説明

シアニン化合物及び光学記録材料

【課題】高速記録がなされる光学記録媒体の光学記録層に用いる光学記録材料に好適な分解挙動を示すシアニン化合物、及びこれを含有してなる光学記録材料を提供する。
【解決手段】下記一般式(I)で表されるシアニン化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシアニン化合物及び該シアニン化合物を含有してなる光学記録材料に関する。該シアニン化合物は、光学記録材料に好適である他、画像表示デバイスの光学フィルター用の光吸収材料としても有用である。
【背景技術】
【0002】
550〜620nmの範囲に強度の大きい吸収を有する化合物、特に極大吸収(λmax)が550〜620nmにある化合物は、DVD−R等の光学記録媒体の光学記録層を形成する光学記録材料として用いられている。
【0003】
上記の光学記録材料としては、インドール環を有するシアニン化合物が、感度が高く、記録の高速化に対応できるメリットがあるので報告例が多い。例えば、特許文献1及び特許文献2には、N側鎖にメタロセン含有基を導入した低温分解性のシアニン化合物が報告されており、特許文献3には、3位にベンジルを導入した低温分解性のシアニン化合物が報告されている。また、特許文献1には、シアニン化合物のアニオン成分として過塩素酸アニオンを用いることで、更なる低温分解性を実現できることが記載されている。
【0004】
また、光学記録媒体の光学記録層に用いられる光学記録材料は、分解時の発熱が大きいと記録ピットの熱干渉により記録特性が悪化する。従って、光学記録材料としては、分解温度が低いだけではなく、分解熱の小さいものが求められている。例えば、低温分解性に効果のある過塩素酸アニオンを用いたシアニン化合物は、分解時の発熱が大きく、光学記録媒体のジッター特性が悪化する原因となる場合がある。
【0005】
【特許文献1】特開2003−171571号公報
【特許文献2】特開2004−195765号公報
【特許文献3】特開2003−231359号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明の目的は、高速記録がなされる光学記録媒体の光学記録層に用いられる光学記録材料に好適な分解挙動を示すシアニン化合物、及びこれを含有してなる光学記録材料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、検討を重ねた結果、特定のカチオン構造を有するシアニン化合物が、光学記録材料として良好な熱特性を有することを知見した。
【0008】
本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、下記一般式(I)で表されるシアニン化合物、及び、基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層に用いられる、該シアニン化合物を含有してなる光学記録材料を提供するものである。
【0009】
【化1】

