリザーバーを含むが、5、6、7又は8個以上のサンプルリザーバーを含むことができる。更に、サンプルリザーバー240−248は図例では全て分離導管214の同一側に配置されているが、当然のことながら(例えば例えばサンプルを分離導管214に注入する点の周囲にサンプルリザーバーを集めることにより任意所与リザーバーとサンプルをチャネルに注入する分離導管214上の点の間の距離、従ってチャネル長と輸送時間を最小にするために)分離導管の両側の基板の位置に複数のサンプルリザーバーを配置することができる。
【0035】
あるいは、ポート(図示せず)を介してキャピラリーチャネル又は導管を挿通させた1個以上の外部サンプリングピペッター(図示せず)又はキャピラリーとサンプルローディングチャネル212を液体結合してもよい。ピペッターは外部保存容器(例えば試験管、マルチウェルプレート等)からサンプル材料に接近できるように一端が開いている。微細流路デバイス用サンプリングピペッターはその開示内容全体を全目的で参考資料として本明細書に組込む米国特許第5,779,868号に詳細に記載されている。ピペッター又はキャピラリーエレメントを介してサンプルに接近し、例えばリザーバー又はプレロードウェル250(又はシステムの別の点、例えばリザーバー260)に真空を加えるか及び/又は(例えば米国特許第5,779,868号に記載されているようなエレクトロピペッターの場合のように)リザーバー250(及び/又は260)に配置した電極とピペッターに作動的に結合した電極に適当な電圧勾配を印加することによりサンプルローディングチャネル212内に移動させ、更にリザーバー260に向かって移動させる。あるいは、ピペッターのキャピラリーチャネルに真空を加えてもよい。ピペッターは例えばサンプル材料を分離導管に注入する前にデバイス自体(例えばチャネル212)でサブクローニング段階を実施するために使用すべきサンプルローディングチャネル212に(例えばリザーバー250に加えられる真空により)種々の材料を少量ずつ注入するために使用することができる。例えば、真空をピペッターのキャピラリーチャネルに加え、種々のDNA PCR産物サンプルを1個以上のマルチウェルプレート(例えば96又は384ウェルプレート)サンプルウェルからチャネル212に吸引することができ、その後、種々のプレクローニングDNA修飾(例えば3´及び5´突出末端を平滑末端にすることによるDNA末端平滑化、脱リン酸、リン酸化等)に必要な(デバイスのウェル240−248の1個以上を介して供給される)全酵素及び補助試薬をDNAサンプルと混合することができる。従って、例えば、DNA又はベクター末端をサンプルローディングチャネル212でクレノーフラグメントにより平滑化することができる。得られた平滑末端DNAを次に分離導管214で分離した後、以下に詳述する方法を使用してサンプル成分収集導管216でその成分を単離し、効率的にベクターとライゲーションすることができる。あるいは、DNAサンプルとプレクローニング段階に必要な酵素及び試薬の任意のものの両者をサンプル収集ウェル240−248の1個以上にロードし、サンプルローディングチャネル212で混合し、外部ピペッターを使用せずにDNA平滑化及び他の予想されるサブクローニング段階を実施することができる。クローニング操作中にアダプター又はリンカーのライゲーションが必要な場合には、同様にサンプルローディングチャネルで実施することができる。その後、以下に詳述するように、リザーバー260とウェル240−250の1個以上に配置された電極に適当な電圧勾配を印加することにより、サンプルローディングチャネル212に導入された材料をサンプルローディングチャネルと分離導管214の交差点に移動させることができる。
【0036】
図面から明らかなように、分離チャネル214は一端が緩衝液/ゲルリザーバー258と連通し、他端が廃棄物リザーバー254と連通している。緩衝液、分離マトリックス、色素材料、及び分析後の廃棄物のリザーバーとして機能することに加え、これらのリザーバーは電気泳動分離のための電気的アクセスとしても機能する。具体的には、サンプル材料を各種フラクション又は成分エレメントに電気泳動分離するように分離チャネル214に必要な電流を印加するために、例えばリザーバー254及び258で電極を液体と接触させる。付加分離マトリックス、緩衝液材料等を分離チャネル214に供給するために1個以上の付加緩衝液/マトリックスリザーバー(例えばリザーバー252及び260)に分離チャネル214を液体結合してもよい。同様に図面から明らかなように、サンプルローディングチャネル212は一端が5個のサンプル材料リザーバー240,242,244,246,及び248(又は1個以上の外部ピペッター(図示せず))、他端が緩衝液/廃棄物リザーバー260と液体結合されている。複数のサンプルリザーバー240−248を使用すると、前のサンプルの分析が完了した後に各サンプルを手動でロードする必要なしにフラグメントを多重サンプルから順次分離及び単離できるという利点がある。緩衝液/廃棄物リザーバー260はリザーバー260の電極及びサンプルウェル240−248の対応する電極に電圧勾配を印加することによりサンプル材料をサンプルウェル240−248からリザーバー260に向かって(ローディング導管212と分離導管214の交差点を通って)輸送できるように配置された電極(図3に示す)を含むことが好ましい。場合により、リザーバー260(及び/又はリザーバー250)は圧力液体流により(チャネルネットワーク202−210を通って)サンプルウェル240−248の1個からサンプルローディングチャネル212にサンプル材料を吸引するために真空ソースのアクセスポートを提供する。場合により、リザーバー250又は260の1個に真空を加えるか、又はサンプル材料もしくは試薬リザーバー240−248に正圧を加えるか、又はその両者の組み合わせによりサンプル材料及び/又は他の材料(例えば分離マトリックス、緩衝液等)を駆動することができる。分離チャネルとサンプルローディングチャネルの場合と同様に、例示リザーバー260は場合により緩衝液及び/又は廃棄物材料を保存すると共に、サンプルローディングチャネル212から分離チャネル214への材料の移動(サンプル材料の「注入」とも言う)を制御するためにデバイスのチャネルにアクセスすることができる。分離チャネル214はシステム内を流れる材料により発生される信号を検出するための検出窓280を含む。ロードするサンプルと同一側にサンプルローディングチャネル212と液体連通するように付加プレロードチャネル211及びリザーバー250を配置し、例えばウェル240−248の1個からチャネル212と分離導管214の交差点の同一側のロード/廃棄物ウェル250にサンプルを動電的に流入させ、従って交差点越えないようにすることにより、前のサンプルが分離チャネル214を通って輸送されている間にサンプルのプレロードを可能にする。目的材料の単離フラグメントを収集するためにサンプル成分収集導管216も配置し、検出窓280の下流の分離チャネル214に液体結合する。収集導管216は場合により、分離したフラグメント又はフラグメント産物(例えばプラスミドインサート)を収集するために、チャネルネットワーク222,224,226,228,及び230を介して1個以上の収集リザーバー262,264,266,268,及び270と結合される。
【0037】
1個以上の付加試薬リザーバー(例えばリザーバー256)をデバイス200の集積本体構造201内に配置し、収集導管216と液体結合することが好ましい。これらの1個以上の付加リザーバー256は収集導管216(又は収集ウェル262−270の任意1個)で目的フラグメントを更に処理又は分析調製するのに使用可能な付加試薬を提供する。このような試薬の例としては、例えば内部標準(例えばサイズ分離用分子量マーカー)、標識化合物(例えばインターカレーター色素、アフィニティーラベル等)、希釈剤、緩衝液(例えばDNAリガーゼ反応用ATP含有緩衝液)、プラスミド反応用リガーゼ酵素(例えばT4 DNAリガーゼ又はトポイソメラーゼ)、質量分析用MALDIマトリックス材料、細胞適合用として等張食塩水等が挙げられる。試薬リザーバー256は試薬導入チャネル257を介してサンプル成分収集チャネル216と液体結合している。図2又は4には具体的に示さないが、本明細書に記載する方法及びシステムによると、分離後標識、ライゲーション、加熱等の付加分離後反応も実施することが好ましい。これらの分離後反応は場合により収集導管216又は収集リザーバー262−270の任意1個で実施することができる。
【0038】
本発明の1側面では、例えば、プラスミドをリザーバー256から収集導管に供給することにより選択されたDNAフラグメントを収集導管216(又は収集ウェル262−270又はそれらの対応するマイクロチャネル222−230)でプラスミドに組込むことができる。従って、同様に試薬リザーバー256を介して供給することができるバクテリオファージT4DNAリガーゼの作用により適合性末端をもつ直鎖化プラスミドベクターに外来DNAのフラグメントをクローニングすることができる。前記酵素は一方のヌクレオチドが5´リン酸基を含み、他方のヌクレオチドが3´ヒドロキシ基を含む隣接ヌクレオチド間のホスホジエステル結合の形成を触媒する。その後、プラスミドDNAを収集リザーバー262−270の1個で収集し、抽出し、形質転換法により改変細菌(コンピテント細胞と言う)に導入することができる。
【0039】
所定の好適側面では、例えば蛋白質分離において、標識蛋白質対遊離洗浄剤ミセルの検出を最適化するために、分離後希釈段階を使用して洗浄剤、即ちSDSの量を臨界ミセル濃度未満まで希釈する。このようなカラム後処理はその開示内容全体を全目的で参考資料として本明細書に組込む米国特許出願第09/243,149号(出願日2000年2月2日)に詳細に記載されている。このような蛋白質分離法では、分離マトリックスは分離用緩衝液を含み、分離用緩衝液は一般に非架橋ポリマー溶液、緩衝剤、洗浄剤及び親油性色素を含む。本発明による蛋白質分離で使用するのに適した非架橋ポリマー溶液は例えばその開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む同一名義の米国特許出願第08/992,239号(出願日1997年12月11日)に記載されている。洗浄剤と緩衝剤は分離用緩衝液内に臨界ミセル濃度(「CMC」)以下の濃度で存在することが好ましい。こうして、洗浄剤ミセルと色素の結合等の悪影響を最小限にすることができる。
