説明

サーマルプリンタ

【課題】 サーマルプリンタが元々持っているオーバーコート処理機能を利用して、インクジェットプリンタで印刷した印画物の画像に簡単にオーバーコート処理を施す。
【解決手段】 通常のインクリボンと、オーバーコート専用カセットと、オーバーコート専用カセットがプリンタ本体に装填されたことを検出するオーバーコート専用カセット検出部21と、装填されたオーバーコート専用カセットの種類(Lサイズ,ハガキサイズ)を検出するインクリボンカセット検出部22とを備えており、印刷制御部25は、オーバーコート専用カセット検出部21の検出信号に基づき、装填されているカセットがオーバーコート専用カセットであると判断した場合には、インクリボンカセット検出部22の検出信号に基づいて判別したサイズに応じて、オーバーコート専用の印刷制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットプリンタ等で印刷した写真に保護用のオーバーコートを印刷することのできるサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、画像等の視覚的情報を迅速に印刷できることから、現在広く使用されている。インクジェット方式は、記録ヘッドのノズルからインクの滴液を吐出させ、記録紙に付着させて画像形成を行う方式である。近年のインクジェット記録技術の進歩により、高画質のフルカラー画像なども従来の銀塩化写真に匹敵する画質が得られるようになってきている。
【0003】
そのため、一般家庭においても、インクジェットプリンタを利用して、例えばデジタルカメラ等で撮影した画像をプリントアウトし、アルバムに保存するようになってきているが、インクジェット方式により作製された印画物は耐水性が無く、保存性が問題となっていた。
【0004】
そこで、インクジェットプリンタで作製された印画物の耐水性等を高めるための種々の提案がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1に記載のものは、インクジェットプリンタ専用のオーバーコート処理用熱転写シートカセット(以下、単に「熱転写シートカセット」という。)を用意し、この熱転写シートカセットを記録ヘッドの下流側に配置して、記録ヘッドにより印画された記録紙の上にオーバーコート処理を施すものである。この熱転写シートカセットは、印画物を被覆可能な幅を有する支持体の片面全体に被転写層であるオーバーコート層を設けたものである。
【特許文献1】特開2003−285521号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来技術では、熱転写シートカセットはインクジェットプリンタ専用の熱転写シートカセットであり、インクジェットプリンタで印刷するとき以外には使用できないといった問題があった。また、印刷時に同時にオーバーコート処理を施すものであるため、印刷後にオーバーコート処理だけを行うことができないといった問題もあった。
【0007】
さらに、上記従来技術の熱転写シートカセットは、印画物を被覆可能な幅を有する支持体の片面全体に被転写層を設けたものであるが、印画物には、Lサイズやハガキサイズから、A4サイズ、B4サイズと種々のサイズがあるため、前記熱転写シートはその全てをカバーできるように、例えばB4サイズに合わせておく必要がある。そのため、この熱転写シートを使用してLサイズの印画物にオーバーコート処理を行った場合には、印画物からはみ出した被転写層部分は全く転写されないまま使用済みとして巻き取られてしまい、無駄になってしまうといった問題があった。
【0008】
ところで、印加する熱エネルギーの大きさによって3原色を選択的に発色させるサーマルプリンタでは、図10に示すように、インクリボン100に、イエロ(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、オーバーコート(OC)の各層が、各色の印刷開始位置を検出するための黒色のライン101を介して順次形成されているものがあり、従来から一般に使用されている。つまり、サーマルプリンタでは、従来から3原色を発色後にオーバーコート層を形成するような構成となっている。
【0009】
