説明

シクロプロピルおよびシクロブチルエポチロンアナログ

【課題】強力なチュブリン重合プロモーターであり、細胞毒性を示し、抗癌剤として有用な新規エポチロンアナログの提供。
【解決手段】下式で示されるエポチロン誘導体(式中、Arは、置換基を有していてもよいピリジル基あるいはチアゾリル基であり、Xはメチレン等である。)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エポチロンのアナログに関する。さらに詳しくは、本発明は、シス−およびトランス−12,13−シクロプロピルおよび12,13−シクロブチルエポチロンのアナログに関する。
【発明の開示】
【0002】
本発明の1つの観点は、下記の構造:
【化1】

のいずれかにより表される化合物に関する。
【0003】
上記の構造において、Xは、−O−、−C(Y)(Y)−、および−C(Y)(Y)−C(Y)(Y)−からなる群から選択される二価基である。YおよびYは、それぞれ、−H、−F、−Clおよび−Brからなる群から独立して選択される基である。Arは、以下の構造:
【化2】

により表される基である。
【0004】
上記の構造において、Rは、Rと第一縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16である。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルから選択される基である。Z、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である。しかしながら、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される、という条件が存在する。同様に、Rは、Rと第一縮合環構造を形成するか、またはRと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16である。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基である。Z、Z、およびZは、上で定義したとおりである。同様に、Rは、Rと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16である。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基である。さらに、Z、Z、およびZは、上で定義したとおりである。第一または第二縮合環構造は、C1〜C6分枝鎖または直鎖アルキル置換基を有するまたは有さない芳香族またはヘテロ芳香族5または6員縮合環のいずれかである。本発明のこの観点の好適なものとして、下記の例:
【化3】

が挙げられる。
【0005】
本発明の別の観点は、下記の構造:
【化4】

のいずれかにより表される化合物に関する。
【0006】
上記の構造において、Xは、−C(Y)(Y)−、および−C(Y)(Y)−C(Y)(Y)−からなる群から選択される二価基である。YおよびYは、それぞれ、−H、−F、−Clおよび−Brからなる群から独立して選択される基である。本発明のこの観点の好適なものとして、下記の例:
【化5】

が挙げられる。
【0007】
上記の構造において、nは1または2のいずれかである。
【0008】
本発明の別の観点は、患者への投与に適した生理学的溶媒中に溶解または懸濁した、上記の化合物のいずれかを含む抗癌剤に関する。該化合物は、癌細胞に対する毒性が十分な生理学的溶媒内の濃度を有する。
【0009】
本発明の別の観点は、癌細胞を殺す方法であって、癌細胞を、細胞毒性濃度の上記のいずれかの化合物を含有する溶液と接触させる工程を含んでなる方法に関する。
【0010】
さらに、本発明は、ヒトまたは動物の処置方法における、式I、I−S、II、II−S、III、III−S、IVもしくはIV−Sの化合物、またはかかる化合物の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくは水和物の使用に関する。
【0011】
さらに、本発明は、新生物疾患の処置用医薬品の製造のための、式I、I−S、II、II−S、III、III−S、IVもしくはIV−Sの化合物、またはかかる化合物の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくは水和物の使用に関する。
【0012】
「新生物疾患」なる用語は、特に、白血病のような液性腫瘍疾患、および固形腫瘍疾患に関する。
【0013】
「固形腫瘍疾患」なる用語は、とりわけ、乳癌、卵巣癌、ならびに胃癌を含む結腸および一般的な消化管の癌、子宮頚癌、肺癌、例えば小細胞肺癌および非小細胞肺癌、膵癌、腎臓癌、神経膠腫(glioma)、黒色腫、頭頚部癌、膀胱癌、甲状腺癌、肝細胞癌、前立腺癌およびカポジ肉腫を意味する。
【0014】
さらに、本発明は、新生物疾患の処置方法であって、かかる処置を必要とする温血動物に、該疾患に対して有効量の、式I、I−S、II、II−S、III、III−S、IVもしくはIV−Sの化合物、またはかかる化合物の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくは水和物を投与することを含んでなる方法を提供する。
【0015】
さらに、本発明は、式I、I−S、II、II−S、III、III−S、IVもしくはIV−Sの化合物、またはかかる化合物の薬学的に許容される塩もしくは溶媒和物もしくは水和物、ならびに局所的、経腸的、例えば経口的または経直腸的、あるいは非経腸投与に適し、そして無機性または有機性の固体または液体であり得る、少なくとも1つの薬学的に許容される担体を含んでなる医薬調製物に関する。希釈剤、例えばラクトース、デキストロース、マンニトール、および/またはグリセロール、および/または滑沢剤および/またはポリエチレングリコールとともに活性成分を含んでなる、とりわけ錠剤またはゼラチンカプセルが、経口投与のために使用される。錠剤は、また、結合剤、例えばケイ酸アルミニウムマグネシウム、デンプン、例えばトウモロコシ、コムギまたはコメデンプン、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン、ならびに、所望により崩壊剤、例えばデンプン、寒天、アルギン酸またはその塩、例えばアルギン酸ナトリウム、および/または発泡性混合物、または吸着剤、染料、香料および甘味剤を含み得る。また、非経腸的に投与可能な組成物の形態の、または注入溶液の形態の、本発明の薬理学的活性化合物を使用することも可能である。医薬組成物は、滅菌され得、そして/または、賦形剤、例えば保存剤、安定化剤、湿潤剤および/もしくは乳化剤、可溶化剤、浸透圧を調節するための塩および/もしくはバッファーを含み得る。所望により他の薬理学的活性物質を含んでいてもよい、本発明の医薬組成物は、自体公知の方法、例えば慣用的な混合、造粒、糖衣錠化、溶解もしくは凍結乾燥処理により調製され、そして約1%〜95%、とりわけ約1%〜約20%の活性成分を含んでなる。
【0016】
活性成分の投与量は、患者のタイプ、種、年齢、体重、性別および医学的状態;処置されるべき状態の重症度;患者の腎および肝機能;ならびに使用する特定の化合物を含む、さまざまなファクターに依存する。通常の知識を有する医師、臨床医または獣医は、病状の進行を予防、抑制または阻止するのに必要な医薬の有効量を、容易に決定および処方することができる。毒性を伴わずに効力をもたらす範囲内における有効成分の濃度達成に最適な精度は、標的部位に対する有効成分の利用能の速度論に基づいた摂取法を必要とする。これには、薬物の分布、平衡および排泄の考察が含まれる。
【0017】
本発明の化合物は、単独で、あるいは1またはそれ以上の他の治療剤と組み合せて投与され得る。可能な併用療法は固定された組合せの形態をとるか、あるいは本発明の化合物および1またはそれ以上の治療剤が時間をずらして投与されるか、または互いに独立して投与されるか、または固定された組合せ剤および1もしくはそれ以上の他の治療剤の組合せ投与で投与される。特に、本発明の化合物は、化学療法、免疫療法、外科的介入、またはこれらの組合せと組み合せた腫瘍治療の場合において、投与され得る。長期治療は、上記の、他の処置ストラテジーの文脈において、アジュバント療法と同様に可能である。他の可能性のある処置は、例えばリスクのある患者における、腫瘍減退後、または化学防御治療後の患者の状態を維持する治療である。
【0018】
可能な組合せ剤のための治療剤は、本質的に、1またはそれ以上の抗増殖性、細胞分裂抑制性または細胞毒性化合物、例えば化学療法剤、あるいはポリアミン生合成のインヒビター、プロテインキナーゼの、とりわけセリン/トレオニンプロテインキナーゼの、例えばプロテインキナーゼCの、もしくはチロシンプロテインキナーゼの、例えばEGFレセプターチロシンキナーゼのインヒビター、例えばPKI166、VEGFレセプターチロシンキナーゼ、例えばPTK787、またはPDGFレセプターチロシンキナーゼ、例えばSTI571、サイトカイン、陰性成長調節因子(negative growth factor)、例えばTGF−βまたはIFN−β、アロマターゼインヒビター、例えばレトロゾールまたはアナストロゾール、SH2ドメインとリン酸化されたタンパク質との相互作用のインヒビター、抗エストロゲン剤、トポイソメラーゼIインヒビター、例えばイリノテカン、トポイソメラーゼIIインヒビター、微小管活性化剤、例えばパクリタキセル、ディスコデルモリドまたはエポチロン、アルキル化剤、抗新生物代謝拮抗剤、例えばゲムシタビンまたはカペシタビン、プラチナ化合物、例えばカルボプラチンまたはシスプラチン、抗血管新生化合物、ゴナドレリンアゴニスト、抗アンドロゲン剤、ビスホスホネート、例えばAREDIA(登録商標)またはZOMETA(登録商標)、およびトラスツズマブを含む(が、これらに限定されない)群から選択されるいくつかの剤である。コード番号、一般名または商品名により同定される活性剤の構造は、標準的概論「The Merck Index」の現行版、またはデータベース、例えばPatents International(例えば、IMS World Publications)から得られ得る。それらの対応する内容を、引用により本明細書の一部とする。
【0019】
本発明の別の観点は、本明細書に記載したような、任意の上記の化合物またはそれらの中間体の合成方法、特に
(a)式I〔式中、Xは、−O−、−C(Y)(Y)−、および−C(Y)(Y)−C(Y)(Y)−からなる群から選択される二価基であり、YおよびYは、それぞれ、−H、−F、−Clおよび−Brからなる群から独立して選択される基であり;そしてArは、下記の構造:
【化6】

