説明

サーバ装置、映像データの配信方法

【課題】 可視制限された領域の表示権限を有するクライアントからの指示によっては、可視制限された領域の表示権限を有さないクライアントが受信する映像データの連続性が低下する恐れがあった。
【解決手段】 カメラサーバ100は、映像の可視制限(マスク処理)の無効化を伴う指示を、特権クライアント200から受信すると、一般クライアント201、録画クライアント202に対する映像データの配信を中断する(S363)。そして、カメラサーバ100は、中断期間の映像データを2次記憶装置130に蓄積する(S363〜S375)。カメラサーバ100は、特権クライアント200から可視制限の有効化を伴う指示を受信すると、中断期間の蓄積映像データ395を録画クライアント202へ配信する(S341)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライアントの権限に応じて映像データを配信する映像配信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ネットワーク対応のカメラは、住居地域、商店、銀行や駅などにおいて防犯目的や調査目的など様々な用途で普及してきている。また、撮影領域における個人情報や機密情報漏洩などのプライバシー侵害を防ぐため、撮影領域に可視制限のためのプライバシーマスク領域を設定できるカメラが登場している。
【0003】
特許文献1には、画像が映るプライバシーゾーンをマスキングするマスクデータを保持し、マスクデータに従って、画像の一部をマスキングすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−69494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、可視制限された領域の表示権限を有するクライアントからの指示によっては、可視制限された領域の表示権限を有しないクライアントが受信する映像データの連続性が低下する恐れがあった。
【0006】
例えば、可視制限された領域が、プライバシーマスク領域(以下マスク領域)である場合の例を説明する。この場合、表示権限を有するクライアントによるマスク領域の設定(移動やサイズ変更)中に、表示権限を有しないクライアントへ映像データを配信しないと、表示権限を有しないクライアントが受信する映像データの連続性が低下する恐れがあった。
【0007】
また、可視制限された領域が、カメラのパン角、チルト角の制限範囲外の領域である場合の例を説明する。この場合、表示権限を有するクライアントによる範囲制限外のパン角、チルト角への制御中に、表示権限を有しないクライアントへ映像データを配信しないと、表示権限を有しないクライアントが受信する映像データの連続性が低下する恐れがあった。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、可視制限された領域の表示権限を有しないクライアントが受信する映像データの連続性の低下を低減することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のサーバ装置は、例えば以下の構成を有する。すなわち、映像データをクライアントへ配信するサーバ装置であって、前記映像データに基づく映像の可視制限の無効化を伴う指示を、当該可視制限された領域の表示権限を有するクライアントから受信する受信手段と、前記可視制限された領域の表示権限を有しないクライアントに対する映像データの配信を前記可視制限の無効化を伴う指示の受信に応じて中断する配信手段と、前記表示権限を有しないクライアントに対する映像データの配信を中断した中断期間の映像データを蓄積する蓄積手段とを有し、前記配信手段は、前記中断期間の映像データを、前記無効化された可視制限の有効化を伴う指示の前記受信手段による受信に応じて、前記表示権限を有しないクライアントへ配信する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、可視制限された領域の表示権限を有しないクライアントが受信する映像データの連続性の低下を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】カメラサーバ100とクライアント200の構成を示すブロック図
【図2】カメラサーバ100とクライアント200が有するプログラムやデータを模式的に表した図
【図3】カメラサーバ100の処理を説明するためのフローチャート
【図4】クライアント200の処理を説明するためのフローチャート
