説明

サーモグラフィーで同定された複合材料の欠陥の特性評価

複合材料物品の欠陥のタイプを同定する方法は、a)物品の表面を急速に加熱し、b)一連のIR画像内のピクセル輝度を記録し、c)IR画像からピクセルの各々について温度対時間データを決定し、d)段階(c)で決定された温度対時間データを使用して、欠陥がある場合にどのタイプの欠陥がピクセルの各々に対応するかを決定することを含んでなる。温度対時間データから導き出されたコントラスト曲線は、欠陥がある場合にどのタイプの欠陥がピクセルの各々に対応するかを決定する際に使用することができる。このコントラスト曲線は、温度対時間データの温度時間曲線から合成基準曲線を差し引くことによって求めることができる。欠陥のタイプは、コントラスト曲線のピークのサイズ及び/又は形状から決定することができる。いくつかの欠陥は、層間剥離、ポロシティ層、及び均一に分布したポロシティである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にサーモグラフィーに関し、より詳細には、複合材料製の物品の欠陥をサーモグラフィーを用いて同定することに関する。
【背景技術】
【0002】
サーモグラフィーは、複合材料製の物品を含む物品内の欠陥の位置を検出するために使用されてきた。複合材料は、ポリマー及びセラミックを含む。サーモグラフィーは、複合材料の欠陥を赤外線サーモグラフィーで得られる特徴的な時間−温度コントラストシグナチャーによって示すために使用されてきた。サーモグラフィーは、熱の流れを変化させる欠陥の位置を検出するために使用されてきたが、どのタイプの欠陥が見つかったのか同定しなかった。複合材料の欠陥には、典型的には、ポロシティ(空隙)及び層間剥離が含まれる。
【0003】
サーモグラフィーは、熱を物体に加え、その結果生じる物体の表面上の温度分布を赤外線カメラで経時的に測定する非破壊評価(NDE)法である。物体内の欠陥に関する情報が時系列的な赤外線の記録から得られる。画像は、それぞれ物体の表面上の小さい単位区域を表す画素すなわちピクセルにデジタル化される。温度/時間信号は、ピクセルごとに、またピクセルパターンで処理及び評価される。
【0004】
固体の非金属複合材料内部の欠陥のサイズ及び「相対的な」位置(深度)を決定することができる、過渡(transient)サーモグラフィーの現代の1つの公知の応用例が、”Nondestructive Testing:Transient Depth Thermography”と題するRingermacher他の米国特許第5711603号に開示されており、その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。この特許文献に記載された方法は、当該の物体の表面を加熱することと、物体の表面上の非常に小さい領域すなわち「解像素子」の経時的な温度変化を記録することとを含む。この方法は、物体の表面の各解像素子又はピクセルにおいて生じる温度変化の注意深い解析に基づいて、欠陥のサイズ及び(すなわち、物体内の他の欠陥に対する)「相対的な」深度を示す値を決定することを可能にする。
【0005】
”Thermal Resonance Imaging Method”と題するRingermacher他の米国特許第6367968号には、赤外線(IR)感応フォーカルプレーンアレイカメラから取得された一連の画像フレームを作成するIR過渡サーモグラフィーシステムが開示されている。”Synthetic Reference Thermal Imaging Method”と題するRingermacher他の米国特許第6367969号は、赤外線(IR)感応フォーカルプレーンアレイカメラから取得された一連の画像フレームを作成するIR過渡サーモグラフィーシステムを開示している。各フレームは、ピクセルの配列から構成され、経過時間に対応するフレーム番号を割り当てられている。多数の連続する画像フレームから、各ピクセルに対応する温度対時間(T−t)データが作成される。また、多数の熱データ画像フレームを解析して物体の厚さを決定し、色分けされた(color-keyed)又はグレースケールで符号化された厚さマップを作成する方法も開示されている。”