説明

シアニン誘導体、それを含む蛍光結合体およびその使用

下記の式、


(点線は1または2の縮合芳香環の形成に必要な原子を表し、各環は5または6個の原子を含み、R、R、RおよびRは、互いに独立して(非)置換のC−C15アルキル他の特定の基、RおよびRは、互いに独立して(非)置換のC−C15アルキル他の特定の基、XはO、SまたはCRから、YはO、SまたはCR10から選ばれ、R、R、RおよびR10は独立して(非)置換のC−C15アルキル他の特定の基、RおよびRならびに/またはRおよびR10はまた、5または6個の原子を含む環、または4または5個の炭素と酸素を含むヘテロ環を形成し、Bは1〜5のメチンを含むポリメチンブリッジを表し、この基は特に独立して、非置換であるか、もしくは、(非)置換のC−C15アルキル他の特定の基で置換されている)のシアニン誘導体。用途:細胞中の生体分子の標識化用の蛍光化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、赤色および近赤外で光を吸収し、また蛍光を発するシアニン誘導体である。これらのシアニン誘導体は、細胞膜を通り抜けることができ、また官能化されていて、そしてそのために蛍光標識として容易に用いることができる。
【0002】
本発明はまた、細胞中の分子の標識化を可能にする結合剤に共有結合している、本発明のシアニン誘導体を含む蛍光結合体に関する。本発明によるこのシアニン誘導体は、細胞中のタンパク質の標識化に特に適している。
【0003】
最後に、本発明はまた、細胞中へと挿入することが望まれる物質に共有結合された本発明のシアニン誘導体を含む蛍光結合体に関し、この物質はこのシアニン誘導体と結合することによって蛍光性にされる。
【0004】
本発明の他の主題は、本発明のシアニン誘導体の、生体細胞中に存在する標識製品への使用である。
【0005】
本発明による化合物は、原形質膜の品位を改質することなく、特にこの膜を透過性の状態にすることを意図した製品を用いることなく、細胞内の媒体中に存在する生体分子の標識化に特に使用されるものである。
【0006】
実際に、本発明による化合物は、それらが、凝集の問題を解決するために従来技術において慣用に用いられている、スルファート、スルホナート、ホスファート、またはカルボキシラート基を有しない場合には、親油性の性質を有している。これらの基は、ホスホナートもしくはホスファートエステル(好ましくはジエステル)で置換されており、それらはこれらの化合物の親油性の性質に影響を与えず、そして細胞内酵素による加水分解の後には、細胞内における凝集の現象を防ぐことを可能にする。
【0007】
従って本発明はまた、結合剤を含む本発明によるシアニン誘導体の、蛍光標識としての使用に関する。
【0008】
更に本発明は、細胞外の媒体中へ、結合剤を含む本発明による誘導体を導入することからなる無傷細胞中に存在する生体分子を標識化する方法に関し、前記の生体分子は結合ドメインを含んでいる。この方法は、細胞内部の化合物を、細胞の膜を透過性の状態にすることなく標識化することを可能にするので、非常に有利である。
【0009】
可視および近赤外スペクトル領域において光を吸収および放射する蛍光染料が、生化学の、生物学の、そして診断の分野において、特にそれらのモル吸光および/またはそれらの高い蛍光量子収率のために、種々の分析用途に通常用いられている。
【0010】
特に、シアニン誘導体だけが近赤外において吸収および放射し、この波長範囲は、蛍光標識として用いられる染料の光化学的分解に因る漂白を回避することを可能にするので、生体細胞の研究において特に有利な電磁気スペクトルの領域である(この現象は光子のエネルギーの関数として悪化し、そして従って近赤外においては非常に顕著ではない)。更に、生体分子は近赤外においては自己蛍光を示さず、このことは非特異性の背景ノイズの問題を限定的なものにする。
【0011】
これらの利点にもかかわらず、多環式基および疎水性のポリメチン鎖の存在によるシアニンの親油性の性質は、蛍光標識としての良好な性能とは常には両立できなかった。例えば、シアニンは溶液中で凝集体を形成する傾向を有している。従って、インドシアニングリーンでは、それが125μM超の濃度で用いられた場合には、凝集体の形成による蛍光の減光の結果として、その量子収率が低下することを経験している。この現象は、かなり一般的であるが(これはまた、フルオレセインの場合にでも存在する)、特にシアニン系において著しい。
【0012】
更に、そしてこの親油性の性質にかかわらず、シアニンは、その高分子量(700〜800ドルトンの水準)のために、生体膜を非常に不十分にしか透過せず、というよりも実際には全く透過しないが、一方で小さい分子、例えばフルオレセイン(337ドルトン)はこの不利益を示さない。
【0013】
溶解性およびシアニンの凝集の問題を克服する技術的な解決策は非常に満足できるものではなかった。シアニンの、親油性ペプチドとの、ポリエチレングリコールとの、またはオリゴ糖との結合体が用いられており、また幾つかの研究が、近赤外への染料の使用およびそれらの生体分子との結合体についてなされてきている。この取り組みは、多段階の合成を要するという不都合を有しており、そのことは低い収率を意味している。更に、親水性のオリゴペプチドまたはオリゴ糖を使用する場合には、原価は高くなる可能性があり、またこれらの結合体の精製は、慣用の有機合成において用いられている精製とは別の精製技術が要求される。
【0014】
光物理的特性、および従って蛍光トレーサとしての分析的性能を改善するために最も一般に用いられている取り組みは、インドール環系上に負電荷を持つ化学基、例えばスルホナート、および/またはアルキルスルホナート(スルホアルキル)およびまたカルボキシル基、を導入することにより親水性の性質を強化することによって、凝集の現象を制限するということであった。従って、スルホン化されていないインドシアニン誘導体(例えばシグマ(Sigma)からのIR−786の商標名で知られている製品)は、10μM未満の溶解度を有し、またそれらの水性媒体中での使用は補助剤(adjuvants)の使用を要求する。これらの誘導体のテトラスルホン化は水性媒体中の溶解性を10mM超まで増加させることを可能にする。一方で、スルホン化は蛍光量子収率へは僅かな影響しか有しておらず、それはテトラスルホン化化合物について平均で15%未満である。
【背景技術】
【0015】
国際公開第2005/056689号は、生理的pHにおいて染料であり、シアニン骨格を有し、また負の電荷をもつ置換基を含む化合物に関する。
【0016】
国際公開第2005/061456号は、水溶性基を示すシアニン化合物を含む近赤外蛍光造影剤に関する。
【0017】
国際公開第2005/089813号は、シアニン染料および画像診断および治療法において用いられるそれらの生物学的結合体に関する。この結合体は、特にさまざまなビスおよびテトラキス(カルボン酸)同族体を備えた幾つかのシアニン染料とからなっている。
【0018】
国際公開第2005/056687号は、主題としてシアニン染料を有しており、そのメチン残基は置換されており、それは核酸の標識化のために適切であり、また特にスルホアルキルまたはカルボキシアルキル鎖によって置換されたシアニン誘導体からなっている。
【0019】
国際公開第2004/039894号は、官能化されたシアニン染料およびシアニン染料の調製における中間体として有用なそれらの誘導体、またこれらの染料の調製方法、ならびにそのように得られた染料に関する。このシアニン誘導体は全てスルホナート官能基を含んでいる。
【0020】
国際公開第03/082988号は、例えば生物医学画像に有用な、水溶性の近赤外蛍光色素に関する。
【0021】
国際公開第02/068537号は、蛍光染料、特には水に可溶で、また生体分子への攻撃のための付加的なサイトを含む、蛍光シアニン染料に関する。その水への溶解性は、スルホナート基の存在によって与えられている。
【0022】
国際公開第02/24815号には、スルホナート基を含むシアニン誘導体が記載されている。
【0023】
国際公開第01/77229号は、メチン鎖のメソ位にあるアルキル置換基、スルホアリール基および標的物質に結合することを可能にする少なくとも1つの反応性基を示すシアニン染料に関する。
【0024】
国際公開第01/52746号は、医学画像および治療に適切な染料−ペプチド結合体に関する。これらの染料−ペプチド結合体は、さまざまなビスおよびテトラキス(カルボン酸)同族体を備えた幾つかのシアニン系の染料を含んでいる。
【0025】
国際公開第00/66664号は、環式のアザベンゾリウム(azabenzolium)断片を含む非対称のシアニン染料、特にカチオン性側鎖によって置換されたシアニン染料、単量体のまた二量体のシアニン染料、化学的に反応性のシアニン染料およびシアニン染料結合体に関する。
【0026】
国際公開第01/57237号には、NO基およびカルボン酸エステルを含む、非蛍光性のシアニンが記載されている。
【0027】
シアニンの凝集の現象を低減する目的で、ホスホナート(ホスホン酸)官能基を用いる試みがなされている。[オズワルド(Oswald) B.ら、新規なダイオードレーザーに準拠した蛍光色素分子ならびに、単分子検出、タンパク質標識化および蛍光共鳴エネルギー転移免疫測定法へのその応用、光化学光生物学(Photochem. Photobiol.)、2001年、第74巻、第2号、p.237―245]
【0028】
国際公開第01/36973号には、リン酸残基またはホスホン酸残基、またはそれらのモノエステルの塩を標識に導入することからなる、光標識の水への溶解性を改善する方法に関する。これらの標識は、生体分子、ポリマーおよび医薬品を標識化するのに有用である。この出願には特に、インドール環の窒素上にアルキルホスホナートモノエステルを持つペンタメチンシアニンが記載されている。
【0029】
グルーバー(Gruber)ら、ジャーナルオブフルオレスセント(Journal of Fluorescence)、2005年5月、第15巻、第3号、p.207−214、には、2種のシアニンから誘導された化合物(クロメオン(chromeon)546およびクロメオン642と称される)が記載されており、それでは窒素原子の1方がジメチレンの腕で担持されたホスホナートエチルエステルによって置換されており、また他方がポリメチレンの腕で担持されたN−ヒドロキシスクシンイミド反応性基によって置換されている。このホスホナート基は、これらの化合物が、先験的に、生物学的膜を透過することを可能にしないことに注目しなければならない。
【0030】
マジエール(Mazieres)ら、染料および顔料(Dyes and Pigments)、2007年、第74巻、p.404−409には、インドール環の窒素上でジエトキシホスホリルプロピル基によって置換された対称シアニンが記載されている。これらの化合物は、加水分解後に、水溶性のホンホン酸基を持つシアニンをもたらす。
【0031】
米国特許出願公開第2006/0199955号明細書には、シアニンの極性、および従ってその溶解性を増加させることを意図した両性イオンのホスホン酸塩を含むシアニンが記載されており、記載されているこれらの化合物はまた、スルホナート基を持っており、そして従って無傷細胞の細胞膜を透過できない。
【0032】
近赤外において蛍光性であり、またカルボシアニン構造と併せて荷電した官能基、例えば上記したような基(スルファート、スルホナート、カルボキシル、ホスファートもしくはホスホナート)を有する染料が、それらの高分子量(例えばローダミンの334Daに比べて)のために、また複数の電荷の存在によって、低い膜透過性を示すことが報告されている。電荷数の増加に伴って、蛍光染料は、細胞外の区画の中に留まることもまた観察されている[フランギオニ(Frangioni) J. V.、生体内の近赤外蛍光画像(In vivo near-infrared fluorescence imaging)、 Curr. Opin. Chem. Biol、2003年、第7巻、第5号、p.626−634]。最後に、この種の幾つかの蛍光化合物が同一の生体分子に付加している場合には、蛍光性の消滅が観察されている[リン(Lin) Y.ら、新規な近赤外シアニン蛍光色素:合成、特性および生体結合体化(Novel near-infrared cyanine fluorochromes: synthesis, properties and bioconjugation)、Bioconjug., Chem.、2002年、第13巻、第3号、p.605−610]
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】国際公開第2005/056689号
【特許文献2】国際公開第2005/061456号
【特許文献3】国際公開第2005/089813号
【特許文献4】国際公開第2005/056687号
【特許文献5】国際公開第2004/039894号
【特許文献6】国際公開第03/082988号
【特許文献7】国際公開第02/068537号
【特許文献8】国際公開第02/24815号
【特許文献9】国際公開第01/77229号
【特許文献10】国際公開第01/52746号
【特許文献11】国際公開第00/66664号
【特許文献12】国際公開第01/57237号
【特許文献13】国際公開第01/36973号
【特許文献14】米国特許出願公開第2006/0199955号
【非特許文献】
【0034】
【非特許文献1】オズワルド(Oswald) B.ら、新規なダイオードレーザーに準拠した蛍光色素分子ならびに、単分子検出、タンパク質標識化および蛍光共鳴エネルギー転移免疫測定法へのその応用、光化学、光生物学、2001年、第74巻、第2号、p.237―245
【非特許文献2】グルーバー(Gruber)ら、ジャーナルオブフルオレスセント(Journal of Fluorescence)、2005年5月、第15巻、第3号、p.207−214
【非特許文献3】マジエール(Mazieres)ら、染料および顔料(Dyes and Pigments)、2007年、第74巻、p.404−409
【非特許文献4】フランギオニ(Frangioni) J. V.、生体内の近赤外蛍光画像(In vivo near-infrared fluorescence imaging)、 Curr. Opin. Chem. Biol、2003年、第7巻、第5号、p.626−634
【非特許文献5】リン(Lin) Y.ら、新規な近赤外シアニン蛍光色素:合成、特性および生体結合体化(Novel near-infrared cyanine fluorochromes: synthesis, properties and bioconjugation)、Bioconjug., Chem.、2002年、第13巻、第3号、p.605−610
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0035】
それ故に、細胞膜を透過することができ、凝集する傾向を示さない、また蛍光標識として用いることができる、シアニン誘導体への要求が存在している。凝集を克服するための従来技術の解決策(負に帯電した基の付加)は良好な膜透過性とは矛盾することに注目することが重要である。反対に、膜を透過することができる親油性のシアニンは凝集する傾向にある。
【0036】
染料が細胞の膜を透過する傾向を支配するパラメータが知られている(親油性、極性および電荷、それらは統合して、両親媒性の性質、分子の大きさおよび形状を決める)が、しかしながらそれらの相対的影響およびそれらの膜を透過する特性の予測ツールとしての使用は限定されたままである。
【課題を解決するための手段】
【0037】
これらの障害にもかかわらず、細胞膜を透過することができ、しかしながら凝集および溶解性の問題を示さない、新規なシアニン誘導体が開発された。
【0038】
本発明によるシアニンは、
・結合腕を通してシアニンにグラフトした、少なくとも1つのホスファートエステル(好ましくはジエステル)または1つのホスホナートエステル(好ましくはジエステル)、および
・官能基または結合剤、あるいはまた標識化された形態で細胞中に挿入されることが望まれる結合された物質(この官能基、結合剤または物質は結合腕によって担持されている)、を含む際立った特徴を含んでいる。
【発明の効果】
【0039】
本発明による化合物は、それらがシアニンに特有な疎水基(多環、ポリメチン鎖)を含み、また極性基、例えば従来技術において凝集および溶解性の問題を克服するために与えられたような基、を含まない限り細胞膜を透過することができ、本発明による化合物はスルファート、スルホナート、ホスファート、ホスホナートまたはカルボキシレート基を含まない。
【0040】
一方、本発明によるシアニン誘導体は少なくとも1つのホスファートまたはホスホナートエステル(好ましくはジエステル)を含み、これらの基は細胞の細胞質中で加水分解を受けるという際立った特徴を有しており、この加水分解は細胞酵素、特にホスホジエステラーゼ、によって触媒され、このことは、酵素過程を妨害するであろうシアニン構造の存在にも拘わらずその通りである。
【0041】
更に、本発明によるシアニン誘導体は官能化されており、そのことで当業者は、かれらが標識化したいと望むいかなる基もしくは分子にでも、それらを結合することが可能になる。本発明による製品はまた、それらの製品が、適当な結合ドメインを含む生体分子を標識化することを可能にする結合剤を含んでいる。
【0042】
これらの特徴は本発明によるシアニン誘導体を、細胞内の生体分子の、蛍光性の化合物による標識化に特に適した化合物にさせており、この蛍光性の化合物は励起することができ、また細胞を必ずしも透過性にすることなく、赤および近赤外に放射する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(原文記載なし)
【図2】(原文記載なし)
【発明を実施するための形態】
【0044】
本発明による蛍光性の化合物は、下記の式(I)のシアニン誘導体である。
【0045】
【化1】

