説明

サーマルヘッド及び光ディスク装置

【課題】感熱記録媒体との密着性を向上すること。
【解決手段】感熱記録媒体(12)を加熱する加熱部は、ヘッド支持部材(62)に接続された保持部材に対し、感熱記録媒体に平行な面内の感熱記録媒体の移動方向に平行な第1軸及びこれに直交する第2軸の少なくとも一方の軸回りに回動可能に保持されている。従って、感熱記録媒体の反りや歪により、感熱記録媒体の表面に傾斜が生じていたとしても、その傾斜に合わせて加熱部の当接面が回動し、感熱記録媒体と加熱部の密着性を向上することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルヘッド及び光ディスク装置に係り、更に詳しくは、感熱記録媒体を加熱することにより可視情報を印刷するサーマルヘッド、及び該サーマルヘッドを備えた光ディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタル技術の進歩及びデータ圧縮技術の向上に伴い、音楽、映画及び写真などの情報(以下「コンテンツ」ともいう)を記録するための情報記録媒体として、CD(compact-disc)、DVD(digital versatile disc)などの光ディスクが注目されるようになり、その低価格化とともに、光ディスクにコンテンツを記録するための情報記録装置として光ディスク装置が普及するようになった。
【0003】
現在市販されている記録可能な光ディスク(以下「記録型光ディスク」ともいう)には、CD−R(CD−recordable)、DVD+R及びDVD−Rなどの一度だけ記録できるいわゆる追記型光ディスクと、CD−RW(CD−rewritable)、DVD+RW及びDVD−RWなどの書換え可能な光ディスクとがある。
【0004】
ところで、再生専用のCDやDVD等の光ディスクを製造する場合には、記録されているデータに関する情報、例えば、CD−ROMにはタイトル、製造者名、製造年月日等の情報が印刷されたラベルが貼着され、音楽用CDには曲名や絵柄などが印刷されたラベルが貼着されているのが一般的である。
【0005】
一方、記録型光ディスクには、ユーザ毎に異なる内容のデータが記録されるため、予め記録されたデータに関する情報が印刷されたラベルを、光ディスクに貼着することはできず、光ディスクのケースにユーザ自身が記録されたデータに関する情報を書き込んだり、データに関する情報を印刷したラベルを貼着するのが一般的であった。
【0006】
そこで、予め記録型光ディスクの、いわゆるレーベル面に感熱シート(例えば特許文献1参照)を貼着した光ディスクに対し、その光ディスクに記録されているデータに関する情報を印刷することが可能なサーマルヘッドが搭載された光ディスク装置が提案された(例えば特許文献2参照)。しかしながら、特許文献2に記載されている光ディスク装置では、光ディスクに経年変化などによる反りや歪が生じた場合には、サーマルヘッドの加熱部と感熱シートとの間の密着性が低下し、可視情報の印刷がかすれたり、不明瞭になるおそれがある。
【0007】
【特許文献1】特開2004−1427号公報
【特許文献2】特開2000−173238号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる事情の下になされたもので、その第1の目的は、感熱記録媒体との密着性を向上することが可能なサーマルヘッドを提供することにある。
【0009】
また、本発明の第2の目的は、光ディスクに貼着された感熱シートに高品質な可視情報の印刷をすることが可能な光ディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、移動している感熱記録媒体を加熱して可視情報を記録するサーマルヘッドであって、ヘッド支持部材に対して接続される保持部材と;前記感熱記録媒体に対する加熱部と;前記保持部材に前記加熱部を接続するとともに、前記感熱記録媒体に平行な面内の前記感熱記録媒体の移動方向に平行な第1軸及びこれに直交する第2軸の少なくとも一方の軸回りに回動可能に前記加熱部を保持させる接続部と;を備えるサーマルヘッドである。
【0011】
これによれば、感熱記録媒体を加熱する加熱部は、ヘッド支持部材に接続された保持部材に対し、感熱記録媒体に平行な面内の感熱記録媒体の移動方向に平行な第1軸及びこれに直交する第2軸の少なくとも一方の軸回りに回動可能に保持されている。従って、感熱記録媒体の反りや歪により、感熱記録媒体の表面に傾斜が生じていたとしても、その傾斜に合わせて加熱部の当接面が回動し、感熱記録媒体と加熱部の密着性を向上することが可能となる。
