シクロメタル化遷移金属錯体及びこれを用いた有機電界発光素子
【課題】青色領域から赤色領域までの光の発光が可能なシクロメタル化遷移金属錯体、及びこれを用いた有機EL素子を提供する。
【解決手段】配位子としてピラゾール−1−カルボキサミドを導入したシクロメタル化遷移金属錯体、及びこれを有機膜形成材料として用いる有機EL素子である。
【解決手段】配位子としてピラゾール−1−カルボキサミドを導入したシクロメタル化遷移金属錯体、及びこれを有機膜形成材料として用いる有機EL素子である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロメタル化遷移金属錯体及びこれを用いた有機電界発光(EL)素子に係り、より詳細には、三重項MLCT(Metal−to−Ligand Charge−Transfer、金属−配位子電荷移動)状態において、青色領域から赤色領域までの光の発光が可能なシクロメタル化遷移金属錯体、及びこれを有機膜形成材料として用いる有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、蛍光性または燐光性有機化合物薄膜(以下、有機膜と称す)に電流を流すと、電子と正孔が有機膜で結合することにより光が発生する現象を利用した、自発光型表示素子である。有機EL素子は軽量、部品が単純、製作工程が簡単、及び高画質で且つ広視野角を確保できるといった利点を有している。また、有機EL素子は高色純度の具現が可能であり、動画を完璧に具現でき、加えて低消費電力及び低電圧駆動のような携帯用電子機器に適した電気的な特性を有している。
【0003】
一般的な有機EL素子は、基板の上部にアノードが形成されており、このアノードの上部にホール輸送層、発光層、電子輸送層、及びカソードが順次形成されている構造を有している。ここで、ホール輸送層、発光層、及び電子輸送層は、有機化合物からなる有機膜である。前記のような構造を有する有機EL素子の駆動原理は、次の通りである。前記アノード及びカソード間に電圧を印加すれば、アノードから注入されたホールは、ホール輸送層を経て発光層に移動する。一方、電子は、カソードから電子輸送層を経て発光層に注入され、発光層領域でキャリアが再結合して励起子を生成する。この励起子が放射減衰することにより、物質のバンドギャップに相当する波長の光が放出される。
【0004】
前記有機EL素子の発光層の形成材料は、その発光メカニズムにより一重項状態の励起子を利用する蛍光物質、及び三重項状態の励起子を利用する燐光物質に区分される。発光層はこのような蛍光物質もしくは燐光物質単独で形成されるか、または蛍光物質もしくは燐光物質を適切なホスト物質にドーピングすることによって形成され、電子励起が起こると、ホストに一重項励起子と三重項励起子が形成される。この時、一重項励起子と三重項励起子の統計的生成比率は1:3である。
【0005】
発光層の形成材料として蛍光物質を用いた有機EL素子は、ホストで形成された三重項励起子が浪費されるという不利な点を有する。一方、発光層の形成材料として燐光物質を用いた有機EL素子は、一重項励起子及び三重項励起子の両方が使用できるため、内部量子効率100%に到達可能であるという利点を有している(非特許文献1参照)。したがって、燐光物質で形成された発光層は、蛍光物質で形成された発光層よりもはるかに高い発光効率を有しうる。
【0006】
発光層を形成する有機分子にIr、Pt、Rh、Pdのような重金属を導入すれば、重金属原子の効果によりスピン軌道カップリングが起こり、三重項状態及び一重項状態が混在するようになる。このため禁制遷移が誘発され、常温でも効果的に燐光が発生し得る。
【0007】
最近、内部量子効率が100%に至る燐光性の緑色領域の物質、及び赤色領域の物質が開発された。
【0008】
燐光を利用した高効率の発光材料として、Ir、Ptなどの遷移金属を含む多様な物質が発表されており、高効率のフルカラーディスプレイ、または低消費電力の白色発光の応用を実現するために、要求される特性を満足する緑色領域、または赤色領域の物質が報告されている。
【0009】
一方、青色領域の燐光物質も開発されている(特許文献1または特許文献2参照)。また、分子配列を変形させてHOMO−LUMOの差を大きくできる嵩高い官能基や、配位子場強度の大きい官能基(例:シアノ基)を導入した有機金属錯体が開発されている。その他にも、一般式Ir(ppy)2P(ph)3Y(但し、YはClまたはCNである)で表されるIr錯体(特許文献3参照)、並びにシクロメタル化配位子、キレートするジホスフィン、キレートする塩素、及びキレートするシアノ基を有するIr(III)錯体(特許文献4参照)が開発されている。
【0010】
また、特許文献5には、窒素原子と炭素原子とからなるシクロメタル化遷移金属錯体、及びこれを含んだ有機EL素子が開示されている。
【特許文献1】国際公開第02/15645A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0064681号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0182441号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0048689号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0134984号明細書
【非特許文献1】Baldo,et al.,Nature,Vol.395,151〜154,1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記の青色領域の燐光物質は効率及び信頼性が低く、高効率のフルカラーディスプレイまたは低消費電力の白色発光の応用の実現に対する大きな障害となっている。
【0012】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、解決しようとする第一の課題は、三重項MLCT状態において、青色領域から赤色領域までの光を効率的に発光できるシクロメタル化遷移金属錯体を提供することである。