【0040】
微細流路デバイスに加え、本発明のシステムは場合により付加コンポーネントを含み、例えばサンプル材料をサンプルローディングチャネルに流入させるためのフローコントローラー、電流を分離チャネルに印加するための電気コントローラー(及び場合により注入チャネル)、及び分離したサンプル材料フラクションを検出するための検出システムを含む。
【0041】
フローコントローラーは一般に1個以上の可変又は一定圧力又は真空ソースと前記ソースをリザーバーに作動的に結合するためのインターフェースを含む。このようなインターフェースは一般にポートを含み、圧力又は真空ソースとリザーバー又はポートの間に密閉結合を提供するためにシールガスケット、Oリング、挿入カプラー等が装着されている。圧力又は真空ソースは実施する特定操作に応じて一定又は可変圧力を加えることができる。一定及び可変圧力及び真空ソースは周知であり、例えば蠕動ポンプ、シリンジポンプ、ダイヤフラムポンプ等が挙げられる。圧力及び/又は真空ソースは一般に1個以上のリザーバーの圧力を制御するようにデバイスの1個以上の各リザーバーに結合されている。多重リザーバー非依存型圧力コントローラーは例えばその開示内容全体を全目的で参考資料として本明細書に組込む米国特許出願第60/184,390号(出願日2000年2月23日)に記載されている。液体制御は動電力、例えば内蔵又は外部電気浸透ポンプシステムの介在による電気浸透を使用して制御することが好ましい。電気浸透ポンプの例はその開示内容全体を全目的で参考資料として本明細書に組込む米国特許第6,012,902号に記載されている。種々の他の液体流法も場合により本発明の実施に使用される。例えば、ローター形本体にチャネルネットワークを形成し、流れの方向がローターの中心から外側に径方向に向かう場合には、遠心力を利用して液体移動を行うすることができる。同様に、例えば2つの対向面を相対移動させることにより壁剪断法を使用して液体を流動させることができる。場合により毛管力を利用してチャネルネットワークに液体移動を生じてもよい(例えばその開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む米国特許出願第09/245,627号(出願日1999年2月5日)参照)。他の液体流法としては温度変化によるガス発生法や液体/ガス膨張/収縮法が挙げられる(例えばその開示内容全体を全目的で参考資料として本明細書に組込む米国特許第6,043,080号(Lipshutzら)参照)。
【0042】
サンプルローディング工程中の液体流の制御に加え、本発明のシステムは更に所望分離/分画を達成するために分離導管へのサンプル材料注入と分離導管におけるサンプル材料の移動を制御するためのコントローラーの側面も含む。上述のように、注入及び分離操作は場合により圧力又はバルク液体移動法を使用して実施され、例えば圧力を使用してサンプルを注入し、サンプル材料を含む液体の圧力又はバルク流を使用して適当な分離マトリックスに通して分離する。このような場合には、上記フローコントローラーを単に拡張し、微細流露デバイスのこれらの付加部分の内側の流れを制御する。しかし、好適側面では、例えば実質的バルク流の不在下でサンプル材料の電気泳動移動により注入操作と分離操作の少なくとも一方を実施する。
【0043】
このような場合には、これらの操作のコントローラーは一般に適当な回路を介してシステムの適当な導管(例えばサンプルローディング、分離及び/又は収集導管)に電流を供給する電気インターフェースと結合した電源を含む。一般に、これらのインターフェースはデバイスのリザーバーに挿入すべきコントローラーのインターフェースコンポーネントに配置された電極ピンを含む。他方、場合ににより、インターフェースは分離導管を含むデバイスの本体構造上の電気接点と接続する電気接点(例えばコンタクトパッド、挿入カプラー等)を含む。これらの接点は次に、本体構造上又はその内部に配置されており、リザーバー又は導管に電圧を供給する電気回路を介して適当な導管に電流を供給する。種々の接続方法の例はその開示内容全体を全目的で参考資料として本明細書に組込む米国特許第5,955,028号に記載されている。
【0044】
制御コンポーネントに加え、本発明のシステムは更に、一般に分離チャネル内でサンプル材料の分離フラクション(即ち分離後)を検出するための検出システムを含む。検出システムは種々の周知検出方法を利用することができ、例えば蛍光スペクトル分析(レーザー誘導及び非誘導法)、UVスペクトル分析、電気化学的検出、熱的検出、キャパシタンス検出(公開PCT出願第WO99/39190号参照)、キャピラリー又は微細流路デバイス出口から直接材料を受取るように容易に構成することが可能な質量分析検出(例えばMALDI−TOF及びエレクトロスプレー)等が挙げられる。好適側面では、光学的検出法、特に蛍光検出法を使用する。このような検出システムは一般に検出すべき特定蛍光種を励起するために適当な波長で発光する励起光源を含む。その後、励起光はレンズ、フィルター(例えば波長及び/又は空間フィルター)、ビームスプリッター等の適当な光学素子列を透過し、例えば対物レンズを通って分離導管の半透明部分に送られる。サンプル材料の蛍光種、成分又はフラクションは励起光を通過するにつれて蛍光発光する。次に蛍光発光は集光され、再び対物レンズ及び同一又は別の光学素子列を透過し、光センサー(例えば光ダイオード、光電子増倍管、CCD等)に送られる。デバイスは更にデバイスの本体構造に集積された1個以上の光学偏光素子(例えばレンズ又は光学フィルター)を含むことができ、このような素子はその開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む本発明と同一名義の米国特許第6,100,531号に詳細に記載されている。このようなデバイスと集積光学素子は利用される光学検出スキームで使用される光学操作の少なくとも一部を実施する。
【0045】
システムは更に検出器から受信したデータを記録し、場合によりデータを分析(例えばピークを積分、滞留時間を計算、分離を内部標準で校正等)するようにプログラムされたプロセッサー(例えばコンピューター)を含む。プロセッサーは更に、1組のプレプログラム及び/又はユーザー入力命令(例えば特定サイズ範囲のどの目的サンプル成分を後続処理及び分析用として成分収集導管に分岐すべきか)に従って液体流コントローラーのオペレーションをモニター及び命令するようにプログラムされていることが好ましい。
【0046】
実施している特定用途に応じて本明細書に記載するシステムに場合により多数の他のコンポーネントを加えてもよく、例えば温度制御素子(例えば本明細書に記載するデバイスの部分を加熱及び/又は冷却するための加熱及び冷却素子)、各種材料及び/又は総合システムの機能に接近できるようにサンプルプレート及び/又はデバイスを移動させるためのロボットコンポーネントが挙げられる。一般に、これらの全付加コンポーネントは市販されており、本明細書に記載するシステムに容易に応用される。
【0047】
上記総合システムの模式図を図3に示す。図面から明らかなように、システム300は例えば図2に示すような微細流路デバイス301を含む。微細流路デバイス301は一般に電気浸透フローコントローラーシステム302と作動的に結合している。このフローコントローラー302はデバイス301のチャネル内の材料に適当な推進力を加えて所望操作を実施する。コントローラー302は一般に電源(及び/又は圧力及び/又は真空ソース)を含む。電源は例えばその内部の液体と接触するようにリザーバー内に配置された電極と接続されているか又はそれ自体がこれらの電極である電気コネクター314を使用して例えばリザーバー254及び258、又は夫々リザーバー240−248,250,252,256,260−270の任意1個を介して動電移動が所望されるデバイスのチャネル(例えば分離チャネル214及び/又はサンプルローディングチャネル212)及び収集導管216と結合される。(例えば、サンプルローディング導管212と結合された外部ピペッターと連動して)別個の圧力/真空ソース310を使用する場合には、圧力誘導流が所望されるチャネル(例えばチャネル211,212及び/又は216)と結合することができる。例えば、真空ライン312を介して単一真空ソース310をレザーバー250(又は260)と結合し、チャネル212と液体結合された外部ピペッター(図示せず)から(及び/又は合計5個までの異なるサンプルソースを含むサンプルレザーバー240−248の任意のものから)チャネル212に材料を吸引することができる。あるいは、(使用する場合には)真空ソースをフローコントローラーシステム302にその一体ユニットとして組込むこともできる。上述のように、電気結合は一般に電源に接続されると共にデバイスのリザーバーに浸漬された電極を介して実施される。圧力/真空接続は一般に例えばガスケット又はoリングを利用するシール圧力接続を使用して圧力をリザーバーに伝導する。一般に、これらの型の装置/デバイスインターフェースは各々その開示内容全体を全目的で参考資料として本明細書に組込む米国特許第5,955,028号及び6,071,478号に記載されている。圧力又は真空ソースは一般に広く入手可能であり、特定用途の必要に応じて異なる。一般に、微細流路用途では容量型ポンプ(例えばシリンジポンプ等)が圧力又は真空ソースとして利用される。蠕動ポンプ、ダイヤフラムポンプ及び他のポンプ等の種々の他のポンプも容易に利用される。
【0048】
