説明

シクロヘキサンカルボキサミド誘導体および農園芸用殺菌剤

【課題】各種植物病害に対して防除効果を示し、特に、イネいもち病に対して高い土壌処理効果および水面施用効果を有する新規なシクロヘキサンカルボキサミド誘導体およびそれを含有する農園芸用殺菌剤を提供する。
【解決手段】1−[メトキシ(チオフェン−2−イル)メチル]−N−(チエノ[2,3−b]ピリジン−5−イル)シクロヘキサンカルボキサミド、1−(ピリジン−2−イル)メチル−N−(フロ[2,3−b]ピリジン−5−イル)シクロヘキサンカルボキサミド、1−(6−メチルピリミジン−4−イル)−N−(チエノ[2,3−b]ピリジン−5−イル)シクロヘキサンカルボキサミド等に例示される新規なシクロヘキサンカルボキサミド誘導体の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なシクロヘキサンカルボキサミド誘導体および農園芸用殺菌剤に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに本発明のシクロヘキサンカルボキサミド誘導体の類似化合物としては、下記に記載の一般式(II)〜(VI)で表わされる化合物などが知られている(特許文献1〜6参照)。
これらの化合物は、各種植物病害に対して殺菌活性を有することが知られており、特にイネいもち病ならびにトマト、キュウリ、およびインゲンの灰色かび病に対して有用である。
各種植物病害の中でもイネいもち病は重要病害の一つであり、これまでにも多くの殺菌剤が開発されている。しかしながら、茎葉散布による防除効果は有するものの、土壌処理(箱処理)および水面施用場面でも十分な防除効果を示す薬剤は少ないのが現状である。また薬剤によっては耐性菌の出現により防除効果の低下しているものもあり、従って、新規な化学構造を有する薬剤が強く望まれている。さらに、農家従事者の減少・高齢化が進む今日の情勢においては、予防・治療活性、浸透移行性、長期残効性などの特性を有した防除作業の軽減・省力化を促進する薬剤が望まれている。また農薬の本田での茎葉散布によるイネいもち病の防除は、薬剤の飛散による周辺環境への影響や使用者の安全が懸念されるため、安心できる防除方法ではない。そのため、消費者はもちろん、施用場面における使用者および周辺環境の安全性を確保するためにも、土壌処理(箱処理)および水面施用場面でも十分な防除効果を発揮できる薬剤が強く求められている。
しかし、下記に記載した特許文献1〜6に記載の化合物は、イネいもち病に対して茎葉散布による防除効果は有するものの、土壌処理(箱処理)効果および水面施用効果が弱いという欠点があった。
【0003】
【化2】



(式中、一般式(II)におけるR、XmおよびZnは特許文献1、2に従って定義され、一般式(III)におけるA、W、Xm、Yn、Zpは特許文献3に従って定義され、一般式(IV)におけるA、B、Xm、Yp、Zは特許文献4に従って定義され、一般式(V)におけるA、R、X、Ynは特許文献5に従って定義され、一般式(VI)におけるA、Wp、Xm、Yn、Zは特許文献6に従って定義される。)
【特許文献1】国際公開第02/88086号パンフレット
【特許文献2】特開2004−143045号公報
【特許文献3】国際公開第04/5261号パンフレット
【特許文献4】特開2004−115435号公報
【特許文献5】国際公開第04/39783号パンフレット
【特許文献6】特開2005−206517号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記のような従来の欠点に鑑み、イネいもち病に対して求められる高い土壌処理効果および水面施用効果を有する、新規なシクロヘキサンカルボキサミド誘導体を提供すること、およびそれらの化合物を有効成分として使用する殺菌剤、特にイネいもち病防除剤を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、下記の新規なシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩が種々の植物病害に対して殺菌活性を有し、特にイネいもち病に対して優れた土壌処理効果および水面施用効果を有することを見出し、本発明を完成させた。
したがって、本願の第1の発明は、下記一般式(I)で表される新規なシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩に関するものである。
【化3】

一般式(I)において、Aは、酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選ばれる1個または2個以上の原子を含有する複素5員環または複素6員環を示し、これらの複素5員環または複素6員環は、無置換であるか、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルキル基または置換されてもよいフェニル基(当該置換基は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基である。)で置換されていてもよく、Bは、−(CR)n−(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、nは0〜2の整数を示す。)で表せる基を示し、Xは硫黄原子または酸素原子を示す。
【0006】
本願の第2の発明は、上記の一般式(I)で表されるシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩を含有することを特徴とする、農園芸用殺菌剤に関するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩を農園芸用殺菌剤として用いると次のような効果が奏される。
第1に、本発明化合物は、キュウリ灰色かび病、オオムギうどんこ病、コムギ赤さび病、イネいもち病などの植物病害に対し防除活性を示し、農園芸用殺菌剤として有用である。
第2に、本発明化合物は、土壌処理及び水面施用した場合でも稲体内への浸透移行性を示し、イネいもち病を土壌処理及び水面施用によっても防除できる。
第3に、本発明化合物は、特にいもち病に対して予防効果と治療効果を兼ね備えており、またその効果は長期残効性を示す。
第4に、本発明の農園芸用殺菌剤は、有用作物には薬害を与えることがなく、安心して使用できる。
したがって、本発明に係る化合物を有効成分として含有する農園芸用殺菌剤は、農園芸用作物の種々の病害に対して茎葉散布、土壌処理及び水面施用などにより使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明に係る新規シクロヘキサンカルボキサミド誘導体、その製造方法並びにこれを有効成分として含有する農園芸用殺菌剤について、具体的に説明する。
【0009】
[シクロヘキサンカルボキサミド誘導体]
本発明のシクロヘキサンカルボキサミド誘導体は、前記一般式(I)で表される化合物である。本発明のシクロヘキサンカルボキサミド誘導体は各種の塩になることができる。例えば、塩酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、硝酸塩のような無機酸塩、または酢酸塩、メタンスルホン酸塩などの有機酸塩になり得る。
【0010】
以下において、前記一般式(I)におけるA、BおよびXで示される各置換基について説明する。ただし、前記一般式(I)におけるA、BおよびXがここに示す例に限定されることはない。
【0011】
一般式(I)におけるAで示される酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選ばれる1個または2個以上の原子を含有する複素5員環または複素6員環としては、具体的には、複素5員環としては、フラン、チオフェン、ピロール、チアゾール、イソチアゾール、オキサゾール、イソオキサゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、チアジアゾール、オキサジアゾール、トリアゾールなどを挙げることができる。これらのうち、好ましくは、フラン、チオフェン、チアゾールである。また、複素6員環としては、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、ピリミジンなどを挙げることができる。これらのうち、好ましくは、ピリジン、ピリミジンである。
【0012】
Aは、ハロゲン原子で置換されていてもよく、ハロゲン原子としては、具体的にフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。好ましくは、フッ素原子、塩素原子である。
【0013】
Aは、炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよく、炭素数が1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1−エチル−2−メチル−プロピル基、1−メチル−1−エチルプロピル基、1−メチル−2−エチルプロピル基、2−メチル−1−エチルプロピル基または2−メチル−2−エチルプロピル基などを挙げることができる。これらのなかで、好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0014】
Aは、炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されていてもよく、炭素数1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルコキシ基を挙げることができる。具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、3−メチルブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基または3−エチルブトキシ基などを挙げることができる。好ましくは、メトキシ基である。
【0015】
Aは、炭素数1〜6のハロアルキル基で置換されていてもよく、炭素数が1〜6の直鎖状または分岐鎖状のハロアルキル基を挙げることができる。具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ペンタフルオロペンチル基またはペンタフルオロヘキシル基などを挙げることができる。好ましくは、トリフルオロメチル基である。
【0016】
Aは、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基で置換されてもよいフェニル基で置換されていてもよい。
【0017】
当該置換基のハロゲン原子としては、具体的にフッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。好ましくは、フッ素原子、塩素原子である。
【0018】
当該置換基の炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数が1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1−エチル−2−メチル−プロピル基、1−メチル−1−エチルプロピル基、1−メチル−2−エチルプロピル基、2−メチル−1−エチルプロピル基または2−メチル−2−エチルプロピル基などを挙げることができる。好ましくは、メチル基である。
【0019】
当該置換基の炭素数1〜6のハロアルキル基としては、炭素数が1〜6の直鎖状または分岐鎖状のハロアルキル基を挙げることができる。具体的には、フルオロメチル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基、ペンタフルオロペンチル基またはペンタフルオロヘキシル基などを挙げることができる。好ましくは、トリフルオロメチル基である。
【0020】
当該置換基の炭素数1〜6のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、3−メチルブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基または3−エチルブトキシ基などを挙げることができる。好ましくは、メトキシ基を挙げることができる。
【0021】
一般式(I)におけるBで示される−(CR)n−について説明する。
上記におけるRおよびRで示される炭素数1〜6のアルキル基としては、炭素数が1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を挙げることができる。具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、2−メチルブチル基、ネオペンチル基、n−ヘキシル基、4−メチルペンチル基、3−メチルペンチル基、2−メチルペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、1,1−ジメチルブチル基、1,3−ジメチルブチル基、2,3−ジメチルブチル基、1−エチルブチル基、1−エチル−2−メチル−プロピル基、1−メチル−1−エチルプロピル基、1−メチル−2−エチルプロピル基、2−メチル−1−エチルプロピル基または2−メチル−2−エチルプロピル基などを挙げることができる。好ましくは、メチル基、エチル基である。
【0022】
およびRで示される炭素数1〜6のアルコキシ基としては、具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、s−ブトキシ基、t−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、2−メチルブトキシ基、2,2−ジメチルプロポキシ基、3−メチルブトキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−メチルペンチルオキシ基または3−エチルブトキシ基などを挙げることができる。好ましくは、メトキシ基である。
【0023】
上記におけるnは0〜2の整数を示す。
【0024】
一般式(I)におけるXは、硫黄原子または酸素原子である。
【0025】
次に、一般式(I)で表される化合物の具体例を表1−1から表1−7に示すが、本発明の化合物がここに例示された化合物に限定されることはない。
表1−1から表1−7において、それぞれ「Me」はメチル基、「Et」はエチル基、「Pr」はプロピル基を表す。「−」はn=0を表す。
なお、表1−1から表1−7中の化合物番号は、以下の表2−1から表2−2、実施例および試験例でも参照される。
【化4】

