サーバラック及びこれを備えたデータセンター
【課題】 サーバの冷却に用いられた暖気を確実にラック本体の外側に排気し、サーバの発熱量に応じて適切な量の冷気を給気し、したがってサーバ管理室内に温度むらを発生させることなく、空調機の無駄な送風を防止して省エネルギーに寄与することができるサーバラック及びこれを備えたデータセンターを提供する。
【解決手段】 吸気口7と排気口8とを有するラック本体1からなり、当該ラック本体1内には、仕切板3で仕切られた複数のサーバ収容室4が形成され、前記排気口8に、前記サーバ収容室4に収容されたサーバ5が備える内蔵ファン6よりも大風量を送風できるファン2が備わる。
【解決手段】 吸気口7と排気口8とを有するラック本体1からなり、当該ラック本体1内には、仕切板3で仕切られた複数のサーバ収容室4が形成され、前記排気口8に、前記サーバ収容室4に収容されたサーバ5が備える内蔵ファン6よりも大風量を送風できるファン2が備わる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバ等のICT(Information and Communication Technology)装置の発熱に対して適切にこれを冷却できるサーバラック及びこれを備えたデータセンターに関するものである。なお、以下では発熱体としてサーバを例にして説明している。
【背景技術】
【0002】
図11は従来のサーバラックの断面図であり、図12は従来のデータセンターの概略平面図である。
【0003】
図11に示すように、従来のサーバラックは、ラック本体71内が仕切板72により仕切られて複数個のサーバ収容室73が形成されたものである。このサーバ収容室73に、サーバ79がそれぞれ収容される。ラック本体71の一方の側面が全面開口し、これが吸気口74となり各サーバ収容室73と連通する。ラック本体71の他方の側面も全面開口し、これが排気口75となり各サーバ収容室73からそれぞれ排気される。ラック本体71が載置される床77は、二重床構造で形成され、床下に給気プレナム76が形成される。床77には、グレーチング78が備わり、空調機81(図12参照)からの冷気は給気プレナム76を通って、ラック本体71の吸気口74近傍の床77に形成された格子板であるグレーチング78から給気され、ラック本体71の吸気口74に流入する。この冷気の流入は、サーバ79に内蔵された内蔵ファン80により吸気されて行われる。
【0004】
図12に示すように、従来のデータセンターは、サーバ管理室83内に、サーバ79を収容したラック本体71を複数(図では6個)並べて形成されたラック列82を複数(図では4列)配設したものである。床77に備わるグレーチング78は、いずれもラック本体71の吸気口74側に形成される。サーバ79が稼動して発熱すると、上述したように、空調機81から冷気が給気プレナム76を通ってグレーチング78からサーバ管理室83内に給気され、吸気口74から各サーバ収容室73(図11参照)内に流入してサーバ79を冷却し、温められた暖気は排気口75からサーバ管理室83に排気されて再び空調機81に還気される。
【0005】
しかしながら、データセンターで管理するサーバ79のユーザは多数にわたり、サーバ管理室83内のどの場所で、どのような範囲で、どのような量の発熱が生じ、また発熱する時間帯も定まらない熱負荷特性がある。また、床下の給気プレナム76内には配線が多数引かれるため、これが冷気流通の妨げとなり、十分な冷気がサーバ管理室83内に給気されないことがある。これを防止するため、空調機81から大風量で給気して対応しているが、高速で給気を行うと、これに暖められた排気が誘引されて排気がラック本体71を回り込んだり(図11の矢印A)、サーバ収容室73内で排気(暖気)が循環する(図11の矢印B)原因となる。したがって、サーバ管理室83においては局所で高温領域が形成されることとなり、これが他のラック本体71、あるいはラック列82にも影響を与えるおそれがある。
【0006】
この局所高温領域の温度を下げるために、さらに低温の冷気を大風量で給気して対応しているが、このようにすると、サーバ79が発熱していない箇所においては冷えすぎの問題が生じ、前述した暖気の回り込みや暖気の循環と相俟って、サーバ管理室83内の温度分布にむらが生じる。このように空調機81を用いて最大負荷で決定された最大風量を定風量として給気することは、実際にはサーバの平均発熱負荷は、定格消費電力量の30%〜40%程度しかないにもかかわらず、常に100%の風量を給気せざるを得ないことは非常にエネルギーの無駄となっている。また、上述したように、大風量で給気を行うことによる高速給気による暖気の誘引を防止するために、吸気口の外側の幅を広くして、グレーチング78の設置面積を増加させ、給気面積を増やして給気の風速を遅くする必要がある。さらに、排気口の外側の幅も広くして、排気の風速も遅くさせ、回り込みや循環を防止する必要がある。以上からすると、サーバ本体1の吸気口側及び排気口側には、それぞれ吸気、排気の風速を低減させるためのスペースが必要となり、スペース的にも効率が悪い。
【0007】
近年、CPUの高性能化と高集積化に伴いICT装置の発熱量は急激に増大しており、上述した問題点がさらに顕著にクローズアップされ、この発熱処理を適切に行うためのデータセンターの空調の最適化は重要な社会的課題となっている。しかし現状では、増大する発熱量に対して空調機を増設して対応しているため、空調機設置スペースの確保や室外機の設置場所が不足し、完全に対応できていない状態である。また、室外機が密集して設置されることは、空調機の冷房能力の低下を招く。
【0008】
以下、上記と重複する部分もあるが、図11、図12に示した従来の技術が抱える問題点を列記する。
【0009】
排気面から吸気面に気流が形成される、いわゆるFront to Backのラック列配置によるラック吸気面(Front)へのラック排気面(Back)から放出される高温排気の流入により、高温障害を引き起こす。
【0010】
給気プレナムの障害による空調気流の未到達、高速給気による誘引や回り込みによるラック内換気の不十分により高温障害を引き起こす。
【0011】
ラック内で内部エアーフロー(内部循環気流)が発生し、高温排気が他のICT装置に流れていき、高温障害を引き起こす。
【0012】
サーバ等ICT装置の発熱は、場所・範囲・量・時刻等定まらない特性を有していることによって高発熱機器の冷却不十分による熱溜まりが発生する一方、低発熱機器周辺が冷えすぎてしまう。
【0013】
このため、高温障害を防止しようとして、給気温度を下げ、最大負荷で決定された最大風量を定風量で給気している。ところが、ICT装置の平均発熱負荷は、定格消費電力量の30%〜40%程度しかないにもかかわらず、常に100%の風量を給気せざるを得ないことは非常にエネルギーの無駄となっている。
【0014】
サーバ等ICT装置を冷却するための空調機が数多く必要となり、空調機消費電力の増大や、空調機設置スペースの確保が問題になってきている。特に屋上やベランダ等の室外機設置スペースが不足すると、室外機を過度に集中設置することになり、空調機能力低下や故障停止を引き起こしている。
【0015】
二重床空調方式において、オープンラックを対象に二重床グレーチングから冷気供給を行う場合、個々の装置の発熱量や必要風量に応じて冷気を分配できれば理想であるが、実情は、発熱分布と二重床グレーチングレイアウト(供給風量)のアンバランスによる室内空間での熱溜まり、高温排気の回り込みが発生している。また、グレーチングから吹出す空気量はグレーチングの開口率だけでは決まらず、二重床内部の圧力が関係し、その圧力は二重床の高さや奥行きといった給気プレナムの形状、あるいはここに敷設された電源・通信ケーブルの量、さらに部屋全体の開口面積や開口分布等によって変化する。このような複雑な要素が絡み合って吹出し風量が決まるため、その設計には高度な技術が要求される。
【0016】
図13は従来の別のデータセンターの概略平面図である。
【0017】
このデータセンターは、上記問題を解決するために、複数のラック本体71で形成されるラック列82の吸気面側を向かい合わせて通路(コールドアイル84)を形成し、この通路の両端に扉86を設け、これらによる壁と天井により、コールドアイル84をサーバ管理室83内で隔離された独立した領域としている。これにより、ラック本体71を通過した排気が再び吸気口74に回り込むことを防止し、空調機81からの冷気のみがラック本体71内を通るようにしている。
【0018】
しかし、上記のようにコールドアイル84を隔離すると、ラック列82の排気面側が向かい合わせとなる通路(ホットアイル85)が形成される。サーバ管理室83は、このホットアイル85が全体を包囲するようなフロアレイアウトとなる。データセンターの管理者は、サーバラックのメンテナンスのためにサーバ管理室83に入室する必要があるため、管理者はこのホットアイル85を通行することになる。したがって、ホットアイル85を常温(28℃程度)に設定する必要がある。そうすると、コールドアイル84への給気温度をさらに低い温度(18℃程度)にする必要がある。また、発熱していないサーバに対しても冷気を給気してしまうため、上述したようなサーバ管理室83内の温度むらの問題点は解消されていない。この温度むらが生じることに伴い、ホットアイル85ではこれらの温度が混ざり、ホットアイル85の平均温度は21℃程度となる。結果、空調機への還気温度も低くなってしまい、空調機の還気温度を高くすることによる空調機能力の効率向上や外気冷房、フリークーリング(冷凍機を用いずに冷却塔による冷却効果で形成された冷水を使って冷気を発生させる)の利用期間が長くなること等による省エネルギーへは何ら寄与しないこととなる。
【0019】
また、コールドアイル84を隔離することは、二重床による給気プレナム76から給気するため、上記給気プレナムが抱える問題点も解消されていない。すなわち、床下の給気プレナム76内には配線が多数引かれるため、これが冷気流通の妨げとなり、十分な冷気がサーバ管理室83内に給気されないことがある。これを防止するため、空調機81から大風量で給気して対応しているが、高速で給気を行うと、これに暖められた排気が誘引されて排気がラック本体71を回り込んだり(図11の矢印A)、サーバ収容室73内で排気(暖気)が循環する(図11の矢印B)原因となる。したがって、サーバ管理室83においては局所で高温領域が形成されることなり、これが他のラック本体71、あるいはラック列82にも影響を与えるおそれがある。このような状況において、個々のサーバラックごとの発熱量や必要風量に応じて冷気を供給できることが理想であるが、上述した理由から、実情は、これができていない。
【0020】
また、グレーチング78から吹出す空気量は、床面に対するグレーチングの開口率だけでは決まらず、二重床内部の圧力が関係し、その圧力は二重床の高さや奥行きといった給気プレナム76の形状、あるいはここに敷設された電源・通信ケーブルの量、さらにサーバ管理室83全体におけるグレーチングの配置等によって変化する。このような複雑な要素が絡み合って吹出し風量が決まるため、二重床による給気を行う際の設計には高度な技術が要求され、手間がかかり面倒である。
【0021】
以下、上記と重複する部分もあるが、図13に示した従来の技術が抱える問題点を列記する。
【0022】
ラック内換気を確実にしようとする工夫が見受けられるが、ラック内ICT装置の最大負荷で決定された最大風量を定風量で給気している。ところが、ICT装置の平均発熱負荷は、定格消費電力量の30%〜40%程度しかないにもかかわらず、常に100%の風量を給気せざるを得ないことは非常にエネルギーの無駄となっている。
【0023】
コールドアイルを壁、天井で隔離することにより、ホットアイルが全体を包囲するようなフロアレイアウトとなり、通常のメンテナンスに出入りするためにホットアイルを常温(28℃程度)とせざるを得ず、コールドアイルをさらに低い温度(18℃程度)とせざるを得ないこととなっている。よって、コールドアイルは非常に寒い状態となる。また、ラック内ICT装置の発熱が大きいところは排気温度は高くなり、発熱がないところや少ないところは、排気温度が低くなり、結果ホットアイル全体に熱溜まりや冷えすぎ等の温度むらが発生することは従来(図12)と同様である。
