説明

サージ保護素子を備えた電子装置

【課題】バリスタの短絡故障状態の短絡電流によるバリスタの破裂・発火を防ぐとともに、この短絡故障状態のとき電源再投入の場合にも被保護対象装置の被害を抑止する。
【解決手段】ヒューズ102と、過大サージに対して保護される被保護対象装置107と、過大サージを吸収するバリスタ106と、を備え、電源ラインに設けられたスイッチ111とこれをオフする励磁コイル110とからなる励磁コイル内蔵型遮断手段104を設け、バリスタ106に熱結合された温度スイッチ105を設け、励磁コイル110と温度スイッチ105の直列接続回路を電源ラインに接続し、バリスタ106が短絡状態で故障した場合、バリスタ106による発熱を温度スイッチ105が検知してオフ動作し、スイッチ111を遮断して電源ラインを切断し、バリスタの短絡状態故障時にスイッチ111のオン操作による電源再投入があった場合、温度スイッチ105による発熱検知で電源ラインを再切断すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電源入力ラインへの誘導雷サージから保護するサージ保護素子を備えた電子装置に係わり、特に電源入力ラインにバリスタを使用して誘導雷サージを保護する電子装置において、定格以上の過大サージによってバリスタが短絡(ショート)状態で故障したときの破裂・発火防止のサージ保護素子を備えた電子装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電源入力ラインへの誘導雷サージから被保護対象装置を保護するために、電源入力ラインにバリスタを使用している電子装置において、定格以上の過大サージがバリスタに印加され、バリスタが短絡(ショート)状態となった場合(サージによるバリスタの抵抗値低下とは異なる故障の場合)、ショート状態のまま使用すると電源装置からの電圧印加時に大電流が流れてバリスタ本体が発熱・破裂し、条件によっては発煙・発火する恐れがある。バリスタが短絡(ショート)状態となった場合、従来、バリスタと直列にヒューズや温度ヒューズを挿入して自己発熱を検知し、バリスタを回路から切り離してバリスタの破裂・発火を防ぐ方式が従来技術として提案されている。
【0003】
図2には、従来技術に関するサージ保護素子の短絡故障時における保護回路を有する電子装置を示す。図2の従来技術によると、バリスタ205と直列にヒューズ又は温度ヒューズ204を挿入して自己発熱を検知し、バリスタ205を回路から切り離してバリスタ205の破裂・発火を防ぐことを示している。具体的な保護回路209は、図2に示すように、定格以上の大電流から回路を保護するヒューズ202と、電源装置201から供給された電源の投入/切断を行う電源スイッチ203と、過大な電流が流れると自己発熱によって抵抗が増大し電流を流れにくくして回路を略切断状態とする温度ヒューズ204と、一定の動作電圧を超えた高電圧が印加されると急激に抵抗値を下げて誘導雷サージを吸収するバリスタ205と、から構成されている。そして、この保護回路209に被保護対象装置206が接続されて電子装置の全体構成を形成している。
【0004】
図2に示す従来の保護回路の動作を説明すると、バリスタ205はその特性上、最悪の状態では短絡(ショート)状態という故障の可能性があり、ショート状態で使用すると電源電圧の印加時に大電流が流れてバリスタ205が破裂・発火する恐れがあるため、回路として不安全とならないように保護素子を設けて回路を切断し、装置の安全を図るなどのフェールセーフ設計の配慮を行うが、その保護素子として温度ヒューズ204によって短絡(ショート)状態の故障時に電流を流れにくくして回路を略切断状態とした保護構成としていた。
【0005】
