説明

シクロヘキサンジメタノールから誘導されるポリウレタン−ウレアポリマー

水性ポリウレタン分散液が開示される。該分散液は、5〜70重量%のポリウレタン固体を含有し、上記固体は、(a)200〜2,000の平均当量を有する、ポリオールまたはポリオールブレンド;および(b)少なくとも1種のポリイソシアネートを反応させることにより調製される少なくとも1種のイソシアネート末端プレポリマーから、場合により、(c)1またはそれ以上の安定剤の存在下で;または、(d)1またはそれ以上のアミン鎖延長剤の存在下で、またはその両方の存在下で;得られ、該プレポリマーは水中に分散され;該プレポリマーは、2〜40重量%のイソシアネート(NCO)含有量を有し、該ポリオールまたはポリオールブレンド(a)は、ポリカルボン酸またはラクトン成分およびグリコール成分に基づくポリエステルを少なくとも15重量%含有し、該グリコール成分は1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,3−/1,4−CHDM)の異性体を含有し、該1,3−/1,4−異性体の比は35:65〜65:35である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン分散液(PUD)およびそれから製造される、耐加水分解性および耐酸腐食性が強化されたポリマーに関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン分散液(PUD)は、医療機器、建造物、接着剤、様々な基材、例えば布、金属、木材、ガラス、プラスチックなどのコーティングにおよぶ、多様な用途に用いられる。VOCに関する法規がより厳格になったことに加え、揮発性有機化合物(VOC)の放出に対する懸念によって、種々の用途において水系システムの使用がより注目されるようになった。ポリウレタン−ウレア分散液の製造は、米国特許第4,237,264号;同第4,408,008号;同第5,569,706号;米国特許公開第2004204559号;同第2005004367号;英国特許出願公開第2386898号および国際公開第2005023947号において例示されるように、公知である。
【0003】
コーティング用途において、ポリエステル樹脂は低VOC被覆剤を調製するために広く用いられている。このようなポリエステルは典型的には、イソフタル酸および/またはアジピン酸とジオールとの縮合反応物であるジオール類である。ポリエステル類の調製に用いられるジオール類は、例えばエチレングリコール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ブタンジオールなどである。1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,4−CHDM)から調製された被覆剤は、他のジオール類に基づくポリオール類と比較して、より優れた耐塩水噴霧性、耐湿性および耐洗剤性をもたらす。1,4−CHDMから調製されたポリエステル樹脂の欠点は、その高粘性、低い溶媒溶解性および結晶化傾向である。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、典型的なポリエステルポリオールから誘導された類似のポリマーと比較して顕著な耐加水分解性および耐酸性を有するポリマーをもたらすポリエステルを含むPUDを提供することである。
【0005】
本発明は、5〜70重量%のポリウレタン固体を含有する水性ポリウレタン分散液であり、前記固体は、
(a)200〜2,000の平均当量を有する、ポリオールまたはポリオールブレンド;と、
(b)少なくとも1種のポリイソシアネートと
を反応させて調製される少なくとも1種のイソシアネート末端プレポリマーから、
場合により、
(c)1種またはそれ以上の安定剤;または、
(d)1種またはそれ以上のアミン鎖延長剤、またはその両方
の存在下、得られ;前記プレポリマーは、水中に分散されており;
前記プレポリマーは、2〜40重量%のイソシアネート(NCO)含有量を有しており、
前記ポリオールもしくはポリオールブレンド(a)は、ポリカルボン酸またはラクトン成分およびグリコール成分に基づくポリエステルを少なくとも15重量%含有し、
前記グリコール成分は、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,3−/1,4−CHDM)の異性体を含有し、前記1,3−/1,4−異性体の比が35:65〜65:35である、水性ポリウレタン分散液である。
【0006】
別の実施形態では、本発明は、そのような分散液から得られるポリウレタンポリマーである。
【0007】
