説明

シクロオキシゲナーゼ活性阻害剤

【課題】COX阻害活性を有する、好ましくはシクロオキシゲナーゼ1型に比べてシクロオキシゲナーゼ2型を選択的に強く阻害するシクロオキシゲナーゼ阻害活性を有する安全性の高いエキス、該エキスを含有するシクロオキシゲナ−ゼ活性阻害剤、およびこれらを含有する組成物を提供すること。
【解決手段】仙草、エキナセア、ヘラオオバコ、ハマナスから選ばれる1種以上から有機溶媒又は有機溶媒水溶液により抽出して得られ、かつシクロオキシゲナーゼ阻害活性を含有することを特徴とするエキス、該エキスを含有してなるシクロオキシゲナーゼ活性阻害剤、ならびに前記エキスまたは前記シクロオキシゲナーゼ活性阻害剤を含有することを特徴とする組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物由来であり、従来から食材として用いられてきた植物である仙草、エキナセア、ヘラオオバコ、ハマナスから得られるシクロオキシゲナーゼ阻害活性を有するエキス、シクロオキシゲナーゼ活性阻害剤、およびこれらを含有する組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シクロオキシゲナーゼ(Cyclooxygenase,以下COXと称す)は、アラキドン酸からプロスタグランジンやトロンボキサン等のケミカルメディエーターを産生するアラキドン酸カスケードの律速酵素である。生体内には、2つのCOXアイソザイムが存在し、それぞれシクロオキシゲナーゼ1型(COX−1)及びシクロオキシゲナーゼ2型(COX−2)と呼ばれている。COX−1は、血小板や胃、血管内皮細胞など多くの細胞に恒常的に発現しており、血小板凝集、胃酸分泌抑制作用、胃粘膜保護などの作用を有し、生体の保護に関わる。COX−2は炎症性刺激やホルモン刺激によってその産生が誘導される誘導型酵素であり、発熱、発痛、浮腫などの炎症といった反応を担っているプロスタグランジン類を産生すると考えられている。
【0003】
アスピリンやインドメタシンなどのこれまでに知られる非ステロイド系抗炎症剤はCOX−1、COX−2ともによく阻害する。このとき、COX−2だけでなく、COX−1も強く阻害することから、消化性潰瘍、めまいなどの副作用が生じる。これらのことから、より副作用が少ない、つまりCOX−2に対する選択性の高いCOX活性阻害剤で、安全性の高いCOX活性阻害剤の開発が望まれている(例えば、特許文献1、非特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−76910号公報
【非特許文献1】FitzGerald GA.Nature Reviews 2:879−890,2003
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、COX阻害活性を有する、好ましくはCOX−1に比べてCOX−2を選択的に強く阻害するシクロオキシゲナーゼ阻害活性を有する安全性の高いエキス、該エキスを含有するシクロオキシゲナ−ゼ活性阻害剤、およびこれらを含有する組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、安全性の観点から、食用素材の抽出物について、イン・ビトロ(in vitro)での系を用いてCOX阻害物質の検索を行った。その結果、仙草、エキナセア、ヘラオオバコ、ハマナスに高いCOX阻害活性があることを見出し、本発明の完成に至った。
すなわち、本発明の要旨は、
〔1〕 仙草、エキナセア、ヘラオオバコ、ハマナスから選ばれる1種以上から有機溶媒又は有機溶媒水溶液により抽出して得られ、かつCOX阻害活性を含有することを特徴とするエキス(以下、COX阻害活性エキスともいう)、
〔2〕 シクロオキシゲナーゼ1型に比べ、シクロオキシゲナ−ゼ2型をより強く阻害することを特徴とする前記〔1〕記載のエキス、
〔3〕 前記〔1〕または〔2〕記載のエキスを含有してなるシクロオキシゲナーゼ活性阻害剤、