【0026】
【表1−1】

【0027】
【表1−2】

【0028】
【表1−3】

【0029】
【表1−4】

【0030】
【表1−5】

【0031】
【表1−6】

【0032】
【表1−7】

【0033】
次に、本発明のシクロヘキサンカルボキサミド誘導体の一部について、そのプロトンNMRデータを表2−1から表2−2に示す。
なお、各化合物のH−NMRスペクトルデータは、標準物質としてテトラメチルシラン(TMS)、溶媒として重クロロホルム(CDCl)を用い、日本電子データム(株)製JNM−LA300型核磁気共鳴装置により測定した。
【0034】
【表2−1】

【0035】
【表2−2】

注)化合物番号118については、溶媒として重ジメチルスルホキシドを用いて測定した。
【0036】
[本発明化合物の製造方法]
本発明に係る一般式(I)で表される化合物は、任意の方法により製造することができるが、特に好ましい一般的製造方法を下記する製造スキーム1、製造スキーム2および製造スキーム3に示す。
下記の一般式(IX)で表される化合物において、Aが硫黄原子である化合物は、文献既知化合物であって、例えばJ. Org. Chem.,34巻2号347項(1969年)に記載の方法で、チエノ[2,3‐b]ピリジンを得、次いでJournal of Heterocyclic Chemistry
7巻1号81項(1970年)に記載の方法に従って(IX)を合成し、利用することができるが、これらの方法に限定されない。
また、一般式(IX)において、Aが酸素原子である化合物は、文献既知化合物であって、例えばJournal of Heterocyclic Chemistry 3巻202項(1966年)に記載の方法で、5−ニトロ-フロ[2,3‐b]ピリジン‐2‐カルボン酸を得、次いでJournal of Heterocyclic Chemistry 8巻5号735項(1971年)に記載の方法に従って(IX)を合成し、利用することができるが、これらの方法に限定されない。
【0037】
[製造スキーム1]
【化5】


(式中、A、BおよびXは、それぞれ前記と同様であり、Halはハロゲン原子を表す。)
【0038】
製造スキーム1は、一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体をハロゲン化した一般式(VIII)で示される酸ハロゲン化物と、一般式(IX)で示されるアミンとを縮合させて、本発明化合物(I)を製造する方法である。
【0039】
(工程1−1)
一般式(VIII)で示される酸ハロゲン化物は、一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体を、ハロゲン化剤によってハロゲン化することにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類などが挙げられる。ハロゲン化剤としてはオキサリルクロリド、塩化チオニル、三塩化リン、五塩化リンなどが挙げられる。好適にはオキサリルクロリドが挙げられる。
この反応では、シクロヘキサンカルボン酸誘導体(VII)1モルに対して、ハロゲン化剤は通常1〜2モル、好ましくは1〜1.5モルの量で用いられる。この反応は、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から6時間で完結することが多い。
【0040】
(工程1−2)
一般式(I−1)で示される本発明化合物は、塩基存在下、一般式(VIII)で示される酸ハロゲン化物と一般式(IX)で示されるアミンとを反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素類が挙げられ、場合によってはこれらの有機溶媒と水との混合溶媒として用いることもできる。
用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基類、ピリジン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基類が挙げられる。
酸ハロゲン化物(VIII)の使用量は、アミン(IX)1モルに対して、通常1〜2モル、好ましくは1.05モルである。また、塩基は通常1〜5モル、好ましくは1〜2モルの量で用いられる。この反応は、通常0〜80℃、好ましくは0〜40℃の温度範囲で行われる。本反応の反応時間は、反応が終了する任意の時間としてもよい。反応が終了するとは、例えば溶媒中の原料の一方または両方が消費されることをいい、例えば薄層クロマトグラフィ−などによって確認できる。一般的には1時間〜24時間の範囲内である。
反応終了後、本発明化合物(I)は、たとえば本発明化合物(I)が含まれた反応溶液に、水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。
得られた目的物は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することができる。
【0041】
[製造スキーム2]
【化6】

(式中、A、BおよびXは、それぞれ前記と同様である。)
【0042】
製造スキーム2は、塩基存在下、一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体と一般式(IX)で示されるアミンとを縮合剤により脱水縮合させて、本発明化合物(I)を製造する方法である。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルムなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、アセトニトリルなどのニトリル類、ジメチルホルムアミドなどのアミド類が挙げられる。
縮合剤としては、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド、2−メチル−6−ニトロ安息香酸無水物などが挙げられる。
用いられる塩基としては、ピリジン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、4−ジメチルアミノピリジンなどが挙げられる。
シクロヘキサンカルボン酸誘導体(VII)の使用量は、アミン(IX)1モルに対して、1〜2モル、好ましくは、1.05モルである。
縮合剤の使用量は、シクロヘキサンカルボン酸誘導体(VII)1モルに対して、通常1〜2モル、好ましくは1〜1.1モルであり、塩基は通常1〜4モル、好ましくは1〜2モルの量で用いられる。この反応は、通常0〜80℃、好ましくは0〜40℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から24時間で完結することが多い。反応終了後、本発明化合物(I)は、本発明化合物(I)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(I)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することができる。
【0043】
[製造スキーム3]
【化7】

(式中、AおよびBは、前記と同様である。Pは、炭素数1〜6のアルキル基を表し、具体的にはメチル基、エチル基などが挙げられる。)
【0044】
製造スキーム3は、塩基存在下、一般式(X)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体と一般式(IX)で示されるアミンとを反応させて、本発明化合物(I)を製造する方法である。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドなどのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキシド類が挙げられる。
用いられる塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザンなどの有機金属類が挙げられる。
シクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体(X)の使用量は、アミン(IX)1モルに対して、1〜2モルである。
塩基の使用量は、シクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体(X)1モルに対して、通常0.1〜5モル、好ましくは1〜2モルの量で用いられる。
この反応は、通常0〜130℃、好ましくは0〜80℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から24時間で完結することが多い。反応終了後、本発明化合物(I)は、本発明化合物(I)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(I)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することができる。
【0045】
次に本発明化合物の製造中間体である一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体および一般式(X)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体の代表的な製造方法を下記する製造スキーム4、製造スキーム5、製造スキーム6および製造スキーム7に示す。
【0046】
[製造スキーム4]
【化8】