別の実施形態では、本発明は、そのような分散液から調製される被覆剤、エラストマーおよび接着剤である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、金属パネル上のPUD被覆剤の耐酸性および耐加水分解性を示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1,3−/1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,3−/1,4−CHDM)の混合物から誘導されるポリエステルポリオールを含有する分散液が、良好な耐加水分解性および耐酸性を有するポリウレタンポリマーを生成することが見出されている。そのようなポリマーの例は、弾性および硬質の被覆剤、接着剤および封止剤において有用である。1,3−/1,4−CHDMに基づくポリエステルを含有する分散液は上記の用途に好適であるが、熱可塑性ポリウレタン(TPU)を製造する場合の使用にも適しており、耐加水分解性および耐酸性が向上したポリエステル系システムを有することが望まれる場合の使用に特に適している。
【0010】
PUDを製造する場合、ポリウレタンプレポリマーは、ポリイソシアネート成分、および活性水素含有物質またはポリオールとしても知られているイソシアネート反応成分を含む。ポリウレタンという用語には、ポリウレタンの形成に関連する当業者に公知の結合、例えばウレアまたはポリウレア、アロホネート、ビウレットなどを含有するポリマーが含まれる。
【0011】
これらの利点は、1,3−/1,4−CHDMに基づくポリエステルが、ポリオール成分の少なくとも15重量%を構成する場合に見られる。一般に、1,3−/1,4−CHDMに基づくポリエステルポリオールは、ポリオール成分の少なくとも30重量%、好ましくは少なくとも45重量%、より好ましくは50重量%を構成する。1,3−/1,4−CHDMに基づくポリエステルは、ポリオール成分の80重量%まで、85重量%まで、90重量%まで、またさらには95重量%までを構成してもよい。一実施形態では、1,3−/1,4−CHDMに基づくポリエステルは、ポリオール成分の100重量%である。
【0012】
ポリエステルは、1種またはそれ以上のポリカルボン酸またはラクトンと、グリコール成分、例えば、1,3−/1,4−CHDMまたは1,3−/1,4−CHDMとさらなるポリヒドロキシ化合物、との反応により生成される。該ポリエステルは、ポリカルボン酸およびラクトンに基づくポリエステルの混合物であってよい。本発明に使用される1,3−異性体と1,4−異性体との比は、一般に35:65〜65:35である。好ましくは、1,3−異性体と1,4−異性体との比は、40:60〜60:40である。さらに好ましくは、1,3−異性体と1,4−異性体との比は、45:55〜55:45である。一般に、立体異性体は、1,3−異性体および1,4−異性体の総重量に基づいて、13〜15%のシス1,4、29〜32%のトランス1,4、26〜29%のシス1,3、および25〜31%のトランス1,3の範囲内となる。
【0013】
適したポリカルボン酸は、2またはそれ以上のカルボン酸基、または、1つの無水物基が2つの酸性基に相当することに基づいて同等数の無水物基を有し得る。このようなポリカルボン酸は、当分野では周知である。ポリカルボン酸は、2つのカルボン酸基を含有することが好ましい。
【0014】
適したポリカルボン酸の例には、アルキレン鎖中に2〜12個、好ましくは2〜8個の炭素原子を有する脂肪族ジカルボン酸が含まれる。これらの酸としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸、例えばアジピン酸、グルタル酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸(undecanedoic acid)、ドデカン二酸(dodecanadioic acid)、コハク酸またはヘキサン二酸;脂環式酸、例えばヘキサヒドロフタル酸、および1,3−および1,4−シクロヘキサンジカルボン酸;1,3−および1,4−不飽和アルカン二酸、例えばフマル酸またはマレイン酸;ダイマー酸;および芳香族酸、例えばフタル酸およびテレフタル酸が挙げられる。前述の多塩基酸の無水物、例えばマレイン酸無水物またはフタル酸無水物、も用いられ得る。2種またはそれ以上の多塩基酸の組み合わせも用いられ得る。一実施形態では、コハク酸、アジピン酸またはそれらの組み合わせを用いることが好ましい。
【0015】
グリコール成分と反応し得るラクトンの具体例としては、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン、およびξ−エナントラクトンが含まれる。好ましいラクトンは、カプロラクトンである。
【0016】
1,3−/1,4−CHDMに加えて存在し得る、さらなるポリヒドロキシ化合物としては、2価〜8価アルコールが挙げられる。二官能性および多官能性アルコールの例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,10−デカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,4−ブタンジオール、および1,6−ヘキサンジオールである。三官能性またはそれよりも多官能性のアルコールが使用される場合、それらの量は一般に、1つのブレンドの公称官能価が最大3.5、好ましくは2〜3.0であるように選択される。一実施形態では、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、または組み合わせが、さらなるグリコール成分として用いられる。
