説明

サーマルプリンタ

【課題】本発明は、安価な構成でインクシートの張力の制御を適切に行うことが可能なサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明によるサーマルプリンタは、インクシート3に塗膜された複数の色層を被転写材に順次転写することによって印画を行い、インクシート3が供給側インクシート軸22に巻き回されて形成された供給側インクシートロール8の巻き径に基づいて、供給側インクシート軸22のトルク負荷を制御する制御信号を生成する制御回路15と、供給側インクシート軸22に機械的に直結され、制御信号に基づいて、供給側インクシート軸22に対して直接トルク負荷を付与する供給側トルク負荷調整DCモータ18とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタに関し、特に、インクシートの張力を安価な構成で制御するサーマルプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のサーマルプリンタでは、インクシートの張力を調整するために、供給側インクシート軸と巻き取り側インクシート軸との各々にトルクリミッタを複数個設けていた。そして、インクシートの残量検知手段によって検知されたインクシートの残量に基づいて、予め設定された供給側インクシート軸に設けられたトルクリミッタと、巻き取り側インクシート軸に設けられたトルクリミッタとの組み合わせを変えることによって各インクシート軸に対して適切なトルク負荷を付与し、インクシートの張力を制御していた。
【0003】
また、他のインクシートの張力の制御を行う従来技術としては、インクシートの張力を、供給側インクシートロールに巻き回されたインクシートの残量に応じて、パルス幅変調方式によるDCモータによってトルクリミッタの制御を行うことによってインクシートの張力の制御を行うものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−62032号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のサーマルプリンタでは、インクシートの張力を制御するためにトルクリミッタを用いているため構成部品のコストがかかるという問題があった。
【0006】
本発明は、これらの問題を解決するためになされたものであり、安価な構成でインクシートの張力の制御を適切に行うことが可能なサーマルプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明によるサーマルプリンタは、インクシートに塗膜された複数の色層を被転写材に順次転写することによって印画を行い、インクシートが芯軸に巻き回されて形成された供給側インクシートロールの巻き径に基づいて、芯軸のトルク負荷を制御する制御信号を生成する制御部と、芯軸に機械的に直結され、制御信号に基づいて、芯軸に対して直接トルク負荷を付与するDCモータとを備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、インクシートが芯軸に巻き回されて形成された供給側インクシートロールの巻き径に基づいて、芯軸のトルク負荷を制御する制御信号を生成する制御部と、芯軸に機械的に直結され、制御信号に基づいて、芯軸に対して直接トルク負荷を付与するDCモータとを備えるため、安価な構成でインクシートの張力の制御を適切に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態によるサーマルプリンタの概略構成図である。
【図2】本発明の実施形態による供給側トルク負荷調整部の構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の実施形態によるサーマルプリンタの機能構成の一例を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施形態による供給側トルク負荷調整DCモータにおける制御モードの一例を示す図である。
【図5】本発明の実施形態による供給側トルク負荷調整DCモータにおける制御信号の一例を示す図である。
【図6】本発明の実施形態による供給側インクシートロールの巻き径とインクシートの張力の制御に必要なトルク負荷との関係を示す図である。
【図7】前提技術によるサーマルプリンタにおけるトルクリミッタの構成の一例を示す図である。
【図8】前提技術によるインクシートの張力の制御を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施形態について、図面を用いて以下に説明する。
【0011】
〈前提技術〉
まず初めに、本発明の前提技術について説明する。
【0012】
