説明

サーモパイル

【課題】赤外線に対する感度を向上させたサーモパイルを提供する。
【解決手段】サーモパイル1は、シリコン基板と、シリコン基板の表面に積層された絶縁膜3とを有し、シリコン基板の裏面中央をエッチングにより除去して空洞部を設けることで、平面視の形状が四角形に形成されたメンブレン5を設けるとともに、このメンブレン5の周部をヒートシンクとしてある。絶縁膜3の表面には、それぞれ2種類の導電片8,9を接合して構成された複数の熱電対7を、互いに直列に接続した状態で配置してある。各熱電対7の温接点7aは、四角形のメンブレン5の対角線付近に、対角線の略全体に亘って配置してある。また各熱電対7の冷接点7bはメンブレン5の周部の領域に配置してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を検出するためのサーモパイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、赤外線を検出するセンサとして、赤外線受光領域で受光した赤外線を一旦熱に変換し、その熱を熱電対により電気信号に変換して取り出す方式のサーモパイルと呼ばれるセンサが提供されている。
【0003】
図6は従来のサーモパイルの平面図であり、シリコン基板(図示せず)の表面に絶縁膜21を積層するとともに、シリコン基板の裏面中央をエッチングにより除去して平面視略正方形の空洞部を形成することで、空洞部に臨む絶縁膜21の部位から平面視略正方形のメンブレン22を形成してある。またメンブレン22の中央部には、絶縁膜21に比べて赤外線の吸収率が高い材料により薄膜状に形成された赤外線吸収膜23が積層されている。そして、絶縁膜21の表面には異種の材料を接合して構成される複数の熱電対24が、平面視略正方形のメンブレン22の各辺に沿って配置されている。各熱電対24は、それぞれ異なる材料(例えばポリシリコンと金属膜)により帯板状に形成された導電片25,26の一端側を接合して構成され、各導電片25,26がメンブレン22の各辺に対して略直交するように配置されており、各熱電対24の温接点24aを赤外線吸収膜23(すなわちメンブレン22)上に配置するとともに、冷接点24bをメンブレン22の周部に配置してある。また、複数の熱電対24は互いに直列に接続されており、絶縁膜21の表面に形成された電極パッド27a,27bの間に直列接続された複数の熱電対24が電気的に接続されている。ここで、シリコン基板は、赤外線吸収領域となるメンブレン22の裏側部分をエッチングにより除去しており、メンブレン22を空間的に分離しているので、メンブレン22の熱が逃げにくくなる。またメンブレン22の周部、すなわちシリコン基板と接合している部分は、周囲温度と略同じ温度となるようにヒートシンクとなっている。
【特許文献1】実用新案登録第2582416号公報(段落番号[0008]−[0010]、及び、第2図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のサーモパイルでは、複数の熱電対24の温接点24aが、平面視略正方形のメンブレン22の各辺に沿って配置されるとともに、複数の熱電対24の冷接点24bが、メンブレン22の周部に配置されており、メンブレン22で吸収した赤外線を一旦熱に変換し、その熱を各熱電対24により電気信号に変換して取り出すのであるが、メンブレン22の内側領域であってメンブレン22の各辺に沿って複数の温接点24aを配置しているため、メンブレン22の中央部分の熱を有効に利用することができなかった。そのため、メンブレン22に入射した赤外線によって発生した熱エネルギーを電気エネルギーに変換する効率が低く、赤外線に対する感度が低いという問題があった。
【0005】
本発明は上記問題点に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、赤外線に対する感度を向上させたサーモパイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、平面視の形状が四角形のメンブレンを有し、メンブレンの周部をヒートシンクとした基板と、それぞれ2種類の材料を接合して構成され、互いに直列に接続された状態で基板の表面に配置された複数の第1の熱電対とを備え、各第1の熱電対の冷接点をメンブレンの周部に配置するとともに、各第1の熱電対の温接点を、四角形のメンブレンの対角線付近に、対角線の略全体に亘って配置したことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、メンブレンの少なくとも1つの角の近傍で、対角線付近に配置した複数の温接点を複数の列に分岐して配置したことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明は、請求項1又は2の何れか1つの発明において、メンブレンにおいて、各第1の熱電対の温接点と冷接点との間に、第1の熱電対に直列接続された第2の熱電対の温接点を配置したことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明は、請求項3の発明において、第1及び第2の熱電対の内の少なくとも1つを構成する材料に、第2の熱電対を配置することによってメンブレン上に生じた空き領域を埋めるための幅広部を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、第1の熱電対の温接点を、メンブレンの対角線付近に、対角線の略全体に亘って配置しており、メンブレンの外側寄りの領域および内側寄りの領域に温接点がそれぞれ配置されるから、メンブレンに入射した赤外線によって発生した熱エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換することができ、赤外線に対する感度が向上するという効果がある。
【0011】
請求項2の発明によれば、メンブレンの少なくとも1つの角の近傍で、温接点を複数の列に分岐させることによって、温接点を分散して配置することができ、メンブレン上に配置された複数の温接点の間の距離を短くすることで、メンブレンに入射した赤外線によって発生した熱エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換することができ、赤外線に対する感度が向上するという効果がある。
【0012】
請求項3の発明によれば、第1の熱電対の温接点と冷接点との間の領域に入射した赤外線によって発生した熱エネルギーを、第2の熱電対により電気エネルギーに変換することができるので、入射した赤外線によって発生する熱エネルギーをさらに効率良く電気エネルギーに変換することができ、赤外線に対する感度がさらに向上するという効果がある。
【0013】
請求項4の発明によれば、温接点が対角線付近に配置される第1の熱電対の温接点と冷接点との間に、第2の熱電対の温接点を配置したために、メンブレン上に熱電対が配置されていない空き領域が生じるが、この空き領域を利用して、少なくとも1つの熱電対を構成する材料に幅広部を設けているので、サーモパイル全体の抵抗値が小さくなり、サーモパイルのS/N比を向上させることができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
(実施形態1)
本発明の実施形態1を図1及び図2に基づいて説明する。図1はサーモパイル1の平面図である。また、図2(a)はサーモパイル1を用いた赤外線検出器11の分解斜視図、同図(b)は赤外線検出器11の断面図である。
【0016】
サーモパイル1は、半導体基板2と、半導体基板2の表面に形成された絶縁膜3と、絶縁膜3の表面に形成された複数個の熱電対7(第1の熱電対)とを主要な構成として備えている。ここに、半導体基板2と絶縁膜3とで、平面視の形状が四角形のメンブレンを有し、メンブレン上に熱電対7の温接点が配置された基板が構成される。
【0017】
半導体基板2は、熱伝導率の良好な材料(例えばSi)により平面視の形状が略正方形に形成されている。半導体基板2は裏面の中央をエッチングにより除去することで、半導体基板2を厚み方向に貫通する平面視略四角形(本実施形態では略正方形)の空洞部4を形成してあり、空洞部4に臨む絶縁膜3の部位から平面視の形状が略正方形のメンブレン5が形成される。ここで、メンブレン5は赤外線が入射する赤外線吸収領域となり、半導体基板2ではメンブレン5の裏側部分をエッチングにより除去しているので、メンブレン5の熱が逃げにくくなっている。また絶縁膜3においてメンブレン5の周部には熱伝導率の良好な材料で形成された半導体基板2が接合しており、メンブレン5の周部の熱は半導体基板2を介して逃がされ、周囲温度と略同じ温度になっている。すなわち半導体基板2がヒートシンクとして機能している。
【0018】