本発明はかかる点に着目して創案されたもので、その目的は、サーマルプリンタが元々持っているオーバーコート処理機能を利用して、インクジェットプリンタで印刷した印画物の画像に簡単にオーバーコート処理を施すことのできるサーマルプリンタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のサーマルプリンタは、プリンタ本体に形成されたカセット装填部にインクリボンを巻回したインクリボンカセットを装填し、サーマルヘッドの発熱により前記インクリボンに形成されているインク層を感熱紙に転写して印刷を行うサーマルプリンタにおいて、オーバーコートリボンを巻回したオーバーコート専用カセットと、前記プリンタ本体に設けられ、前記オーバーコート専用カセットが前記カセット装填部に装填されたことを検出する第1検出手段と、この第1検出手段の検出信号に基づき、装填されているカセットが前記オーバーコート専用カセットであると判断した場合には、オーバーコート専用の印刷制御を行う印刷制御手段とを備えたことを特徴とする。
【0011】
このような構成によれば、カセットを装填するだけでオーバーコート印刷か否かを印刷制御手段が判断できるので、ユーザは特に操作を行わなくても、例えば単に開始ボタンを押す等の操作だけで、オーバーコート印刷を開始することができる。
【0012】
この場合、前記オーバーコート専用カセットは、前記感熱紙のサイズに応じて複数種類用意されており、前記プリンタ本体には、前記オーバーコート専用カセットの種類を検出する第2検出手段が設けられている。そして、前記印刷制御手段は、前記第2検出手段の検出信号に基づいて装填されているオーバーコート専用カセットの種類を判別するように構成してもよい。一方、前記感熱紙も複数サイズ用意されているとともに、これらのサイズに応じて感熱紙トレイが複数個用意されており、前記プリンタ本体には、装着される前記感熱紙トレイの種類を検出する第3検出手段を設けた構成とする。
【0013】
そして、前記印刷制御手段は、前記第2検出手段の検出信号と前記第3検出手段の検出信号とに基づいて、装填されているオーバーコート専用カセットの種類と装着されている感熱紙トレイの種類とが一致しているか否かを判断し、一致していない場合には警告を発するように構成してもよい。この場合、警告を発する手段としては、例えばLED等のランプをプリンタ本体に設けておき、このランプを点灯する等の手段が考えられる。また、表示パネルを設けている場合には、この表示パネルにエラーメッセージを表示するようにしてもよい。
【0014】
このような構成とすれば、感熱紙トレイの種類(感熱紙のサイズ)とオーバーコート専用カセットの種類(オーバーコートリボンのサイズ)とが違っている場合には、ユーザに警告できるので、種類を間違ったままオーバーコート処理を行ってしまうといった不具合を防止することができる。つまり、感熱紙の全面にオーバーコート層が印刷(転写)されなかったり、感熱紙に転写されないオーバーコート層がリボンに残ったまま巻き取られてしまうといった不具合を防止することができる。
【0015】
また、前記オーバーコートリボンには、対応する感熱紙の長さサイズに応じた間隔で印刷開始位置を示すラインを設けておき、前記プリンタ本体に、前記ラインを検出する第4検出手段を設けてもよい。そして、前記印刷制御手段は、オーバーコートの印刷処理時に前記第4検出手段の検出信号に基づいてオーバーコートの印刷開始位置を調整しながらオーバーコート印刷を行うように構成してもよい。すなわち、このような印刷処理は、通常のY,M,Cの3原色の各層が形成されたインクリボンを用いて3原色を感熱紙に印刷するときの処理と同じである。このように、ラインを設けて印刷開始位置を調整することで、リボンに形成されているオーバーコート層を余すところなく使用することができ、リボンの無駄を無くすことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のサーマルプリンタによれば、インクジェットプリンタ等で印刷した印画物に耐候性のあるオーバーコートを施すことができるので、残したいカードグリーティングカードを大切に保管することができる。