{式中、
は、Rと第一縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルから選択される基であり;
は、Rと第一縮合環構造を形成するか、またはRと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基であり;
は、Rと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基であり;該第一または第二縮合環構造は、C1〜C6分枝鎖または直鎖アルキル置換基を有するまたは有さない芳香族またはヘテロ芳香族5または6員縮合環のいずれかである。}により表される基であり;そして15位の不斉中心は、RまたはS配置を有し得る。〕の化合物の製造方法であって、式V
【化7】

〔式中、XおよびArは、式Iの化合物について上で定義した意義を有し、そしてPGはヒドロキシ基の保護基である。〕の化合物を、第一の工程において、所望により触媒の存在下で、エステル化反応により縮合し、そして、第二の工程において、保護基をはずして、式Iのラクトンを得る方法;ならびに
(b)式III
〔式中、Xは、−C(Y)(Y)−、および−C(Y)(Y)−C(Y)(Y)−からなる群から選択される二価基であり、そしてYおよびYは、それぞれ、−H、−F、−Clおよび−Brからなる群から独立して選択される基であり、そして15位の不斉中心は、RまたはS配置を有し得る。〕
の化合物の製造方法であって、式VI
【化8】

〔式中、Xは、式IIIの化合物について上で定義した意義を有し、そしてPGはヒドロキシ基の保護基である。〕
の化合物を、第一の工程において、所望により触媒の存在下で、エステル化反応により縮合し、そして、第二の工程において、保護基をはずして、式IIIのラクトンを得る方法
である。
【0020】
図面の簡単な説明
図1は、エポチロンおよび好適なエポチロンアナログの構造を例示する。
図2は、設計された12,13−シクロアルカンチアゾールエポチロンアナログ3〜8の化学合成のために使用された逆合成解析を例示する。
図3は、ビルディングブロック13の製造を示すスキームを例示する。
図4は、アルデヒド14の合成を示すスキームを例示する。
図5は、ビルディングブロックアルデヒド15および16の合成のためのスキームを例示する。
図6は、チアゾールビニルヨウ化物17の合成を例示するスキームを例示する。
図7は、エポチロンアナログ3、5および7の合成を示すスキームを例示する。
図8は、エポチロンアナログ3、5および7の合成を示すスキームを例示する。
図9は、シス−シクロブチルエポチロンアナログ4および6の合成を示すスキームを例示する。
図10は、シス−シクロブチルエポチロンアナログ4および6の合成を示すスキームを例示する。
図11は、トランス−シクロブチルエポチロンアナログ8の合成を示すスキームを例示する。
図12は、トランス−シクロブチルエポチロンアナログ8の合成を示すスキームを例示する。
図13は、逆合成解析およびエポチロンアナログ9〜12のための重要なフラグメントを例示する。
図14は、アルコール85および86の合成のためのスキームを例示する。
図15は、ピリジンヨウ化物87の合成を例示する。
図16は、前駆体アルデヒド107および113の合成のためのスキームを例示する。
図17は、前駆体アルデヒド107および113の合成のためのスキームを例示する。
図18は、シクロプロピルピリジンアナログのエポチロン9、10、11および12の合成を例示する。
図19は、シクロプロピルピリジンアナログのエポチロン9、10、11および12の合成を例示する。
【0021】
化学合成
チアゾールエポチロンアナログ
設計された12,13−シクロアルカンチアゾールエポチロンアナログ3〜8の化学合成は、スキーム1において示した逆合成解析に由来するストラテジーにしたがって行われた。したがって、Nozaki−Hiyama−Kishiカップリング(Takai, K.;et al. Tetrahedron Lett. 1983, 24, 5281-5284; Jin, H.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 5644-5646)、アルドール反応およびYamaguchiラクトン形成(Inanaga, J.;et al. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1979, 52, 1989-1993; Mulzer, J.; et al. Synthesis 1992, 215-228; Nicolaou, K. C.; et al. Chem. Eur. J. 2000, 6, 2783-2800; Nicolaou, K. C.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 7974-7991)を、示した3つの戦略的結合を切断するために使用し、これによりビルディングブロック13〜16、17および18が判明した。最終標的へのこれらのビルディングブロックの組立ておよび合成は、スキーム1に示した順序にしたがった。したがって、C7〜C15アルデヒドフラグメントとヘテロ環ビニルヨウ化物とのカップリング、続いて、組立ておよびC1〜C6ケトンセグメントとのアルドール反応により、さらなる組立て後に、所望のseco−ヒドロキシ酸が得られる。次いで、Yamaguchiのストラテジー(Inanaga, J.; et al. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1979, 52, 1989-1993; Mulzer, J.; et al. Synthesis 1992, 215-228; Nicolaou, K. C.; et al. Chem. Eur. J. 2000, 6, 2783-2800; Nicolaou, K. C.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 7974-7991)にしたがう環化により、脱保護後に、所望のエポチロンアナログが得られる。
【0022】
必要とされるビルディングブロック13〜17は、スキーム2〜5に示すように合成されたが、ケトン18は、従来から報告されている経路により製造された (Nicolaou, K. C.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 7974-7991)。最初に必要とされるC7〜C15アルデヒド(13)を、スキーム2に示したように構築した。かくして、光学活性アルデヒド19のSwern酸化(Charette, A. B.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 11943-11952)に続いて、Wittig反応および酸加水分解すると、全部で85%の収率で、対応するアルデヒド20を得た。商品として入手可能なホスホニウム塩21を用いる第二のWittig反応により、シスおよびトランスオレフィン22の混合物を得(シス:トランス 約20:1、収率78%)、これをジイミド(Pasto, D. J.; Taylor, R. T. Org. React. 1991, 40, 92-155)で還元すると、飽和アルコール23を得た(収率94%)。23における遊離のヒドロキシ基をアセチル化すると(収率100%)、アセテート24を得、このベンジルエーテルを水素添加分解すると、アルコール25を得た(収率78%)。二重結合の還元とベンジルエーテルの開裂を同時に行うための、パラジウム触媒での22の直接水素化は、有意な量のシクロプロピル開環副生成物のため、実用的でないことが判明した。さらに、プラチナ触媒は22における二重結合を完全に還元するが、該触媒は、また、C−O結合を水素化するというよりはむしろベンジル基の芳香環も還元する。アルコール25を、TPAP−NMO(試薬および保護基の略語、スキーム中の凡例を参照)で酸化すると、対応するアルデヒドを得(収率89%)、次いで、20について上記した2ステップ(Wittig反応、続いて酸加水分解)により、エノールエーテル26を経由して、全部で50%の収率で所望のアルデヒド13を得た。
【0023】
スキーム3において、トランス−シクロプロピルアルデヒド14の合成を示す。これは、上記のシス対応物13の合成と極めて近似している。したがって、アリルアルコール27(Azzena, F.; et al. Tetrahedron 1995, 51, 10601-10626; Trost, B. M.; Verhoeven, T. R. J. Am. Chem. Soc. 1980, 102, 4743-4763)のCharetteシクロプロパン化(Charette, A. B.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 11943-11952)により、主生成物としてシクロプロパン29のエナンチオマーを収率98%で得た(Mosherエステル分析により、ee>90%)(Dale, J. A.; Dull, D. L.; Mosher, H. S. J. Org. Chem. 1969, 34, 2543-2549; Dale, J. A.; Mosher, H. S. J. Am. Chem. Soc. 1973, 95, 512-519)。酸化(SO・ピリジン)に続いて、Wittig反応を行うと、エノールエーテル30を得(全部で収率81%)、これを脱シリル化(TBAF)、ベンジル化(NaH、BnBr)および酸加水分解すると、対応するアルデヒドを得、これをホスホニウム塩21に由来するイリドと反応させると、5ステップでの収率58%でオレフィン31を得た。ジイミド還元、アセチル化および水素添加分解により、アルコール32が得られた(全部で収率98%)。次いで、Dess−Martin酸化により所望のアルデヒド14を得、これを単離することなく、後に続くNozaki−Hiyama−Kishiカップリング(下記参照)のために直ちに使用した。
【0024】
C12−C13−シクロブチルアルデヒド15および16の合成を、スキーム4において示したように行った。これらの化合物はシクロプロパン誘導体13および14に非常に密接に関係するので、再び、同様の合成経路にしたがった。かくして、対応するジアセテートの酵素−基選択的加水分解(Laumen, K.; Schneider, M. Tetrahedron Lett. 1985, 26, 2073-2076; Kasel, W.; et al. J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1985, 1563-1564)を介して容易に入手可能なモノアセテート33から出発して、シス−アルデヒド34をDess−Martinペルヨージナン酸化により製造したが(収率95%)、対応するトランス−アルデヒド39は、34の塩基触媒エピマー化により簡便に入手可能であった(33からの収率、88%)。シクロプロピル誘導体について記載した経路にしたがって、34および39は、それぞれ35および40に対応し、そして後者の化合物を、純粋なエナンチオマーのホスホニウム塩21およびNaHMDS−TMSClに由来するキラルホスホランとカップリングすると、それぞれ、オレフィン36および41を得た。プラチナ触媒を用いる二重結合の水素化、続いて標準的保護基操作によって、アルコール38および43を得、スキーム4に要約したようにこれを再び対応させて保護し、それぞれ、アルデヒド15および16を得た。
【0025】
必要なビニルヨウ化物17は、スキーム5に示すように、アルデヒド44から、(i)中間体45(88%)および46(97%)を経由する、中間体アセチレニド(acetylenide)のインサイツメチル化を用いる修正Corey−Fuchsプロトコール(Grandjean, D.; et al. Tetrahedron Lett. 1994, 35, 3529-3530);(ii)立体選択的ハイドロスタチン化(Betzer, J.-F.; et al. Tetrahedron Lett. 1997, 38, 2279-2282)(84%);および(iii)ヨウ素−スズ交換(99%)の順序で構築された。この方法は、過去に開示された予備的経路(Nicolaou, K. C.; et al. ChemBioChem 2001, 1, 69-75)よりも、簡単さおよび収率の両方の点で有意な改善を示す。
【0026】
所有しているすべてのビルディングブロックを用いて、エポチロンアナログ3〜8の最終組立てを開始できた。スキーム6に示したように、シクロプロピルアナログ3、5および7を合成した。アルデヒド13を、CrCl−NiClを用いるNozaki−Hiyama−Kishiの手順(Takai, K.; et al. Tetrahedron Lett. 1983, 24, 5281-5284; Jin, H.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 5644-5646)によりビニルヨウ化物17とカップリングし、アルコール48のジアステレオマーの混合物を得た(約1:1比、収率56%、最適化していない)。Yamaguchiマクロラクトン化の後にクロマトグラフィフィーによるこの2つの異性体の分離が利用できるようになるまで、混合物のまま該シーケンスを進めた(下記参照)(Inanaga, J.; et al. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1979, 52, 1989-1993; Mulzer, J.; et al. Synthesis 1992, 215-228; Nicolaou, K. C.; et al. Chem. Eur. J. 2000, 6, 2783-2800)。48をシリル化(TBSOTf−2,6−ルチジン、収率100%)すると、シリルエーテル49を得、これを脱アセチル化(DIBAL、収率99%)すると、さらなる中間体アルコール50を得た。同様の方法で、トランス−アルデヒド14をヨウ化物17とカップリングし、得られたエピマー性第二級アルコールの混合物を酸化(DMP)すると、ここまで全部で75%の収率にてケトン56を得た。(−)−DIPClを用いる56の立体選択的還元(Brown, H. C.; Ramachandran, P. V. Acc. Chem. Res. 1992, 25, 16-24; Brown, H. C.; et al. J. Org. Chem. 1987, 52, 5406-5412)により、(H NMRスペクトルにより)単一の立体異性体として84%の収率でアルコール57を得、このことは、一方または両方のC15エピマーを製造するためのこの経路の順応性を示している。15Sの立体化学は、還元剤のキラリティーに基づいて推定される。化合物57を、TBSエーテルとして保護し(58、TBSOTf、2,6−ルチジン、収率91%)、次いでこれをDIBALで脱アセチル化すると、収率93%で所望のアルコール59を得た。この段階で、C6−C7結合を同時に作るために使用される立体選択的アルドールカップリングのための準備がされ、そしてこれらの立体中心の立体化学が決まる。
【0027】
このために、50および59のDMP酸化の後に、それぞれ、直ちに、我々が最適化したプロトコール(Nicolaou, K. C.; et al. Chem. Eur. J. 2000, 6, 2783-2800)にしたがってLDAを用いて、過去に記載されたC1〜C6ケトン18のアルドール付加反応を行った(Nicolaou, K. C.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 7974-7991)。この方法において、アルドール51(63%)および60(70%)が生成し、そして、(H NMRスペクトルにより決定される)C6−C7立体化学の完全な制御を用いて単離された。TBSエーテル52および61としての第二級ヒドロキシル基の保護の後に、C1位の2ステップの酸化(HF・ピリジンの作用により選択的に脱保護される)およびC15 TBSエーテルの選択的開裂(TBAF)を行うと、それぞれ、ヒドロキシ酸53および62を得た。53のYamaguchiマクロラクトン化(Inanaga, J.; et al. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1979, 52, 1989-1993; Mulzer, J.; et al. Synthesis 1992, 215-228; Nicolaou, K. C.; et al. Chem. Eur. J. 2000, 6, 2783-2800)により、合わせて69%の収率で保護されたエポチロン誘導体54および55を得、これらをクロマトグラフィーにより分離した[54 (42%);55 (27%)]。同様に、62のマクロラクトン化により、ビス−シリルエーテル63を得た(61から5ステップで53%)。CHCl中20%TFAでの54、55および63の脱シリル化により、それぞれ、所望のエポチロンアナログ3、5および7を最終的に得た。トランスアナログ7の15S立体配置を、さらに、7とシス異性体3および5のH NMRスペクトルを比較することにより確認した。7のスペクトルは、特にC2およびC15に結合したプロトンからのシグナルを考慮すると、5のスペクトルよりも3のスペクトルに似ている。サポーティング・インフォメーション参照。
【0028】
シス−シクロブチルチアゾールエポチロン4および6を、スキーム7において要約されるように、同様の方法で組み立てた。シス−アルデヒド15と側鎖ビニルヨウ化物17とのNozaki−Hiyama−Kishiカップリングにより、C15エピマーの1:1混合物として第二級アルコール64を得た(収率89%)。保護基操作および酸化により、中間体65および66を経由して、アルデヒド67を得、これをケトン18と穏やかに立体選択的アルドールカップリングに付すと、アルコール68を得た。C1位のさらなる保護基の操作および酸化により、ヒドロキシ酸72を得、これを、Yamaguchiのプロトコールを適用することにより環化すると、2種のラクトン73および74を得た。この時点で、C15エピマー73および74をクロマトグラフィーで分離し、そして脱保護すると、それぞれ、良好な収率(トータル)で所望のシス−シクロブチルエポチロン4および6を得た。
【0029】
トランス−シクロブチルチアゾールエポチロン8を、スキーム8において詳述したように、類似の順序により製造した。かくして、アルデヒド16とヨウ化物17との間のNozaki−Hiyama−Kishiカップリングの後に、得られたアルコールを酸化すると対応するエノン75を得、次いでこれを、(−)−DIPClで立体選択的に還元(Brown, H. C.; Ramachandran, P. V. Acc. Chem. Res. 1992, 25, 16-24; Brown, H. C.; et al. J. Org. Chem. 1987, 52, 5406-5412)すると、(15S)−エピマー76のみを得た。残りの工程は、シス化合物について記載したのと同じ順序にしたがい(スキーム7参照)、そして穏やかかつ同様の収率で標的のトランス−シクロブチルエポチロン8を得た。
【0030】
ピリジンエポチロンアナログ
今日までに製造された最も活性の高いエポチロンアナログのいくつかは、それらの構造内に、天然物のチアゾール部分を置換するものとしてのピリジン側鎖を含む(Nicolaou, K. C.;et al. Chem. Biol. 2000, 7, 593-599)。シクロプロパンエポチロンアナログ3を用いる非常に有望な予備的結果により、我々は、これら2つの構造的修飾物を組み合わせることによって、エポキシド性酸素の不存在にもかかわらず、高活性の化合物がもたらされ得ると理論的に考えた。かかる化合物(例えば9〜12、図1)は、代謝的により安定であり、より長いインビボ寿命およびより低い毒性をもたらし得る。これらの化合物の全合成を改善するために、および収束性のストラテジーを介する他の側鎖修飾アナログのさらなる製造に便宜を図るために、スキーム9に示した逆合成解析に基づいて、それらの全合成のために少し異なるスキームをデザインした。ピリジンシクロアルカンエポチロン(9〜12)の構築のために発明されたストラテジーは、フラグメントのカップリングの順番を逆にすること以外は、それらのチアゾール対応物の全合成に使用されるものと類似している。かくして、ケトン18とのビルディングブロック84および85のアルドール反応を、ビニルヨウ化物86でのNozaki−Hiyama−Kishiカップリングより先に行う。
【0031】
必要とされるビルディングブロック85および86を、スキーム10に示したように製造した。純粋なエナンチオマーのホスホニウム塩21およびNaHMDS−TMSCl由来のイリドと、商品として入手可能なアルデヒド87との間のWittig反応(収率68%)、続いて、TBDPSエーテル(TBDPSCl−イミド)として、得られたアルコール88を保護すると、収率89%でアルケン89を得た。89における二重結合を水素化すると、それに伴ってベンジルエーテルが開裂し、収率75%で第一級アルコール90を得た。次いで、この化合物(90)をI/PPhに曝すと、収率93%で対応するヨウ化物(91)に変換された。アルキン92と92をカップリング(n−BuLi、収率72%)し、続いて、得られたアルキン93からTBS基を除去する(BF・OEt)と、プロパギルアルコール94(収率89%)を得た。この化合物を、シス−およびトランス−シクロプロピルピリジンエポチロンアナログ(9〜12)の両方を製造するための共通の前駆体として使用した。シスシリーズの化合物の合成を、ホウ化ニッケルでのアルキン94の還元(Taber, D. F.; et al. J. Org. Chem. 1997, 62, 194-198)から開始し、収率95%でシスオレフィン95を得た(スキーム10)が、対応するトランスアルケン(97)は、LiAlH(OMe)での還元を介して同じ中間体(94)から製造された(Ashby, E. C.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1975, 97, 3158-3162)(収率83%)。穏やかな95および97のCharetteシクロプロパン化(Charette, A. B.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1998, 120, 11943-11952)により、シクロプロパン96(収率99%)および98(93%)を得、これらは対応するMosherエステルのH NMRスペクトル解析により>95%deと判断された(Dale, J. A.; Dull, D. L.; Mosher, H. S. J. Org. Chem. 1969, 34, 2543-2549; Dale, J. A.; Mosher, H. S. J. Am. Chem. Soc. 1973, 95, 512-519)。その後の第一級ヒドロキシル基のベンジル化、続いて分子の他端のシリル基の除去により、それぞれ、所望の第一級アルコール85および86を得た。
【0032】
必要な側鎖ビニルヨウ化物87を、スキーム11に示すように合成した。プロピンとの5−メチル−2−ブロモピリジン99のSonogashiraカップリング(Arcadi, A.; et al. Tetrahedron 1994, 50, 437-452)により、収率98%でアルキン100を得た。次いで、これをハイドロスタニル化し、そしてスズを、チアゾール側鎖前駆体17を製造するために使用されたのと同じ方法(スキーム5)によりヨウ素と交換すると(2ステップで86%)、スズ化合物101を経由してヨウ化物87を得た(収率100%)。
【0033】
標的であるピリジンアナログの合成の最終段階を、スキーム12および13に示す。Dess−Martinペルヨージナンでのアルコール85および86の酸化の後に、前に使用した(上記参照)、ケトン18との立体選択的なアルドールカップリングをした(Nicolaou, K. C.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 7974-7991)。このカップリングを、我々の一般的な手順にしたがって行うと(Nicolaou, K. C.; et al. Chem. Eur. J. 2000, 6, 2783-2800)、両方の場合において約10:1(H NMRスペクトルによる)のdrでアルドール102(収率75%)および108(収率89%)を得た。これらの化合物(102および108)のさらなる合成は、スキーム12において示されるように、それらの第二級アルコールのTBS保護、第一級TBS基の選択的除去(HF・ピリジン)、得られた第一級アルコールの酸化(DMP;NaClO)、およびそのようにして得られたカルボン酸をメチル化して化合物104および110を得ることを含む。104および110のベンジルエーテルの水素添加分解の後に、得られた第一級アルコール(105および111)を、対応するアルデヒドに酸化(DMP)してC15炭素原子を導入すると、エノールエーテル106および112を経由して、それぞれ、アルデヒド107および113を得た。
【0034】
次いで、シス−アルデヒド107をビニルヨウ化物87とともにNozaki−Hiyama−Kishiカップリングに付すと、メチルエステル114(43%、最適化していない)を得、これを収率76%で対応する酸(115)に加水分解した(スキーム13)。エステル加水分解(114□115)は極めて遅く、完了には4日間を要する。同じ手順をトランス化合物113に適用した場合、Nozaki−Hiyama−Kishiカップリングの後に現実的な速度で対応するメチルエステルを加水分解することが不可能であることが判明した。明らかに、C1カルボン酸には別の保護基が必要であり、そして我々はメチルエステルの代わりにトリメチルシリルエチル(TMSE)エステルを試みることを選んだ。結局、アルデヒド113はヒドロキシエステル118(NaBH、収率72%)に還元され、これを対応するヒドロキシ酸へと加水分解し、そして保護すると(TMSE−OH、EDC、4−DMAP)、収率81%でTMSEエステル119を得た。アルデヒド113の直接加水分解は成功しなかったので、加水分解の前にアルコールへの還元を必要とする上記のプランを採用せざるを得なかった。Dess−Martinペルヨージナンでの119の再酸化により、アルデヒド120を得(収率93%)、これを87と穏やかにNozaki−Hiyama−Kishiカップリングに付すと、収率71%でヒドロキシエステル121を得た。TBAFでのTMSEエステルの開裂は穏やかに進行し、高い収率でヒドロキシ酸122を得た。シスおよびトランス異性体115および122の両方を、Yamaguchiのプロトコール(Inanaga, J.; et al. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1979, 52, 1989-1993; Mulzer, J.; et al. Synthesis 1992, 215-228; Nicolaou, K. C.; et al. Chem. Eur. J. 2000, 6, 2783-2800)(収率70%)を用いて環化し、その後、C15エピマーをクロマトグラフィーで分離すると、化合物116、117、123および124を得た。これらの化合物を脱シリル化すると、最終的に、優れた収率で所望のシクロプロピルエポチロン9〜12を得た。
【0035】
本明細書に記載の出発物質は、商品として入手可能であるか、または自体公知の方法で製造され得る。
【0036】
図13、14、および16〜19において、XがCHであり、そしてArは下記の構造:
【化9】

