説明

シクロオレフィンポリマーを含むミクロファイバウェブの製造

【課題】シクロオレフィンポリマーを含むミクロファイバウェブを製造するための経済的且つ環境に優しいプロセスを提供することを目的とする。
【解決手段】シクロオレフィンポリマーを押出機内で溶融し、押出オリフィス列を通して高速熱気流中に押出すことを含むメルトブロー法によって、少なくとも1種のシクロオレフィンポリマーを含むミクロファイバウェブを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロオレフィンポリマー類を含むミクロファイバウェブの製造プロセス及び前記ミクロファイバウェブの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
欧州特許第EP594 123号は、非環式ポリオレフィン類、好ましくはポリプロピレンを含み、且つメルトブロー法により製造されたエレクトレット状態のミクロファイバウェブについて記載する。
【0003】
欧州特許第EP705 931号は、フィルタ材料として使用するための特定の状態、たとえばコロナ放電で静電的に帯電され、且つ電荷制御剤を配合して電荷安定性を増加させたエレクトレット・ファイバ・ブレンド・ウェブを開示する。
【0004】
PCT国際公開第WO98/56836号は、シクロオレフィンコポリマー類をベースとするエレクトレットを開示する。これらは高温及び高い相対湿度においてさえも、印加された電荷の長期安定性が優れている。ポリプロピレンなどのポリオレフィン類とのブレンドも開示されている。
【0005】
メルトブロー法によるミクロファイバウェブの製造プロセスが米国特許第3,978,185号、同第3,972,759号及び同第4,622,259号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、シクロオレフィンポリマーを含むミクロファイバウェブを製造する経済的且つ環境に優しいプロセスを提供することである。本発明のプロセスをさらに詳細に記載する。
本発明は、メルトブロー法によりシクロオレフィンポリマー類を含むミクロファイバウェブを製造することである。本発明のメルトブロープロセスにより、0.1〜20μm、好ましくは0.5〜7μmの直径のミクロデニールファイバができる。このメルトブロープロセスにより製造したファイバは、スパンボンド(不織)法により製造したファイバの最小直径よりもかなり小さい。このスパンボンドプロセスはシクロオレフィンポリマー類を含むミクロファイバウェブを製造するのに原理上好適ではあるが、他のファイバ特徴、たとえばファイバ直径のため、他のウェブ型を製造するのに使用されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
メルトブロープロセスでは、ファイバー形成性シクロオレフィンポリマーを押出機内で溶融し、好適な温度にして、多数の押出オリフィス列を通して高速熱気流中に押出す。急速移動する熱空気によって溶融流が細くなり、マイクロデニール領域のファイバができる。ダイ配置は通常、直径の小さなキャピラリーの線状列である。典型的な孔径範囲は0.25〜0.5ミリメートルである。気流は孔により押出された溶融フィラメントに両側から当たる。この気流は100〜300℃の温度であることができる。熱気流中に引き込まれた周囲空気は熱ガスを冷却し、ファイバを固化する。
【0008】
押出条件並びに気流温度及び速度は、シクロオレフィンポリマーの流動性に併せて変更してプロセスまたはウェブ品質を最適化することができる。
このファイバはウェブとしてコンベヤ上に堆積される。ファイバのもつれ及びファイバ−ファイバ結束性は、ウェブに十分な強度を与え、さらに強化することなくウェブを取り扱いやすくする。
【0009】
このウェブは原理上、任意の公知の方法でさらに強化することもできる。たとえば、このウェブを含浸し、続いて硬化するバインダーを使用して強化してもよく、あるいはこのバインダーは可融性バインダーであってもよく、粉末状またはバインダー糸状でウェブに組み込み、次いで、加熱してこのウェブを不織布に強化することができる。
【0010】
このウェブは、たとえば欧州特許出願第EP-A-0 108 621号に記載の如く、機械的に、たとえばニードリングまたは、流体力学的に強化することもできる。所望により、多様な強化方法を組み合わせてもよい。
【0011】
コンベヤ上に堆積させる代わりに、紡糸したが結合させていないウェブ上にファイバを堆積させて、所望により続いて熱強化し、結合させてもよい。この方法を使用して、種々のウェブからサンドイッチ構造体を製造することができる。
【0012】
少なくとも1種の環式、特に多環式のオレフィンと、場合により少なくとも1種の非環式オレフィンとから誘導した重合単位(polymerized units)を含有する少なくとも1種のシクロオレフィンポリマーを使用する本発明のプロセスにより、ミクロファイバウェブを製造する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
「シクロオレフィンポリマー」なる用語は、シクロオレフィンコポリマー類並びにシクロオレフィンホモポリマー類を包含するものとする。
ミクロファイバウェブを製造する本発明のプロセスは、前記シクロオレフィンポリマーの全質量をベースとして、式I、II、II'、III、IV、VまたはVI:
【0014】
【化1】