【0013】
また本発明が解決しようとする第二の課題は、青色領域から赤色領域までの光を効率的に発光できる有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明の第一は、下記化学式(1)で表されるシクロメタル化遷移金属錯体を提供する。
【0015】
【化1】
【0016】
前記化学式(1)中、
Mは遷移金属であり、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、XはNまたはCであり、CY1は含窒素ヘテロ環であり、CY2は芳香環、飽和環、または含窒素ヘテロ環であり、n1は1または2である。
【0017】
本発明の第二は、一対の電極の間に有機膜を有する有機EL素子であって、前記有機膜は前記化学式(1)で表されるシクロメタル化遷移金属錯体を含むことを特徴とする有機EL素子を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシクロメタル化遷移金属錯体は、三重項MLCT状態において、青色領域から赤色領域までの光を効率的に発光できる。かかるシクロメタル化有機金属錯体は、有機EL素子の有機膜形成時に利用可能であり、緑色発光物質及び赤色発光物質と共に用いられて白色光を発光することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体は、ピラゾール−1−カルボキサミドが遷移金属に配位することにより、効率的な青色発光が可能となる。
【0021】
本発明のシクロメタル化遷移金属錯体は、下記化学式(1)の構造を有する。
【0022】
【化2】
【0023】
前記化学式(1)中、Mは遷移金属であり、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、XはNまたはCであり、CY1は含窒素ヘテロ環であり、CY2は芳香環、飽和環、または含窒素ヘテロ環であり、n1は1または2である。
【0024】
前記化学式(1)で表されるシクロメタル化遷移金属錯体は、遷移金属にピラゾールカルボキサミド配位子が配位した錯体であることにその特徴がある。
【0025】
前記R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし10)、アルケニル基(好ましくは炭素数が2ないし30更に好ましくは2ないし20、特に好ましくは2ないし10)、アルキニル基(好ましくは炭素数が2ないし30、更に好ましくは2ないし20、特に好ましくは2ないし10)、アリール基(好ましくは炭素数が6ないし30、更に好ましくは6ないし20、特に好ましくは6ないし12)、アミノ基(好ましくは炭素数0ないし30、更に好ましくは0ないし20、特に好ましくは0ないし10)、アルコキシ基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし10)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数が6ないし30、更に好ましくは6ないし20、特に好ましくは6ないし12)、複素環オキシ基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、アシル基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数が2ないし30、更に好ましくは2ないし20、特に好ましくは2ないし12)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数が7ないし30、更に好ましくは7ないし20、特に好ましくは7ないし12)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数が2ないし30、更に好ましくは2ないし20、特に好ましくは2ないし10)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数が2ないし30、更に好ましくは2ないし20、特に好ましくは2ないし10)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数が2ないし30、更に好ましくは炭素数2ないし20、特に好ましくは2ないし12)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7ないし30、更に好ましくは7ないし20、特に好ましくは7ないし12)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、スルファモイル基(好ましくは炭素数が0ないし30、更に好ましくは0ないし20、特に好ましくは0ないし12)、カルバモイル基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは、1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、アリールチオ基(好ましくは炭素数が6ないし30、更に好ましくは6ないし20、特に好ましくは6ないし12)、複素環チオ基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、スルホニル基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、スルフィニル基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、ウレイド基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、燐酸アミノ基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし12)、シリル基(好ましくは炭素数が3ないし40、更に好ましくは3ないし30、特に好ましくは3ないし24)、及びシリルオキシ基(好ましくは炭素数が3ないし40、更に好ましくは3ないし30、特に好ましくは3ないし24)からなる群より選択される何れか一つの置換基でありうる。
【0026】