【図5】実施形態のシステム構成例
【図6】プライバシーマスクが重畳された映像データから生成されたパノラマ画像の例
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施形態>
図1は、本実施形態のカメラサーバ100とクライアント200の構成を示すブロック図である。図1に示すように、カメラサーバ100と複数のクライアント(200、201、202)がネットワーク195を介して接続されている。本形態では、カメラサーバ100に、特権クライアント200、一般クライアント201、録画クライアント202が接続されている。特権クライアント200は、可視制限された領域(例えばプライバシーマスク領域)の表示権限を有するクライアントである。一方、一般クライアント201、録画クライアント202は、可視制限された領域の表示権限を有しないクライアントである。一般クライアント201は、カメラサーバ100から受信した映像データを表示するクライアントである。また、録画クライアント202は、カメラサーバ100から受信した映像データを記録するクライアントである。ただし、クライアントの種類、及び数はこの例に限らない。本形態のカメラサーバ100と各クライアント200、201、202の接続例を図5に示す。
【0013】
なお、本形態では、可視制限がプライバシーマスク処理(以下マスク処理)による可視制限である場合を中心に説明する。この場合、可視制限された領域とは、プライバシーマスク領域(以下マスク領域)である。本形態の特権クライアント200は、後述する設定ツールを用いることで、マスク領域の追加、削除、移動やサイズ変更などを行うことができる。
【0014】
ただし、可視制限はマスク処理に限らず、例えば、撮像方向の範囲制限(操作可能なパン角、チルト角、ローテーション角の範囲制限)や、撮像方向の操作禁止や、プリセット値以外の撮像方向への操作禁止とすることも可能である。カメラサーバ100は、CPU 110、1次記憶装置120、2次記憶装置130、キャプチャI/F 140、制御I/F150、ネットワークI/F190を有する。また、カメラサーバ100のキャプチャI/F140には撮像部145が接続され、制御I/F150には雲台155が接続される。
【0015】
1次記憶装置120は、RAMに代表される書き込み可能な高速の記憶装置で、OS(Operation System)や各種プログラム及び各種データがロードされる。また、1次記憶装置120は、OSや各種プログラムの作業領域としても使用される。後述する各クライアント200−202の1次記憶装置220も同様である。
【0016】
2次記憶装置130は、FDDやHDD、フラッシュメモリ、CD−ROMドライブ等に代表される不揮発性を持った記憶装置で、OSや各種プログラム及び各種データの永続的な記憶領域として使用される。また、2次記憶装置130は、短期的な各種データの記憶領域としても使用される。また、2次記憶装置130は、映像データの蓄積領域としても使用される。各クライアント200−202の2次記憶装置230も同様である。
【0017】
キャプチャI/F140には撮像部145が接続され、撮像部145の撮像により得られた映像データを所定のフォーマットに変換・圧縮して1次記憶装置120に転送する。
【0018】
制御I/F150には雲台155が接続され、雲台155のパン機構、チルト機構、ローテーション機構の状態を取得したり、各クライアント200−202からの指示に従って雲台155を制御する。雲台155には、撮像部145がセットされており、雲台155のパン機構、チルト機構、ローテーション機構の制御により、撮像部145の撮像方向が制御される。
【0019】
ネットワークI/F190は、ネットワーク195と接続するためのインタフェースであり、Ethernet(登録商標)等の通信媒体を介して各クライアント200−202との通信を行う。
【0020】
ネットワーク195はEthernet(登録商標)等の通信規格を満足する複数のルータ、スイッチ、ケーブル等から構成される。本形態においては各サーバ・クライアント間の通信が支障なく行えるものであればその通信規格、規模、構成を問わない。故にインターネットからLAN (Local Area Network)にまで適用可能である。
【0021】
各クライアント200−202には、CPU 210、1次記憶装置220、2次記憶装置230、キーボード240、マウス250、ディスプレイ260、ネットワークI/F290が接続される。
【0022】