Synthetic Reference Thermal Imaging Method”と題するRingermacher他の米国特許第6367969号には、赤外線(IR)感応フォーカルプレーンアレイカメラから一連の画像フレームを取得するIR過渡サーモグラフィーシステムが開示されている。順次取得された各画像フレームは、ピクセルの配列から構成され、経過時間に対応するフレーム番号を割り当てられている。合成的に生成された温度−時間基準曲線を使用してピクセルコントラスト対時間データを決定する熱撮像データフレーム解析方法が示されている。米国特許第6367968号及び同第6367969号はいずれも、本願出願人General Electric社に譲渡されており、それらの開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす。
【0006】
物体の表面を、十分な短期間で特定の温度に加熱する。従来は、検査中の物体の厚さ及び材料特性に応じて、石英水銀灯又は高輝度フラッシュランプを使用して、適切な大きさ及び持続期間の熱パルスを生成する。例えばパルスレーザ光など、サーモグラフィーによるモニタリングを可能にするのに十分な温度に表面を急速に加熱できる任意の手段を使用することができる。物体の表面を加熱したら、物体の冷却時に表面の熱変化の画像記録を取得し、解析する。
【0007】
赤外線(IR)ビデオカメラを使用して、加熱後の物体表面の連続した熱画像(フレーム)を記録及び保存する。各ビデオ画像は、固定数のピクセルから構成される。このような文脈では、ピクセルは、撮像されている物体の表面上の、「解像素子」と呼ばれる、矩形区域に対応する画像配列又はフレームにおける小さい画素である。各解像素子における温度は対応するピクセルの輝度に直接関連するので、物体表面上の各解像素子における温度変化は、ピクセルコントラストの変化に関して解析することができる。保存されたIRビデオ画像を使用して、既知の時点を示す特定の画像フレームの平均ピクセル輝度を、同じ時点の個別のピクセル輝度から減算することによって、画像フレーム内の各ピクセルのコントラストを決定する。
【0008】
上記の特許を始めとするいくつかのシステム及び方法は、このデータをどのように使用して、欠陥の深度を同定及び決定するのかを開示している。開示されていないのは、層間剥離及びポロシティなど、どのタイプの欠陥が見つかったかをどのようにして特性評価又は同定するかである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許第5711603号明細書
【特許文献2】米国特許第6367968号明細書
【特許文献3】米国特許第6367969号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
複合材料の欠陥を見つけて、どのタイプの欠陥が見つかったかを同定するための非破壊試験方法を有することが望ましい。欠陥を見つけてポロシティと層間剥離を同定又は同定するための非破壊試験方法を有することが特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0011】
複合材料の欠陥のタイプを同定する方法は、以下の段階、すなわちa)物体の表面を急速に加熱し、b)各々段階(a)で表面を加熱してからの経過時間に順次関連する一連のIR画像内のピクセル輝度を記録し、c)IR画像からピクセルの各々について温度対時間データを決定し、d)段階(c)で決定された温度対時間データを使用して、欠陥がある場合にどのタイプの欠陥がピクセルの各々に対応するかを決定することを含んでなる。
【0012】
ピクセルの各々についてコントラスト曲線はピクセルの各々について温度対時間データから決定することができ、このコントラスト曲線を使用し、欠陥がある場合にどのタイプの欠陥がピクセルの各々に対応するかを決定することができる。コントラスト曲線は、合成熱基準温度対時間データから合成基準曲線を求め、段階(c)の温度対時間データから求められた温度時間曲線から合成基準曲線を差し引くことによって導き出すことができる。
【0013】