【0046】
上記の式で、点線は1つまたは2つの縮合芳香環を形成するのに必要な原子を表し、それぞれの環は5または6個の原子を含み、
、R、RおよびRは、互いに独立して、
−水素原子、
−置換、または非置換のC−C15アルキル基、
−C−Cアルコキシ基、
−(C−C12)ジアルキルアミノ基、
−C−Cアルコキシカルボニル基、
−(C−C12)ジアルキルアミノ基、
−置換または非置換のアリール、アリールアルキルまたはアリールオキシ基、
−ハロゲン原子、
−ニトロ基、
−L1−W、L2−M、L2−AまたはL2−Gから選ばれる基、を表し、
およびRは、互いに独立して、
−置換または非置換のC−C15アルキル基、
−置換または非置換のアリールまたはアリールアルキル基、
−L1−W、L2−M、L2−A、またはL2−Gから選ばれる基、を表し、
Xは、O、SまたはCRから選ばれ、
Yは、O、SまたはCR10から選ばれ、
、R、RおよびR10は独立して、
−置換または非置換のC−C15アルキル基、
−置換または非置換のアリール、アリールアルキルまたはアリールオキシ基、
−L1−W、L2−M、L2−AまたはL2−Gから選ばれる基、を表し、
【0047】
およびRならびに/またはRおよびR10はまた一緒に、5もしくは6個の原子を含む環、または4もしくは5個の炭素原子と酸素原子を含むヘテロ環を形成し、
Bは1〜5のメチンを含むポリメチンブリッジを表し、この中でメチン基は独立して、非置換であるか、もしくは、
−置換または非置換のC−C15アルキル基、
−置換または非置換のアリール、アリールアルキルまたはアリールオキシ基、
−ニトロ基、
−L1−W、L2−M、L2−AまたはL2−Gから選ばれる基、で置換されているか、あるいは隣接するメチンの2つの置換基は一緒に、4、5もしくは6個の原子を含む飽和または不飽和の炭化水素環形成することができ、この環は、場合によっては1つまたはそれ以上の、
−置換または非置換のC−C15アルキル基、
−置換または非置換のアリール、アリールアルキルまたはアリールオキシ基、
−ハロゲン原子、
−ニトロ基、
−L1−W、L2−M、L2−AまたはL2−Gから選ばれる基、によって置換されている。
【0048】
L1およびL2は結合腕であり、
Gは反応性基であり、
Aは結合剤であり、
Mは結合された分子であり、
Wは、シアニン誘導体が、1つまたは2つのL1−W基、およびL2−A、L2−GおよびL2−Mから選ばれる1つまたは2つの基を含むことを条件として、下記に定義されるホスファートまたはホスホナートエステル(好ましくはジエステル)である。
【0049】
本発明の式(I)のシアニン誘導体は、対イオン「Z」(表記されてはいない)を含み、シアニン誘導体の正もしくは負の電荷を平衡させる。
【0050】
対イオンの性質は、本発明では本質的なことではなく、それは用いられる合成方法またはその中でシアニン誘導体が発生する媒体によって決まる。
【0051】
例えば、Zは、
−ヨウ化物によるアルキル化、例えばCHCHI、の場合にはI
−加水分解がHClで行われるならばCl
−トリフルオロ酢酸(CFCOOH)またはギ酸(HCOOH)のそれぞれの存在下での、逆相HPLCによる精製の場合には、CFCOOまたはHCOO、である。
【0052】
有利には、対イオンZはI、Cl、Br、CFCOO、HCOOまたはNaから選ばれる。
【0053】
定義
本発明においては、それぞれの基は以下の意味を有している。
・C−C15アルキル基:直鎖、分岐または環状(この場合、場合によってはヘテロ原子、例えばO、SもしくはNによって中断されている)炭化水素鎖で、1〜15個の炭素原子を含んでおり、また場合によっては1つまたはそれ以上の、以下の基、クロロ、フルオロ、ブロモ、ニトロ、C1−Cアルコキシ、C−C12ジアルキルアミノ、C−Cアルコキシカルボニル、C−Cアルキルカルボキシレート、N,N−(C−C12)ジアルキルアミドもしくはアミド、によって置換されている。
アルキル基の例としては、メチル、エチル、イソプロピル、n−プロピル、ブチル、ターシャリブチル、n−ヘキシル、n−デシル、n−ドデシル、シクロへキシルまたはオクチルが挙げられる。
【0054】
・C−Cアルコキシ基:直鎖または分岐炭化水素鎖で、酸素原子に結合する1〜6個の炭素原子を含んでいる。アルコキシ基の例としては、次の基、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ターシャリブトキシおよびn−ブトキシが挙げられる。
【0055】
・C−Cアルコキシカルボニル基:直鎖または分岐炭化水素鎖で、カルボキシル基−OOC−の酸素に結合する1〜6個炭素原子を含んでいる。
【0056】
・C−Cアルキルカルボキシル基:直鎖または分奇異炭化水素鎖で、カルボキシル基−COO−の炭素に結合する1〜6個の炭素原子を含んでいる。
【0057】
・(C−C12)ジアルキルアミノ基:2つの直鎖または分岐アルキル基を含む窒素で、このアルキル基は同一かもしくは異なっており、またそれぞれ2〜12個の炭素原子で構成されている。
【0058】
・N,N−(C−C12)ジアルキルアミド基:(C−C12)ジアルキルアミノ基で、カルボニル基−CO−の炭素に結合している。
【0059】
・C−C14アリール基:5または6個の炭素原子を含む芳香環、または8〜10個の原子を含む芳香族二環または10〜14個の原子を含む芳香族三環。このアリール基は、場合によっては以下の基、C−C15アルキル、クロロ、フルオロ、ブロモ、ニトロ、C−Cアルコキシ、ジ(C−C15)アルキルアミノまたはC−Cアルコキシカルボニルから選ばれる1つまたはそれ以上の置換基によって置換されていてもよい。
【0060】
・5〜10元素を含むヘテロアリール基:5〜10個の炭素原子を含む単環もしくは多環を有するアリール基で、炭素原子の少なくとも1つはN、OまたはSから選ばれるヘテロ原子によって置き換えられている。ヘテロアリール基は、場合によっては以下の基、C−C15アルキル、クロロ、フルオロ、ブロモ、ニトロ、C−Cアルコキシ、ジ(C−C15)アルキルアミノまたはC−Cアルコキシカルボニル、から選ばれる1つまたはそれ以上の置換基によって置換されていてもよい。
ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、ピリジル、チエニル、フラニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、イミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイミダゾリル、キノリル、ベンゾフラニル、インドリル、カルバゾリル、クマリニルおよびベンゾクマリニルが挙げられる。
【0061】
・C−C25アリールアルキル基:C−C15アルキル基に結合したC−C10アリール基。
【0062】
・ハロゲン:クロロ−、フルオロ−、ヨード−またはブロモ−。
【0063】
・結合腕B:炭素、窒素、リン、酸素および硫黄原子から選ばれる、水素を除いて1〜20個の原子を含む単共有結合または中間腕(spacing arm)であることができ、この結合基は直鎖もしくは分岐状、環状もしくはヘテロ環状また飽和もしくは不飽和であり、また以下の結合から選ばれる結合の組み合わせで構成されている:炭素−炭素結合(一重、二重、三重もしくは芳香族であってよい)、炭素−窒素結合、窒素−窒素結合、炭素−酸素結合、炭素−硫黄結合、リン−酸素結合、リン−窒素結合、エーテル結合、エステル結合、チオエーテル結合、アミン結合、アミド結合、カルボキサミド結合、スルホンアミド結合、尿素結合、ウレタン結合、ヒドラジン結合、またはカルバモイル結合。
【0064】
・無傷細胞:例えば、細胞の膜を透過性の状態にすることを意図した化学的処理を受けていない細胞のように、膜の品位および細胞内の品位が維持されている細胞を意味している。
【0065】
本発明の好ましい化合物
本発明による好ましいシアニン誘導体は、下記の式に相当する化合物であり、その中でR〜R、B、XおよびY基は上記で定義した通りである。
【0066】
【化2】

【0067】
【化3】

【0068】
ポリメチンブリッジB
本発明の化合物は、環状構造の間にポリメチンブリッジを含んでいる。上記に示した通りに、これらのメチンは置換されていてもよく、または隣接するメチンが一緒に、4、5もしくは6個の元素(これらの元素は場合によっては置換されていてもよい)を含む、飽和もしくは不飽和の炭化水素環を形成していてもよい。
【0069】
本発明の好ましい化合物は、非置換のメチンを含むか、あるいは中央のメチンのみが置換されているか、あるいはまた中央の2つのメチンが環を形成している。
【0070】
説明の目的で、また暗黙に限定することなく、このブリッジは以下のポリメチン鎖であることができる:
【0071】
【化4】