また、第1検出手段により、カセットを装填するだけでオーバーコート印刷か否かを印刷制御手段が判断できるので、ユーザは特に操作を行わなくても、例えば単に開始ボタンを押す等の操作だけで、オーバーコート印刷を開始することができる。さらに、感熱紙トレイの種類(感熱紙のサイズ)とオーバーコート専用カセットの種類(オーバーコートリボンのサイズ)とが違っている場合には、ユーザに警告できるので、種類を間違ったままオーバーコート処理を行ってしまうといった不具合を防止することができる。さらにまた、オーバーコートの印刷処理時に第4検出手段の検出信号に基づいてオーバーコートの印刷開始位置を調整しながらオーバーコート印刷を行うことができるので、リボンに形成されているオーバーコート層を余すところなく使用することができ、リボンの無駄を無くすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0018】
図1は、本実施形態のサーマルプリンタの外観図である。
【0019】
このサーマルプリンタ1は、主に写真などを印刷するための家庭用の小型タイプであり、図示は省略しているが、外部機器である例えばデジタルカメラを接続するための接続端子を備えている。
【0020】
プリンタ本体10は略直方体形状であって、その前側面11には、任意のサイズの感熱紙(印画紙)Tを複数枚重ねた状態で収容している感熱紙トレイ70をプリンタ本体10に着脱可能に装着するためのトレイ挿入口12が設けられている。一方、プリンタ本体10の後側面13には、図示は省略しているが、このトレイ挿入口12に対向する位置に、印刷時の感熱紙Tの前後方向の移動を妨げないように、感熱紙Tの通紙口が設けられている。
【0021】
また、プリンタ本体10の例えば右側面14には、感熱紙Tに画像を形成するための通常のインクリボンカセット30またはオーバーコート専用カセット50のいずれかを、プリンタ本体10のカセット装填部に着脱可能に装填するためのカセット挿入口15が設けられている。
【0022】
また、本実施形態では、プリンタ本体10の上面16に、印刷の開始ボタン16aと停止ボタン16bとが設けられている。この開始ボタン16aや停止ボタン16bは、インクジェットプリンタ等で印刷した印画物に耐候性のあるオーバーコート処理を施すときなどに使用される。さらに、プリンタ本体10の上面16には、後述するカセットとトレイの種類が異なる場合の警告を発するための警告表示部19が設けられている。この警告表示部19は、例えばLEDランプでもよく、LCD等の表示パネルであってもよい。
【0023】
本実施形態のサーマルプリンタ1は、例えばLサイズとハガキサイズの2種類の感熱紙の印刷が可能となっており、そのため感熱紙トレイ70は、収容する感熱紙Tの種類(サイズ)に応じて2種類用意されている。ただし、トレイ自体の外形状は同じ形状であり、収納されている感熱紙Tのサイズが異なるだけで、トレイ自体は共通化されている。
【0024】
また、通常のインクリボンカセット30も、感熱紙Tの種類に応じて、Lサイズ幅に対応した幅のインクリボンを収容したカセットと、ハガキサイズ幅に対応した幅のインクリボンを収容したカセットの、2種類のカセットが用意されている。ただし、カセット自体の外形状は、リボンの種類に関係なく同じ形状であり、カセット自体は共通化されている。
【0025】
さらに、オーバーコート専用カセット50も、感熱紙Tの種類に応じて、Lサイズ幅に対応した幅のリボンを収容したカセットと、ハガキサイズ幅に対応した幅のリボンを収容したカセットの、2種類のカセットが用意されている。ただし、カセット自体の外形状は、リボンの種類に関係なく同じ形状であり、カセット自体はインクリボンカセット30とともに共通化されている。
【0026】
ただし、このサーマルプリンタ1で印刷可能な感熱紙Tの種類は、Lサイズとハガキサイズの2種類に限定されるものではなく、他のサイズの感熱紙も印刷可能である。この場合、感熱紙トレイ70、インクリボンカセット30及びオーバーコート専用カセット50もその種類分だけ用意すればよいが、ここでは説明を簡単にするために、Lサイズとハガキサイズの2種類としている。
【0027】
図2は、オーバーコート専用カセット50の構造を示している。ただし、この構造はインクリボンカセット30も同様であるので、以下の説明ではインクリボンカセット30の場合も同符号を用いて説明を行うこととする。