図7は、前提技術によるサーマルプリンタにおけるトルクリミッタの構成の一例を示す図であり、供給側インクシート軸および巻き取り側インクシート軸の各々に設けられているものとする。図7に示すように、インクシート軸29にはトルクリミッタ27,28が設けられており、トルクリミッタ27のギア25およびトルクリミッタ28のギア26は、切替機構30に連結されている。インクシートの残量検知手段(図示せず)によって検出されたインクシートの残量に基づいて、供給側および巻き取り側のインクシート軸29に設けられたトルクリミッタ27,28を切替機構30によって切り替えて、いずれかのトルクリミッタを用いる。このように、供給側と巻き取り側とでトルクリミッタの組合せを変えることによって、インクシートの張力を制御している。
【0013】
図8は、前提技術によるインクシートの張力の制御を示すグラフである。図8において、横軸は供給側インクシートロールの巻き径(巻き径が減少する方向を正方向とする)を示し、縦軸はインクシートの張力を示している。図7に示すトルクリミッタの構成では、トルクリミッタの切り替えによってインクシートの張力を調整しているため、図8の点線で示されるように、インクシートの張力の調整が離散的になる。また、インクシートロールの巻き径が大きくなるなどトルク負荷の制御範囲が広くなると、供給側および巻き取り側のインクシート軸に設けるトルクリミッタの数を増加させる必要があり、コストがかかるという問題があった。
【0014】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、安価な構成でインクシートの張力の制御を適切に行うことを特徴としており、具体的には、図8の実線で示されるように、供給側インクシートロールの巻き径の大小に関わらずインクシートの張力の制御を適切に行うことを特徴としている。以下に、その詳細について説明する。
【0015】
〈実施形態〉
図1は、本発明の実施形態によるサーマルプリンタの概略構成図である。図1に示すように、プラテンローラ2に対向する位置に、当該プラテンローラ2に対して当接・離間可能なサーマルヘッド1が配置されている。印画紙17(被転写材)は、印画前の印画紙17を搬送する給紙ローラ11aと11bとの間、サーマルヘッド1とプラテンローラ2との間、印画後の印画紙17を搬送する排紙ローラ12aと12bとの間を、図中の右側から左側へと搬送される。
【0016】
一方、インクシート3は、供給側インクシートロール8から、インクシート3の経路を形成するガイドピン10b、サーマルヘッド1とプラテンローラ2との間、およびガイドピン10aを介して巻き取り側インクシートロール5へと搬送される。巻き取り側インクシートロール5は、巻き取り部6に連結されたギア4に連動して回転してインクシート3を巻き取る。また、供給側インクシートロール8は、供給側トルク負荷調整部9に連結されたギア7に連動して回転してインクシート3をサーマルヘッド1へと供給している。供給側トルク負荷調整部9には、記憶回路14、制御回路15(制御部)、モータドライバ16が接続されており、これらについては後に詳述する。
【0017】
インクシート3には複数の色層が塗膜されており、サーマルヘッド1とプラテンローラ2との間において、サーマルヘッド1がプラテンローラ2に当接したときに、サーマルヘッド1の熱によってインクシート3の色層が印画紙17に熱転写されて印画が行われる。
【0018】
図2は、本発明の実施形態による供給側トルク負荷調整部9の構成の一例を示す図である。図2に示すように、供給側トルク負荷調整DCモータ18(DCモータ)は、ベルト19およびギア20,21を介して供給側インクシート軸22(芯軸)に連結されている。また、ギア20にはスリットプレート付きギア23が連結されており、スリットプレート付きギア23には当該スリットプレート付きギア23の回転数を検出する回転数検出センサ24が設けられている。すなわち、スリットプレート付きギア23は供給側インクシートロール8の供給側インクシート軸(芯軸)に連動して回転するように配置され、周囲に複数のスリットを形成したプレートを有しており、回転数検出センサ24はスリットプレート付きギア23の回転時に、スリットの数を計測してスリットプレート付きギア23の回転数を検出する。
【0019】
図3は、本発明の実施形態によるサーマルプリンタの機能構成の一例を示すブロック図である。図3に示すように、回転数検出センサ24は、供給側インクシート軸22に連動して回転するスリットプレート付きギア23のスリットの数を計測してスリットプレート付きギア23の回転数を検出した結果を制御回路15に伝送する。制御回路15は、受け取った回転数に基づいて供給側インクシートロール8の巻き径を算出し、当該算出結果に基づいて供給側インクシート軸22のトルク負荷を制御する制御信号を生成する。すなわち、制御回路15は、インクシート3が供給側インクシート軸22に巻き回されて形成された供給側インクシートロール8の巻き径に基づいて、供給側インクシート軸22のトルク負荷を制御する制御信号を生成する。このとき、スリットプレート付きギア23および回転数検出センサ24はエンコーダとして機能し、供給側インクシートロール8の巻き径は、エンコーダの検出結果を用いて制御回路15にて算出される。