【0072】
上記の式でR15およびR16は、
−水素原子、
−置換または非置換のC−C15アルキル基、
−置換または非置換のアリール、アリールアルキルもしくはアリールオキシ基、
−ハロゲン原子、
−ニトロ基、
−L2−M、L2−A、L2−GまたはL1−Wから選ばれる基、から選ばれ、
L1およびL2は結合腕であり、
Gは反応性基であり、
Aは結合剤であり、
Mは結合された分子であり、
Wはホスファートまたはホスホナートエステル(好ましくはジエステル)である。
【0073】
好ましくは、ポリメチンブリッジは、以下の式の1つに相当する。
【0074】
【化5】

【0075】
ホスファートまたはホスホナートエステル(好ましくはジエステル)
本発明によるシアニン誘導体上に存在する腕によって担持されているホスファートまたはホスホナートエステル(好ましくはジエステル)は、以下のような幾つかの技術的利点を与える:ホスファートまたはホスホナートエステルは化合物の極性を増加させず、また従ってそれらが脂質生体膜を透過することを促進し、更に、一旦細胞内に入ると、ホスファートまたはホスホナートエステル(好ましくはジエステル)は細胞酵素によって加水分解されてホスファートまたはホスホナート基を与える。これらのホスファートまたはホスホナート基は、本発明によるシアニンの、特にタンパク質の標識化における有効性に寄与するが、それはそれらがシアニンをこの用途に用いる場合に通常観察される凝集の現象を克服すことを可能にするからである。
【0076】
これらの基は、当業者に知られている合成方法に従ってシアニンにグラフトすることができる。例えば、芳香族環系へのホスホナートエステルの導入は、次の文献中に記載された手順に従って、実施例13に記載したように、臭素化誘導体、例えば5−ブロモ−2,3,3−トリメチル−3H−インドール、から出発して実施される[ヒラオ(ひらお) T.ら、ジアルキルアレーンホスホナートの新規な合成(A Novel Synthesis of Dialkyl Arenephosphonates)、合成(Synthesis)、1981年、(1)、p.56−57]。下記の実験部分に、ホスファートまたはホスホナートエステルを含むシアニン誘導体の合成の経路を示す。
【0077】
ホスファートエステルがシアニンの芳香族環上に導入される場合には、これらの基は必ず結合腕によって担持されていなければならない。
【0078】
ホスファートまたはホスホナートエステル(好ましくはジエステル)基Wは以下の式を有している:
【0079】
【化6】

【0080】
上記の式で、R11およびR12は同一または異なっており、そして
−水素原子、
−非置換のC−Cアルキル基、から選ばれ、
13およびR14は同一または異なっており、そして
−水素原子、
−非置換のC−C15アルキル基、
−C−Cアルコキシカルボニル基、
−C−Cアルキルカルボキシ基、
−N,N−(C−C12)ジアルキルアミド基、
−アミド基、
−式−C−S−CO−Alkの基、から選ばれ、
Alkは非置換の直鎖または分岐C−Cアルキルであり、
11およびR12ならびに/またはR13およびR14はまた、一緒に次の式のフタリジル基を形成していてもよい。
【0081】
【化7】

【0082】
本発明による特に好ましいシアニン誘導体は、ホスファート/ホスホナートエステルがシアニンのインドール芳香環にグラフトしているものである。
【0083】
下記の一般式のホスホナートジエステルが好ましい。
【0084】
【化8】

【0085】
上記の式で、R11およびR12は同一であり、
−水素原子、
−非置換のC−Cアルキル基、から選ばれ、
13およびR14は同一であり、また以下の基から選ばれる:
−メチルカルボキシル(=−O−CO−CH−=アセトキシメチルエステル)、
−ターシャリ−ブチルカルボキシル(=−O−CO−C(CH=トリメチル−アセトキシメチルエステル)、
−メチルオキシカルボニル(=−CO−OCH=メチルグリコラートエステル)、
−メタンアミド(=−CO−NH=グリコールアミドエステル)、
−N,N−ジメチルメタンアミド(=−CO−N(CH=置換グリコールアミドエステル)、
−N−メチルメタンアミド。
【0086】
特に、下記のホスホナートエステルを含むシアニン誘導体は、細胞酵素によって、単純なアルキルエステルよりもより容易に加水分解される。
アセトキシメチルエステル
【0087】
【化9】

【0088】
アセトキシメチルエステル(メチル基は、場合によってはHまたはC−Cアルキル基によって置換されている):
【0089】
【化10】

【0090】
トリメチルアセトキシメチルエステル:
【0091】
【化11】

【0092】
メチルグリコラートまたはエチルグリコラートエステル(グリコール酸=HOCHCOOH、メチルグリコラート=HOCHCOOMe)
【0093】
【化12】

【0094】
非置換グリコールアミドエステル(グリコールアミド=HOCHCONH
【0095】
【化13】

【0096】
置換グリコールアミドエステル(N−メチルグリコールアミド=HOCHCONHCHまたはN,N−ジメチルグリコールアミド):
【0097】
【化14】

【0098】
上記の式(I)の化合物または本発明の好ましい化合物の間で、以下のものが極めて特別に優先される。
1)化合物において、
−XがCR基および/またはYがCR10基;
−1つまたは2つのR〜R基がL1−W基を表し;また
−1つまたは2つのR〜R10基がL2−A、L2−GまたはL2−Mを表している、化合物。
2)化合物において、
−XがCR基および/またはYがCR10基;
−Rおよび/またはRがL1−W基を表し;また
−1つまたは2つのR〜R10基がL2−A、L2−GまたはL2−M基を表している化合物。
3)化合物において、
−Rおよび/またはRがL1−Wを表し;
−ポリメチンブリッジBのR15またはR16がL2−A、L2−GまたはL2−M基を表している化合物。
4)化合物において、
−1つまたは2つのR〜R基がL1−W基を表し;また
−ポリメチンブリッジBのR15またはR16が、L2−A、L2−GまたはL2−M基を表している化合物。
【0099】
本発明の特に好ましい化合物の群は、下記の式の化合物で構成されている。
【0100】
【化15】

【0101】
ここで、
−RおよびRは水素原子であり;
−R、RおよびRは、独立して置換または非置換のC−C15アルキル基を表し;
−RおよびRは、互いに独立して置換または非置換のC−C15アルキル基を表し;
−Bは、1〜5の非置換メチンを含むポリメチンブリッジを表し;
−R10は、L2−M、L2−AまたはL2−Gから選ばれる基を表し;
−L2は結合腕であり;
−Gは反応性基であり;
−Aは結合剤であり;
−Mは結合した分子であり;、
−RおよびRは同一であり、またL1−W基を表し;
−L1は、単結合または式−(CH−の基から選ばれた結合腕であり(nは2〜8の範囲の整数である);
−Wは、下記の式を持つ基から選ばれるホスホナートジエステルである:
【0102】
【化16】

【0103】
ここで、R11およびR12は同一かまたは異なっており、また、
−水素原子;
−非置換のC−Cアルキル基;から選ばれ;
13およびR14は同一かまたは異なっており、また
−水素原子;
−非置換のC−C15アルキル基:
−C−Cアルコキシカルボニル基;
−C−Cアルキルカルボニル基;
−N,N−(C−C12)ジアルキルアミド基;
−アミド基;
−式−C−S−CO−Alkの基(Alkは非置換の直鎖または分岐C−Cアルキルである)から選ばれ;
11およびR12並びに/またはR13およびR14はまた、一緒に下記の式のフタリジル基を形成してもよい:
【0104】
【化17】

【0105】
本発明の特に好ましい化合物の他の群は、下記の式の化合物から構成される。
【0106】
【化18】

【0107】
ここで、
−R、R、RおよびRは水素原子であり;
−R、RおよびRは独立して置換または非置換のC−C15アルキル基を表し;
−Bは1〜5の非置換メチンを含むポリメチンブリッジを表し;
−R10はL2−M、L2−AまたはL2−Gから選ばれる基を表し;
−L2は結合腕であり;
−Gは反応性基であり;
−Aは結合剤であり;
−Mは結合した分子であり;
−RおよびRは同一であり、またL1−W基を表し;
−L1は単結合または式−(CH−の基から選ばれる結合腕であり(nは2〜8の範囲の整数である);
−Wは下記の式から選ばれる式を持つホスホナートジエステルである:
【0108】
【化19】

【0109】
ここで、
11およびR12は同一かまたは異なっており、また、
−水素原子;
−非置換C−Cアルキル基;から選ばれ、
13およびR14は同一かまたは異なっており、また、
−水素原子;
−非置換C−C15アルキル基;
−C−Cアルコキシカルボニル基;
−C−Cアルキルカルボニル基;
−N,N−(C−C12)ジアルキルアミド基;
−アミド基;
−式−C−S−CO−Alkの基(Alkは非置換の直鎖または分岐C−Cアルキルである)から選ばれ;
11およびR12並びに/またはR13およびR14はまた一緒に、下記の式のフタリジル基を形成していてもよい:
【0110】
【化20】

【0111】
結合剤A
本発明によるシアニン誘導体は結合腕によって担持される結合剤を含んでいてもよい。好ましくは、この結合剤は細胞膜を透過することができる。
【0112】
この結合剤の役割は、シアニンと、例えば細胞内に在る標的分子との共有または非共有結合を可能にさせることである。この目的のために、標的分子は適切な結合ドメインを含んでいなければならない。標的分子が細胞内に在る場合には、結合剤は、それ自身が原形質膜を透過することができることが必要である。
【0113】
結合剤Aは従って、標的分子に対して特異的な、抗体、抗体断片またはペプチドアプタマーであることができる。これらの抗体、抗体断片またはアプタマーは、標的分子中に天然に存在するドメインまたは、当業者、特には分子生物学技術の当業者によく知られた技術(この技術はタンパク質タグの生体分子への導入を可能とさせる)によってこの分子内に導入されたドメインもまた認識することができる。
【0114】
結合剤およびドメインは、一対の結合パートナーの構成員であることができ、2つの構成員は、例えば以下の対におけるように、非共有で結合することができる。
・アビジン(またはストレプトアビジン)/ビオチン:この対は、細胞によって発現された注目するタンパク質を、アビジンまたはストレプトアビジンの結合ドメインとの融合タンパク質の形態で標識化するのに用いられる。この場合には、本発明によるシアニン誘導体は、結合剤としてビオチンに結合する。
この(ストレプト)アビジン/ビオチン対は当業者に知られており、当業者が本発明によるシアニン誘導体とビオチンを結合するのに困難はない。
【0115】
・二ヒ素/テトラシステイン単位化合物:この結合パートナーの対はアダムスらによって最初に記載された(「生体外および生体内でのタンパク質標識化のための新規な二ヒ素配位子およびテトラシステインモチーフ:合成および生物学的応用」(“New biarsenical ligands and tetracysteine motifs for protein labeling in vitro and in vivo: synthesis and biological applications”)、 J. Am. Chem. Soc.、2002年5月29日、第124巻、第21号、p.6063〜6076)。二ヒ素単位に結合した、本発明によるシアニン誘導体は、細胞によって発現された注目するタンパク質を、二ヒ素単位と結合することのできるテトラシステインドメインとの融合タンパク質の形態で、標識化することを可能にする。テトラシステインドメインの配列はCys−Cys−aa1−aa2−Cys−Cysである(ここで、aa1およびaa2はいずれかの天然アミノ酸であり、また好ましくはaa1はPro、そしてaa2はGlyである)。
【0116】
・メトトレキサート(またはトリメトプリム)/ジヒドロ葉酸還元酵素(DHFR):DHFRと化合物、例えばメトトレキサートもしくはトリメトプリムとの間の高度な親和結合が、特にミラーらによって記載されている(「メトトレキサート複合体:生体内タンパク質タグ中の分子」“Methotrexate conjugates: a molecular in vivo protein tag”、 Angew. Chem. Int. Edn. Engl.、2004年、第43巻、p.1672〜1675)。結合剤としてメトトレキサートまたはトリメトプリムに結合している本発明によるシアニン誘導体は、細胞によって発現された注目するタンパク質を、DHFRとの融合タンパク質の形態で、標識化することを可能にする。
【0117】
・SLF’/FKBP(F36V):クラクソン(Clackson)らは、タンパク質FKBPの突然変異体に結合する人工の配位子SLF’で構成される対を記載している(“Redesigning an FKBP-ligand interface to generate chemical dimerizers with novel specificity”、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA、 1998年9月1日、第95巻、第18号、p.10437〜10442)。
結合剤としてSLF’に結合した本発明によるシアニン誘導体は、細胞によって発現された注目するタンパク質を、FKBP(F36V)との融合タンパク質の形態で、標識化することを可能にする。
【0118】
本発明によるシアニン誘導体の結合剤Aはまた、標識化することが望まれる注目される分子上に存在する結合ドメインと、共有結合による結合を可能にする薬剤であることができる。
【0119】
特に、この結合剤は細胞中に存在する「自殺」酵素のための基質であることができる。この場合には、結合ドメインは従って自殺酵素であり、また自殺酵素と、識別化することが望まれる注目するタンパク質とで構成される融合タンパク質の形態で、細胞によって発現される。自殺酵素は、特異的突然変異によって改質された酵素活性を有するタンパク質であり、その特異的突然変異はこのタンパク質に迅速かつ共有結合で基質に結合する能力を与える。これらの酵素は、それぞれが単一の蛍光性分子にのみ結合することができるので、「自殺」酵素と呼ばれており、活性酵素は基質に付着することによってブロックされている。
【0120】
自殺酵素は最近、タンパク質を標識化する方法において用いられている:これらの方法は、標識化が望まれるタンパク質と自殺酵素を含む融合タンパク質を製造することからなっており、またこの融合タンパク質を、例えばこの自殺酵素のための基質に共有結合した標識蛍光色素分子と接触させることからなっている。
【0121】
最近では、自殺酵素の2つの既知の群がこの種の標識化を可能にしている:
−アルキルグアニン−DNAアルキルトランスフェラーゼの突然変異体(またはコバリス(Covalys)によって市販されている「スナップタグ(SnapTag)」であり、国際公開第02/083937号に記載されている)、このための基質はベンジルグアニンまたはベンジルグアニン誘導体である。ベンジルグアニン誘導体は、改質されているベンジルグアニンを意味していると理解されるが、しかしながら、それにも係わらず自殺酵素によって認識される。このような基質は、国際公開第2005/085470号および国際公開第2004/031405号に記載されている。
−ハロアルカン脱ハロゲン酵素の突然変異体(プロメガ(Promega)によって市販されている「ハロタグ(HaloTag)」、これはまた自殺型の酵素反応を起こし(国際公開第2004/072232号中に記載されている技術)、このための基質はハロアルカン、好ましくはクロロアルカンである。基質は、国際公開第2004/072232号および国際公開第2006/093529号中に記載されている。
【0122】
本発明によるシアニン誘導体でこのような自殺酵素を標識化することが望ましい場合には、このシアニンは結合剤を含み、この結合剤はベンジルグアニン基(またはその誘導体の1種)またはハロアルカン(好ましくはクロロアルカン)であり、結合腕を経由してシアニンに結合している。
【0123】
要約すると、本発明によるシアニン誘導体の結合剤Aは、非共有結合パートナーの対の一員であることもでき、または共有結合パートナーの対の一員であることもできる。
【0124】
特に、Aは以下の化合物から選ぶことができる:抗体、抗体断片、ペプチドアプタマー、ビオチン、二ヒ素化合物、トリメトロプリン(trimetroprine)、メトトレキサート、SLF’、ベンジルグアニン族またはクロロアルカン。
【0125】
本発明によるシアニン誘導体は、反応性基Gを含むことができ、この基は、他の物質または分子上に存在する官能基と反応して共有結合を形成することができる。この場合には、反応性基Gは、本発明によるシアニン誘導体と結合することが望まれるこの物質または分子上の官能基と反応するであろう。
【0126】
通常は、この反応性基は求電子性または求核性基であり、それらは、それぞれが適切な球核性または求電子性基と引き合わされた場合に共有結合を形成することができる。反応性基を含むシアニン誘導体と、官能基を備え、結合したMとなる分子との間の結合反応は、反応性基の1つまたはそれ以上の原子を含む共有結合の形成をもたらす。例として、求電子性/求核性基の対および、それらが一緒に引き合わされた場合に形成される共有結合の種類を以下に列挙した。
【0127】
【表1】