【化2】

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高速記録がなされる光学記録媒体の光学記録層に用いる光学記録材料に好適な分解挙動を示すシアニン化合物、及びこれを含有してなる光学記録材料を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
上記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物は、インドール骨格の3位に特定の構造の基を有し、N側鎖に別の特定の基を有することを特徴とする化合物であり、DVD−R用途の光学記録材料に用いられる従来のシアニン系化合物よりも分解温度が低く、高速記録に対応し得るという特徴を有する。
【0012】
上記一般式(I)において、環A及び環Bで表される置換基を有してもよいベンゼン環又はナフタレン環の該置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、トリフルオロメチル等のハロゲン原子で置換されていてもよいアルキル基;フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル等のアリール基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブトキシ、第三ブトキシ、トリフルオロメチルオキシ等のハロゲン原子で置換されていてもよいアルコキシ基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、第二ブチルチオ、第三ブチルチオ、トリフルオロメチルオキシ等のアルキルチオ基;ニトロ基、シアノ基等が挙げられる。
【0013】
上記一般式(I)において、R1〜R4、Y、Y1又はY2で表される炭素数1〜30の有機基としては、特に制限を受けるものではないが、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、アミル、イソアミル、第三アミル、ヘキシル、シクロヘキシル、シクロヘキシルメチル、2−シクロヘキシルエチル、ヘプチル、イソヘプチル、第三ヘプチル、n−オクチル、イソオクチル、第三オクチル、2−エチルヘキシル、ノニル、イソノニル、デシル、ドデシル、トリデシル、テトラデシル、ペンタデシル、ヘキサデシル、ペプタデシル、オクタデシル等のアルキル基;ビニル、1−メチルエテニル、2−メチルエテニル、プロペニル、ブテニル、イソブテニル、ペンテニル、ヘキセニル、ヘプテニル、オクテニル、デセニル、ぺンタデセニル、1−フェニルプロペン−3−イル等のアルケニル基;フェニル、ナフチル、2−メチルフェニル、3−メチルフェニル、4−メチルフェニル、4−ビニルフェニル、3−イソプロピルフェニル、4−イソプロピルフェニル、4−ブチルフェニル、4−イソブチルフェニル、4−第三ブチルフェニル、4−ヘキシルフェニル、4−シクロヘキシルフェニル、4−オクチルフェニル、4−(2−エチルヘキシル)フェニル、4−ステアリルフェニル、2,3−ジメチルフェニル、2,4−ジメチルフェニル、2,5−ジメチルフェニル、2,6−ジメチルフェニル、3,4−ジメチルフェニル、3,5−ジメチルフェニル、2,4−ジ第三ブチルフェニル、シクロヘキシルフェニル等のアルキルアリール基;ベンジル、フェネチル、2−フェニルプロパン−2−イル、ジフェニルメチル、トリフェニルメチル、スチリル、シンナミル等のアリールアルキル基、並びにこれらの炭化水素基がエーテル結合及び/又はチオエーテル結合で中断されたもの、例えば、2−メトキシエチル、3−メトキシプロピル、4−メトキシブチル、2−ブトキシエチル、メトキシエトキシエチル、メトキシエトキシエトキシエチル、3−メトキシブチル、2−フェノキシエチル、2−メチルチオエチル、2−フェニルチオエチルが挙げられ、更にこれらの基は、アルコキシ基、アルケニル基、ニトロ基、シアノ基、ハロゲン原子等で置換されていてもよい。
【0014】
上記一般式(I)のR1〜R4は、置換基であるこれらの基が大きいと、シアニン化合物のモル吸光係数が小さくなり、感度に影響を及ぼす場合があり、また、立体的な障害により、シアニン化合物の製造の効率が著しく低下する場合があるので、以下に例示する基であることが好ましい。尚、R1及びR2については、少なくとも一方が、上記一般式(III)で表される基である、下記の置換基を有してもよいベンジル基であることが好ましい。
【0015】
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル等のアルキル基、特に炭素数1〜4のアルキル基。
置換基を有してもよいベンジル基。該置換基としては、水酸基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基;シアノ基;ニトロ基;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル等の炭素数1〜4のアルキル基;クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロブチル等の炭素数1〜4のハロゲン置換アルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブトキシ、第三ブトキシ等の炭素数1〜4のアルコキシ基;クロロメチルオキシ、ジクロロメチルオキシ、トリクロロメチルオキシ、ブロモメチルオキシ、ジブロモメチルオキシ、トリブロモメチルオキシ、フルオロメチルオキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ、パーフルオロエチルオキシ、パーフルオロプロピルオキシ、パーフルオロブチルオキシ等の炭素数1〜4のハロゲン置換アルコキシ基等が挙げられる。
【0016】
また、R3及びR4は、連結して3〜6員環の基を形成してもよい。3〜6員環を形成する基としては、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル、2,4−ジメチルシクロブタン−1,1−ジイル、3−ジメチルシクロブタン−1,1−ジイル、シクロペンタン−1,1−ジイル、シクロヘキサン−1,1−ジイル、テトラヒドロピラン−4,4−ジイル、チアン−4,4−ジイル、ピペリジン−4,4−ジイル、N−置換ピペリジン−4,4−ジイル、モルホリン−2,2−ジイル、モルホリン−3,3−ジイル、N−置換モルホリン−2,2−ジイル、N−置換モルホリン−3,3−ジイル等が挙げられ、そのN−置換基としては、環A及び環Bの置換基として例示のものが挙げられる。
【0017】
上記一般式(I)において、Y1及びY2は、上記一般式(IV)で表される基でない場合は、水素原子又は炭素数1〜30の有機基であるが、置換基である該有機基が大きいと、シアニン化合物のモル吸光係数が小さくなり、感度に影響を及ぼす場合があるので、Y1及びY2で表される炭素数1〜30の有機基としては、炭素数1〜8の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。同様の観点から、XがNYである場合のYで表される炭素数1〜30の有機基も、炭素数1〜8の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜8のアルキル基がより好ましい。
【0018】
上記一般式(I)において、Zで表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0019】
本発明のシアニン化合物の中でも、上記一般式(I)におけるXがCR34であるものは、550〜620nmの半導体レーザを用いた光学記録媒体の光学記録層に用いられる光学記録材料に適した吸収波長を有するので好ましい。
【0020】
上記一般式(I)において、Anm-で表されるアニオンとしては、例えば、一価のものとして、塩素アニオン、臭素アニオン、ヨウ素アニオン、フッ素アニオン等のハロゲンアニオン;過塩素酸アニオン、塩素酸アニオン、チオシアン酸アニオン、六フッ化リンアニオン、六フッ化アンチモンアニオン、四フッ化ホウ素アニオン等の無機系アニオン;ベンゼンスルホン酸アニオン、トルエンスルホン酸アニオン、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ジフェニルアミン−4−スルホン酸アニオン、2−アミノ−4−メチル−5−クロロベンゼンスルホン酸アニオン、2−アミノ−5−ニトロベンゼンスルホン酸アニオン等の有機スルホン酸アニオン;オクチルリン酸アニオン、ドデシルリン酸アニオン、オクタデシルリン酸アニオン、フェニルリン酸アニオン、ノニルフェニルリン酸アニオン、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ第三ブチルフェニル)ホスホン酸アニオン等の有機リン酸系アニオン等が挙げられ、二価のものとしては、ベンゼンジスルホン酸アニオン、ナフタレンジスルホン酸アニオン等が挙げられる。また、励起状態にある活性分子を脱励起させる(クエンチングさせる)機能を有する金属錯体系クエンチャーアニオンや、シクロペンタジエニル環にカルボキシル基、ホスホン酸基、スルホン酸基等のアニオン性基を有するフェロセン、ルテオセン等のメタロセン化合物アニオン等も、必要に応じて用いることができる。
【0021】
上記の金属錯体系クエンチャーアニオンとしては、例えば、アゾキレート錯体、下記一般式(A)又は(B)で表されるもの、特開昭60−234892号公報、特開平5−43814号公報、特開平6−239028号公報、特開平9−309886号公報、特開平10−45767号公報等に記載されたようなアニオンが挙げられる。
【0022】
【化3】