〔4〕 前記〔1〕もしくは〔2〕記載のエキスまたは前記〔3〕記載のシクロオキシゲナーゼ活性阻害剤を含有することを特徴とする組成物、に関する。
【発明の効果】
【0006】
本発明のCOX阻害活性エキスは、食品由来のため、安全性の高いものである。また、本発明のCOX活性阻害剤は、COX−1の阻害活性は緩和でありながら、COX−2には比較的強い阻害活性を有しているというCOX−2に比べて選択的な阻害活性を示すことから、副作用の少ないと期待される。ここでいうCOX−2に対する選択性とは、COX−1とCOX−2のIC50値の比率(COX−1/COX−2)が1.5以上の数を示す。なお、IC50値は、後述の実施例に記載の方法で測定された値である。
【0007】
更に、本発明は食品組成物をはじめ、外用剤組成物、医薬品組成物並びに医薬部外品組成物への応用が可能であり、COX活性阻害作用に基づき、炎症を伴う様々な疾患、機能低下の予防及び改善効果が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で使用する仙草は、中国原産のシソ科センソウ属の植物であり、学名メソナ・チネンシス(Mesona chinensis)やメソナ・プロカンベンス(Mesona procumbens)が挙げられる。中国や台湾では、茎や葉を米と共に煮て、砂糖を加えて漉したものは冷やすと褐色のところてんのようになり、飲料にされる(例えば、世界有用植物事典 平凡社 677頁参照)。また、中国では全草を薬用とし、風邪、関節炎の痛みに用いられるが、その作用機構については知られていない。
【0009】
本発明に使用される仙草試料として、茎や葉をミキサーなどで粉砕したものを用いることが出来る。必要に応じて、全草を使用しても良い。また、粉砕するには試料は乾燥していることが好ましいが、乾燥状態は限定されない。
【0010】
本発明で使用するエキナセアは、北米東岸からテキサスにかけて分布するキク科エキナセア属の植物で、学名エキナセア・アングスチフォリア(Echinacea angustifolia)が挙げられる。本植物は古くからインディアンによって、根を噛み砕いた液体が、咳止めや咽喉のただれに効果があるとして用いられ、食経験の長い植物である。しかし、その効果についての作用機構は調べられていなかった。
【0011】
本発明で使用される抽出試料は、葉をミキサーなどで粉砕したものを用いることが出来る。また、茎や花も抽出試料として含み得る。粉砕するには試料は乾燥していることが好ましいが、乾燥状態は限定されない。
【0012】
本発明で使用するヘラオオバコは、ヨーロッパ原産でオオバコ科オオバコ属の植物で、学名プランタゴ・ランセオラタ(Plantago lanceolata)が挙げられる。古くから若葉は和え物や天ぷらとして食されたり、干して煎じたものは咳止め、解熱、貧血などの民間薬として使用されてきたが、その効能についての作用機構は調べられていなかった。
【0013】
本発明で使用するヘラオオバコ試料として、葉をミキサーなどで粉砕したものを用いることが出来る。また、茎や花も抽出試料として含み得る。粉砕するには試料は乾燥していることが好ましいが、乾燥状態は限定されない。
【0014】
本発明で使用するハマナスはバラ科バラ属の植物で、学名ローザ・ルゴサ(Rosa rugosa)が挙げられる。これまで、収れん作用や胆汁分泌促進作用、α‐グルコシダーゼ阻害活性が知られていたが、COXとの関連は明らかにされていなかった(特開2005−306801号公報参照)。また、中国では古くから「メイクイ花茶」として飲まれてきており、十分な食経験が知られているものである。
【0015】
本発明で使用するハマナス試料として、花部及び茎をミキサーなどで粉砕したものを用いることが出来る。粉砕するには試料は乾燥していることが好ましいが、乾燥状態は限定されない。
【0016】