【0128】
*:活性化されたエステルは式COYの基を意味すると理解され、ここでYは、
・スクシンイミジルオキシ(−C)またはスルホスクシンイミジルオキシ(−OC−SOH)基から選ばれる離脱基;
・非置換の、または少なくとも1種の求電子性置換基、例えばニトロ、フルオロ、クロロ、シアノまたはトリフルオロメチル基によって置換され、その結果、活性化アリールエステルを形成するアリールオキシ基;
・カルボジイミド基によって活性化されたカルボン酸(無水物−OCORまたはOCNRNHRを形成しており、RおよびRは同一または異なっており、またC−Cアルキル、C−Cペルフルオロアルキル、C−Cアルコキシまたはシクロへキシル基);
・3−ジメチルアミノプロピルまたはN−モルホリノエチル、である。
【0129】
限定されない例として、結合されるMであるべき物質または分子は、以下の官能基、アミン、アミド、チオール、アルデヒド、ケトン、ヒドラジン、ヒドロキシルアミン、第二級アミン、ハロゲン化物、エポキシド、カルボキシリレート(carboxylylate)エステル、カルボン酸、二重結合を含む基またはこれらの官能基の組み合わせ、の少なくとも1種を含み、反応性基Gがこれと反応する。
【0130】
分子Mに担持され、反応性基Gと反応する官能基としては、例えば、アミン、チオール、アルコール、アルデヒドまたはケトン基が挙げられる。好ましくは、反応性基Gはアミンまたはチオール官能基と反応する。
【0131】
これらの官能基を導入する方法は特に、シー. ケスラー(C. Kessler)ら著、エル.ジェイ.クシチュカ(L. J. Kricka)編集、Nonisotopic Probing, Blotting and Sequencing、第2版、ロンドン、アカデミックプレスリミティッド(Academic Press Ltd.)発行、1995年、p.66〜72の中に記載されている。
【0132】
好ましくは、反応性基Gは、以下の化合物の1種から誘導される基である:アクリルアミド、活性アミン(例えば、カダベリンまたはエチレンジアミン)、活性エステル、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、無水物、アニリン、アジド、アジリジン、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、例えばモノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、ヒドラジン(ヒドラジドを含む)、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ハロゲン化スルホニル、またはチオール、ケトン、アミン、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミジルエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、アジドニトロフェニル、アジドフェニル、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド、またはグリオキサル、そして特に下記の式の基:
【0133】
【化21】

【0134】
ここで、nは0〜8の範囲であり、またpは0または1であり、またArは1〜3個のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロ環であり、該ヘテロ原子は場合によってはハロゲン原子によって置換されていてもよい。
【0135】
好ましくは、反応性基Gはカルボン酸、カルボン酸スクシンイミジルエステル、ハロアセトアミド、ヒドラジン、イソチオシアネート、マレイミド基または脂肪族アミンである。
【0136】
結合された分子M
本発明によるシアニン誘導体は細胞中で発生する化合物の蛍光標識化において特に有利であるが、このシアニン誘導体は慣用の結合技術によって、また以下に記載する反応性基を用いることによって、いずれの種類の分子とも結合することができる。
【0137】
結合された分子Mは、例えば生体分子であることができる。生体分子とは、生体中に存在する分子、そして特に有機体の組織を構成する分子、またエネルギーの生成および転換または生体信号の伝達に関わる分子を意味していると理解される。この定義には、核酸、タンパク質、糖、脂質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、代謝中間体、酵素、ホルモンおよび神経伝達物質が包含される。
【0138】
結合腕
本発明によるシアニン誘導体は、反応性基G、結合剤A、結合した分子Mまたはホスファートもしくはホスホナートエステル(好ましくはジエステル)Wを含んでいる。これらの基のそれぞれは、結合腕を介してシアニンに結合している。
【0139】
シアニンがこれらの基の幾つか、例えば2つのホスホナート基および結合剤、を含んでいる場合には、これらの基は同一のまたは異なる腕によって担持されていることができる。
【0140】
G、M、AまたはW基を担持する結合腕Lは、単共有結合、または水素以外に1〜20個の、炭素、窒素、リン、酸素および硫黄原子から選ばれる原子を含む、間隔を開ける腕(spacing arm)であることができ、この結合腕は、直鎖もしくは分岐の、環状もしくはヘテロ環状の、また飽和もしくは不飽和の、そして炭素−炭素結合(単結合、二重結合、三重結合もしくは芳香族系であることができる);炭素−窒素結合;窒素−窒素結合;炭素−酸素結合;炭素−硫黄結合;リン−酸素結合;リン−窒素結合;エーテル結合;エステル結合;チオエーテル結合;アミン結合;アミド結合;カルボキサミド結合;スルホンアミド結合;尿素結合;ウレタン結合;ヒドラジン結合;またはカルバモイル結合から選ばれる結合の組み合わせから構成される。
【0141】
好ましくは、結合腕Lは、水素以外に1〜20個の原子を含んでおり、この原子はC、N、O、PおよびSから選ばれ、またエーテル、チオエーテル、カルボキサミド、スルホンアミド、ヒドラジン、アミンもしくはエステル結合、および芳香族もしくはヘテロ芳香族結合の組み合わせを含むことができる。
【0142】
好ましくはLは炭素−炭素単結合の組み合わせ、およびカルボキサミドもしくはチオエーテル結合から構成される。
【0143】
例としては、Lは以下の連鎖:ポリメチレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリーレンアルキルまたはアリールチオ、から選ぶことができる。
【0144】
有利な態様によれば、結合腕Lは、直鎖または分岐したC〜C20アルキレン基から選ばれる二価の有機基(このアルキレン基は場合によっては1つまたはそれ以上の二重結合または三重結合を含み、および/または場合によっては1つまたはそれ以上のヘテロ原子、例えば酸素、窒素、硫黄もしくはリン、を含んでいる)または1つもしくはそれ以上のカルバモイルもしくはカルボキサミド基;C-Cシクロアルキレン基およびC-C14アリーレン基(このアルキレン、シクロアルキレンもしくはアリーレン基は場合によっては、アルキル、アリールもしくはスルホナート基によって置換されていてもよい)で構成される。
【0145】
特に、結合基Lは以下の基から選ばれる:
【0146】
【化22】

【0147】
【化23】

【0148】
ここで、
−nおよびmは2〜16、好ましくは2〜8の整数であり;
−pおよびrは、1〜16、好ましくは1〜5の整数である。
【0149】
反応性基がカルバモイル基であり、また物質または分子M上の官能基がアミドもしくはチオエーテル基である場合には、結合基1)〜9)が特に適切である。
【0150】
反応性基がエーテル基であり、また物質または分子M上の官能基がアミドもしくはチオエーテル基である場合には、結合基2)、6)、7)および10)〜12)が特に適切である。
【0151】
本発明の化合物の中で、以下の化合物の群の1つが極めて特別に選好される:
−式(I)の化合物で、XがCR基、および/またはYがCR10基、R〜R基の1つまたは2つがL1−W基を表し、またR〜R10の1つまたは2つがL2−A、L2−GまたはL2−Mを表す;
−式(I)の化合物で、XがCR基および/またはYがCR10基、Rおよび/またはRはL1−Wを表し、またR〜R10基の1つまたは2つがL2−A、L2−GまたはL2−M基を表す;
−式(I)の化合物で、Rおよび/またはRはL1−W基を表し、またポリメチンブリッジBは上記の式から選ばれ、その中でR15またはR16はL2−A、L2−GまたはL2−M基を表す;
−式(I)の化合物で、R〜R基の1つまたは2つはL1−W基を表し、またポリメチンブリッジBは上記の式から選ばれ、その中でR15またはR16はL2−A、L2−GまたはL2−M基を表す。
【0152】
これらの化合物の中で、点線がフェニル基を表し、またポリメチンブリッジが以下の式の1つに相当する化合物が極めて特別に選好される:
【0153】
【化24】