キーボード240、及びマウス250は指示を与える一般的な入力装置である。ディスプレイ260は、カメラサーバ100によって配信された映像データに応じた映像を表示するための表示画面である。2次記憶装置230は配信映像の記録領域としても使用される。
【0023】
図2は、カメラサーバ100の1次記憶装置120と2次記憶装置130、各クライアント200−202の1次記憶装置220と2次記憶装置230に記憶されるプログラムやデータを模式的に示した図である。
【0024】
図2に示すように、カメラサーバ100の1次記憶装置120には、撮像プログラム300、映像処理プログラム310、設定プログラム320、配信制御プログラム330、権利管理プログラム340がロードされる。
【0025】
また、カメラサーバ100の2次記憶装置130には、設定データ380、映像データ390、蓄積映像データ395が記憶される。
【0026】
また、特権クライアント200の1次記憶装置220には、表示プログラム400、設定変更プログラム410、録画プログラム420がロードされる。
【0027】
また、特権クライアント200の2次記憶装置230には、クライアント設定データ480、録画データ490が記憶される。
【0028】
なお、一般クライアント201の1次記憶装置220には、表示プログラム400が少なくともロードされ、録画クライアント202の1次記憶装置220には、録画プログラム420が少なくともロードされる。本形態のカメラサーバ100の1次記憶装置120にロードされる各プログラムは、カメラサーバ100の2次記憶装置130に記憶されている。同様に、各クライアント200−202の1次記憶装置220にロードされる各プログラムは、各クライアント200−202の2次記憶装置230に記憶されている。
【0029】
次に、カメラサーバ100の、撮像プログラム300、映像処理プログラム310、設定プログラム320、配信制御プログラム330、権利管理プログラム340を説明する。これらのプログラムは、CPU110により、2次記憶装置130から1次記憶装置120へ読み出されて実行される。
【0030】
撮像プログラム300は、撮像部145の撮像により得られた映像データ390を2次記憶装置130に記憶させるためのプログラムである。
【0031】
なお、本形態では映像データ390の記録先を2次記憶装置130としたが、例えば、1次記憶装置120のような高速な記憶装置やバッファなどに記憶させてもよい。また、撮像プログラム300は、例えばクライアント200−202からの制御信号に応じて制御I/F150を介して雲台155を制御する。
【0032】
映像処理プログラム310は、撮像部145の撮像により得られた映像データ390に対し、必要に応じて、可視制限(例えばマスク処理)を行うためのプログラムである。
【0033】
設定プログラム320は、各クライアント200−202からの指示や配信制御プログラムからの指示に応じた変更に応じて、2次記憶装置130の設定データ380を変更するためのプログラムである。
【0034】
配信制御プログラム330は、各クライアント200−202からの指示に応じて他のプログラムを制御するためのプログラムである。配信制御プログラムの詳細は図3を用いて後述する。
【0035】
権利管理プログラム340は、配信制御プログラム330からの問い合わせに応じて、クライアントのアクセス権の有無や、可視制限された領域の表示権限を有するか否かに関する情報を返答するためのプログラムである。
【0036】
次に、特権クライアント200の表示プログラム400、設定変更プログラム410、録画プログラム420について説明する。なお、一般クライアント201には、少なくとも表示プログラムがロードされ、録画クライアント202には少なくとも録画プログラム420がロードされる。
【0037】
表示プログラム400は、カメラサーバ100へ映像データ390の配信要求を行い、カメラサーバ100から得られた映像データ390をディスプレイ260に表示するためのプログラムである。
【0038】
設定変更プログラム410は、特権クライアント200のキーボード240やマウス250のような一般的な入力装置の指示により、カメラサーバ100に設定要求を行うためのプログラムである。設定要求により、例えば、マスク領域の位置やサイズを変更できる。
【0039】