【0012】
この場合において、請求項2に記載のサーマルヘッドの如く、前記接続部はボールジョイントを含むこととすることができる。
【0013】
請求項1及び2に記載の各サーマルヘッドにおいて、請求項3に記載のサーマルヘッドの如く、前記加熱部は、前記感熱記録媒体に対する当接面が、前記移動方向に沿って見て前記感熱記録媒体に対して凸な曲面に形成されていることとすることができる。
【0014】
請求項1に記載のサーマルヘッドにおいて、請求項4に記載のサーマルヘッドの如く、前記接続部は、前記保持部材に対してその一端部を中心として前記第2軸回りに回動可能に接続され、その他端に前記加熱部が取り付けられたアームを含み、前記加熱部は、前記感熱記録媒体に対する当接面が、前記移動方向に沿って見て前記感熱記録媒体に対して凸な曲面に形成されていることとすることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、感熱記録媒体を加熱して可視情報を記録するサーマルヘッドであって、前記感熱記録媒体に当接される当接面が球面であり、該当接面を介して前記感熱記録媒体を加熱するための加熱部を備えるサーマルヘッドである。
【0016】
これによれば、加熱部の当接面が球面であるため、感熱記録媒体と加熱部の密着性を向上することが可能となる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、感熱記録媒体を加熱して可視情報を記録するサーマルヘッドであって、前記感熱記録媒体に当接する保護体と;前記保護体を回転可能に収納するハウジングが形成されたブラシと;前記ブラシを介して前記保護体を加熱する発熱体と;を備えるサーマルヘッドである。
【0018】
これによれば、感熱記録媒体に発熱体からの熱を伝える保護体が回転するため、保護体と感熱記録媒体との間に生じる摩擦を低減でき、結果として感熱記録媒体と加熱部の密着性を向上することが可能となる。
【0019】
この場合において、請求項7に記載のサーマルヘッドの如く、前記保護体は、球状又は円柱状であることとすることができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、基板に形成された加熱部を感熱記録媒体に当接して、該感熱記録媒体に可視情報を記録するサーマルヘッドにおいて、前記基板が弾性を有することを特徴とするサーマルヘッドである。
【0021】
これによれば、感熱記録媒体に当接する加熱部が弾性を有する基板に形成されている。従って、加熱部が感熱記録媒体に当接する際には、加熱部が感熱記録媒体に生じた反りや歪みに応じて撓むため、感熱記録媒体と加熱部の密着性を向上することが可能となる。
【0022】
請求項9に記載の発明は、光ディスクに対し少なくともデータの記録を行なう光ディスク装置であって、前記光ディスクに貼着された感熱シートに可視情報を記録する請求項1〜8のいずれか一項に記載のサーマルヘッドと;前記サーマルヘッドを駆動して、前記光ディスクに貼着された感熱シートに可視情報を記録する駆動装置と;前記光ディスクにデータの記録を行う処理装置と;を備える光ディスク装置である。
【0023】
これによれば、駆動装置により、請求項1〜8に記載のサーマルヘッドが駆動されることにより、光ディスクに貼着された感熱シートに可視情報が印刷されるので、光ディスクに貼着された感熱シートに高品質の可視情報の印刷をすることが可能となる。
【0024】
この場合において、請求項10に記載の光ディスク装置の如く、前記サーマルヘッドの発熱部を前記感熱シートに対し付勢する付勢機構を更に備えることとすることができる。
【0025】
上記請求項9及び10に記載の各光ディスク装置において、請求項11に記載の光ディスク装置の如く、前記感熱記録媒体に可視情報の記録を行う際に、前記光ディスクを低速で回転する低速回転機構を更に備えることとすることができる。
【0026】
上記請求項9〜11に記載の各光ディスク装置において、請求項12に記載の光ディスク装置の如く、前記サーマルヘッドは、前記光ディスクの半径方向に複数個配置されていることとすることができる。
【0027】
上記請求項9〜11に記載の各光ディスク装置において、請求項13に記載の光ディスク装置の如く、前記サーマルヘッドは、記録範囲が相互に重複するように複数個配置されていることとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施形態を図1〜図9に基づいて説明する。図1には、本発明の一実施形態に係る光ディスク装置100の概略斜視図が示されている。