【0028】
すなわち、オーバーコート専用カセット50は、テープ状に形成されたオーバーコート専用の熱転写リボン(オーバーコートリボン)OPが巻回された第1リール57を回転可能に収納保持する第1リール収納部51と、第1リール51より繰り出された熱転写リボンOPを巻き取る第2リール58を回転可能に収納保持する第2リール収納部52とが、長方形状に形成された枠体53の対向する側部にそれぞれ一体的に形成されることによって、所定の間隔を存して対向配置された構造となっている。熱転写リボンOPは、図3(a),(b)に示すように、テープ状に形成された柔軟な支持体OP1上の全面に、保護層であるオーバーコート層OCが形成されたオーバーコート専用のリボンとなっている。
【0029】
また、枠体53は、第1リール51より繰り出された熱転写リボンOPを外部に露出させる開口部54を備えており、この開口部54を介して、後述する加熱圧着手段により、支持体OP1上のオーバーコート層OP2を印画物の画像面上に熱転写するようになっている。
【0030】
因みに、インクリボンカセット30では、上記構造のカセットに、図10に示すインクリボン100が巻回されている。
【0031】
図4は、プリント機構部分の概略図を示しており、プリンタ本体10のカセット挿入口15からインクリボンカセット30を挿入してプリンタ本体10内のカセット装填部に装填した状態を概略的に示している。
【0032】
すなわち、インクリボンカセット30の第1リール51と第2リール52との間であって、図1に示す感熱紙トレイ70から引き出された感熱紙Tの搬送経路上に、サーマルヘッド17とプラテンローラ18とが対向配置された加熱圧着手段が設けられている。なお、感熱紙Tを往復搬送させる搬送駆動系や、インクリボンカセット30のリールを駆動するリール駆動系などは図示を省略している。
【0033】
本実施形態のサーマルプリンタ1は、感熱紙Tを往復搬送して3原色の発色及びその定着を順次行う。通常、各原色のデータを処理する印刷制御部25(図7参照)は、感熱紙Tにおける各原色の発色開始位置を同一にして、固定してあるサーマルヘッド17と搬送される感熱紙Tとの相対位置に応じて、所要の熱エネルギを印加すべくデータ処理する構成となっている。
【0034】
このような印刷制御部25の要求から、往復搬送される感熱紙Tに3原色をそれぞれ発色させるためには少なくとも2往復半の搬送動作、具体的には搬入方向(図1及び図4において矢符X1方向)において第1の原色(Y)を発色させ、折返し搬出方向(図1及び図4において矢符X2方向)において第2の原色(M)の発色開始位置の位置決めを行い、2度目の搬入方向X1において第2の原色(M)を発色させ、折返し搬出方向X2において第3の原色(C)の発色開始位置の位置決めを行い、3度目の搬入方向X1において第3の原色(C)の発色動作を行う。なお、定着動作に関しては搬送方向の制約がないため、発色順序に応じて適宜それを行えば良い。この後、折返し搬出方向X2においてオーバーコート層(OC)の転写開始位置の位置決めを行い、4度目の搬入方向X1においてオーバーコート層(OC)の転写(印刷)を行う。
【0035】
このような構成において、本実施形態では、上記したように、インクリボンカセット30がLサイズ用とハガキサイズ用の2種類用意されており、プリンタ本体10には、この2種類のインクリボンカセット30を区別するためのインクリボンカセット検出部22(図5参照)が設けられている。
【0036】
また、本実施形態では、上記したように、オーバーコート専用カセット50もカセット挿入口15から装填することから、プリンタ本体10には、このオーバーコート専用カセット50を検出するためのオーバーコート専用カセット検出部(第1検出手段)21(図5参照)が設けられている。そして、オーバーコート専用カセット50も、Lサイズ用とハガキサイズ用の2種類用意されており、その種類判別には、上記インクリボンカセット検出部22を兼用する構成としている。すなわち、インクリボンカセット検出部22が本発明の請求項に記載の第2検出手段を構成している。
【0037】