【0017】
1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール異性体の生成およびポリエステルへの変換のためのプロセスは、当分野において公知である。一実施形態では、シクロヘキサンジメタノールの構造および立体配置異性体は、本開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,252,121号に開示されるプロセスによって生成される。一般に、シクロヘキサンジカルボキシアルデヒドは、金属有機リン酸系リガンド錯体触媒の存在下で水素化されて対応する環式アルコールを生成する。次に、該アルコールを多塩基酸と反応させてポリエステルを形成する。
【0018】
ポリエステルポリオールの製造のためのプロセスは、当分野において周知である。ポリエステルポリオールを調製するため、有機ポリカルボン酸(poycarboxylic acids)またはラクトンを、多価アルコールで重縮合する。揮発性の副生成物を除去するため、ポリエステルポリオールを不活性ガス下、真空などでストリッピングする減圧下での蒸留に付してよい。
【0019】
プレポリマーを生成するためのポリオール成分は、1,3−/1,4−CHDMに基づくポリエステルを含有することに加えて、1種またはそれ以上のさらなるポリオール類、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリヒドロキシ末端アセタール樹脂、ヒドロキシル末端アミンおよびポリアミンを含有してよい。これらおよび他の適したイソシアネート反応性材料の例は、米国特許第4,394,491号に、より詳細に記載されている。使用してよい代替ポリオールとしては、ポリアルキレンカーボネート系ポリオールおよびポリリン酸系ポリオールが挙げられる。
【0020】
適したポリエーテルポリオールとしては、公称官能価が2〜8、好ましくは2〜6を有するものが含まれる。典型的に、このようなポリエーテルポリオールは、活性水素含有開始剤と一定量の1種またはそれ以上のアルキレンオキサイドとを反応させて、所望のヒドロキシルの性質および当量の生成物を生成することにより得ることができる。一般に、このようなアルキレンオキサイドは、C2〜C4のアルキレンオキサイドであり、ブチレンオキサイド、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイド、またはそれらの混合物が含まれる。ポリエーテルポリオールのための例示的な開始剤としては、例えば、エタンジオール、1,2−および1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール;1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、ペンタエリトリトール、ソルビトール、スクロース、ネオペンチルグリコール;1,2−プロピレングリコール;トリメチロールプロパングリセロール;1,6−ヘキサンジオール;2,5−ヘキサンジオール;1,4−ブタンジオール;1,4−シクロヘキサンジオール;エチレングリコール;ジエチレングリコール;トリエチレングリコール;9(1)−ヒドロキシメチルオクタデカノール、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン;8,8−ビス(ヒドロキシメチル)トリシクロ[5,2,1,02,6]デセン;Dimerolアルコール(Henkel Corporationより入手可能な36炭素ジオール);水素化ビスフェノール;9,9(10,10)−ビスヒドロキシメチルオクタデカノール;1,2,6−ヘキサントリオール;およびそれらの組み合わせが挙げられる。ポリエーテルポリオールの生成のための触媒反応は、陰イオン性または陽イオン性のいずれであってもよく、例えば、KOH、CsOH、三フッ化ホウ素、複合金属シアン化物錯体(DMC)触媒、例えば、亜鉛ヘキサシアノコバルテートまたは第4級ホスファゼニウム化合物の触媒を有する。
【0021】
ポリエーテルポリオールの他の開始剤としては、アミンを含有する線状および環状化合物が挙げられる。例示的なポリアミン開始剤としては、エチレンジアミン、ネオペンチルジアミン、1,6−ジアミノヘキサン;ビスアミノメチルトリシクロデカン;ビスアミノシクロヘキサン;ジエチレントリアミン;ビス−3−アミノプロピルメチルアミン;トリエチレンテトラミン、トルエンジアミンの様々な異性体;ジフェニルメタンジアミン;N−メチル−1,2−エタンジアミン、N−メチル−1,3−プロパンジアミン、N,N−ジメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N−ジメチルエタノールアミン、3,3’−ジアミノ−N−メチルジプロピルアミン、N,N−ジメチルジプロピレントリアミン、アミノプロピル−イミダゾールが挙げられる。
【0022】