【0015】
【化2】

【0016】
[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子またはC1〜C20ヒドロカルビル基、たとえば線状若しくは分岐C1〜C8アルキル基、C6〜C18アリール基、C7〜C20アルキレンアリール基、環式若しくは非環式C2〜C20アルケニル基であるか、あるいは飽和、不飽和、または芳香族の環を形成し、但し同一のR1〜R8は種々の式I〜VIにおいて異なる意味をもつことができ、nは0〜5である]の少なくとも1種の多環式オレフィンから誘導した重合単位0.1〜100重量%、好ましくは0.1〜99.9重量%、特に好ましくは3〜75モル%と、前記シクロオレフィンポリマーの全質量をベースとして、式VII:
【0017】
【化3】

【0018】
[式中、R9、R10、R11及びR12は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または線状、分岐または飽和若しくは不飽和のC1〜C20ヒドロカルビル基、たとえばC1〜C8アルキル基またはC6〜C18アリール基である]の1種以上の非環式オレフィンから誘導した重合単位0〜99.9重量%、好ましくは0.1〜99.9重量%、特に好ましくは5〜80モル%とを含有する少なくとも1種のシクロオレフィンポリマーを使用して実施する。
【0019】
前記環式オレフィン類としては、極性基、たとえばハロゲン、ヒドロキシル、エステル、アルコキシ、カルボニル、シアノ、アミド、イミドまたはシリル基をもつこれらの環式オレフィン類の誘導体も挙げられる。
【0020】
ミクロファイバウェブを製造するための本発明のプロセスで使用する前記シクロオレフィンポリマーは、前記シクロオレフィンポリマーの全組成をベースとして、式VIII:
【0021】
【化4】