図5は、カセット本体10を上から見た概略横断面図であり、図面の右側がカセット挿入口15となっている。オーバーコート専用カセット検出部21及びインクリボンカセット用検出部22は、本実施形態ではリミットスイッチによって形成されており、カセット挿入口15の内奥部であって、カセット挿入口15から装填されたインクリボンカセット30及びオーバーコート専用カセット50の奥側の枠体53部分が当接する位置に並設する形で固定配置されている。
【0038】
一方、図6は、オーバーコート専用カセット検出部21及びインクリボンカセット検出部22に対向するインクリボンカセット30及びオーバーコート専用カセット50の奥側の枠体53部分を示す説明図であり、(a)はLサイズ用のインクリボンカセット30aの枠体53a部分、(b)はハガキサイズ用のインクリボンカセット30bの枠体53b部分、(c)はLサイズ用のオーバーコート専用カセット50aの枠体53a部分、(d)はハガキサイズ用のオーバーコート専用カセット50bの枠体53b部分をそれぞれ示している。
【0039】
同図(a)に示すように、Lサイズ用のインクリボンカセット30aの枠体53a部分には、オーバーコート専用カセット検出部21に対向する位置に開口部55aが設けられており、インクリボンカセット検出部22に対向する位置には開口部55b(図中、破線により示す)が設けられていない。また、同図(b)に示すように、ハガキサイズ用のインクリボンカセット30bの枠体53b部分には、オーバーコート専用カセット検出部21に対向する位置に開口部55aが設けられており、インクリボンカセット検出部22に対向する位置にも開口部55bが設けられている。また、同図(c)に示すように、Lサイズ用のオーバーコート専用カセット50aの枠体53a部分には、オーバーコート専用カセット検出部21に対向する位置にも、インクリボンカセット検出部22に対向する位置にも開口部55a,55b(図中、破線により示す)は設けられていない。また、同図(d)に示すように、ハガキサイズ用のオーバーコート専用カセット50bの枠体53b部分には、オーバーコート専用カセット検出部21に対向する位置に開口部55a(図中、破線により示す)は設けられておらず、インクリボンカセット検出部22に対向する位置に開口部55bが設けられている。
【0040】
すなわち、上記のような開口部の配置構造とすることにより、例えばLサイズ用のインクリボンカセット30aを装填したとき(図6(a)参照)には、オーバーコート専用カセット検出部21が開口部55aに侵入する結果OFF、インクリボンカセット検出部22が枠体53a部分に当接する結果ONとなり、ハガキサイズ用のインクリボンカセット30bを装填したとき(図6(b)参照)には、オーバーコート専用カセット検出部21が開口部55aに侵入する結果OFF、インクリボンカセット検出部22が開口部55bに侵入する結果OFFとなり、Lサイズ用のオーバーコート専用カセット50aを装填したとき(図6(c)参照)には、オーバーコート専用カセット検出部21が枠体53a部分に当接する結果ON、インクリボンカセット検出部22が枠体53a部分に当接する結果ONとなり、ハガキサイズ用のオーバーコート専用カセット50bが装填されたとき(図6(d)参照)には、オーバーコート専用カセット検出部21が枠体53b部分に当接する結果ON、インクリボンカセット検出部22が開口部55bに侵入する結果OFFとなる。
【0041】
このようなオーバーコート専用カセット検出部21のON/OFFと、インクリボンカセット検出部22のON/OFFの組み合わせによって、インクリボンカセット30とオーバーコート専用カセット50の判別と、それぞれのカセットの種類(Lサイズ、ハガキサイズ)判別とを行うことが可能となる。
【0042】
また、本実施形態では、上記したように、感熱紙トレイ70も、Lサイズ用とハガキサイズ用の2種類あることから、プリンタ本体10には、この2種類の感熱紙トレイ70を判別するためのトレイ検出部23(図5参照)が設けられている。
【0043】
このトレイ検出部23も、オーバーコート専用カセット検出部21やインクリボンカセット検出部22と同様、リミットスイッチで形成することが可能であり、感熱紙トレイ70の対応する位置に開口部を設けるか設けないかで、Lサイズ用の感熱紙トレイであるのか、ハガキサイズ用の感熱紙トレイであるのかを判別することができる。例えば、Lサイズの感熱紙トレイである場合にはトレイ検出部23がONし、ハガキサイズの感熱紙トレイである場合にはトレイ検出部23がOFFするように構成することができる。