抽出溶媒としては、有機溶媒または有機溶媒水溶液が用いられる。有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの低級アルコールや酢酸エチルなどのエステル類が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの有機溶媒は単独又は2種類以上を混合して用いても良く、また有機溶媒と水の混合溶媒である有機溶媒水溶液として用いても良い。なお、安全性の点からは、エタノール又はエタノール水溶液で抽出することが好ましい。また、有機溶媒どうしまたは有機溶媒と水とを混合する場合の、各溶媒の比率としては特に限定はない。
【0017】
抽出方法としては、例えば、前記4種から選ばれる1種以上の植物試料と前記抽出溶媒とを混合し、室温で1−5時間撹拌又は抽出溶媒の煮沸温度で1−5時間還流して抽出を行った後、ろ過や遠心分離などにより抽出液から試料残渣を取り除き、減圧又は限外ろ過により抽出物を濃縮する方法が挙げられる。更に、必要に応じて抽出溶媒を完全に除去して乾固、凍結乾燥などにより乾燥しても良い。
【0018】
前記のようにして得られるCOX阻害活性エキスは、COX−1に比べてCOX−2を選択的に強く阻害するCOX阻害活性を有する。ここで、COX阻害活性は、後述の実施例に記載の方法で測定される。
【0019】
なお、仙草、エキナセア、ヘラオオバコ、ハマナスの各1種類の試料から前記の方法で抽出したCOX阻害活性エキスを、極性の低い有機溶媒で分配した油層(例えば、酢酸エチル層や1−ブタノール層)由来のエキスにCOX阻害活性が認められ、極性の高い溶媒層(例えば、水層)由来のエキスにはCOX阻害活性は認められなかった。前記酢酸エチル層や1−ブタノール層によって分配することにより、より精製されたCOX阻害活性エキスを得ることができる。
【0020】
本発明のCOX阻害活性エキスは、COX活性阻害剤として使用することが出来る。従って、本発明は、前記COX阻害活性エキスを含有してなるCOX活性阻害剤に関する。
【0021】
前記COX活性阻害剤には、有効成分として前記COX阻害活性エキスを含有しているため、COX−1に比べ、COX−2をより強く阻害することを特徴とするものである。前記COX活性阻害剤は、該エキスによるCOX阻害活性を損なわなければ、他の成分を混合しても良い。他の成分としては、特に限定は無い。
【0022】
前記COX阻害活性エキスまたは前記COX活性阻害剤は、各種基材に配合して組成物としても良い。配合量や基材の種類は特に限定されるものではなく、適時設定すれば良い。基材としては、食品、医薬品、医薬部外品などに用いられる物であれば特に限定は無く、例えば経口投与基材としては、錠剤、カプセル、飴、グミ或いは飲料などが挙げられる。これらの各種基材への配合方法としては、食品、医薬品、医薬部外品などの分野の公知の技術を用いて、製造することが出来る。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0024】
(実施例1)
仙草粉末10.0gに対して100mlのエタノールを加え、室温で1時間撹拌した。抽出液をろ紙でろ過し、減圧下のロータリーエバポレーターでろ液を濃縮した。10.0gの試料から0.10gの抽出物を得た。抽出物濃度が10mg/mlとなるようジメチルスルホキシドに溶解し、以下の実験に用いた。
【0025】
(試験例1)COX活性阻害試験
カイマン・ケミカル(Cayman chemical)社のコックス・インヒビター・スクリーニング・アッセイ(COX Inhibitor Screening Assay、カタログ番号No.560131)を用いて試験を行った。
【0026】
(試料溶液)
試料溶液としては実施例1にて得た仙草抽出物を抽出物濃度が10、1.0、0.1、0.01mg/mlとなるよう、ジメチルスルホキシドにて適宜希釈したものを用いた。対照として、いずれのエキスも含有していないジメチルスルホキシドを陰性対照として用いた。また、陽性対照として、ジメチルスルホキシドにインドメタシン(SIGMA社製)、「NS−398」(CALBIOCHEM社製)、イブプロフェン(和光純薬社製)を溶解したものを用いた。
【0027】
(方法)