また、AC入力端に対して被保護機器と並列にバリスタを設けて誘導雷サージ等から被保護機器を保護する従来技術が、例えば特許文献1に提案されている。この特許文献1によると、バリスタAとBの直列回路を被保護機器と並列接続するとともに、バリスタAとBの接続点と接地との間にバリスタCとループコネクタの直列回路を配置することが開示されている。これによると、製品出荷前の絶縁耐圧試験において、AC入力端とフレームグラウンド間の絶縁抵抗値の測定時に、ループコネクタを抜き去ってバリスタCの接続を絶った上で測定を行い、試験終了後にループコネクタを再度接続して製品出荷することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−253695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図2に示す従来技術の構成であると、再度サージが発生した場合に温度フーズ204が略切断しているため、被保護体装置206にサージが波及し、被保護対象装置206が致命的な被害を受けて破壊に至らせるという課題があった。
【0008】
また、保護素子として温度ヒューズ204を用いずにヒューズ202のみとしている場合においては、バリスタ205の短絡(ショート)状態故障時のショート電流によってヒューズ202を溶断しようとする場合、被保護対象装置206の負荷を大きくするとそれに伴いヒューズ202の定格電流も大きくせざるを得ないことになる。そのため、バリスタ205の短絡(ショート)状態故障時に流れるショート電流によってはヒューズ202を溶断することができない恐れがあり、あまり大きな負荷をもつ被保護対象装置206を接続することができないという課題が生じる。
【0009】
また、特許文献1に示すような被保護機器に並列接続された、誘導雷サージから保護するバリスタA,Bと線大地間サージ対策用バリスタCでは、出荷前の絶縁耐圧試験に効果的であるが、バリスタ短絡状態でのショート電流によるバリスタの破裂・発火を防止することができないという課題が依然として残る。
【0010】
本発明は、バリスタの短絡(ショート)状態のショート電流によるバリスタの破裂・発火を防ぐとともに、さらに、バリスタ短絡状態の故障のとき再度サージが加わった場合又は電源再投入の場合にも被保護対象装置の被害を抑止することのできるサージ保護素子を備えた電子装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、本発明は次のような構成を採用する。
電源ラインから供給される定格以上の大電流を遮断して回路を保護するヒューズと、前記電源ラインに前記ヒューズを通して接続され過大サージに対して保護される被保護対象装置と、前記被保護対象装置に並列接続され前記過大サージを吸収するサージ保護素子と、を備え、前記電源ラインに設けられたスイッチと当該スイッチを遮断動作する励磁コイルとからなる励磁コイル内蔵型遮断手段を設けるとともに、前記サージ保護素子に熱結合された温度スイッチを設け、前記励磁コイルと前記温度スイッチの直列接続回路を前記電源ラインに接続し、前記サージ保護素子が短絡状態で故障した場合、前記サージ保護素子を流れる電流による発熱を前記温度スイッチが検知し、前記励磁コイル内蔵型遮断手段の前記スイッチを遮断して電源ラインを切断し、前記サージ保護素子の短絡状態故障時に前記励磁コイル内蔵型遮断手段のスイッチのオン操作による電源再投入があった場合、前記温度スイッチによる発熱検知で前記電源ラインを再切断する構成とする。
【0012】
この構成を採用することによって、誘導雷サージ等の過大サージが発生した場合、サージ保護素子に過大サージ電流が流れて被保護対象装置を誘導雷サージから保護するのは勿論のこと、サージ保護素子の短絡状態故障時のショート電流によるバリスタの破裂・発火を防ぐとともに、この短絡状態故障時において、電源投入ラインのスイッチが再度投入された場合にも、サージ保護素子が故障していることを容易に見い出すことができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、サージ保護素子の短絡状態故障時のショート電流によるバリスタの破裂・発火を防ぐとともに、この短絡状態故障時において、電源投入ラインのスイッチが再度投入されても、再び当該スイッチが切断されることとなるので、操作員又は保守員などのスイッチ誤操作があってもサージ保護素子が故障していることを容易に発見することができる。
【0014】