次に絶縁膜3の表面に形成された熱電対7について説明する。各々の熱電対7は互いに異なる材料で形成された2種類の導電片8,9からなり、本実施形態では一方の導電片8が例えばポリシリコンから、他方の導電片9が例えばアルミニウムなどの金属からそれぞれ形成されている。複数個の熱電対7は、正方形状のメンブレン5の各辺に対して略直角に交差するように、各々の辺に一定のピッチで配列されている。そして、各々の熱電対7を構成する導電片8,9はメンブレン5側の端部が互いに接合されている。また導電片8,9の他方の端部(メンブレン5の外側にある端部)は、それぞれ、隣接する他の熱電対7の導電片9、導電片8に接合されており、複数の熱電対7が直列に接続されている。そして、直列接続された複数の熱電対7の両端部は、それぞれ、絶縁膜3の表面に形成された電極パッド10,10に電気的に接続されている。またメンブレン5の各辺に配置された複数の熱電対7は、各辺の中間位置に近い熱電対7ほど長さ寸法が長くなっており、各熱電対7の温接点7a(導電片8,9の接合部分)はメンブレン5の対角線付近に配置されている。一方、各熱電対7の冷接点7bはメンブレン5の外側領域に、メンブレン5の各辺に近接して配置されている。
【0019】
また、上述のサーモパイル1を用いる赤外線検出器11について図2(a)(b)に基づいて説明する。赤外線検出器11は、略円盤状のステム12と、ステム12を貫通して設けた複数本のリード13と、ステム12の上面にそれぞれ実装されたサーモパイル1および温度補償用のサーミスタ14と、一端側(上側)が閉塞された略円筒状であってサーモパイル1及びサーミスタ14を覆うようにしてステム12の上面に被着されたキャップ15と、キャップ15の上面の孔15aに取着された赤外線フィルタ16とを備えており、サーモパイル1の電極パッド10,10とサーミスタ14の電極(図示せず)とはそれぞれボンディングワイヤ17を介してリード13に電気的に接続されている。
【0020】
而して、この赤外線検出器11では、赤外光を含む外光がキャップ15の孔15aに入射すると、孔15aに取着された赤外線フィルタ16により波長が赤外領域以外の光が減衰されて、赤外光のみが赤外線フィルタ16を透過する。そして、赤外線フィルタ16を透過した赤外光はサーモパイル1に入射し、メンブレン5の温度が上昇する。この時、絶縁膜3の表面に形成された複数の熱電対7により、メンブレン5の温度上昇が電気信号に変換されるので、電極パッド10,10間の起電圧からサーモパイル1に入射した赤外線量を検出することができる。すなわち赤外線検出器11により赤外線を放射する物体の温度を非接触で検出することができる。
【0021】
ここで、本実施形態では平面視の形状が正方形に形成されたメンブレン5の対角線付近に、対角線の略全体に亘って略同じ間隔で温接点7aを配置しており、図1中のA1,A2は対角線付近に配置した温接点7aの群を示している。図6に示す従来のサーモパイルでは、メンブレン5の各辺の近傍に温接点を配置しているため、メンブレン5の中央付近の熱を効率良く電気信号に変換することができないが、本実施形態ではメンブレン5の対角線付近であって、対角線の略全体に略同じ間隔で温接点7aを配置しているので、メンブレン5の外側寄りの領域および内側寄りの領域に温接点7aがそれぞれ配置される。したがって、メンブレン5の中央部を含め、任意の位置の熱を効率良く電気エネルギーに変換することができ、赤外線に対する感度を向上させることができる。
【0022】
なお本実施形態ではメンブレン5の形状を正方形とし、メンブレン5の対角線付近に略同じ間隔で温接点7aを配置しているが、メンブレン5の形状や温接点7aの配置を上記の形態に限定する趣旨のものではなく、四角形のメンブレン5の対角線付近に熱電対7の温接点7aを配置すれば良い。
【0023】
(実施形態2)
本発明の実施形態2を図3に基づいて説明する。本実施形態では、上述した実施形態1のサーモパイル1において、メンブレン5の4つの角の近傍で、対角線付近に配置した複数の温接点7aを、複数(例えば2つ)の列に分岐して配置してある。尚、熱電対7の配置以外は上述した実施形態1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0024】
図3中の温接点群A1,A2は対角線付近に配置された温接点7aの群を示している。また、温接点群A3は一方の対角線付近に配置された温接点7aの内、2列に分岐して配置された角付近の温接点7aの群を示し、温接点群A4は他方の対角線付近に配置された温接点7aの内、2列に分岐して配置された温接点7aの群を示している。
【0025】
実施形態1では対角線付近に温接点7aを配置しているので、一方の対角線付近に配置された温接点7aの内で角付近に配置された温接点7aと、他方の対角線付近に配置された温接点7aの内で角付近に配置された温接点7aとの間隔が広くなるが、本実施形態では角付近に配置される温接点7aを複数の列に分岐させることで、温接点7aを分散させており、メンブレン5上に配置された複数の温接点7aの間の距離を短くできる。したがって、隣接する温接点群A3,A4の間の距離が短くなり、隣接する温接点群A3,A4の中間領域の熱エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換することができるから、実施形態1で説明したサーモパイル1に比べて、赤外線に対する感度をさらに向上させることができる。