前記化学式(1)のシクロメタル化遷移金属錯体は、下記化学式(2)ないし化学式(10)の化合物のうち、何れか一つであることが好ましい。
【0027】
【化3】
【0028】
前記化学式(2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、n1は1または2である。
【0029】
【化4】
【0030】
前記化学式(3)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、n1は1または2であり、CY1は含窒素ヘテロ環である。
【0031】
【化5】
【0032】
前記化学式(4)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、n1は1または2であり、CY1は、含窒素ヘテロ環である。
【0033】
【化6】
【0034】
前記化学式(5)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、XはC、N、O、S、またはP原子であり、n1は1または2である。
【0035】
【化7】
【0036】
前記化学式(6)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、XはC、N、O、SまたはP原子であり、n1は1または2である。
【0037】
【化8】
【0038】
前記化学式(7)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、XはC、N、O、SまたはP原子であり、n1は1または2である。
【0039】
【化9】
【0040】
前記化学式(8)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、XはC、N、O、SまたはP原子であり、CY3は芳香環飽和環、またはヘテロ環であり、n1は1または2である。
【0041】
【化10】
【0042】
前記化学式(9)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、XはC、N、O、SまたはP原子であり、CY4は芳香環飽和環、またはヘテロ環であり、n1は1または2である。
【0043】
【化11】
【0044】
前記化学式(10)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、XはC、N、O、S、またはP原子であり、CY5は芳香環飽和環、またはヘテロ環であり、n1は1または2である。
【0045】
前記化学式(1)、化学式(3)、及び化学式(4)中、CY1は含窒素ヘテロ環であり、その具体例としては、ピリジン環、ピラジン環、キノリン環、ピペリジン環などが挙げられる。
【0046】
前記化学式(1)中、CY2は芳香環、飽和環、または含窒素ヘテロ環である。芳香環の具体例としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、飽和環の具体例としてはシクロペンタン環、シクロへキサン環などが挙げられる。含窒素ヘテロ環の例は、前記CY1の場合で例示したものと同様である。
【0047】
前記化学式(8)、化学式(9)、及び化学式(10)中、CY3、CY4、及びCY5は、芳香環、飽和環、またはヘテロ環である。芳香環及び飽和環の具体例は、前記CY2の場合で例示したものと同様である。ヘテロ環の具体例としてはピリジン環、ピラジン環、キノリン環、ピペリジン環、キノキサリン環、フラン環、チオフェン環などが挙げられる。
【0048】
前記化学式(1)ないし(10)中、遷移金属Mは、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、またはAuであることが好ましい。
【0049】
前記化学式(1)で表されるシクロメタル化遷移金属錯体の具体例は、下記化学式(11)で表される化合物であるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
【化12】
【0051】
本発明に係るシクロメタル化遷移金属錯体は、400nmないし650nmの間の波長領域で発光特性を有する。
【0052】
本発明に係るシクロメタル化遷移金属錯体は、シクロメタル化部分の供与体としての役割を果たす[Ir(C^N)2Cl]2誘導体を使用して、Wattsらにより報告された方法(F.O.Garces,R.J.Watts,Inorg.Chem.1988,(35),2450)によって合成可能である。
【0053】
以下、本発明の一実施形態によるシクロメタル化遷移金属錯体の合成方法を説明する。
【0054】
下記反応式を参照すれば、前記[Ir(C^N)2Cl]2誘導体、及びピラゾール−1−カルボキサミド化合物を、クロロホルム、メタノールなどの溶媒中、常温で2ないし48時間の間混合及び攪拌を行うことにより、本発明のピラゾール−1−カルボキサミド配位子含有のシクロメタル化遷移金属錯体を合成できる。
【0055】
【化13】
【0056】
前記反応式(1)中、X、R1、R2、R3、R4、CY1、及びCY2は、前記化学式(1)で定義した通りである。
【0057】
本発明の有機EL素子は、本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体を利用して有機膜、特に発光層を形成させて製造される。この時、前記化学式(1)で表されるシクロメタル化遷移金属錯体は、発光層の形成物質である燐光材料ドーパントとして非常に有効であり、青色波長領域で優れた発光特性を有する。
【0058】