【0024】
また、ICT装置の平均発熱負荷時(定格消費電力量の30%〜40%程度)は、ホットアイル全体の平均温度は21℃程度となってしまい、結果、空調機への還気温度も低くなってしまい、空調機の還気温度を高くすることによる空調機能力の効率向上や外気冷房、フリークーリングの利用期間が長くなること等による省エネルギーへは何ら寄与しないこととなる。
【0025】
さらに、ホットアイルが全体を包囲し、コールドアイルが壁、天井で隔離されることにより、コールドアイルが離れ小島のようになってしまい、コールドアイルへの冷気供給方法は、大きなダクトによるか、二重床を利用して行うしかなく、従来(図12)の給気システムと何ら変わりはない。
【0026】
以上のように、図13に示す従来技術が現在最先端といわれているが、このシステムにおいても、それ以前から抱えているシステムとしての潜在的問題点はほとんど解決されていないのが現状といえる。
【0027】
一方で、冷却システム及び冷却構造が特許文献1に開示されている。しかしながら、この冷却構造でも、排気がラック外で回りこんだり、あるいは排気がラック内で循環してしまう問題点は解消されていない。
【0028】
【特許文献1】特開2006−301758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、サーバの冷却に用いられた暖気を確実にラック本体の外側に排気し、サーバの発熱量に応じて適切な量の冷気を給気し、したがってサーバ管理室内に温度むらを発生させることなく、空調機の無駄な送風を防止して省エネルギーに寄与することができるサーバラック及びこれを備えたデータセンターの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、吸気口と排気口とを有するラック本体からなり、当該ラック本体内には、仕切板で仕切られた複数のサーバ収容室が形成され、前記排気口には、前記サーバ収容室に収容されたサーバが備える内蔵ファンよりも大風量を送風できるファンが備わり、当該ファンに近接して温度検知装置が備わり、前記ファンは、前記温度検知装置の測定結果により前記サーバの発熱量に応じて風量調整可能であることを特徴とするサーバラックを提供する。
【0031】
請求項2の発明では、前記サーバ収容室の前記吸気口側の内壁と、当該サーバ収容室に収容されたサーバとの間に、空気の流通を遮断するための遮蔽板が設けられることを特徴としている。
【0032】
請求項3の発明では、前記サーバ収容室は、上下又は左右方向に隣り合うサーバ収容室とのみ前記ラック本体内で連通し、前記吸気口は、始端のサーバ収容室とのみ連通し、前記排気口は、終端のサーバ収容室とのみ連通することを特徴としている。
【0033】
また、請求項4の発明では、前記ラック本体が複数並べられたラック列を複数列配設したサーバ管理室と、前記ラック本体内を冷却するために、サーバ管理室内又は隣接した別室に配設された空調機を備えたデータセンターであって、前記ラック本体の前記排気口が、前記サーバ管理室の天井裏に形成された排気プレナムと直接連通し、当該排気プレナムは前記空調機の吸気口と直接連通し、前記空調機からの送風口は前記サーバ管理室内に配設されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサーバラックを備えたデータセンターを提供する。
【0034】
また、請求項5の発明では、前記ラック本体が複数並べられたラック列を複数列配設したサーバ管理室と、前記ラック本体内を冷却するために、サーバ管理室内又は隣接した別室に配設された空調機を備えたデータセンターであって、前記サーバ管理室内に、前記ラック本体の前記排気口側の面で囲まれた排気領域を形成し、当該排気領域は、前記サーバ管理室の天井裏に形成された排気プレナムと直接連通し、当該排気プレナムは前記空調機の吸気口と直接連通し、前記空調機からの送風口は前記排気領域以外の前記サーバ管理室内に配設されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサーバラックを備えたデータセンターを提供する。
【0035】
また、請求項6の発明では、前記ラック本体が複数並べられたラック列を複数列配設したサーバ管理室と、前記ラック本体内を冷却するために、サーバ管理室内又は隣接した別室に配設された空調機を備えたデータセンターであって、前記サーバ管理室内に、前記ラック本体の前記排気口側の面で囲まれた排気領域を形成し、当該排気領域内に前記空調機の給気口が備わり、前記空調機からの送風口は前記排気領域以外の前記サーバ管理室内に配設されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサーバラックを備えたデータセンターを提供する。
【発明の効果】
【0036】
請求項1の発明によれば、ラック本体にサーバの内蔵ファンよりも大風量のファンが備わるため、暖気は強制的に排気口から外部に排気される。したがって、サーバ収容室内で暖気となった排気が循環することなく、ラック本体内の局所に高温領域が形成されることを防止できる。また、上述したような、大風量で給気を行うことによる高速給気による暖気の誘引を防止するために、吸気口の外側の幅を広くして、グレーチングの設置面積を増加させ、給気面積を増やして給気の風速を遅くする必要がない。さらに、排気口の外側の幅も広くして、排気の風速も遅くさせ、回り込みや循環を防止する必要がない。以上からすると、サーバ本体の吸気口側及び排気口側には、それぞれ吸気、排気の風速を低減させるためのスペースが不要となり、スペース的にも効率がよい。また、排気される暖気の温度を測定しながら、サーバの発熱量に応じてファンの風量を調整できるので、適切にラック本体内に冷気を給気できる。すなわち、サーバの発熱負荷に応じて変風量制御が可能となる。したがって、サーバ管理室内に温度むらがなくなり、無駄な給気を防止して空調効率の高い、省エネルギーシステムを構築できる。なお、空調効率についての指標については後述する。
【0037】
請求項2の発明によれば、サーバ収容室の吸気口側の内壁と、サーバ収容室に収容されたサーバとの間に、空気の流通を遮断するための遮蔽板が設けられるため、冷気は必ずサーバ内を通過する。したがって、空調効率を高めることができる。
【0038】
請求項3の発明によれば、サーバ収容室は、隣り合うサーバ収容室とのみラック本体内で連通し、吸気口は、始端のサーバ収容室とのみ連通し、排気口は、終端のサーバ収容室とのみ連通するため、吸気口から排気口までサーバ収容室が連続して直列に並ぶような構造となる。したがって、稼動してないサーバがあっても、冷気はこれを通過して必ず発熱しているサーバの冷却に用いられる。これにより、空調効率が高まる。
【0039】
請求項4の発明によれば、ラック本体の排気口が、サーバ管理室の天井裏に形成された排気プレナムと直接連通し、排気プレナムは空調機の吸気口と直接連通するため、排気は確実に排気プレナムを通り、空調機に吸気される。このため、排気がラック本体を回り込んで吸気口から再び給気されることはない。また、コールドアイルが管理者等の人の通行領域となるため、コールドアイルの温度設定を常温近く(25℃程度)にすることができ、空調機への還気温度が高い状態(35℃程度)で運転できるので、空調機能力の効率を向上させることができる。また、空調機の省エネ運転方法である外気冷房や冷水を利用した空調機においては、フリークーリングを有効に利用することができる。また、ホットアイルとコールドアイルを明確にゾーニング(区画)し、上記ファンの変風量制御と相俟って、コールドアイルには負荷がなくなるため、一般的な安価な空調機を利用することができ、コスト面でも好ましい。
【0040】
請求項5の発明によれば、サーバ管理室内に、ラック本体の排気口側の面で囲まれた排気領域を形成し、当該排気領域は、サーバ管理室の天井裏に形成された排気プレナムと直接連通し、排気プレナムは空調機の吸気口と直接連通するので、ラック本体からの排気は確実に排気領域(ホットアイル)を通り、空調機に吸気される。このため、排気がラック本体を回り込んで吸気口から再び給気されることはない。またコールドアイルが管理者等の人の通行領域となるため、コールドアイルの温度設定を常温近く(25℃程度)にすることができ、空調機への還気温度が高い状態(35℃程度)で運転できるので、空調機能力の効率を向上させることができる。また、空調機の省エネ運転方法である外気冷房や冷水を利用した空調機においては、フリークーリングを有効に利用することができる。また、ホットアイルとコールドアイルを明確にゾーニング(区画)し、上記ファンの変風量制御と相俟って、コールドアイルには負荷がなくなるため、一般的な安価な空調機を利用することができ、コスト面でも好ましい。
【0041】
請求項6の発明によれば、サーバ管理室内に、ラック本体の排気口側の面で囲まれた排気領域を形成し、排気領域内に空調機が配設されるので、ラック本体からの排気は確実に排気領域(ホットアイル)を通り、空調機に還気される。このため、排気がラック本体を回り込んで吸気口から再び給気されることはない。また、コールドアイルが管理者等の人の通行領域となるため、コールドアイルの温度設定を常温近く(25℃程度)にすることができ、空調機への還気温度が高い状態(35℃程度)で運転できるので、空調機能力の効率を向上させることができる。また、空調機の省エネ運転方法である外気冷房や冷水を利用した空調機においては、フリークーリングを有効に利用することができる。また、ホットアイルとコールドアイルを明確にゾーニング(区画)し、上記ファンの変風量制御と相俟って、コールドアイルには負荷がなくなるため、一般的な安価な空調機を利用することができ、コスト面でも好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は、吸気口と排気口とを有するラック本体からなり、当該ラック本体内は、仕切板で仕切られた複数のサーバ収容室が形成され、前記排気口に、前記サーバ収容室に収容されたサーバが備える内蔵ファンよりも大風量を送風できるファンを備え、サーバの冷却に用いられた暖気を確実にラック本体の外側に排気し、サーバの発熱量に応じて適切な量の冷気を給気し、したがってサーバ管理室内に温度むらを発生させることなく、空調機の無駄な運転を防止して省エネルギーに寄与することができるサーバラック及びこれを備えたデータセンターである。さらに、本発明によれば、「データセンターの最適化」=「空調の効率化」と捉え、最小の空調使用で最大の冷却効果を発揮させるために、常に変化する発熱の偏在に対して、「排熱による高温空気」と「空調から吹出す低温空気」を明確にゾーニング(区画)し、極力小風量で発熱を処理し、高温のままで空調機に還気するシステムであり、空調効率の高い、省エネルギー、省コストな総合的高効率(変風量)空調システムの実現ができる。
【実施例1】
【0043】
図1は本発明に係るサーバラックの断面図である。
【0044】
図示したように、実施例1のサーバラックは、ラック本体1と、このラック本体1に備わるファン2からなる。ラック本体1は床11に載置される。ラック本体1内は、仕切板3で仕切られ、複数のサーバ収容室4が形成される。サーバ収容室4には、サーバ5が載置される。各サーバ5には内蔵ファン6が備わる。ラック本体1の一方の側面は開口し、吸気口7が形成される。ラック本体1の他方の側面も開口し、排気口8が形成される。ファン2は、この排気口8に取り付けられる。この取り付けは、どのような手法で取り付けてもよい。なお、ファン2は、一つの排気口8に複数台取り付けられる(図では1つのみ記載)。このうち、少なくとも1台は予備として取り付けておくことが好ましい。予備のファンを設けておくことにより、他のファンの故障時に対応することができるからである。24は、故障等で静止したファンを通して暖気が逆流することを防止するための逆流防止ダンパである。
【0045】