検出器304も総合システムで使用される。検出器は一般にデバイスのチャネルの1個以上と感覚伝達するように配置されている。本明細書で使用する「感覚伝達」なる用語はチャネルの内容物から検出可能な信号を受信することができるように検出器が配置されていることを意味する。光学信号の場合には、チャネル内の材料から光学信号を受信するように検出器を配置するだけでよい。これは一般に光学信号を受信することができるようにチャネルセグメントの透明又は半透明部分に隣接するように光学検出器を配置することにより行われる。光学検出器は一般に当分野で周知であり、蛍光検出器(強度と偏光)、分光光度検出器、光散乱検出器等が挙げられる。他の検出スキーム(例えば電気化学検出)では、例えば電極、半導体センサー又はマイクロエレクトロメカニカルセンサー(MEMS)を介してチャネルを含むデバイスの内部の液体と検出器又は検出器の一部を物理的に接触させることが多い。本明細書に記載する方法では場合により別の検出器も使用され、例えば「チャネル外」検出スキーム(例えばMALDI−TOF又はエレクトロスプレー質量分析法による質量分析検出)が挙げられる。これらの検出スキームも従来記載されている。
【0049】
検出器304,コントローラー302及びデバイス301に加え、総合システムはコントローラー302と検出器304に作動的に結合したコンピューター又はプロセッサー306を含むことが好ましい。コンピューターは一般に検出器304及びコントローラー302の両者(場合により真空ソース310)に接続されている。コンピューターは検出器から受信したデータを記録し、1組のプレプログラム及び/又はユーザー入力命令(例えば特定サイズ範囲のどのサンプル成分を後続処理及び分析用として成分収集導管に分岐すべきか)に従って液体管理システム302のオペレーションをモニター及び命令するようにプログラムされている。更に、コンピューター306は検出器304からデータを受信して記録し、場合によりデータを分析し、ユーザーが理解できる出力又はレポートを発生するようにプログラムされている。
【0050】
システムは場合によりサンプル材料ウェルを微細流路デバイスのサンプリングエレメントに供給するためのサンプルアクセスシステム(例えばロボットx−y−z並進段及び他のマルチウェルプレートハンドリング装置)を利用し、例えば(デバイスの一部である場合には)キャピラリーをサンプル材料に浸漬させて単一プレートの複数の異なるウェル及び多重プレートにアクセスできるようにする。市販システムとしては例えばCarl Creativeコンベヤーシステムや、Zymark Inc.から市販されているTwisterシステム及び例えばParker Positioning Systems,Inc.から市販されているロボットx−y−z並進アームが挙げられる。
III.電気泳動分離と分離された所望成分の単離
【0051】
上述のように、好適側面において本発明のシステム及び方法はサンプル材料を(例えばサイズ又は重量により)その種々の成分に分離後にサンプル材料の所望成分を単離する。例えば、DNA分離では、特定長(例えば塩基対数)のDNAフラグメントを分離及び単離し、このような目的DNAフラグメントを後続クローニング実験用としてプラスミドに組込むことが多くの場合に望ましい。単離の基本原理は特定サイズ(及び/又は分子量)の成分を検出した後に所望成分を成分収集導管に遊動するようなフローパターンを同期することが可能なシステムに依存している。所与デバイスの設計と特定用途に応じて信号の検出から圧力パターンの開始までの時間遅延は変化し得る。一般に、所望成分が光学検出点から収集チャネルと主分離チャネルの交差点まで流れるには所定時間が必要である。
【0052】
操作時に際しては、まず分離マトリックスを分離チャネル214に導入するか又は予め結合しておく(例えば製造中にコーティングする)。分離マトリックスを分離チャネルに導入する場合には、一般にリザーバー252,254,258,又は260(図2)の1個に配置し、付加圧力を加えるか又は加えずに分離チャネルに浸漬させる。一般に、分離マトリックスは液体媒体又は固相媒体(例えばビーズ)のスラリーとして提供される。このような分離マトリックスとしてはポリアクリルアミド、アガロース等のゲルが挙げられ、あるいは液体、動的分離マトリックスが挙げられる。このような動的マトリックスとしては一般に、非架橋フォーマットである以外はゲル媒体で使用されるものと同様であるポリマー溶液が挙げられる。特に有用な動的マトリックスとしては例えばヒドロキシメチルセルロース(HMC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)等のセルロースポリマーや、好ましい例として荷電及び非荷電両者のコンホメーションのアクリルアミドポリマー溶液(例えば直鎖ポリアクリルアミド、ポリジメチルアクリルアミド)等が挙げられる。これらの分離媒体は分離カラムに導入され、例えばマトリックス通過に対するその相対抵抗性に基づいてサンプル材料中の種を分離するマトリックスを提供する。本発明で使用するのに適した分離マトリックスの例としては参考資料として本明細書に組込む上記米国特許第5,958,694号及び6,032,710号に開示されているものが挙げられる。蛋白質分離では、分離用緩衝液を含む分離マトリックスを使用することが好ましく、前記緩衝液は例えば、参考資料として本明細書に組込む同一名義の上記米国特許出願第09/243,149号に記載されているような非架橋ポリマー溶液を含む。好適側面では、付加液体成分を添加する前に分離マトリックスをデバイスの分離チャネルに加える。その後、圧力流によりデバイスの適当なチャネルに緩衝液と他の液体を加え、マトリックスがこれらのチャネルに流入しないようにする。あるいは、システム全体に緩衝液を充填した後に例えばマトリックスを主に分離チャネルにバルク流入させることにより分離マトリックスを加えてもよい。
【0053】
特定サイズの分離成分を正確に抽出するためには、まず適当な標準サイジングラダーをサンプルウェル240−248の1個に加え、分離チャネル214に流す。サイジングラダーは未知フラグメントのサイズを決定することができる。一般に使用されている標準は野生型λDNAのHindIII制限消化産物であり、良好なサイズ範囲の12個のフラグメントが得られる。更に、DNAフラグメントを相互にライゲーションして一連のバンドを形成することによりサイジングラダーを作製することもでき、このようなサイジングラダーは例えばBioventures,Inc.(Murfreesboro,TN)から市販されている。内部サイズ標準は確度と再現性の高いサイズ決定と定量を可能にし、ラン間の電気泳動変動に伴う問題を解消する。
【0054】
サイジングラダーサンプルが分離され、全バンドが検出窓280で検出器304により検出された後に、第1のサンプルをサンプルウェル240−248の1個から所定位置に移動させるように電極電流を転換することができる。次に、例えばその開示内容全体を全目的で参考資料として本明細書に組込む上記米国特許第5,976,336号に記載されているように、例えばウェル260とサンプルウェル240−248の1個以上の間に電位を印加することにより、液体中のサンプル材料をサンプルリザーバー240,242,244,246,又は248の1個からサンプルローディングチャネル212に動電的に吸引することによりサンプル材料をサンプルローディングチャネル212に吸引する。あるいは、例えばシッパーチップの場合には、リザーバー250(及び/又はリザーバー260)に真空を加えることにより材料をサンプルローディングチャネルに移動させ、例えばリザーバー250に真空を加えるか及び/又はサンプルウェル240−248の1個に正圧を加えることによりチャネルに圧力差を加えることにより材料を流動させる。サンプルローディング工程中にサンプルローディングチャネル212に分離マトリックスが侵入した場合にはサンプル材料のバルク流により洗い流す。チャネル212と分離チャネル214の交差点を通ってサンプル材料を注入後、電流を分離チャネルに印加し、交差点のサンプル材料を分離チャネルに動電的に移動させる。好適側面では、サンプル材料を交差点から押し戻すために、分離チャネル214と交わるチャネル212の部分に弱い電流を逆供給する。こうして分離ランを汚染する恐れのある実質的漏出をなくすことにより分離効率を改善する。サンプル材料(例えば図4Aのサンプル材料290)は分離チャネルでサンプルマトリックスを通って電気泳動されるにつれてその分子量により異なるフラクション(例えば図4C〜Dのフラクション292)に分離される。
【0055】
核酸を分離している場合には、高度に均質な荷電性の結果としてサンプル材料中の全核酸種が印加電場下で同一電気泳動移動度となり、例えば核酸の電荷対質量比が一定になる。粘性マトリックスを分離カラムに加えると、その相対サイズにより種毎に移動度が変化し、例えば小さい分子のほうが大きい分子よりも粘性マトリックス中を移動し易いので電荷対質量比が同じでも分離し易い。蛋白質又はペプチド分離では、電気泳動サイズ分離は蛋白質及びペプチド毎に電荷対質量比が大きく異なるのでもっと複雑である。従って、このような分離は一般にこれらの高分子を高電荷分子(例えばSDS等の洗剤剤等)で処理することにより実質的に均一な電荷を高分子に付与することにより実施される。蛋白質又はペプチド分子が洗剤剤と会合すると、混合物中の全蛋白質分子を比較的均質に(例えば量と方向)移動させることができる。核酸分離の場合と同様に、異なるサイズの分子が異なる速度で移動する粘性マトリックスを組込むことにより異なる移動度を付与する。
【0056】
本発明のシステム及び方法はプラスミドトポロジー異性体を分離及び単離するために使用することもできる。異なるトポロジー異性体に同一配列のプラスミドが存在する場合がある。細菌から作製されたプラスミドサンプルは一般に共有閉環(ccc)状、開環(oc)状及び直鎖状の混合物である。慣用プラスミドサイジング法はプラスミドをその直鎖化形態に変換する段階を含む多段階である。しかし、各種プラスミド形態はその3D構造緊密さが異なるので、電気泳動中に分離ゲルマトリックスで示差的に移動する。全プラスミドの移動順はそのサイズ差により一般にスーパーコイルccc分子が最初に出現し、次に直鎖化プラスミド、次に開環状の順である。同一プラスミドの異なるサンプルにおけるプラスミドアイソフォームの相対量を比較することができる。スーパーコイルプラスミドの標準を入手可能な場合には、プラスミド調製物におけるスーパーコイル形の濃度は1〜100ng/μlの広いサンプル濃度範囲で推定することができる。外部スーパーコイルDNAラダーを使用すると、プラスミドサンプルを高精度でサイジングすることができる。プラスミドの相対サイズの決定は多数の用途に十分である。このような用途の1例は得られたクローンサイズをクローニングベクターのサイズと比較することによりクローニングベクター上にターゲットインサートを含むクローンのスクリーニング(及び単離)である。