本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体を燐光材料ドーパントとして使用する場合、有機膜は1種以上の高分子ホスト、高分子と低分子との混合物ホスト、低分子ホスト、及び非発光高分子マトリックスからなる群より選択される少なくとも一つを更に含みうる。ここで、高分子ホスト、低分子ホスト、非発光高分子マトリックスとしては、有機EL素子用の発光層形成時に一般的に使用されるものであれば、何れも使用できる。高分子ホストの例としては、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレンなどがあり、低分子ホストの例としては、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、4,4’−ビス[9−(3,6−ビフェニルカルバゾリル)]−1,1’−ビフェニル、9,10−ビス[(2’,7’−t−ブチル)−9’,9”−スピロビフルオレニルアントラセン、テトラフルオレンなどがあり、非発光高分子マトリックスとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
発光層における本発明のシクロメタル化遷移金属錯体の含量は、発光層の形成材料の総質量を100質量部として、1ないし30質量部であることが好ましい。かかるシクロメタル化遷移金属錯体を発光層に導入する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法、印刷法、コーティング法、インクジェット法、電子ビームを利用した方法など、公知の方法を利用できる。
【0060】
また、本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体は、緑色発光物質及び赤色発光物質と共に用いられて、白色光を発光させることができる。
【0061】
ここで、有機膜の厚さは、30ないし100nmであることが好ましい。前記有機膜は、発光層以外に電子伝達層、正孔伝達層のように、有機EL素子で一対の電極の間に形成される有機化合物からなる膜を表す。本発明の有機EL素子は、一般的に知られた正極/発光層/負極、正極/バッファ層/発光層/負極、正極/正孔伝達層/発光層/負極、正極/バッファ層/正孔伝達層/発光層/負極、正極/バッファ層/正孔伝達層/発光層/電子伝達層/負極、正極/バッファ層/正孔伝達層/発光層/正孔遮断層/負極などの構造で形成されうるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
前記バッファ層の材料としては、一般的に使用される物質を使用でき、好ましくは銅フタロシアニン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロル、ポリフェニルビニレン、またはそれらの誘導体である。
【0063】
前記正孔伝達層の材料としては、一般的に使用される物質を使用でき、好ましくは、ポリトリフェニルアミンである。
【0064】
前記電子伝達層の材料としては、一般的に使用される物質を使用でき、好ましくは、ポリオキサジアゾールである。
【0065】
前記正孔遮断層の素材としては、一般的に使用される物質を使用でき、好ましくは、LiF、BaF2、またはMgF2である。
【0066】
本発明の有機EL素子は、特別な装置や方法を必要とせず、通常の発光材料を利用した有機EL素子の製造方法によって製造可能である。
【0067】
本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体は、400ないし650nm領域で発光できる。本発明のシクロメタル化有機金属錯体は発光ダイオードにも用いることができ、その発光ダイオードはフルカラー表示用の光源照明、バックライト、屋外掲示板、光通信、内部装飾などに使用できる。
【実施例】
【0068】
以下実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
(参考例1)[(F2ppy)2IrCl]2ダイマーの合成
【0070】
【化14】
【0071】
500mLのサイドアームつきフラスコに19.85g(125mmol)の2−ブロモピリジン、25.00g(158mmol)の2,4−ジフルオロフェニルボロン酸、100mLのトルエン、並びにエタノール48mL及び水95mLで作製した2Mの炭酸ナトリウム溶液を加え、これを窒素雰囲気下、常温で攪拌した。次いで、前記反応混合物に4.53g(3.92mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を入れて、窒素雰囲気下で光を遮断したまま15時間還流した。
【0072】
反応終了後、反応混合物の温度を常温に調節し、酢酸エチル及び水を用いて反応混合物からの抽出を行った。その抽出物をカラムクロマトグラフィ(溶離液は質量比でトルエン:へキサン=10:1の混合溶媒)で分離精製し、薄い茶色の液体(F2ppyH)を得た。
【0073】
1H−NMR(CD2Cl2,ppm):8.69(d,1H)、8.03(m,1H)、7.70(m,2H)、7.27(m,1H)、7.00(m,2H)
前記工程によって合成した2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジン及びIrCl3・nH2Oを用いて黄色粉末である[(F2ppy)2IrCl]2ダイマーを合成した。この際、合成法は、J.Am.Che.Soc.,1984,106,6647〜6653を参照した。
【0074】
1H−NMR(CD2Cl2,ppm):9.1(d,4H)、8.3(d,4H)、7.9(t,4H)、6.9(m,4H)、6.5(m,4H)、5.3(d,4H)
(参考例2)[(MeF2ppy)2IrCl]2ダイマーの合成
【0075】
【化15】
【0076】
2−ブロモピリジンの代わりに2−ブロモ−4−メチルピリジンを使用することを除いては、参考例1と同様の方法で[(MeF2ppy)2IrCl]2ダイマーを合成した。
【0077】
1H−NMR(CD2Cl2,ppm):8.9(d,4H)、8.1(s,4H)、6.6(d,4H)、6.3(m,4H)、5.3(d,4H)、2.6(s,12H)
(参考例3)[(DMAF2ppy)2IrCl]2ダイマーの合成
【0078】
【化16】
【0079】
2−ブロモピリジンの代わりに2−ブロモ−4−ジメチルアミノピリジン25.26g(1.25x104mmol)を使用することを除いては、参考例1と同様の方法で[(DMAF2ppy)2IrCl]2ダイマーを合成した。
【0080】