実施例1で示すサーバラックは、仕切板3が水平にそれぞれ平行となるように配設され、各サーバ収容室4が吸気口7及び排気口8と連通している。サーバ収容室4に載置されたサーバ5を冷却するための冷気は、吸気口7から流入し、サーバ5を冷却して排気口8から排気される。この冷気の流れは、排気口8に備わるファン2により形成される。ファン2により、サーバを冷却した後の暖気は、強制的にラック本体1の外部に排気される。したがって、暖気が吸気に誘引されてサーバ収容室4内を逆流し、循環することはなく、ラック本体1内の局所に高温領域が形成されることを防止できる。ファン2は、各サーバ収容室4にそれぞれ設けてもよいし、仕切板3で複数のサーバ収容室4を1ユニットとなるように独立させ、複数のユニットを形成し(図では3ユニット)、ユニットごとにファン2を取り付けてもよい。
【0046】
排気口8には、温度検知装置9が備わる。ファン2は、この温度検知装置9の測定結果により、サーバ5の発熱量に応じて風量調整される。これにより、排気される暖気の温度を測定しながら、ファン2の風量を調整できるので、サーバ5の発熱量に応じて適切な量の冷気を給気できる。すなわち、排気温度が設定温度(例えば35℃程度)となるようにファン2をインバータ制御することにより、サーバ5の発熱状況に応じ、自動的に高負荷時は風量を多くし、低負荷時は風量を少なくするような、サーバ5の発熱負荷に応じた変風量制御が可能となる。したがって、データセンター内に温度むらがなくなり、無駄な給気を防止して空調効率の高い、省エネルギーシステムを構築できる。特に、実際のサーバ5の平均発熱負荷は、定格消費電力量の30%〜40%程度なので、これに合わせた空調機の運転ができ、非常に高い空調効率を実現できる。
【0047】
サーバ収容室4の吸気口7側の内壁とサーバ5との間には、空気の流通を遮断するための遮蔽板10が設けられる。すなわち、サーバ収容室4の吸気口7側は、サーバ5のみが露出することになる。したがって、冷気は必ずサーバ5内を通過する。したがって、サーバ5の空調効率を高めることができる。
【実施例2】
【0048】
図2は本発明に係る別のサーバラックの断面図である。
【0049】
図示したように、実施例2のサーバラックは、一の排気口8をラック本体1の上部に形成し、各サーバ収容室4を、この排気口8と連通する構造としたものである。このように、各サーバ収容室4からの排気口8を1箇所にまとめれば、ファン2の設置台数を削減できる。その他の構成、作用、効果は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0050】
図3は本発明に係るさらに別のサーバラックの断面図である。
【0051】
図示したように、実施例3のサーバラックは、排気口8がサーバ本体1の上側に向けて形成され、天井12と密閉されて連通する。排気は、天井裏である排気プレナム13を通って空調機に還気される。このような構成とすれば、排気が室内に放出されず、必ず空調機に還気されるので、排気がラック本体を回り込んで再び吸気されることを確実に防止できる。その他の構成、作用、効果は実施例1と同様である。
【実施例4】
【0052】
図4は本発明に係るさらに別のサーバラックの断面図である。
【0053】
図示したように、実施例4のサーバラックは、サーバ収容室4が、上下方向に隣り合うサーバ収容室4とのみ連通するようにして仕切板3により形成される。すなわち、空気の流通経路がラック本体1内を蛇行するように形成される。端部(始端)のサーバ収容室4のみが吸気口7と連通し、他方の端部(終端)のサーバ収容室4のみが排気口8と連通する。したがって、吸気口7から排気口8まで複数のサーバ収容室4が連続して直列に並ぶような構造となる。これにより、稼動してないサーバ5があっても、冷気はこれを通過して必ず発熱しているサーバ5の冷却に用いられる。これにより、空調効率が高まる。なお、始端と終端とその間のサーバ収容室4で一のユニットを形成し、ラック本体1に複数のユニットを設けてもよい(図では3つのユニット)。また、図では示していないが、実施例1〜3で用いた遮蔽板10を利用することもできる。
【実施例5】
【0054】
図5は本発明に係るさらに別のサーバラックの一部断面図である。
【0055】
図は、吸気口7側から見た状態で、一つのユニットのみを示している。ブレードサーバ等の縦型のサーバ5の場合、サーバ5は各サーバ収容室4に台23に縦置きにして載置される。台23は格子状であり、空気の流通が可能である。この場合において、仕切板3を、上下に櫛歯状にかみ合うように形成して、サーバ収容室4を形成すれば、空気の流通がラック本体1内を蛇行するように形成される。すなわち、サーバ収容室4は、左右方向に隣り合うサーバ収容室4とのみ連通する。したがって、吸気口7から流入した冷気は、すべてのサーバ収容室4を通過して、排気口8から排気される。したがって、実施例4と同様に、稼動してないサーバ5があっても、冷気はこれを通過して必ず発熱しているサーバ5の冷却に用いられる。これにより、空調効率を高めることができる。なお、図ではファン2は省略している。
【実施例6】
【0056】
図6は本発明に係るさらに別のサーバラックの断面図である。
【0057】
図示したように、実施例6のサーバラックは、実施例3と実施例4を合わせたものであり、冷気がラック本体1内を蛇行するようにし、さらに排気口8を天井12に連通させたものである。このような構成とすれば、排気が室内に放出されず、必ず空調機に還気されるので、排気がラック本体を回り込んで再び吸気されることを確実に防止でき、これとともに、発熱してないサーバ5があっても、冷気はこれを通過して必ず発熱しているサーバ5の冷却に用いられ、空調効率を高めることができる。
【0058】
以下、上記と重複する部分もあるが、実施例1〜実施例6に示した本発明に係るサーバラックの効果を列記する。
【0059】
ラックの構造的な工夫と変風量制御機能を具備することによりラック内温度と気流を制御し、ラック内の発熱状況に合わせ極力小風量で、確実な発熱処理を行うことができ、システム全体として空調効率の高い、省エネルギーシステムを構築できる。
【0060】
ラックの上部又は背面に複数台(1台は予備)の排気ファンを取り付け、吸い込み温度が設定温度(35℃程度)になるようにインバータ制御することにより、ラック内ICT装置の発熱状況に応じ、自動的に高負荷時は風量を多くし、低負荷時は風量を少なくすることが可能となり、空調効率の高い、省エネルギーシステムを構築できる。
【0061】
また、ラック内で起こりがちな内部エアーフロー(内部循環気流)により、高温排気が他のICT装置に流れていき、高温障害を起こしてしまうような問題は、上記のように排気ファンにより強制的に気流制御することにより解決される。
【実施例7】
【0062】
図7は本発明に係るデータセンターの(A)は平面図、(B)は(A)のA−A断面図である。
【0063】
実施例7は、実施例3又は実施例6のサーバラックを適用したデータセンターである。データセンターは、サーバラックを多数収容し、複数台(図では7台)の空調機15が配設されたサーバ管理室14を有する。図では、ラック本体1を6台でラック列16を形成し、このラック列16が4列配設されたサーバ管理室14を示している。ラック本体1の排気口8は天井裏の排気プレナム13に直接連通し、この排気プレナム13は、空調機15の吸気口17と直接連通している。これにより、サーバ管理室14内の通路はすべて空調機15からの冷気で満たされる領域(コールドアイル18)となる。空調機15としては、冷水型、空冷直膨型等種々のものを使用できる。このような構成によれば、排熱による高温空気の領域(排気プレナム13)と、空調機15から吹出す低温空気の領域(コールドアイル18)とを明確にゾーニング(区画)するようにそれぞれの領域が仕切られ、高温空気をコールドアイル18に一切放出することがないので、コールドアイル18の温度は均一になり、温度制御もしやすく、冷えすぎや熱だまりが起こることはない。
【0064】
また、排気は確実に排気プレナム13を通り、空調機15に還気される。このため、排気がラック本体1を回り込んで吸気口7から再び吸気されることはない。
【0065】
また、コールドアイル18が管理者等の人の通行領域となるため、コールドアイル18の温度設定を常温(25℃程度)にすることができ、排気プレナム13の温度設定をラック内ICT装置の環境条件の上限温度(例えば40℃)より少し低い(安全を考慮した)温度(例えば35℃)にすることができる。よって、空調機15への還気温度が高い状態で運転できるので、空調機15の運転効率を向上させることができる。
【0066】
さらに、コールドアイル18が全体を包囲するようなフロアレイアウトになるので、二重床を用いずに冷気を給気できるので、一般的な安価な空調機を利用することができ、コスト面でも好ましい。以上のように、空調効率を高めることにより、空調機15の設置台数も削減できる。したがって、室外機の設置スペースの問題点も解消でき、建設計画の自由性が高まるとともに、スペースの有効性も高まる。なお、空調機15の吸気口が排気プレナム13に、空調機15からの送風口が、コールドアイル18に配設されていれば、空調機15の本体はサーバ管理室14以外の別室に設けられていてもよい。
【0067】
上記のような数々の省エネルギー手法を採用することができるので、ランニングコストの削減と、環境負荷低減を図ることができる。
【実施例8】
【0068】
図8は本発明に係る別のデータセンターの(A)は平面図、(B)は(A)のB−B断面図である。
【0069】
実施例8は、サーバラックの排気口8側を向かい合わせにして排気で満たされる領域(ホットアイル19)を形成したものである(図では2つのホットアイル19)。ホットアイル19は、天井から連続して形成された壁で囲まれ、壁の一部はラック本体1と扉20で形成される。ホットアイル19は、天井裏の排気プレナム13に直接連通し、この排気プレナム13は、空調機15の吸気口17と直接連通している。これにより、サーバ管理室14内の通路はすべて空調機15からの冷気で満たされる領域(コールドアイル18)となる。したがって、排熱による高温空気の領域(ホットアイル19)と、空調機15から吹出す低温空気の領域(コールドアイル18)とを明確にゾーニング(区画)するようにそれぞれの領域が仕切られ、高温空気をコールドアイル18に一切放出することがないので、コールドアイル18の温度は均一になり、また、ホットアイル19においては、変風量制御と相俟って、温度が均一になり、温度制御もしやすく、冷えすぎや熱だまりが起こることはない。
【0070】
このような構成によっても、実施例7と同様に、ラック本体1からの排気は確実にホットアイル19を通り、空調機15に還気される。したがって、実施例7と同様の効果を得ることができる。すなわち、排気がラック本体1を回り込んで吸気口7から再び吸気されることはない。
【0071】
また、コールドアイル18が管理者等の人の通行領域となるため、コールドアイル18の温度設定を常温(25℃程度)にすることができ、ホットアイル19の温度設定をラック内ICT装置の環境条件の上限温度(例えば40℃)より少し低い(安全を考慮した)温度(例えば35℃)にすることができる。よって、空調機15への還気温度が高い状態で運転できるので、空調機15の運転効率を向上させることができる。
【0072】
さらに、コールドアイル18が全体を包囲するようなフロアレイアウトになるので、二重床を用いずに冷気を給気できるので、一般的な安価な空調機を利用することができ、コスト面でも好ましい。以上のように、空調効率を高めることにより、空調機15の設置台数も削減できる。したがって、室外機の設置スペースの問題点も解消でき、建設計画の自由性が高まるとともに、スペースの有効性も高まる。なお、空調機15の吸気口が排気プレナム13(ホットアイル19)に、空調機15からの送風口が、コールドアイル18に配設されていれば、空調機15の本体はサーバ管理室14以外の別室に設けられていてもよい。
【0073】
上記のような数々の省エネルギー手法を採用することができるので、ランニングコストの削減と、環境負荷低減を図ることができる。