【0154】
合成方法
シアニン誘導体の合成は広く文献中に記載されており、また当業者は、本発明による誘導体を調製するためにそれらを参照することができる。シアニンの合成は一般に3種の出発反応体:多環式基(複数)およびメチン鎖の使用に基づいている。これらの3つの反応体は、望ましい置換基を担持するように、それらの縮合の前もしくは後に改質される。
【0155】
従来技術の、シアニンの製造において用いられる中間体の合成の情報が、特に下記の文献から入手可能である:
−ムジュムダール(Mujumdar)ら、「シアニン染料標識化試薬:スルホインドシアニンスクシンイミジルエステル(Cyanine dye labeling reagents: sulfoindocyanine succinimidyl esters)」、Bioconjug. Chem.、1993年、第4巻、第2号、p.105〜111
−ムジュムダール(Mujumdar)ら、「シアニン標識化試薬:スルホベンズインドシアニンスクシンイミジルエステル(Cyanine-Labeling Reagents: Sulfobenzindocyanine Succinimidyl Esters)」、Bioconjugate Chem.、1996年、第7巻、第3号、p.356〜362
これらの文献は、当業者がシアニンの合成に必要な中間体を合成することを可能にする。
−フンエスシー(Hung、S.C.)ら、「エネルギー伝達プライマーにおけるドナー発色団としての、大きな吸収断面積を備えたシアニン染料(Cyanine Dyes with High Absorption Cross Section as Donor Chromophores in Energy Transfer Primers)」、Analytical Biochemistry、1996年、第243巻、第1号、p.15〜27
【実施例】
【0156】
実験的な例によって、更に本発明による幾つかの誘導体の合成を説明する。
【0157】
これらの例の中では、以下の省略形が用いられる:
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
TSTU:N,N,N’,N’−テトラメチルスクシンイミドウロニウムテトラフルオロボラート
TBTU:2−(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルウロニウムテトラフルオロボラート
HPLC:高性能液体クロマトグラフィー
RP−HPLC:逆相高性能液体クロマトグラフィー
TFA:トリフルオロ酢酸
MS:質量分析法
DMF:ジメチルホルムアミド
:保持時間
DY647:ダイオミクス(Dyomics)から市販されている蛍光色素分子であり、水、メタノールおよびDMSOに可溶であり、またCy5のスペクトル特性と同様のスペクトル特性を有している。
DY647−NHS:DY647のN−ヒドロキシスクシンイミド誘導体
DMEM:ダルベッコの変性基礎培地として知られている培地の頭字語
DAPI:環系のための4’,6−ジアミジノ−2−フェニルインドール染料
ACN:アセトニトリル
NHS:N−ヒドロキシスクシンイミド
BG:ベンジルグアニン
BG−CY5:ベンジルグアニン−シアニン−CY5結合体
CY5:アマシャム ファルマシア バイオテク(Amersham Pharmacia Biotech)から市販されている、5つのメチンを含むポリメチンブリッジを有するインドシアニン
BG−DY647:ベンジルグアニン−DY647結合体
【0158】
実施例1:1−[2−(ジエトキシホスホリル)−エチル]−2,3,3−トリメチル−3H−インドリウムブロミドの合成
【0159】
【化25】

【0160】
1.59g(10.0ミリモル)の2,3,3−トリメチル−3H−インドールおよび2.94g(12.0ミリモル)のジエチルブロモエチルホスホナートを混合し、そして70℃で40時間、攪拌しながら加熱した。反応混合物を冷却した後、10mLのメタノールを加え、そして次いで30mLの水を加えた。目的の化合物を、1:1〜5:1の範囲の勾配のメタノール/水で、カラムクロマトグラフィー(シリカRP−18)によって分離した。MS(ESI):324.2。収率:775mg(19%)。
【0161】
実施例2:3−(3−カルボキシプロピル)−1−[2−(ジエトキシホスホリル)エチル]−2,3−ジメチル−3H−インドリウムクロリドの合成
【0162】
【化26】

【0163】
2.31g(10.0ミリモル)の3−(3−カルボキシプロピル)−2,3−ジメチル−3H−インドールおよび2.94g(12.0ミリモル)のジエチルブロモエチルホスホナートを10mLのエタノールに溶解し、そして70℃で64時間攪拌した。周囲温度に戻した後に、残った液体を20mLの水で2回抽出した。液相2つを混合して、20mLのジエチルエーテルで2回抽出した。水相中に残った目的の生成物を、1:3〜3:2の範囲の勾配のメタノール/水(それぞれの溶媒は2体積%の3M塩酸を含んでいる)で、カラムクロマトグラフィーによって分離した。目的の生成物を含む溶液を重炭酸ナトリウムで中和し、そしてその混合物を濃縮し、そして次いでシリカRP−18の短いカラム上に堆積した。水での洗浄によって無機塩を除去した後に、ナトリウム塩の形態の生成物をメタノールで溶出した。MS(ESI):396.2。収率:575mg(12%)。
【0164】
実施例3:1−[2−(ジエトキシホスホリル)−エチル]−3,3−ジメチル−2−((1E,3E)−4−(フェニルアミノ)ブタ−1,3−ジエニル)−3H−インドリウムクロリドの合成
【0165】
【化27】

【0166】
404mg(1.0ミリモル)の1−[2−(ジエトキシホスホリル)エチル]−2,3,3−トリメチル−3H−インドリウムブロミドおよび285mg(1.1ミリモル)のマロンアルデヒド(malonic aldehyde)ジアニリドヒドロクロリドを10mLの酢酸および無水酢酸の混合物(V/V=3:2)に溶解し、そしてこの混合物を60℃で8時間攪拌した。周囲温度に戻した後に、150mLの水を加えた。この溶液をシリカRP−18のカラム上に堆積した。200mLの水で洗浄した後に、目的の生成物を1:2〜3:2の範囲の勾配のアセトニトリル/水(それぞれの溶媒は2体積%の3MHClを含んでいる)で溶出した。目的の生成物を含んでいるこの溶液を重炭酸ナトリウムで中和し、そしてこの混合物を濃縮し、そして次いでシリカRP−18の短いカラム上に堆積した。水での洗浄によって無機塩を除去した後に、ナトリウム塩の形態の生成物をメタノールで溶出した。MS(ESI):453.2。収率:76mg(14%)。
【0167】
実施例4:2−{(1E,3E)−5−[3−(3−カルボキシプロピル)−1−[2−(ジエトキシホスホリル)エチル]−3−メチル−1,3−ジヒドロインドール−(2E)−イリデン]ペンタ−1,3−ジエニル}−1−[2−(ジエトキシホスホリル)エチル]−3,3−ジメチル−3H−インドリウムクロリド(ジエチルホスホノエステルの形態のシアニン1)の合成
【0168】
【化28】

【0169】
実施例2で得た、3−(3−カルボキシプロピル)−1−[2−(ジエトキシホスホリル)エチル]−2,3−ジメチル−3H−インドリウムクロリド48mg(100マイクロモル)、実施例3で得た、1−[2−ジエトキシホスホリル)エチル]−3,3−ジメチル−2−((1E,3E)−4−フェニルアミノ)ブタ−1,3−ジエニル)−3H−インドリウムクロリド53mg(100マイクロモル)および25mg(300マイクロモル)の酢酸ナトリムを、5mLの酢酸と無水酢酸との混合物(v/v=3:2)に溶解し、そしてこの混合物を60℃で3時間攪拌した。真空下で濃縮した後に、残渣を先ず1mLのメタノールに溶解し、そして2mLの水を加えた。目的の生成物を、シリカRP−18のカラム上でのクロマトグラフィーによって分離したが、溶出は1:1〜9:1の範囲の勾配のメタノール/水で行った。MS(ESI):755.3。収率:32mg(38%)。
【0170】
実施例5:ビス(ジエチルホスホノエステル)の形態のシアニン1のアミノエチルアミド誘導体の合成
【0171】
【化29】

【0172】
注目する分子、例えば細胞内の標識化を可能にする、酵素のための基質、をグラフトするのが可能なように、第1級アミン基が導入された。
実施例4で得られた、ビス(ジエチルホスホノエステル)の形態のシアニン1の溶液(100μLのDMF中に160ナノモル)を、5当量のジイソプロピルエチルアミン、2.5当量のターシャリブチル−N−(2−アミノエチル)カルバメート(N−Boc−エチレンジアミン)および2当量のTBTUで処理した。周囲温度で、24時間後に、この出発物質(t=15.7分)は新しい生成物(t=16.8分)に転換された。
HPLC条件:カラム、リクロスフェア(Lichrospher)(登録商標)100、RP18、5μm、125mm×4mm;水中の0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル(ACN)の勾配(1mL/分)。アイソクラティック5%ACN3分間、12分間で5%〜100%の直線勾配。
アセトニトリル中に溶解された、得られた中間体生成物を、トリフルオロ酢酸(ACN/TFA:2/1(v/v))で処理した。脱保護されたアミンを有する生成物(t=11.5分)を半調製用のHPLC(カラム、グレース・バイダックプロテインアンドペプチド(Grace-Vydac Protein & Peptide)C18、218TP510)、流速4mL/分、分析用勾配と同じくACN/水中0.1%TFA勾配、によって分離した。
【0173】
実施例7:ビス(ジエチルホスホノエステル)の形態のシアニン1のN−ヒドロキシスクシンイミド誘導体の合成
実施例4で得たビス(ジエチルホスホノエステル)の形態のシアニン(1.5mg、1.79マイクロモル)を70μLの無水DMF中に溶解し、そして1.25μLのDIPEAおよび0.55mgのTSTUを加えた。HPLC分析(カラム、リクロスフェア(Lichrospher)(登録商標)100、RP18、5μm、125mm×4mm;水中の0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル(ACN)の勾配(1mL/分)。アイソクラティック0%ACN5分間、13分間で0%〜85%の直線勾配、そして次いで2分間で85%〜100%)によって、開始物質(t=17.3分)よりも長い保持時間(t=17.8分)を示すピークが形成されたことが観察された。この生成物を半調製用のHPLC(カラム、グレース・バイダックプロテインアンドペプチド(Grace-Vydac Protein & Peptide)C18、218TP510)、流速5mL/分、分析用勾配と同じくACN/水中0.1%TFA勾配、で分離した。収率:1.1マイクロモル(60%)
【0174】
実施例8:ビス(ジエチルホスホノエステル)の形態のシアニン1のベンジルグアニン誘導体の合成
70μLの無水DMF中の、文献[ジェンドライツィヒエス(Gendreizig S.)ら、「共有標識化による生体内誘導タンパク質二量化(Induced protein dimerization in vivo through covalent labeling)」、J. Am. Chem. Soc.、2003年、第125巻、第49号、p.14970]の手順に従って調製したO−[4−((13−アミノ−2,5,8,11−テトラオキサトリデシル)オキシメチル)−ベンジル]グアニン(0.46マイクロモル)を、0.3μLのDIPEAおよび、0.46μLの実施例7に従って調製したシアニンビス(ジエチルホスホノエステル)のN−ヒドロキシスクシンイミド誘導体で処理した。HPLC分析(カラム、リクロスフェア(Lichrospher)(登録商標)100、RP18、5μm、125mm×4mm;水中の0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル(ACN)の勾配(1mL/分)。アイソクラティック0%ACN5分間、13分間で0%〜70%の直線勾配、そして次いで2分間で85%〜100%、280nmで検出)によって、出発のグアニン誘導体(t=12.1分)に相当するピークの消失が観察され、またより長い保持時間(t=16.4分)を示すピークの形成が観察された。この生成物を半調製用のHPLC(カラム、グレース・バイダックプロテインアンドペプチド(Grace-Vydac Protein & Peptide)C18、218TP510)、流速5mL/分、分析用勾配と同じくACN/水中0.1%TFA直線勾配、で分離した。収率:0.30マイクロモル(66%)。UV(HO)643(180000M−1.cm−1)、280nm(16800M−1.cm−1)。MS:(MALDI−TOF)/IDAA(マトリックス=トランス−インドールアクリル酸)m/z=1185.3(計算値1185.36)。
【0175】
実施例9:DY647のベンジルグアニン誘導体の合成
200μLの無水DMF中の、文献(ケプラーエス(Keppler S.)ら、「融合タンパク質の生体内での微小分子での共有標識化の一般的方法(A general method for the covalent labeling of fusion proteins with small molecules in vivo)」、Nature Biotechnology、2003年、第21巻、第1号、p.86〜89)に従って調製したO−[4−(アミノメチル)ベンジル]グアニン(0.9mg、3.3マイクロモル)を、2.5マイクロモルのDY647のN−ヒドロキシスクシンイミド誘導体(シアニン/ダイオミクス(Dyomics)のスルホン酸化した類似物)で、周囲温度で16時間にわたり処理した。HPLC分析(カラム、X−ブリッジ、C18、5μm、250mm×4.6mm;水中の0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル(ACN)の勾配(1mL/分)。アイソクラティック10%ACN5分間、24分間で10%〜40%の直線勾配、280nmで検出)によって、出発のグアニン誘導体(t=5.8分)に相当するピークの消失が観察され、また反応物DY647−NHSに相当するピークよりも短い中間の保持時間(t=19.8分)を示す新しいピークの形成が観察された。この生成物を半調製用のHPLC(カラム、X−ブリッジC18、10mm×250mm)、流速5mL/分、分析用勾配と同じくACN/水中0.05%TFA直線勾配、で分離した。収率:1.60マイクロモル(64%)(供給したDY647−NHSに関して)。UV(HO)643(250000M−1.cm−1)、280nm(16200M−1.cm−1)。LC−MS:(ES−TOF)m/z=895.4(計算値895.10)。
【0176】
実施例10:シアニンCY5のベンジルグアニン誘導体の合成
−[4−(アミノメチル)ベンジル]グアニン(0.8mg、3.3マイクロモル)を、単一反応性のシアニンCY5のN−ヒドロキシスクシンイミド誘導体(ムンジュムダールアールビー(Munjumdar R. B.)ら、Bioconjug. Chem.、1993年、第4巻、第2号、p.105〜111)(26.5マイクロモル)および400μLの無水DMF中の3マイクロモルのDIPEAで、周囲温度で、90分間処理した。HPLC分析(カラム、リクロスフェア(Lichrospher)(登録商標)100、RP18、5μm、125mm×4mm;水中の0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)中のアセトニトリル(ACN)の勾配(1mL/分)。アイソクラティック5%ACN5分間、14分間で5%〜55%の直線勾配、600nmで検出)によって、誘導体CY5−NHS(tR=15.5分)に相当するピークの消失が観察され、また結合体に相当するより短い保持時間(tR=14.9分)を示すピークが観察され、これを半調製用のHPLC(カラム、グレース・バイダックプロテインアンドペプチド(Grace-Vydac Protein & Peptide)C18、218TP510)、流速5mL/分、分析用勾配と同じくACN/水中0.05%TFA直線勾配、で分離した。UV(HO)647(250000M−1.cm−1)、280nm(14000M−1.cm−1)。LC−MS: (ES−TOF)m/z=909.15(計算値909.10)。
【0177】
実施例11:DY647、CY5およびビス(ジエチルホスホノエステル)の形態のシアニン1とのベンジルグアニン結合体の細胞透過性試験
用いた細胞は、NLS配列によって核内でスナップタグ(SnapTag)を発現する安定なCHO株に由来する。この化合物を、培地(10%の不活性化されたSVFを補給されたDMEM培地、60℃で30分間)へ5マイクロモルの濃度で加え、そして細胞に接触させて1時間放置した。この定温放置の後に、培地で3回の洗浄操作を行った。基質によるスナップタグ(SnapTag)の標識化を可能にするために、単に培地の中での定温放置を更に1時間行った。次いで、顕微鏡分析の前に、DAPIで環系の染色を行った。
結合体BG−DY647およびBG−CY5との細胞の定温放置は、非常に強い画像を生成はしなかった:増幅率を大きくすると、蛍光発光は単に背景ノイズの形態で観察され、このことは、試験した結合体は、細胞の原形質膜を透過していないことを示している。対照的に、実施例8に従って調製した結合体BG−CEP(BG−シアニンエチルホスホナート)との細胞の定温放置では、細胞内に位置する強い蛍光発光を生成し、この化合物が原形質膜を透過していることを示している。上記の画像を図1に示した。
【0178】
実施例12:2−{(1E,3E,5E)−5−[3−(3−カルボキシプロピル)−1−[2−(エトキシホスホリル)エチル]−3−メチル−1,3−ジヒドロインドール−2H−イリデン]ペンタ−1,3−ジエニル}−1−[2−(エトキシホスホリル)エチル]−3,3−ジメチル−3H−インドリウムブロミド(エチルホスホノエステルの形態のシアニン1)の合成
【0179】
【化30】