【0057】
次に、例えば図4A〜Dに示すように特定サイズの成分を検出するために、分離した目的成分を検出窓280に流す。蛍光検出の場合には、一般にレーザー活性化蛍光検出システムが検出領域280を流れるフラグメントをモニターする。サンプル中の高分子(例えばDNA等の核酸フラグメント)は蛍光又は蛍光発生標識基を結合されている。例えば、核酸の場合には、種々の蛍光標識技術を使用することができる。これらは一般に当分野で周知であり、例えばその開示内容全体を全目的で参考資料として本明細書に組込む米国特許第4,711,955号、5,171,534号、5,187,085号、5,188,934号、及び5,366,860号に記載されているような共有結合蛍光標識基の使用が挙げられる。あるいは、目的高分子種と優先的に会合するか、又は目的高分子と会合した場合のみに(例えば蛍光又は蛍光発生により)検出可能な会合性標識基を使用してもよい。このような標識基の例としては例えば2本鎖核酸用インターカレート色素、ストレプトアビジン/ビオチン標識基等が挙げられる。上述のように、本発明の好適側面は蛍光検出システムを使用する。一般に、このようなシステムは分離した高分子種が輸送されるにつれて光エネルギーを分離チャネルに送ることが可能な光源を使用する。光源は一般に標識基を活性化するのに適した波長の光を発生する。その後、標識基からの蛍光は分離チャネル214の検出窓280に隣接して配置された適当な光学素子(例えば対物レンズ)により集光され、集光は光ダイオード又は光電子増倍管等の測光検出器に送られる。コンピューター306は検出器に結合されており、検出器からのデータを受信し、後続保存と分析のためにこれらのデータを記録する。コンピューターは(分離導管214を通るサイズと時間に基づいて)サイジング曲線を作成するためにサイズ標準を使用するようにプログラムされており、サイジング曲線と比較することにより各色素標識フラグメント長を決定する。ユーザーは例えばサイズ、分子量又は電荷等の既知特徴の標準に対して各種バンドが分離カラムを通過するのにかかる時間の相対量により、デバイスでの後続分析又は処理用として収集導管216に分岐すべき特定サイズ/長のフラグメント(例えば図4C〜Dのフラグメント293)を選択するようにコンピューターに命令を入力することができる。
【0058】
次に、このように分離した特定サイズの目的フラグメントが(コンピューターにより作成されるサイジング曲線との比較により)検出されたら、コンピューターはユーザーに指定された命令に従って収集導管216を通る液体移動を指令するようにフローコントローラー302のオペレーションを命令するようにプログラムされている。制御動電型輸送では、例えばウェル252とウェル262〜270の1個に配置された電極間に電位を印加することにより、材料流の経路に沿って電圧勾配を印加することにより、分離した目的成分(例えば図4C〜Dのフラグメント293)を収集導管内に移動させる。フラグメント293のみを収集導管216に分岐させるように(且つ他のフラグメント292の1個以上からの交差汚染がないように)確保するためには、分離導管214に印加する電圧勾配を一般に厳密に制御する必要があり、例えば一時的に停止した後にフラグメント293が収集ウェル262−270の1個に到達した後のみに再開し、この注入期間中に他の分離成分292が収集導管に誤って分岐しないようにする必要がある。例えば(比較的長いチャネルセグメント222を介して収集導管216に液体結合された)ウェル262のように収集ウェル262−270のいずれかまでの材料経路長が比較的長い場合には、分離導管を「オフ」モードにするこの遅延は相当長くなり、(特に多重サンプルをデバイスに流す場合には)システムのスループットが有意に低下する可能性がある。
【0059】
この遅延を相殺するためには、リザーバー256(又は図示しない別の同様のリザーバー)を収集導管と分離導管の交差点の近傍で収集導管216に液体結合することができる。こうして、分離された成分がリザーバー256(又は他の同様のリザーバー)と収集導管216の交差点の下流に到達したら、リザーバー252に結合した電極から電圧勾配を転換し、リザーバー256(又は他の同様のリザーバー)に配置された電極と夫々の収集ウェル262−270の1個に配置された電極に印加し、材料経路長の残余に沿ってこれらのウェルの1個まで分離された成分を輸送することができる。この時点で、電流を分離チャネルの長手方向に迅速に再印加し、付加サンプル材料を分離チャネルに通して動電的に移動させることができる。分離した目的成分がリザーバー256(又は他の同様のリザーバー)と導管216の交差点の上流の収集導管216を通過する時間の量と、収集導管216に印加される電圧勾配は、一般に特に分離された成分が緊密充填されている場合に分離チャネルの長手方向に電流を印加できない時間の量を決定する。従って、収集導管216と分離導管214の交差点にできるだけ近接するようにリザーバー256(又は別の同様のリザーバー)を導管216に液体結合することにより、分離導管が「オフ」モードにある時間量を最小限にし、それに対応してシステムのスループットを上げることができる。収集導管の幅は一般に収集導管内の分岐フラグメントの識別/分解を決定する。例えば、目的フラグメントが分離/分岐交差点にあるときに分離導管の長手方向に印加される電圧を遮断した後、収集導管の長手方向(又はその一部)のみに電圧を印加するならば、収集チャネルの幅にほぼ等しいスラグが収集チャネルに輸送される。従って、収集チャネルの幅が広いほど識別機能は低下する。従って、選択されるサンプル材料に必要な識別に基づいてシステムの識別を増減するように収集チャネルの幅をデバイス間で変えることができる。
【0060】
分離された所望成分(例えばフラグメント293)が収集ウェル262−270の1個に到達したら、収集ウェルの1個で後続処理、分析又は収集の準備が整う。1個以上のサンプルの各々を流すにつれて、リアルタイムデータを電気泳動図(蛍光対時間のトレース)、模擬ゲル写真、並びにフラグメントサイズ及び濃度に関する情報を含むデータテーブルの形態でコンピューターモニターに表示することができる。
【0061】
例えば図5Aに示すように、多重サンプルをデバイスに流す場合(即ち特定サイズのフラグメントの適正な選択と単離が不正確になる可能性がある場合)に分離マトリックスにおける個々の泳動変動の問題の影響を最小限にするためには、各ランの正確なサイズ校正を可能にする(サイジングラダーの最上及び最下バンドに対応する)既知サイズのフランキングサイズマーカーと共にサンプルを流すのが一般的である。このような場合には、コンピューターは一般に例えば分離全体における最初及び/又は最後のその位置により標準を識別し、標準からの外挿又は内挿によりサンプル中の未知分離成分のサイズ(及び/又は分子量)を決定するようにプログラムされる。本発明の分離方法に従って使用するのに特に有用なコンピューターソフトウェアはその開示内容全体を参考資料として本明細書に組込む同一名義の米国特許出願第09/223,700号(出願日1998年12月29日)に記載されている。ラン間の変動を考慮して再校正されたゲル画像を例えば図5Bに示す。しかし、コンピューター制御サイズ校正はサンプルがその個々のバンドに完全に分画されて上下フランキングマーカーが検出器を通過した後まで実施することができないので、適正な目的フラグメント(例えば図4C〜Dのフラグメント293)を収集導管216に分岐させるように確保するためには少数のアプローチしか採用できない。
【0062】
1態様では、目的フラグメント(例えば図4C〜Dのフラグメント293)を収集導管に分岐せずにサンプル材料を分離導管214に完全に流してその個々のフラグメントバンドに分離する。次に、同一サンプルウェルからの1個(以上)の付加サンプルを再びデバイスに流し、前と同様に個々のフラグメントバンドに分離する。コンピューターはデバイスに流すサンプル毎に(例えば図5Bに示すような)再校正されたサイジングデータに基づいて選択された目的成分を(サイジング曲線との比較により)蛍光対時間曲線の特定ピークに対応するものとして識別するようにプログラムすることができる。従って、例えば図5Bを参照すると、ユーザーが約500塩基対の長さをもつDNAフラグメントを単離したい場合には、このようなフラグメントは図5Bのサンプル3の6番目の蛍光ピーク(又はバンド)に対応する。2回目(又は3回目以降)のサンプルをデバイスに流す場合には、6番目の蛍光ピークが検出窓280で検出器により登録されるときに収集導管への液体移動を指令するようにコントローラー302のオペレーションを命令するようにこの特定サンプルについてコンピューターをプログラムすることができる。従って、所与サイズのフラグメントが正確に収集導管に分岐されるように確保することができる。次に、所望量の単離サンプルフラグメントがサンプル収集ウェルの1個以上に収集されるまで同一サンプルウェルからの付加サンプル材料を更に1回以上デバイスに流すことができる。こうして、例えばクローニング操作に必要な選択されたサイズの十分なDNA(又は他のサンプル材料)産物をデバイスで収集し、所望によりオンチップクローニングに備えることができる。サンプルサイジングデータを校正せず、2個以上のサンプルをデバイスに通さないならば、例えばコンピューターはオンタイム蛍光対時間測定値と分離マトリックス内の移動変動の問題により(図5Bから明らかなように実際には500塩基長よりも長い)図5Aの7番目のバンドに対応するフラグメントを誤って収集導管に分岐する可能性がある。
【0063】