【実施例9】
【0074】
図9は本発明に係るさらに別のデータセンターの平面図である。
【0075】
実施例9は、サーバラックの排気口8側を向かい合わせにして排気で満たされる領域(ホットアイル19)を形成し、このホットアイル19に空調機15を配設したものである。ラック以外で仕切る位置には、壁22や扉20が配設される。空調機15からの冷気は、天井に沿って配設したダクト21を通して給気される。これにより、実施例7や8のような、排気プレナム13を形成することなく、サーバ管理室14を設計できる。この例によっても、排熱による高温空気の領域(ホットアイル19)と、空調機15から吹出す低温空気の領域(コールドアイル18)とを明確にゾーニング(区画)するようにそれぞれの領域が仕切られ、高温空気をコールドアイル18に一切放出することがないので、コールドアイル18の温度は均一になり、また、ホットアイル19においては、変風量制御と相俟って、温度が均一になり、温度制御もしやすく、冷えすぎや熱だまりが起こることはない。
【0076】
このような構成によっても、実施例7と同様に、ラック本体1からの排気は確実にホットアイル19を通り、空調機15に還気される。したがって、実施例7と同様の効果を得ることができる。すなわち、排気がラック本体1を回り込んで吸気口7から再び吸気されることはない。
【0077】
また、コールドアイル18が管理者等の人の通行領域となるため、コールドアイル18の温度設定を常温(25℃程度)にすることができ、ホットアイル19の温度設定をラック内ICT装置の環境条件の上限温度(例えば40℃)より少し低い(安全を考慮した)温度(例えば35℃)にすることができる。よって、空調機15への還気温度が高い状態で運転できるので、空調機15の運転効率を向上させることができる。
【0078】
さらに、コールドアイル18が全体を包囲するようなフロアレイアウトになるので、二重床を用いずに冷気を給気できるので、一般的な安価な空調機を利用することができ、コスト面でも好ましい。以上のように、空調効率を高めることにより、空調機15の設置台数も削減できる。したがって、室外機の設置スペースの問題点も解消でき、建設計画の自由性が高まるとともに、スペースの有効性も高まる。なお、空調機15の吸気口がホットアイル19に、空調機15からの送風口が、コールドアイル18に配設されていれば、空調機15の本体はサーバ管理室14以外の別室に設けられていてもよい。
【0079】
上記のような数々の省エネルギー手法を採用することができるので、ランニングコストの削減と、環境負荷低減を図ることができる。
【0080】
以下、上記と重複する部分もあるが、実施例7〜実施例9に示した本発明に係るデータセンターの効果を列記する。
【0081】
実施例1〜6のラックを採用することにより、空調効率の高い変風量空調システムを構築でき、省エネルギーとなる。
【0082】
発熱処理をすべてラック内、小風量で処理できるため、高温排気を天井直接排気又は完全に隔離されたホットアイルに放出することにより、「排熱による高温空気」と「空調から吹出す低温空気」を明確にゾーニング(区画)でき、高温空気の領域(コールドアイル)に放出することがないので、領域温度は均一となる。よって、従来のような気流による誘引や回り込みによる冷えすぎ・熱溜まりがなく、サーバ等のICT装置の高温障害も一切ない。ICT装置設置環境や室内環境の向上となる。
【0083】
高温空気をコールドアイルに一切放出することがないので、コールドアイルの熱負荷はほとんどなく、領域温度は常に均一となる。よって、従来行ってきた複雑で面倒な温度・気流分布等のシミュレーションが一切不要となる。
【0084】
高温空気をコールドアイルに一切放出することがなく、コールドアイルが全体を包囲するようなフロアレイアウトとなるので、従来行っていたような高価な床吹出し型空調機を使用した空調方式の必要がなく、一般空調(一般的な簡易な空調)の直吹き方式でも空調可能となる。また、空調のための二重床も不要となる等、建設コストの低減となる。
【0085】
発熱処理をすべてラック内で処理するため、従来のようにラックの前面・背面に気流設計上必要としていた通路幅が必要なくなり、ラックのメンテナンス上必要な通路幅のみでよく、ラック1台当たりの設置面積が15%〜20%程度削減でき、建設コストを低減できる。
【0086】
発熱負荷はコールドアイルに全く放出されず、天井経由又はホットアイル経由にて空調機に戻るため、すべての負荷が空調機のレターン側負荷となり、空調機コイル入口側が高温(35℃程度)となるため、空調機の性能が20%〜30%程度向上する。さらに、冷水を利用した空調機であれば冷水往き温度を高くでき(例えば20℃〜23℃)、冷凍機の効率を20%〜30%程度向上させることができる。その他、外気冷房やフリークーリングの利用期間が長くなり、利用熱量も大きくなり、さらに蓄熱システムの場合は、利用温度差を通常の3〜5倍程度まで大きくすることができる等の大きな省エネルギー、省コストとなるシステム構築が可能となる。
【0087】
さらに、冷水を利用した空調方式では、従来の水を使用しない冷媒による空冷直膨型空調機方式で問題となっている室外機設置スペースの狭隘化、室外機密集設置による冷房能力低下、室内空調機スペースの枯渇等の問題がなく、建設計画の自由性が高まるとともに、スペースの有効性も高まる。
【0088】
上記数々の省エネルギー手法を採用することができ、ランニングコストの削減と環境負荷低減効果は多大なものとなる。
【0089】
図10は空調効率を評価する指標についての計算式である。
【0090】
近年、CPUの高性能化と高集積化に伴いICT装置の発熱量は急激に増大し、データセンターの電力密度は、この10年で5倍以上に増加しているといわれている。それに伴いICT装置を冷却するための空調ランニングコストの増大が大きくクローズアップされ、「データセンターの最適化」を企業が果たすべき「社会的責任」として捉えられている。そこで本発明では、「データセンターの最適化」=「空調の効率化」と捉え、データセンターのエネルギー効率を評価する指標の一つとして空調機による送風がどれだけICT装置の発熱処理に役立っているかを評価する値である「空調効率」を定めた。
【0091】
(A)に示すように、空調効率は、ICT装置の発熱を処理するために必要な計算風量とその他負荷を処理するために必要な計算風量を加算し、実際の空調機送風量で除した値で表す。なお、0.33は空気の比熱(W/m3℃)である。空調効率が高いほど、小風量で発熱を処理し、高温のままで空調機に還気するシステムであり、省エネルギーな高効率(変風量)空調システムであるといえる。世界の85%程度のデータセンターは、ICT装置の平均発熱負荷時(定格消費電力量の30%〜40%程度)は、この空調効率が15%〜20%程度であろうと思われる。
【0092】
また、(B)に示すように、空調効率の逆数を「空調倍率」と定め、この値が大きいほど空調機による送風がICT装置の発熱処理に役立っていないことを表し、この値が小さいほど空調機による送風がICT装置の発熱処理に役立っていることを表す。空調効率100%=空調倍率1となる。
【0093】
本発明に係るサーバラック及びこれを備えたデータセンターでは、ICT装置の平均発熱負荷時(定格消費電力量の30%〜40%程度)において空調効率を80%程度まで高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係るサーバラックの断面図である。
【図2】本発明に係る別のサーバラックの断面図である。
【図3】本発明に係るさらに別のサーバラックの断面図である。
【図4】本発明に係るさらに別のサーバラックの断面図である。
【図5】本発明に係るさらに別のサーバラックの一部断面図である。
【図6】本発明に係るさらに別のサーバラックの断面図である。
【図7】本発明に係るデータセンターの(A)は平面図、(B)は(A)のA−A断面図である。
【図8】本発明に係る別のデータセンターの(A)は平面図、(B)は(A)のB−B断面図である。
【図9】本発明に係るさらに別のデータセンターの平面図である。
【図10】空調効率を評価する指標についての計算式である。
【図11】従来のサーバラックの断面図である。
【図12】従来のデータセンターの概略平面図である。
【図13】従来の別のデータセンターの概略平面図である。
【符号の説明】
【0095】
1:ラック本体、2:ファン、3:仕切板、4:サーバ収容室、5:サーバ、6:内蔵ファン、7:吸気口、8:排気口、9:温度検知装置、10:遮蔽板、11:床、12:天井、13:排気プレナム、14:サーバ管理室、15:空調機、16:ラック列、17:吸気口、18:コールドアイル、19:ホットアイル、20:扉、21:ダクト、22:壁、23:台、24:逆流防止ダンパ、71:ラック本体、72:仕切板、73:サーバ収容室、74:吸気口、75:排気口、76:給気プレナム、77:床、78:グレーチング、79:サーバ、80:内蔵ファン、81:空調機、82:ラック列、83:サーバ管理室、84:コールドアイル、85:ホットアイル、86:扉
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバ等のICT(Information and Communication Technology)装置の発熱に対して適切にこれを冷却できるサーバラック及びこれを備えたデータセンターに関するものである。なお、以下では発熱体としてサーバを例にして説明している。
【背景技術】
【0002】
図11は従来のサーバラックの断面図であり、図12は従来のデータセンターの概略平面図である。
【0003】
図11に示すように、従来のサーバラックは、ラック本体71内が仕切板72により仕切られて複数個のサーバ収容室73が形成されたものである。このサーバ収容室73に、サーバ79がそれぞれ収容される。ラック本体71の一方の側面が全面開口し、これが吸気口74となり各サーバ収容室73と連通する。ラック本体71の他方の側面も全面開口し、これが排気口75となり各サーバ収容室73からそれぞれ排気される。ラック本体71が載置される床77は、二重床構造で形成され、床下に給気プレナム76が形成される。床77には、グレーチング78が備わり、空調機81(図12参照)からの冷気は給気プレナム76を通って、ラック本体71の吸気口74近傍の床77に形成された格子板であるグレーチング78から給気され、ラック本体71の吸気口74に流入する。この冷気の流入は、サーバ79に内蔵された内蔵ファン80により吸気されて行われる。
【0004】
図12に示すように、従来のデータセンターは、サーバ管理室83内に、サーバ79を収容したラック本体71を複数(図では6個)並べて形成されたラック列82を複数(図では4列)配設したものである。床77に備わるグレーチング78は、いずれもラック本体71の吸気口74側に形成される。サーバ79が稼動して発熱すると、上述したように、空調機81から冷気が給気プレナム76を通ってグレーチング78からサーバ管理室83内に給気され、吸気口74から各サーバ収容室73(図11参照)内に流入してサーバ79を冷却し、温められた暖気は排気口75からサーバ管理室83に排気されて再び空調機81に還気される。
【0005】
しかしながら、データセンターで管理するサーバ79のユーザは多数にわたり、サーバ管理室83内のどの場所で、どのような範囲で、どのような量の発熱が生じ、また発熱する時間帯も定まらない熱負荷特性がある。また、床下の給気プレナム76内には配線が多数引かれるため、これが冷気流通の妨げとなり、十分な冷気がサーバ管理室83内に給気されないことがある。これを防止するため、空調機81から大風量で給気して対応しているが、高速で給気を行うと、これに暖められた排気が誘引されて排気がラック本体71を回り込んだり(図11の矢印A)、サーバ収容室73内で排気(暖気)が循環する(図11の矢印B)原因となる。したがって、サーバ管理室83においては局所で高温領域が形成されることとなり、これが他のラック本体71、あるいはラック列82にも影響を与えるおそれがある。
【0006】