〔式中、RおよびRはHであり、そしてRはメチルである。〕
により表される基である、式IまたはIIの化合物の製造が記載される。
【0037】
式I{式中、Rは、Rと第一縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルから選択される基であり;
は、Rと第一縮合環構造を形成するか、またはRと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基であり;
は、Rと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基であり;
該第一または第二縮合環構造は、C1〜C6分枝鎖または直鎖アルキル置換基を有するまたは有さない芳香族またはヘテロ芳香族5または6員縮合環のいずれかである。}の化合物は、例えば、式VII
【化10】

〔式中、R、RおよびRは上で定義した意義を有する。〕
で示されるピリジン誘導体を、最初にPd(II)−触媒およびヨウ化銅(I)の存在下で適当な溶媒中にてHCCCHと反応させて式VIII
【化11】

〔式中、R、RおよびRは上で定義した意義を有する。〕
で示されるピリジン誘導体を得、得られた式VIIIの生成物を、第二のステップにおいてハイドロスタチン化して、式IX
【化12】

〔式中、R、RおよびRは上で定義した意義を有する。〕
で示されるピリジン誘導体を得ることにより取得でき、式IXのピリジン誘導体は、第三のステップにおいてヨウ素との反応により、対応する式X
【化13】

〔式中、R、RおよびRは上で定義した意義を有する。〕
で示されるヨウ化物へ変換される。次いで、式Xのヨウ化物は、化合物番号87の代わりに、図18および図19において示された反応シーケンスにおいて使用され得る。
【0038】
さらに、式Xのヨウ化物は、例えば、番号17のヨウ化物の代わりに図9において示される反応シーケンスにおいても使用され得、かくして、式I〔式中、Xは式−CH−CH−の二価基であり、そしてArは下記の構造:
【化14】