【0026】
なお本実施形態ではメンブレン5の4つの角で、対角線付近に配置された複数の温接点7aを複数の列に分岐して配置しているが、少なくとも1つの角付近で温接点7aを複数の列に分岐して配置すれば良く、温接点7aを分散して配置することで、メンブレン5に入射した赤外線による熱エネルギーを効率良く電気エネルギーに変換することができる。
【0027】
(実施形態3)
本発明の実施形態3を図4に基づいて説明する。上述の実施形態1、2では、メンブレン5の対角線付近に複数個の熱電対7の温接点7aを配置しているのに対して、本実施形態では、図4(a)に示すようにメンブレン5の対角線付近に、対角線の略全体に亘って略同じ間隔で複数個の熱電対7の温接点7aを配置するとともに、対角線付近に温接点7aが配置された熱電対7(第1の温接点)の温接点7aと冷接点7bの間に、複数個の熱電対7’(第2の温接点)の温接点7aを配置している。尚、メンブレン5の対角線付近に温接点7aが配置された熱電対7とは別に熱電対7’を配置した点以外は、上述の実施形態1又は2と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0028】
図4(a)中の温接点群A1,A2は対角線付近に配置された温接点7aの群を示している。一方、温接点群A5は、一方の対角線付近に温接点7aが配置された熱電対7の温接点7aと冷接点7bとの間に温接点7aが配置された熱電対7’(第2の熱電対)の温接点7aの群である。また、温接点群A6は、他方の対角線付近に温接点7aが配置された熱電対7の温接点7aと冷接点7bとの間に温接点7aが配置された熱電対7’(第2の熱電対)の温接点7aの群である。なお熱電対7’の冷接点7bは、熱電対7と同様にメンブレン5の外側に配置されている。
【0029】
このように温接点群A5,A6は、第1の熱電対7が備える温接点7aと冷接点7bとの間に温接点7aを配置しているので、メンブレン5において第1の熱電対7の温接点7aと冷接点7bとの間に位置する領域の熱エネルギーを、第2の熱電対7’により電気エネルギーに変換することができ、実施形態1で説明したサーモパイル1に比べて熱エネルギーを電気エネルギーにさらに効率良く変換できるから、赤外線に対する感度をさらに向上させることができる。
【0030】
ところで、図4(a)に示すサーモパイル1では、実施形態1で説明したサーモパイル1において第1の熱電対7の温接点7aと冷接点7bの間に、第2の熱電対7’の温接点7aを配置しているが、図4(b)に示すように、実施形態2で説明したサーモパイル1において、第1の熱電対7の温接点7aと冷接点7bの間に、第2の熱電対7’の温接点7aを配置しても良い。
【0031】
図4(b)中の温接点群A1,A2は対角線付近に配置された温接点7aの群を示している。また、温接点群A3,A4は、メンブレン5の対角線付近に配置する温接点7aの内、メンブレン5の角付近に配置する温接点7aを2列に分岐させて配置した温接点7aの群を示している。一方、温接点群A7は、対角線付近に温接点7aが配置された熱電対7(第1の熱電対)の温接点7aと冷接点7bとの間に温接点7aが配置された熱電対7’(第2の熱電対)の温接点7aの群である。なお第2の熱電対7’の冷接点7bは、熱電対7と同様にメンブレン5の外側に配置されている。
【0032】
このように図4(b)に示すサーモパイル1においても、温接点群A7が、第1の熱電対7が備える温接点7aと冷接点7bとの間に配置されているので、メンブレン5において第1の熱電対7の温接点7aと冷接点7bとの間に位置する領域の熱エネルギーを、第2の熱電対7’により電気エネルギーに変換することができ、実施形態2で説明したサーモパイル1に比べて熱エネルギーを電気エネルギーにさらに効率良く変換できるから、赤外線に対する感度をさらに向上させることができる。
【0033】
(実施形態4)
本発明の実施形態4を図5に基づいて説明する。実施形態3で説明した図4(a)のサーモパイル1では、メンブレン5の対角線付近に、対角線の略全体に亘って略同じ間隔で複数個の熱電対7の温接点7aを配置して温接点群A1,A2を構成するとともに、これら温接点群A1,A2の熱電対7の温接点7aと冷接点7bの間に、温接点7aが配置されるように複数個の熱電対7’を配置しているため、メンブレン5上で熱電対7,7’が配置されていない空き領域が生じるが、本実施形態では、この空き領域を利用し、温接点群A1,A2の熱電対7を構成する導電片8の一端側(温接点側)に他の部位よりも幅広の幅広部8aを設け、幅広部8aで空き領域を埋めている(図5(a)参照)。尚、導電片8の形状以外は上述した図4(a)に示すサーモパイル1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0034】