この局所高温領域の温度を下げるために、さらに低温の冷気を大風量で給気して対応しているが、このようにすると、サーバ79が発熱していない箇所においては冷えすぎの問題が生じ、前述した暖気の回り込みや暖気の循環と相俟って、サーバ管理室83内の温度分布にむらが生じる。このように空調機81を用いて最大負荷で決定された最大風量を定風量として給気することは、実際にはサーバの平均発熱負荷は、定格消費電力量の30%〜40%程度しかないにもかかわらず、常に100%の風量を給気せざるを得ないことは非常にエネルギーの無駄となっている。また、上述したように、大風量で給気を行うことによる高速給気による暖気の誘引を防止するために、吸気口の外側の幅を広くして、グレーチング78の設置面積を増加させ、給気面積を増やして給気の風速を遅くする必要がある。さらに、排気口の外側の幅も広くして、排気の風速も遅くさせ、回り込みや循環を防止する必要がある。以上からすると、サーバ本体1の吸気口側及び排気口側には、それぞれ吸気、排気の風速を低減させるためのスペースが必要となり、スペース的にも効率が悪い。
【0007】
近年、CPUの高性能化と高集積化に伴いICT装置の発熱量は急激に増大しており、上述した問題点がさらに顕著にクローズアップされ、この発熱処理を適切に行うためのデータセンターの空調の最適化は重要な社会的課題となっている。しかし現状では、増大する発熱量に対して空調機を増設して対応しているため、空調機設置スペースの確保や室外機の設置場所が不足し、完全に対応できていない状態である。また、室外機が密集して設置されることは、空調機の冷房能力の低下を招く。
【0008】
以下、上記と重複する部分もあるが、図11、図12に示した従来の技術が抱える問題点を列記する。
【0009】
排気面から吸気面に気流が形成される、いわゆるFront to Backのラック列配置によるラック吸気面(Front)へのラック排気面(Back)から放出される高温排気の流入により、高温障害を引き起こす。
【0010】
給気プレナムの障害による空調気流の未到達、高速給気による誘引や回り込みによるラック内換気の不十分により高温障害を引き起こす。
【0011】
ラック内で内部エアーフロー(内部循環気流)が発生し、高温排気が他のICT装置に流れていき、高温障害を引き起こす。
【0012】
サーバ等ICT装置の発熱は、場所・範囲・量・時刻等定まらない特性を有していることによって高発熱機器の冷却不十分による熱溜まりが発生する一方、低発熱機器周辺が冷えすぎてしまう。
【0013】
このため、高温障害を防止しようとして、給気温度を下げ、最大負荷で決定された最大風量を定風量で給気している。ところが、ICT装置の平均発熱負荷は、定格消費電力量の30%〜40%程度しかないにもかかわらず、常に100%の風量を給気せざるを得ないことは非常にエネルギーの無駄となっている。
【0014】
サーバ等ICT装置を冷却するための空調機が数多く必要となり、空調機消費電力の増大や、空調機設置スペースの確保が問題になってきている。特に屋上やベランダ等の室外機設置スペースが不足すると、室外機を過度に集中設置することになり、空調機能力低下や故障停止を引き起こしている。
【0015】
二重床空調方式において、オープンラックを対象に二重床グレーチングから冷気供給を行う場合、個々の装置の発熱量や必要風量に応じて冷気を分配できれば理想であるが、実情は、発熱分布と二重床グレーチングレイアウト(供給風量)のアンバランスによる室内空間での熱溜まり、高温排気の回り込みが発生している。また、グレーチングから吹出す空気量はグレーチングの開口率だけでは決まらず、二重床内部の圧力が関係し、その圧力は二重床の高さや奥行きといった給気プレナムの形状、あるいはここに敷設された電源・通信ケーブルの量、さらに部屋全体の開口面積や開口分布等によって変化する。このような複雑な要素が絡み合って吹出し風量が決まるため、その設計には高度な技術が要求される。
【0016】
図13は従来の別のデータセンターの概略平面図である。
【0017】
このデータセンターは、上記問題を解決するために、複数のラック本体71で形成されるラック列82の吸気面側を向かい合わせて通路(コールドアイル84)を形成し、この通路の両端に扉86を設け、これらによる壁と天井により、コールドアイル84をサーバ管理室83内で隔離された独立した領域としている。これにより、ラック本体71を通過した排気が再び吸気口74に回り込むことを防止し、空調機81からの冷気のみがラック本体71内を通るようにしている。
【0018】
しかし、上記のようにコールドアイル84を隔離すると、ラック列82の排気面側が向かい合わせとなる通路(ホットアイル85)が形成される。サーバ管理室83は、このホットアイル85が全体を包囲するようなフロアレイアウトとなる。データセンターの管理者は、サーバラックのメンテナンスのためにサーバ管理室83に入室する必要があるため、管理者はこのホットアイル85を通行することになる。したがって、ホットアイル85を常温(28℃程度)に設定する必要がある。そうすると、コールドアイル84への給気温度をさらに低い温度(18℃程度)にする必要がある。また、発熱していないサーバに対しても冷気を給気してしまうため、上述したようなサーバ管理室83内の温度むらの問題点は解消されていない。この温度むらが生じることに伴い、ホットアイル85ではこれらの温度が混ざり、ホットアイル85の平均温度は21℃程度となる。結果、空調機への還気温度も低くなってしまい、空調機の還気温度を高くすることによる空調機能力の効率向上や外気冷房、フリークーリング(冷凍機を用いずに冷却塔による冷却効果で形成された冷水を使って冷気を発生させる)の利用期間が長くなること等による省エネルギーへは何ら寄与しないこととなる。
【0019】
また、コールドアイル84を隔離することは、二重床による給気プレナム76から給気するため、上記給気プレナムが抱える問題点も解消されていない。すなわち、床下の給気プレナム76内には配線が多数引かれるため、これが冷気流通の妨げとなり、十分な冷気がサーバ管理室83内に給気されないことがある。これを防止するため、空調機81から大風量で給気して対応しているが、高速で給気を行うと、これに暖められた排気が誘引されて排気がラック本体71を回り込んだり(図11の矢印A)、サーバ収容室73内で排気(暖気)が循環する(図11の矢印B)原因となる。したがって、サーバ管理室83においては局所で高温領域が形成されることなり、これが他のラック本体71、あるいはラック列82にも影響を与えるおそれがある。このような状況において、個々のサーバラックごとの発熱量や必要風量に応じて冷気を供給できることが理想であるが、上述した理由から、実情は、これができていない。
【0020】
また、グレーチング78から吹出す空気量は、床面に対するグレーチングの開口率だけでは決まらず、二重床内部の圧力が関係し、その圧力は二重床の高さや奥行きといった給気プレナム76の形状、あるいはここに敷設された電源・通信ケーブルの量、さらにサーバ管理室83全体におけるグレーチングの配置等によって変化する。このような複雑な要素が絡み合って吹出し風量が決まるため、二重床による給気を行う際の設計には高度な技術が要求され、手間がかかり面倒である。
【0021】
以下、上記と重複する部分もあるが、図13に示した従来の技術が抱える問題点を列記する。
【0022】
ラック内換気を確実にしようとする工夫が見受けられるが、ラック内ICT装置の最大負荷で決定された最大風量を定風量で給気している。ところが、ICT装置の平均発熱負荷は、定格消費電力量の30%〜40%程度しかないにもかかわらず、常に100%の風量を給気せざるを得ないことは非常にエネルギーの無駄となっている。
【0023】
コールドアイルを壁、天井で隔離することにより、ホットアイルが全体を包囲するようなフロアレイアウトとなり、通常のメンテナンスに出入りするためにホットアイルを常温(28℃程度)とせざるを得ず、コールドアイルをさらに低い温度(18℃程度)とせざるを得ないこととなっている。よって、コールドアイルは非常に寒い状態となる。また、ラック内ICT装置の発熱が大きいところは排気温度は高くなり、発熱がないところや少ないところは、排気温度が低くなり、結果ホットアイル全体に熱溜まりや冷えすぎ等の温度むらが発生することは従来(図12)と同様である。
【0024】
また、ICT装置の平均発熱負荷時(定格消費電力量の30%〜40%程度)は、ホットアイル全体の平均温度は21℃程度となってしまい、結果、空調機への還気温度も低くなってしまい、空調機の還気温度を高くすることによる空調機能力の効率向上や外気冷房、フリークーリングの利用期間が長くなること等による省エネルギーへは何ら寄与しないこととなる。
【0025】
さらに、ホットアイルが全体を包囲し、コールドアイルが壁、天井で隔離されることにより、コールドアイルが離れ小島のようになってしまい、コールドアイルへの冷気供給方法は、大きなダクトによるか、二重床を利用して行うしかなく、従来(図12)の給気システムと何ら変わりはない。
【0026】
以上のように、図13に示す従来技術が現在最先端といわれているが、このシステムにおいても、それ以前から抱えているシステムとしての潜在的問題点はほとんど解決されていないのが現状といえる。
【0027】
一方で、冷却システム及び冷却構造が特許文献1に開示されている。しかしながら、この冷却構造でも、排気がラック外で回りこんだり、あるいは排気がラック内で循環してしまう問題点は解消されていない。
【0028】
【特許文献1】特開2006−301758号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
本発明は、上記従来技術を考慮したものであって、サーバの冷却に用いられた暖気を確実にラック本体の外側に排気し、サーバの発熱量に応じて適切な量の冷気を給気し、したがってサーバ管理室内に温度むらを発生させることなく、空調機の無駄な送風を防止して省エネルギーに寄与することができるサーバラック及びこれを備えたデータセンターの提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、吸気口と排気口とを有するラック本体からなり、当該ラック本体内には、仕切板で仕切られた複数のサーバ収容室が形成され、前記排気口には、前記サーバ収容室に収容されたサーバが備える内蔵ファンよりも大風量を送風できるファンが備わり、当該ファンに近接して温度検知装置が備わり、前記ファンは、前記温度検知装置の測定結果により前記サーバの発熱量に応じて風量調整可能であることを特徴とするサーバラックを提供する。
【0031】
請求項2の発明では、前記サーバ収容室の前記吸気口側の内壁と、当該サーバ収容室に収容されたサーバとの間に、空気の流通を遮断するための遮蔽板が設けられることを特徴としている。
【0032】
請求項3の発明では、前記サーバ収容室は、上下又は左右方向に隣り合うサーバ収容室とのみ前記ラック本体内で連通し、前記吸気口は、始端のサーバ収容室とのみ連通し、前記排気口は、終端のサーバ収容室とのみ連通することを特徴としている。
【0033】
また、請求項4の発明では、前記ラック本体が複数並べられたラック列を複数列配設したサーバ管理室と、前記ラック本体内を冷却するために、サーバ管理室内又は隣接した別室に配設された空調機を備えたデータセンターであって、前記ラック本体の前記排気口が、前記サーバ管理室の天井裏に形成された排気プレナムと直接連通し、当該排気プレナムは前記空調機の吸気口と直接連通し、前記空調機からの送風口は前記サーバ管理室内に配設されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサーバラックを備えたデータセンターを提供する。
【0034】