酵素液であるCOX液に、基質であるアラキドン酸を添加し、プロスタグランジンの生成反応を行った(以降、COX反応という)。この時調整した各試料溶液をキットの試験法に従い添加し、プロスタグランジンの生成量への影響を調べた。COX反応によって生成されたプロスタグランジンは酵素免疫測定法(EIA法)を利用して定量した。この時、対照として用いられている化合物インドメタシンは、COX−1、COX−2両方の活性を阻害する化合物として知られている。また、NS−398はCOX−2を特異的に、イブプロフェンはCOX−1を特異的に阻害する化合物である。(例えば、Timothy D.Warner.et al. Proc.Natl.Acad.Sci.(1999);96:7563−68参照)酵素活性阻害率は対照群に対する各試料溶液のプロスタグランジン産生量から算出した。この結果を用いて各阻害剤のIC50値(50%活性阻害を示す阻害剤量)を求めた。結果を表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
表1より、実施例1で得られた本発明品である仙草抽出物にはCOX−1、COX−2に対して阻害活性が認められた。更に詳しくは、NS−398と同様に、COX−1/COX−2が1.5以上の値を示した。つまり、COX−1に比べてCOX−2の選択性を認めた。よって、本発明品は炎症時などで発現されるCOX−2を特異的に抑制する傾向にあることが期待される。
【0030】
(実施例2)
仙草粉末30.0gに対して300mlのエタノールを加え、室温で1時間撹拌した。抽出液をろ紙でろ過し、減圧下のロータリーエバポレーターでろ液を濃縮した。30.0gの試料から0.57gの抽出物を得た。
【0031】
上記の仙草抽出物を水と酢酸エチルを用いて分配を行った。得られた抽出物を酢酸エチル(40ml)と水(40ml)の混合溶液中で溶解し、静置した後に上層を酢酸エチル画分として回収した。この操作を計3回繰り返し、約120mlの酢酸エチル層画分を得た。更にこの溶液画分をロータリーエバポレーターにより乾固し、0.17gの酢酸エチル抽出画分を得た。水層については、更に1‐ブタノールを加え、同様に分配を行い、0.23gの水層抽出画分と0.15gのブタノール層抽出画分を得た。更に、各抽出画分の濃度が1mg/mlとなるようジメチルスルホキシドに溶解した。
【0032】
(試験例2)
試験例1と同様の方法で、実施例2で得られた仙草分画エキスのCOX活性阻害率を算出した。COX−1については、酢酸エチル層(AcOEt)で93.04%、ブタノール層(BuOH)では71.06%の阻害が認められたが、水層は陰性対照と同程度であった。同様にCOX−2についても酢酸エチル層で96.42%、ブタノール層で97.17%の阻害が認められたが、水層は陰性対照と同程度であった(図1参照)。
【0033】
(試験例3)
実施例2で得られた仙草分画エキスを1.0,0.1,0.01mg/mlとなるよう、ジメチルスルホキシドにて調整した。対照として、インドメタシンをジメチルスルホキシドに溶解したものを用いた。
【0034】
試験例1と同様の方法で、上記仙草分画エキスのCOX活性阻害率を算出した。この結果を用いて各阻害剤のIC50値を求めた。結果を表2に示す。
【0035】
【表2】

【0036】
表2より、仙草エキスの酢酸エチル及びブタノール層画分にCOX−2阻害活性が認められた。また、仙草ブタノール層画分から得られたエキスには、酢酸エチル層画分に比べて、約2.2倍の阻害活性が認められたが、水層画分にはほとんど活性が見られなかった。
【0037】
(実施例3)
エキナセア粉末10.0gに対して100mlのエタノールを加え、室温で1時間撹拌した。抽出液をろ紙でろ過し、減圧下のロータリーエバポレーターでろ液を濃縮した。10.0gの試料から0.13gの抽出物を得た。抽出物濃度が10mg/mlとなるようジメチルスルホキシドに溶解し、エキナセアエキスとして以下の実験に用いた。
【0038】
(試験例4)