録画プログラム420は、カメラサーバ100へ映像データ390の配信要求を行い、カメラサーバ100からの映像データ390を2次記憶装置230に記憶させるためのプログラムである。また、録画プログラム420によれば、映像データ390の期間の一部が欠落していた場合、カメラサーバ100に蓄積映像データ395の配信要求が行われ、カメラサーバ100からの蓄積映像データ395が2次記憶装置230に記憶される。録画プログラム420の詳細は図4を用いて後述する。
【0040】
なお、上記のプログラムは同時並行で処理を行うことが可能である。つまり、映像データ390を表示しながら、例えばマスク領域の位置やサイズを変更できる。
【0041】
次に本実施形態のカメラサーバ100の処理を図3を用いて説明する。なお、カメラサーバ100は、映像データをクライアントへ配信するサーバ装置である。また、カメラサーバ100は、図3のフローチャートで示した処理を、CPU110が2次記憶装置130に記憶された各種プログラムを1次記憶装置120へ読み出して実行することにより実現される。すなわち、CPU110は、撮像プログラム300、映像処理プログラム310、設定プログラム320、配信制御プログラム330、権利管理プログラム340を読み出して実行することにより、以下の処理を実現する。
【0042】
カメラサーバ100のCPU110は、2次記憶装置130に記憶されている設定データ380を読み込む(S301)。設定データ380は、例えば、マスク領域の位置に関する設定データである。また、設定データ380は、例えば、パン角、チルト角、ローテーション角、ズーム値などの範囲制限に関する設定データ、パン制御、チルト制御、ローテーション制御、ズーム制御などの操作禁止に関する設定データでもよい。また、設定データ380は、例えば、パン角、チルト角、ローテーション角、ズーム値のプリセット値に関する設定値でもよい。さらに、設定データ380は、可視制限(例えばマスク処理)が、現在、有効であるか無効であるかを示す情報を含む。
【0043】
設定データ380の読み込みが完了すると、CPU110は、イベントを待つ(S310)。本形態のカメラサーバ100は、クライアント200−202から映像データ390や蓄積映像データ395の配信要求を受信した場合や、特権クライアント200から設定データ380の設定要求を受信した場合にイベントが発生したと判定する。
【0044】
イベントが検知されると、当該イベントが、クライアント200−202からの配信要求の受信であるか否かを判定する(S320)。S320において、イベントが配信要求の受信であると判定されると、CPU110は、当該受信された配信要求の内容を確認する(S321)。配信要求には、一般クライアント201からの映像データ390の配信要求、録画クライアント202からの映像データ390又は蓄積映像データ395の配信要求が含まれる。また、配信要求には、特権クライアント200からの映像データの配信要求、特権クライアントの設定ツールからの映像データの配信要求が含まれる。
【0045】
カメラサーバ100のCPU110は、イベントが一般クライアント201又は録画クライアント202からの映像データ390の配信要求であると判定した場合(S330でYES)、可視制限の状態に応じて映像データ390を配信する(S331)。すなわち、カメラサーバ100は、可視制限(例えばマスク処理)が有効のときに一般クライアント201から映像データの配信要求を受信すると、映像データ390を配信する。一方、カメラサーバ100は、可視制限が無効のときに一般クライアント201や録画クライアント202から映像データ390の配信要求を受信しても、映像データ390を配信しない。また、本形態のカメラサーバ100は、可視制限が無効のときに一般クライアント201や録画クライアント202から映像データ390の配信要求を受信すると、映像データ390の配信を中断していることを通知する。後述のように、マスク領域の位置やサイズの変更中には、可視制限は無効になっている。
【0046】
また、カメラサーバ100のCPU110は、イベントが録画クライアント202からの蓄積映像データ395の配信要求の受信であると判定した場合(S340でYES)、可視制限の状態に応じて蓄積映像データ395を配信する(S341)。すなわち、カメラサーバ100は、可視制限(例えばマスク処理)が有効のときに録画クライアント202から蓄積映像データ395の配信要求を受信した場合、録画クライアント202に対して未配信の蓄積映像データ395を配信する。なお、本形態のカメラサーバ100は、録画クライアント202に対して、可視制限(マスク処理)がなされた蓄積映像データ395を配信する。このときのマスク領域は、蓄積映像データ395の配信時の設定に応じたマスク領域である。また、本形態のカメラサーバ100は、例えば、パン角やチルト角の範囲制限を可視制限とする場合、蓄積映像データ395の配信要求を受信しても、制限範囲外が撮像された期間の蓄積映像データ395を録画クライアント202へ配信しない。ただし、録画クライアント202の権限のレベルに応じて、可視制限されていない蓄積映像データ395を配信することも可能である。