また、請求項5の発明では、前記ラック本体が複数並べられたラック列を複数列配設したサーバ管理室と、前記ラック本体内を冷却するために、サーバ管理室内又は隣接した別室に配設された空調機を備えたデータセンターであって、前記サーバ管理室内に、前記ラック本体の前記排気口側の面で囲まれた排気領域を形成し、当該排気領域は、前記サーバ管理室の天井裏に形成された排気プレナムと直接連通し、当該排気プレナムは前記空調機の吸気口と直接連通し、前記空調機からの送風口は前記排気領域以外の前記サーバ管理室内に配設されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサーバラックを備えたデータセンターを提供する。
【0035】
また、請求項6の発明では、前記ラック本体が複数並べられたラック列を複数列配設したサーバ管理室と、前記ラック本体内を冷却するために、サーバ管理室内又は隣接した別室に配設された空調機を備えたデータセンターであって、前記サーバ管理室内に、前記ラック本体の前記排気口側の面で囲まれた排気領域を形成し、当該排気領域内に前記空調機の給気口が備わり、前記空調機からの送風口は前記排気領域以外の前記サーバ管理室内に配設されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のサーバラックを備えたデータセンターを提供する。
【発明の効果】
【0036】
請求項1の発明によれば、ラック本体にサーバの内蔵ファンよりも大風量のファンが備わるため、暖気は強制的に排気口から外部に排気される。したがって、サーバ収容室内で暖気となった排気が循環することなく、ラック本体内の局所に高温領域が形成されることを防止できる。また、上述したような、大風量で給気を行うことによる高速給気による暖気の誘引を防止するために、吸気口の外側の幅を広くして、グレーチングの設置面積を増加させ、給気面積を増やして給気の風速を遅くする必要がない。さらに、排気口の外側の幅も広くして、排気の風速も遅くさせ、回り込みや循環を防止する必要がない。以上からすると、サーバ本体の吸気口側及び排気口側には、それぞれ吸気、排気の風速を低減させるためのスペースが不要となり、スペース的にも効率がよい。また、排気される暖気の温度を測定しながら、サーバの発熱量に応じてファンの風量を調整できるので、適切にラック本体内に冷気を給気できる。すなわち、サーバの発熱負荷に応じて変風量制御が可能となる。したがって、サーバ管理室内に温度むらがなくなり、無駄な給気を防止して空調効率の高い、省エネルギーシステムを構築できる。なお、空調効率についての指標については後述する。
【0037】
請求項2の発明によれば、サーバ収容室の吸気口側の内壁と、サーバ収容室に収容されたサーバとの間に、空気の流通を遮断するための遮蔽板が設けられるため、冷気は必ずサーバ内を通過する。したがって、空調効率を高めることができる。
【0038】
請求項3の発明によれば、サーバ収容室は、隣り合うサーバ収容室とのみラック本体内で連通し、吸気口は、始端のサーバ収容室とのみ連通し、排気口は、終端のサーバ収容室とのみ連通するため、吸気口から排気口までサーバ収容室が連続して直列に並ぶような構造となる。したがって、稼動してないサーバがあっても、冷気はこれを通過して必ず発熱しているサーバの冷却に用いられる。これにより、空調効率が高まる。
【0039】
請求項4の発明によれば、ラック本体の排気口が、サーバ管理室の天井裏に形成された排気プレナムと直接連通し、排気プレナムは空調機の吸気口と直接連通するため、排気は確実に排気プレナムを通り、空調機に吸気される。このため、排気がラック本体を回り込んで吸気口から再び給気されることはない。また、コールドアイルが管理者等の人の通行領域となるため、コールドアイルの温度設定を常温近く(25℃程度)にすることができ、空調機への還気温度が高い状態(35℃程度)で運転できるので、空調機能力の効率を向上させることができる。また、空調機の省エネ運転方法である外気冷房や冷水を利用した空調機においては、フリークーリングを有効に利用することができる。また、ホットアイルとコールドアイルを明確にゾーニング(区画)し、上記ファンの変風量制御と相俟って、コールドアイルには負荷がなくなるため、一般的な安価な空調機を利用することができ、コスト面でも好ましい。
【0040】
請求項5の発明によれば、サーバ管理室内に、ラック本体の排気口側の面で囲まれた排気領域を形成し、当該排気領域は、サーバ管理室の天井裏に形成された排気プレナムと直接連通し、排気プレナムは空調機の吸気口と直接連通するので、ラック本体からの排気は確実に排気領域(ホットアイル)を通り、空調機に吸気される。このため、排気がラック本体を回り込んで吸気口から再び給気されることはない。またコールドアイルが管理者等の人の通行領域となるため、コールドアイルの温度設定を常温近く(25℃程度)にすることができ、空調機への還気温度が高い状態(35℃程度)で運転できるので、空調機能力の効率を向上させることができる。また、空調機の省エネ運転方法である外気冷房や冷水を利用した空調機においては、フリークーリングを有効に利用することができる。また、ホットアイルとコールドアイルを明確にゾーニング(区画)し、上記ファンの変風量制御と相俟って、コールドアイルには負荷がなくなるため、一般的な安価な空調機を利用することができ、コスト面でも好ましい。
【0041】
請求項6の発明によれば、サーバ管理室内に、ラック本体の排気口側の面で囲まれた排気領域を形成し、排気領域内に空調機が配設されるので、ラック本体からの排気は確実に排気領域(ホットアイル)を通り、空調機に還気される。このため、排気がラック本体を回り込んで吸気口から再び給気されることはない。また、コールドアイルが管理者等の人の通行領域となるため、コールドアイルの温度設定を常温近く(25℃程度)にすることができ、空調機への還気温度が高い状態(35℃程度)で運転できるので、空調機能力の効率を向上させることができる。また、空調機の省エネ運転方法である外気冷房や冷水を利用した空調機においては、フリークーリングを有効に利用することができる。また、ホットアイルとコールドアイルを明確にゾーニング(区画)し、上記ファンの変風量制御と相俟って、コールドアイルには負荷がなくなるため、一般的な安価な空調機を利用することができ、コスト面でも好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0042】
本発明は、吸気口と排気口とを有するラック本体からなり、当該ラック本体内は、仕切板で仕切られた複数のサーバ収容室が形成され、前記排気口に、前記サーバ収容室に収容されたサーバが備える内蔵ファンよりも大風量を送風できるファンを備え、サーバの冷却に用いられた暖気を確実にラック本体の外側に排気し、サーバの発熱量に応じて適切な量の冷気を給気し、したがってサーバ管理室内に温度むらを発生させることなく、空調機の無駄な運転を防止して省エネルギーに寄与することができるサーバラック及びこれを備えたデータセンターである。さらに、本発明によれば、「データセンターの最適化」=「空調の効率化」と捉え、最小の空調使用で最大の冷却効果を発揮させるために、常に変化する発熱の偏在に対して、「排熱による高温空気」と「空調から吹出す低温空気」を明確にゾーニング(区画)し、極力小風量で発熱を処理し、高温のままで空調機に還気するシステムであり、空調効率の高い、省エネルギー、省コストな総合的高効率(変風量)空調システムの実現ができる。
【実施例1】
【0043】
図1は本発明に係るサーバラックの断面図である。
【0044】
図示したように、実施例1のサーバラックは、ラック本体1と、このラック本体1に備わるファン2からなる。ラック本体1は床11に載置される。ラック本体1内は、仕切板3で仕切られ、複数のサーバ収容室4が形成される。サーバ収容室4には、サーバ5が載置される。各サーバ5には内蔵ファン6が備わる。ラック本体1の一方の側面は開口し、吸気口7が形成される。ラック本体1の他方の側面も開口し、排気口8が形成される。ファン2は、この排気口8に取り付けられる。この取り付けは、どのような手法で取り付けてもよい。なお、ファン2は、一つの排気口8に複数台取り付けられる(図では1つのみ記載)。このうち、少なくとも1台は予備として取り付けておくことが好ましい。予備のファンを設けておくことにより、他のファンの故障時に対応することができるからである。24は、故障等で静止したファンを通して暖気が逆流することを防止するための逆流防止ダンパである。
【0045】
実施例1で示すサーバラックは、仕切板3が水平にそれぞれ平行となるように配設され、各サーバ収容室4が吸気口7及び排気口8と連通している。サーバ収容室4に載置されたサーバ5を冷却するための冷気は、吸気口7から流入し、サーバ5を冷却して排気口8から排気される。この冷気の流れは、排気口8に備わるファン2により形成される。ファン2により、サーバを冷却した後の暖気は、強制的にラック本体1の外部に排気される。したがって、暖気が吸気に誘引されてサーバ収容室4内を逆流し、循環することはなく、ラック本体1内の局所に高温領域が形成されることを防止できる。ファン2は、各サーバ収容室4にそれぞれ設けてもよいし、仕切板3で複数のサーバ収容室4を1ユニットとなるように独立させ、複数のユニットを形成し(図では3ユニット)、ユニットごとにファン2を取り付けてもよい。
【0046】
排気口8には、温度検知装置9が備わる。ファン2は、この温度検知装置9の測定結果により、サーバ5の発熱量に応じて風量調整される。これにより、排気される暖気の温度を測定しながら、ファン2の風量を調整できるので、サーバ5の発熱量に応じて適切な量の冷気を給気できる。すなわち、排気温度が設定温度(例えば35℃程度)となるようにファン2をインバータ制御することにより、サーバ5の発熱状況に応じ、自動的に高負荷時は風量を多くし、低負荷時は風量を少なくするような、サーバ5の発熱負荷に応じた変風量制御が可能となる。したがって、データセンター内に温度むらがなくなり、無駄な給気を防止して空調効率の高い、省エネルギーシステムを構築できる。特に、実際のサーバ5の平均発熱負荷は、定格消費電力量の30%〜40%程度なので、これに合わせた空調機の運転ができ、非常に高い空調効率を実現できる。
【0047】
サーバ収容室4の吸気口7側の内壁とサーバ5との間には、空気の流通を遮断するための遮蔽板10が設けられる。すなわち、サーバ収容室4の吸気口7側は、サーバ5のみが露出することになる。したがって、冷気は必ずサーバ5内を通過する。したがって、サーバ5の空調効率を高めることができる。
【実施例2】
【0048】
図2は本発明に係る別のサーバラックの断面図である。
【0049】
図示したように、実施例2のサーバラックは、一の排気口8をラック本体1の上部に形成し、各サーバ収容室4を、この排気口8と連通する構造としたものである。このように、各サーバ収容室4からの排気口8を1箇所にまとめれば、ファン2の設置台数を削減できる。その他の構成、作用、効果は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0050】
図3は本発明に係るさらに別のサーバラックの断面図である。
【0051】
図示したように、実施例3のサーバラックは、排気口8がサーバ本体1の上側に向けて形成され、天井12と密閉されて連通する。排気は、天井裏である排気プレナム13を通って空調機に還気される。このような構成とすれば、排気が室内に放出されず、必ず空調機に還気されるので、排気がラック本体を回り込んで再び吸気されることを確実に防止できる。その他の構成、作用、効果は実施例1と同様である。
【実施例4】
【0052】
図4は本発明に係るさらに別のサーバラックの断面図である。
【0053】
図示したように、実施例4のサーバラックは、サーバ収容室4が、上下方向に隣り合うサーバ収容室4とのみ連通するようにして仕切板3により形成される。すなわち、空気の流通経路がラック本体1内を蛇行するように形成される。端部(始端)のサーバ収容室4のみが吸気口7と連通し、他方の端部(終端)のサーバ収容室4のみが排気口8と連通する。したがって、吸気口7から排気口8まで複数のサーバ収容室4が連続して直列に並ぶような構造となる。これにより、稼動してないサーバ5があっても、冷気はこれを通過して必ず発熱しているサーバ5の冷却に用いられる。これにより、空調効率が高まる。なお、始端と終端とその間のサーバ収容室4で一のユニットを形成し、ラック本体1に複数のユニットを設けてもよい(図では3つのユニット)。また、図では示していないが、実施例1〜3で用いた遮蔽板10を利用することもできる。