欠陥は、大きく幅広いピークを有するコントラスト曲線を特徴とする層間剥離と、コントラスト曲線でリーディングピークの後に浅い谷を有するコントラスト曲線を特徴とする異なるポロシティ層と、コントラスト曲線でリーディングピークの後にプラトーを有するコントラスト曲線を特徴とする異なる長いポロシティ層と、損傷のないコントラスト曲線から大幅に偏位した均一に分布したポロシティコントラスト曲線を特徴とする均一に分布したポロシティとを含むことができる。均一に分布したポロシティコントラスト曲線及び損傷のないコントラスト曲線はそれぞれ、変曲点を有する。
【0014】
方法の一実施形態は、様々なタイプの欠陥及び無欠陥によって特性評価されるピクセルに対応する物体の区域を表示することをさらに含む。方法の別のより具体的な実施形態は、複数のタイプの欠陥及び無欠陥によって特性評価されるピクセルに対応する様々な色で物体の区域を表示することをさらに含む。
【0015】
本発明の前述の態様及び他の特徴は、添付の図面と共に以下の記述において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】例示的な赤外線過渡サーモグラフィーシステム並びに複合材料から作製された物品内の欠陥を決定及び特性評価する方法を示す概略図である。
【図2】図1のシステムによって実施される、欠陥を決定及び特性評価する方法を示す流れ図である。
【図3】あるピクセルに対する例示的な温度対時間曲線のグラフである。
【図4】欠陥を有さない複合材料品のある区域内のあるピクセルに対する例示的なコントラスト曲線のグラフである。
【図5】層間剥離欠陥を有する複合材料品のある区域内のあるピクセルに対する例示的なコントラスト曲線のグラフである。
【図6】異なるポロシティ欠陥層を有する複合材料品のある区域内のあるピクセルに対する例示的なコントラスト曲線のグラフである。
【図7】異なる長いポロシティ欠陥層を有する複合材料品のある区域内のあるピクセルに対する例示的なコントラスト曲線のグラフである。
【図8】均一に分布したポロシティ欠陥を有する複合材料品のある区域内のあるピクセルに対する例示的なコントラスト曲線のグラフである。
【図9】図1に示すサーモグラフィーシステム及び方法を使用して作成され、欠陥のない区域、ポロシティ欠陥の区域、及び層間剥離欠陥の区域を有する複合ガスタービンエンジン燃焼器ライナを示すカラー写真をモノクロで図示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1に示されているのは、厚さ3の複合壁2を有する複合材料1、例えば複合ガスタービンエンジン燃焼器ライナ内の欠陥、例えば層間剥離及びポロシティを同定及び特性評価するためのIR過渡サーモグラフィーシステム10である。フラッシュランプ熱パルス源11は、解析する物体の表面を急速に加熱するために使用される。フラッシュランプ熱パルス源11の1つの適切な構成は、例えば、一組の4個又は8個の高速高出力電力の写真用フラッシュランプであり、それぞれが約4.8キロジュールの出力が可能であり、個別の電源(例えば、Speedotron社(米国イリノイ州シカゴ)製のフラッシュランプなど)を有する。
【0018】
複合材料から作製される物品内の欠陥を決定及び特性評価するための例示的な赤外線過渡サーモグラフィー方法は、図2に示す流れ図のブロックに概説されており、図1に示すシステムを使用する。熱パルスを照射された物体1の表面温度測定値は、物体が加熱された後で冷却し始めたときに、図2の流れ図のブロック20で取得される。表面温度測定は、赤外線(IR)感応フォーカルプレーンアレイカメラ13(例えば、FLIR社から市販のPhoenixカメラ)と、制御電子機器14と、フレームデータメモリ15と、制御コンピュータ及び画像プロセッサ16と、ディスプレイモニタ17とを含むIR感応撮像システムを使用して行われる。熱データの取得は、フラッシュランプが光学起動によって又は他の適切な手段によって発光した直後に開始される。フラッシュランプの発光は、システムコンピュータ上で実行される従来のビデオフレーム取得ソフトウェア(FLIR社のImage Desk(商標)フレーム取得システムで提供されるものなど)又は他の従来のフレーム取得及びフラッシュランプ制御用ソフトウェア、例えば、Thermal Wave Imaging社(米国ミシガン州ラスラップ・ビレッジ)から市販されているソフトウェアなど)によって管理される従来のフラッシュランプ電子機器14を介して制御される。
【0019】