1H−NMR(CD2Cl2,ppm):8.7(d,4H)、7.5(t,4H)、6.3(m,4H)、6.1(m,4H)5.4(d,4H)、3.2(s,24H)
(参考例4)[(F2CNppy)2IrCl]2ダイマーの合成
【0081】
【化17】
【0082】
2,4−ジフルオロフェニルボロン酸の代わりに2,4−ジフルオロ−3−シアノ−フェニルボロン酸22.87g(125mmol)を使用することを除いては、参考例1と同様の方法で[(F2CNppy)2IrCl]2ダイマーを合成した。
【0083】
(参考例5)[(F2ppy)PtCl]2ダイマーの合成
【0084】
【化18】
【0085】
500mLのサイドアームつきフラスコに19.85g(125mmol)の2−ブロモピリジン、25.00g(158mmol)の2,4−ジフルオロフェニルボロン酸、100mLのトルエン、並びにエタノール48mL及び水95mLを用いて作製した2Mの炭酸ナトリウム溶液を加え、これを窒素雰囲気下、常温で攪拌した。次いで、前記反応混合物に4.53g(3.92mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素雰囲気下で光を遮断したまま15時間還流した。
【0086】
反応終了後、反応混合物の温度を常温に調節した後、酢酸エチル及び水を用いて抽出した。その後カラムクロマトグラフィ(溶離液は質量比でトルエン:へキサン=10:1の混合溶媒)で分離精製を行い、薄い茶色の液体(F2ppyH)を得た。
【0087】
1H−NMR(CD2Cl2,ppm):8.69(d,1H)、8.03(m,1H)、7.70(m,2H)、7.27(m,1H)、7.00(m,2H)
前記工程によって合成した2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジン、及びK2[PtCl]4を用いて、参考例1と同様の方法で緑色粉末である[(F2ppy)PtCl]2ダイマーを合成した。この際、合成法は、J.Am.Che.Soc.,1984,106,6647〜6653を参照した。
【0088】
(実施例1)下記化学式(12)の化合物の合成(F2PZNH)
【0089】
【化19】
【0090】
温度計、機械式攪拌器、及び還流器が装着された100mlの2口フラスコに、窒素雰囲気下で、参考例1で製造した[(F2ppy)2IrCl]20.605g(0.5mmol)、及び3,5−ジメチルピラゾ−ル−1−カルボキサミド0.160g(1.25mmol)を、メタノール及びクロロホルムの混合溶液30mlに溶解させ、常温で約2時間攪拌させた後、反応温度を徐々に上げて8時間還流させた。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、溶解していない未反応出発物質をろ過によって除去した。ろ過した母液を、ロータリーエバポレータを用いて溶媒を除去し、ジエチルエーテルを滴下した。系内の緑色の固体をろ過によって回収した後、ジエチルエーテル及びへキサンで数回洗浄した。その後固体を30℃の真空オーブンで十分に乾燥させて、標題化合物0.55g(収率87%)を純粋な緑色の固体として得た。この化合物の溶融点は255℃であった。得られた化合物を、1H−NMR及び質量分析法(MS)(図1参照)により同定した。
【0091】
(実施例2)下記化学式(13)の化合物の合成(MeF2PZNH)
【0092】
【化20】
【0093】
[(F2ppy)2IrCl]2の代わりに参考例2で合成した[(MeF2ppy)2IrCl]2の0.65g(0.5mmol)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で合成し、標題化合物0.575g(収率85%)を純粋な淡緑色の固体として得た。この化合物の溶融点は260℃であった。得られた化合物を、1H−NMR及びMS(図1参照)により同定した。
【0094】
(実施例3)下記化学式(14)の化合物の合成(DMAF2PZNH)
【0095】
【化21】
【0096】
[(F2ppy)2IrCl]2の代わりに参考例3で合成した[(DMAF2ppy)2IrCl]20.71g(0.5mmol)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で合成し、標題化合物0.63g(収率85%)が純粋な淡緑色の固体として得た。この化合物の溶融点は255℃であった。得られた化合物を、1H−NMR及びMS(図1参照)により同定した。
【0097】
(実施例4)下記化学式(15)の化合物の合成(F2CNPZNH)
【0098】
【化22】
【0099】
[(F2ppy)2IrCl]2の代わりに参考例4で合成した[(F2CNppy)2IrCl]2の0.67g(0.5mmol)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で合成し、標題化合物0.580g(収率83%)を淡緑色固体として得た。得られた化合物を、1H−NMR及びMSにより同定した。
【0100】
(実施例5)下記化学式(16)の化合物の合成(F2PZNH(Pt))
【0101】
【化23】
【0102】
[(F2ppy)2IrCl]2の代わりに参考例5で合成した[(F2ppy)PtCl]20.84g(1mmol)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法標題化合物0.690g(収率80%)を得た。得られた化合物を、1H−NMR及びMSにより同定した。
【0103】
前記実施例の化合物の発光特性は、下記の方法によって調べた。
【0104】
第一の方法は、前記化合物を塩化メチレンに溶解させて10−4Mの溶液とし、塩化メチレン溶液状態での発光特性を調べる方法である。第二の方法は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)94重量部、及び前記化合物6重量部を溶媒に溶かし、スピンコーティングによりフィルムを製造してフィルム状態での発光特性を調べる方法である。
【0105】
前記実施例で得られた化合物の最大発光波長、色座標(CIE)、分解温度、及びHOMOレベルを下記表1にまとめた。