【0180】
実施例4のジエチルホスホノエステルの形態のシアニン1(100ナノモル)を100μLのジクロロメタン(エタノールがない)に溶解し、そして次いでトリメチルシリルブロミド(12マイクロモル)[マッケナシーイー(McKenna C. E.)ら、Tetrahedron Lett.、1977年、第18巻、第2号、p.155〜158]を加え、1時間30分後、沈殿を観察したが、この溶液を蒸発させ、そして残渣を水とアセトニトリルの混合物中に溶解し、そしてRP−HPLC(シマズSPD−M10Aダイオードアレイ検出器、メルク(Merck)L6200Aポンプ、バイダック(Vydac)218TP510カラム)によって精製した。A:TFA0.1%を含むHO、B:アセトニトリル。流速=4mL/分。15分間で、5%ACN〜100%ACNの直線勾配。出発物質(t=11.9分)から、2つのエチルホスホノエステル官能基を担持する目的の化合物(t=0.1分)を主に得た。
3つのエチル基を有するジホスホノシアニンと1つのエチル基を有するジホスホノシアニンにそれぞれ相当する、t=10.6分およびt=9.7分のピークも観察された。
【0181】
実施例13:2−{(1E,3E,5E)−5−(3−(5−カルボキシペンチル)−4−エチル−3−メチル−5−ホスホノ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]ペンタ−1,3−ジエニル}−5−ホスホノ−3,3−ジメチル−1−(4−エチル)−3H−インドリウム誘導体の調製
この化合物の合成の過程は反応スキーム1に示した。
【0182】
13.1. 5−ブロモ−2,3,3−トリメチル−3H−インドール(14a):
4−ブロモフェニルヒドラジンヒドロクロリド13(6.5g)および3−メチル−2−ブタノン(6.4mL)を、触媒量の酢酸を含むベンゼン中に溶解し、そしてこの混合物を水と共沸させて還流した(16時間)。濃縮した混合物を酢酸(70mL)中に溶解し、そして油浴(120℃)上で12時間加熱し、固体生成物の形成が観察された。HPLC(RP−18、1%のTFAを含む水中のアセトニトリルの勾配)による分析で、新規な生成品の形成が示された。真空下での蒸発の後に、残渣を酢酸エチルに溶解し、そして有機相を炭酸水素ナトリウムの飽和溶液で洗浄し、乾燥(MgSO)し、また蒸発させた。粗生成物をシリカ上のフラッシュ・クロマトグラフィーによって精製し、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配で溶出を行ない、5.5g(80%)の純粋な生成物を得た。HNMR(CDCl)δ=7.5(1H,d)、7.2〜7.3(2H,m)、2.3(3H,s)、1.3(6H,s)[レッチャーアールエム(Letcher R. M.)ら、J. Chem. Soc. Perkin Trans.、1993年、第1巻、p.939〜944]
【0183】
13.2. 5−(ジエトキシホスホノ)−2,3,3−トリメチル−3H−インドール(15a)
5−ブロモ−2,3,3−トリメチル−3H−インドール14a(5g、21ミリモル)をトルエン(5mL)中に溶解し、脱ガスを行い、そして次いでトリエチルアミン(3.2mL)、亜リン酸ジエチル(3mL)およびテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)(1.2g)を加え、この混合物を、窒素下で、そして攪拌しながら80℃で3時間加熱した。クロマトグラフィー(フラッシュ・クロマトグラフィー)をシリカ上で行い、ヘキサン中の酢酸エチルの勾配で溶出を行い、3g(48%)の純粋な生成物を得た。HNMR(CDCl)δ=7.7(2H,m)、7.6(1H,m)、4.13(4H,m)、2.3(3H,s)、1.3(9H,m)。
【0184】
13.3. 5−(ジエトキシホスホノ)−1−エチル−2,3,3−トリメチル−3H−インドリウムヨージド(16a)
5−(ジエトキシホスホノ)−2,3,3−トリメチル−3H−インドール15a(3g)をヨウ化エチル(10mL)で、窒素下での還流で、16時間処理した。このヨウ化エチルを真空下で蒸発させ、そして残渣をヘキサンから粉末化し、遠心分離によって収集し、そして乾燥した。これをそのまま下記の反応において用いた。
【0185】
13.4. 5−(ホスホノ)−1−エチル−2,3,3−トリメチル−3H−インドリウムブロミド
文献[マッケナシーイー(McKenna C. E.)ら、Tetrahedron Lett.、1977年、第18巻、第2号、p.155〜158]の手順に従って、5−(ジエトキシホスホノ)−2,3,3−トリメチル−3H−インドリウムヨージド16aを、ジクロロメタン(5mL)中の過剰のトリメチルシリルブロミドで処理した。完全に脱保護された誘導体を、そのようにして「ホスホン酸」の形態17aで得た。
【0186】
13.5. 3,3−ジメチル−1−エチル−2−((1E,3E)−4−(フェニルアミノ)ブタ−1,3−ジエニル)−5−(ホスホノ)−3H−インドリウムクロリド(18)の調製
1−エチル−5−(ホスホノ)−2,3,3−トリメチル−3H−インドリウムブロミド17a(10ミリモル)を、無水酢酸(10mL)およびマロニックアルデヒドジアニリド(20ミリモル)で処理し、60℃で8時間反応させた。この反応混合物を冷却し、エーテル(50mL)およびヘキサン(50mL)を加え、そして次いで沈降によって油状生成物(これは目的とするアニル(anil)である)を分離した。クロマトグラフィー(RP−18、実施例3)によって精製し、アニル(anil)18を得た。収率:g(40%)。
【0187】
13.6. 5−ブロモ−3−(5−カルボキシペンチル)−2,3−ジメチル−3H−インドール(14a)の調製
4−ブロモフェニルヒドラジンヒドロクロリド13(6.5g)および7−メチル−8−オキソノナン酸(6.7g)[リョンワイイー(Leung Wai-Yee)によって国際公報第02/26891号に記載された方法に従って、エチル2−メチルアセトアセテートおよびエチル6−ブロモヘキサノエートから調製された]を酢酸(50mL)中で5時間還流した。蒸発後に、この生成物をシリカ上のフラッシュ・クロマトグラフィーによって精製した(収量11g)。
【0188】
13.7. 3−(5−カルボキシペンチル)−5−(ジエトキシホスホノ)−2,3−ジメチル−3H−インドール(15b)の調製
5−ブロモ−3−(5−カルボキシペンチル)−2,3−ジメチル−3H−インドール(14b)を例13.2中に記載したように亜リン酸ジエチルで処理して誘導体15bを得た。
【0189】
13.8. 3−(5−カルボキシペンチル)−5−(ジエトキシホスホノ)−2,3−ジメチル−1−エチル−3H−インドリウムヨージド(16b)の調製
3−(5−カルボキシペンチル)−5−(ジエトキシホスホノ)−2,3−ジメチル−3H−インドール(15b)をヨウ化エチルで処理(例13.3を参照)して、化合物16bを得た。
【0190】
13.9. 3−(5−カルボキシペンチル)−2,3−ジメチル−1−エチル−5−(ホスホノ)−3H−インドリウムブロミド(17B)の調製
3−(5−カルボキシペンチル)−5−(ジエトキシホスホノ)−2,3−ジメチル−1−エチル−3H−インドリウムヨージド(16b)をトリメチルシリルブロミドで処理(例13.4を参照)して、化合物17bを得た。
【0191】
13.10. カルボキシレート官能化ジホスホノシアニン(19)
2−{(1E,3E,5E)−5−[3−(5−カルボキシペンチル)−3−メチル−4−エチル−5−ホスホノ−1,3−ジヒドロ−2H−インドール−2−イリデン]ペンタ−1,3−ジエニル}−5−ホスホノ−3,3−ジメチル−1−(4−エチル)−3H−インドリウム
アニル(anil)18(g、7ミリモル)および3−(5−カルボキシペンチル)−2,3−ジメチル−1−(4−エチル)−5−(ホスホノ)−3H−インドリウムブロミド(17b)をジメチルホルムアミド(10mL)中に溶解し、トリエチルアミン(1mL)および無水酢酸(1mL)を加えた、そしてこの混合物を60℃で1時間加熱した。これを冷却し、エチルエーテル(50mL)を加え、そして沈殿を集め、希塩酸(2N)中に溶解し、そして次いでクロマトグラフィー(リクロプレップメルク(Lichroprep Merck)C18)によって精製し、1)酢酸ナトリウム溶液(1.5mM)および2)蒸留水で溶出を行ない、次いで目的の生成品19をエタノール/水(4/6)混合物で溶出した。このようにしてジホスホノシアニン19をナトリウム塩の形態で得た。目的のジホスホノシアニン19の他に、18と化合物17a(これは18の混入物質である)との結合に由来する、官能化されていないジホスホノシアニン20も観察されたが、これらの2つの化合物は逆相クロマトグラフィーによって分離可能であった。HPLC(シマズSPD−M10Aダイオードアレイ検出器、メルク(Merck)L6200Aポンプ、バイダック(Vydac)218TP510カラム)。A:TFAを0.1%含むHO。B:アセトニトリル。流速=4mL/分。23分間で5%ACN〜60%ACNの直線勾配。化合物19:t=14.8分(注:化合物20は、同じ条件下でt=14分を示す)。収率:0.5g(8%)。MS(ES−)m/z=669.3(100%)(ES+)m/z=671.2(60%)。
UV/Visスペクトル:λmax(PO緩衝液0.1M pH7)=649nm(ε64998000M−1.cm−1)A649/A604比=2.6。
蛍光スペクトル:パーキンエルマー(Perkin-Elmer)LS50装置で測定、試料は、BSAを0.1%含むリン酸緩衝液0.1M、pH7で希釈した(励起波長において、最大吸光度=0.04)。励起:600nm(10nm)。放射(最大)=670.5nm(量子収率=13%)。
【0192】
実施例14:アミン官能化したジホスホノシアニンテトラエステル(24)(反応スキーム2を参照)
14.1. N−Boc誘導体(21)
カルボキシル化官能化ジホスホノシアニン19(24mg、32.6マイクロモル)をDMF(2mL)中に溶解し、そして9μLのDIPEAおよびTSTU溶液(500μLのDMF中に35mg)を加えた。20分後に、エチレンジアミンのモノ−Boc誘導体を加えた。1時間の反応後に、実施例12中に記載したように、RP−HPLCによって精製を行った。この結果、N−BOC誘導体21を得た。MS(ES)m/z=811.6(100%)、C4155と計算された。
【0193】
14.2. シアニンジ(ホスホノメチルグリコールモノエステル)のN−BOC誘導体(22)
N−BOC誘導体(21)(3mg、4.7マイクロモル)を無水DMF(550μL)および無水トリエチルアミン(水素化カルシウム上で蒸留、14μL,100マイクロモル)に溶解し、そしてブロモ酢酸メチル(10μL,105マイクロモル)を加えた。この混合物をアルゴンの下で、70℃で16時間加熱した。この反応混合物を、実施例12中に記載したように、RP−HPLCによって精製した(カラム、バイダック(Vydac)218TP510、A:TFAを0.1%含むHO。B:アセトニトリル。流速=4mL/分。40分間で5%ACN〜100%ACNの直線勾配)。出発物質(t=16分)から、2つのホスホノグリコールエステル官能基を有する目的の化合物22(t=22.6分)を主に得た。収率15%。MS(ES)m/z=957.5(100%)、C476613と計算された。
【0194】
14.3. シアニンジ(ホスホノメチルおよびメチルグリコールジエステル)のN−BOC誘導体(23)
方法A: ホスホノモノグリコールエステル誘導体(22)をヨウ化メチルで処理した。その結果、それぞれのホスホン酸基をホスホノメチルおよびメチルグリコールジエステル形態で有する誘導体23を得た。
方法B: DMF中のホスホノモノグリコールエステル誘導体(22)をメタノールの存在下でBOPで処理して生成品23を得た。この生成品をRP−HPLCによって精製した(カラム、バイダック(Vydac)218TP510、A:TFAを0.1%含むHO。B:アセトニトリル。流速=4mL/分。40分間で5%ACN〜100%ACNの直線勾配)。目的の化合物23(t=31.7分)が主に観察された。収率50%。UV(HO/ACN、1/1)、λmax=646.5nm、A646/A600比=3.7。MS(ES)m/z=985.6(100%)、C497113と計算された。
【0195】
14.4. アミン官能化シアニンジ(ホスホノメチルおよびメチルグリコールジエステル)(24)
シアニンジ(ホスホノメチルおよびメチルグリコールジエステル)23を、ジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸で処理した(20℃で30分間)。溶媒を蒸発させた後に、この生成物をRP−HPLCによって精製した。この結果、アミノ官能化されたシアニンテトラエステル24を得た。
【0196】
実施例15: ジホスホノシアニンテトラエステルベンジルグアニン誘導体(26)の合成(反応スキーム2)
上述のように得たシアニン24を、DIPEAを含むDMF中に溶解し、そしてNHSエステル25[DMF中での、過剰のDSS(ジスクシンイミジルスベラート)とO−[4−(アミノメチル)ベンジル]グアニン(ケプラーエス(Keppler S.)ら、Nature Biotechnology、2003年、第21巻、第1号、p.86〜89)との反応によって得た]で処理し、この生成物25を、前述の実施例中のシアニンの精製に用いた条件と同様の条件下でRP−HPLCによって精製した。ベンジルグアニン基によって2つのホスホノメチルおよびメチルグリコールエステルの混合した官能基を担持する目的の化合物26を、RP−HPLC(カラム、バイダック(Vydac)218TP510、A:TFAを0.1%含むHO。B:アセトニトリル。流速=4mL/分。40分間で5%ACN〜100%ACNの直線勾配)による精製の後に得た。収率46%。UV(HO/ACN、1/1)、λmax=650nm、A647/A600比=3.4。MS(ES)m/z=1293.8(M−H)、C658710と計算された。
【0197】
実施例16: シアニンジ(ホスホノメチルグリコールジエステル)のベンジルグアニン誘導体(29)(反応スキーム3を参照)
DMF中のホスホノモノグリコールエステル誘導体(22)を、グリコール酸メチルの存在下で、BOPで処理し、生成品27を得た。この生成品をRP−HPLC(カラム、バイダック(Vydac)218TP510、A:TFAを0.1%含むHO。B:アセトニトリル。流速=4mL/分。40分間で5%ACN〜100%ACNの直線勾配)によって精製した。3つのメチルグリコールエステル官能基を担持する化合物(t=29.9分)および4つのメチルグリコールエステル官能基を担持する目的の化合物27が観察された。収率20%。MS(ES)m/z=1102、C537517と計算された。
【0198】
誘導体27を、BOC保護基を取り除くために純粋なトリフルオロ酢酸で15分間処理し、そして次いで真空下での蒸発およびトルエンとの共蒸発の後に、このようにして得た生成物28をDIPEAを含むDMF中に溶解し、そしてDMF中での過剰のDSS(ジスクシンイミジルスベラート)とO−[4−(アミノメチル)ベンジル]グアニンとの反応によって得たNHSエステル25で処理した(生成品25は、RP−HPLCによって、前述の実施例中のシアニンの精製に用いた条件と同様の条件下で精製した)。4つのメチルグリコールエステル官能基を担持し、またベンジルグアニンによって官能化された目的の化合物29を、RP−HPLC(カラム、バイダック(Vydac)218TP510、A:TFAを0.1%含むHO。B:アセトニトリル。流速=4mL/分。40分間で5%ACN〜100%ACNの直線勾配)による精製の後に得た。
【0199】
HPLC精製の結果として得られた画分の蒸発およびトルエンとの共蒸発の後に、生成物29を得た。これを、次いでDMSO中に溶解し、そして−20℃で貯蔵した。
収率70%。UV(HO/ACN、1/1)、λmax=647nm、A647/A600比=3.5、MS(ES)m/z=1409.6(M−H)、C69911018と計算された。
【0200】
実施例17: 異なるシアニン誘導体の量子収率の比較
本発明によるシアニン誘導体のホスファート/ホスホナートエステル官能基は、細胞中で細胞酵素によって加水分解されて、ホスファート/ホスホナート官能基を与える。ホスホナート基を担持するシアニン誘導体の量子収率(従って、エステル官能基の加水分解後に、細胞中に存在する本発明による化合物に相当する)を、ホスファート/ホスホナートエステル官能基の位置が、化合物の光物理的性質に影響するか否かを調べるために測定した。
【0201】
【表2】