あるいは、本発明の別の態様では、フランキングマーカーが検出窓を通過した後にサイズにより分離されたサンプルフラグメントを分離導管内で無傷のまま維持できるように検出窓280の下流の分離導管214の長さを増すことができる。例えば、サイズによりその個々のフラグメントに分離されたときにサンプルの全長を収容できるように検出窓280の下流に蛇行状もしくは他の曲線又は伸長構造をもつように分離導管を構成することができる。分離導管に流したサンプルからの蛍光対時間のデータを(バンド泳動の問題、例えば図5Aに示すような例えばバンド圧縮を相殺するように)上述のようにコンピューターにより再校正した後、分離導管214内の電場を逆転して分離導管中を逆方向に上流に向かってサンプルを移動させるようにデバイスを操作することができる。サイズにより分離されたサンプルは上述のようにサイズにより分離された同一バンド配置で検出器を通過する。この代替態様では、収集導管216を検出窓280の上流に配置する。先述の態様と同様に、(サイジング曲線との比較により)所望フラグメントの正しいサイズに対応する蛍光ピークが検出窓280で検出器により登録されるときに収集導管への液体移動を指令するようにコントローラーのオペレーションを命令するようにコンピューターをプログラムすることができる。従って、この場合にも、所与サイズのフラグメントが正確に収集導管に分岐されるように確保することができる。
【0064】
本発明のデバイス及び方法は種々の高分子種の分離と単離に広く適用可能である。このような高分子種としては限定されないが、核酸、蛋白質、ペプチド、炭水化物、小分子等が挙げられる。特に好ましい側面では、本明細書に記載するポリマー組成物はサンプル中の核酸電気泳動分離及び/又は同定に使用される。このような核酸としては例えばゲノタイピング用のゲノムDNAのフラグメントもしくは部分、例えば遺伝子発現分析用のmRNAのフラグメントもしくは部分、又は増幅プロセスの確認用の重合反応生成物が挙げられる。しかし、当然のことながら本発明の方法は多種多様の分離分析に適しており、分離する種の電荷、疎水性、サイズ、相対親和性等によるクロマトグラフィー分離が挙げられる。
【0065】
本発明の方法を使用してサンプル材料の分離が完了し、1種以上のフラグメントが収集導管で単離されたら、例えばチャネル257を介して1個以上の付加リザーバー(例えばリザーバー256)を収集チャネル216に結合し、付加ライゲーション又は反応剤を収集チャネル216に提供することができる。リザーバー256により供給される物質は多様な材料から選択することができ、例えばプラスミド、希釈剤、洗浄剤、質量分析計MALDIマトリックス、緩衝液(例えばライゲーション反応のためにATP含有)、蛋白質アフィニティーラベル、ライゲーション剤又は(例えばサンプルとプラスミドのライゲーション又はクローニング反応を開始させるための)上記物質の1種以上の組合せが挙げられる。例えばクローニング反応では、例えばライゲーション酵素(例えばT4リガーゼ)、プラスミドベクター(例えばInvitrogen(Carlsbad,California)から市販されているPCR II TOPOベクターのように後でリガーゼとして機能するトポイソメラーゼに共有結合したプラスミド)、滅菌水、dNTP、対照鋳型及びプライマー、並びに例えばシーケンシング又はPCRスクリーニング用M13フォワード及びリバースプライマーの1種以上を成分リザーバー256に加えることができる。成分リザーバー256又は導管216に結合したチップ上の別の1個以上のリザーバーは更に形質転換に必要な全試薬(例えばコンピテント大腸菌、β−メルカプトエタノール、SOC培地及びスーパーコイルプラスミド対照pUC18)を含むことができる。
【0066】
前記物質は収集導管(及び/又はこれに液体結合した収集導管の1個以上)で多種多様な反応又は分析に使用することができ、例えば小〜中サイズDNA鎖を細菌プラスミド(例えば大腸菌細胞)、バクテリオファージ、及び小動物ウイルスにクローニングしてその化学分析を可能にするために十分な量の純粋なDNAを生産できるようにするためのライゲーション反応、例えばマトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)を使用する質量分析計により更に分析するのに適したマトリックスで分離した蛋白質又は核酸成分を分解するための反応、後続分析用に1種以上の分離した蛋白質又は核酸成分に標識物質を結合するための結合反応、又は他の同様の検出後処理に使用することができる。サンプル成分又は反応混合物(例えば収集導管でのライゲーション反応の場合)を次に例えば収集ウェル262−270の1個に輸送した後、場合によりデバイスをボルテックスしてその内部の成分を均質化し、サンプルウェルから取出し易くすることにより、後続分析(例えば質量分析)又は実験用にユーザーが取出すことができる。収集ウェルは(例えば質量分析装置での)後続分析用にサンプル成分を洗浄するための適当な溶解又は洗浄用緩衝液のソースを備えることが好ましい。
【0067】
本発明の1好適側面では、例えばプラスミドをリザーバー256から収集導管に供給することにより、選択されたDNAフラグメントを収集導管216(又は収集ウェル262−270の1個以上)でプラスミドに組込むことができる。従って、同様に試薬リザーバー256を介して供給することができるバクテリオファージT4 DNAリガーゼの作用により、適合性末端をもつ直鎖化プラスミドベクターに外来DNAのフラグメントををクローニングすることができる。前記酵素は一方のヌクレオチドが5´リン酸基を含み、他方のヌクレオチドが3´ヒドロキシ基を含む隣接ヌクレオチド間のホスホジエステル結合の形成を触媒する。その後、プラスミドDNAを収集リザーバー262−270の1個で収集し、抽出し、形質転換法により改変細菌(コンピテント細胞と言う)に導入することができる。
【0068】
以下、実施例により本発明を更に例証するが、これにより発明を限定するものではない。
V.実施例
本発明の原理を以下の実施例により例証する。
【実施例1】
【0069】
既知サイズのフラグメントの順次分離による分析と単離
【0070】
図2に示すデバイスを使用して既知サイズの選択されたDNAフラグメントの多数回の順次DNA分離と単離を実施し、システムが所与サイズのフラグメントを単離するのに有効に機能できることを確かめた。全試薬はAgilent Technologiesから市販されているDNA7500 LabChip(登録商標)キットの同梱品を使用した。分離媒体はシービングポリマー溶液とDNAインターカレーター色素の混合物を使用した。4個のDNAフラグメント(150,300,500,及び950塩基)をDNAフランキングマーカー(40pg/μl)と共にDNAサンプル緩衝液の水中100倍希釈液(2mM TAPS)に溶かし、各フラグメントが濃度5ng/μlとなるように5個のサンプルローディングリザーバー240,242,244,246,及び248の各々に加えた。本実施例は主にシステムが既知サイズ/長のフラグメントを単離できることを確かめるために実施したので、本実施例ではDNA標準マーカーを使用せずに標準曲線を作成してサンプルデータを測定した。全出力収集ウェル262,264,266,268,及び270にPico緩衝液6μlを充填した。
【0071】
微細流路デバイスは分離媒体9μlを(図2に示すような)リザーバー254に加えることにより作製した。ウェルを3気圧に30秒間加圧した。次に分離媒体9μlをウェル252,256及び258に加えた。サンプルをウェル240,242,244,246,及び248に加えた。次にAgilent Technologiesから市販されているAgilent 2100 Bioanalyzerにチップをセットした。次に900Vの電場をサンプルウェル260に90秒間印加することによりサンプル材料をサンプルローディングチャネル内に吸引した。分離チャネル214に弱いピンチ電流(各チャネル部分に0.5μA)を2秒間印加して交差点でサンプルプラグが広がらないようにした後、分離チャネルの長手方向に900Vを印加し、DNAサンプルを分離チャネルに沿って移動させた。同時に、弱いプルバック電流(各方向0.1A)を注入チャネル212の部分に印加した。各サンプルウェル240−248からのサンプルを分離導管214に流し、検出窓280で検出した後、各DNAフラグメントのフラクションを別個の収集ウェル262−270に分岐収集した。これらの試験から得られた代表的蛍光対時間グラフを図6に示し、図中、2番目のピークが収集されたDNAフラクションであり、最初と3番目のピークは夫々下側と上側のDNAマーカーである。図面から明らかなように、5個のDNAフラグメントのうちの4個(150塩基、300塩基、500塩基、及び500塩基反復)が夫々の収集ウェルで検出された。
【実施例2】
【0072】
750bp PCR産物の単離とTOPOクローニングによるPCR IIベクターへのクローニング
図2の微細流路デバイスがオフチップクローニング法で後続使用した少量のDNA PCRフラグメントを分離し、正確に単離できることを例証し、本発明の方法及びデバイスを使用して十分な量の単離PCRフラグメントを収集し、クローニング反応で有効に使用できることを確かめるために以下の実験を実施した。
750bp DNA産物の作製
【0073】
Invitrogen(Carlsbad,California)から市販されているTOPO TA Cloning(登録商標)キットにより提供されるコンポーネントと手順を使用して750bpの対照PCRフラグメントを合成した。PCR反応後に上記DNA7500 LabChip(登録商標)キットを使用して50μl反応混合物のうちの1μlを分析した。精製PCR産物は平均濃度7.6ng/μlであることが判明し、MW計算値は約745bpであった。従って、分析の結果、フラグメントサイズは予想通りであり、PCR産物の平均濃度は反応混合物中約10ng/μlであることが判明した。
【0074】
PCR産物をフェノール抽出後にエタノール沈殿により更に精製した。精製PCR産物を同量のTE緩衝液に再懸濁した。精製産物の濃度は一般に元の混合物よりもやや低い。元の反応混合物と精製形態の両者の750bp PCR産物を次に(例えば、図2のデバイスを使用して)チップ分離及び単離ラン及び/又は(有効なクローニング操作に必要なPCRフラグメントの閾値量を推定するために)微細流路デバイスに流さない対照を使用してTOPOクローニングに使用した。
PCR産物のサンプルクローニング操作
【0075】