試験例1と同様の方法で、上記エキナセア分画エキスのCOX−1及びCOX−2活性阻害率を算出した。この結果を用いて各阻害剤のIC50値を求めた。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】

【0040】
表3より、実施例3で得られた本発明品であるエキナセア抽出物にはCOX−1、COX−2に対して阻害活性が認められた。更に詳しくは、NS−398と同様に、COX−1/COX−2が1.5以上の値を示した。つまり、COX−1に比べてCOX−2の選択性を認めた。よって、本発明品は炎症時などで発現されるCOX−2を特異的に抑制する傾向にあることが期待される。
【0041】
(実施例4)
エキナセア粉末30.0gに対して300mlのエタノールを加え、室温で1時間撹拌した。抽出液をろ紙でろ過し、減圧下のロータリーエバポレーターでろ液を濃縮した。30.0gの試料から0.58gの抽出物を得た。
【0042】
上記のエキナセア抽出物を水と酢酸エチルを用いて分配を行った。得られた抽出物を酢酸エチル(40ml)と水(40ml)の混合溶液中で溶解し、静置した後に上層を酢酸エチル画分として回収した。この操作を計3回繰り返し、約120mlの酢酸エチル層画分を得た。更にこの溶液画分をロータリーエバポレーターにより乾固し、0.23gの酢酸エチル抽出画分を得た。水層については、更に1‐ブタノールを加え、同様に分配を行い、0.13gの水層抽出画分と0.21gのブタノール層抽出画分を得た。更に、各抽出画分の濃度が1mg/mlとなるようジメチルスルホキシドに溶解した。
【0043】
(試験例5)
試験例1と同様の方法で、実施例4で得られたエキナセア分画エキスのCOX活性阻害率を算出した。COX−1については、酢酸エチル層で58.27%、ブタノール層では78.51%の阻害が認められたが、水層に阻害活性は認められなかった。同様にCOX−2についても酢酸エチル層で99.40%、ブタノール層で98.16%の阻害が認められたが、水層は陰性対照と同程度であった(図2参照)。
【0044】
(試験例6)
実施例4で得られたエキナセア分画エキスを1.0,0.1,0.01mg/mlとなるよう、ジメチルスルホキシドにて調整した。対照として、インドメタシンをジメチルスルホキシドに溶解したものを用いた。
【0045】
試験例1と同様の方法で、上記エキナセア分画エキスのCOX活性阻害率を算出した。この結果を用いて各阻害剤のIC50値を求めた。結果を表4に示す。
【0046】
【表4】

【0047】
表4より、エキナセアエキスの酢酸エチル層画分およびブタノール層画分にCOX−2阻害活性が認められた。エキナセアの酢酸エチル層画分から得られたエキスには、ブタノール層画分に比べて、約2.8倍の阻害活性が認められたが、水層画分にはほとんど活性が見られなかった。
【0048】
(実施例5)
ヘラオオバコ粉末10.0gに対して100mlのエタノールを加え、室温で1時間撹拌した。抽出液をろ紙でろ過し、減圧下のロータリーエバポレーターで濃縮した。10.0gの試料から0.50gの抽出物を得た。抽出物濃度が10mg/mlとなるようジメチルスルホキシドに溶解し、ヘラオオバコエキスとして以下の実験に用いた。
【0049】
(試験例7)
試験例1と同様の方法で、上記ヘラオオバコ分画エキスのCOX−1及びCOX−2活性阻害率を算出した。この結果を用いて各阻害剤のIC50値を求めた。結果を表5に示す。
【0050】
【表5】

【0051】
表5より、実施例5で得られた本発明品であるヘラオオバコ抽出物にはCOX−1、COX−2に対して阻害活性が認められた。更に詳しくは、NS−398と同様に、COX−1/COX−2が1.5以上の値を示した。つまり、COX−1に比べてCOX−2の選択性を認めた。よって、本発明品は炎症時などで発現されるCOX−2を特異的に抑制する傾向にあることが期待される。
【0052】
(実施例6)
ヘラオオバコ粉末30.0gに対して300mlのエタノールを加え、室温で1時間撹拌した。抽出液をろ紙でろ過し、減圧下のロータリーエバポレーターでろ液を濃縮した。30.0gの試料から1.24gの抽出物を得た。