【0023】
上記一般式(I)においてAnm-で表されるアニオンが過塩素酸アニオンであるシアニン化合物は、分解時の発熱が大きい。また、該アニオンが過塩素酸アニオンであるシアニン化合物は、分解温度が特に低いという特徴があり、ピットの熱干渉により、ジッターが劣化する場合がある。従って、本発明のシアニン化合物を光学記録材料に使用する場合は、該アニオンが過塩素酸アニオン以外のアニオンであるものが好ましい。
【0024】
上記一般式(II)において、R5〜R8で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられ、R5〜R8で表されるハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロブチル等が挙げられ、R5で表されるハロゲン原子で置換されてもよい炭素数1〜4のアルコキシ基としては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブトキシ、第三ブトキシ、トリフルオロメチルオキシ等が挙げられ、R6とR8とが結合して形成される環構造としては、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、ピロール環、ジヒドロピロール環、ピリジン環等が挙げられる。
【0025】
上記一般式(III)において、E’及びG’を含みヘテロ原子を含んでもよい5員環としては、シクロペンテン環、シクロペンタジエン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、チオフェン環、フラン環、チアゾール環、イソチアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、ジヒドロピロール環、ジヒドロイミダゾール環、ジヒドロピラゾール環、トリアゾール環、ジヒドロチオフェン環、ジヒドロフラン環、ジヒドロチアゾール環、ジヒドロイソチアゾール環、ジヒドロオキサゾール環、ジヒドロイソオキサゾール環等が挙げられ、E’及びG’を含みヘテロ原子を含む6員環としては、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラン環、チオピラン環等が挙げられる。また、E’及びG’を含むこれらの環は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基;メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第3ブチル、トリフルオロメチル等のアルキル基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第2ブトキシ、第3ブトキシ、トリフルオロメチルオキシ等のアルコキシ基で置換されていてもよい。
【0026】
上記一般式(IV)において、R9〜R17で表される炭素数1〜4のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、第二ブチル、第三ブチル、イソブチルが挙げられる。これらのアルキル基がハロゲン原子で置換されたものとしては、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ブロモメチル、ジブロモメチル、トリブロモメチル、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、パーフルオロエチル、パーフルオロプロピル、パーフルオロブチル等が挙げられ、これらのアルキル基の鎖中のメチレン基が−O−で置換されたものとしては、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、第二ブトキシ、第三ブトキシ、2−メトキシエトキシ、2−メトキシエチル、クロロメチルオキシ、ジクロロメチルオキシ、トリクロロメチルオキシ、ブロモメチルオキシ、ジブロモメチルオキシ、トリブロモメチルオキシ、フルオロメチルオキシ、ジフルオロメチルオキシ、トリフルオロメチルオキシ、2,2,2−トリフルオロエチルオキシ、パーフルオロエチルオキシ、パーフルオロプロピルオキシ、パーフルオロブチルオキシ等が挙げられ、これらのアルキル基の鎖中のメチレン基が−CO−で置換されたものとしては、アセチル、プロピオニル、モノクロロアセチル、ジクロロアセチル、トリクロロアセチル、トリフルオロアセチル、プロパン−2−オン−1−イル、ブタン−2−オン−1−イル等が挙げられる。
【0027】
上記一般式(IV)において、Jで表される炭素数1〜8のアルキレン基としては、メチレン、エチレン、プロピレン、メチルエチレン、ブチレン、1−メチルプロピレン、2−メチルプロピレン、1,2−ジメチルプロピレン、1,3−ジメチルプロピレン、1−メチルブチレン、2−メチルブチレン、3−メチルブチレン、4−メチルブチレン、2,4−ジメチルブチレン、1,3−ジメチルブチレン、ペンチレン、へキシレン、ヘプチレン、オクチレン、エタン−1,1−ジイル、プロパン−2,2−ジイル、シクロプロパン−1,1−ジイル、シクロプロパン−1,2−ジイル、シクロブタン−1,1−ジイル、シクロブタン−1,2−ジイル、シクロペンタン−1,1−ジイル、シクロペンタン−1,2−ジイル、シクロペンタン−1,3−ジイル、シクロヘキサン−1,1−ジイル、シクロヘキサン−1,2−ジイル、シクロヘキサン−1,3−ジイル、シクロヘキサン−1,4−ジイル、メチルシクロヘキサン−1,4−ジイル等が挙げられる。また、これらのアルキレン基中のメチレン基が−O−、−S−、−CO−、−COO−、−OCO−、−SO2−、−NH−、−CONH−、−NHCO−、−N=CH−又は−CH=CH−で置換されたものである場合、その置換の位置及び数は任意である。
【0028】
上記一般式(IV)で表される基の中でも、MがFeでありJが炭素数1〜8のアルキレン基である基を有する本発明のシアニン化合物は、製造コストが小さく且つ耐光性に優れるので好ましい。
【0029】
前記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物の好ましい具体例としては、下記化合物No.1〜45が挙げられる。なお、以下の例示では、アニオンを省いたシアニンカチオンで示している。
【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