【0106】
【表1】
【0107】
前記実施例で合成した化合物を用いて有機EL素子を作製した。この有機EL素子は下記の構造(詳細は図6を参照)を有し、発光面積は9mm2であった。
【0108】
基板/第1電極/正孔輸送層/発光層/ホール抑制層/電子輸送層/電子注入層/第2電極=
ガラス/ITO/NBP(40nm)/mcP:5wt%F2PZNH(40nm)/BAlq(40nm)/LiF(2nm)/Al(200nm)
素子の製作方法は下記の通りである。
【0109】
あらかじめ洗浄されたITOにNPB(4−(4−二トロベンジル)ピリジン)を40nmの厚さに蒸着した後、F2PZNH及びホスト(mCP::1,3−ビス(カルバゾルリル)ベンゼン)を5:95の質量比で混合したものをコーティングした。ここに熱蒸着方式でホールブロッキング層となるBAlqを40nmの厚さで塗布し、次に電子輸送層となるLiFを2nmの厚さで塗布し、最後に正極となるAlを200nmの厚さで塗布した。
【0110】
この有機EL素子の性能の評価結果(最大発光波長、色座標、輝度、寿命など)を表2にまとめた。
【0111】
【表2】
【0112】
図1は本発明の実施例1及び実施例3による化合物の質量スペクトルである。
【0113】
図2はそれぞれ本発明の実施例1ないし実施例4による化合物の発光(PL)スペクトルである。
【0114】
図3は本発明の実施例1によるEL強度を表す。
【0115】
図4は、本発明の実施例1及び実施例3に係る化合物の熱重量分析(TGA)グラフである。
【0116】
図5Aは本発明の実施例1による化合物、図5Bは実施例4による化合物のそれぞれのサイクリックボルタンメトリーを表したグラフである。このグラフから化合物のHOMOレベルが分かり、これらの化合物が半可逆性であることが分かる。
【0117】
図7は、本発明の実施例1による化合物を利用した有機EL素子のI−V−L特性を表すグラフであり、ターンオン電圧が低いことが分かる。
【0118】
図8ないし図10は、本発明の実施例1に係る化合物を利用したデバイスの外部量子効率、輝度効率及び寿命(2.5mA/cm2)を表すグラフである。
【0119】
前記結果から、シクロメタル化遷移金属錯体にピラゾール−1−カルボキサミド配位子を導入すると、優れた燐光特性を有するドーパントが形成され、青色燐光材料として適しているということが分かる。さらに、多様な配位子を導入することにより、赤色、緑色、及び青色の組み合わせによるフルカラーの具現が可能であるということが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、有機EL素子に関連した技術分野に好適に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施例1及び実施例3による化合物の質量スペクトルである。
【図2】本発明の実施例1ないし4による化合物のPLスペクトルである。
【図3】本発明の実施例1による化合物のELスペクトルである。
【図4】本発明の実施例1及び実施例3による化合物のTGAグラフである。
【図5A】本発明の実施例1による化合物の酸化性循環電圧電流度及びHOMOレベルを表すグラフである。
【図5B】本発明の実施例4による化合物の酸化性循環電圧電流度及びHOMOレベルを表すグラフである。
【図6】本発明の実施例1による化合物を利用した有機EL素子の構造を概略的に示す図面である。
【図7】本発明の実施例1による化合物を利用した有機EL素子のI−V−L特性を表すグラフである。
【図8】本発明の実施例1による化合物を利用した有機EL素子の外部量子効率を表すグラフである。
【図9】本発明の実施例1による化合物の輝度効率を表すグラフである。
【図10】本発明の実施例1による化合物を利用した有機EL素子の2.5mA/cm2での寿命を表すグラフである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シクロメタル化遷移金属錯体及びこれを用いた有機電界発光(EL)素子に係り、より詳細には、三重項MLCT(Metal−to−Ligand Charge−Transfer、金属−配位子電荷移動)状態において、青色領域から赤色領域までの光の発光が可能なシクロメタル化遷移金属錯体、及びこれを有機膜形成材料として用いる有機EL素子に関する。
【背景技術】
【0002】
有機EL素子は、蛍光性または燐光性有機化合物薄膜(以下、有機膜と称す)に電流を流すと、電子と正孔が有機膜で結合することにより光が発生する現象を利用した、自発光型表示素子である。有機EL素子は軽量、部品が単純、製作工程が簡単、及び高画質で且つ広視野角を確保できるといった利点を有している。また、有機EL素子は高色純度の具現が可能であり、動画を完璧に具現でき、加えて低消費電力及び低電圧駆動のような携帯用電子機器に適した電気的な特性を有している。
【0003】
一般的な有機EL素子は、基板の上部にアノードが形成されており、このアノードの上部にホール輸送層、発光層、電子輸送層、及びカソードが順次形成されている構造を有している。ここで、ホール輸送層、発光層、及び電子輸送層は、有機化合物からなる有機膜である。前記のような構造を有する有機EL素子の駆動原理は、次の通りである。前記アノード及びカソード間に電圧を印加すれば、アノードから注入されたホールは、ホール輸送層を経て発光層に移動する。一方、電子は、カソードから電子輸送層を経て発光層に注入され、発光層領域でキャリアが再結合して励起子を生成する。この励起子が放射減衰することにより、物質のバンドギャップに相当する波長の光が放出される。
【0004】
前記有機EL素子の発光層の形成材料は、その発光メカニズムにより一重項状態の励起子を利用する蛍光物質、及び三重項状態の励起子を利用する燐光物質に区分される。発光層はこのような蛍光物質もしくは燐光物質単独で形成されるか、または蛍光物質もしくは燐光物質を適切なホスト物質にドーピングすることによって形成され、電子励起が起こると、ホストに一重項励起子と三重項励起子が形成される。この時、一重項励起子と三重項励起子の統計的生成比率は1:3である。