【0022】
[式中、mは2〜10である]の1種以上の単環式オレフィン類から誘導した重合単位0〜45重量%を含むこともできる。
本発明の目的に関して好ましいシクロオレフィンポリマーは、式IまたはIIIの多環式オレフィン類から誘導した重合単位と、式VIIの非環式オレフィンから誘導した重合単位とを含有する。
【0023】
ノルボルネン-ベース構造をもつオレフィン類から、最も好ましくはノルボルネン及びテトラシクロドデセンと、場合によりビニルノルボルネンまたはノルボルナジエンとから誘導した重合単位を含有するシクロオレフィンポリマー類が特に好ましい。2〜20個の炭素原子のα-オレフィン類、最も好ましくはエチレンまたはプロピレンなどの末端二重結合をもつ非環式オレフィン類から誘導した重合単位を含有するシクロオレフィンポリマー類も特に好ましい。ノルボルネン/エチレンコポリマー類及びテトラシクロドデセン/エチレンコポリマー類が特に好ましい。
【0024】
前記シクロオレフィンポリマー類は、多くの特許に記載されている有機金属化合物と共に不均一触媒または均一触媒により製造することができる。
本発明に従って使用するシクロオレフィンポリマー類は、少なくとも1種の遷移金属化合物と場合により助触媒と、場合によりキャリヤ材料とを含有する1種以上の触媒系の存在下、−78〜200℃の温度と0.01〜200barの圧力で製造することができる。有用な遷移金属化合物としては、メタロセン類、特に立体剛直性メタロセン類が挙げられる。本発明のシクロオレフィンポリマー類を製造するのに有用な触媒の例は、本明細書中、全て参照として含まれる欧州特許出願第EP-A-407 870号、同第485 893号及び同第503 422号に記載されている。
【0025】
本発明で使用するシクロオレフィンポリマー類は、遷移金属化合物としてメタロセンと、アルミノオキサンとを使用して製造することができる。
使用する遷移金属化合物の例としては、
rac-ジメチル-ビス-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジメチルゲルミル-ビス-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、
rac-フェニルメチルシリル-ビス-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、
rac-フェニルビニルシリル-ビス-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、
1-シラシクロブチル-ビス(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリル-ビス(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、
rac-フェニルメチルシリル-ビス-(1-インデニル)-ハフニウムジクロリド、
rac-ジフェニルシリル-ビス-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、
rac-エチレン-1,2-ビス-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリル-(9-フルオレニル)-(シクロペンタジエニル)-ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリル-(9-フルオレニル)-(シクロペンタジエニル)-ジルコニウムジクロリド、
ビス(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン-(9-フルオレニル)-シクロペンタジエニルジルコニウムジクロリド、
イソプロピレン-(9-フルオレニル)-シクロペンタジエニル-ジルコニウムジクロリド、
rac-イソプロピリデン-ビス(1-インデニル)ジルコニウムジクロリド、
フェニルメチルメチレン-(9-フルオレニル)-シクロペンタジエニル-ジルコニウムジクロリド、
イソプロピレン-(9-フルオレニル)-1-(1-(3-イソプロピル)シクロペンタジエニル)-ジルコニウムジクロリド、
イソプロピレン-(9-フルオレニル(1-(3-メチル)シクロペンタジエニル)-ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン-(9-フルオレニル)(1-(3-メチル)シクロペンタジエニル)-ジルコニウムジクロリド、
メチルフェニルメチレン-(9-フルオレニル)(1-(3-メチル)シクロペンタジエニル)-ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリル-(9-フルオレニル)(1-(3-メチル)-シクロペンタジエニル)-ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルシリル-(9-フルオレニル)(1-(3-メチル)シクロペンタジエニル)-ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルメチレン-(9-フルオレニル)(1-(3-tert-ブチル)シクロペンタジエニル)-ジルコニウムジクロリド、
イソプロピレン-(9-フルオレニル)(1-(3-tert-ブチル)シクロペンタジエニル)-ジルコニウムジクロリド、
イソプロピレン-(シクロペンタジエニル)-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、
ジフェニルカルボニル-(シクロペンタジエニル)-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、
ジメチルシリル-(シクロペンタジエニル)-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、
イソプロピレン-(メチルシクロペンタジエニル)-(1-インデニル)-ジルコニウムジクロリド、