ポリラクトンポリオールを使用してもよく、一般に、本来、ジまたはトリ、またはテトラヒドロキシルである。このようなポリオールは、ラクトンモノマー(例えば、δ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、ε−メチル−ε−カプロラクトン、ξ−エナントラクトンなど)と、活性水素含有基を有する開始剤(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパンなど)の反応によって調製される。このようなポリオールの製造は、当分野で公知である(例えば、米国特許第3,169,945号、同第3,248,417号、同第3,021,309号〜同第3,021,317号参照)。好ましいラクトンポリオールは、ポリカプロラクトンポリオールとして公知の、ジ、トリ、およびテトラヒドロキシル官能性ε−カプロラクトンポリオールである。
【0023】
適したポリエステルポリオールは、上に記載されるとおりである。1,3−/1,4−CHDM系ポリエステルポリオール、または一般にプレポリマーを製造する際に用いられる他のポリオールのヒドロキシル当量は、200〜2000、好ましくは300〜1500、より好ましくは400〜1,300、さらにより好ましくは400〜1000である。本分散液に関して、少なくとも50重量%のポリエステルポリオールをポリオール成分中に有することが好ましい。
【0024】
本発明のプレポリマー配合物中のポリイソシアネート成分は、有機ポリイソシアネート、変性ポリイソシアネート、およびそれらの混合物から有利に選択され、脂肪族、芳香族および脂環式イソシアネートを含み得る。芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、2,4−、および2,6−トルエンジイソシアネート(TDI)および対応する異性体混合物;4,4’−、2,4’−、および2,2’−ジフェニル−メタンジイソシアネート(MDI)および対応する異性体混合物;ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネート(PMDI);および前述の混合物が挙げられる。脂肪族および脂環式イソシアネート化合物の例としては、1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート(HDI);イソホロンジイソシアネート(IPDI);1,4−テトラメチレンジイソシアネート;2,4−、および2,6−ヘキサヒドロトルエン−ジイソシアネート、それらの異性体混合物;4,4’−、2,2’−、および2,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)、それらの異性体混合物;1,3−テトラメチレンキシレンジイソシアネート;ノルバンジイソシアネート;および1,3−、および1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンが挙げられ、本発明とともに使用することができる。芳香族、脂肪族および脂環式イソシアネートの混合物も使用してよい。
【0025】
本発明の配合物のポリイソシアネート成分は、いわゆる変性多官能性イソシアネート、すなわち、上記ジイソシアネートおよび/またはポリイソシアネートの化学反応によって得られる生成物も含んでよい。例示的なものは、エステル、ウレア、ビウレット、アロファナート、カルボジイミドおよび/またはウレトンイミンを含有するポリイソシアネート;イソシアヌレートおよび/またはウレタン基を含有するジイソシアネートまたはポリイソシアネートである。
【0026】
本発明中のプレポリマーは、ポリウレタンプレポリマーを調製する当分野の当業者に公知の任意の方法によって調製することができる。ポリイソシアネートおよびポリオール成分は、ポリウレタンプレポリマーを調製するために十分な反応条件下で、一緒にされ、加熱されることが好ましい。本発明のプレポリマー配合物の化学量論は、ポリイソシアネートが過剰に存在するようなものである。
【0027】
モノオールを、プレポリマー配合物に含めてもよく、モノオールは、単官能親水性ポリエーテルであることが好ましい。モノオールは、ラテックスの特性を修正し、乳濁液形成の容易さを改善する手段としてプレポリマー中に組み込むことができる。存在する場合には、モノオールは、プレポリマー配合物の0.1〜15重量%、好ましくはプレポリマー配合物の2〜5重量%の量で存在する。
【0028】
プレポリマーは、溶媒の存在中で製造することができ、溶媒は分散液の生成の前または後に除去することができる。溶媒が存在する場合、溶媒は一般に分散液の生成後に除去されて、本質的に溶媒を含まない水性分散液を得る。すなわち、分散液は5重量%未満、好ましくは2.5重量%未満、より好ましくは1重量%未満の溶媒を含有する。溶媒が用いられる場合、イソシアネートと反応しない溶媒の例としては、ケトン、例えば、アセトンおよびブタノン;エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、ジオキサンおよびジメトキシエタン、エーテルエステル、例えば、メトキシプロピルアセテート;(環状)アミド(aminde)およびウレア、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N,N’−ジメチル−2,5−ジザペンタノン;N−メチルピロリドン;および、キャップされたグリコールエーテル、例えば、PROGLYDE(商標)DMM(The Dow Chemical Companyの商標)が挙げられる。これらの溶媒は、プレポリマー製造におけるいずれの段階でも付加されてよい。