【0005】
発光層の形成材料として蛍光物質を用いた有機EL素子は、ホストで形成された三重項励起子が浪費されるという不利な点を有する。一方、発光層の形成材料として燐光物質を用いた有機EL素子は、一重項励起子及び三重項励起子の両方が使用できるため、内部量子効率100%に到達可能であるという利点を有している(非特許文献1参照)。したがって、燐光物質で形成された発光層は、蛍光物質で形成された発光層よりもはるかに高い発光効率を有しうる。
【0006】
発光層を形成する有機分子にIr、Pt、Rh、Pdのような重金属を導入すれば、重金属原子の効果によりスピン軌道カップリングが起こり、三重項状態及び一重項状態が混在するようになる。このため禁制遷移が誘発され、常温でも効果的に燐光が発生し得る。
【0007】
最近、内部量子効率が100%に至る燐光性の緑色領域の物質、及び赤色領域の物質が開発された。
【0008】
燐光を利用した高効率の発光材料として、Ir、Ptなどの遷移金属を含む多様な物質が発表されており、高効率のフルカラーディスプレイ、または低消費電力の白色発光の応用を実現するために、要求される特性を満足する緑色領域、または赤色領域の物質が報告されている。
【0009】
一方、青色領域の燐光物質も開発されている(特許文献1または特許文献2参照)。また、分子配列を変形させてHOMO−LUMOの差を大きくできる嵩高い官能基や、配位子場強度の大きい官能基(例:シアノ基)を導入した有機金属錯体が開発されている。その他にも、一般式Ir(ppy)2P(ph)3Y(但し、YはClまたはCNである)で表されるIr錯体(特許文献3参照)、並びにシクロメタル化配位子、キレートするジホスフィン、キレートする塩素、及びキレートするシアノ基を有するIr(III)錯体(特許文献4参照)が開発されている。
【0010】
また、特許文献5には、窒素原子と炭素原子とからなるシクロメタル化遷移金属錯体、及びこれを含んだ有機EL素子が開示されている。
【特許文献1】国際公開第02/15645A1号パンフレット
【特許文献2】米国特許出願公開第2002/0064681号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0182441号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2002/0048689号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2002/0134984号明細書
【非特許文献1】Baldo,et al.,Nature,Vol.395,151〜154,1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかし、上記の青色領域の燐光物質は効率及び信頼性が低く、高効率のフルカラーディスプレイまたは低消費電力の白色発光の応用の実現に対する大きな障害となっている。
【0012】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであり、解決しようとする第一の課題は、三重項MLCT状態において、青色領域から赤色領域までの光を効率的に発光できるシクロメタル化遷移金属錯体を提供することである。
【0013】
また本発明が解決しようとする第二の課題は、青色領域から赤色領域までの光を効率的に発光できる有機EL素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するために、本発明の第一は、下記化学式(1)で表されるシクロメタル化遷移金属錯体を提供する。
【0015】
【化1】
【0016】
前記化学式(1)中、
Mは遷移金属であり、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、XはNまたはCであり、CY1は含窒素ヘテロ環であり、CY2は芳香環、飽和環、または含窒素ヘテロ環であり、n1は1または2である。
【0017】
本発明の第二は、一対の電極の間に有機膜を有する有機EL素子であって、前記有機膜は前記化学式(1)で表されるシクロメタル化遷移金属錯体を含むことを特徴とする有機EL素子を提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明のシクロメタル化遷移金属錯体は、三重項MLCT状態において、青色領域から赤色領域までの光を効率的に発光できる。かかるシクロメタル化有機金属錯体は、有機EL素子の有機膜形成時に利用可能であり、緑色発光物質及び赤色発光物質と共に用いられて白色光を発光することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0020】
本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体は、ピラゾール−1−カルボキサミドが遷移金属に配位することにより、効率的な青色発光が可能となる。
【0021】
本発明のシクロメタル化遷移金属錯体は、下記化学式(1)の構造を有する。
【0022】
【化2】
【0023】
前記化学式(1)中、Mは遷移金属であり、R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、XはNまたはCであり、CY1は含窒素ヘテロ環であり、CY2は芳香環、飽和環、または含窒素ヘテロ環であり、n1は1または2である。
【0024】
前記化学式(1)で表されるシクロメタル化遷移金属錯体は、遷移金属にピラゾールカルボキサミド配位子が配位した錯体であることにその特徴がある。
【0025】