4-(η5-シクロペンタジエニル)-4,7,7-トリメチル(η5-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル-ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-シクロペンタジエニル)-4,7,7-トリフェニル(η5-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-シクロペンタジエニル)-4,7-ジメチル-7-フェニル(η5-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-3'-tert-ブチルシクロペンタジエニル)-4,7,7-トリフェニル-(η5-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-3'-tert-ブチルシクロペンタジエニル)-4,7-ジメチル-7-フェニル-(η5-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-3'-メチルシクロペンタジエニル)-4,7,7-トリメチル-(η5-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-3'-メチルシクロペンタジエニル)-4,7,7-トリフェニル-(η5-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-3'-メチルシクロペンタジエニル)-4,7-ジメチル-7-フェニル(η5-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-3'-イソプロピルシクロペンタジエニル)-4,7,7-トリメチル-(η5-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-3'-イソプロピルシクロペンタジエニル)-4,7,7-トリフェニル(η5-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-3'-イソプロピルシクロペンタジエニル)-4,7-ジメチル-7-フェニル-(η5-4,5,6,7-テトラヒドロインデニル)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-シクロペンタジエニル)(η5-4,5-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-シクロペンタジエニル)-4-メチル)(η5-4,5-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-シクロペンタジエニル)-4-フェニル-(η5-4,5-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-シクロペンタジエニル)-4-フェニル-(η5-4,5-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-3'-メチル-シクロペンタジエニル)(η5-4,5-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-3'-イソプロピルシクロペンタジエニル)(η5-4,5-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロリド、
[4-(η5-3'-ベンジル-シクロペンタジエニル)(η5-4,5-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロリド、
[2,2,4-トリメチル-4-(η5-シクロペンタジエニル)-(η5-4,5-テトラヒドロペンタレン)]-ジルコニウムジクロリド、
[2,2,4-トリメチル-4-(η5-(3,4-ジイソプロピル)シクロペンタジエニル)-(η5-4,5-テトラヒドロペンタレン)]ジルコニウムジクロリドが挙げられる。
【0026】
上記シクロオレフィンポリマー類は、以下に概説する他の方法でも製造することができる。チタニウム塩と有機アルミニウムとから構成される混合触媒をベースとする触媒系は、東ドイツ特許出願DD-A第109 224号及び同第DD-A-237 070号に記載されている。欧州特許出願第EP-A-156 464号は、バナジウムをベースとする触媒を用いる製造について記載する。欧州特許出願第EP-A-283 164号、同第407 870号、同第485 893号及び同第503 422号は、可溶性メタロセン錯体をベースとする触媒を用いるシクロオレフィンポリマー類の製造について記載する。これらの全ての特許は、シクロオレフィンポリマー類を製造するのに使用したプロセス及び触媒系の参照文献として本明細書中に含まれる。
【0027】
本発明で使用するシクロオレフィンポリマー類は、環式、好ましくは多環式オレフィン類の環を維持する単独重合及び/または共重合によっても製造することができる。
【0028】
上記シクロオレフィンポリマー類は、式I〜VIの少なくとも1種のモノマーの開環重合、続いて得られた生成物の水素添加によっても製造することができる。所望により、上記シクロオレフィンポリマー類は、式I〜VIの少なくとも1種のモノマー類と、さらに例えば式VIIIの単環式モノマー類との開環共重合、続いて得られた生成物の水素添加によっても製造することができる。シクロオレフィンポリマー類の製造は、シクロオレフィンポリマー類の製造に関して使用したプロセス及び触媒系の参照文献として本明細書中に全て参照として含まれる、日本特許第3-14882号、同第3-122137号、同第4-63807号、同第2-27424号及び同第2-276842号に記載されている。極性基、たとえばハロゲン、ヒドロキシル、エステル、アルコキシ、カルボキシ、シアノ、アミド、イミドまたはシリル基などをもつこれらの環式オレフィン類の誘導体も挙げられる。
【0029】
たとえばスチレン及びジシクロペンタジエンなどの水素化ポリマー及びコポリマー類も同様に好適であり、本明細書中、シクロオレフィンポリマーとして同様に分類する。
【0030】
重合は、2つ以上の段階で実施することができ、この場合ブロックコポリマー類を形成することができる(ドイツ特許出願第DE-A-42 05 416号)。
シクロオレフィンポリマー類は、アモルファス、透明の無色構造材料であるのが好ましい。シクロオレフィンポリマー類の耐熱性は、広範囲を変動し得る。射出成形品でのISO 75第1部及び第2部によって決定される耐熱性は、シクロオレフィンコポリマー類に関してそのガラス転移温度から測定することができる。記載されたシクロオレフィンポリマー類は、−50〜220℃のガラス転移温度をもつ。0〜180℃のガラス転移温度が好ましく、40〜180℃のガラス転移温度が特に好ましい。
【0031】
シクロオレフィンポリマー類の平均モル質量は、水素計量、触媒濃度の変動または温度変動によって公知の方法で制御することができる。本発明のプロセスにより製造したミクロファイバウェブに含まれるシクロオレフィンポリマー類は、1000〜10,000,000g/molの質量平均モル質量Mwをもつ。5000〜5,000,000g/molの質量平均モル質量Mwが好ましく、10,000〜1,200,000g/molが特に好ましい。
【0032】
本発明のプロセスにより製造したミクロファイバウェブに含まれるシクロオレフィンポリマー類は、5〜1000ml/gの粘度数をもつ。20〜500ml/gの粘度数が好ましく、30〜300ml/gの粘度数が特に好ましい。
【0033】
本発明のプロセスに従うシクロオレフィンポリマー類の加工は、HDT/B(加熱撓み温度)より50〜200℃上の温度、好ましくはHDT/Bより80〜180℃上の温度、特にHDT/Bより100〜160℃上の温度で実施するのが好ましい。
【0034】
本発明のミクロファイバウェブ製造プロセスは、HDT/B(加熱撓み温度)より70〜250℃上の気流、特に好ましくはHDT/Bより100〜200℃上の気流、より好ましくはHDT/Bより120〜170℃上の気流を使用して実施するのが好ましい。