【0029】
この図1に示される光ディスク装置100は、矩形(長方形)の開口部91aが形成された筐体91と、光ディスク10に対する情報の記録及び再生などを行なう光ディスク装置本体90と、前記開口部91aを介して矢印A、A’方向(±X方向)に往復移動可能に前記筐体91に装着されたトレイ80と、該トレイ80が筐体91内に収納されたときに前記開口部91aを閉塞するドア82とを備えている。ここでは、一例として、CD−R、CD−RWなどのCD系の規格に準拠した情報記録媒体が光ディスク10として用いられるものとする。
【0030】
前記トレイ80は、例えば射出成形などにより成形されたプラスチック部品であり、不図示の駆動機構により矢印A及びA’方向に駆動される。このトレイ80の上面(+Z側面)には段つきのほぼ円形の凹部80bが形成されている。このうち、1段目の凹部には、例えば12センチCDなどの光ディスクがセットされ、2段目の凹部には、例えば8センチCDなどの光ディスクがセットされる。
【0031】
前記ドア82は、トレイ80の+X側の端部に取り付けられ、トレイ80に固定されている。そして、トレイ80が筐体91内に収納されると、筐体91の開口部91aに嵌合するよう設定されている。
【0032】
前記筐体91内には、図2に示されるように、前記光ディスク装置本体90を構成する、光ディスク10を回転可能に支持するターンテーブル32、前記トレイ80をA、A’方向に駆動する不図示のトレイ駆動装置、前記光ディスク10の+Z方向の上面に貼着された感熱シート12に可視情報を印刷するプリンタユニット50、前記光ディスク10をユーザデータ等の書込み速度と比較して低速で回転させる回転ローラ55a及び、処理装置20(図2には不図示、図7参照)などが収容されている。
【0033】
前記ターンテーブル32は、前記トレイ80の−Z側に配置され、その回転中心部にボス32aが設けられている。この、ターンテーブル32は、前記処理装置20を構成する後述するスピンドルモータ22の回転軸に固定され、該スピンドルモータ22によって回転駆動される。本実施形態では、トレイ80が収納位置(図2に破線で示される位置)に到達すると、このターンテーブル32が、不図示の上下動機構により上昇し、光ディスク10の中心孔に、前記ターンテーブル32のボス32aが嵌合する。そして、不図示のクランパによって、光ディスク10はターンテーブル32に押し付けられる。すなわち、ターンテーブル32と前記クランパとによって光ディスク10が狭持され、この位置が光ディスク10の回転位置となる。
【0034】
前記ターンテーブル32の−X側には、光ディスク10の記録面にレーザ光を集光する対物レンズLSを備えた光ピックアップ装置23が配置されている。
【0035】
なお、トレイ80には、筐体91内に収納されるときに、ターンテーブル32、及び光ピックアップ装置23などに対して機械的に干渉しないように、Z軸方向に貫通する開口部80aが形成されている。
【0036】
前記プリンタユニット50は、前記ターンテーブル32の+X側で、光ディスク10の+Z側に配置されている。このプリンタユニット50は、図3に示されるサーマルヘッド51、支持機構60、及び該支持機構60を介してサーマルヘッド51を駆動するヘッド駆動装置54(図3には不図示、図7参照)などを含んで構成されている。
【0037】
前記支持機構60は、図3及び図4に示されるように、アーム61とブラケット62などから構成され、前記アーム61は略直方体状で、長手方向をY軸方向として筐体91から延びる不図示の支持部に、X軸に平行な軸64を中心に回動可能に接続されている。
【0038】
前記ブラケット62は、図4に示されるように、断面略コ字状で、サーマルヘッド51の支持板52が固定される固定部62aと、該固定部62aのY軸方向両端から+Z方向に延びる連結部62b、62cを備え、該連結部62b、62cは、前記アーム61に設けられたZ軸方向に貫通する貫通窓61aに挿嵌されている。そして、該貫通窓の+Y方向及び−Y方向の壁面に設けられた軸孔61b、61cによって長手方向をY軸方向として支持される軸62dを介して、アーム61に前記軸62dを中心に回動可能に支持されている。このアーム61は前記ヘッド駆動装置54により回転駆動される。
【0039】