[式中、R、RおよびRは式Xの化合物のために提供された意義を有する。]
により表される基である。〕の化合物を得ることができる。
【0039】
本明細書において使用される「ヒドロキシ基の保護基」なる用語は、ヒドロキシ基のための酸不安定保護基を意味し、これらの基は自体公知である。保護基の特徴は、典型的には加溶媒分解、還元、光分解または酵素活性により、例えば生理学的条件と類似の条件で、容易に、すなわち不所望の二次的反応なしに除去されること、および最終生成物中には存在しないことである。専門家は、どの保護基が本明細書において前記および後記した反応に適しているかを知っているか、または容易に確立することができる。
【0040】
保護基によるヒドロキシ基の保護、保護基自体、およびそれらの開裂反応は、例えば、標準的参考資料、例えばJ. F. W. McOmie, “Protective Groups in Organic Chemistry”, Plenum Press, London and New York 1973, in T. W. Greene, “Protective Groups in Organic Synthesis”, Wiley, New York 1981, in “The Peptides”; Volume 3 (編者: E. Gross and J. Meienhofer), Academic Press, London and New York 1981, in “Methoden der organischen Chemie” (有機化学の方法), Houben-Weyl, 4th edition, Volume 15/I, Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974, in H.-D. Jakubke and H. Jescheit, “Aminosauren, Peptide, Proteine” (アミノ酸、ペプチド、タンパク質), Verlag Chemie, Weinheim, Deerfield Beach, and Basel 1982, and in Jochen Lehmann, “Chemie der Kohlenhydrate: Monosaccharide und Derivate” (炭水化物の化学:モノサッカライドおよび誘導体), Georg Thieme Verlag, Stuttgart 1974において記載されている。
【0041】
好ましい保護基は、tert−ブチル−ジメチル−シリル(TBS)エーテル、トリエチルシリル(TES)エーテル、トリイソプロピルシリル(TIPS)エーテル、ジエチルイソプロピルシリル(DEIPS)エーテル、イソプロピルジメチルシリル(IPDMS)エーテルまたはテキシルジメチルシリル(TDS)エーテルのような、酸不安定シリルエーテルである。
【実施例】
【0042】
生物化学
合成されたエポチロンの生物学的活性を、細胞毒性およびチュブリン重合アッセイにより評価した。最初に、細胞毒性を、親細胞系(lA9)ならびに3つの薬物耐性細胞系、すなわち、パクリタキセル耐性細胞系(Giannakakou, P.; et al. J. Biol. Chem. 1997, 272, 17118-17125)lA9/PTX10およびlA9/PTX22およびエポチロン−耐性細胞系(Giannakakou, P.; et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2000, 97, 2904-2909)1A9/A8を含む、一連の卵巣カルシノーマ細胞系において最初に評価した。これらの耐性細胞系は、薬物−チュブリン相互作用に影響し、そしてタキサンおよびエポチロン駆動性チュブリン重合の減少をもたらす、明らかな後天的β−チュブリン変異を有している。これらの生物学的試験の結果を表1に要約する。さらなる細胞毒性試験を、親細胞系(KB−31)、および(P−gpの過剰発現による)パクリタキセル耐性細胞系(KB−8511)を含む、一連のヒト類表皮細胞系を用いて行った。これらの試験の結果を表2に要約する。
【0043】
過去の報告(Nicolaou, K. C.; et al. ChemBioChem 2001, 1, 69-75; Johnson, J.; et al. Org. Lett. 2000, 2, 1537-1540)と一致して、我々は、シクロプロピルエポチロンA(3)が親化合物エポチロンA(1)よりも少し強力に1A9およびKB−31細胞の成長を阻害することを見出した。15S−シクロブチルエポチロンA(4)は良好な活性を有するが、1および3のいずれよりも弱い。両方の化合物の15R−異性体(5および6)が低い濃度で親感受性の1A9およびKB−31細胞に対して不活性であることは、注目すべきである。興味深いことに、(12R,13S)−トランス−置換エポチロン7および8でさえ、良好な活性を示し、また、シクロプロピルアナログが最も強力であった。これらの結果は、エポチロンAおよびBのトランス−エポキシドアナログに関する我々の過去の報告と一致する(Nicolaou, K. C.; et al. Angew. Chem. Int. Ed. Engl. 1997, 36, 2097-2103)。別の試験(Nicoloau, K. C.; et al. Chem. Biol. 1998, 5, 365-372)において、我々は、最初は間違って(13S)−ジアステレオマーとして帰属された、(13R)−シクロプロピルエポチロン125および126(図2参照)が不活性であることを見出した。かくして、我々は、12,13−シクロプロピルエポチロンAの、4つすべてのあり得るジアステレオマーを製造および試験し、そしてこれらの結果に基づいて、C12位の立体配置は細胞毒性に対して比較的ほとんど影響ないが、13Sの立体配置は必須であるように思われる。
【0044】
驚くべきことに、トランス−シクロプロピルピリジンアナログ11は、1A9ヒト卵巣カルシノーマ細胞系においてIC50=0.6nMで、我々の細胞系のすべてに対して顕著な活性を示した。シスアナログ9もまた高度に活性であるが、11の活性の3分の1から5分の1であった。さらに、15R異性体アナログ(10および12)は不活性であった。
【0045】
活性化合物(3、4、7、8、9および11)が、エポチロンA(1)と比べてβ−チュブリン変異体に対して同様の細胞毒性プロフィールを示すことに、注目すべきである(表1参照)。言い換えれば、これらの化合物は、クローンPTX10(β270)およびA8(β274)に対する活性を幾分失っており、これにより、残基270および274がチュブリンへのこれらのアナログの結合に重要であることが示される。しかしながら、最も活性なアナログ(11)は、これらの細胞系すべてについて、IC50<10nMを有している。さらに、我々は、現行の試験においておよび過去の報告(Nicolaou, K. C.; et al. ChemBioChem 2001, 1, 69-75; Giannakakou, P.; et al. J. Biol. Chem. 1997, 272, 17118-17125; Giannakakou, P.; et al. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 2000, 97, 2904-2909)と一致して、とりわけ、相対耐性(RR)値が<1である最も活性なアナログ(9および11)の場合においてパクリタキセル選択クローンPTX22(β364)がエポチロンに対する感受性を有していることを見出した。
【0046】
細胞毒性解析に、2つの独立したインビトロチュブリン重合アッセイからのデータを補足した。1つのアッセイにおいて、所定の濃度の個々の化合物への曝露後に、微小管へと重合したチュブリンのフラクションを測定した(表2参照)。他方のアッセイにおいて、個々の化合物への曝露後のチュブリン重合動力学を、350nmでの吸収の測定を通して、精製ラット脳チュブリンを用いて測定した(図3参照)。この解析のために、パクリタキセル、エポチロンA(1)およびエポチロンB(2)を対照として使用し、化合物9、11および12をインビトロ解析のために選択した。化合物12はインビトロ活性を有さず、このことは、この化合物についての細胞毒性活性の欠如と矛盾しない(表1)。化合物9および11は良好なインビトロ活性を示したが、これらの化合物により誘導されるチュブリン重合の最大程度は、エポチロンA(1)により誘導されるものと比べて低かった。しかしながら、エポチロンA(1)に対する化合物9および11の増加した細胞毒性活性は、化合物9および11により誘導される重合のより速い動力学により、潜在的に説明可能である[化合物9および11についてのA350までの時間=0.25は1分よりも小さく、そしてエポチロンA(1)については2分である。]。
【0047】
最終的に、これらの化合物のチュブリン重合は、非微小管性ポリマーの形成による吸収の増加の可能性を除外するために、電子顕微鏡により調べられた(図4)。図4において示されるように、試験されたすべての化合物は、微小管が観察されない化合物12を例外として、微小管性ポリマーの形成を誘導した。
【0048】
図面の詳細な記載
図1は、一連のシクロプロピルおよびシクロブチルエポチロンアナログ(3〜12)の構造を示す。合成された化合物での生物学的試験により、エポチロンアナログ3、4、7、8、9および11が強力なチュブリン重合プロモーターであり、細胞毒性化合物であること、および(12R,13S,15S)−シクロプロピル 5−メチルピリジンエポロチンA(11)が最も強力な化合物であって、その効力(例えば、1A9卵巣カルシノーマ細胞系に対するIC50=0.6nM)がエポチロンBに近いことが確認された。これらの研究により、エポキシドまたはC12位の立体化学のいずれも生物学的活性に必須でないが、C13およびC15の両方の立体化学が生物学的活性に必須であるという結論を含む、数多くの構造活性相関がもたらされた。これらの試験により、また、エポチロン骨格に強力かつ潜在的に臨床上有用な生物学的特性を与えるシクロプロピルおよび5−メチルピリジン部分の両方の重要性が確認された。
【0049】
図2は、設計された12,13−シクロアルカンチアゾールエポチロンアナログ3〜8の化学合成のために使用された逆合成解析を示す。Nozaki−Hiyama−Kishiカップリング(Takai, K.; et al. Tetrahedron Lett. 1983, 24, 5281-5284; Jin, H.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1986, 108, 5644-5646)、アルドール反応ならびにYamaguchiラクトン化(Inanaga, J.; et al. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1979, 52, 1989-1993; Mulzer, J.; et al. Synthesis 1992, 215-228; Nicolaou, K. C.; et al. Chem. Eur. J. 2000, 6, 2783-2800; Nicolaou, K. C.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 7974-7991)を、示された3つの戦略的結合を切るために使用すると、ビルディングブロック13〜16、17および18が明らかとなった。最終標的へのこれらのビルディングブロックの組立ておよび合成は、スキーム1に示した順序にしたがった。したがって、C7〜C15アルデヒドフラグメントとヘテロ環ビニルヨウ化物とのカップリング、続いて、組立ておよびC1〜C6ケトンセグメントとのアルドール反応により、さらなる組立て後に、所望のseco−ヒドロキシ酸が得られる。次いで、従来のYamaguchiのストラテジー(Inanaga, J.; et al. Bull. Chem. Soc. Jpn. 1979, 52, 1989-1993; Mulzer, J.; et al. Synthesis 1992, 215-228; Nicolaou, K. C.; et al. Chem. Eur. J. 2000, 6, 2783-2800; Nicolaou, K. C.; et al. J. Am. Chem. Soc. 1997, 119, 7974-7991)にしたがう環化により、脱保護後に、所望のエポチロンアナログが得られる。
【0050】
図3は、ビルディングブロック13の製造を示すスキームである。試薬および条件:(a)(COCl)(1.5当量)、DMSO(2.0当量)、EtN(5.0当量)、CHCl、−78℃;(b)MeOCHPPhCl(1.5当量)、NaHMDS(1.4当量)、THF、−78℃;(c)触媒量HCl、アセトン:水 9:1、65℃、1時間、3ステップで85%;(d)21(1.5当量)、n−BuLi(3.0当量)、THF、−78℃、78%;(e)(NCOK)(20当量)、HOAc(40当量)、MeOH、ピリジン、25℃、48時間、94%;(f)AcO(1.1当量)、EtN(1.2当量)、4−DMAP(0.1当量)、CHCl、25℃、0.5時間、88%;(g)20%Pd(OH)/C、H(1atm)、EtOAc:EtOH 1:1、25℃、2時間、76%;(h)TPAP(0.05当量)、NMO(1.5当量)、MS4Å、CHCl、25℃、1時間、89%;(i)MeOCHPPhCl(1.2当量)、NaHMDS(1.1当量)、THF、0℃、71%;(j)触媒量HCl、アセトン:水 9:1、55〜60℃、2時間、87%。4−DMAP=4−ジメチル−アミノピリジン、NaHMDS=ナトリウムヘキサメチルジシラジド、NMO=N−メチルモルホリン N−オキシド、py=ピリジン、TPAP=テトラ−n−プロピルアンモニウム過ルテニウム酸。
【0051】
図4は、アルデヒド14の合成を示すスキームである。試薬および条件:(a)DME(2.2当量)、EtZn(2.2当量)、CH(4.4当量)、28(1.2当量)、CHCl、収率98%、>90%ee;(b)EtN(6.0当量)、SO・py(3.0当量)、CHCl:DMSO 4:1、0℃、2時間;(c) MeOCHPPhCl(1.5当量)、NaHMDS(1.3当量)、THF、−40〜25℃、12時間、2ステップで81%;(d)TBAF(1.5当量)、THF、25℃、2時間;(e)NaH(1.5当量)、BnBr(2.0当量)、THF:DMF 5:1、0〜25℃、10時間;(f)触媒量HCl、アセトン:水 9:1、50℃、5時間;(g)21(1.5当量)、NaHMDS(2.8当量)、TMSCl(1.5当量)、THF、4ステップで58%;(h)(NCOK)(20当量)、HOAc(40当量)、MeOH、ピリジン、25℃、7時間;(i)AcO(2.0当量)、EtN(5.0当量)、4−DMAP(0.1当量)、CHCl、0℃、20分;(j)20%Pd(OH)/C、H(1atm)、EtOAc:EtOH 1:1、25℃、6時間、3ステップで98%;(k)DMP(1.2当量)、CHCl、0〜25℃、40分。4−DMAP=4−ジメチルアミノピリジン、DMP=Dess−Martinペルヨージナン、NaHMDS=ナトリウムヘキサメチルジシラジド、py=ピリジン。
【0052】