(式中、A、BおよびPは、前記と同様である。Lは、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、スルホネート基、あるいはトリフレート基などの脱離能のある原子または基を示す。)
【0047】
(工程4−1)
一般式(X)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体は、一般式(XI)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルと一般式(XII)で示される化合物とを塩基存在下反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類が挙げられる。
用いられる塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザンなどの有機金属類が挙げられる。
化合物(XII)の使用量は、シクロヘキサンカルボン酸エステル(XI)1モルに対して、1〜1.5モルで、好ましくは1〜1.2モルである。塩基の使用量は1〜10モルで、好ましくは1.1〜5モルの量で用いられる。
この反応は、通常−70〜80℃、好ましくは−70〜40℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常10分から24時間で完結することが多い。反応終了後、化合物(X)は、化合物(X)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(X)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することもがきる。
【0048】
本工程で使用される化合物(XI)は公知化合物である。
本工程で使用される化合物(XII)は公知化合物であるか、または公知の方法、例えば、J. Am. Chem.
Soc., 110巻8153頁(1988年)、J. Org. Chem., 58巻964頁(1993年)に記載の方法で合成することができる。
【0049】
( 工程4−2)
シクロヘキサンカルボン酸誘導体(VII)は、一般式(X)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体を、塩基存在下で加水分解することにより容易に得られる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、水や、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ジメチルスルホキシドなどが挙げられる。
用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物、もしくはカリウムt−ブトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類が挙げられる。
塩基の使用量はシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体(X)1モルに対して、1〜3モル、好ましくは1〜2モルの量で用いられる。反応は、通常10〜100℃、好ましくは20〜60℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から6時間で完結することが多い。
反応終了後、シクロヘキサンカルボン酸誘導体(VII)は、化合物(VII)を含む反応溶液に水を加えたのち、塩酸、硫酸などを加えて酸性とし、ジエチルエーテル、トルエン、酢酸エチルなどの抽出用溶媒により抽出後、水および飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去すること等により得られる。
一般式(VII)で表される化合物は、必要に応じて、融点、赤外線吸収スペクトル、H−NMRスペクトル、13C−NMRスペクトル、質量分析、X線構造解析などによって分析し、確認、同定することができる。
【0050】
[製造スキーム5]
【化9】

(式中、A、RおよびPは、前記と同様である。Qは、炭素数が1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基を表し、具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基などが挙げられる。TMSはトリメチルシリル基を示す。)
【0051】
一般式(X)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体のうち、RおよびRのうち少なくともどちらかがアルコキシ基である一般式(X−1)で示される化合物は、一般式(XI)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルをシリルエノール化した一般式(XIII)で示される化合物と、一般式(XIV)で示されるアセタールとをルイス酸存在下反応させることにより製造することができる。下記に、工程5−1と工程5−2をそれぞれ具体的に示す。
【0052】
(工程5−1)
一般式(XIII)で示される化合物は、一般式(XI)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルとトリメチルシリルクロリドとを、塩基存在下反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類が挙げられる。
用いられる塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザンなどの有機金属類が挙げられる。
トリメチルシリルクロリド(TMSCl)の使用量は、シクロヘキサンカルボン酸エステル(XI)1モルに対して、1〜1.5モルで、好ましくは1.2モルである。塩基の使用量は1〜10モルで、好ましくは1.1〜5モルの量で用いられる。
この反応は、通常−70〜80℃、好ましくは−70〜40℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常10分から24時間で完結することが多い。反応終了後、化合物(XIII)は、化合物(XIII)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(XIII)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することもできる。
【0053】
(工程5−2)
一般式(X−1)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体は、一般式(XIII)で示されるシリルエノールエーテルと一般式(XIV)で示されるアセタールとをルイス酸存在下反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、クロロホルムなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、テトラヒドロフランなどのエーテル類が挙げられ、好ましくはジクロロメタンが挙げられる。
用いられるルイス酸としては、塩化亜鉛、塩化チタン、塩化アルミニウム、テトラフルオロホウ酸などが挙げられ、好ましくは塩化亜鉛が挙げられる。
アセタール(XIV)の使用量は、シリルエノールエーテル(XIII)1モルに対して、1.0〜2.0モルで、好ましくは1.0〜1.5モルの量で用いられる。ルイス酸の使用量は0.01〜0.2モルで、好ましくは、0.01〜0.1モルの量で用いられる。
この反応は、通常−20〜150℃、好ましくは−10〜40℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常10分から24時間で完結することが多い。反応終了後、化合物(X−1)は、化合物(X−1)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(X−1)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することができる。
【0054】
本工程で使用される化合物(XIV)は公知化合物であるか、または公知の方法、例えば、Synth. Commun., 7巻409頁(1977年)、J. Org. Chem., 60巻7334頁(1995年)に記載の方法で合成することができる。
工程5−2で製造される一般式(X−1)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体から、前記工程4−2により一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0055】
[製造スキーム6]
【化10】

(式中、Pは、前記と同様である。R、RおよびRは、水素原子、炭素数が1〜6の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基、置換されてもよいフェニル基を表す。)
【0056】
一般式(X)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体のうち、Bが単結合である一般式(X−3)、(X−4)および(X−5)で示される化合物は、一般式(XI)と一般式(XV)で示されるカルボン酸エステルとを塩基存在下反応させることにより製造することができるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体(X−2)を一般式(XVI)で示されるヒドラジン、一般式(XVII)で示されるアミジンおよびヒドロキシアミンと反応することにより製造できる。下記に、工程6−1、工程6−2、工程6−3および工程6−4をそれぞれ具体的に示す。
【0057】
(工程6−1)
一般式(X−2)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体は、一般式(XI)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルと一般式(XV)で示される化合物とを塩基存在下反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類が挙げられる。
用いられる塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザンなどの有機金属類が挙げられる。
化合物(XV)の使用量は、シクロヘキサンカルボン酸エステル(XI)1モルに対して、1〜1.5モルで、好ましくは1〜1.2モルである。塩基の使用量は1〜10モルで、好ましくは1.1〜5モルの量で用いられる。
この反応は、通常−70〜80℃、好ましくは−70〜40℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常10分から24時間で完結することが多い。反応終了後、化合物(X−2)は、化合物(X−2)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(X−2)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することもがきる。
本工程で使用される化合物(XV)は公知化合物である。
【0058】
(工程6−2)
一般式(X−3)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体は、一般式(X−2)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルと一般式(XVI)で示されるヒドラジン化合物とを反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノールなどのアルコール類が挙げられ、場合によってはこれらの有機溶媒と水との混合溶媒として用いることもできる。
用いられるヒドラジン化合物(XVI)は、塩を形成していてもよく、例えば塩酸塩、酢酸塩などが挙げられる。
本反応は、塩基の存在下で行ってもよく、用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基類、ピリジン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基類、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類が挙げられる。
ヒドラジン化合物(XVI)の使用量は、シクロヘキサンカルボン酸エステル(X−2)1モルに対して、1〜5モルで、好ましくは1〜2モルである。塩基の使用する場合の使用量は1〜10モルで、好ましくは1〜5モルの量で用いられる。
この反応は、通常20〜150℃、好ましくは20℃〜使用される有機溶媒の沸点に近い温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から24時間で完結することが多い。反応終了後、化合物(X−3)は、化合物(X−3)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(X−3)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することもがきる。
本工程で使用される化合物(XVI)は公知化合物である。
工程6−2で製造される一般式(X−3)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体から、前記工程4−2により一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0059】
(工程6−3)
一般式(X−4)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体は、一般式(X−2)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルと一般式(XVII)で示されるアミジン化合物とを反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノールなどのアルコール類が挙げられ、場合によってはこれらの有機溶媒と水との混合溶媒として用いることもできる。
用いられるアミジン化合物(XVII)は、塩を形成していてもよく、例えば塩酸塩、酢酸塩などが挙げられる。
本反応は、塩基の存在下で行ってもよく、用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基類、ピリジン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基類、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類が挙げられる。
アミジン化合物(XVII)の使用量は、シクロヘキサンカルボン酸エステル(X−2)1モルに対して、1〜10モルで、好ましくは1〜3モルである。塩基を使用する場合の使用量は1〜10モルで、好ましくは1〜5モルの量で用いられる。
この反応は、通常20〜150℃、好ましくは20℃〜使用される有機溶媒の沸点に近い温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から24時間で完結することが多い。反応終了後、化合物(X−4)は、化合物(X−4)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(X−4)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することもがきる。
本工程で使用される化合物(XVII)は公知化合物である。
工程5−4で製造される一般式(X−4)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体から、前記工程4−2により一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0060】
(工程6−4)
一般式(X−5)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体は、一般式(X−2)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルとヒドロキシアミンとを反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ジクロロメタン、クロロホルムなどの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、メタノール、エタノールなどのアルコール類が挙げられ、場合によってはこれらの有機溶媒と水との混合溶媒として用いることもできる。
用いられるヒドロキシアミンは、塩を形成していてもよく、例えば塩酸塩、酢酸塩などが挙げられる。
本反応は、塩基の存在下で行ってもよく、用いられる塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機塩基類、ピリジン、トリエチルアミン、トリn−プロピルアミン、N,N−ジイソプロピルエチルアミンなどの有機塩基類、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類が挙げられる。
ヒドロキシアミンの使用量は、シクロヘキサンカルボン酸エステル(XII−2)1モルに対して、1〜10モルで、好ましくは1〜3モルである。塩基を使用する場合の使用量は1〜10モルで、好ましくは1〜5モルの量で用いられる。
この反応は、通常20〜150℃、好ましくは20℃〜使用される有機溶媒の沸点に近い温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から24時間で完結することが多い。反応終了後、化合物(X−5)は、化合物(X−5)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(X−5)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することもがきる。
工程6−4で製造される一般式(X−5)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体から、前記工程4−2により一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0061】
[製造スキーム7]
【化11】