本明細書に記載する全クローニング操作にはTOPO TA Cloning(登録商標)キット(Invitrogenから市販されているK4500−01,K4600−01)を使用した。要約すると、Taqポリメラーゼで増幅したPCR産物をワクシニア由来トポイソメラーゼIによる触媒反応によりプラスミドに挿入した。TOPO反応とその後の形質転換反応は対照PCR産物をTOPO反応前に操作した以外は製造業者に推奨されている条件下で実施した。
【0076】
一般に、TOPO反応混合物は対照PCR産物1μl、高濃度塩濃厚液1μl、水3μl、及びPCR II TOPOベクター1μlを含有する。室温で5分間反応後に反応混合物2μlを分取し、化学的にコンピテントなTOP 10大腸菌細胞50μlで形質転換に使用した。形質転換細胞をSOC培地250μlに回収した。殆どの実験では、培養液100μlを青/白選択のためにLB+amp+Kan+Xgal+IPTGにプレーティングした。青と白のコロニーを計数した。白コロニーはPCR産物をインサートとする組換えクローンである可能性が高い。
クローン分析
【0077】
白クローン数をクローニング効率の推定値として使用した。PCR産物の代わりに滅菌水を加えた対照TOPO反応における白コロニー数を計数することにより非特異的クローニングバックグラウンドを推定した。所定実験では白コロニーを抽出し、クローンからプラスミドDNAを調製し、プラスミドを制限消化してインサートを遊離させることによりクローンを更に分析した。クローンが制限酵素EcoRIにより消化されないPCR産物を含む場合には、インサートのサイズに対応するフラグメントを示す。
結果
PCR産物定量
【0078】
図2に示すような微細流路デバイスを使用して精製PCRフラグメントを単離し、システムが所与サイズのフラグメントを正確に単離するのに有効に機能できることを確かめた。合計20ngのPCR産物を5個のサンプルウェル240,242,244,246及び248の各々にロードした。PCRフラグメントをデバイス上で約50秒間泳動させ、2mM TAPS緩衝液5μlを充填した収集ウェル262,264,266,268及び270に収集した。次に、収集した5個のフラクションを新たにプライミングした分析用DNAピコチップに移した。DNAピコチップの最初から3個のウェルチップには図2のチップの収集ウェル240−248から分取したフラクションを加え、4番目には2mM TAPS緩衝液単独を加えた。最初から3個のサンプルは全て約65秒にピークを示し、4番目のウェルの緩衝液単独対照にはピークがない。本アッセイフォーマットの分析は非定量的である。
微細流路デバイスから分取した750bp PCR産物のTOPOクローニング
【0079】
ピコチップの最初から4個のウェル内の各サンプル4μlを別々に分取し、TOPOライゲーション反応に使用した(サンプル4μlを高濃度塩溶液1μl及びTOPO PCR IIベクター1μlと混合)。SOC形質転換細胞培養液各250μlをプレーティングした。白と青のコロニー数を下表1に示す。結果から明らかなように、対照緩衝液サンプルに比較して、微細流路デバイスで単離されたPCRフラクションはTOPOクローニング反応から一貫して有意数の白クローンを生じた。全白コロニーをEcoRI制限消化により更に分析した。(DNA 7500 LabChip(登録商標)デバイスを使用して白クローンから取出した制限フラグメントの分析からのゲル画像の検討により)PCR産物インサートを実際に含むことが確認された白クローン数も表1に示す。
【表1】


系列希釈750bp PCR産物のTOPOクローニング
【0080】
750bp PCR産物の別のサンプルを2mM TAPSで希釈した後、上記TOPO反応で使用した。10倍系列希釈PCR産物を試験した処、バックグラウンドに比較して有意数の組換え細胞を検出するためにはPCR産物10〜100pgが反応混合物に必要であると推定された。図2のデバイスから分取した収集フラグメントからの白クローン数を系列希釈実験と比較すると、各収集ウェル262−270から750bp PCR産物約10pgが収集されたと推定される。
【0081】
特に指定しない限り、本明細書に記載する全濃度値は混合物又は溶液に加えた成分としての所与成分の濃度を表し、その成分を混合物又は溶液に一旦加えると変換、解離、反応によりその成分が変化するか又はその成分が1種以上の別種に変換されるか否かを問わない。本明細書に記載する方法段階は順序が特に指定されているか又は必要な順序が段階の記載の文脈から明白である場合を除いて一般に任意順序で実施可能である。一般に、段階順序の記載は好適順序を示す。
【0082】
全刊行物及び特許出願は参考資料として本明細書に組込み、個々の刊行物又は特許出願を参考資料として組込むと個別に記載しているとものとみなす。以上、明確に理解できるように本発明を例証及び例示により多少詳細に説明したが、当然のことながら特許の範囲内で所定の変更や変形を実施できる。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】簡易微細流路デバイスの一部の積層構造の模式図であり、夫々上面図(パネルA)、側面図(パネルB)、及び斜視図(パネルC)である。
【図2】本発明の分離分析と分離された成分の単離を実施するために特に適した微細流路デバイスのチャネル配置図である。
【図3】微細流路デバイス、コントローラー、検出器、選択要素である真空ソース、及びプロセッサーを含む総合システムの模式図である。
【図4】図4A〜Dはサンプルを成分フラグメントに分離した後に成分単離段階を実施する図2に示したデバイスの一部の拡大模式図である。
【図5A】蛍光対時間測定値をDNAバンドプロット形態で示す代表的なコンピューター作成DNAバンドプロットであり、バンド泳動の効果を示す。
【図5B】蛍光対時間測定値をDNAバンドプロット形態で示す代表的なコンピューター作成DNAバンドプロットであり、その後の標準DNAサイジングラダーとの比較によるバンドデータの再校正を示す。
【図6】図6A〜Dは本発明のデバイスと方法を使用して収集したフラクションを同定するための蛍光対時間プロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル材料を複数の分離成分に分離し、前記分離成分の1種以上を単離する方法であって、
分離マトリックスを内部に配置した分離導管を含む微細流路基板を配置する段階と;
分離導管で前記1種以上のサンプル成分を検出するために分離導管の長手方向の第1の位置に前記分離導管と感覚伝達する検出器を配置する段階と;
前記第1の位置の下流の第2の位置で前記分離導管と液体連通するサンプル成分収集導管を前記基板に配置する段階と;
前記検出器から受信した情報に基づいて前記分離導管から前記サンプル成分収集導管へのサンプル成分の移動を制御するために前記検出器と液体管理システムに作動的に結合したプロセッサーを配置する段階と;
第1のサンプル材料を分離導管に通して輸送し、第1のサンプル材料を複数のサンプル成分に分離する段階と;
前記複数のサンプル成分を前記第1の位置で前記検出器により検出する段階と;
プロセッサーから液体管理システムへの命令に応答して前記複数のサンプル成分の選択された1種以上を前記分離導管からサンプル成分収集導管に移動させる段階を含む前記方法。
【請求項2】
更にローディング端と廃棄物端をもつサンプルローディング導管を含み、ローディング端をサンプル材料のソースと接触させ、第1の差圧をサンプルローディング導管に加えてサンプル材料をサンプルローディング導管のローディング端内に移動させ、サンプルローディング導管の廃棄物端に向かって移動させる段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の差圧をサンプルローディング導管に供給するためにサンプルローディング導管の廃棄物端に負圧を加える請求項2に記載の方法。
【請求項4】
サンプルローディング導管と分離導管が第1の液体接点で液体連通しており、サンプルローディング導管内のサンプル材料の一部を第1の液体接点に通して分離導管内に移動させる段階を更に含む請求項2に記載の方法。
【請求項5】
サンプル材料が核酸、蛋白質、又は炭水化物の1種を含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
サンプルローディング導管から液体接点を通って分離導管内にサンプル材料を移動させる段階が液体接点に電圧差を印加してサンプル材料をサンプルローディング導管から分離導管内に動電的に移動させることを含む請求項4に記載の方法。
【請求項7】
サンプル材料を分離する段階が分離導管に電圧差を印加してサンプル材料を1種以上のサンプル成分に電気泳動分離することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
サンプル成分収集導管が少なくとも第1の物質と液体連通しており、方法が所定量の第1の物質をサンプル成分収集導管内に輸送して1種以上のサンプル成分と混合する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項9】
第1の物質がプラスミド、希釈剤、洗浄剤、蛋白質アフィニティーラベル、又はライゲーション剤から選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
サンプル成分収集導管が少なくとも第1のライゲーション酵素のソースと液体連通しており、方法が所定量の第1のライゲーション酵素をサンプル成分収集導管内に輸送して1種以上のサンプル成分と混合する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
サンプル成分収集導管で2種以上のサンプル成分のライゲーション反応を少なくとも1回実施する段階を更に含む請求項10に記載の方法。
【請求項12】
サンプル成分収集導管で少なくとも1種のサンプル成分とプラスミドのライゲーション反応を少なくとも1回実施する段階を更に含む請求項10に記載の方法。
【請求項13】
サンプル成分収集導管がATPを含有する少なくとも第1の緩衝液と液体連通しており、方法が所定量の少なくとも第1の緩衝液をサンプル成分収集導管内に輸送して1種以上のサンプル成分と混合する段階を更に含む請求項10に記載の方法。
【請求項14】