前記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物は、その製造法によって制限を受けるものではない。該シアニン化合物は、例えば、中間体である2−メチルインドール四級塩誘導体と、N,N’−ジフェニルホルムアミジン等のブリッジ剤とを反応させることで得ることができる。また、前記一般式(II)又は(III)で表される多重結合を有する基は、中間体である2−メチルインドール四級塩誘導体を得る過程において導入できる。その方法としては、例えば、アリールヒドラジン誘導体を出発物質にして、前記一般式(II)又は(III)で表される多重結合基を有する2−ブタノン誘導体によりインドール環を形成する時に導入する方法、インドール環にハロゲン化誘導体を反応させて導入する方法が挙げられる。Y、Y1及びY2それぞれは、アリールアミン誘導体又はインドール環のNHと反応するY−D、Y1−D及びY2−D(Dは、塩素、臭素、ヨウ素等のハロゲン基;フェニルスルホニルオキシ、4−メチルフェニルスルホニルオキシ、4−クロロフェニルスルホニルオキシ等のスルホニルオキシ基)により導入できる。なお、前記一般式(II)又は(III)で表される多重結合基を有する2−ブタノン誘導体は、アセトンと、該当する置換基を有するベンズアルデヒドとを反応させることで得られる。
【0035】
また、前記一般式(IV)で表される基を導入する方法としては、例えば、前記特許文献1に記載の方法が挙げられる。
【0036】
本発明の光学記録材料は、基体上に光学記録層の薄膜を形成した光学記録媒体の該光学記録層を形成するものであり、前記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物そのもの、並びに該シアニン化合物と後述する有機溶媒及び/又は各種化合物との混合物を包含する。
【0037】
本発明の光学記録材料を用いた光学記録媒体の光学記録層の形成方法については、特に制限を受けない。一般には、メタノール、エタノール等の低級アルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、ブチルジグリコール等のエーテルアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸メトキシエチル等のエステル類;アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル等のアクリル酸エステル類、2,2,2−トリフルオロエタノール、パーフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、パーフルオロプロパノール等のフッ化アルコール類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素類;メチレンジクロライド、ジクロロエタン、クロロホルム等の塩素化炭化水素類等の有機溶媒に本発明のシアニン化合物及び必要に応じて後述の各種化合物を溶解した溶液を、基体上に、スピンコート、スプレー、ディッピング等で塗布する湿式塗布法が用いられる。その他の方法としては、蒸着法、スパッタリング法等が挙げられる。
【0038】
上記光学記録層の厚さは、通常、0.001〜10μであり、好ましくは0.01〜5μの範囲が適当である。
【0039】
また、本発明の光学記録材料を光学記録媒体の光学記録層に含有させる際、該光学記録層における前記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物の含有量は、好ましくは25〜100質量%である。このようなシアニン化合物含有量の光学記録層を形成するために、本発明の光学記録材料は、本発明のシアニン化合物を、本発明の光学記録材料に含まれる固形分基準で25〜100質量%含有するのが好ましい。
【0040】
また、上記光学記録層は、前記一般式(I)で表される本発明のシアニン化合物のほかに必要に応じて、他のシアニン系化合物、アゾ系化合物、フタロシアニン系化合物、オキソノール系化合物、スクアリリウム系化合物、スチリル系化合物、ポルフィン系化合物、アゾ金属錯体化合物等の光学記録層に用いられる色素化合物;ポリエチレン、ポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート等の樹脂類を含有してもよく、界面活性剤;帯電防止剤;滑剤;難燃剤;ヒンダードアミン等のラジカル捕捉剤;フェロセン誘導体等のピット形成促進剤;分散剤;酸化防止剤;架橋剤;耐光性付与剤等を含有してもよい。さらに、上記光学記録層は、一重項酸素等のクエンチャーとして、芳香族ニトロソ化合物、アミニウム化合物、イミニウム化合物、ビスイミニウム化合物、遷移金属キレート化合物等を含有してもよい。
これらの各種化合物は、上記光学記録層において好ましくは0〜75質量%の範囲で使用される。そのためには、本発明の光学記録材料において、これらの各種化合物の含有量は、本発明の光学記録材料に含まれる固形分基準で0〜75質量%とするのが好ましい。
【0041】
上記光学記録層を設層する上記基体の材質は、書き込み(記録)光及び読み出し(再生)光に対して実質的に透明なものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂、ガラス等が用いられる。また、その形状は、用途に応じて、テープ、ドラム、ベルト、ディスク等の任意の形状のものが使用できる。
【0042】
また、上記光学記録層上に、金、銀、アルミニウム、銅等を用いて、蒸着法あるいはスパッタリング法により反射膜を形成することもできるし、アクリル樹脂、紫外線硬化性樹脂等による保護層を形成することもできる。
【0043】
本発明の光学記録材料は、記録及び再生に半導体レーザを用いる光学記録媒体に好適であり、特に高速記録タイプのDVD−R等の光ディスクに好適である。
また、本発明のシアニン化合物は、光学記録材料以外に、液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の画像表示デバイスの光学フィルター用の光吸収材料としても使用することができる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例等をもって本発明を更に詳細に説明する。しかしながら、本発明は以下の実施例等によって何ら制限を受けるものではない。
【0045】
[実施例1]化合物No.4の六フッ化リン塩の製造
下記合成ルート及び合成手順に従い、化合物No.4の六フッ化リン塩を収率72%で得た。
【0046】
【化8】