(式中、R、RおよびHalは、前記と同様である。Zはハロゲン原子および炭素数1〜6のアルコキシ基を表し、Yは硫黄原子、酸素原子および窒素原子を表す。)
【0062】
一般式(X)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体のうち、Bが単結合である一般式(X−8)で示される化合物は、一般式(XI)と一般式(XVIII)で示されるカルボン酸誘導体とを塩基存在下反応させることにより製造することができるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体(X−6)をハロゲン化剤でハロゲン化した後、一般式(XIX)で示されるアミドと反応することにより製造できる。下記に、工程7−1、工程7−2および工程7−3をそれぞれ具体的に示す。
【0063】
(工程7−1)
一般式(X−6)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体は、一般式(XI)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルと一般式(XVIII)で示されるカルボン酸誘導体化合物とを塩基存在下反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテルなどのエーテル類、ヘキサン、トルエンなどの炭化水素類が挙げられる。
用いられる塩基としては、水素化ナトリウム、水素化カリウムなどのアルカリ金属水素化物、カリウムt−ブトキシド、ナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシド類、ブチルリチウム、リチウムジイソプロピルアミド、リチウムヘキサメチルジシラザンなどの有機金属類が挙げられる。
化合物(XVIII)の使用量は、シクロヘキサンカルボン酸エステル(XI)1モルに対して、1〜1.5モルで、好ましくは1〜1.2モルである。塩基の使用量は1〜10モルで、好ましくは1.1〜5モルの量で用いられる。
この反応は、通常−70〜80℃、好ましくは−70〜40℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常10分から24時間で完結することが多い。反応終了後、化合物(X−6)は、化合物(X−6)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(X−6)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することもがきる。
本工程で使用される化合物(XVIII)は公知化合物である。
【0064】
(工程7−2)
一般式(X−7)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体は、一般式(X−6)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルをハロゲン化剤でハロゲン化することにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、ベンゼンなどの炭化水素類、エーテル、ジオキサンなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸、ギ酸などのカルボン酸類などが挙げられ、場合によってはこれらの有機溶媒と水との混合溶媒として用いることもできる。ハロゲン化剤としては塩素、塩化スルフリル、臭素、N−ブロモスクシンイミドなどが挙げられる。
この反応では、シクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体(X−6)1モルに対して、ハロゲン化剤は通常1〜2モル、好ましくは1〜1.5モルの量で用いられる。この反応は、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から6時間で完結することが多い。
(X−7)は、化合物(X−7)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(X−7)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することもがきる。
【0065】
(工程7−3)
一般式(X−8)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体は、一般式(X−7)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステルと一般式(XIX)で示されるアミド化合物とを反応させることにより製造することができる。
本反応は、溶媒中で行うのが好ましく、用いられる溶媒としては、クロロホルム、四塩化炭素などの脂肪族ハロゲン化炭化水素類、ベンゼン、トルエンなどの炭化水素類、エーテル、ジオキサンなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類、メタノール、エタノールなどのアルコール類、酢酸、ギ酸などのカルボン酸類などが挙げられる。
アミド化合物(XIX)の使用量は、シクロヘキサンカルボン酸エステル(X−7)1モルに対して、1〜10モルで、好ましくは1〜3モルである。
この反応は、通常0〜100℃、好ましくは20〜80℃の温度範囲で行われる。反応時間は、反応基質や反応温度により異なるが、通常1時間から6時間で完結することが多い。
(X−8)は、化合物(X−8)が含まれた反応溶液に水と有機溶媒を加えて抽出後、さらに水、飽和食塩水で洗浄し、溶媒を留去することにより得られる。得られた目的物(X−8)は、必要ならば、さらにカラムクロマトグラフィーあるいは再結晶などの操作によって精製することもがきる。
工程7−3で製造される一般式(X−8)で示されるシクロヘキサンカルボン酸エステル誘導体から、前記工程4−2により一般式(VII)で示されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体を製造することができる。
【0066】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物の、より具体的な製造例を後述の実施例1〜4に示す。
本発明化合物の製造中間体である一般式(VII)で表されるシクロヘキサンカルボン酸誘導体のより具体的な製造例を後述の参考実施例1〜3に示す。
【0067】
[本発明の農園芸用殺菌剤]
本発明に係る一般式(I)で表される化合物は、広範囲の種類の糸状菌、例えば、ネコブカビ類(Plasmodiophoromycetes)、藻菌類(Oomycetes)、子のう(嚢)菌類(Ascomycetes)、不完全菌類(Deuteromycetes)、担子菌類(Basidiomycetes)に属する菌に対し、低薬量で防除することができ、例えば農園芸用の殺菌性組成物として有用である。
【0068】
本発明により防除することのできる植物病害として具体的に挙げれば、例えば、イネのいもち病(Pyricularia grisea)、ごま葉枯病(Cochliobolus
miyabeanus)、紋枯病(Thanatephorus cucumeris、ばか苗病(Gibberella fujikuroi)、苗立枯病(Fusarium 菌、Rhizopus菌、Pythium菌、Trichoderma
viride)、稲こうじ病(Claviceps virens)、ムギ類の赤かび病(Gibberella zeae、Fusarium avenaceum、Fusarium culmorum、Monographella nIVale)、雪腐病(Pythium菌、Typhula菌、Monographella nIValis、Myriosclerotinia borealis)、裸黒穂病(Ustilago
nuda)、なまぐさ黒穂病(Tilletia controversa)、眼紋病(Pseudocercosporella herpotrichoides)、葉枯病(Septoria
tritici)、ふ枯病(Phaeosphaeria nodorum)、カンキツ類の黒点病(Diaporthe citri)、小黒点病(Diaporthe medusa,
Alternaria citri)、そうか病(Elsinoe fawcettii)、褐色腐敗病(Phytophthora citrophthra)、緑かび病(Penicillium
digitatum)、青かび病(Penicillium italicum)、リンゴのモニリア病(Monilinia mali)、黒星病(Venturia inaequalis)、斑点落葉病(Alternaria mali)、黒点病(Mycosphaerella pomi)、すす斑病(Gloeodes pomigena)、すす点病(Zygophiala
jamaicensis)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、褐斑病(Diplocarpon mali)、赤星病(Gymnosporangium
yamadae)、腐らん病(Valsa ceratosperma)、ナシの黒星病(Venturia nashicola)、赤星病(Gymnosporangium
asiaticum)、輪紋病(Botryosphaeria berengeriana)、胴枯病(Phomopsis fukushii)、モモの縮葉病(Taphrina
deformans)、灰星病(Monilinia fructicola、 Monilinia fructigena)、黒星病(Cladosporium
carpophilum)、ホモプシス腐敗病(Phomopsis)、オウトウの灰星病(Monilinia fructicola 、Monilinia fructigena)、幼果菌核病(Monilinia kusanoi)、ウメの黒星病(Cladosporium
carpophilum)、ブドウの黒とう病(Elsinoe ampelina)、晩腐病(Colletotrichum acutatum、Glomerella cingulata)、褐斑病(Pseudocercospora vitis)、つる割病(Phomopsis
viticola)カキの角斑落葉病(Cercospora kaki)、円星落葉病(Mycosphaerella nawae)、チヤの輪斑病(Pestalotiopsis
longiseta、Pestalotiopsis theae)、褐色円星病(Pseudocercospora ocellata、Cercospora chaae)、もち病(Exobasidium vexans)、網もち病(Exobasidium
reticulatum)、ウリ類のつる枯病(Mycosphaerella melonis)、つる割病(Fusarium oxysporum)、黒星病(Cladosporium
cucumerinum)、褐斑病(Corynespora cassiicola)、トマトの葉かび病(Fulvia fulva)、輪紋病(Alternaria solani)、ナスの褐紋病(Phomopsis vexans)、すすかび病(Mycovellosiella
nattrassii)、アブラナ科野菜の白さび病(Albugo macrospora)、白斑病(Cercosporella brassicae、Pseudocercosporella
capsellae)、タマネギの灰色腐敗病(Botrytis allii)、イチゴのじゃのめ病(Mycosphaerella fragariae)、ジャガイモの夏疫病(Alternaria
solani)、ダイズの茎疫病(Phytophthora sojae)、紫斑病( Cercospora kikuchii)、アズキの茎疫病(Phytophthora
vignae)、ラッカセイの褐斑病(Mycosphaerella arachidis)、テンサイの褐斑病(Cercospora beticola)、葉腐病(Thanatephorus
cucumeris)、シバのカーブラリア葉枯病(Curvularia菌)、ダラースポット病(Sclerotinia homoeocarpa)、ヘルミントスポリウム葉枯病(Cochliobolus菌)、バラの黒星病(Diplocarpon rosae)、キクの白さび病(Puccinia horiana)、および各種作物のべと病(Peronospora菌、Pseudoperonospora菌、Plasmopara菌、Bremia菌)、疫病(Phytophthora菌)、うどんこ病(Erysiphe菌、Blumeria菌、Sphaerotheca菌、Podosphaerea菌、Phyllactinia菌、Uncinula菌、Oidiopsis菌)、さび病(Puccinia菌、Uromyces菌、Physopella菌)、炭疽病(Glomerella菌、 Colletotrichum菌、Gloeosporium菌)、黒斑病(Alternaria菌)、灰色かび病(Botrytis cinerea)、菌核病(Sclerotinia
sclerotiorum)、白紋羽病(Rosellinia necatrix)、紫紋羽病(Helicobasidium mompa)、白絹病(Sclerotium rolfsii)、その他各種土壌病害(Fusarium菌、Rhizoctonia菌、Pythium菌、Aphanomyces菌、Phoma菌、Verticillium菌、Plasmodiophora brassicaeなど)
などの病害を挙げることができる。
【0069】
本発明に係る一般式(I)で表されるシクロヘキサンカルボキサミド誘導体は、殺菌活性を示す。したがって、一般式(I)で表される化合物を含む組成物を殺菌剤として使用することができる。特に、一般式(I)で表される化合物を活性成分として含む組成物を、農園芸用殺菌剤として用いることができる。
本発明に係る一般式(I)で表される化合物を活性成分として含む農園芸用殺菌剤の組成は、活性成分として一般式(I)で表される化合物を含む以外は、通常の農園芸用殺菌剤の組成としてもよい。通常の組成とは、たとえば、農薬製剤ガイド(1997編集:日本農薬学会施用法研究会、発行:社団法人日本植物防疫協会)に記載される。すなわち、一般式(I)で表される化合物、適当な担体、補助剤、界面活性剤、結合剤、および安定剤などを配合してもよい。
【0070】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物を含む農園芸用殺菌剤の組成物は、農薬の剤型として一般に使用されている任意の剤型に製剤化することができる。たとえば、粉剤、粗粉剤、DL(ドリフトレス型)粉剤、フローダスト剤、微粒剤、細粒剤、粒剤、水和剤、顆粒水和剤、液剤、ゾル剤(フロアブル剤)、乳剤、および油剤などに製剤化することができるが、これらに限定されない。
本発明に係る一般式(I)で表される化合物の含有量は、製剤の剤型、および使用方法により、適宜選択することができる。一般に好ましい含有量は、製剤全体量に対して0.1〜90重量%の範囲である。
本発明の式(I)の活性化合物は、農薬として使用する場合には必要に応じて製剤時または散布時に、殺菌剤(殺かび剤、殺細菌剤、抗ウィルス剤、植物抵抗性誘導剤)、殺虫剤、殺ダニ剤、殺センチュウ剤、除草剤、鳥類忌避剤、生長調整剤、肥料及び/又は土壌改良剤等と混合、混用施用してもよい。
【0071】
本発明の式(I)の化合物等と混合、混用して使用できる代表例を以下に示すが、必ずしもこれらのみに限定されるものではない。
殺菌剤:
プロベナゾール(probenazole)、アシベンゾラール(acibenzolar)、チアジニル(tiadinil)、カルプロパミド(carpropamid)、ジクロシメット(diclocymet)、フェノキサニル(fenoxanil)、フサライド(phthalide)、ピロキロン(pyroquilon)、トリシクラゾール(tricyclazole)、アゾキシストロビン(azoxystrobin)、メトミノストロビン(metominostrobin)、オリザストロビン(oryzastrobin)、ブラストサイジン−S(blasticidin-S)、カスガマイシン(kasugamycin)、フェリムゾン(ferimzone)、イソプロチオラン(isoprothiolane)、イプロベンホス(iprobenfos)、ベノミル(benomyl)、チオファネート−メチル(thiophanate-methyl)、ペフラゾエート(pefurzoate)、イプコナゾール(ipconazole)、プロクロラズ(prochloraz)、トリフルミゾール(triflumizole)、フルジオキソニル(fludioxonil)、チラム(thiram)、フルトラニル(flutolanil)、メプロニル(Mepronil)、チフルザミド(thifluzamide)、フラメトピル(furametpyr)、ペンシクロン(pencycuron)、ジクロメジン(diclomedine)、バリダマイシン(validamycin)、メタラキシル(metalaxyl)、ヒメキサゾール(hymexazol)、クロロタロニル(chlorothalonil)
【0072】
殺虫剤:
フィプロニル(fipronil)、ジノテフラン(dinotefuran)、イミダクロプリド(imidacloprid)、クロチアニジン(clothianidin)、チアクロプリド(thiaclopid)、チアメトキサム(thiamethoxam)、ニテンピラム(nitenpyram)、アセタミピリド(acetamipirid)、カルボスルファン(carbosulfan)、ベンフラカルブ(benfuracarb)、シラフルオフェン(silafluofen)、スピノサド(spinosad)、カルタップ(cartap)フェンチオン(fenthion)、フェニトロチオン(fenitrothion)、ブプロフェジン(buprofezin)、エトフェンプロックス(etofenprox)、フェノブカルブ(fenobucarb)、テブフェノジド(tebfenozide)、ベンスルタップ(bensultap)、アセフェート(acephate)、エチプロール(ethiprole)、ピメトロジン(pymetrozine)等。
【0073】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物を活性成分として含む農園芸用殺菌剤は、一般の農園芸用殺菌剤が使用される方法と同様の方法で使用することができる。具体的には、水和剤、液剤、乳剤、ゾル剤(フロアブル剤)、顆粒水和剤、または油剤の場合は、水で50〜10,000倍に希釈して、一般に活性成分が1〜10,000ppmの濃度の液になるように調製し、この希釈液を、水稲や果樹など作物形態により異なるが、農耕地10アール当たり50〜1,000リットル、通常は、100〜600リットルの範囲で植物の病害発生部位の茎葉に散布しうる。
また、液剤、乳剤、またはゾル剤(フロアブル剤)の場合は、水で希釈することなく、または50倍以内に希釈して、微量散布剤として10アール当たり、5〜5,000mLの量を、主に空中散布することもできる。空中散布は、ヘリコプターなどを用いて実施される。
また、粉剤、粗粒剤、DL粉剤、フローダスト剤、微粒剤、細粒剤、または粒剤の場合は、10アール当たり0.3〜5kgの剤(活性成分含有量は約5〜500g)を、植物の病害発生部位の茎葉、土壌表面、土壌中、または水面に施用してもよい。
また、水稲などの育苗箱栽培においては、粒剤などを育苗箱(標準サイズ:30cmx60cmx5cm)当り10〜100gを、フロアブルなどは希釈せずにそのままあるいは希釈して、30〜1,000mlを、播種時前あるいは後、育苗期中の土壌表面に施用することができる。
【0074】
本発明に係る一般式(I)で表される化合物を農園芸用殺菌剤として製剤化する方法の具体例を、後述の実施例5〜9に示す。
また本発明に係る一般式(I)で表される化合物を含む農園芸用殺菌剤の有用性、すなわち殺菌活性を後述の試験例1〜4により具体的に示す。
【0075】
以下、本発明を実施例、および試験例により具体的に説明するが、これらにより本発明の範囲が限定されるものではない。
【実施例1】
【0076】
1−[メトキシ(チオフェン−2−イル)メチル)]−N−(チエノ[2,3−b]ピリジン−5−イル)シクロヘキサンカルボキサミド(化合物番号8)の製造
【化12】