【0020】
制御回路15にて生成された制御信号は、供給側トルク負荷調整DCモータ18を駆動させるモータドライバ16に伝送される。供給側トルク負荷調整DCモータ18は、ベルト19、ギア20,21を介して供給側インクシート軸22に機械的に直結されており、モータドライバ16から伝送された制御信号に基づいて、供給側インクシート軸22に対して直接トルク負荷を付与する。以上の機能を動作させることによって、インクシート3は適切な張力でサーマルヘッド1に供給された後に巻き取り側インクシートロール5に巻き取られる。なお、供給側トルク負荷調整DCモータ18は、ベルト19、ギア20,21を介さず直接供給側インクシート軸22に連結してもよく、その場合スリットプレー付きギア23は供給側トルク負荷調整DCモータ18または供給側インクシート軸22のいずれかに連結するように配置してもよい。
【0021】
上記では、スリットプレート付きギア23および回転数検出センサ24をエンコーダとしたが、インクシート3に所定の間隔で設けられたインクマークを検出するインクマークセンサ13をエンコーダとしてもよい。この場合、図3に示す機能構成は、回転数検出センサ24に替えてインクマークセンサ13となる。インクマークとは、例えばインクシート3に塗膜されたイエロー、マゼンタ、シアン、保護層のうちのイエローの先頭部分にスタート用(頭出し用)の黒色のマークのことである。インクマークセンサ13は、インクシート3に設けられたインクマークをカウントし、その結果を制御回路15に伝送する。制御回路15は、インクマークセンサ13によるインクマークのカウント結果からインクシート3の使用量を把握することができ、インクマークセンサ13の検出結果に基づいて供給側インクシートロール8の巻き径を算出する。なお、インクマークのカウント結果から得られたインクシート3の使用量は、印画の完了ごとにインクシート3の使用量として記憶させてもよく、制御回路15は印画の完了ごとに記憶させたインクシート3の使用量に基づいて供給側インクシートロール8の巻き径を把握してもよい。
【0022】
図4は、本発明の実施形態による供給側トルク負荷調整DCモータ18における制御モードの一例を示す図であり、供給側トルク負荷調整DCモータ18をパルス幅変調方式によって制御信号のデューティー比を制御している。図4に示すように、制御回路15からモータドライバ16に伝送される制御信号はM+とM−との2つの信号が入力され、例えば10通りのモード制御信号が入力される。図中に記載のCW(clockwise)は時計回りの回転(実際にインクシート3が供給される回転と同じ方向の回転)、CCW(counterclockwise)は反時計回りの回転(CWとは逆方向の回転)を示し、また、BRAKEは停止、FREEはモータ制御を行わないことを示している。
【0023】
図5は、本発明の実施形態による供給側トルク負荷調整DCモータ18における制御信号の一例を示す図である。図5の上段はM−の制御信号の波形を示しており、M−の制御パルス波形のデューティー比は、以下の式(1)のように示される。
(B/A)×100=D1(%)・・・(1)
また、図5の下段はM+の制御信号の波形を示しており、M+の制御パルス波形のデューティー比は、以下の式(2)のように示される。
(C/A)×100=D2(%)・・・(2)
図6は、図4に示すモード10の制御方式によるM−の各デューティー比D1における、供給側インクシートロール8の巻き径とインクシート3の張力の制御時に付与されるトルク負荷との関係との関係を示した図であり、図中の太線はインクシート3に対して最適な張力を付与するトルク負荷を示している。図6に示すように、任意の供給側インクシートロール8の巻き径におけるデューティー比D1と太線との交点が、インクシート3に対して最適な張力を付与するトルク負荷となる。制御回路15は、図6の太線に示すようなインクシート3の張力の最適化に必要なトルク負荷が得られるようにデューティー比D1を制御する。このようにデューティー比を制御することによって、実際のM−の制御信号による制御は、例えば図4に示すようにBRAKE、CCW、FREEを繰り返すこととなる。
【0024】