【0047】
カメラサーバ100は、イベントが特権クライアント200の設定ツールからの映像データの配信要求の受信ではないと判定した場合(S350でNO)、特権クライアント200に対して映像データ390を配信する。カメラサーバ100は、S350がNOのとき、特権クライアント200の表示プログラム400からの映像データ390の配信要求であると判定する。
【0048】
一方、カメラサーバ100は、イベントが特権クライアント200の設定ツールからの映像データの配信要求の受信であると判定した場合(S350でYES)、当該配信要求が、後述するS371の処理後において最初の配信要求であるか否かを判定する(S360)。最初の配信要求であると判定された場合(S360でYES)、当該配信要求の送信元である特権クライアント200に対して、可視制限されていない映像データ(特権映像データ)を配信する必要があるか否かが判定される(S361)。特権映像データを配信する必要があると判定された場合(S361でYES)、可視制限(例えばマスク処理)の設定が有効であるか否かが判定される(S362)。可視制限の設定が有効であると判定されると(S362でYES)、可視制限が無効に設定される(S363)。そして、カメラサーバ100は、特権クライアント200の設定ツールへ映像データを配信する(S365)。
【0049】
本形態では、マスク処理が有効のときに、マスク領域の位置やサイズの変更のために設定ツールから映像データの配信要求を受信した場合、S362でYESと判定される。そして、S365において、カメラサーバ100のCPU110は、マスク処理されていない特権映像データを特権クライアント200へ配信する。すなわち、S362(受信手順)において、カメラサーバ100は、映像データに基づく映像の可視制限(例えばマスク処理)の無効化を伴う指示を、当該可視制限された領域の表示権限を有するクライアント(特権クライアント200)から受信する。
【0050】
なお、CPU110は、S363で可視制限を無効にすると、ほかの一般クライアント201や録画クライアント202に対する映像データ390の配信を中断し、中断期間の映像データ390を蓄積映像データ395として2次記憶装置130に蓄積する。すなわち、S363(配信手順)において、カメラサーバ100のCPU110は、可視制限された領域の表示権限を有しないクライアントに対する映像データの配信を、可視制限の無効化を伴う指示の受信に応じて中断する。このとき、カメラサーバ100のCPU110は、可視制限の無効化を伴う指示を特権クライアント200から受信したことを、一般クライアント201、録画クライアント202に通知する。
【0051】
また、CPU110は、S363で可視制限が無効化されてから後述するS375で可視制限が有効化されるまでの期間の映像データを、蓄積映像データ395として2次記憶装置130に蓄積する(蓄積手順)。
【0052】
一方、イベントが映像データ390や蓄積映像データ395の配信要求の受信でないと判定された場合(S320でNO)、CPU110は、S310で検知されたイベントが、設定変更のための設定要求の受信であるか否かを判定する(S370)。設定要求の受信であると判定された場合(S370でYES)、CPU110は、設定データ380を変更し(S371)、可視制限を無効から有効に変更するか否かを判定する(S372)。例えば、特権クライアント200は、設定ツールでマスク領域の位置が変更され、決定ボタンが押下されると、設定要求をカメラサーバ100へ送信して新たなマスク領域の位置を通知する。そして、カメラサーバ100は、設定要求に応じてマスク領域の位置に関する設定データ380を変更し、可視制限(マスク処理)を無効から有効にする。すなわち、S375において、CPU110は、無効化された可視制限(マスク処理)の有効化を伴う指示(設定要求)を受信する。
【0053】
また、イベントが設定要求の受信でないと判定された場合(S370でNO)、映像データの配信処理を終了するか否かの判定が行われ(S390)、終了すると判定された場合、処理を終了する。
【0054】