システム制御コンピュータ及び画像プロセッサ16は、本発明の方法によるデジタル画像処理及び表示に加えて、周辺機器制御機能及び通信機能を備えた、特別にプログラムされた汎用デジタルコンピュータである。システムコンピュータは、その後で解析を行うためにメモリ15に保存される物体表面の所定の数の連続した熱画像フレームを取得するようにカメラ、ランプ電子機器14、及びフレームデータメモリ15を制御する。
【0020】
熱撮像処理を始める前に、IRカメラ13をまず、以下に説明する「全視野」2画像較正法を使用して較正する。この好ましい技法は、2つの「黒体」(BB)画像較正基準、すなわち、室温の黒色平板を使用するBB「低」熱源と、加熱された黒色平板を使用するBB「高」熱源を用いる。例えば、BB「低」熱源の較正画像を取得するには、カーボンブラックで被覆した重い銅ベース板をレンズの正面に直接置く。BB「高」熱源の較正画像を取得するには、黒色平板を加熱して、周囲より名目上約10℃高い温度に達した後、カメラレンズを同じ黒色に塗られた平坦な箱に入れる。それにより、カメラは加熱された板をその全視野にわたって撮像する。上記の2画像較正法は1つのタイプにすぎず、ハイコントラストで撮像するため、及び良好な温度精度を得るために重要である画像視野の最大均一性を生み出す任意の較正法を使用することができる。
【0021】
図2を参照すると、流れ図は、合成基準熱撮像法を使用して過渡IRサーモグラフィーを実行する例示的な処理工程を示す。これらの工程は、公知の従来のプログラミング技術を使用してコンピュータ(図1)によって実施されるように示されている。ブロック20において、物体1上の関心領域が同定され(すなわち、関心領域を捕捉するようにIRカメラの焦点を合わせる)、システムオペレータは、例えば材料に関する熱拡散係数など、物体の検査の関連パラメータに関する情報を選択又は入力する。
【0022】
次に、図2のブロック20に示すように、システム制御コンピュータは、フラッシュランプ電子機器に、フラッシュランプを発光させ、フォーカルプレーンアレイIRカメラ13からの画像フレームデータの取得を開始するよう指示する。データの取得は所定の数の連続する画像フレームにわたって続き、次いで、ブロック21に示すように、取得された各画像フレームを連続するフレーム番号Zで同定した後で、画像シーケンスがフレームメモリ15に保存される。撮像処理中に取得された各画像フレームは、NXNピクセルで構成される。各ピクセルは、物体表面上の解像素子に対応し、Nは典型的には、所望の解像度及び精度に応じて128又は256のいずれかである。各ピクセルは、約2バイトの記憶メモリを占有し、例えば12ビット以上の2進数によって表すことができる。保存された画像フレームは、増加するフレーム番号値で順次同定され、全体として、フラッシュランプによって与えられた熱インパルスが衝突した後の所定の時間の物体1の前表面に対する、図3に示す温度対時間(T−t)の履歴レコードを提供するのに役立つ。
【0023】
複合材料の評価中に、制御コンピュータがフラッシュランプ(複数可)の発光を起動すると、画像データフレームがカメラ13から取得され、画像上の各解像素子におけるIR強度はフレームデータメモリ15にデジタルで保存される。又は、IR強度はフレームデータレコーダに記録及び保存されてもよい。ブロック22に示すように、本明細書に開示する例示的な方法では、合成熱基準T−tデータから合成基準曲線(REF曲線)を求める。米国特許第6367968号は、合成熱基準T−tデータ及び基準曲線(REF曲線)を求めるのに適した方法を開示している。合成熱基準T−tデータを決定することは、初期IR「急速」加熱及び第1の飽和されていないデータフレームの時間及びフレーム番号を同定することを含む。「合成」半空間熱減衰T−t基準データ曲線は、合成熱基準T−tデータを決定する際に使用されるべき初期表面温度パラメータ及び閃光持続時間に基づいて生成される。
【0024】