【実施例5】
【0054】
図5は本発明に係るさらに別のサーバラックの一部断面図である。
【0055】
図は、吸気口7側から見た状態で、一つのユニットのみを示している。ブレードサーバ等の縦型のサーバ5の場合、サーバ5は各サーバ収容室4に台23に縦置きにして載置される。台23は格子状であり、空気の流通が可能である。この場合において、仕切板3を、上下に櫛歯状にかみ合うように形成して、サーバ収容室4を形成すれば、空気の流通がラック本体1内を蛇行するように形成される。すなわち、サーバ収容室4は、左右方向に隣り合うサーバ収容室4とのみ連通する。したがって、吸気口7から流入した冷気は、すべてのサーバ収容室4を通過して、排気口8から排気される。したがって、実施例4と同様に、稼動してないサーバ5があっても、冷気はこれを通過して必ず発熱しているサーバ5の冷却に用いられる。これにより、空調効率を高めることができる。なお、図ではファン2は省略している。
【実施例6】
【0056】
図6は本発明に係るさらに別のサーバラックの断面図である。
【0057】
図示したように、実施例6のサーバラックは、実施例3と実施例4を合わせたものであり、冷気がラック本体1内を蛇行するようにし、さらに排気口8を天井12に連通させたものである。このような構成とすれば、排気が室内に放出されず、必ず空調機に還気されるので、排気がラック本体を回り込んで再び吸気されることを確実に防止でき、これとともに、発熱してないサーバ5があっても、冷気はこれを通過して必ず発熱しているサーバ5の冷却に用いられ、空調効率を高めることができる。
【0058】
以下、上記と重複する部分もあるが、実施例1〜実施例6に示した本発明に係るサーバラックの効果を列記する。
【0059】
ラックの構造的な工夫と変風量制御機能を具備することによりラック内温度と気流を制御し、ラック内の発熱状況に合わせ極力小風量で、確実な発熱処理を行うことができ、システム全体として空調効率の高い、省エネルギーシステムを構築できる。
【0060】
ラックの上部又は背面に複数台(1台は予備)の排気ファンを取り付け、吸い込み温度が設定温度(35℃程度)になるようにインバータ制御することにより、ラック内ICT装置の発熱状況に応じ、自動的に高負荷時は風量を多くし、低負荷時は風量を少なくすることが可能となり、空調効率の高い、省エネルギーシステムを構築できる。
【0061】
また、ラック内で起こりがちな内部エアーフロー(内部循環気流)により、高温排気が他のICT装置に流れていき、高温障害を起こしてしまうような問題は、上記のように排気ファンにより強制的に気流制御することにより解決される。
【実施例7】
【0062】
図7は本発明に係るデータセンターの(A)は平面図、(B)は(A)のA−A断面図である。
【0063】
実施例7は、実施例3又は実施例6のサーバラックを適用したデータセンターである。データセンターは、サーバラックを多数収容し、複数台(図では7台)の空調機15が配設されたサーバ管理室14を有する。図では、ラック本体1を6台でラック列16を形成し、このラック列16が4列配設されたサーバ管理室14を示している。ラック本体1の排気口8は天井裏の排気プレナム13に直接連通し、この排気プレナム13は、空調機15の吸気口17と直接連通している。これにより、サーバ管理室14内の通路はすべて空調機15からの冷気で満たされる領域(コールドアイル18)となる。空調機15としては、冷水型、空冷直膨型等種々のものを使用できる。このような構成によれば、排熱による高温空気の領域(排気プレナム13)と、空調機15から吹出す低温空気の領域(コールドアイル18)とを明確にゾーニング(区画)するようにそれぞれの領域が仕切られ、高温空気をコールドアイル18に一切放出することがないので、コールドアイル18の温度は均一になり、温度制御もしやすく、冷えすぎや熱だまりが起こることはない。
【0064】
また、排気は確実に排気プレナム13を通り、空調機15に還気される。このため、排気がラック本体1を回り込んで吸気口7から再び吸気されることはない。
【0065】
また、コールドアイル18が管理者等の人の通行領域となるため、コールドアイル18の温度設定を常温(25℃程度)にすることができ、排気プレナム13の温度設定をラック内ICT装置の環境条件の上限温度(例えば40℃)より少し低い(安全を考慮した)温度(例えば35℃)にすることができる。よって、空調機15への還気温度が高い状態で運転できるので、空調機15の運転効率を向上させることができる。
【0066】
さらに、コールドアイル18が全体を包囲するようなフロアレイアウトになるので、二重床を用いずに冷気を給気できるので、一般的な安価な空調機を利用することができ、コスト面でも好ましい。以上のように、空調効率を高めることにより、空調機15の設置台数も削減できる。したがって、室外機の設置スペースの問題点も解消でき、建設計画の自由性が高まるとともに、スペースの有効性も高まる。なお、空調機15の吸気口が排気プレナム13に、空調機15からの送風口が、コールドアイル18に配設されていれば、空調機15の本体はサーバ管理室14以外の別室に設けられていてもよい。
【0067】
上記のような数々の省エネルギー手法を採用することができるので、ランニングコストの削減と、環境負荷低減を図ることができる。
【実施例8】
【0068】
図8は本発明に係る別のデータセンターの(A)は平面図、(B)は(A)のB−B断面図である。
【0069】
実施例8は、サーバラックの排気口8側を向かい合わせにして排気で満たされる領域(ホットアイル19)を形成したものである(図では2つのホットアイル19)。ホットアイル19は、天井から連続して形成された壁で囲まれ、壁の一部はラック本体1と扉20で形成される。ホットアイル19は、天井裏の排気プレナム13に直接連通し、この排気プレナム13は、空調機15の吸気口17と直接連通している。これにより、サーバ管理室14内の通路はすべて空調機15からの冷気で満たされる領域(コールドアイル18)となる。したがって、排熱による高温空気の領域(ホットアイル19)と、空調機15から吹出す低温空気の領域(コールドアイル18)とを明確にゾーニング(区画)するようにそれぞれの領域が仕切られ、高温空気をコールドアイル18に一切放出することがないので、コールドアイル18の温度は均一になり、また、ホットアイル19においては、変風量制御と相俟って、温度が均一になり、温度制御もしやすく、冷えすぎや熱だまりが起こることはない。
【0070】
このような構成によっても、実施例7と同様に、ラック本体1からの排気は確実にホットアイル19を通り、空調機15に還気される。したがって、実施例7と同様の効果を得ることができる。すなわち、排気がラック本体1を回り込んで吸気口7から再び吸気されることはない。
【0071】
また、コールドアイル18が管理者等の人の通行領域となるため、コールドアイル18の温度設定を常温(25℃程度)にすることができ、ホットアイル19の温度設定をラック内ICT装置の環境条件の上限温度(例えば40℃)より少し低い(安全を考慮した)温度(例えば35℃)にすることができる。よって、空調機15への還気温度が高い状態で運転できるので、空調機15の運転効率を向上させることができる。
【0072】
さらに、コールドアイル18が全体を包囲するようなフロアレイアウトになるので、二重床を用いずに冷気を給気できるので、一般的な安価な空調機を利用することができ、コスト面でも好ましい。以上のように、空調効率を高めることにより、空調機15の設置台数も削減できる。したがって、室外機の設置スペースの問題点も解消でき、建設計画の自由性が高まるとともに、スペースの有効性も高まる。なお、空調機15の吸気口が排気プレナム13(ホットアイル19)に、空調機15からの送風口が、コールドアイル18に配設されていれば、空調機15の本体はサーバ管理室14以外の別室に設けられていてもよい。
【0073】
上記のような数々の省エネルギー手法を採用することができるので、ランニングコストの削減と、環境負荷低減を図ることができる。
【実施例9】
【0074】
図9は本発明に係るさらに別のデータセンターの平面図である。
【0075】
実施例9は、サーバラックの排気口8側を向かい合わせにして排気で満たされる領域(ホットアイル19)を形成し、このホットアイル19に空調機15を配設したものである。ラック以外で仕切る位置には、壁22や扉20が配設される。空調機15からの冷気は、天井に沿って配設したダクト21を通して給気される。これにより、実施例7や8のような、排気プレナム13を形成することなく、サーバ管理室14を設計できる。この例によっても、排熱による高温空気の領域(ホットアイル19)と、空調機15から吹出す低温空気の領域(コールドアイル18)とを明確にゾーニング(区画)するようにそれぞれの領域が仕切られ、高温空気をコールドアイル18に一切放出することがないので、コールドアイル18の温度は均一になり、また、ホットアイル19においては、変風量制御と相俟って、温度が均一になり、温度制御もしやすく、冷えすぎや熱だまりが起こることはない。
【0076】
このような構成によっても、実施例7と同様に、ラック本体1からの排気は確実にホットアイル19を通り、空調機15に還気される。したがって、実施例7と同様の効果を得ることができる。すなわち、排気がラック本体1を回り込んで吸気口7から再び吸気されることはない。
【0077】
また、コールドアイル18が管理者等の人の通行領域となるため、コールドアイル18の温度設定を常温(25℃程度)にすることができ、ホットアイル19の温度設定をラック内ICT装置の環境条件の上限温度(例えば40℃)より少し低い(安全を考慮した)温度(例えば35℃)にすることができる。よって、空調機15への還気温度が高い状態で運転できるので、空調機15の運転効率を向上させることができる。
【0078】
さらに、コールドアイル18が全体を包囲するようなフロアレイアウトになるので、二重床を用いずに冷気を給気できるので、一般的な安価な空調機を利用することができ、コスト面でも好ましい。以上のように、空調効率を高めることにより、空調機15の設置台数も削減できる。したがって、室外機の設置スペースの問題点も解消でき、建設計画の自由性が高まるとともに、スペースの有効性も高まる。なお、空調機15の吸気口がホットアイル19に、空調機15からの送風口が、コールドアイル18に配設されていれば、空調機15の本体はサーバ管理室14以外の別室に設けられていてもよい。
【0079】
上記のような数々の省エネルギー手法を採用することができるので、ランニングコストの削減と、環境負荷低減を図ることができる。
【0080】
以下、上記と重複する部分もあるが、実施例7〜実施例9に示した本発明に係るデータセンターの効果を列記する。
【0081】
実施例1〜6のラックを採用することにより、空調効率の高い変風量空調システムを構築でき、省エネルギーとなる。
【0082】
発熱処理をすべてラック内、小風量で処理できるため、高温排気を天井直接排気又は完全に隔離されたホットアイルに放出することにより、「排熱による高温空気」と「空調から吹出す低温空気」を明確にゾーニング(区画)でき、高温空気の領域(コールドアイル)に放出することがないので、領域温度は均一となる。よって、従来のような気流による誘引や回り込みによる冷えすぎ・熱溜まりがなく、サーバ等のICT装置の高温障害も一切ない。ICT装置設置環境や室内環境の向上となる。
【0083】
高温空気をコールドアイルに一切放出することがないので、コールドアイルの熱負荷はほとんどなく、領域温度は常に均一となる。よって、従来行ってきた複雑で面倒な温度・気流分布等のシミュレーションが一切不要となる。
【0084】
高温空気をコールドアイルに一切放出することがなく、コールドアイルが全体を包囲するようなフロアレイアウトとなるので、従来行っていたような高価な床吹出し型空調機を使用した空調方式の必要がなく、一般空調(一般的な簡易な空調)の直吹き方式でも空調可能となる。また、空調のための二重床も不要となる等、建設コストの低減となる。