【0047】
(合成手順)
反応フラスコに、上記合成ルートに示した(A)0.003モル、(D)0.06モル及び(C)0.0042モルを仕込み攪拌した。これに(B)0.003モルを加え、45℃で2.5時間攪拌した後、(E)0.0045モル及びメタノール10gを加え、55℃で1時間攪拌した。12時間静置した後、結晶を濾取し、メタノール及び水で洗浄した後、180℃で35時間真空乾燥を行った。
【0048】
乾燥後の結晶について分析を行い、該結晶は目的物である化合物No.4の六フッ化リン塩であることを確認した。分析結果を以下に示す。
・光学特性(クロロホルム、3.60×10-6モル/リットル)
λmax;596nm、ε;1.26×105
・分子量(TOF−マススペクトル分析)
904.8
・融点(100ml/分の窒素気流下で10℃/分の昇温条件での示差熱分析DTAの吸収ピーク頂点)
226.5℃
1H−NMR(溶媒;DMSO)
図1に1H−NMRスペクトルを示す。
【0049】
[評価例]
上記の実施例1で得た化合物No.4の六フッ化リン塩及び以下に示す比較化合物1〜3について、示差熱分析を行い、熱分解温度及び分解による発熱を測定した。尚、熱分解温度は、窒素中で10℃/分の昇温条件によるDTAの発熱のピークトップ温度とした。結果を表1に示す。
【0050】
【化9】