ブロック23及びブロック24に示すように、データの取得は、物体の材料の1つ以上の推定「特性時間」にわたって有意味なT−t(温度対時間)履歴を取得するのに十分な所定の数の連続する画像フレームにわたって、各ピクセルに対して継続する。温度時間曲線(T−t曲線)は、測定されたIR強度から導き出された各ピクセルに対する強度対時間データを表す画像に基づいて求められる。取得された全画像フレーム数は、所望の精度及び画像解像度に応じて変化してよく、1200データ取得フレーム/秒ほどの大きさとすることができる。フレームデータはメモリに保存されてもよく、レコーダは、プロセッサ16の内部の従来のデジタルメモリでもよいし、プロセッサ16がアクセス可能な任意の適切なビデオフレームデータ記憶デバイスでもよい。取得された各連続した熱画像フレームは、実時間の経過に対応する、増加するフレーム番号Zを割り当てられる。次に、結果として生成されるデータフレーム「スタック」が、前述のように、一次元熱流解析手法を利用して解析される。
【0025】
各ピクセルに対するコントラスト対時間データは、強度対時間データ及び合成熱基準T−tデータを使用して算出される。コントラスト曲線C(図4、図5、及び図7を参照)は、ブロック25に示すように、温度時間曲線(TT曲線)から合成基準曲線(REF曲線)を差し引くことによって求められる。ブロック26に示すように、コントラスト曲線Cは、ガウス関数による時間的な平滑化などによって数学的に平滑化される。
【0026】
表面温度データの取得は、フラッシュランプを発光させて物体の表面を照射することによって開始される。次に、フラッシュランプを発光した後で、所定の数の画像フレームが一定時間にわたって記録され、ブロック24に示すように、記録された画像を使用して物体表面上の関心領域にわたってあらゆる基本領域又は「解像素子」について温度−時間(T−t)履歴を開発する。記録された各画像フレームは、強度が、フレームデータが取得された時点における物体の表面温度と相関する、所定のNxN配列の画像ピクセルを含む。各ピクセルは、特定の解像素子に対応する、画像フレーム内の位置指定を有する。
【0027】
取得された画像フレーム内の各ピクセルに対するT−t履歴の熱流解析は、各解像素子位置における欠陥の厚さを決定するためにも使用される。ブロック25に示すように、ピクセルの記録された強度対時間履歴は、図4〜図8に示す例示的なコントラスト曲線Cによって示すように、ピクセルに対するコントラスト対時間データを計算するために使用される。ブロック28に示すように、特定の欠陥は、特性時間TCにわたるコントラスト曲線のピークのサイズ及び形状によって特性評価される。ポロシティは、小さな又は大きな特徴的なリーディングピークLPを有し、その後に、図6に示すような浅い谷ST又は図7に示すようなプラトーPPと深度の表示が続く。層間剥離は、大きく幅広いピークを有し、深度の表示は理想的な板によく似ている。ポロシティは、異なる層内に、又は均一に分布したポロシティとも呼ばれる、より厚いゾーン内に生じることがあり、それぞれ特徴的なシグナチャーを有する。
【0028】
本明細書に開示する例示的な方法では、ピクセルの記録された強度対時間データから合成熱基準T−tデータを減算して、コントラスト対時間データを本明細書において示すコントラスト曲線として算出する。米国特許第6367968号は、合成熱基準T−tデータを算出するのに適した方法を開示していする。合成熱基準を使用して、コントラスト対時間曲線又はコントラスト曲線が、物体の表面の各解像素子に対応する各ピクセルに対して求められる。次に、ピクセルコントラスト曲線データのガウスによる時間的な平滑化を用いて測定値の信号対雑音比を向上させる。図5及び図6に示すように、コントラスト曲線のピークPの形状S及び高さHは、一方が存在する場合は計算されるか又は別の方法で決定され、データ内のピクセルに対して欠陥のタイプ又はその欠如を同定又は特性評価する。種々の欠陥が上記の方法で同定され、次に、ブロック29に示すように物体のピクセルの位置に対してマップされる。
【0029】
図4に示すコントラスト曲線Cは、欠陥がなく損傷のない区域を表しており、これはブロック30に示され且つ図9に示すように、欠陥同定画面40で視覚的にマップされ1ピクセルずつ黒色で示す。図5に示すコントラスト曲線Cは、層間剥離の区域を示す。図6に示す第1のポロシティコントラスト曲線C1及び第2のポロシティコントラスト曲線C2は、2つの異なるポロシティ層を表す。図7に示すコントラスト曲線Cは、小さな又は大きな特徴的なリーディングピークLPと、その後に続くプラトーPPとを含むコントラスト曲線Cを特徴とする異なる長いポロシティ層を表す。
【0030】