前記連結部62bは前記連結部62cよりもやや長く設定され、固定部62aがアーム61の長手方向の面に対し9度程度傾斜するように設定されている。これにより、光ディスク10に貼着された感熱シート12への印刷時には、軸62dが光ディスク10と平行になり、サーマルヘッド51のヘッド52aが感熱シート12に約9度の角度で当接するとともに、ブラケット62が良好に軸62dを中心に回動するようになっている。
【0040】
前記サーマルヘッド51は、略長方形の板状体で前記ブラケット62の固定部62aの−Z側に長手方向をX軸方向として固定された支持板52と、図5に示されるように、該支持板52の−Y側端部に光ディスク10の半径に沿って配置された複数のヘッド52aを備えている。
【0041】
前記ヘッド52aは、図6の断面図に示されるように、−Z側の一端に球状の頭部を有し、他端が前記支持板52に接続される支持部材66と、+Z側の面に前記球状の頭部を回転自在に収納するハウジング部65aが形成され、−Z側の面に蓄熱層としてのガラス板やグラス繊維からなるグレーズ層64が形成された、平面視略正方形のアルミニウム又はアルミナの基板65を備え、前記グレーズ層64の表面上には、電極層63a、発熱体層63、保護層95が成膜されている。
【0042】
更に詳述すると、電極層63aは、前記支持板52に設けられた、図7に示されるヘッド制御回路52bと、電気エネルギが供給されるための不図示の金ワイヤにより電気的に接続されている。前記発熱体層63には、一例として、1mm2あたり3個〜16個の発熱素子が形成され、各発熱素子は前記電極層63aに電気的に接続されている。前記ヘッド制御回路52bは、各発熱素子に選択的に電気エネルギを供給することにより、前記発熱体層63の温度を所望の温度に制御する。前記保護層95は熱伝導性及び耐磨耗性に優れた材料、例えばカーボン等の材料が用いられる。
【0043】
なお、本実施形態では、直径12センチの光ディスクに対し、300dpiの解像度で印刷するものとし、一辺の長さが0.08mmの基板に上記各層が形成されたヘッドが、半径方向に約450個配置されたサーマルヘッドが用いられるものとする。
【0044】
前記回転ローラ55aは、図2示される矢印Bの方向に不図示のバネにより付勢され、光ディスク10の側面に圧接されている。そして、後述する回転ローラ駆動装置55を構成する不図示のステッピングモータの回転軸に固定されている。
【0045】
前記処理装置20は、図7に示されるように、光ディスク10が支持された前記ターンテーブル32を回転駆動するためのスピンドルモータ22、光ピックアップ装置23、該光ピックアップ装置23をスレッジ方向に駆動するためのシークモータ21、レーザ制御回路24、エンコーダ25、駆動制御回路26、再生信号処理回路28、前記回転ローラ55aを、低速で回転駆動するとともに、図2に示される矢印B、B’の方向(光ディスクの半径方向)に駆動する回転ローラ駆動装置55、バッファRAM34、バッファマネージャ37、インターフェース38、フラッシュメモリ39、CPU40、及びRAM41などを備えている。なお、図7における矢印は、代表的な信号や情報の流れを示すものであり、各ブロックの接続関係の全てを表すものではない。
【0046】
前記光ピックアップ装置23は、半導体レーザ、対物レンズ等を含み前記半導体レーザから出射された光束を光ディスク10の記録層に導くとともに、前記記録層で反射された戻り光束を所定の受光位置まで導く光学系、前記受光位置に配置され前記戻り光束を受光する受光器、及び駆動系(フォーカシングアクチュエータ及びトラッキングアクチュエータ)(いずれも図示省略)などを含んで構成されている。前記受光器は複数の受光素子(又は受光領域)を有し、それぞれでの受光量に応じた信号が再生信号処理回路28に出力される。
【0047】
前記再生信号処理回路28は、前記受光器の出力信号に基づいて、サーボ信号(フォーカスエラー信号やトラックエラー信号など)、アドレス情報、同期信号、及びRF信号などを取得する。ここで得られたサーボ信号は前記駆動制御回路26に出力され、アドレス情報はCPU40に出力され、同期信号はエンコーダ25や駆動制御回路26などに出力される。さらに、再生信号処理回路28は、RF信号に対して復号処理及び誤り検出処理などを行い、誤りが検出されたときには誤り訂正処理を行った後、再生データとして前記バッファマネージャ37を介して前記バッファRAM34に格納する。
【0048】