サンプル成分収集導管が少なくとも1種のプラスミドを含有する溶液のソースと液体連通しており、方法が成分収集導管の少なくとも一部で前記1種以上のサンプル成分を前記プラスミドとライゲーションする段階を更に含む請求項10に記載の方法。
【請求項15】
サンプル成分収集導管が少なくとも1個の成分収集ウェルと液体連通しており、方法が前記1種以上のサンプル成分を前記成分収集導管から前記少なくとも1個の収集ウェルに輸送する段階を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項16】
1種以上のサンプル成分を少なくとも1個の収集ウェルで洗浄用緩衝液に暴露する段階を更に含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
1種以上の成分を少なくとも1個の収集ウェルでボルテックスして1種以上の成分を均質化し、少なくとも1個の収集ウェルから取出し易くする段階を更に含む請求項16に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1個の収集ウェルから取出した後に1種以上のサンプル成分材料に少なくとも1種の分析操作を実施する段階を更に含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記少なくとも1種の分析操作を実施する段階が1種以上のサンプル成分の質量分析による分析を実施することを含む請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記プロセッサーが検出器を通る分離成分を表す検出器からの信号を受信し、分離導管における分離成分の滞留時間を測定し、分離成分の滞留時間をサンプル材料の既知サイズの標準参照の成分の滞留時間と比較することにより分離成分のサイズを決定するのに適したプログラミングを含むコンピューターを含む請求項1に記載の方法。
【請求項21】
選択された1種以上のサンプル成分の決定されたサイズに基づいて分離された目的成分の選択された1種以上を分離導管からサンプル成分収集導管内に移動させるように液体管理システムに指令するようにコンピューターに命令を入力する段階を更に含む請求項20に記載の方法。
【請求項22】
既知サイズの標準参照が標準サイジングラダーを分離することにより得られる請求項21に記載の方法。
【請求項23】
第1のサンプル材料を分離導管に通して輸送して第1のサンプル材料を複数の第1のサンプル成分に分離する前に標準サイジングラダーの分離を実施する請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記輸送段階の前に参照標準サイジングラダーをサンプル材料と混合する請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記第1のサンプル材料と同時に既知サイズの2種以上のフランキングサイズマーカーを分離導管に通して輸送する段階を更に含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記フランキングサイズマーカーと分離成分を検出器により検出する段階と、フランキングマーカーの既知サイズをサイジングラダーと比較して分離成分の正確なサイジング情報を獲得する段階を更に含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記複数のサンプル成分の前記選択された1種以上を前記分離導管からサンプル成分収集導管内に移動させる前に第1のサンプル材料を分離導管に通して少なくとも2回輸送する段階を更に含む請求項26に記載の方法。
【請求項28】
1種以上のサンプル成分をサンプル材料ソースから単離するための微細流路デバイスであって、
少なくとも1個の表面をもつ基板と;
前記基板の前記表面に形成された少なくとも第1及び第2のチャネル(第1のチャネルの長手方向の第1の位置で相互に交差し、前記第1及び第2のチャネル少なくとも一方は約0.1〜約500μmの範囲の少なくとも1個の横断面寸法をもつ)と;
分離マトリックスの存在下に第1のチャネルでサンプル材料を1種以上のサンプル成分に分離するのを制御するために少なくとも前記第1のチャネルに作動的に結合したサンプル材料分離システムと;
前記1種以上のサンプル成分の検出が行われるように前記第1の位置の上流で前記第1のチャネルの長手方向の第2の位置に配置された検出ゾーンと;
前記検出ゾーンで受信した情報に基づいて前記第1のチャネルから前記第2のチャネルへの選択された1種以上のサンプル成分の移動を制御するために少なくとも前記第2のチャネルに作動的に結合した液体管理システムを含む前記デバイス。
【請求項29】
更に前記第2のチャネルと液体結合した少なくとも1個の成分収集リザーバーを基板に含む請求項28に記載のデバイス。
【請求項30】
更に前記第2のチャネルと各々液体結合した2個以上の成分収集リザーバーを基板に含む請求項28に記載のデバイス。
【請求項31】
更に前記第2のチャネルと各々液体結合した少なくとも5個以上の成分収集リザーバーを基板に含む請求項28に記載のデバイス。
【請求項32】
更に前記第2のチャネルと液体結合した少なくとも第1の物質のソースを含む請求項28に記載のデバイス。
【請求項33】
前記第1の物質がライゲーション酵素、希釈剤、緩衝液、又は標識剤の1種から選択される請求項32に記載のデバイス。
【請求項34】
更に前記第2のチャネルと液体結合した少なくとも第1のライゲーション剤のソースを含む請求項28に記載のデバイス。
【請求項35】
前記ライゲーション剤がライゲーション酵素を含む請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
前記ライゲーション剤がATPを含有する緩衝液を含む請求項34に記載のデバイス。
【請求項37】
前記ライゲーション剤がT4 DNAリガーゼを含む請求項34に記載のデバイス。
【請求項38】
前記ライゲーション剤がトポイソメラーゼを含む請求項34に記載のデバイス。
【請求項39】
更に前記サンプル成分の1種以上を少なくとも1種のプラスミドとライゲーションするために前記第2のチャネルと液体結合した前記プラスミドのソースを含む請求項34に記載のデバイス。
【請求項40】
更に前記少なくとも1個の成分収集リザーバーの内側に配置されたリンス用緩衝液を含む請求項29に記載のデバイス。
【請求項41】
前記サンプル分離システムが前記第1のチャネルと液体結合した少なくとも第1及び第2の液体リザーバーと、前記液体リザーバーの各々と電気結合した少なくとも1個の電極と、前記第1のチャネル内の前記分離マトリックスでの前記1種以上のサンプル成分の電気泳動分離を制御できるように前記電極に電圧を調節可能に印加するための制御システムを含む請求項28に記載のデバイス。
【請求項42】
前記液体管理システムが前記第2のチャネルと液体結合した少なくとも第1及び第2の液体リザーバーと、前記液体リザーバーの各々と電気結合した少なくとも1個の電極と、前記第2のチャネルにおける前記1種以上のサンプル成分の動電的移動を制御できるように前記電極に電圧を調節可能に印加するための制御システムを含む請求項28に記載のデバイス。
【請求項43】
前記液体管理システムが前記第2のチャネルと液体結合した少なくとも第1及び第2の液体リザーバーと、前記リザーバーの少なくとも1個と結合した真空ソースと、前記第2のチャネルにおける前記1種以上のサンプル成分の移動を制御できるように前記少なくとも1個のリザーバーに真空を調節可能に加えるための制御システムを含む請求項28に記載のデバイス。
【請求項44】
前記液体管理システムが前記第2のチャネルと液体結合した少なくとも第1及び第2の液体リザーバーと、前記リザーバーの少なくとも1個と結合した圧力ソースと、前記第2のチャネルにおける前記1種以上のサンプル成分の移動を制御できるように前記少なくとも1個のリザーバーに圧力を調節可能に加えるための制御システムを含む請求項28に記載のデバイス。
【請求項45】
前記サンプル材料が蛋白質サンプルを含む請求項28に記載のデバイス。
【請求項46】
前記サンプル材料が核酸サンプルを含む請求項28に記載のデバイス。
【請求項47】
サンプル材料を複数のサンプル成分に分離した後に前記サンプル材料の1種以上のサンプル成分を単離するためのシステムであって、
少なくとも1個の表面をもつ微細流路基板と;
前記表面に形成されており、分離マトリックスを内部に配置した分離導管と;
分離導管で前記1種以上のサンプル成分を検出するために分離導管の長手方向の第1の位置で前記分離導管と感覚伝達する検出器と;
前記表面に形成されており、前記第1の位置の下流の第2の位置で前記分離導管と液体連通するサンプル成分収集導管と;
少なくとも前記サンプル成分収集導管内の前記サンプル成分の少なくとも1種以上の移動を制御するための液体管理システムと;
前記検出器から受信した情報に基づいて前記分離導管から前記サンプル成分収集導管への1種以上のサンプル成分の移動を指令するように前記液体管理システムに命令するために前記検出器と前記液体管理システムに作動的に結合したプロセッサーを含む前記システム。
【請求項48】
更に前記サンプル成分収集導管と液体結合した少なくとも1個の成分収集リザーバーを基板に含む請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
更に前記サンプル成分収集導管と各々液体結合した2個以上の成分収集リザーバーを基板に含む請求項47に記載のシステム。
【請求項50】
更に前記サンプル成分収集導管と各々液体結合した少なくとも5個以上の成分収集リザーバーを基板に含む請求項47に記載のシステム。
【請求項51】
更に前記サンプル成分収集導管と液体結合した少なくとも第1の物質のソースを含む請求項47に記載のシステム。
【請求項52】
前記第1の物質がライゲーション酵素、希釈剤、緩衝液、又は標識剤の1種から選択される請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
更に前記サンプル成分収集導管と液体結合した少なくとも第1のライゲーション剤のソースを含む請求項47に記載のシステム。
【請求項54】