制御回路15では、図6の最適化に必要なカーブ(太線)に沿うように、供給側インクシートロール8の巻き径に応じたD1(M−の制御パルス波形のデューティー比)を予め図4に示すテーブル内に記憶させておくか、または算出によってD1を最適な状態となるように変化させて制御することによって、最適なインクシート3の張力の制御が可能となる。なお、図6ではM−の制御信号のデューティー比について図示しているが、M+の制御信号についても最適なトルク負荷が得られるようにデューティー比が制御される。
【0025】
上記の制御方法によれば、例えば、図4のモード6の制御信号(M−、M+)がモータドライバ16に伝送された場合は、供給側トルク負荷調整DCモータ18は、供給側インクシートロール8からインクシート3が供給される方向とは逆の方向に回転しようとし、一時的にBRAKE以上の負荷を供給側インクシート軸22に付与することが可能となる。すなわち、制御回路15は、供給側トルク負荷調整DCモータ18の回転方向を、供給側インクシートロール8からインクシート3が供給される方向である順方向と、当該順方向とは逆方向との両方向の回転制御を行うことでトルク負荷を所望の値に制御することが可能である。
【0026】
以上のことから、トルクリミッタを用いずに安価な構成でインクシートの張力の制御を適切に行うことが可能となり、安定した印画画質を保つことができる。また、サーマルプリンタ全体のコストを低減することが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1 サーマルヘッド、2 プラテンローラ、3 インクシート、4 ギア、5 巻き取り側インクシートロール、6 巻き取り部、7 ギア、8 供給側インクシートロール、9 供給側トルク負荷調整部、10a,10b ガイドピン、11a,11b 給紙ローラ、12a,12b 排紙ローラ、13 インクマークセンサ、14 記憶回路、15 制御回路、16 モータドライバ、17 印画紙、18 供給側トルク負荷調整DCモータ、19 ベルト、20,21 ギア、22 供給側インクシート軸、23 スリットプレート付きギア、24 回転数検出センサ、25,26 ギア、27,28 トルクリミッタ、29 インクシート軸、30 切替機構。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクシートに塗膜された複数の色層を被転写材に順次転写することによって印画を行うサーマルプリンタにおいて、
前記インクシートが芯軸に巻き回されて形成された供給側インクシートロールの巻き径に基づいて、前記芯軸のトルク負荷を制御する制御信号を生成する制御部と、
前記芯軸に機械的に直結され、前記制御信号に基づいて、前記芯軸に対して直接前記トルク負荷を付与するDCモータと、
を備える、サーマルプリンタ。
【請求項2】
エンコーダをさらに備え、
前記供給側インクシートロールの巻き径は、前記エンコーダの検出結果を用いて算出されることを特徴とする、請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項3】
前記エンコーダは、
前記供給側インクシートロールの前記芯軸に連動して回転するように配置され、周囲に複数のスリットを形成したプレートを有するスリットプレート付きギアと、
前記スリットプレート付きギアの回転時に、前記スリットの数を計測して前記スリットプレート付きギアの回転数を検出する回転数検出センサと、
を備え、
前記制御部は、前記回転数に基づいて前記供給側インクシートロールの前記巻き径を算出することを特徴とする、請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項4】
前記エンコーダは、
前記インクシートに所定の間隔で設けられたインクマークを検出するインクマークセンサ
を備え、
前記制御部は、前記インクマークセンサの検出結果に基づいて前記供給側インクシートロールの前記巻き径を算出することを特徴とする、請求項2に記載のサーマルプリンタ。
【請求項5】
前記制御部は、パルス幅変調方式によって前記制御信号のデューティー比を制御することを特徴とする、請求項1に記載のサーマルプリンタ。
【請求項6】
前記制御部は、前記DCモータの回転方向を、前記供給側インクシートロールから前記インクシートが供給される方向である順方向と、当該順方向とは逆方向との両方向の回転制御を行うことを特徴とする、請求項1または5に記載のサーマルプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−156759(P2011−156759A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−20450(P2010−20450)
【出願日】平成22年2月1日(2010.2.1)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】