【0029】
合成に使用される溶媒の総量は、ポリマーの0〜25重量%の範囲、好ましくは3〜15重量%の範囲、より好ましくは5〜12重量%の範囲内である。イソシアネート末端プレポリマー合成に使用される有機溶媒の量は、反応物質濃度および反応温度に依存する。
【0030】
分散液の製造プロセスは当分野において周知である。分散は、バッチ法によるか、または連続法により行ってよい。バッチ法により行われる場合は、好ましくは、分散は逆相プロセスで行われ、本プロセスでは少量の陰イオン性界面活性剤を含む少量の水が最初に連続プレポリマー相に添加され、混合され、次に相が逆転するまで混合しながらさらに水が添加される。
【0031】
分散液が連続法を用いて調製される場合、それらは、高分散相比(HIPR)プロセスを用いて調製されることが好ましい。このようなプロセスは公知であり、例えば、Pateらに対する米国特許第5,539,021号、およびJakubowskiらに対する国際公開特許第98/41552(A1)号に開示されている。いずれの方法で調製される場合にも、結果として生じる分散液は、その分散液を安定させるために十分な粒径を有するべきである。本発明の分散液は、0.9〜0.05μm、好ましくは0.5〜0.07μm、さらにより好ましくは0.4〜0.10μmの粒径を有する。
【0032】
界面活性剤は、本発明の安定した分散液を調製するため、および/または安定した発泡を調製することに有用であり得る。本発明の実施に際して、安定した分散液を調製するために有用な界面活性剤は、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、双性イオン性または非イオン性の界面活性剤であってよい。陰イオン性界面活性剤の例としては、スルホネート、カルボキシレート、およびホスフェートが挙げられる。陽イオン性界面活性剤の例としては、第四級アミンが挙げられる。非イオン性界面活性剤の例としては、エチレンオキシドおよびシリコーン界面活性剤、例えば、エトキシル化アルコール、エトキシル化脂肪酸、ソルビタン誘導体、ラノリン誘導体、エトキシル化ノニルフェノール、またはアルコキシル化ポリシロキサンを含有するブロックコポリマーが挙げられる。さらに、界面活性剤は、外部界面活性剤または内部界面活性剤のいずれかであり得る。外部界面活性剤は、分散液調製中に化学的に反応してポリマーの中に入ってこない界面活性剤である。本明細書において有用な外部界面活性剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸の塩類およびラウリルスルホン酸塩が挙げられる。内部界面活性剤は、分散液調製中に化学的に反応してポリマーの中に入ってくる界面活性剤である。本明細書において有用な内部界面活性剤の例としては、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)およびその塩が挙げられる。界面活性剤は、100重量部のポリウレタン成分あたり0.01〜8重量部の範囲の量で本発明の配合物に含まれてよい。
【0033】
プレポリマーは、鎖延長剤により延長されるのが好ましい。ポリウレタンを調製する分野の当業者には有用であることが公知である任意の鎖延長剤を本発明とともに使用することができる。このような鎖延長剤は、典型的に30〜500の分子量を有し、少なくとも2個の活性水素含有基を有する。ポリアミンは、好ましいクラスの鎖延長剤である。他の物質、例えば水は、鎖長を延長するよう機能することができ、そのため本発明の目的のための鎖延長剤でもある。鎖延長剤は、アミンまたは水とアミンの混合物、例えば、アミノ化されたポリプロピレングリコール、例えば、Huntsman Chemical Company社製のJeffamine D−400および他のもの、アミノエチルピペラジン、2−メチルピペラジン、1,5−ジアミノ−3−メチル−ペンタン、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、トリエチレンペンタミン、エタノールアミン、その立体異性体のいずれかのリジンおよびその塩、ヘキサンジアミン、ヒドラジンおよびピペラジンであることが特に好ましい。本発明の実施に際して、鎖延長剤は、鎖延長剤の水溶液としてしばしば用いられる。水、アミンまたは両方を用いる鎖の延長は、ポリウレタン−ポリウレアポリマーをもたらす。
【0034】
一般に、アミン鎖延長剤は、分散液中での過剰な遊離アミンを回避するために、鎖延長剤の活性水素の当量がNCOの当量よりも少ないような量で用いられる。一般に、アミンは、プレポリマーのNCO含有量で表される当量の約95%をもたらすために添加される。
【0035】
該分散液の固体含有量は、一般に5〜70重量%、好ましくは30〜60重量%である。分散液自体は、貯蔵容積および輸送費用をできる限り最小化するために高固体含有量で貯蔵および輸送されるが、その分散液は最終使用の前に希釈することができる。