【0035】
本発明のプロセスに関して使用するシクロオレフィンポリマー類の流動性は、プロセス手順及びウェブ品質に影響を与える。したがって本発明のプロセスは、1〜300ml/10分、好ましくは2〜200ml/10分、特に好ましくは5〜80ml/10分のMVRをもつシクロオレフィンポリマー類を使用して好都合に実施できる。
【0036】
押出条件並びに気流温度及び速度を変化させてシクロオレフィンポリマーの流動性を変えて、プロセスまたはウェブ品質を最適化することができる。
本発明のプロセスは、高品質のミクロファイバウェブの製造に特に有用である。本発明のプロセスは、有意量のルースファイバまたはファイバフィラメント、則ちフライ(fly)を発生させない。本発明によらないプロセスでは、これらのルースファイバまたはファイバフィラメントがプロセスの調子を狂わせたり、ウェブに欠陥を発生させたりすることがある。
【0037】
ミクロファイバウェブは、任意の所望のブレンド比の少なくとも1種のシクロオレフィンポリマーと少なくとも1種のさらなるポリマーとのアロイを使用する本発明のプロセスによっても製造することができる。
【0038】
シクロオレフィンポリマー類とのアロイは、以下のポリマー類:ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-ポリプロピレンコポリマー類、ポリブチレン、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、天然ゴム、ポリ(1-メチレンメタクリレート)、さらにポリメタクリレート類、ポリアクリレート、アクリレート-メタクリレートコポリマー類、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー、ビスフェノールA-ポリカーボネート、さらにポリカーボネート類、芳香族ポリエステルカーボネート類、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、アモルファスポリアクリレート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、さらにポリアミド類、ポリアラミド類、ポリエーテルケトン類、ポリオキシメチレン、ポリオキシエチレン、ポリウレタン類、ポリエーテルスルホン類、ポリフッ化ビニリデンを使用して形成するのが好ましい。
【0039】
シクロオレフィンポリマー類とポリオレフィン類とのアロイは、以下のポリオレフィン類:エチレン及びプロピレンのホモポリマー類、並びにこれらの2種類のモノマー類のコポリマー類、エチレンと線状または分岐オレフィン類、たとえばブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン及びドデセンなどをベースとするコポリマー類、プロピレンと線状または分岐オレフィン類、たとえばブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、ドデセン、ウンデセン及びドデセンなどをベースとするコポリマー類、エチレン、プロピレンと線状または分岐オレフィン類、たとえばブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ウンデセン及びドデセンなどとのターポリマー類を使用して形成するのが好ましい。
【0040】
上記アロイは、さらなる添加剤を任意に使用して、たとえば溶融物からポリマー成分を同時押出し、続いてペレット化することにより慣用プロセスによって製造することができる。
【0041】
本発明のプロセスは、慣用量の添加剤、たとえば可塑剤、UV安定剤、蛍光増白剤、酸化防止剤、静電防止剤、熱安定剤を使用して実施することができる。記載の添加剤をポリマー材料の加工前に添加することができ、また加工の間に添加することができる。
【0042】
気流温度及び速度を的確に選択すると、製造したルースファイバまたはファイバフラグメント数に顕著に影響することが知見された。本発明のプロセスは、ルースファイバまたはファイバフラグメント、則ちフライを有意量に増加させないので、プロセスの調子を狂わせたり、ウェブに欠陥を発生させたりすることはない。
【0043】
本発明のプロセスの特定の態様において、ミクロファイバウェブを静電的に、たとえばコロナ処理により、または摩擦電気的に帯電させて、エレクトレットとして公知の、静電的に帯電させたミクロファイバウェブとして使用する。
【0044】
本発明のプロセスにより製造したミクロファイバウェブ中の多量の微細ファイバによって、表面積が非常に広く且つ孔径の小さい構造体が得られる。
本発明のプロセスにより製造したミクロファイバウェブは、薬品及び水分に対して非常に優れた耐性、並びに高温及び高い相対湿度においてさえも印加された電荷の長期安定性が優れている。
【0045】
本発明のプロセスにより製造したミクロファイバウェブの基本重量(Flachengewicht)は、使用目的に依存し、加工条件及び材料の選択によって具体的に調整することができる。本発明のプロセスにより製造したミクロファイバウェブの基本重量は1〜300g/m2であり、2〜200g/m2が好ましく、5〜50g/m2が特に好ましい。
【0046】
したがって本発明のプロセスにより製造したミクロファイバウェブは、油吸収材として、たとえば気体または液体から微粒子を捕集するためのフィルタ材料として、病院-医療製品として及び分離材料(isolation material)として有用である。
【0047】
特に、静電的に帯電させたミクロファイバウェブの形状の、本発明のプロセスにより製造したミクロファイバウェブは、航空宇宙領域及びクリーンルームテクノロジー、ビルディング及びホームサービステクノロジーにおける粒子フィルタとして、たとえば電気掃除機のミクロフィルタとして、客車室内フィルタとして、並びに呼吸保護領域において、たとえば粒子-濾過呼吸マスクとして有用である。経済的及び安全性の側面としては、優れた電荷安定性により、本発明のプロセスにより製造したミクロファイバウェブには、比較的高温及び高い相対湿度の周囲条件下でさえも長い寿命が得られる。
【0048】
MVR測定は、TMVR=HDT/B+115℃及び2.16kgの質量で、ISO 1133により実施した。
HDTの測定法は、ISO 75 第1部及び第2部(0.46Mpa)に従って実施した。
【0049】
本発明を実施例を参照してさらに説明する。
【実施例】
【0050】
実施例1
28ml/10分のMVRと131℃のHDT/BとをもつTOPAS(登録商標)シクロオレフィンポリマー(Ticona GmbH、Frankfurt/ドイツ)を使用して、ミクロファイバウェブを製造した。
【0051】
<80℃/235℃/245℃/255℃/ダイ265℃の温度プロフィールを使用し、種々の空気流温度及び圧力で、このポリマーを加工した。
種々のファイバサイズと基本重量の多くのミクロファイバウェブが得られた。
【0052】
【表1】