【0077】
[製造スキーム5]
(工程5−1)
[メトキシ(トリメチルシリルオキシ)メチレン]シクロヘキサンの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、テトラヒドロフラン20mlに溶解したジイソプロピルアミン0.39g(3.9mmol)を入れ、−70℃に冷却後、1.60mol/lのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液2.4ml(3.9mmol)を加え、1時間攪拌した。この溶液に、シクロヘキサンカルボン酸メチル0.50g(3.5mmol)を加え、1時間攪拌後、塩化トリメチルシリル0.76g(7.0mmol)を加え、−60℃で1時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加え、ヘキサン40mlで抽出した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、粗標記化合物0.75g(油状物、粗収率100%)を得た。これは精製することなく次のステップで使用した。
【0078】
(工程5−2)
1−[メトキシ(チオフェン−2−イル)メチル]シクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジクロロメタン20mlに溶解した[メトキシ(トリメチルシリルオキシ)メチレン]シクロヘキサン0.75g(3.5mmol)、2−(ジメトキシメチル)チオフェン0.62g(3.9mmol)および塩化亜鉛24mg(0.18mmol)を入れ、室温で1時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加え、クロロホルム20mlで抽出処理した。有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=30:1(容量比))により精製して、標記化合物0.75g(油状物、収率80%)を得た。
【0079】
(工程4−2)
1−[メトキシ(チオフェン−2−イル)メチル]シクロヘキサンカルボン酸の合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジメチルスルホキシド20mlに溶解した1−[メトキシ(チオフェン−2−イル)メチル]シクロヘキサンカルボン酸メチル0.75g(2.8mmol)、水2mlおよび水酸化カリウム0.31g(5.6mmol)を入れ、80℃で5時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加えジエチルエーテル20mlで洗浄後、水層を1N塩酸水溶液で酸性とし、酢酸エチル40mlで抽出処理した。酢酸エチル層を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去して、粗標記化合物0.58g(茶色結晶、粗収率82%)を得た。粗結晶をヘキサンで洗浄し、0.46g(白色結晶、収率65%)を得た。
【0080】
[製造スキーム1]
1−[メトキシ(チオフェン−2−イル)メチル]−N−(チエノ[2,3−b]ピリジン−5−イル)シクロヘキサンカルボキサミドの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジクロロメタン10mlに溶解した1−[メトキシ(チオフェン−2−イル)メチル]シクロヘキサンカルボン酸0.22g(0.87mmol)を入れ、0℃に冷却後、オキサリルクロリド0.13g(1.0mmol)および触媒量のN,N−ジメチルホルムアミドを加え、室温で攪拌した。1時間後、反応液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をジクロロメタン5mlに溶解した。次いで、この溶解液を別途用意したチエノ[2,3−b]ピリジン−5−アミン0.10g(0.67mmol)、トリエチルアミン0.20g(2.0mmol)およびジクロロメタン10mlの溶液中に加え、24時間、室温で攪拌した。
反応終了後、反応混合液を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=3:1(容量比))により精製して、標記化合物0.21g(油状物、収率81%)を得た。
【実施例2】
【0081】
1−(ピリジン−2−イル)メチル−N−(フロ[2,3−b]ピリジン−5−イル)シクロヘキサンカルボキサミド(化合物番号217)の製造
【化13】