上述のように本実施形態のサーモパイル1では、メンブレン5において熱電対7,7’が配置されていない空き領域を埋めるように、熱電対7,7’の内の少なくとも一部を構成する材料(本実施形態では熱電対7の材料8)に幅広部8aを設けているので、幅広部8aの断面積を大きくして抵抗値を下げることで、サーモパイル1全体の抵抗値を小さくでき、その結果サーモパイル1のS/N比を向上させることができる。
【0035】
また、実施形態3で説明した図4(b)に示すサーモパイル1においても、メンブレン5の対角線付近に、対角線の略全体に亘って略同じ間隔で複数個の熱電対7の温接点7aを配置して温接点群A1,A2を構成するとともに、メンブレン5の角部付近で温接点7aを複数の列に分岐させて温接点群A3,A4を構成し、これら温接点群A1〜A4の熱電対7の温接点7aと冷接点7bの間に、温接点7aが配置されるように複数個の熱電対7’を配置しているため、メンブレン5上で熱電対7,7’が配置されていない空き領域が生じるが、この空き領域を利用して、温接点群A1,A2の熱電対7を構成する導電片8の一端側(温接点側)に他の部位よりも幅広の幅広部8aを設けて、幅広部8aで空き領域を埋めるようにしても良い(図5(b)参照)。尚、導電片8の形状以外は上述した図4(b)に示すサーモパイル1と同様であるので、共通する構成要素には同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0036】
このサーモパイル1においても、メンブレン5において熱電対7,7’が配置されていない空き領域を埋めるように、熱電対7,7’の内の少なくとも一部を構成する材料(熱電対7の材料8)に幅広部8aを設けているので、幅広部8aの断面積を大きくして抵抗値を下げることで、サーモパイル1全体の抵抗値を小さくでき、その結果サーモパイル1のS/N比を向上させることができる。
【0037】
なお、本発明の精神と範囲に反することなしに、広範に異なる実施形態を構成することができることは明白なので、この発明は、特定の実施形態に制約されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】実施形態1のサーモパイルの平面図である。
【図2】(a)は同上を用いた赤外線検出器の分解斜視図、(b)は断面図である。
【図3】実施形態2のサーモパイルの平面図である。
【図4】(a)(b)は実施形態3のサーモパイルの平面図である。
【図5】(a)(b)は実施形態4のサーモパイルの平面図である。
【図6】従来のサーモパイルの平面図である。
【符号の説明】
【0039】
1 サーモパイル
2 半導体基板(基板)
3 絶縁膜(基板)
5 メンブレン
7 熱電対(第1の熱電対)
7’ 熱電対(第2の熱電対)
7a 温接点
7b 冷接点
8,9 導電片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面視の形状が四角形のメンブレンを有し、メンブレンの周部をヒートシンクとした基板と、それぞれ2種類の材料を接合して構成され、互いに直列に接続された状態で前記基板の表面に配置された複数の第1の熱電対とを備え、各第1の熱電対の冷接点をメンブレンの周部に配置するとともに、各第1の熱電対の温接点を、四角形のメンブレンの対角線付近に、対角線の略全体に亘って配置したことを特徴とするサーモパイル。
【請求項2】
前記メンブレンの少なくとも1つの角の近傍で、対角線付近に配置した複数の温接点を複数の列に分岐して配置したことを特徴とする請求項1記載のサーモパイル。
【請求項3】
前記メンブレンにおいて、各第1の熱電対の温接点と冷接点との間に、第1の熱電対に直列接続された第2の熱電対の温接点を配置したことを特徴とする請求項1又は2の何れか1項に記載のサーモパイル。
【請求項4】
第1及び第2の熱電対の内の少なくとも1つを構成する材料に、前記第2の熱電対を配置することによって前記メンブレン上に生じた空き領域を埋めるための幅広部を設けたことを特徴とする請求項3記載のサーモパイル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−309796(P2007−309796A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−139422(P2006−139422)
【出願日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】