なお、本形態では、可視制限がマスク処理、可視制限された領域がマスク領域、可視制限の無効化を伴う指示がマスク領域の位置やサイズの変更のための設定ツールからの映像データの配信要求である場合の例を中心に説明したが、この例に限らない。
【0055】
例えば、可視制限を撮像装置(撮像部145)のパン角、チルト角、ローテーション角、ズーム値のうち、少なくともいずれかの範囲制限とすることもできる。この場合、可視制限された領域は、制限された範囲を超えた撮像領域である。特権クライアント200のユーザは、たとえば制限範囲を変更するときに設定ツールから映像データの配信要求を送信して可視制限を無効化することで、自由に映像を見て新たな制限範囲を決めることができる。この間、一般クライアント201や録画クライアント202に対する映像データの配信を中断することで、プライバシーを守ることができる。
【0056】
また、可視制限を撮像装置(撮像部145)に対するパン操作、チルト操作、ローテーション操作、ズーム操作のうち、少なくともいずれかの操作制限とすることもできる。この場合、可視制限された領域は、現在のパン角、チルト角、ローテーション角、ズーム値以外の撮像領域である。特権クライアント200のユーザは、設定ツールを介した映像データの配信要求により操作制限を一時的に無効化することで、自由に映像を見ることができる。この間、一般クライアント201や録画クライアント202に対する映像データの配信を中断することで、プライバシーを守ることができる。
【0057】
また、可視制限を撮像装置(撮像部145)に対するプリセット値以外のパン角、チルト角の操作とすることもできる。この場合、可視制限された領域は、プリセット値以外のパン角、チルト角の撮像領域である。特権クライアント200のユーザは、例えば設定済みのプリセット値を変更するときに設定ツールから映像データの配信要求を送信して可視制限を無効化することで、自由に映像を見ることができる。
【0058】
また、上述の実施形態では、設定ツールからの映像データの配信要求によって可視制限を無効化する例を説明したが、例えば特権クライアント200からのパノラマ画像の生成要求に応じてカメラサーバ100の可視制限を無効化することもできる。すなわち、可視制限をマスク処理、可視制限された領域がマスク領域、可視制限の無効化を伴う指示がパノラマ画像の生成要求とすることが可能である。特権クライアント200がカメラサーバ100から取得した複数の映像を射影変換により合成してパノラマ画像を生成する場合、特権クライアント200は設定ツールを介してカメラサーバ100へパノラマ画像の生成要求を送信する。パノラマ画像の生成要求を受信したカメラサーバ100は、マスク処理を無効化し、マスク処理されていない映像データを特権クライアント200へ配信する。このようにすることで、特権クライアント200は、マスク処理されていない複数の映像データを射影変換により合成してパノラマ画像を生成できる。このように、マスク処理されていない映像からパノラマ画像を生成し、マスク処理をすることで、マスク処理された映像データを射影変換で合成してパノラマ画像を生成するよりも、パノラマ画像の品質を向上できる。
【0059】
すなわち、マスク領域の設定に基づいてマスク処理された複数の映像データを射影変換してパノラマ画像を生成すると、図6に示すように、マスク領域が変形したり、意図しない位置にマスク領域が移動したりする可能性がある。そこで、カメラサーバ100は、特権クライアント200からのパノラマ画像の生成要求の受信に応じてマスク処理を無効化する。そして、カメラサーバ100は、マスク処理をしていない映像データを特権クライアント200へ配信し、マスク領域の表示権限を有していない一般クライアント201や録画クライアント202に対する映像データの配信を中断する。そして、カメラサーバ100は、特権クライアント200により生成されたパノラマ画像でマスク処理がなされたパノラマ画像を一般クライアント201や録画クライアント202へ配信する。このようにすることで、品質の高いパノラマ画像を生成できると共に、映像のプライバシーを守ることができる。なお、マスク処理は、特権クライアント200で行っても、カメラサーバ100で行ってもよい。
【0060】
なお、本形態のカメラサーバ100は、一般クライアント201や録画クライアント202に対する映像データの配信を中断している間、keep aliveを送信する。このようにすることで、映像データの配信が中断されている一般クライアント201や録画クライアント202において、通信が切断されないようにすることができる。また、本形態のカメラサーバ100は、図3のS372で可視制限が無効から有効に設定されると、録画クライアント202からの蓄積映像データ395の配信要求の受信を待たずに、S371での設定に基づく可視制限の処理を開始することも可能である。このようにすれば、蓄積映像データ395の配信要求を受信してから蓄積映像データ395を配信開始するまでの時間を短くできる。