【0053】
上記のヘラオオバコ抽出物を水と酢酸エチルを用いて分配を行った。得られた抽出物を酢酸エチル(40ml)と水(40ml)の混合溶液中で溶解し、静置した後に上層を酢酸エチル画分として回収した。この操作を計3回繰り返し、約120mlの酢酸エチル層画分を得た。更にこの溶液画分をロータリーエバポレーターにより乾固し、0.40gの酢酸エチル抽出画分を得た。水層については、更に1‐ブタノールを加え、同様に分配を行い、0.49gの水層抽出画分と0.33gのブタノール層抽出画分を得た。更に、各抽出画分の濃度が1mg/mlとなるようジメチルスルホキシドに溶解した。
【0054】
(試験例8)
試験例1と同様の方法で、実施例6で得られたヘラオオバコ分画エキスのCOX活性阻害率を算出した。COX−1については、酢酸エチル層で60.59%、ブタノール層では37.03%の阻害が認められたが、水層は陰性対照と同程度であった。同様にCOX−2についても酢酸エチル層で97.81%、ブタノール層で78.97%の阻害が認められたが、水層は陰性対照と同程度であった(図3参照)。
【0055】
(試験例9)
実施例6で得られたヘラオオバコ分画エキスを1.0,0.1,0.01mg/mlとなるよう、ジメチルスルホキシドにて調整した。対照として、インドメタシンをジメチルスルホキシドに溶解したものを用いた。
【0056】
試験例1と同様の方法で、上記ヘラオオバコ分画エキスのCOX活性阻害率を算出した。この結果を用いて各阻害剤のIC50値を求めた。結果を表6に示す。
【0057】
【表6】

【0058】
表6より、ヘラオオバコエキスの酢酸エチル層画分およびブタノール層画分にCOX−2阻害活性が認められた。ヘラオオバコの酢酸エチル層画分から得られたエキスには、ブタノール層画分に比べて、約8.2倍の阻害活性が認められたが、水層画分にはほとんど活性が見られなかった。
【0059】
(実施例7)
ハマナス粉末10.0gに対して100mlのエタノールを加え、室温で1時間撹拌した。抽出液をろ紙でろ過し、減圧下のロータリーエバポレーターでろ液を濃縮した。10.0gの試料から0.22gの抽出物を得た。抽出物濃度が10mg/mlとなるようジメチルスルホキシドに溶解し、以下の実験に用いた。
【0060】
(試験例10)
試験例1と同様の方法で、上記ハマナス分画エキスのCOX−1及びCOX−2活性阻害率を算出した。この結果を用いて各阻害剤のIC50値を求めた。結果を表7に示す。
【0061】
【表7】

【0062】
表7より、実施例7で得られた本発明品であるハマナス抽出物にはCOX−1、COX−2に対して阻害活性が認められた。更に詳しくは、NS−398と同様に、COX−1/COX−2が1.5以上の値を示した。つまり、COX−1に比べてCOX−2の選択性を認めた。よって、本発明品は炎症時などで発現されるCOX−2を特異的に抑制する傾向にあることが期待される。
【0063】
(実施例8)
ハマナス粉末30.0gに対して300mlのエタノールを加え、室温で1時間撹拌した。抽出液をろ紙でろ過し、減圧下のロータリーエバポレーターで濃縮した。30.0gの試料から1.36gの抽出物を得た。
【0064】
上記のハマナス抽出物を水と酢酸エチルを用いて分配を行った。得られた抽出物を酢酸エチル(40ml)と水(40ml)の混合溶液中で溶解し、静置した後に上層を酢酸エチル画分として回収した。この操作を計3回繰り返し、約120mlの酢酸エチル層画分を得た。更にこの溶液画分をロータリーエバポレーターにより乾固し、0.87gの酢酸エチル抽出画分を得た。水層については、更に1‐ブタノールを加え、同様に分配を行い、0.24gの水層抽出画分と0.24gのブタノール層抽出画分を得た。更に、各抽出画分の濃度が1mg/mlとなるようジメチルスルホキシドに溶解した。
【0065】
(試験例11)