【0202】
これらの結果は、インドール環上にホスホナート官能基を含むシアニンは、インドール環の窒素上にホスホナートを含むシアニンの量子収率よりも、3倍高い量子収率を有することを示している。
【0203】
実施例18: シアニンジ(ホスホノメチルグリコールモノエステル)のベンジルグアニン誘導体(31)(反応スキーム4参照)
実施例14中に記載したホスホノモノグリコールエステル誘導体(22)を、BOC保護基を取り除くために、純粋なトリフルオロ酢酸中で15分間処理し、そして次いで、真空下での蒸発およびトルエンとの共蒸発の後に、結果として得た生成品30をDIPEAを含むDMF中に溶解し、そして実施例16中に記載したように調製したNHSエステル25で処理した。2つのメチルグリコールエステル官能基およびベンジルグアニン基によって官能化された目的の化合物31を、PR−HPLC(カラム、バイダック(Vydac)218TP510、A:TFAを0.1%含むHO。B:アセトニトリル。流速=4mL/分。40分間で5%ACN〜100%ACNの直線勾配)による精製の後に得た。HPLC精製の結果として得られた画分の蒸発およびトルエンとの共蒸発の後に、この生成物を得た。これを、次いでDMSO中に溶解し、そして−20℃で貯蔵した。収率53%。UV(HO/ACN、1/1)、λmax=648nm、A648/A600比=3.2、MS(ES)m/z=1263.6(M−2H)、C63821014と計算された。
【0204】
実施例19: 無傷生体細胞に加えられた化合物29による細胞内タンパク質の標識化およびHTRF測定による標識化の検出
この例は、ホスホナートエステルを含み、そして「スナップタグ」自殺酵素(ST26)のための基質(ベンジルグアニン、BG)に結合した、本発明による化合物が、ホスホナートエステルを含まないシアニン(DY−647)の使用とは対照的に、細胞膜を透過し、また細胞によって注目され、またスナップタグ酵素(ST12)を含む融合タンパク質を標識化することができることを示すことを目的としている。
【0205】
このHTRF技術を、細胞によって生成され、ユウロピウムトリスビピリジンクリプタートと結合したanti−GST抗体(anti−GST−EuTBP)を通して間接的に標識化された、組み換えタンパク質GST−ST26−Flagを用いることによって、生体細胞に、本発明によるシアニン誘導体によってタンパク質の細胞内標識化を試験するのに用いた。
【0206】
培養の後に、CHO−K1細胞を、リポフェクトアミン(lipofectamine)2000(形質移入溶液50μL当たり0.8μL、リポフェクトアミン(商標)形質移入試薬、インビトロジェンインク(Invitorogen Inc.)、カールズバッド、カリフォルニア)の存在下に、黒色96ウェルのマイクロプレート中で、ウェル当たり50000細胞の割合で、形質移入した。形質移入した細胞は、次いで37℃、5%COで24時間培養した。形質移入に用いたプラスミドは、プラスミドpSEM−GST−ST26−Flag(80ng/ウェル)であり、GSTおよびFlagの配列を、コバリス(Covalys)の市販キットの以下の手順に従って、プラスミドpSEMS−SNAP26m−Gateway中に導入して、細胞による融合タンパク質GST−ST26−Flagの合成を生じさせることによって得た。この手順は、文献[ケイジョンソン(K. Johnsson)ら、Engineering Substrate Specificity of O6-Alkylguanine-DNA Alkyltransferase for Specific Protein Labeling in Living Cells、ChemBioChem、2005年、第6巻、第7号、p.1263〜1269]中に記載されたものと同様である。
【0207】
翌日、この細胞をBG−DY647または化合物29(実施例16に従って調製した)ともに培養し、DMSO中の溶液の形態で、50μLの培地中に、最終的に5μMの基質濃度を有するように加えた。この細胞を、20℃で3時間培養し、そして次いで培地を用いて洗浄した。
【0208】
完全標識化: 基質を、「100%標識化」を調べるために用いられるウェルの一部に、ユウロピウムクリプタート(EuTBP)に結合したanti−GST抗体、anti−GST−EuTBP(最終1nM、GSTタグチェックキット、名称62GSTPEB、シスバイオ(Cisbio))、をも含む、溶解緩衝液(cAMPキット、シスバイオ(Cisbio))中に最終100nM(BG−DYまたは化合物29、ウェルによって)で、加えた。
【0209】
受動的な(Passive)標識化:同じ溶解緩衝液中の、抗体anti−GST−EuTBP(最終1nM)だけを、細胞内標識化のパーセンテージを調べるのに用いられる他のウェルへ加えた(これを、そのようにしてDY647か化合物29のいずれかとともに培養した)。
【0210】
対照のウェルを形成するために、「エンプティ(empty)」プラスミド、すなわち注目する配列をコードしていないプラスミドを形質移入された細胞を含むウェルもまた調製した。
【0211】
665nmの蛍光発光をHTRFリーダー(ルビースター(BUBYstar)、BMGラボテクノロジーズ(Labtechnologies))上で測定した。受動的な(passive)標識化で得られた665nmの信号を、完全標識化で得た665nmの信号で割ることによって得た、細胞内標識化のパーセンテージを、図2に示した。
【0212】
基質29の存在下での細胞内標識化のパーセンテージは、参照基質DY−647(これは細胞中へ不十分にしか浸透しない)の存在下で得た標識化のパーセンテージよりもかなり大きいことが観察された。
【0213】
従って、この例は化合物29が細胞膜を透過し、またこのことが細胞内タンパク質の標識化を可能にしており、またホスファートまたはホスホナートエステルを担持していない化合物BG−DY−647ではそうではない、ことを裏付けている。
【0214】
【化31】

【0215】
【化32】

【0216】
【化33】

【0217】
【化34】

【産業上の利用可能性】
【0218】
本発明によるシアニン誘導体は、細胞中のタンパク質の標識化に特に適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式、
【化1】