前記駆動制御回路26は、再生信号処理回路28からのトラックエラー信号に基づいて、トラッキング方向に関する対物レンズの位置ずれを補正するための前記トラッキングアクチュエータの駆動信号を生成するとともに、フォーカスエラー信号に基づいて、対物レンズのフォーカスずれを補正するための前記フォーカシングアクチュエータの駆動信号を生成する。ここで生成された各駆動信号は光ピックアップ装置23に出力される。これにより、トラッキング制御及びフォーカス制御が行われる。また、駆動制御回路26は、CPU40の指示に基づいて、シークモータ21を駆動するための駆動信号、及びスピンドルモータ22を駆動するための駆動信号を生成する。各駆動信号は、それぞれシークモータ21及びスピンドルモータ22に出力される。
【0049】
前記バッファRAM34には、光ディスク10に記録するデータ(記録用データ)、及び光ディスク10から再生したデータ(再生データ)などが一時的に格納される。このバッファRAM34へのデータの入出力は、前記バッファマネージャ37によって管理されている。
【0050】
前記エンコーダ25は、CPU40の指示に基づいて、バッファRAM34に蓄積されている記録用データをバッファマネージャ37を介して取り出し、データの変調及びエラー訂正コードの付加などを行ない、光ディスク10への書き込み信号を生成する。ここで生成された書き込み信号はレーザ制御回路24に出力される。
【0051】
前記レーザ制御回路24は、前記光ピックアップ装置23を構成する半導体レーザの発光パワーを制御する。例えば記録の際には、前記書き込み信号、記録条件、及び半導体レーザの発光特性などに基づいて、半導体レーザの駆動信号がレーザ制御回路24にて生成される。
【0052】
前記回転ローラ駆動装置55は、CPU40の指示に基づいて、感熱シート12の印刷時には不図示のバネにより光ディスク10に当接する方向に付勢されている回転ローラ55aを回転駆動するとともに、印刷終了時には図2に示される矢印B’の方向に回転ローラ55aを駆動する。
【0053】
前記インターフェース38は、上位装置110(例えば、パソコン)との双方向の通信インターフェースであり、例えば、ATAPI(AT Attachment Packet Interface)、SCSI(Small Computer System Interface)及びUSB(Universal Serial Bus)などの標準インターフェースに準拠している。
【0054】
前記フラッシュメモリ39には、CPU40にて解読可能なコードで記述された各種プログラム、記録パワーや記録ストラテジ情報を含む記録条件、及び半導体レーザの発光特性などが格納されている。
【0055】
前記CPU40は、フラッシュメモリ39に格納されている上記プログラムに従って前記各部の動作を制御するとともに、制御に必要なデータなどをRAM41及びバッファRAM34に保存する。
【0056】
次に、本実施形態で用いられる光ディスク10の表面に貼着された感熱シート12について説明する。この感熱シート12は、例えば特開2004−1427号公報に開示されているように、サーマルヘッドでの消色及び発色が可能な可逆性感熱記録媒体であり、加熱温度及び加熱後の冷却速度の相違により相対的に発色した状態を形成し得るものである。
【0057】
図1のグラフはこの感熱シート12の発色濃度と温度との関係を示したものである。始めの消色状態Aにある感熱記録媒体を昇温していくと、グラフ中の実線で示されるように温度T1近傍で発色が起こり始め温度T1に達すると感熱記録媒体は発色状態Bとなる。この発色状態Bから急令すると、グラフ中に実線で示されるように常温においても発色状態Cを維持する。また、発色状態Bから徐冷した場合には、グラフ中の破線に示されるように徐冷の過程で消色が起き、消色状態Aに戻る。一方、発色状態Cから再度昇温するとグラフ中の一点鎖線で示されるようにT1よりも低い温度T2で消色が起きて、消色状態Eとなり、ここから降温すると消色状態Aに戻る。従って、光ディスク10に貼着された感熱シート12をサーマルヘッドで加熱することにより、所望の情報を感熱シート12に印刷することが可能となる。
【0058】
次に、上位装置110からの印刷要求コマンドを受信したときの、光ディスク10に貼着された感熱シート12に対する情報の印刷方法について説明する。印刷開始の前提として、ターンテーブル32には感熱シート12が貼着された光ディスク10が載置され、アーム61はヘッド52aが光ディスク10と干渉しない待機位置に待機し、回転ローラ55aは回転ローラ駆動装置55により図2における矢印B’方向に駆動されているものとする。なお、このとき光ピックアップ装置23を所定の位置に退避させてもよい。
【0059】