試験例1と同様の方法で、実施例8で得られたハマナス分画エキスのCOX活性阻害率を算出した。COX−1については、酢酸エチル層で96.66%、ブタノール層では19.04%の阻害が認められた。同様にCOX−2についても酢酸エチル層で97.10%、ブタノール層で43.81%の阻害が認められた(図4参照)。
【0066】
(試験例12)
実施例8で得られたハマナス分画エキスを1.0,0.1,0.01mg/mlとなるよう、ジメチルスルホキシドにて調整した。対照として、インドメタシンをジメチルスルホキシドに溶解したものを用いた。
【0067】
試験例1と同様の方法で、上記ハマナス分画エキスのCOX活性阻害率を算出した。この結果を用いて各阻害剤のIC50値を求めた。結果を表8に示す。
【0068】
【表8】

【0069】
表8より、ハマナスの酢酸エチル層画分およびブタノール層画分にCOX−2阻害活性が認められた。ハマナスの酢酸エチル層画分から得られたエキスには、ブタノール層画分に比べて、17倍以上の阻害活性が認められたが、水層画分にはほとんど活性が見られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明のCOX活性阻害エキスは、安全性の高いCOX活性阻害剤、好ましくはCOX−1に比べてCOX−2をより強く阻害する安全性の高いCOX活性阻害剤として好適に使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】図1は、実施例2の分配操作による仙草の各抽出画分を用いて、試験例1と同様の方法でCOX活性阻害実験を行い、分析した結果を示すグラフである。縦軸は阻害物を含んでいない場合の活性を100とし、化合物又は抽出エキスを添加した場合の活性を100から差し引いた分を阻害率(%)として相対的に表したものである。
【図2】図2は、実施例4の分配操作によるエキナセアの各抽出画分を用いて、試験例1と同様の方法でCOX活性阻害実験を行い、分析した結果を示すグラフである。縦軸は阻害物を含んでいない場合の活性を100とし、化合物又は抽出エキスを添加した場合の活性を100から差し引いた分を阻害率(%)として相対的に表したものである。
【図3】図2は、実施例6の分配操作によるヘラオオバコの各抽出画分を用いて、試験例1と同様の方法でCOX活性阻害実験を行い、分析した結果を示すグラフである。縦軸は阻害物を含んでいない場合の活性を100とし、化合物又は抽出エキスを添加した場合の活性を100から差し引いた分を阻害率(%)として相対的に表したものである。
【図4】図4は、実施例8の分配操作によるハマナスの各抽出画分を用いて、試験例1と同様の方法でCOX活性阻害実験を行い、分析した結果である。縦軸は阻害物を含んでいない場合の活性を100とし、化合物又は抽出エキスを添加した場合の活性を100から差し引いた分を阻害率(%)として相対的に表したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
仙草、エキナセア、ヘラオオバコ、ハマナスから選ばれる1種以上から有機溶媒又は有機溶媒水溶液により抽出して得られ、かつシクロオキシゲナーゼ阻害活性を含有することを特徴とするエキス。
【請求項2】
シクロオキシゲナーゼ1型に比べ、シクロオキシゲナ−ゼ2型をより強く阻害することを特徴とする請求項1記載のエキス。
【請求項3】
請求項1または2記載のエキスを含有してなるシクロオキシゲナーゼ活性阻害剤。
【請求項4】
請求項1もしくは2記載のエキスまたは請求項3記載のシクロオキシゲナーゼ活性阻害剤を含有することを特徴とする組成物。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−326830(P2007−326830A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160812(P2006−160812)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(390020189)ユーハ味覚糖株式会社 (242)
【Fターム(参考)】