【0051】
【表1】

【0052】
上記表1の結果より、本発明のシアニン化合物は、類似のシアニン化合物と比較して、低温度で分解することが確認できた。このことから、本発明のシアニン化合物は、光学記録材料として好適な熱分解挙動を示すといえる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、実施例1において得られた本発明のシアニン化合物(化合物No.4の六フッ化リン塩)の1H−NMRスペクトルである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるシアニン化合物。
【化1】

【化2】

【請求項2】
上記一般式(I)において、Anm-が過塩素酸アニオン以外のアニオンである請求項1に記載のシアニン化合物。
【請求項3】
上記一般式(I)において、R1及びR2の少なくとも一方が、水酸基、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、アルキル基又はアルコキシ基で置換されていてもよいベンジル基である請求項1又は2に記載のシアニン化合物。
【請求項4】
上記一般式(I)において、XがCR34である請求項1〜3のいずれかに記載のシアニン化合物。
【請求項5】
上記一般式(IV)において、MがFeであり、Jが炭素数1〜8のアルキレン基である請求項1〜4のいずれかに記載のシアニン化合物。
【請求項6】
基体上に光学記録層が形成された光学記録媒体の該光学記録層に用いられる、請求項1〜5のいずれかに記載のシアニン化合物を含有してなる光学記録材料。

【図1】
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【公開番号】特開2006−104387(P2006−104387A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−295111(P2004−295111)
【出願日】平成16年10月7日(2004.10.7)
【出願人】(000000387)旭電化工業株式会社 (987)
【Fターム(参考)】