【0053】
実施例2
28ml/10分のMVRと131℃のHDT/BとをもつTOPAS(登録商標)シクロオレフィンポリマー(Ticona GmbH、Frankfurt/ドイツ)を使用して、ミクロファイバウェブを製造した。
【0054】
<80℃/245℃/255℃/265℃/ダイ270℃の温度プロフィールを使用し、種々の空気流温度及び圧力で、このポリマーを加工した。
種々のファイバサイズと基本重量の多くのミクロファイバウェブが得られた。
【0055】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
メルトブロー法により、少なくとも1種のシクロオレフィンポリマーから実質的に成るミクロファイバウェブを製造する方法であって、
前記シクロオレフィンポリマーが、前記シクロオレフィンポリマーの全質量をベースとして、式I、II、II'、III、IV、VまたはVI:
【化1】

【化2】

[式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子またはC1〜C20ヒドロカルビル基であるか、あるいは飽和、不飽和、または芳香族の環を形成し、但し同一のR1〜R8は種々の式I〜VIにおいて異なる意味をもつことができ、nは0〜5である]の少なくとも1種の多環式オレフィンから誘導した重合単位0.1〜100重量%と、
前記シクロオレフィンポリマーの全質量をベースとして、式VII:
【化3】

[式中、R9、R10、R11及びR12は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ水素原子または線状、分岐または飽和若しくは不飽和のC1〜C20ヒドロカルビル基である]の1種以上の非環式オレフィン類から誘導した重合単位0〜99.9重量%と、
前記シクロオレフィンポリマーの全質量をベースとして、式VIII:
【化4】

[式中、mは2〜10である]の1種以上の単環式オレフィン類から誘導した重合単位0〜45重量%とを含む、前記方法。
【請求項2】
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7及びR8のC1〜C20ヒドロカルビル基は、同一でも異なっていてもよく、それぞれ線状若しくは分岐のC1〜C8アルキル基、C6〜C18アリール基またはC7〜C20アルキレンアリール基、あるいは環式若しくは非環式のC2〜C20アルケニル基である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R9、R10、R11及びR12のC1〜C20ヒドロカルビル基は、同一でも異なっていてもよく、それぞれC1〜C8アルキル基またはC6〜C18アリール基である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項の方法により入手可能なミクロファイバウェブ。
【請求項5】
油吸収材料、フィルター材料または分離材料としての請求項4のミクロファイバウェブの使用。
【請求項6】
室内空気及びクリーンルームテクノロジー並びにビルディング及びホームサービステクノロジーにおける粒子フィルターとして、電気掃除機のミクロフィルターとして、客車室内フィルターとして及び、呼吸保護分野での粒子濾過呼吸マスクとしての請求項4のミクロファイバウェブの使用。

【公開番号】特開2011−12382(P2011−12382A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−180831(P2010−180831)
【出願日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【分割の表示】特願2001−508404(P2001−508404)の分割
【原出願日】平成12年6月21日(2000.6.21)
【出願人】(598029656)ティコナ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (32)
【氏名又は名称原語表記】Ticona GmbH
【Fターム(参考)】