【0044】
また、本実施形態では、インクリボンカセット30に収納されているインクリボンに形成されている各色の印刷開始位置を示す黒色のライン101(図10参照)を検出するためのライン検出部24(図5参照)が、プリンタ本体10に設けられている。このライン検出部24は、例えば反射型のフォトカプラを用いることができる。
【0045】
図7は、本実施形態のサーマルプリンタ1の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【0046】
このサーマルプリンタ1は、プリンタ全体の動作を制御する印刷制御部25を中心とし
て、この印刷制御部25に、オーバーコート専用カセット検出部21、インクリボンカセット検出部22、トレイ検出部23、及びライン検出部24の各出力が接続されている。また、開始ボタン16aの出力と停止ボタン16bの出力とが接続されており、図示しない外部機器である例えばデジタルカメラを接続するための接続端子26が設けられている。印刷制御部25は、これら各部からの信号に基づいてプリント機構部を駆動制御し、通常の印刷動作や本発明の特徴であるオーバーコート処理を実施する。また、印刷制御部25には、カセットとトレイの種類が異なる場合に警告を発するための警告表示部19が接続されている。
【0047】
次に、上記構成のサーマルプリンタ1において、インクジェットプリンタ等で印刷した印画物に耐候性のあるオーバーコート処理を施すときの処理動作について、図8に示すフローチャートを参照して説明する。ただし、インクジェットプリンタ等で印刷した印画物は、そのサイズ(Lサイズまたはハガキサイズ)に合った印画物を感熱紙トレイ70に収納した状態でプリンタ本体10に装着するものとする。
【0048】
カセット挿入口15からカセットが挿入されて、プリンタ本体10のカセット装填部に装填された状態で、開始ボタン16aが押されると(ステップS1でYesと判断されると)、印刷制御部25は、まず、オーバーコート専用カセット検出部21及びインクリボンカセット検出部22からの検出信号に基づいて、装填されているカセットの種別を判別する。
【0049】
すなわち、まずオーバーコート専用カセット検出部21がONかOFFかを判断し(ステップS2)、オーバーコート専用カセット検出部21がOFFである場合(ステップS2でNoと判断された場合)には、装填されたカセットがインクリボンカセット30であると判断して、通常の印刷処理に移行する(ステップS3)。
【0050】
一方、オーバーコート専用カセット検出部21がONである場合(ステップS2でYesと判断された場合)には、次に、インクリボンカセット検出部22がONかOFFかを判断する(ステップS4)。その結果、インクリボンカセット検出部22がONである場合(ステップS4でYesと判断された場合)には、装填されているオーバーコート専用カセット50がLサイズ用のオーバーコート専用カセット50aであると判断し(ステップS5)、インクリボンカセット検出部22がOFFである場合(ステップS4でNoと判断された場合)には、ハガキサイズ用のオーバーコート専用カセット50bであると判断する(ステップS6)。
【0051】
次に、印刷制御部25は、トレイ検出部23がONかOFFかを判断する(ステップS7)。その結果、トレイ検出部23がONである場合(ステップS7でYesと判断された場合)には、装着された感熱紙トレイ70がLサイズ用の感熱紙トレイであると判断し(ステップS8)、トレイ検出部23がOFFである場合(ステップS7でNoと判断された場合)には、装着された感熱紙トレイ70がハガキサイズ用の感熱紙トレイであると判断する(ステップS9)。
【0052】
次に、印刷制御部25は、ステップS4及びステップS7の判断結果に基づき、装填されているオーバーコート専用カセット50の種類と、装着されている感熱紙トレイ70の種類とが一致するか否かを判断する(ステップS10)。その結果、一致する場合には、そのままオーバーコート処理を実行する(ステップS11)。一方、種類が一致しない場合には、警告表示部19を駆動してエラー表示を行う(ステップS12)。すなわち、警告表示部19がLEDランプである場合にはランプを点灯し、警告表示部19が液晶パネルである場合には、エラーメッセージを表示する。