図5は、ビルディングブロックアルデヒド15および16の合成のためのスキームである。試薬および条件:(a)DMP(1.2当量)、NaHCO(5.0当量)、CHCl、25℃、3時間、95%;(b)アルコール33で開始する:(COCl)(1.1当量)、DMSO(2.2当量)、EtN(5.0当量)、CHCl、−78℃;次いで、EtN、25℃、5日間、2ステップで88%;c)MeOCHPPhCl(1.15当量)、NaHMDS(1.10当量)、THF、−78〜25℃、89%;(d)0.12N HCl(水性):アセトン(1:9)、還流、1時間、98%(35)、94%(40);(e)21(2.0当量)、NaHMDS(3.8当量)、THF、0℃、2時間;次いで、TMSCl(2.0当量)、25℃、20分;次いで、35(または40)、THF、−78〜25℃、20時間、59%(36)、83%(41);(f)(NCOK)(20当量)、AcOH(40当量)、py:MeOH(5:1)、25℃、48時間;次いで、PtO(0.05当量)、H(1atm)、MeOH、25℃、20分、82%;(g)炭素担持10wt%Pt(0.02当量)、EtOAc、25℃、8時間、96%;(h)TBSOTf(1.0当量)、2,6−ルチジン(2.5当量)、CHCl、−78〜0℃、20分;(i)DIBAL(2.0当量)、CHCl、−78℃、5分、2ステップで99%(38)、90%(43);(j)DMP(1.2当量)、NaHCO(5.1当量)、CHCl、25℃、3時間、94%;(k)(COCl)(1.1当量)、DMSO(2.2当量)、EtN(5.0当量)、CHCl、−78〜25℃、97%;(l) MeOCHPPhCl(1.15当量)、NaHMDS(1.10当量)、THF、−78〜25℃;(m) 0.12N HCl(水性):アセトン(1:9)、還流、1時間;(n)AcO(1.1当量)、EtN(2.5当量)、4−DMAP(0.02当量)、CHCl、0℃、20分、3ステップで60%(15)、62%(16)。DIBAL=水素化アルミニウムジイソブチル、4−DMAP=4−ジメチルアミノ−ピリジン、DMP=Dess−Martinペルヨージナン、NaHMDS=ナトリウムヘキサメチルジシラジド、py=ピリジン、TMSCl=塩化トリメチルシラン。
【0053】
図6は、チアゾールビニルヨウ化物17の合成を示すスキームである。試薬および条件:(a)PPh(4.0当量)、CBr(2.0当量)、CHCl、0℃、4時間、88%;(b)NaHMDS(1.0当量)、MeLi(2.0当量)、MeI(5.0当量)、−78〜25℃、12時間、97%;(c)n−BuLi(4.0当量)、(n−BuSn)(4.0当量)、CuCN(2.0当量)、MeOH(110当量)、THF、87%;(d)I(1.1当量)、CHCl、0℃、99%。NaHMDS=ナトリウムヘキサメチルジシラジド。
【0054】
図7および8は、エポチロンアナログ3、5、および7の合成を示すスキームである。試薬および条件:(a)17(1.5〜2.0当量)、CrCl(10〜13当量)、NiCl(0.02〜0.13当量)、DMSO、25℃、6〜12時間、56%(48)、32からの収率91%;(b)DMP(1.2当量)、CHCl、0〜25℃、0.5時間、83%;(c)(−)−DIPCl(3.0当量)、EtO、−15〜25℃、18時間、84%;(d)TBSOTf(1.1〜2.0当量)、2,6−ルチジン(2.5当量)、CHCl、−78℃、0.5〜1時間、91〜100%;(e)DIBAL(2.0〜3.1当量)、CHCl、−78℃、15分〜1時間、93〜96%;(f)DMP(1.2当量)、CHCl、25℃、1.5時間;(g)LDA(3.1当量)、18(3.0当量)、THF、−78℃、4分、63%(51)、70%(60);(h)TBSOTf(2.0当量)、2,6−ルチジン(2.5当量)、CHCl、−20〜25℃、1.5〜12時間、86%(52)、94%(61);(i)HF・py、ピリジン、0〜25℃、3〜4時間;(j)DMP(1.2〜1.5当量)、NaHCO(1.5当量)、CHCl、25℃、15分〜2時間;(k)NaClO(5.0当量)、2−メチル−2−ブテン(7.5当量)、NaHPO(2.5当量)、t−BuOH:HO 4:1、25℃、10〜20分;(l)TBAF(12当量)、THF、25℃、16〜26時間、4ステップで46%(53);(m)2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド(2.4当量)、EtN(6.0当量)、THF、0℃、1時間、次いで、4−DMAP(2.2当量)、トルエン、75℃、3〜11時間、42%(54)、27%(55)、5ステップで53%(63);(i)CHCl中20%TFA、0℃、2時間、78%(3)、65%(5);(o))CHCl中25%TFA、25℃、7時間、73%。DIBAL=水素化アルミニウムジイソブチル、DIPCl=ジイソピノカンフェイルクロロボラン、4−DMAP=4−ジメチル−アミノピリジン、DMP=Dess−Martinペルヨージナン、LDA=リチウムジイソプロピルアミド、NaHMDS=ナトリウムヘキサメチルジシラジド、py=ピリジン、TBAF=テトラブチルアンモニウムフルオライド。
【0055】
図9および10は、シス−シクロブチルエポチロンアナログ4および6の合成を示すスキームである。試薬および条件:(a)17(1.5当量)、CrCl(12.6当量)、NiCl(0.13当量)、DMSO、25℃、6時間、(89%、C15エピマーの2:3混合物);(b)TBSOTf(1.0当量)、2,6−ルチジン(2.5当量)、CHCl、−78〜0℃、20分;(c)DIBAL(2.0当量)、CHCl、−78℃、5分、2ステップで99%;(d)DMP(1.2当量)、CHCl、25℃、1.5時間;(e)LDA(3.1当量)、18(3.0当量)、THF、−78℃、4分、2ステップで67%;(f)TBSOTf(2.0当量)、2,6−ルチジン(2.5当量)、CHCl、−20〜25℃、1.5または12時間、96%;(g)HF・py、ピリジン、THF、0〜25℃、3時間、91%;(h)DMP(1.2〜1.5当量)、NaHCO(1.5当量)、CHCl、25℃、15分または2時間;(i)NaClO(5.0当量)、2−メチル−2−ブテン(7.5当量)、NaHPO(2.5当量)、t−BuOH:HO 4:1、25℃、10〜20分、2ステップで93%;(j)TBAF(12当量)、THF、25℃、16〜26時間、54%;(k)2,4,6−トリクロロ−ベンゾイルクロライド(2.4当量)、EtN(6.0当量)、THF、0℃、1時間、次いで、4−DMAP(2.2当量)、トルエン、75℃、3または11時間、21%(73)、38%(74);(l)CHCl中20v/v%TFA、25℃、1または8時間、61%(4)、60%(6)。4−DMAP=4−ジメチルアミノ−ピリジン、DMP=Dess−Martinペルヨージナン、LDA=リチウムジイソプロピルアミド、py=ピリジン、TBAF=テトラブチルアンモニウムフルオライド。
【0056】
図11および12は、トランス−シクロブチルエポチロンアナログ8の合成を示すスキームである。試薬および条件:(a)17(1.5当量)、CrCl(12.6当量)、NiCl(0.13当量)、DMSO、25℃、6時間、91%;(b)DMP(1.2当量)、NaHCO(5.0当量)、CHCl、25℃、3時間;(c)(−)−DIPCl(3.0当量)、EtO、−15〜25℃、18時間、2ステップで47%;(d)TBSOTf(1.0当量)、2,6−ルチジン(2.5当量)、CHCl、−78〜0℃、20分;(e)DIBAL(2.0当量)、CHCl、−78℃、5分、2ステップで84%;(f)DMP(1.2当量)、CHCl、25℃、1.5時間;(g)LDA(3.1当量)、18(3.0当量)、THF、−78℃、4分、2ステップで75%;(h)TBSOTf(2.0当量)、2,6−ルチジン(2.5当量)、CHCl、−20〜25℃、1.5または12時間、96%;(i)HF・py、ピリジン、THF、0〜25℃、3時間、81%;(j)DMP(1.2〜1.5当量)、NaHCO(1.5当量)、CHCl、25℃、15分または2時間;(k)NaClO(5.0当量)、2−メチル−2−ブテン(7.5当量)、NaHPO(2.5当量)、t−BuOH:HO 4:1、25℃、10〜20分;(l)TBAF(12当量)、THF、25℃、16〜26時間、3ステップで47%;(m)2,4,6−トリクロロ−ベンゾイルクロライド(2.4当量)、EtN(6.0当量)、THF、0℃、1時間;次いで、4−DMAP(2.2当量)、トルエン、75℃、3〜11時間、50%;(n)CHCl中20%TFA、0℃、2時間、79%。DIBAL=水素化アルミニウムジイソブチル、DIPCl=ジイソピノカンフェイル−クロロボラン、4−DMAP=4−ジメチルアミノ−ピリジン、DMP=Dess−Martinペルヨージナン、LDA=リチウムジイソプロピルアミド、py=ピリジン、TBAF=テトラブチルアンモニウムフルオライド。
【0057】
図13は、エポチロンアナログ9〜12の逆合成解析および重要なフラグメントを示す。ピリジンシクロアルカンエポチロン(9〜12)の構築について発明されたストラテジーは、フラグメントのカップリングの順番が逆であることを除いて、それらのチアゾール対応物の全合成のために使用されるものと似ている。かくして、ケトン18とのビルディングブロック84および85のアルドール反応は、ここでは、ビニルヨウ化物86とのNozaki−Hiyama−Kishiカップリングに先行する。
【0058】
図14は、アルコール85および86の合成のためのスキームである。試薬および条件:(a)NaHMDS(2.1当量)、TMSCl(1.1当量)、THF、−78〜25℃、6時間、68%;(b)TBPDSCl(1.1当量)、イミダゾール(2.0当量)、DMF、25℃、1時間、89%;(c)10%Pd/C、H(1atm)、MeOH:THF 5:1、50℃、10時間、75%;(d)PPh(1.4当量)、4−DMAP(0.01当量)、I(1.5当量)、イミダゾール(2.0当量)、MeCN/EtO、25℃、1時間、93%;(e)n−BuLi(3.3当量)、3−(tert−ブチルジメチルシリルオキシ)プロピン(3.5当量)、THF/HMPA、−78〜−30℃、2.5時間、72%;(f)BF・OEt(2.0当量)、CHCl、25℃、1.5時間、89%;(g)NiCl(1.0当量)、NaBH(1.0当量)、EDA(3.0当量)、H(1atm)、EtOH、0℃、1時間、95%;(h)LiAlH(1.0当量)、MeOH(1.0当量)、THF、50℃、0.5時間、83%;(i)DME(2.2当量)、EtZn(2.2当量)、CH(4.4当量)、28(1.2当量)、CHCl、−15〜25℃、6時間、99%(96)、93%(98);(j)AgO(3.0当量)、BnBr(2.6当量)、TBAI(0.1当量)、トルエン、24時間、25〜50℃;(k)TBAF(5.0当量)、THF、25℃、4時間、2ステップで83%(85)、85%(86)。4−DMAP=4−ジメチルアミノピリジン、DME=ジメトキシエタン、DMP=Dess−Martinペルヨージナン、EDA=エチレンジアミン、HMPA=ヘキサメチルホスホルアミド、NaHMDS=ナトリウムヘキサメチルジシラジド、TBAF=テトラブチルアンモニウムフルオライド、TBAI=テトラブチルアンモニウムヨーダイド。
【0059】
図15は、ピリジンビニルアルコール87の合成を示す。プロピンとの5−メチル−2−ブロモピリジン99のSonogashiraカップリング(Arcadi, A.; et al. Tetrahedron 1994, 50, 437-452)により、収率98%でアルキン100を得た。次いで、これを、チアゾール側鎖前駆体17を製造するために使用されたのと同じ方法(スキーム5)により、ハイドロスタチン化し、そしてスズをヨウ素と交換(2ステップで86%)すると、スズ化合物101を経由して、ヨウ化物87を得た(収率100%)。試薬および条件:(a)Pd(PPh)Cl(0.01当量)、CuI(0.02当量)、プロピン(1atm)、DMF/(i−Pr)NH、25℃、3時間、98%;(b)n−BuLi(4.0当量)、(n−BuSn)(4.0当量)、CuCN(2.0当量)、MeOH(110当量)、THF、−10℃、15時間、86%;(c)I(1.05当量)、CHCl、25℃、5分、100%。
【0060】
図16および17は、アルデヒド107および113の合成を示すスキームである。試薬および条件:(a)DMP(1.2当量)、CHCl、25℃、1.5時間;(b)LDA(2.5当量)、18(2.4当量)、THF、−78℃、4分、2ステップで75%(102)、89%(108)、(c)TBDPSOTf(4.0当量)、2,6−ルチジン(5.0当量)、CHCl、−20〜25℃、1時間、93%(103)、100%(109);(d)HF・py、ピリジン、25℃、2時間;(e)DMP(1.2当量)、NaHCO(1.5当量)、CHCl、25℃、6時間;(f)NaClO(5.0当量)、2−メチル−2−ブテン(7.5当量)、NaHPO(2.5当量)、t−BuOH:HO 4:1、25℃、10分;(g)TMSCHN(2.0当量)、MeOH:ベンゼン 1:1、4ステップで92%(104)、88%(110);(h)20%Pd(OH)/C、H(1atm)、EtOAc:EtOH 1:1、25℃、6時間、93%(105)、80%(111);(i)DMP(1.2当量)、NaHCO(1.5当量)、CHCl、25℃、1.5時間;(j)MeOCHPPhCl(1.5当量)、NaHMDS(1.3当量)、THF、−40〜25℃、70%(106)、79%(112);(k)TsOH(20当量)、ジオキサン:HO 10:1、50℃、5時間;次いで、(c)のようにシリル化、61%(107)、76%(113)。DMP=Dess−Martinペルヨージナン、NaHMDS=ナトリウムヘキサメチルジシラジド、py=ピリジン。
【0061】
図18および19は、エポチロン9、10、11および12のシクロプロピルピリジンアナログの合成を示す。試薬および条件:(a)NaBH(1.1当量)、CHCl/EtOH、−78℃、1時間、72%;(b)LiOH、HO/t−BuOH、40℃、48時間、98%;(c)EDC(2.0当量)、4−DMAP(0.5当量)、TMSE−OH:CHCl 2:1、25℃、2時間、83%;(d)DMP(2.5当量)、py(10当量)、CHCl、0℃、2.5時間、93%;(e)87(2.0当量)、CrCl(10当量)、NiCl(0.02当量)、DMSO、25℃、12または36時間、43%(114)、71%(121);(f)LiOH、HO:t−BuOH 2:3、25℃、4日間、76%;(g)TBAF(18当量)、THF、0℃、2時間;(h)2,4,6−トリクロロベンゾイルクロライド(9.0当量)、EtN(22当量)、THF、0℃、1時間、次いで、4−DMAP(3.0当量)、トルエン、75℃、3時間、38%(116)、32%(117)、31%(123)、39%(124);(i)CHCl中20%TFA、25℃、2〜22時間、60%(9)、59%(10)、89%(11)、74%(12)。4−DMAP=4−ジメチルアミノピリジン、DMP=Dess−Martinペルヨージナン、EDC=1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩、py=ピリジン、TBAF=テトラブチルアンモニウムフルオライド、TMSE=2−(トリメチルシリル)エチル。
【0062】
表1は、1A9ヒト卵巣カルシノーマ細胞に対する、およびパクリタキセルまたはエポチロンAで選択されたβ−チュブリン変異細胞系に対する、エポチロン1〜12およびパクリタキセルの細胞毒性を示す表である。 親1A9ならびにパクリタキセル−およびエポチロン−選択薬物耐性クローン(それぞれ、PTX10、PTX22およびA8)に対する試験化合物の抗増殖効果を、SRB(スルホローダミン−B)アッセイを用いる72時間成長阻害アッセイにおいて評価した(Skehan, P.; et al. J. Natl. Cancer Inst. 1990, 82, 1107-1112)。個々の化合物についてのIC50値をnMで表し、および3〜5回の独立実験の平均±平均の標準誤差を表す。相対的耐性(RR)は、個々の耐性系統のIC50値を、親細胞系(1A9)の値で割ることにより計算される。 参考文献3からのデータ。CP=シクロプロピル、CB=シクロブチル、na=適用できず、nd=測定せず、py=5−メチルピリジン側鎖。
【0063】
【表1】