前記ライゲーション剤がライゲーション酵素を含む請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記ライゲーション剤がATPを含有する緩衝液を含む請求項53に記載のシステム。
【請求項56】
前記ライゲーション剤がT4 DNAリガーゼを含む請求項53に記載のシステム。
【請求項57】
前記ライゲーション剤がトポイソメラーゼを含む請求項53に記載のシステム。
【請求項58】
更に前記サンプル成分の1種以上を少なくとも1種のプラスミドとライゲーションするために前記サンプル成分収集導管と液体結合した前記プラスミドのソースを含む請求項53に記載のシステム。
【請求項59】
更に前記少なくとも1個の成分収集リザーバーの内側に配置されたリンス用緩衝液を含む請求項48に記載のシステム。
【請求項60】
更に前記分離導管と作動的に結合したサンプル分離システムを含み、前記サンプル分離システムが前記分離導管と液体結合した少なくとも第1及び第2の液体リザーバーと、前記液体リザーバーの各々と電気結合した少なくとも1個の電極と、前記分離導管内の前記分離マトリックスでの前記1種以上のサンプル成分の電気泳動分離を制御できるように前記電極に電圧を調節可能に印加するための制御システムを含む請求項47に記載のシステム。
【請求項61】
前記液体管理システムが前記サンプル成分収集導管と液体結合した少なくとも第1及び第2の液体リザーバーと、前記液体リザーバーの各々と電気結合した少なくとも1個の電極と、前記サンプル成分収集導管における前記1種以上のサンプル成分の動電的移動を制御できるように前記電極に電圧を調節可能に印加するための制御システムを含む請求項47に記載のシステム。
【請求項62】
前記液体管理システムが前記サンプル成分収集導管と液体結合した少なくとも第1及び第2の液体リザーバーと、前記リザーバーの少なくとも1個と結合した真空ソースと、前記サンプル成分収集導管における前記1種以上のサンプル成分の移動を制御できるように前記少なくとも1個のリザーバーに真空を調節可能に加えるための制御システムを含む請求項47に記載のシステム。
【請求項63】
前記液体管理システムが前記サンプル成分収集導管と液体結合した少なくとも第1及び第2の液体リザーバーと、前記リザーバーの少なくとも1個と結合した圧力ソースと、前記サンプル成分収集導管における前記1種以上のサンプル成分の移動を制御できるように前記少なくとも1個のリザーバーに圧力を調節可能に加えるための制御システムを含む請求項47に記載のシステム。
【請求項64】
前記サンプル材料が蛋白質サンプルを含む請求項47に記載のシステム。
【請求項65】
前記サンプル材料が核酸サンプルを含む請求項47に記載のシステム。
【請求項66】
プロセッサーがコンピューターを含む請求項47に記載のシステム。
【請求項67】
コンピューターが検出器を通る分離成分を表す検出器からの信号を受信し、分離導管における分離成分の滞留時間を測定し、分離成分の滞留時間をサンプル材料の既知サイズの標準参照の成分の滞留時間と比較することにより分離成分のサイズを決定するのに適したプログラミングを含む請求項66に記載のシステム。
【請求項68】
コンピューターが選択された1種以上のサンプル成分の決定されたサイズに基づいて分離された目的成分の選択された1種以上を分離導管からサンプル成分収集導管に移動させるように液体管理システムを制御するようにプログラム可能である請求項67に記載のシステム。
【請求項69】
更に1組の分子量標準ポリペプチドを含む請求項47に記載のシステム。
【請求項70】
更に1組のDNA参照サイジングラダーを含む請求項47に記載のシステム。
【請求項71】
サンプル材料を複数の分離成分に分離し、微細流路デバイスで前記分離成分の1種以上を単離する方法であって、デバイス内に配置された分離導管でその内部に配置された分離マトリックスの存在下にサンプル成分を分離する段階と、分離導管の検出ゾーンでサンプル成分を検出する段階と、前記検出ゾーンで受信した情報に基づいてサンプル成分の選択された1種以上をデバイスのサンプル成分収集導管に輸送する段階を含む前記方法。
【請求項72】
前記サンプル成分収集導管が前記検出ゾーンの下流で前記分離導管と交差する請求項71に記載の方法。
【請求項73】
サンプル成分収集導管でライゲーション反応を実施する段階を更に含む請求項71に記載の方法。
【請求項74】
前記サンプル成分収集導管内で前記サンプル成分の1種以上をプラスミドとライゲーションする段階を更に含む請求項71に記載の方法。
【請求項75】
サンプル成分収集導管で前記サンプル成分の1種以上にクローニング操作を実施する段階を更に含む請求項71に記載の方法。
【請求項76】
前記サンプル成分収集導管から洗浄用緩衝液を収容するデバイスの少なくとも1個の成分収集リザーバーに前記1種以上のサンプル成分を輸送する段階を更に含む請求項71に記載の方法。
【請求項77】
前記選択された1種以上のサンプル成分を前記サンプル成分収集導管に輸送する段階が前記1種以上の成分材料を前記収集導管内に動電的に移動させることを含む請求項71に記載の方法。
【請求項78】
前記選択された1種以上のサンプル成分を前記サンプル成分収集導管に輸送する段階が圧力駆動力を使用して前記1種以上の成分材料を前記収集導管内に移動させることを含む請求項71に記載の方法。
【請求項79】
前記サンプル成分収集導管内の前記1種以上のサンプル成分をMALDIマトリックス材料と混合して第1の混合物を形成する段階を更に含む請求項71に記載の方法。
【請求項80】
第1の混合物を前記サンプル成分収集導管からデバイス少なくとも1個の成分収集リザーバーに輸送する段階を更に含む請求項79に記載の方法。
【請求項81】
質量分析操作に備えて第1の混合物をデバイスの少なくとも1個の成分リザーバーから取出す段階を更に含む請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記1種以上のサンプル成分が1種以上の蛋白質を含む請求項71に記載の方法。
【請求項83】
前記1種以上のサンプル成分が1種以上の核酸を含む請求項71に記載の方法。
【請求項84】
前記輸送段階の前に、分離導管における分離成分の滞留時間を測定する段階と、分離成分の滞留時間をサンプル材料の既知サイズの標準参照の成分の滞留時間と比較することにより分離成分のサイズを計算する段階を更に含む請求項71に記載の方法。
【請求項85】
前記輸送段階が選択された1種以上の分離成分の計算されたサイズに基づいて前記選択された1種以上分離成分をサンプル収集導管内に輸送することを含む請求項84に記載の方法。
【請求項86】
サンプル材料を複数の分離成分に分離し、前記分離成分の1種以上を単離する方法であって、
その内部に分離マトリックスを配置した分離導管を含む微細流路基板を配置する段階と;
分離導管で前記1種以上のサンプル成分を検出するために分離導管の長手方向の第1の位置に前記分離導管と感覚伝達する検出器を配置する段階と;
前記第1の位置の下流の第2の位置で前記分離導管と液体連通するサンプル成分収集導管を前記基板に配置する段階と;
前記検出器と液体管理システムに作動的に結合しており、検出器を通る分離成分を表す検出器からの信号を受信し、分離導管における分離成分の滞留時間を測定し、分離成分の滞留時間をサンプル材料の既知サイズの標準参照の成分の滞留時間と比較することにより分離成分のサイズを決定するのに適したプログラミングを含むユーザープラグラマブルプロセッサーを配置する段階と;
選択された1種以上のサンプル成分の決定されたサイズに基づいて分離された目的成分の選択された1種以上を分離導管からサンプル成分収集導管内に移動させるように液体管理システムに指令するようにプロセッサーに命令を入力する段階と;
第1のサンプル材料を分離導管に通して輸送し、第1のサンプル材料を複数のサンプル成分に分離する段階と;
前記複数のサンプル成分を前記第1の位置で前記検出器により検出する段階と;
プロセッサーから液体管理システムへの前記命令に応答して前記複数の第1のサンプル成分の前記選択された1種以上を前記分離導管からサンプル成分収集導管内に移動させる段階を含む前記方法。
【請求項87】
既知サイズの標準参照が標準サイジングラダーを分離することにより得られる請求項86に記載の方法。
【請求項88】
第1のサンプル材料を分離導管に通して輸送して第1のサンプル材料を複数の第1のサンプル成分に分離する前に標準サイジングラダーの分離を実施する請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記輸送段階の前に参照標準サイジングラダーをサンプル材料と混合する請求項87に記載の方法。
【請求項90】
前記第1のサンプル材料と同時に既知サイズの2種以上のフランキングサイズマーカーを分離導管に通して輸送する段階を更に含む請求項86に記載の方法。
【請求項91】
前記フランキングサイズマーカーと分離成分を検出器により検出する段階と、フランキングマーカーの既知サイズをサイジングラダーと比較して分離成分の正確なサイジング情報を獲得する段階を更に含む請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記複数のサンプル成分の前記選択された1種以上を前記分離導管からサンプル成分収集導管内に移動させる前に第1のサンプル材料を分離導管に通して少なくとも2回輸送する段階を更に含む請求項91に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公表番号】特表2006−509996(P2006−509996A)
【公表日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−581862(P2003−581862)
【出願日】平成15年3月27日(2003.3.27)
【国際出願番号】PCT/US2003/009628
【国際公開番号】WO2003/084629
【国際公開日】平成15年10月16日(2003.10.16)
【出願人】(504333950)カリパー・ライフ・サイエンシズ・インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】