【0053】
上記実施形態では、図3(a)に示すように、オーバーコートリボン(熱転写リボン)OPは、テープ状に形成された柔軟な支持体OP1上の全面に、保護層であるオーバーコート層OCが一連に形成されただけの状態となっている。そのため、1つの印画物についてオーバーコート処理を終了後、次の印画物にオーバーコート処理を施す場合には、次の印画物に確実にオーバーコート層OCが転写されるように、オーバーコートリボンOPを少し多めに繰り出してからオーバーコート処理を行う必要がある。そのため、印画物上に転写されないで支持体OP1上に一部のオーバーコート層が残ったまま使用済みとして巻き取られてしまうことになる。つまり、支持体OP1上に残ったオーバーコート層OCが無駄になるといった不具合が残されている。そこで、本実施形態では、図9に示すように、対応する感熱紙Tの長さサイズに応じた間隔で印刷開始位置を示す黒色のライン41を設けている。このライン41は、プリンタ本体10に元々取り付けられているライン検出部24を用いて検出することができる。これにより、印刷制御部25は、オーバーコートの印刷処理時にライン検出部24の検出信号に基づいてオーバーコートの印刷開始位置を調整しながら、オーバーコート印刷を行うことができるので、オーバーコートリボンOPに形成されているオーバーコート層OCを余すところなく使用することができ、リボンの無駄を無くすことができる。
【0054】
なお、上記実施形態では、オーバーコート専用カセット検出部21、インクリボンカセット検出部22、トレイ検出部23をリミットスイッチで構成しているが、これらの検出部はリミットスイッチに限定されるものではない。例えば、反射型のフォトカプラや透過型のフォトカプラを使用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係るサーマルプリンタの外観図である。
【図2】オーバーコート専用カセットの構造を示す斜視図である。
【図3】(a)は熱転写リボン(オーバーコートリボン)の平面図、(b)は断面図である。
【図4】プリント機構部分の概略説明図である。
【図5】カセット本体を上から見た概略横断面図である。
【図6】オーバーコート専用カセット検出部及びインクリボンカセット用検出部に対向するインクリボンカセット及びオーバーコート専用カセットの奥側の枠体部分を示す説明図である。
【図7】本実施形態のサーマルプリンタの電気的構成を示す機能ブロック図である。
【図8】本実施形態のサーマルプリンタにおいて、インクジェットプリンタ等で印刷した印画物に耐候性のあるオーバーコート処理を施すときの処理動作示すフローチャートである。
【図9】オーバーコートリボンの他の実施例を示す説明図である。
【図10】インクリボンの構成を示す説明図である。
【符号の説明】
【0056】
1 サーマルプリンタ
10 プリンタ本体
11 前側面
12 トレイ挿入口
13 後側面
14 右側面
15 カセット挿入口
16 上面
16a 開始ボタン
16b 停止ボタン
19 警告表示部
21 オーバーコート専用カセット検出部
22 インクリボンカセット検出部
23 トレイ検出部
24 ライン検出部
25 印刷制御部
26 接続端子部
30 インクリボンカセット
50 オーバーコート専用カセット
51 第1リール収納部
52 第2リール収納部
53 枠体
54 開口部
55a,55b 開口部
OP 熱転写リボン(オーバーコートリボン)
OP1 支持体
OC オーバーコート層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタ本体に形成されたカセット装填部にインクリボンを巻回したインクリボンカセットを装填し、サーマルヘッドの発熱により前記インクリボンに形成されているインク層を感熱紙に転写して印刷を行うサーマルプリンタにおいて、
前記感熱紙が複数サイズ用意されているとともに、これらのサイズに応じて感熱紙を収容した感熱紙トレイが複数個用意されており、