【0061】
また、上記の実施形態では、例えばマスク処理の無効化を伴う指示の受信に応じて、一般クライアント201や録画クライアント202への映像データ390の配信を中断する例を説明した。しかし、映像データ390にマスク領域が含まれるまでは、一般クライアント201や録画クライアント202へ映像データを配信するようにしてもよい。
【0062】
同様に、例えば、可視制限を撮像部145のパン角、チルト角の範囲制限とした場合、可視制限の無効化を伴う指示に応じて直ちに映像データ390の配信を中断するのではなく、実際にパン角、チルト角の範囲制限を越える制御指示が行われてから中断してもよい。
【0063】
すなわち、カメラサーバ100は、映像の可視制限の無効化を伴う指示の受信し、その後、可視制限領域が映像データに含まれると、可視制限領域の表示権限を有しないクライアントへの映像データの配信を中断してもよい。このようにすれば、可視制限された領域の表示権限を有しないクライアントが受信する映像の連続性の低下を低減できる。
【0064】
次に、録画クライアント202の処理について図4を用いて説明する。なお、録画クライアント202は、サーバ装置(カメラサーバ100)から映像データを受信して記録する記録装置である。録画クライアント202のCPU210は、2次記憶装置230に記憶されている録画プログラム420を1次記憶装置220へ読み出して処理を実行する。
【0065】
録画クライアント202のCPU210は、映像データ390の配信要求を行うタイミングになったか否かを録画フレームレートの設定に基づいて判定する(S400)。そして、録画クライアント202は、映像データ390の配信要求を行うタイミングになったと判定すると(S400でYES)、映像データ390の配信要求をカメラサーバ100へ送信し(S410)、タイマーをリセットする(S420)。
【0066】
録画クライアント202は、タイマーが満了するまでに映像データ390を受信すると(S430でYES)、受信した映像データ390を2次記憶装置230に記録し(S440)、映像データ390の配信に欠落が存在するかを判定する(S450)。録画クライアント202は、S450において、カメラサーバ100から受信した映像データ390に欠落があるか否かを録画フレームレートに基づいて判定する。また、録画クライアント202は、カメラサーバ100から映像データ390の配信を中断する通知を受けた場合に、欠落が存在すると判定してもよい。すなわち、S420において、録画クライアント202は、カメラサーバ100による映像データの配信に中断期間が存在するか否かを判定する。
【0067】
録画クライアント202は、映像データ390が欠落していると判定すると(S450でYES)、蓄積映像データ395の配信要求をカメラサーバ100へ送信し、蓄積映像データ395を取得する(S470)。一方、映像データ390が欠落していないと判定された場合(S450でNO)、S400へ戻る。
【0068】
録画クライアント202は、タイマーが満了するまでに映像データ390を受信しなかった場合(S430でNO)、カメラサーバ100が映像データ390の配信を中断しているか否かを判定する(S460)。本形態の録画クライアント202は、カメラサーバ100から、映像データ390の配信中断の通知を受けることで、映像データ390の配信の中断を判定する。
【0069】
カメラサーバ100が映像データ390の配信を中断していると判定された場合(S460でYES)、S430に戻って待機する。このようにすることで、映像データ390の配信を中断しているにもかかわらず、多量の映像データの配信要求が送られることを防げる。
【0070】
なお、一般クライアント201は、表示プログラム400に基づいて、映像データの取得処理、表示処理を行う。具体的には、図4のS400からS430までは、録画プログラム420の処理と同様である。一般クライアント201は、カメラサーバ100から映像データ390を受信すると(S430でYES)、受信された映像データをディスプレイ260に表示させ(S440)、S400に戻る。
【0071】