【0064】
親1A9、ならびにパクリタキセル−およびエポチロン−選択薬物耐性クローン(それぞれ、PTX10、PTX22およびA8)に対する試験化合物の抗増殖効果を、SRB(スルホローダミン−B)アッセイを用いる72時間成長阻害アッセイにおいて評価した(Skehan, P.; et al. J. Natl. Cancer Inst. 1990, 82, 1107-1112)。個々の化合物についてのIC50値をnMで表し、および3〜5回の独立実験の平均±平均の標準誤差を表す。相対的耐性(RR)は、個々の耐性系統のIC50値を、親細胞系(1A9)の値で割ることにより計算される。 Nicolaou, K. C.; et al. ChemBioChem 2001, 1, 69-75からのデータ。CP=シクロプロピル、CB=シクロブチル、na=適用できず、nd=測定せず、py=5−メチルピリジン側鎖。
【0065】
表2は、ヒト類表皮癌細胞系に対する、エポチロン1〜12およびパクリタキセルのチュブリン重合能および細胞毒性の表である。%TP=既知の濃度の化合物(典型的には3μM)でのチュブリンのインキュベーション後に重合したチュブリンのパーセント。IC50値(nM表記)としてのヒト癌細胞系に対する細胞毒性。KB−31:類表皮 Taxol(登録商標)−感受性、KB−8511:類表皮 Taxol(登録商標)−抵抗性(P−gp過剰発現による)。
【0066】
ヒト類表皮癌細胞系に対する、エポチロン1〜12およびパクリタキセルのチュブリン重合能および細胞毒性
【表2】