【0082】
[製造スキーム4]
(工程4−1)
1−(ピリジン−2−イル)メチルシクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、テトラヒドロフラン20mlに溶解したジイソプロピルアミン0.79g(7.8mmol)を入れ、−70℃に冷却後、1.60mol/lのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液4.8ml(7.8mmol)を加え、1時間攪拌した。これに、シクロヘキサンカルボン酸メチル1.0g(7.0mmol)を加え、1時間攪拌後、2−(クロロメチル)ピリジン0.90g(7.1mmol)を加え、−60℃で1.5時間攪拌した。
反応終了後、水30mlおよび酢酸エチル40mlを加えて抽出処理した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液30mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=5:1(容量比))により精製して、標記化合物1.5g(油状物、収率92%)を得た。
【0083】
(工程4−2)
1−(ピリジン−2−イル)メチルシクロヘキサンカルボン酸の合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジメチルスルホキシド20mlに溶解した1−(ピリジン−2−イル)メチルシクロヘキサンカルボン酸メチル1.0g(0.43mmol)およびカリウムt−ブトキシド0.58g(5.2mmol)を入れ、80℃で9時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加えジエチルエーテル20mlで洗浄後、水層を1N塩酸水溶液で酸性とし、酢酸エチル40mlで2回抽出処理した。得られた酢酸エチル層を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去して、粗標記化合物0.60g(油状物、粗収率64%)を得た。これは精製することなく次のステップで使用した。
【0084】
[製造スキーム2]
1−(ピリジン−2−イル)メチル−N−(フロ[2,3−b]ピリジン−5−イル)シクロヘキサンカルボキサミドの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジクロロメタン10mlに溶解した1−(ピリジン−2−イル)メチルシクロヘキサンカルボン酸0.24g(1.1mmol)を入れ、フロ[2,3−b]ピリジン−5−アミン0.10g(0.75mmol)およびピリジン0.14g(1.9mmol)を入れ、0℃に冷却後、1−エチル−3−(3’−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩0.23g(1.2mmol)および触媒量の4−(ジメチルアミノ)ピリジンを加え、室温で30時間攪拌した。
反応終了後、有機層を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1(容量比))により精製して、標記化合物0.15g(油状物、収率60%)を得た。
【実施例3】
【0085】
1−(6−メチルピリミジン−4−イル)−N−(チエノ[2,3−b]ピリジン−5−イル)シクロヘキサンカルボキサミド(化合物番号161)の製造
【化14】

【0086】
[製造スキーム6]
(工程6−1)
1−アセトアセチルシクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、テトラヒドロフラン50mlに溶解したジイソプロピルアミン4.30g(42.5mmol)を入れ、−70℃に冷却後、1.60mol/lのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液26.5ml(42.4mmol)を加え、1時間攪拌した。これに、シクロヘキサンカルボン酸メチル5.0g(35.2mmol)を加え、1時間攪拌後、(2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)酢酸メチル5.6g(35.0mmol)を加え、0℃で1時間、50℃で4時間攪拌した。
反応終了後、水40mlおよびトルエン50mlを加えて抽出処理した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液40mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=30:1(容量比))により精製して、標記化合物3.2g(油状物、収率40%)を得た。
【0087】
(工程6−2)
1−(6−メチルピリミジン−4−イル)シクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、メタノール10mlに溶解したホルムアミジン酢酸塩0.60g(5.8mmol)、1−アセトアセチルシクロヘキサンカルボン酸メチル1.2g(5.3mmol)を入れ、28%ナトリウムメトキシドメタノール溶液2.0g(10.6mmol)を加え、加熱還流下、3時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加え、酢酸エチル50mlで抽出処理した。得られた酢酸エチル層を飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=5:1(容量比))により精製して、標記化合物0.97g(油状物、収率78%)を得た。
【0088】
[製造スキーム3]
1−(6−メチルピリミジン−4−イル)−N−(チエノ[2,3−b]ピリジン−5−イル)シクロヘキサンカルボキサミドの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、テトラヒドロフラン10mlに溶解したチエノ[2,3−b]ピリジン−5−アミン0.2g(1.3mmol)に60%油状水素化ナトリウム0.10g(2.6mmol)を添加し、室温で2時間攪拌した。これに、1−(6−メチルピリミジン−4−イル)シクロヘキサンカルボン酸メチル0.47g(2.0mmol)を加え、加熱還流下、5時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加え、酢酸エチル50mlで抽出処理した。得られた酢酸エチル層を飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=3:1(容量比))により精製して、標記化合物0.11g(油状物、収率24%)を得た。
【実施例4】
【0089】
1−(2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)−N−(チエノ[2,3−b]ピリジン−5−イル)シクロヘキサンカルボキサミド(化合物番号75)の製造
【化15】