また、大電流を必要とする負荷をもつ被保護対象装置を備えた電子装置であっても、サージ保護素子(バリスタ)の容量を大きくすることなく、誘導雷サージ対策を行うことができる。さらに、被保護対象装置に対する保護回路は、簡易な構成であるため、回路基板のスペースを有効活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係るサージ保護素子を備えた電子装置において、サージ保護素子の短絡状態故障時に対処することのできる保護回路を有する電子装置を示す図である。
【図2】従来技術に関するサージ保護素子の短絡状態故障時における保護回路を有する電子装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態に係るサージ保護素子を備えた電子装置において、サージ保護素子の短絡状態故障時に対処することのできる保護回路を有する電子装置について、図1を参照しながら以下説明する。図1において、101は電源装置、102はヒューズ、103は電流制限抵抗、104は励磁コイル内蔵型遮断手段、105は温度スイッチ、106はバリスタ、107は被保護対象装置、108は熱結合体、109は保護回路、110は励磁コイル、111はスイッチ、をそれぞれ表す。以下の説明では、サージ保護素子としてバリスタを代表的に例示するが、これに限らず、アレスタ、サージキラー、サージアブソーバ等の全てのサージ保護デバイスを含むものとする。
【0017】
本発明の実施形態に係るサージ保護素子を備えた電子装置は、電源装置101から供給される定格以上の大電流から回路を保護するヒューズ102と、励磁コイル110を十分駆動できて励磁コイル110に流す電流を制御する電流制限抵抗103と、励磁コイル110に通電し電流が流れることによってスイッチ111を短絡維持して電源投入がなされ、励磁コイル110が非通電とされたとき(後述の温度スイッチ105の切断動作によって)はスイッチ111を開放して電源の切断を行う励磁コイル内蔵型遮断手段104(励磁コイル110とスイッチ111から構成される)と、周囲の熱を検知してこの検知した周囲温度が設定温度を超えると回路を切断する温度スイッチ105と、一定の動作電圧を超えた高電圧が印加されると急激に抵抗値を下げて誘導雷サージを吸収するバリスタ106と、被保護対象装置107と、から構成されている。ここで、本実施形態に係る電子装置は、被保護対象装置107と、被保護対象装置107以外の構成要素からなる保護回路(符号102,103,104,105,106)と、から構成されるものとする。
【0018】
なお、温度スイッチ105は周囲熱が低下すると温度スイッチがオン状態に復帰するものである。また、励磁コイル内蔵型遮断手段104のスイッチ111は、励磁コイル110の非通電時に(温度スイッチ105のオフ動作によって)一旦オフになったときに、これをオンするのは操作員の手動操作による。そして、図示する対のスイッチ111に限らず、電源ラインの一方に設けたスイッチでもよい。
【0019】
図1の回路構成から分かるように、本実施形態に係るサージ保護素子を備えた電子装置は、図2に示す従来技術と形式的に対比すると、図2に示す電源スイッチ203と温度ヒューズ204を、電流制限抵抗103及び励磁コイル内蔵型遮断手段104と温度スイッチ105に置き替えたものであり、バリスタ106の発熱温度がよく伝わるようにその表面に温度スイッチ105を密着して熱結合体108とする構成となっている。
【0020】
図1に示す本実施形態に係るサージ保護素子を備えた電子装置の動作を説明する。誘導雷サージ等の過大サージが無い通常の運用状態においては、バリスタ106に発熱はなく(バリスタ抵抗値の急激な降下は無く、流れる電流は僅少であるので電流による発熱はない)、熱結合体108の温度スイッチ105も周囲の高熱を検知していないため導通状態となっており、励磁コイル110が通電して励磁コイル内蔵型遮断手段104のスイッチ111が投入保持され、被保護対象装置107に電源を供給する。
【0021】
ここで、誘導雷サージ等の過大サージが発生した場合においては、過大サージの電圧印加でバリスタ抵抗値の急激な降下が発生し、バリスタ106に過大サージ電流が流れて被保護対象装置107には誘導雷サージ等の過大サージ電流は流れず、誘導雷サージから当該装置107を保護するものである。この際、バリスタ106への過大サージ電流の流れる時間は非常に短いので発熱を生じることは殆どなく(短時間内に何度も繰り返されるサージや巨大なサージは別として)、温度スイッチ105はオンのままとなっており、スイッチ111もオンのままとなっている。過大サージ発生が終了すれば、本実施形態の保護回路は上述した通常の運用状態となる。