【0067】
%TP=既知の濃度の化合物(典型的には3μM)でのチュブリンのインキュベーション後に重合したチュブリンのパーセント。IC50値(nM表記)としてのヒト癌細胞系に対する細胞毒性。KB−31:類表皮 Taxol(登録商標)−感受性、KB−8511:類表皮 Taxol(登録商標)−抵抗性(P−gp過剰発現による)。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】図1は、エポチロンおよび好適なエポチロンアナログの構造を例示する。
【図2】図2は、設計された12,13−シクロアルカンチアゾールエポチロンアナログ3〜8の化学合成のために使用された逆合成解析を例示する。
【図3】図3は、ビルディングブロック13の製造を示すスキームを例示する。
【図4】図4は、アルデヒド14の合成を示すスキームを例示する。
【図5】図5は、ビルディングブロックアルデヒド15および16の合成のためのスキームを例示する。
【図6】図6は、チアゾールビニルヨウ化物17の合成を例示するスキームを例示する。
【図7】図7は、エポチロンアナログ3、5および7の合成を示すスキームを例示する。
【図8】図8は、エポチロンアナログ3、5および7の合成を示すスキームを例示する。
【図9】図9は、シス−シクロブチルエポチロンアナログ4および6の合成を示すスキームを例示する。
【図10】図10は、シス−シクロブチルエポチロンアナログ4および6の合成を示すスキームを例示する。
【図11】図11は、トランス−シクロブチルエポチロンアナログ8の合成を示すスキームを例示する。
【図12】図12は、トランス−シクロブチルエポチロンアナログ8の合成を示すスキームを例示する。
【図13】図13は、逆合成解析およびエポチロンアナログ9〜12のための重要なフラグメントを例示する。
【図14】図14は、アルコール85および86の合成のためのスキームを例示する。
【図15】図15は、ピリジンヨウ化物87の合成を例示する。
【図16】図16は、前駆体アルデヒド107および113の合成のためのスキームを例示する。
【図17】図17は、前駆体アルデヒド107および113の合成のためのスキームを例示する。
【図18】図18は、シクロプロピルピリジンアナログのエポチロン9、10、11および12の合成を例示する。
【図19】図19は、シクロプロピルピリジンアナログのエポチロン9、10、11および12の合成を例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I
【化1】