【0090】
[製造スキーム7]
(工程7−1)
1−アセチルシクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した200ml容四つ口フラスコに、テトラヒドロフラン60mlに溶解したジイソプロピルアミン3.1g(30.7mmol)を入れ、−70℃に冷却後、1.60mol/lのn−ブチルリチウム/ヘキサン溶液19ml(30.4mmol)を加え、1時間攪拌した。これに、シクロヘキサンカルボン酸メチル4.0g(28.2mmol)を加え、1時間攪拌後、アセチルクロライド2.3g(29.3mmol)を加え、−60℃で1時間攪拌した。
反応終了後、水50mlおよびトルエン100mlを加えて抽出処理した。得られた有機層を飽和塩化ナトリウム水溶液50mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=30:1(容量比))により精製して、標記化合物3.5g(油状物、収率68%)を得た。
【0091】
(工程7−2)
1−(ブロモアセチル)シクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した100ml容四つ口フラスコに、メタノール20mlに溶解した1−アセチルシクロヘキサンカルボン酸メチル3.5g(19.0mmol)を入れ、0℃に冷却後、臭素3.0g(19.0mmol)を10分間で滴下した。その後、室温で2時間攪拌した。
反応終了後、水20mlおよびジエチルエーテル50mlを加えて抽出処理した。得られた有機層を10%炭酸カリウム水溶液30ml、飽和塩化ナトリウム水溶液30mlで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去して、粗標記化合物4.8g(油状物、粗収率96%)を得た。これは精製することなく次のステップで使用した。
【0092】
(工程7−3)
1−(2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)シクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、エタノール15mlに溶解した1−(ブロモアセチル)シクロヘキサンカルボン酸メチル3.0g(11.4mmol)およびチオアセトアミド0.86g(11.4mmol)を入れ、加熱還流下、3時間攪拌した。
反応終了後、反応混合液を減圧下で溶媒を留去し、残渣を酢酸エチル50mlに溶解後、水30mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液30mlで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=15:1(容量比))により精製して、標記化合物1.3g(油状物、収率48%)を得た。
【0093】
(工程4−2)
1−(2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)シクロヘキサンカルボン酸の合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジメチルスルホキシド20mlに溶解した1−(2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)シクロヘキサンカルボン酸メチル1.0g(4.2mmol)、水2mlおよび水酸化カリウム0.70g(12.5mmol)を入れ、80℃で5時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加えジエチルエーテル20mlで洗浄後、水層を1N塩酸水溶液で酸性とし、酢酸エチル40mlで抽出処理した。酢酸エチル層を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去して、粗標記化合物0.74g(茶色結晶、粗収率78%)を得た。
【0094】
[製造スキーム1]
1−(2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)−N−(チエノ[2,3−b]ピリジン−5−イル)シクロヘキサンカルボキサミドの合成
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ジクロロメタン10mlに溶解した1−(2−メチル−1,3−チアゾール−4−イル)シクロヘキサンカルボン酸0.20g(0.89mmol)を入れ、0℃に冷却後、オキサリルクロリド0.12g(0.95mmol)および触媒量のN,N−ジメチルホルムアミドを加え、室温で攪拌した。1時間後、反応液を減圧下で濃縮し、得られた残渣をジクロロメタン5mlに溶解した。次いで、この溶解液を別途用意したチエノ[2,3−b]ピリジン−5−アミン0.12g(0.80mmol)、トリエチルアミン0.15g(1.5mmol)およびクロロホルム10mlの溶液中に加え、24時間、室温で攪拌した。
反応終了後、反応混合液を水20mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=5:1(容量比))により精製して、標記化合物0.25g(白色結晶、収率88%、融点153−156℃)を得た。
【0095】
[参考実施例1]
1−(1,3−ジメチル−1H−ピラゾール−5−イル)シクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
(工程6−2)
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、メタノール10mlに溶解した1−アセトアセチルシクロヘキサンカルボン酸メチル1.0g(4.4mmol)にメチルヒドラジン0.23g(5.0mmol)を加え、加熱還流下、3時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加え、酢酸エチル50mlで抽出処理した。得られた酢酸エチル層を飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=5:1(容量比))により精製して、標記化合物0.89g(油状物、収率86%)を得た。
H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):1.23−1.86(8H,m),2.33−2.38(2H,m),2.58(3H,s),3.68(3H,s),3.71(3H,s),5.90(1H,s)
【0096】
[参考実施例2]
1−(イソオキサゾール−5−イル)シクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
(工程6−2)
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、メタノール10mlに溶解した1−アセトアセチルシクロヘキサンカルボン酸メチル0.80g(3.5mmol)にヒドロキシアミン塩酸塩0.37g(5.3mmol)を加え、加熱還流下、4時間攪拌した。
反応終了後、水20mlを加え、酢酸エチル80mlで抽出処理した。得られた酢酸エチル層を飽和塩化ナトリウム水溶液20mlで洗浄後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧下で溶媒を留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル;Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=15:1(容量比))により精製して、標記化合物0.58g(油状物、収率74%)を得た。
H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):1.30−1.57(6H,m),1.9−2.04(2H,m),2.20−2.28(5H,m),3.69(3H,s),5.94(1H,s)
【0097】
[参考実施例3]
1−(1,3−オキサゾール−4−イル)シクロヘキサンカルボン酸メチルの合成
(工程7−3)
還流冷却器、攪拌器および温度計を装備した50ml容四つ口フラスコに、ホルムアミド6.0ml、ギ酸2.0mlおよび1−(ブロモアセチル)シクロヘキサンカルボン酸メチル1.2g(4.6mmol)を入れ、加熱還流下、2時間攪拌した。
反応終了後、反応混合液に水20mlを加え、炭酸ナトリウムで中和した。酢酸エチル50mlで抽出後、水30mlおよび飽和塩化ナトリウム水溶液30mlで洗浄した。有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧下で溶媒を留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(シリカゲル:Silica gel 60H(メルク社製商品名)展開溶媒;ヘキサン:酢酸エチル=2:1(容量比))により精製して、標記化合物0.80g(油状物、収率83%)を得た。
H−NMR(CDCl/TMS)δ(ppm):1.20−1.67(6H,m),1.94−1.99(2H,m),2.26−2.32(2H,m),3.60(3H,s),6.81(1H,s),7.50(1H,s)
【実施例5】
【0098】
(粉剤)
化合物番号8の化合物(2重量部)、PAP(イソプロピルリン酸エステル、物理性改良剤)(1重量部)およびクレ−(97重量部)の混合物を、均一に粉砕混合して、活性成分を2重量%含有する粉剤を得ることができる。さらに、化合物番号8に替えて、表1−1から表1−7に記載の各化合物を用いること以外は、同様の方法により、それぞれの粉剤を得ることができる。
【実施例6】
【0099】
(水和剤)
化合物番号8の化合物(20重量部)、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム(3重量部)、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(5重量部)および白土(72重量部)の混合物を均一に混合し、粉砕することにより、活性成分を20重量%含有する水和剤を得ることができる。さらに、化合物番号8の化合物に替えて、表1−1から表1−7に記載の各化合物を用いること以外は、同様の方法により、それぞれ水和剤を得ることができる。
【実施例7】
【0100】
(乳剤)
化合物番号35の化合物(30重量部)、メチルエチルケトン(40重量部)およびポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル(30重量部)を混合して溶解することにより、活性成分を30重量%含有する乳剤を得ることができる。さらに、化合物番号35の化合物に替えて、表1−1から表1−7に記載の各化合物を用いること以外は、同様の方法により、それぞれ乳剤を得ることができる。
【実施例8】
【0101】
ゾル剤(フロアブル剤)
化合物番号75の化合物(25重量部)、ポリオキシエチレンアルキル
エーテル(1重量部)、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム(1重量部)、カルボキシメチルセルロース(1重量部)および水(72重量部)の混合物を均一に混合することにより、活性成分を25重量%含有するゾル剤を得ることができる。さらに、化合物番号75の化合物に替えて、表1−1から表1−7に記載の各化合物を用いること以外は、同様の方法により、それぞれのゾルを得ることができる。
【実施例9】
【0102】
(粒剤)
化合物番号169の化合物(5重量部)、ラウリル硫酸ナトリウム(1重量部)、リグニンスルホン酸カルシウム(5重量部)、ベントナイト(30重量部)、およびクレー(59重量部)の混合物に、さらに水(15重量部)を加えて混練機で混練したのち、造粒機で造粒し、流動乾燥機で乾燥して、活性成分を5重量%含有する粒剤を得ることができる。さらに、化合物番号169の化合物に替えて、表1−1から表1−7に記載の各化合物を用いること以外は、同様の方法により、それぞれの粒剤を得ることができる。
【0103】
以下に、本発明化合物(I)を有効成分として含む農園芸用殺菌剤の有用性について、以下の試験例1〜6に示すが、本発明の有用性は、これらの試験例に限定されるものではない。
なお、供試化合物番号は、表1−1から表1−7で表す化合物と同一の番号を表す。
【0104】
試験例1
イネいもち病に対する箱処理による防除効果試験(フロアブル剤)
温室内で育苗箱(標準育苗箱の1/10面積サイズ:12cm×15cm×高さ4cm)を用いて育苗した水稲(品種:朝日)の2.5葉期苗に、実施例8に準じて調製したフロアブル剤の希釈液(5,000ppm)を50ml潅注した。この薬剤処理した水稲苗を直ちに水田土(湛水)を詰めたポット(1/10,000アールサイズ)に5苗/ポットで移植した。温室内で4週間栽培後、あらかじめ、別の水稲葉上で形成させたイネいもち病菌(Pyricularia grisea)の分生胞子を薬剤処理した水稲に接種し、24℃の接種箱内に24時間静置した後、24℃の人工気象室内において、発病を促した。接種の7日後に、水稲の1株当りのイネいもち病の病斑数を調査し、平均病斑数を求め、下記の式1により防除価(%)を算出した。そして、下記の表3に従い、防除価を評価値に換算した。本試験は、1薬剤区当り、1区1ポットの5連制で行った。
【0105】
【数1】