図8に示されているのは、均一に分布したポロシティを有する物体の区域を表す均一に分布したポロシティコントラスト曲線C2と比較した、損傷を有さない物体の区域を表す損傷のないコントラスト曲線C1である。コントラスト曲線C1及びC2はいずれも、特性時間TCにわたる変曲点Iを有する略平滑な曲線によって特性評価される。均一に分布したポロシティの区域内のピクセルは、損傷のないコントラスト曲線C1から大幅に偏位した均一に分布したポロシティコントラスト曲線C2によって特性評価される。
【0031】
各ピクセルに対するコントラスト曲線は数学的に、経験的に、又は半経験的に解析され、欠陥がある場合はコントラスト曲線がどの欠陥を表すかを決定する。本明細書において説明される例示的な方法では、上記の解析によって特性評価される各タイプの欠陥に色が割り当てられる。ピクセルは、図1のディスプレイモニタ17の画面上の視覚的表示などの視覚的表示における色コーディングに従ってマップされる。所与の部分又は物体では、物体のうちの最初の1つの又は少数をこのように解析して、種々のタイプのコントラスト曲線、それらのそれぞれの欠陥、及び特性時間TCを求める。次に、この較正段階の後で、処理及び上述の視覚的表示を使用して実働部分(production part)を非常に迅速に解析することができる。
【0032】
図1における物体1、複合ガスタービンエンジン燃焼器ライナの4つの図が図9に表示されており、各図はケースを0度、90度、180度、及び270度回転させたケースの四象限(quadrant)を表すものである。本明細書に示す色コーディングは、正常すなわち欠陥を有さないと指定される区域に対しては灰色、ポロシティの区域に対しては白色、及び層間剥離の区域に対しては黒色である。また、画面上に示されているのは、ケースの全面積に対する色別のパーセンテージである。従って、解析の結果は、物体のNDEに使用するためにオペレータ又は検査員が利用できる。欠陥をより明確に区別するために他の色を使用することができる。1つの提案される色コーディングは、ポロシティ層に対しては黄色、層間剥離に対しては赤色、及び欠陥のない区域に対しては黒色である。
【0033】
本明細書において本発明の好ましい実施形態及び例示的な実施形態と考えられるものについて説明してきたが、本明細書の教示から本発明の他の変更形態が当業者には明らかになるであろう。従って、本発明の真の精神及び範囲に含まれるかかるすべて変更形態が添付の特許請求の範囲で保護されることが望ましい。従って、米国特許証によって保護されることが望ましいものが、以下の特許請求の範囲で定義及び同定される。
【符号の説明】
【0034】
1 複合材料
2 複合壁
3 厚さ
10 IR過渡サーモグラフィーシステム
11 フラッシュランプ熱パルス源
13 赤外線(IR)感応フォーカルプレーンアレイカメラ
14 カメラ、ランプ制御電子機器
15 フレームデータメモリ
16 制御コンピュータ及び画像プロセッサ
17 ディスプレイモニタ
40 欠陥同定画面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合材料物品の欠陥のタイプを同定する方法であって、
a)物品の表面を急速に加熱し、
b)各々段階(a)で表面を加熱してからの経過時間に順次関連する一連のIR画像内のピクセル輝度を記録し、
c)IR画像からピクセルの各々について温度対時間データを決定し、
d)段階(c)で決定された温度対時間データを使用して、欠陥がある場合は、どのタイプの欠陥がピクセルの各々に対応するかを決定する
段階を含んでなる方法。
【請求項2】
段階(d)が、ピクセルの各々について温度対時間データから、ピクセルの各々についてコントラスト曲線を求めること、及びコントラスト曲線を使用し、欠陥がある場合にどのタイプの欠陥がピクセルの各々に対応するかを決定することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
欠陥が層間剥離を含む、請求項2記載の方法。
【請求項4】
層間剥離が、コントラスト曲線内の大きく幅広いピークを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項5】
欠陥が、異なるポロシティ層を含む、請求項2記載の方法。
【請求項6】