まず、CPU40は、回転ローラ駆動装置55を介して、回転ローラ55aを図2における矢印Bの方向に駆動して光ディスク10の側面に圧接し、回転ローラ55aを回転駆動する。また、同時に上位装置110から印刷要求コマンドを受信した旨をヘッド制御回路52bに通知する。
【0060】
次に、光ディスク10が所定の回転数(又は速度)に達すると、ヘッド駆動装置54を介して、アーム61を、軸64を中心に正方向(X軸に対し右回り方向)に回転駆動して、サーマルヘッド51のヘッド52aを図3及び図4に示されるように、光ディスク10に貼着した感熱シート12に圧接させる。この場合、支持板52に支持部材66を介して接続された基板65は、支持板52に対し回動自在であるので、一例として、図9に示されるように、光ディスク10に反り又は歪が生じていても、感熱シート12に良好に密着することが可能である。
【0061】
次に、CPU40は上位装置110から送信される印刷データに基づいて、ヘッド制御回路52bを介してヘッド52aの発熱体層63の各素子に選択的に電気エネルギを供給することにより、感熱シート12を所望の温度に加熱し、可視情報の印刷を行う。印刷が終了すると、回転ローラ55aを停止し、アーム61を、軸64を中心に負の方向(X軸に対し左回りの方向)に回転駆動し待機位置まで駆動する。これにより、ヘッド52aは+Z方向に引き上げられ印刷は終了する。
【0062】
以上の説明から明らかなように、本実施形態では、ブラケット62によってヘッド支持部材が実現され、支持板52によって保持部材が実現され、基板65、グレーズ層64、電極層63a、発熱体層63、及び保護層95によって加熱部が実現され、ハウジング65aと支持部材66の球状部によって接続部としてのボールジョイントが実現されている。
【0063】
また、本実施形態では、光ピックアップ装置23と、駆動制御回路26と再生信号処理回路28とCPU40によって実行されるプログラムによって、処理装置が実現されている。しかしながら、本発明がこれに限定されるものではないことは勿論である。すなわち、上記実施形態は一例にすぎず、CPU40によるプログラムに従う処理の少なくとも一部をハードウェアによって構成しても良いし、或いは全てをハードウェアによって構成することとしても良い。
【0064】
以上説明したように、本実施形態に係るサーマルヘッド51によると、ヘッド52aの基板65は支持板52に対し回動自在に接続されている。従って、ヘッド52aを光ディスク10に貼着された感熱シート12に圧接した際に、光ディスク10に反りや歪が生じていても、良好な密着性を得る事が可能となる。
【0065】
また、本実施形態に係る光ディスク装置100によると、サーマルヘッド51のヘッド52aを、光ディスク10に貼着された感熱シート12に良好に密着させることができるため、感熱シート12に高品質な可視情報の印刷をすることが可能となる。
【0066】
なお、本実施形態では、基板65がボールジョイントを介して支持板52に接続されている場合について説明したが、図10に示されるように支持部材66に対し、軸67aを中心にZX平面に平行な面内(感熱シートの移動方向に垂直な面内)で回動可能に接続された接続部としてのブラケット67を介して、基板65を接続してもよい。この場合にも、ヘッド52aを光ディスク10に貼着された感熱シート12に圧接した際に、光ディスク10に反りや歪が生じていても、良好な密着性を得る事が可能となる。
【0067】
また、図11に示されるように、ヘッド52aの保護層95を感熱シート12の移動方向に垂直な断面が感熱シートに対して凸な湾曲形状を含むような形状とすることにより、当接面の単位面積あたりの圧力が向上し、ヘッド52aを光ディスク10に貼着された感熱シート12に圧接した際には、光ディスク10に反りや歪が生じていても、良好な密着性を得る事が可能となる。
【0068】
また、本実施形態の複数のヘッド52aを一体的に構成し、図12に示されるように、ヘッド52aを感熱シート12の移動方向に垂直な断面が感熱シートに対して凸な湾曲形状を含むような形状としても、当接面の単位面積あたりの圧力を向上することができ、光ディスク10に反りや歪が生じていても、良好な密着性を得ることが可能となる。
【0069】
また、図13(A)の斜視図及び図13(B)のZY平面での断面図に示されるように、本実施形態のヘッド52aの形状が半球状になるように、基板65上に、グレーズ層64、電極層63a、発熱体層63及び保護層95を成膜すれば、ヘッド52aの当接面の単位面積あたりの圧力を向上することができ、光ディスク10に反りや歪が生じている場合でも、良好な密着性を得る事が可能となる。