【0036】
本発明の水性分散液は、被覆剤組成物として有利に用いることができ、その目的のため、それらは水および/または有機溶媒でさらに希釈されてよく、または液体媒質の水および/または有機成分の蒸発による、さらに濃縮された形態で供給されてよい。被覆剤組成物として、それらは木材、金属、織布および不織布、皮革、紙、陶磁器、石、コンクリート、ビチューメン、硬質繊維、藁、ガラス、磁器、様々な異なる種類のプラスチック、ガラス繊維、およびプラスチックを含む任意の基材にも塗布され得る。分散液は、はけ塗、浸漬、流し塗、ローラー塗、噴霧などを含む任意の従来法によって適用されてよい。
【0037】
該分散液は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリウレタン、皮革、などの材料の接着剤として、または、様々な粒子材料、例えばゴム粒子の結合剤としても用いられ得る。
【0038】
該分散液はまた、基材へ適用される場合には発泡して泡を生成し得る。
【0039】
該組成物は他の従来成分を含有してよく、製造プロセスのいずれの段階で、またはそれ以降に導入される有機溶媒、顔料、染料、乳化剤、界面活性剤、レオロジー変性剤、消泡剤、レベレング剤、つや消し剤、熱安定剤、レベレング剤、抗クレーティング剤、充てん材、沈殿抑制剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤が含まれる。分散液中に酸化アンチモンをいくらか含めて難燃特性を強化することが可能である。
【0040】
該PUDは、上に記載されるように、周囲温度で適用されることが好ましい。PUDの様々な適用により得られる生成物の乾燥は室温または昇温で行ってよい。
【実施例】
【0041】
以下の実施例は、本発明を例証するために提供される。実施例は、本発明の範囲を制限することを意図するものではなく、またそのように解釈されるべきでない。全ての割合は、特に断りのない限り、重量による。
ポリオール1は、アジピン酸、および1,3−/1,4−異性体比が約58:42である1,3−/1,4−シクロヘキサンジメタノールとの反応から誘導される、ヒドロキシル当量が813のポリエステルポリオールである。図1において、これはUNOXOLアジペートと標記されている。
【0042】
一連のPUDは、1,3−/1,4−CHDMに基づくポリオールの性能特性を、PUDの原料として一般に用いられるポリオールと比較するために調製される。該PUDは、N−メチルピロリドン(NMP)を溶媒として、イソホロンジイソシアネート(IPDI)をジイソシアネートとして用いるバッチ法により調製され、2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)で陰イオン的に安定化される。PUDの製法を表1に示し、詳細な説明を実施例1に提供する。
【表1】

【0043】
実施例1 プレポリマーおよび分散液の調製
154gのポリオール1、8.2gのジメチロールプロピオン酸、49gのNMP、および0.088gのジブチル錫ジラウレート触媒をメカニカルスターラー、コンデンサー、添加漏斗、窒素注入口、および反応温度を監視/管理するためのTherm−O−Watchセンサーを備えた500mlの五つ口丸底ガラスフラスコに添加する。この混合物を外部の熱油浴を用いて攪拌しながら80℃にする。窒素を、水の濃度が200ppm未満であると測定されるまでこの溶液を通じて2時間散布する。次に、反応装置の内容物を75℃まで冷却し、58.82gのイソホロンジイソシアネート(IPDI)を、反応温度を75℃に保つためにゆっくりと反応混合物に添加する。全てのIPDIを添加した後、反応温度を83℃(+/−3℃)まで上昇させ、その温度で3時間維持する。4.7gのトリエチルアミンを反応混合物に加え、この温度をさらに20分間維持する。次に、反応装置の内容物を60℃まで冷却し、総量167gの反応混合物を、高速攪拌下、112gの脱イオン水が含有された8オンスのガラス瓶へ添加する。55gの脱イオン水中の5.1gのエチレンジアミンを、次に、この水性分散液に加え、高速攪拌をさらに20分間維持すると、安定した水性ポリウレタン分散液となる。
【0044】
実施例2 被覆剤の調製
次に、該PUDを、研磨された冷たいロール状の(アセトンで洗浄し、オーブンで乾燥した)鋼製パネルの上に、60番の線巻ロッドを用いて引き落として、目標の乾燥膜厚の1.5〜2.0ミルの間を達成する。湿った塗膜は、室温で30分間置いて乾燥させ、次に80℃のオーブンで120分間強制的に乾燥させる。オーブンで硬化した被覆剤を24時間静置させた後、その物理的特性を評価した。
【0045】
比較例A、BおよびC
比較例A〜Cの配合物を表2に示す。これらのPUD、およびそれから調製された被覆剤は、実施例1および実施例2と同様に実施される。
【0046】
ポリオールの関数としてのPU分散液のコーティング特性を、表2に示す。すべての場合において、被覆剤の靭性(硬度と柔軟性のバランス)および摩耗耐性は優れており、これはPUDの特性である。1,3−/1,4−CHDM系ポリオールから調製されたPUDは、図1に示されるように、最良の耐加水分解性および耐酸腐食性を有するコーティングをもたらした。