【0085】
発熱処理をすべてラック内で処理するため、従来のようにラックの前面・背面に気流設計上必要としていた通路幅が必要なくなり、ラックのメンテナンス上必要な通路幅のみでよく、ラック1台当たりの設置面積が15%〜20%程度削減でき、建設コストを低減できる。
【0086】
発熱負荷はコールドアイルに全く放出されず、天井経由又はホットアイル経由にて空調機に戻るため、すべての負荷が空調機のレターン側負荷となり、空調機コイル入口側が高温(35℃程度)となるため、空調機の性能が20%〜30%程度向上する。さらに、冷水を利用した空調機であれば冷水往き温度を高くでき(例えば20℃〜23℃)、冷凍機の効率を20%〜30%程度向上させることができる。その他、外気冷房やフリークーリングの利用期間が長くなり、利用熱量も大きくなり、さらに蓄熱システムの場合は、利用温度差を通常の3〜5倍程度まで大きくすることができる等の大きな省エネルギー、省コストとなるシステム構築が可能となる。
【0087】
さらに、冷水を利用した空調方式では、従来の水を使用しない冷媒による空冷直膨型空調機方式で問題となっている室外機設置スペースの狭隘化、室外機密集設置による冷房能力低下、室内空調機スペースの枯渇等の問題がなく、建設計画の自由性が高まるとともに、スペースの有効性も高まる。
【0088】
上記数々の省エネルギー手法を採用することができ、ランニングコストの削減と環境負荷低減効果は多大なものとなる。
【0089】
図10は空調効率を評価する指標についての計算式である。
【0090】
近年、CPUの高性能化と高集積化に伴いICT装置の発熱量は急激に増大し、データセンターの電力密度は、この10年で5倍以上に増加しているといわれている。それに伴いICT装置を冷却するための空調ランニングコストの増大が大きくクローズアップされ、「データセンターの最適化」を企業が果たすべき「社会的責任」として捉えられている。そこで本発明では、「データセンターの最適化」=「空調の効率化」と捉え、データセンターのエネルギー効率を評価する指標の一つとして空調機による送風がどれだけICT装置の発熱処理に役立っているかを評価する値である「空調効率」を定めた。
【0091】
(A)に示すように、空調効率は、ICT装置の発熱を処理するために必要な計算風量とその他負荷を処理するために必要な計算風量を加算し、実際の空調機送風量で除した値で表す。なお、0.33は空気の比熱(W/m3℃)である。空調効率が高いほど、小風量で発熱を処理し、高温のままで空調機に還気するシステムであり、省エネルギーな高効率(変風量)空調システムであるといえる。世界の85%程度のデータセンターは、ICT装置の平均発熱負荷時(定格消費電力量の30%〜40%程度)は、この空調効率が15%〜20%程度であろうと思われる。
【0092】
また、(B)に示すように、空調効率の逆数を「空調倍率」と定め、この値が大きいほど空調機による送風がICT装置の発熱処理に役立っていないことを表し、この値が小さいほど空調機による送風がICT装置の発熱処理に役立っていることを表す。空調効率100%=空調倍率1となる。
【0093】
本発明に係るサーバラック及びこれを備えたデータセンターでは、ICT装置の平均発熱負荷時(定格消費電力量の30%〜40%程度)において空調効率を80%程度まで高めることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明に係るサーバラックの断面図である。
【図2】本発明に係る別のサーバラックの断面図である。
【図3】本発明に係るさらに別のサーバラックの断面図である。
【図4】本発明に係るさらに別のサーバラックの断面図である。
【図5】本発明に係るさらに別のサーバラックの一部断面図である。
【図6】本発明に係るさらに別のサーバラックの断面図である。
【図7】本発明に係るデータセンターの(A)は平面図、(B)は(A)のA−A断面図である。
【図8】本発明に係る別のデータセンターの(A)は平面図、(B)は(A)のB−B断面図である。
【図9】本発明に係るさらに別のデータセンターの平面図である。
【図10】空調効率を評価する指標についての計算式である。
【図11】従来のサーバラックの断面図である。
【図12】従来のデータセンターの概略平面図である。
【図13】従来の別のデータセンターの概略平面図である。
【符号の説明】
【0095】
1:ラック本体、2:ファン、3:仕切板、4:サーバ収容室、5:サーバ、6:内蔵ファン、7:吸気口、8:排気口、9:温度検知装置、10:遮蔽板、11:床、12:天井、13:排気プレナム、14:サーバ管理室、15:空調機、16:ラック列、17:吸気口、18:コールドアイル、19:ホットアイル、20:扉、21:ダクト、22:壁、23:台、24:逆流防止ダンパ、71:ラック本体、72:仕切板、73:サーバ収容室、74:吸気口、75:排気口、76:給気プレナム、77:床、78:グレーチング、79:サーバ、80:内蔵ファン、81:空調機、82:ラック列、83:サーバ管理室、84:コールドアイル、85:ホットアイル、86:扉
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸気口と排気口とを有するラック本体からなり、
当該ラック本体内には、仕切板で仕切られた複数のサーバ収容室が形成され、
前記排気口には、前記サーバ収容室に収容されたサーバが備える内蔵ファンよりも大風量を送風できるファンが備わり、
当該ファンに近接して温度検知装置が備わり、
前記ファンは、前記温度検知装置の測定結果により前記サーバの発熱量に応じて風量調整可能であることを特徴とするサーバラック。
【請求項2】
前記サーバ収容室の前記吸気口側の内壁と、当該サーバ収容室に収容されたサーバとの間に、空気の流通を遮断するための遮蔽板が設けられることを特徴とする請求項1に記載のサーバラック。
【請求項3】
前記サーバ収容室は、上下又は左右方向に隣り合うサーバ収容室とのみ前記ラック本体内で連通し、前記吸気口は、始端のサーバ収容室とのみ連通し、前記排気口は、終端のサーバ収容室とのみ連通することを特徴とする請求項1又は2に記載のサーバラック。
【請求項4】
前記ラック本体が複数並べられたラック列を複数列配設したサーバ管理室と、
前記ラック本体内を冷却するために、サーバ管理室内又は隣接した別室に配設された空調機を備えたデータセンターであって、
前記ラック本体の前記排気口が、前記サーバ管理室の天井裏に形成された密閉空間である排気プレナムと直接連通し、
当該排気プレナムは前記空調機の吸気口と直接連通し、前記空調機からの送風口は前記サーバ管理室内に配設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサーバラックを備えたデータセンター。
【請求項5】
前記ラック本体が複数並べられたラック列を複数列配設したサーバ管理室と、
前記ラック本体内を冷却するために、サーバ管理室内又は隣接した別室に配設された空調機を備えたデータセンターであって、
前記サーバ管理室内に、前記ラック本体の前記排気口側の面で囲まれた排気領域を形成し、
当該排気領域は、前記サーバ管理室の天井裏に形成された密閉空間である排気プレナムと直接連通し、
当該排気プレナムは前記空調機の吸気口と直接連通し、前記空調機からの送風口は前記排気領域以外の前記サーバ管理室内に配設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサーバラックを備えたデータセンター。
【請求項6】
前記ラック本体が複数並べられたラック列を複数列配設したサーバ管理室と、
前記ラック本体内を冷却するために、サーバ管理室内又は隣接した別室に配設された空調機を備えたデータセンターであって、
前記サーバ管理室内に、前記ラック本体の前記排気口側の面で囲まれた排気領域を形成し、
当該排気領域内に前記空調機の給気口が備わり、前記空調機からの送風口は前記排気領域以外の前記サーバ管理室内に配設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサーバラックを備えたデータセンター。
【請求項1】
吸気口と排気口とを有するラック本体からなり、
当該ラック本体内には、仕切板で仕切られた複数のサーバ収容室が形成され、
前記排気口には、前記サーバ収容室に収容されたサーバが備える内蔵ファンよりも大風量を送風できるファンが備わり、
当該ファンに近接して温度検知装置が備わり、
前記ファンは、前記温度検知装置の測定結果により前記サーバの発熱量に応じて風量調整可能であることを特徴とするサーバラック。
【請求項2】
前記サーバ収容室の前記吸気口側の内壁と、当該サーバ収容室に収容されたサーバとの間に、空気の流通を遮断するための遮蔽板が設けられることを特徴とする請求項1に記載のサーバラック。
【請求項3】
前記サーバ収容室は、上下又は左右方向に隣り合うサーバ収容室とのみ前記ラック本体内で連通し、前記吸気口は、始端のサーバ収容室とのみ連通し、前記排気口は、終端のサーバ収容室とのみ連通することを特徴とする請求項1又は2に記載のサーバラック。
【請求項4】
前記ラック本体が複数並べられたラック列を複数列配設したサーバ管理室と、
前記ラック本体内を冷却するために、サーバ管理室内又は隣接した別室に配設された空調機を備えたデータセンターであって、
前記ラック本体の前記排気口が、前記サーバ管理室の天井裏に形成された密閉空間である排気プレナムと直接連通し、
当該排気プレナムは前記空調機の吸気口と直接連通し、前記空調機からの送風口は前記サーバ管理室内に配設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサーバラックを備えたデータセンター。
【請求項5】
前記ラック本体が複数並べられたラック列を複数列配設したサーバ管理室と、
前記ラック本体内を冷却するために、サーバ管理室内又は隣接した別室に配設された空調機を備えたデータセンターであって、
前記サーバ管理室内に、前記ラック本体の前記排気口側の面で囲まれた排気領域を形成し、
当該排気領域は、前記サーバ管理室の天井裏に形成された密閉空間である排気プレナムと直接連通し、
当該排気プレナムは前記空調機の吸気口と直接連通し、前記空調機からの送風口は前記排気領域以外の前記サーバ管理室内に配設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサーバラックを備えたデータセンター。
【請求項6】
前記ラック本体が複数並べられたラック列を複数列配設したサーバ管理室と、
前記ラック本体内を冷却するために、サーバ管理室内又は隣接した別室に配設された空調機を備えたデータセンターであって、
前記サーバ管理室内に、前記ラック本体の前記排気口側の面で囲まれた排気領域を形成し、
当該排気領域内に前記空調機の給気口が備わり、前記空調機からの送風口は前記排気領域以外の前記サーバ管理室内に配設されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のサーバラックを備えたデータセンター。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2009−140421(P2009−140421A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−318646(P2007−318646)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000222956)東洋熱工業株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000222956)東洋熱工業株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
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