オーバーコートリボンを巻回したオーバーコート専用カセットが前記感熱紙のサイズに応じて複数種類用意されており、かつ、前記オーバーコートリボンには、対応する感熱紙の長さサイズに応じた間隔で印刷開始位置を示すラインが設けられており、
前記プリンタ本体には、
前記オーバーコート専用カセットが前記カセット装填部に装填されたことを検出する第1検出手段と、
前記オーバーコート専用カセットの種類を検出する第2検出手段と、
プリンタ本体に装着される前記感熱紙トレイの種類を検出する第3検出手段と、
オーバーコートリボンに設けられた前記ラインを検出する第4検出手段と、
前記第1検出手段の検出信号に基づき、装填されているカセットが前記オーバーコート専用カセットであると判断した場合には、オーバーコート専用の印刷制御を行うとともに、オーバーコートの印刷処理時に前記第4検出手段の検出信号に基づいてオーバーコートの印刷開始位置を調整しながらオーバーコート印刷を行う印刷制御手段とが設けられており、
前記印刷制御手段はさらに、前記第2検出手段の検出信号と前記第3検出手段の検出信号とに基づいて、装填されているオーバーコート専用カセットの種類と装着されている感熱紙トレイの種類とが一致しているか否かを判断し、一致していない場合には警告を発することを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項2】
プリンタ本体に形成されたカセット装填部にインクリボンを巻回したインクリボンカセットを装填し、サーマルヘッドの発熱により前記インクリボンに形成されているインク層を感熱紙に転写して印刷を行うサーマルプリンタにおいて、
オーバーコートリボンを巻回したオーバーコート専用カセットと、
前記プリンタ本体に設けられ、前記オーバーコート専用カセットが前記カセット装填部に装填されたことを検出する第1検出手段と、
この第1検出手段の検出信号に基づき、装填されているカセットが前記オーバーコート専用カセットであると判断した場合には、オーバーコート専用の印刷制御を行う印刷制御手段とを備えたことを特徴とするサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記オーバーコート専用カセットは、前記感熱紙のサイズに応じて複数種類用意されており、前記プリンタ本体には、前記オーバーコート専用カセットの種類を検出する第2検出手段が設けられており、前記印刷制御手段は、前記第2検出手段の検出信号に基づいて装填されているオーバーコート専用カセットの種類を判別することを特徴とする請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記感熱紙が複数サイズ用意されているとともに、これらのサイズに応じて感熱紙トレイが複数個用意されており、前記プリンタ本体には、装着される前記感熱紙トレイの種類を検出する第3検出手段が設けられており、前記印刷制御手段は、前記第2検出手段の検出信号と前記第3検出手段の検出信号とに基づいて、装填されているオーバーコート専用カセットの種類と装着されている感熱紙トレイの種類とが一致しているか否かを判断し、一致していない場合には警告を発することを特徴とする請求項3に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記オーバーコートリボンには、対応する感熱紙の長さサイズに応じた間隔で印刷開始位置を示すラインが設けられており、前記プリンタ本体には、前記ラインを検出する第4検出手段が設けられており、前記印刷制御手段は、オーバーコートの印刷処理時に前記第4検出手段の検出信号に基づいてオーバーコートの印刷開始位置を調整しながらオーバーコート印刷を行うことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のサーマルプリンタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−62104(P2006−62104A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−244365(P2004−244365)
【出願日】平成16年8月24日(2004.8.24)
【出願人】(000201113)船井電機株式会社 (7,855)
【Fターム(参考)】