【0070】
また、図14(A)の斜視図及び図14(B)のZY平面での断面図に示されるように、発熱体層63の−Z側に、球状の保護体95を回転可能に保持するケーシング部70aが形成されたブラシ70を介して、保護体95を形成することにより、当接面の単位面積あたりの圧力を向上することができ、光ディスク10に反りや歪が生じている場合でも、良好な密着性を得る事が可能となる。
【0071】
また、前記球状の保護体95を、感熱シートの移動方向に回転可能な円柱状にしてもよく、図15(A)の斜視図及び図15(B)のZX平面での断面図に示されるように、支持板52から延びるサポート72に支持される軸72aにより、感熱シートの移動方向に回転可能に保持するようにしても良い。
【0072】
また、本実施形態では、複数個(約450個)のヘッド52aが支持板52上を半径方向に配置されている場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、図16に示されるように、各ヘッドの加熱範囲が重複するように配置することも可能である。これにより、光ディスクに貼着された感熱シートを隙間なく加熱することが可能となり、結果として、高品質な可視情報の印刷をすることが可能となる。
【0073】
また、本実施形態では上記各層が形成される基板をアルミ又はアルミナ等からなる基板としたが、本発明がこれに限られるものではなく、アルミ又はアルミナ等よりもフレキシブルなシリコンゴム等を用いることも可能である。この場合には、光ディスクの反りや歪に対して変形することができるので、良好な密着性を得る事が可能となる。
【0074】
また、本実施形態では、略正方形の基板に上記各層を成膜する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば円形の基板に上記各層を成膜することとしてもよい。
【0075】
また、本実施形態における光ディスク10に貼着された感熱シート12がクッション性を有する場合には、本発明は更に良好に適用できる。
【0076】
また、上記実施形態では、情報の記録が可能な、CD−R、CD−RW等の光ディスクについて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、CD等の再生専用の光ディスクであってもよい。要は、感熱シートなどの感熱記録媒体が貼着された光ディスクであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0077】
以上説明したように、本発明のサーマルヘッドによれば、感熱記録媒体に精度良く可視情報を印刷するのに適している。また、本発明の光ディスク装置によれば、光ディスクに貼着された感熱シートに精度良く可視情報を印刷するのに適している。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】本発明の一実施形態に係る光ディスク装置を示す概略斜視図である。
【図2】筐体の一部を破断して光ディスク装置本体の内部の一部を示す平面図である。
【図3】図2におけるプリンタユニットの構成を説明するための斜視図である。
【図4】図3におけるサーマルヘッドとアームを説明するための断面図である。
【図5】図4におけるヘッドの配置を説明するための平面図である。
【図6】図5におけるヘッドの構成するための断面図である。
【図7】図1における光ディスク装置の制御回路を示すブロック図である。
【図8】光ディスクに貼着された感熱シートの発色特性を説明するための図である。
【図9】感熱シートにヘッドが圧接された状態を示す図である。
【図10】図6におけるヘッドの変形例1を説明するための図である。
【図11】図6におけるヘッドの変形例2を説明するための図である。
【図12】図6におけるヘッドの変形例3を説明するための図である。
【図13】図13(A)及び図13(B)は図6におけるヘッドの変形例4を説明するための図である。
【図14】図14(A)及び図14(B)は図6におけるヘッドの変形例5を説明するための図である。
【図15】図15(A)及び図15(B)は図6におけるヘッドの変形例6を説明するための図である。
【図16】図6におけるヘッドの配置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0079】