【表2】

【0047】
本発明の他の実施形態は、本明細書または本明細書に開示される本発明の実施を検討することによって当業者には明らかであろう。本明細書および実施例は例示にすぎず、以下の特許請求の範囲によって本発明の真の範囲および精神が示されるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜70重量%のポリウレタン固体を含有する水性ポリウレタン分散液であって、前記固体は、
(a)200〜2,000の平均当量を有するポリオールまたはポリオールブレンド;と、
(b)少なくとも1種のポリイソシアネートと
を反応させて調製される少なくとも1種のイソシアネート末端プレポリマーから、場合により、
(c)1種またはそれ以上の安定剤;または、
(d)1種またはそれ以上のアミン鎖延長剤、またはその両方
の存在下、得られ;前記プレポリマーは、水中に分散されており;
前記プレポリマーは、2〜40重量%のイソシアネート(NCO)含有量を有しており、
前記ポリオールもしくはポリオールブレンド(a)は、ポリカルボン酸もしくはラクトン成分およびグリコール成分に基づくポリエステルを少なくとも15重量%含有し、
前記グリコール成分は、1,3−および1,4−シクロヘキサンジメタノール(1,3−/1,4−CHDM)の異性体を含有し、前記1,3−/1,4−異性体の比が35:65〜65:35である、水性ポリウレタン分散液。
【請求項2】
前記固体含有量が40〜60重量%である、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記ポリイソシアネートが脂肪族イソシアネートである、請求項1に記載の分散液。
【請求項4】
前記イソシアネートが、1,6−ヘキサメチレン−ジイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、1,3−、1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンまたはそれらの混合物である、請求項3に記載の分散液。
【請求項5】
前記ポリイソシアネートが、芳香族イソシアネートである、請求項1に記載の分散液。
【請求項6】
前記イソシアネートが、2,4−もしくは2,6−トルエンジイソシアネート、4,4’−、2,4’−もしくは2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネートまたはそのような異性体の混合物、ポリフェニルポリメチレンポリイソシアネートあるいはそれらの混合物である、請求項5に記載の分散液。
【請求項7】
前記イソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネートである、請求項6に記載の分散液。
【請求項8】
前記プレポリマーおよび分散液が、有機溶媒の非存在下で調製される、請求項1に記載の分散液。
【請求項9】
前記ポリオールまたはポリオールブレンドが300〜1500の平均当量を有する、前記請求項のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項10】
前記ポリオールまたはポリオールブレンドが、400〜1200の平均当量を有する、請求項9に記載の分散液。
【請求項11】
前記1,3,−/1,4−CHDMに基づくポリエステルが、総ポリオール成分の少なくとも50重量%を構成する、請求項1に記載の分散液。
【請求項12】
前記プレポリマーが、溶媒の存在下で製造され、前記溶媒が、プレポリマーを水中に分散させる前に実質的に除去される、請求項1に記載の分散液。
【請求項13】
分散液が連続法で製造される、前記請求項のいずれか1項に記載の分散液。
【請求項14】
前記基材へのコーティングのための、請求項1に記載のポリウレタン分散液の使用。
【請求項15】
前記基材が硬質表面である、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記基材が木材または金属である、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
請求項1に記載の分散液から得られる、ポリウレタンポリマー。
【請求項18】
前記ポリウレタンポリマーが、被覆剤、接着剤、封止剤、エラストマーまたは発泡体である、請求項17に記載のポリマー。

【図1】
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【公表番号】特表2009−537669(P2009−537669A)
【公表日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−511232(P2009−511232)
【出願日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/069143
【国際公開番号】WO2007/137116
【国際公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】