また、特権クライアント200は、表示プログラム400や録画プログラム420を用いて、上記のような処理をすることが可能である。さらに、特権クライアント200は、設定ツールの操作に応じて、設定変更プログラム410を起動し、可視制限されていない特権映像データをカメラサーバ100から取得できる。
【0072】
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像データをクライアントへ配信するサーバ装置であって、
前記映像データに基づく映像の可視制限の無効化を伴う指示を、当該可視制限された領域の表示権限を有するクライアントから受信する受信手段と、
前記可視制限された領域の表示権限を有しないクライアントに対する映像データの配信を前記可視制限の無効化を伴う指示の受信に応じて中断する配信手段と、
前記表示権限を有しないクライアントに対する映像データの配信を中断した中断期間の映像データを蓄積する蓄積手段とを有し、
前記配信手段は、前記中断期間の映像データを、前記無効化された可視制限の有効化を伴う指示の前記受信手段による受信に応じて、前記表示権限を有しないクライアントへ配信することを特徴とするサーバ装置。
【請求項2】
前記可視制限はプライバシーマスク処理により行われることを特徴とする請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項3】
前記可視制限は、前記映像データを取得する撮像装置のパン角、チルト角、ズーム値のうち、少なくともいずれかの範囲制限によって行われることを特徴とする請求項1又は2に記載のサーバ装置。
【請求項4】
前記可視制限は、前記映像データを取得する撮像装置に対するパン操作、チルト操作、ズーム操作のうち、少なくともいずれかの操作制限によって行われることを特徴とする請求項1乃至3のうちいずれか1項に記載のサーバ装置。
【請求項5】
前記配信手段は、前記表示権限を有するクライアントからの前記パノラマ画像の生成要求の受信に応じて、前記可視制限としてのプライバシーマスク処理をしていない映像データを前記表示権限を有するクライアントへ配信し前記表示権限を有しないクライアントに対する映像データの配信を中断すると共に、前記表示権限を有するクライアントが生成したパノラマ画像であって前記プライバシーマスク処理がなされたパノラマ画像を前記表示権限を有しないクライアントへ配信することを特徴とする請求項1に記載のサーバ装置。
【請求項6】
前記配信手段は、前記可視制限の無効化を伴う指示を前記表示権限を有するクライアントから受信したことを、前記表示権限を有しないクライアントへ通知することを特徴とする請求項1乃至5のうち、いずれか1項に記載のサーバ装置。
【請求項7】
映像データをクライアントへ配信するサーバ装置が行う配信方法であって、
前記映像データに基づく映像の可視制限の無効化を伴う指示を、当該可視制限された領域の表示権限を有するクライアントから受信する受信工程と、
前記可視制限された領域の表示権限を有しないクライアントに対する映像データの配信を前記可視制限の無効化を伴う指示の受信に応じて中断する配信工程と、
前記表示権限を有しないクライアントに対する映像データの配信を中断した中断期間の映像データを蓄積する蓄積工程とを有し、
前記配信工程は、前記中断期間の映像データを、前記無効化された可視制限の有効化を伴う指示の受信に応じて、前記表示権限を有しないクライアントへ配信することを特徴とする配信方法。
【請求項8】
映像データをクライアントへ配信するコンピュータに、
前記映像データに基づく映像の可視制限の無効化を伴う指示を、当該可視制限された領域の表示権限を有するクライアントから受信する受信手順と、
前記可視制限された領域の表示権限を有しないクライアントに対する映像データの配信を前記可視制限の無効化を伴う指示の受信に応じて中断する配信手順と、
前記表示権限を有しないクライアントに対する映像データの配信を中断した中断期間の映像データを蓄積する蓄積手順とを実行させ、
前記配信手順は、前記中断期間の映像データを、前記無効化された可視制限の有効化を伴う指示の受信に応じて、前記表示権限を有しないクライアントへ配信することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−95210(P2012−95210A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−242465(P2010−242465)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】