10…光ディスク、12…感熱シート(感熱記録媒体)、20…処理装置、23…光ピックアップ装置(処理装置の一部)、40…CPU(処理装置、駆動装置の一部)、50…プリンタユニット、51…サーマルヘッド、52…支持板(ヘッド支持部材)、52a…ヘッド、52b…ヘッド制御回路(駆動装置の一部)、55…回転ローラ駆動装置(低速回転機構の一部)、55a…回転ローラ(低速回転機構の一部)、60…支持機構、61…アーム(支持機構の一部)、62…ブラケット(支持機構の一部)、63…発熱体層(発熱体)、63a…電極層、64…グレーズ層、65…基板、66…支持部材、95…保護層(保護体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動している感熱記録媒体を加熱して可視情報を記録するサーマルヘッドであって、
ヘッド支持部材に対して接続される保持部材と;
前記感熱記録媒体に対する加熱部と;
前記保持部材に前記加熱部を接続するとともに、前記感熱記録媒体に平行な面内の前記感熱記録媒体の移動方向に平行な第1軸及びこれに直交する第2軸の少なくとも一方の軸回りに回動可能に前記加熱部を保持させる接続部と;を備えるサーマルヘッド。
【請求項2】
前記接続部はボールジョイントを含むことを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
【請求項3】
前記加熱部は、前記感熱記録媒体に対する当接面が、前記移動方向に沿って見て前記感熱記録媒体に対して凸な曲面に形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のサーマルヘッド。
【請求項4】
前記接続部は、前記保持部材に対してその一端部を中心として前記第2軸回りに回動可能に接続され、その他端に前記加熱部が取り付けられたアームを含み、
前記加熱部は、前記感熱記録媒体に対する当接面が、前記移動方向に沿って見て前記感熱記録媒体に対して凸な曲面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のサーマルヘッド。
【請求項5】
感熱記録媒体を加熱して可視情報を記録するサーマルヘッドであって、
前記感熱記録媒体に当接される当接面が球面であり、該当接面を介して前記感熱記録媒体を加熱するための加熱部を備えるサーマルヘッド。
【請求項6】
感熱記録媒体を加熱して可視情報を記録するサーマルヘッドであって、
前記感熱記録媒体に当接する保護体と;
前記保護体を回転可能に収納するハウジングが形成されたブラシと;
前記ブラシを介して前記保護体を加熱する発熱体と;を備えるサーマルヘッド。
【請求項7】
前記保護体は、球状又は円柱状であることを特徴とする請求項6に記載のサーマルヘッド。
【請求項8】
基板に形成された加熱部を感熱記録媒体に当接して、該感熱記録媒体に可視情報を記録するサーマルヘッドにおいて、前記基板が弾性を有することを特徴とするサーマルヘッド。
【請求項9】
光ディスクに対し少なくともデータの記録を行なう光ディスク装置であって、
前記光ディスクに貼着された感熱シートに可視情報を記録する請求項1〜8のいずれか一項に記載のサーマルヘッドと;
前記サーマルヘッドを駆動して、前記光ディスクに貼着された感熱シートに可視情報を記録する駆動装置と;
前記光ディスクにデータの記録を行う処理装置と;を備える光ディスク装置。
【請求項10】
前記サーマルヘッドの加熱部を前記感熱シートに対し付勢する付勢機構を更に備えることを特徴とする請求項9に記載の光ディスク装置。
【請求項11】
前記感熱シートに可視情報の記録を行う際に、前記光ディスクを低速で回転する低速回転機構を更に備えることを特徴とする請求項9又は10に記載の光ディスク装置。
【請求項12】
前記サーマルヘッドは、前記光ディスクの半径方向に加熱部が複数個配置されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の光ディスク装置。
【請求項13】
前記サーマルヘッドは、記録範囲が相互に重複するように加熱部が複数個配置されていることを特徴とする請求項9〜11のいずれか一項に記載の光ディスク装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2006−116827(P2006−116827A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−307484(P2004−307484)
【出願日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】