【0106】
【表3】

【0107】
また、下記の基準により、水稲に対する薬害程度を調査した。
薬害程度の調査指数(6段階で評価)
5:激甚 4:甚 3:多 2:若干 1:わずか 0:なし
この薬害程度の調査指数は、試験例2〜6においても適用した。
これらの結果を下記の表4に示す。
【0108】
【表4】


注)無散布区の( )内の数値は、1葉当りの病斑数を示す。
【0109】
表4における比較薬剤Aとは、下記の化合物を示す。比較薬剤Aは、国際公開第04/55261号パンフレットに記載されている。
【化16】

また、この比較薬剤Aは、試験例2、3においても、比較薬剤として用いる。
【0110】
試験例2
イネいもち病に対する箱処理による防除効果試験(粒剤)
温室内で育苗箱(標準育苗箱の1/10面積サイズ:12cm×15cm×高さ4cm)を用いて育苗した水稲(品種:朝日)の2.5葉期苗に、実施例9に準じて調製した粒剤5gを育苗箱上部より散布した。この薬剤処理した水稲苗を直ちに水田土(湛水)を詰めたポット(1/10,000アールサイズ)に5苗/ポットで移植した。温室内で6週間栽培後、あらかじめ、別の水稲葉上で形成させたイネいもち病菌(Pyricularia grisea)の分生胞子を薬剤処理した水稲に接種し、24℃の接種箱内に24時間静置した後、24℃の人工気象室内において、発病を促した。接種の7日後に、水稲の1株当りのイネいもち病の病斑数を調査し、平均病斑数を求め、上記の式1により防除価(%)を算出した。そして、上記の表3に従い、防除価を評価値に換算した。本試験は、1薬剤区当り、1区1ポットの5連制で行った。
また、上記の基準により、水稲に対する薬害程度を調査した。
これらの結果を以下の表5に示す。
【0111】
【表5】

注)無散布区の( )内の数値は、1葉当りの病斑数を示す。
【0112】
試験例3
イネいもち病に対する水面施用による防除効果試験(フロアブル剤)
温室内で水田土(湛水)を詰めたポット(1/10,000アールサイズ)で栽培した水稲(品種:朝日)の5葉期苗(5苗/株、1株/ポット)に、実施例8に準じて調製したフロアブル剤の希釈液(1,000ppm)1mlを田面水へ点滴処理した。温室内で1週間栽培後、あらかじめ、別の水稲葉上で形成させたイネいもち病菌(Pyricularia grisea)の分生胞子を薬剤処理した水稲に接種し、24℃の接種箱内に24時間静置した後、24℃の人工気象室内において、発病を促した。接種の7日後に、水稲の1株当りのイネいもち病の病斑数を調査し、平均病斑数を求め、上記の式1により防除価(%)を算出した。そして、上記の表3に従い、防除価を評価値に換算した。本試験は、1薬剤区当り、1区1ポットの5連制で行った。
また、上記の基準により、水稲に対する薬害程度を調査した。
これらの結果を以下の表6に示す。
【0113】
【表6】

注)無散布区の( )内の数値は、1葉当りの病斑数を示す。
【0114】
試験例4
キュウリ灰色かび病防除効果試験
温室内で直径6cmの大きさのプラスチックポットで栽培したキュウリ(品種:相模半白)の1.5葉期苗に、実施例6に準じて調製した水和剤の希釈液(100ppm)を1ポットあたり10ml散布した(茎葉散布)。薬剤処理をした翌日、あらかじめジャガイモ煎汁培地上で培養したキュウリ灰色かび病菌(Botrytis cinerea)の含菌寒天片(直径5mm)を薬剤処理したキュウリの第1葉上に接種し、20℃の温室内に入れた。接種の4日後に、病斑直径(cm)を測定し、下記の式2により防除価(%)を算出した。そして、上記の表3に従い、防除価を評価値に換算した。本試験は、1薬液濃度当り、1区1ポットの3連制で行った。その平均の防除効果の評価値を求めた。
【0115】
【数2】

また、上記の基準により薬害程度を調査した。
これらの結果を以下の表7に示す。
【0116】
【表7】

注) 無散布区の ( ) 内の数値は、1葉当りの病斑直径を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】

(一般式(I)において、Aは、酸素原子、硫黄原子および窒素原子からなる群から選ばれる1個または2個以上の原子を含有する複素5員環または複素6員環を示し、これらの複素5員環または複素6員環は、無置換であるか、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数1〜6のハロアルキル基または置換されてもよいフェニル基(当該置換基は、ハロゲン原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基である。)で置換されていてもよく、Bは、−(CR)n−(式中、RおよびRはそれぞれ独立して水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数1〜6のアルコキシ基を示し、nは0〜2の整数を示す。)で表せる基を示し、Xは、硫黄原子または酸素原子を示す。)で表されるシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩。
【請求項2】
前記一般式(I)におけるAがチエニル基またはフリル基を示し、Bが−(CR)n−(式中、Rは水素原子であり、Rは炭素数1〜6のアルコキシ基であり、nは1の整数である。)を示し、Xが硫黄原子または酸素原子を示すことを特徴とする請求項1に記載のシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩。
【請求項3】
請求項1〜2記載の一般式(I)で表されるシクロヘキサンカルボキサミド誘導体またはその塩を含有することを特徴とする、農園芸用殺菌剤。

【公開番号】特開2009−137906(P2009−137906A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−317865(P2007−317865)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【出願人】(000242002)北興化学工業株式会社 (182)
【Fターム(参考)】