(上記の式で、点線は1つまたは2つの縮合芳香環を形成するのに必要な原子を表し、それぞれの環は5または6個の原子を含み、
、R、RおよびRは、互いに独立して、
−水素原子、
−置換、または非置換のC−C15アルキル基、
−C−Cアルコキシ基、
−(C−C12)ジアルキルアミノ基、
−C−Cアルコキシカルボニル基、
−(C−C12)ジアルキルアミド基、
−置換または非置換のアリール、アリールアルキルまたはアリールオキシ基、
−ハロゲン原子、
−ニトロ基、
−L1−W、L2−M、L2−AまたはL2−Gから選ばれる基、を表し、
およびRは、互いに独立して、
−置換または非置換のC−C15アルキル基、
−置換または非置換のアリールまたはアリールアルキル基、
−L1−W、L2−M、L2−A、またはL2−Gから選ばれる基、を表し、
Xは、O、SまたはCRから選ばれ、
Yは、O、SまたはCR10から選ばれ、
、R、RおよびR10は独立して、
−置換または非置換のC−C15アルキル基、
−置換または非置換のアリール、アリールアルキルまたはアリールオキシ基、
−L1−W、L2−M、L2−AまたはL2−Gから選ばれる基、を表し、
およびRならびに/またはRおよびR10はまた一緒に、5もしくは6個の原子を含む環、または4もしくは5個の炭素原子と酸素原子を含むヘテロ環を形成し、
Bは1〜5のメチンを含むポリメチンブリッジを表し、この中でメチン基は独立して、非置換であるか、もしくは、
−置換または非置換のC−C15アルキル基、
−置換または非置換のアリール、アリールアルキルまたはアリールオキシ基、
−ニトロ基、
−L1−W、L2−M、L2−AまたはL2−Gから選ばれる基、で置換されているか、あるいは隣接するメチンの2つの置換基は一緒に、4、5もしくは6個の原子を含む飽和または不飽和の炭化水素環を形成することができ、この環は、場合によっては1つまたはそれ以上の、
−置換または非置換のC−C15アルキル基、
−置換または非置換のアリール、アリールアルキルまたはアリールオキシ基、
−ハロゲン原子、
−ニトロ基、
−L1−W、L2−M、L2−AまたはL2−Gから選ばれる基、によって置換されており、
L1およびL2は結合腕であり、
Gは反応性基であり、
Aは結合剤であり、
Mは結合された分子であり、
Wは、シアニン誘導体が、1つまたは2つのL1−W基、およびL2−A、L2−GおよびL2−Mから選ばれる1つまたは2つの基を含むことを条件として、下記の:
【化2】

(上記の式で、
11およびR12は同一または異なっており、そして
−水素原子、
−非置換のC−Cアルキル基、から選ばれ、
13およびR14は同一または異なっており、そして
−水素原子、
−非置換のC−C15アルキル基、
−C−Cアルコキシカルボニル基、
−C−Cアルキルカルボキシ基、
−N,N−(C−C12)ジアルキルアミド基、
−アミド基、
−式−C−S−CO−Alkの基、から選ばれ、
Alkは非置換の直鎖または分岐C−Cアルキルであり、
11およびR12ならびに/またはR13およびR14はまた、一緒に次の式、
【化3】

のフタリジル基を形成していてもよい)ホスファートまたはホスホナートエステルである)で表されるシアニン誘導体。
【請求項2】
下記の式、
【化4】

【化5】

(上記の式で、R〜R、X、YおよびB基は請求項1で定義した通りである)
の1つに相当する、請求項1記載の誘導体。
【請求項3】
ポリメチンブリッジBが下記の式、
【化6】

(上記の式でR15およびR16は、
−水素原子、
−置換または非置換のC−C15アルキル基、
−置換または非置換のアリール、アリールアルキルもしくはアリールオキシ基、
−ハロゲン原子、
−ニトロ基、
−L2−M、L2−A、L2−GまたはL1−Wから選ばれる基、から選ばれ、
L1およびL2は結合腕であり、
Gは反応性基であり、
Aは結合剤であり、
Mは結合された分子であり、
Wはホスファートまたはホスホナートエステル(好ましくはジエステル)である)から選ばれることを特徴とする、請求項1または2記載の誘導体。
【請求項4】
XがCR基および/またはYがCR10基(ここで、1つまたは2つのR−R基がL1−W基を表し、また1つまたは2つのR〜R10基がL2−A、L2−GまたはL2−Mを表している)であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のシアニン誘導体。
【請求項5】
XがCR基および/またはYがCR10基(ここで、Rおよび/またはRがL1−W基を表し、また1つまたは2つのR〜R10基がL2−A、L2−GまたはL2−M基を表している)であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のシアニン誘導体。
【請求項6】
および/またはRがL1−Wを表し、またR15またはR16がL2−A、L2−GまたはL2−M基を表していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のシアニン誘導体。
【請求項7】
1つまたは2つのR〜R基がL1−W基を表し、またR15またはR16が、L2−A、L2−GまたはL2−M基を表していることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のシアニン誘導体。
【請求項8】
W基がホスホナートジエステルであることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項記載の誘導体。
【請求項9】
Wが下記の式、
【化7】

(上記の式で、R11およびR12は同一であり、
−水素原子、
−非置換のC−Cアルキル基、から選ばれ、
13およびR14は同一であり、また以下の基:
−メチルカルボキシル(=−O−CO−CH−=アセトキシメチルエステル)、
−ターシャリ−ブチルカルボキシル(=−O−CO−C(CH=トリメチル−アセトキシメチルエステル)、
−メチルオキシカルボニル(=−CO−OCH=メチルグリコラートエステル)、
−メタンアミド(=−CO−NH=グリコールアミドエステル)、
−N,N−ジメチルメタンアミド(=−CO−N(CH=置換グリコールアミドエステル)、
−N−メチルメタンアミド、から選ばれる)
のホスホナートジエステルであることを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のシアニン誘導体。
【請求項10】
下記の式、
【化8】

(ここで、
−RおよびRは水素原子であり;
−R、RおよびRは、独立して置換または非置換のC−C15アルキル基を表し;
−RおよびRは、互いに独立して置換または非置換のC−C15アルキル基を表し;
−Bは、1〜5の非置換メチンを含むポリメチンブリッジを表し;
−R10は、L2−M、L2−AまたはL2−Gから選ばれる基を表し;
−L2は結合腕であり;
−Gは反応性基であり;
−Aは結合剤であり;
−Mは結合した分子であり;、
−RおよびRは同一であり、またL1−W基を表し;
−L1は、単結合または式−(CH−の基から選ばれた結合腕であり(nは2〜8の範囲の整数である);
−Wは、下記の式
【化9】

(ここで、R11およびR12は同一かまたは異なっており、また、
−水素原子;
−非置換のC−Cアルキル基;から選ばれ;
13およびR14は同一かまたは異なっており、また
−水素原子;
−非置換のC−C15アルキル基:
−C−Cアルコキシカルボニル基;
−C−Cアルキルカルボニル基;
−N,N−(C−C12)ジアルキルアミド基;
−アミド基;
−式−C−S−CO−Alkの基(Alkは非置換の直鎖または分岐C−Cアルキルである)から選ばれ;
11およびR12並びに/またはR13およびR14はまた、一緒に下記の式、
【化10】

のフタリジル基を形成してもよい)で表される基から選ばれるホスホナートジエステルである)に相当することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のシアニン誘導体。
【請求項11】
下記の式、
【化11】

(ここで、
−R、R、RおよびRは水素原子であり;
−R、RおよびRは独立して置換または非置換のC−C15アルキル基を表し;
−Bは1〜5の非置換メチンを含むポリメチンブリッジを表し;
−R10はL2−M、L2−AまたはL2−Gから選ばれる基を表し;
−L2は結合腕であり;
−Gは反応性基であり;
−Aは結合剤であり;
−Mは結合した分子であり;
−RおよびRは同一であり、またL1−W基を表し;
−L1は単結合または式−(CH−の基から選ばれる結合腕であり(nは2〜8の範囲の整数である);
−Wは下記の式、
【化12】

(ここで、
11およびR12は同一かまたは異なっており、また、
−水素原子;
−非置換C−Cアルキル基;から選ばれ、
13およびR14は同一かまたは異なっており、また、
−水素原子;
−非置換C−C15アルキル基;
−C−Cアルコキシカルボニル基;
−C−Cアルキルカルボニル基;
−N,N−(C−C12)ジアルキルアミド基;
−アミド基;
−式−C−S−CO−Alkの基(Alkは非置換の直鎖または分岐C−Cアルキルである)から選ばれ;
11およびR12並びに/またはR13およびR14はまた、一緒に下記の式、
【化13】

のフタリジル基を形成していてもよい)から選ばれる式を持つホスホナートジエステルである)に相当することを特徴とする請求項1〜3および5のいずれか1項記載のシアニン誘導体。
【請求項12】
結合腕L1およびL2が、単共有結合、または炭素、窒素、リン、酸素および硫黄原子から選ばれた、水素以外に1〜20個の原子を含む、間隔を開ける腕であることができ、この結合基は、直鎖もしくは分岐の、環状もしくはヘテロ環状の、また飽和もしくは不飽和の、そして炭素−炭素結合(単結合、二重結合、三重結合もしくは芳香族系であることができる);炭素−窒素結合;窒素−窒素結合;炭素−酸素結合;炭素−硫黄結合;リン−酸素結合;リン−窒素結合;エーテル結合;エステル結合;チオエーテル結合;アミン結合;アミド結合;カルボキサミド結合;スルホンアミド結合;尿素結合;ウレタン結合;ヒドラジン結合;またはカルバモイル結合から選ばれる結合の組み合わせから構成されることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項記載のシアニン誘導体。
【請求項13】
結合基Lが、炭素、窒素、リン、酸素および硫黄原子から選ばれた、水素以外に1〜20個の原子を含んでおり、また更に少なくとも1つのエーテル、チオエーテル、カルボキサミド、スルホンアミド、ヒドラジン、アミンもしくはエステル結合、および芳香族もしくはヘテロ芳香族結合を含むことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項記載のシアニン誘導体。
【請求項14】
結合基Lが、以下の置換もしくは非置換の連鎖:ポリメチレン、アリーレン、アルキルアリーレン、アリーレンアルキルまたはアリールチオ、から選ばれることを特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項記載のシアニン誘導体。
【請求項15】
反応性基Gが、以下の化合物、アクリルアミド、活性アミン(例えば、カダベリンまたはエチレンジアミン)、活性エステル、アルデヒド、ハロゲン化アルキル、無水物、アニリン、アジド、アジリジン、カルボン酸、ジアゾアルカン、ハロアセトアミド、ハロトリアジン、例えばモノクロロトリアジン、ジクロロトリアジン、ヒドラジン(ヒドラジドを含む)、イミドエステル、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ハロゲン化スルホニル、チオール、ケトン、アミン、酸ハロゲン化物、ヒドロキシスクシンイミジルエステル、ヒドロキシスルホスクシンイミジルエステル、アジドニトロフェニル、アジドフェニル、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオンアミド、またはグリオキサル、そして特に下記の式、
【化14】

(ここで、nは0〜8の範囲であり、またpは0または1であり、またArは1〜3個のヘテロ原子を含む5員もしくは6員のヘテロ環であり、該ヘテロ原子は場合によってはハロゲン原子によって置換されていてもよい)の基、から誘導される基から選ばれることを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項記載のシアニン誘導体。
【請求項16】
A基が、ベンジルグアニンまたはその誘導体の1つ(これはアルキルグアニントランスフェラーゼの基質である)、ハロアルカン(これはハロアルカン脱ハロゲン酵素の基質である)、特に、クロロアルカン、抗体、抗体断片、ペプチドアプタマー、ビオチン、二ヒ素化合物、トリメトロプリン、メトトレキサート、SLF’、から選ばれることを特徴とする請求項15記載のシアニン誘導体。
【請求項17】
M基が、核酸、タンパク質、糖、脂質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、代謝中間体、酵素、ホルモンおよび神経伝達物質から選ばれる生体分子であることを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項記載のシアニン誘導体。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか1項記載のシアニン誘導体の蛍光標識としての使用。
【請求項19】
細胞中に存在する生体分子を標識化する方法であって、細胞外の媒体中に、請求項1〜17のいずれか1項記載の、結合剤Aを含む化合物を導入することからなり、前記の生体分子が結合ドメインを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−520950(P2010−520950A)
【公表日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553186(P2009−553186)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【国際出願番号】PCT/FR2008/050393
【国際公開番号】WO2008/125788
【国際公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(507179726)シ ビオ アンテルナショナル (9)
【Fターム(参考)】