〔式中、
Xは、−O−、−C(Y)(Y)−、および−C(Y)(Y)−C(Y)(Y)−からなる群から選択される二価基であり、
およびYは、それぞれ、−H、−F、−Clおよび−Brからなる群から独立して選択される基であり;そして
Arは、下記の構造:
【化2】

{式中、
は、Rと第一縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルから選択される基であり;
は、Rと第一縮合環構造を形成するか、またはRと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基であり;
は、Rと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基であり;
該第一または第二縮合環構造は、C1〜C6分枝鎖または直鎖アルキル置換基を有するまたは有さない芳香族またはヘテロ芳香族5または6員縮合環のいずれかである。}
により表される基であり;そして
15位の不斉中心は、RまたはS配置を有し得る。〕
の化合物、
またはその塩。
【請求項2】
15位の不斉中心がS配置を有し、したがって、式I−S
【化3】

〔式中、
Xは、−O−、−C(Y)(Y)−、および−C(Y)(Y)−C(Y)(Y)−からなる群から選択される二価基であり、
およびYは、それぞれ、−H、−F、−Clおよび−Brからなる群から独立して選択される基であり;そして
Arは、下記の構造:
【化4】

{式中、
は、Rと第一縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルから選択される基であり;
は、Rと第一縮合環構造を形成するか、またはRと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基であり;
は、Rと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基であり;
該第一または第二縮合環構造は、C1〜C6分枝鎖または直鎖アルキル置換基を有するまたは有さない芳香族またはヘテロ芳香族5または6員縮合環のいずれかである。}
により表される基である。〕
の化合物を表す、請求項1に記載の式Iの化合物、
またはその塩。
【請求項3】
下記の構造:
【化5】

により表される、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項4】
下記の構造:
【化6】

により表される、請求項2に記載の式I−Sの化合物。
【請求項5】
下記の構造:
【化7】

により表される、請求項1に記載の式Iの化合物。
【請求項6】
式II
【化8】

〔式中、
Xは、−C(Y)(Y)−、および−C(Y)(Y)−C(Y)(Y)−からなる群から選択される二価基であり、
およびYは、それぞれ、−H、−F、−Clおよび−Brからなる群から独立して選択される基であり;そして
Arは、下記の構造:
【化9】

{式中、
は、Rと第一縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルから選択される基であり;
は、Rと第一縮合環構造を形成するか、またはRと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基であり;
は、Rと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基であり;
該第一または第二縮合環構造は、C1〜C6分枝鎖または直鎖アルキル置換基を有するまたは有さない芳香族またはヘテロ芳香族5または6員縮合環のいずれかである。}
により表される基であり;そして
15位の不斉中心は、RまたはS配置を有し得る。〕
の化合物、
またはその塩。
【請求項7】
15位の不斉中心がS配置を有し、したがって、式II−S
【化10】

〔式中、
Xは、−C(Y)(Y)−、および−C(Y)(Y)−C(Y)(Y)−からなる群から選択される二価基であり、
およびYは、それぞれ、−H、−F、−Clおよび−Brからなる群から独立して選択される基であり;そして
Arは、下記の構造:
【化11】

{式中、
は、Rと第一縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルから選択される基であり;
は、Rと第一縮合環構造を形成するか、またはRと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基であり;
は、Rと第二縮合環構造を形成するか、または−H、ならびに−(C(Z)(Z)(Z))[ここで、16であり、そしてZ、Z、およびZは、それぞれ、−H、−F、−Cl、−Br、−OH、−NH、および−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択される基である(だたし、Z、Z、またはZのいずれか1つが−OHまたは−NHである場合、残りのZ、Z、およびZのそれぞれは、−Hおよび−(C(Z)(Z)(Z))からなる群から独立して選択されるものとする。)。]により表されるC1〜C6分枝鎖もしくは直鎖アルキルからなる群から選択される基であり;
該第一または第二縮合環構造は、C1〜C6分枝鎖または直鎖アルキル置換基を有するまたは有さない芳香族またはヘテロ芳香族5または6員縮合環のいずれかである。}
により表される基である。〕
の化合物を表す、請求項6に記載の式IIの化合物、
またはその塩。
【請求項8】
下記の構造:
【化12】

により表される、請求項6に記載の式IIの化合物。
【請求項9】
下記の構造:
【化13】

により表される、請求項7に記載の式II−Sの化合物。
【請求項10】
下記の構造:
【化14】

により表される、請求項6に記載の式IIの化合物。
【請求項11】
式III
【化15】

〔式中、
Xは、−C(Y)(Y)−、および−C(Y)(Y)−C(Y)(Y)−からなる群から選択される二価基であり、そして
およびYは、それぞれ、−H、−F、−Clおよび−Brからなる群から独立して選択される基であり、そして
15位の不斉中心は、RまたはS配置を有し得る。〕
の化合物、
またはその塩。
【請求項12】
15位の不斉中心がS配置を有し、したがって式III−S
【化16】

〔式中、
Xは、−C(Y)(Y)−、および−C(Y)(Y)−C(Y)(Y)−からなる群から選択される二価基であり、そして
およびYは、それぞれ、−H、−F、−Clおよび−Brからなる群から独立して選択される基である。〕
の化合物を表す、請求項11に記載の式IIIの化合物。
【請求項13】
下記の構造:
【化17】

〔式中、nは、1または2のいずれかである。〕
により表される、請求項12に記載の式III−Sの化合物。
【請求項14】
式IV
【化18】

〔式中、
Xは、−C(Y)(Y)−、および−C(Y)(Y)−C(Y)(Y)−からなる群から選択される二価基であり、そして
およびYは、それぞれ、−H、−F、−Clおよび−Brからなる群から独立して選択される基であり、そして
15位の不斉中心は、RまたはS配置を有し得る。〕
の化合物、
またはその塩。
【請求項15】
15位の不斉中心がS配置を有し、したがって、式IV−S
【化19】

〔式中、
Xは、−C(Y)(Y)−、および−C(Y)(Y)−C(Y)(Y)−からなる群から選択される二価基であり、そして
およびYは、それぞれ、−H、−F、−Clおよび−Brからなる群から独立して選択される基である。〕
の化合物を表す、請求項14に記載の式IVの化合物。
【請求項16】
下記の構造:
【化20】

〔式中、nは、1または2のいずれかである。〕
により表される、請求項14に記載の式IVの化合物。
【請求項17】
下記の構造:
【化21】

〔式中、nは、1または2のいずれかである。〕
により表される、請求項15に記載の式IV−Sの化合物。
【請求項18】
下記の構造:
【化22】

〔式中、nは、1または2のいずれかである。〕
により表される、請求項14に記載の式IVの化合物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2009−7367(P2009−7367A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−183765(P2008−183765)
【出願日】平成20年7月15日(2008.7.15)
【分割の表示】特願2003−522522(P2003−522522)の分割
【原出願日】平成14年8月22日(2002.8.22)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【出願人】(593052785)ザ スクリップス リサーチ インスティテュート (91)
【Fターム(参考)】