異なるポロシティ層が、コントラスト曲線でリーディングピークの後に浅い谷が続くことを特徴とする、請求項3記載の方法。
【請求項7】
欠陥が、異なる長いポロシティ層を含む、請求項2記載の方法。
【請求項8】
異なる長いポロシティ層が、コントラスト曲線でリーディングピークの後にプラトーが続くことを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
欠陥が、均一に分布したポロシティを含む、請求項2記載の方法。
【請求項10】
均一に分布したポロシティが、損傷のないコントラスト曲線から大幅に偏位した均一に分布したポロシティコントラスト曲線を特徴とし、均一に分布したポロシティコントラスト曲線と損傷のないコントラスト曲線のそれぞれが変曲点を有する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
合成熱基準温度対時間データから合成基準曲線を求め、段階(c)の温度対時間データから求められた温度時間曲線から合成基準曲線を差し引くことによってコントラスト曲線を求めることをさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項12】
欠陥が、コントラスト曲線の大きく幅広いピークを特徴とする層間剥離を含む、請求項11記載の方法。
【請求項13】
欠陥が、コントラスト曲線でリーディングピークの後に浅い谷が続くことを特徴とする異なるポロシティ層を含む、請求項11記載の方法。
【請求項14】
欠陥が、コントラスト曲線でリーディングピークの後にプラトーが続くことを特徴とする異なる長いポロシティ層を含む、請求項11記載の方法。
【請求項15】
欠陥が、損傷のないコントラスト曲線から大幅に偏位した均一に分布したポロシティコントラスト曲線を特徴とする均一に分布したポロシティを含み、均一に分布したポロシティコントラスト曲線と損傷のないコントラスト曲線のそれぞれが変曲点を有する、請求項11記載の方法。
【請求項16】
欠陥が、大きく幅広いピークを有するコントラスト曲線を特徴とする層間剥離を含み、
欠陥が、コントラスト曲線のリーディングピークに続く浅い谷を有するコントラスト曲線を特徴とする異なるポロシティ層を含み、
欠陥が、コントラスト曲線のリーディングピークに続くプラトーを有するコントラスト曲線を特徴とする異なる長いポロシティ層を含み、
欠陥が、損傷のないコントラスト曲線から大幅に偏位した均一に分布したポロシティコントラスト曲線を特徴とする均一に分布したポロシティを含み、均一に分布したポロシティコントラスト曲線と損傷のないコントラスト曲線のそれぞれが変曲点を有する、請求項2記載の方法。
【請求項17】
様々なタイプの欠陥及び無欠陥によって特性評価されるピクセルに対応する物品の区域を表示することをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
タイプの欠陥及び無欠陥によって特性評価されるピクセルに対応する様々な色で物品の区域を表示することをさらに含む、請求項17記載の方法。
【請求項19】
合成熱基準温度対時間データから合成基準曲線を求め、段階(c)の温度対時間データから求められた温度時間曲線から合成基準曲線を差し引くことによってコントラスト曲線を求めることをさらに含む、請求項16記載の方法。
【請求項20】
ピクセルのコントラスト曲線を特徴とするタイプの欠陥及び無欠陥に対応する物品の区域を表示することをさらに含む、請求項19記載の方法。
【請求項21】
ピクセルのコントラスト曲線を特徴とするタイプの欠陥及び無欠陥に対応する様々な色で物品の区域を表示することをさらに含む、請求項20記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−516837(P2011−516837A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501860(P2011−501860)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【国際出願番号】PCT/US2009/034385
【国際公開番号】WO2009/123799
【国際公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】