【0022】
一方、バリスタ106が短絡(ショート)状態の故障時に(サージ電圧の振幅、サージの持続時間、サージの繰り返し回数等や、バリスタの定格容量の大小等の環境条件によって、バリスタが抵抗値の急激低下現象を超えて短絡状態となる故障を生じる場合があり、この場合にはサージが終了しても原状の特性に復帰することはない)、電源装置101からの電源供給による大電流がバリスタ106に流れてバリスタ106が発熱し、この発熱を温度スイッチ105が検知し、この検知した発熱温度が温度スイッチ105の設定温度を超えると回路を切断し、励磁コイル110への通電を止め、励磁コイル内蔵型遮断手段104のスイッチ111が切断されることで、電源装置101から短絡故障状態のバリスタ106へ電源供給は抑止され、破裂・発火防止を図ることができる。
【0023】
さらに、図1に示す本実施形態に係るサージ保護素子を備えた電子装置では、バリスタ106が短絡故障状態であるときに、再度サージが発生した場合においても、励磁コイル内蔵型遮断手段104のスイッチ111が切断されているので、バリスタ106の破裂・発火を防ぎ、被保護対象装置107への致命的な被害を最小限に抑えることができ、且つ、操作員によるスイッチ111のオン操作による電源の再投入があった場合においても、温度スイッチ105のオフ動作で再度電源入力ラインの切断となってバリスタ106の故障を問題なく認識することができる。
【0024】
また、バリスタ106の短絡(ショート)状態故障時のヒューズ102による溶断保護(図2の従来技術を参照)を考慮しなくてよいため、大きな負荷をもつ被保護対象装置107であってもサージ電流に見合ったバリスタ106を使用することができる。
【0025】
また、被保護対象装置に対する保護回路は、図2に示すような従来技術の電源スイッチ203と温度ヒューズ204に代えて、励磁コイル内蔵型遮断手段と温度スイッチとする簡易な構成であるため、回路スペースをそれほど増大させることがなく、回路基板のスペースを有効活用することができる。
なお、図1において、励磁コイル内蔵型遮断手段104のスイッチ111は、2つある必要はなく、いずれか一方あればよい。
【符号の説明】
【0026】
101 電源装置
102 ヒューズ
103 電流制限抵抗
104 励磁コイル内蔵型遮断手段
105 温度スイッチ
106 バリスタ
107 被保護対象装置
108 熱結合体
109 保護回路
110 励磁コイル
111 スイッチ
201 電源装置
202 ヒューズ
203 電源スイッチ
204 温度ヒューズ
205 バリスタ
206 被保護対象装置
209 保護回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源ラインから供給される定格以上の大電流を遮断して回路を保護するヒューズと、前記電源ラインに前記ヒューズを通して接続され過大サージに対して保護される被保護対象装置と、前記被保護対象装置に並列接続され前記過大サージを吸収するサージ保護素子と、を備え、
前記電源ラインに設けられたスイッチと当該スイッチを遮断動作する励磁コイルとからなる励磁コイル内蔵型遮断手段を設けるとともに、前記サージ保護素子に熱結合された温度スイッチを設け、
前記励磁コイルと前記温度スイッチの直列接続回路を前記電源ラインに接続し、
前記サージ保護素子が短絡状態で故障した場合、前記サージ保護素子を流れる電流による発熱を前記温度スイッチが検知し、前記励磁コイル内蔵型遮断手段の前記スイッチを遮断して電源ラインを切断し、
前記サージ保護素子の短絡状態故障時に前記励磁コイル内蔵型遮断手段のスイッチのオン操作による電源再投入があった場合、前記温度スイッチによる発熱検知で前記電源ラインを再切断する
ことを特徴とするサージ保護素子を備えた電子装置。

【図1】
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【図2】
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