前記R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし10)、アルケニル基(好ましくは炭素数が2ないし30更に好ましくは2ないし20、特に好ましくは2ないし10)、アルキニル基(好ましくは炭素数が2ないし30、更に好ましくは2ないし20、特に好ましくは2ないし10)、アリール基(好ましくは炭素数が6ないし30、更に好ましくは6ないし20、特に好ましくは6ないし12)、アミノ基(好ましくは炭素数0ないし30、更に好ましくは0ないし20、特に好ましくは0ないし10)、アルコキシ基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし10)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数が6ないし30、更に好ましくは6ないし20、特に好ましくは6ないし12)、複素環オキシ基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、アシル基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数が2ないし30、更に好ましくは2ないし20、特に好ましくは2ないし12)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数が7ないし30、更に好ましくは7ないし20、特に好ましくは7ないし12)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数が2ないし30、更に好ましくは2ないし20、特に好ましくは2ないし10)、アシルアミノ基(好ましくは炭素数が2ないし30、更に好ましくは2ないし20、特に好ましくは2ないし10)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数が2ないし30、更に好ましくは炭素数2ないし20、特に好ましくは2ないし12)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7ないし30、更に好ましくは7ないし20、特に好ましくは7ないし12)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、スルファモイル基(好ましくは炭素数が0ないし30、更に好ましくは0ないし20、特に好ましくは0ないし12)、カルバモイル基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは、1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、アリールチオ基(好ましくは炭素数が6ないし30、更に好ましくは6ないし20、特に好ましくは6ないし12)、複素環チオ基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、スルホニル基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、スルフィニル基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、ウレイド基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、燐酸アミノ基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし20、特に好ましくは1ないし12)、ヒドロキシル基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基(好ましくは炭素数が1ないし30、更に好ましくは1ないし12)、シリル基(好ましくは炭素数が3ないし40、更に好ましくは3ないし30、特に好ましくは3ないし24)、及びシリルオキシ基(好ましくは炭素数が3ないし40、更に好ましくは3ないし30、特に好ましくは3ないし24)からなる群より選択される何れか一つの置換基でありうる。
【0026】
前記化学式(1)のシクロメタル化遷移金属錯体は、下記化学式(2)ないし化学式(10)の化合物のうち、何れか一つであることが好ましい。
【0027】
【化3】
【0028】
前記化学式(2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、n1は1または2である。
【0029】
【化4】
【0030】
前記化学式(3)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、n1は1または2であり、CY1は含窒素ヘテロ環である。
【0031】
【化5】
【0032】
前記化学式(4)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、n1は1または2であり、CY1は、含窒素ヘテロ環である。
【0033】
【化6】
【0034】
前記化学式(5)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、XはC、N、O、S、またはP原子であり、n1は1または2である。
【0035】
【化7】
【0036】
前記化学式(6)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、XはC、N、O、SまたはP原子であり、n1は1または2である。
【0037】
【化8】
【0038】
前記化学式(7)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、XはC、N、O、SまたはP原子であり、n1は1または2である。
【0039】
【化9】
【0040】
前記化学式(8)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、XはC、N、O、SまたはP原子であり、CY3は芳香環飽和環、またはヘテロ環であり、n1は1または2である。
【0041】
【化10】
【0042】
前記化学式(9)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、XはC、N、O、SまたはP原子であり、CY4は芳香環飽和環、またはヘテロ環であり、n1は1または2である。
【0043】
【化11】
【0044】
前記化学式(10)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、Mは遷移金属であり、XはC、N、O、S、またはP原子であり、CY5は芳香環飽和環、またはヘテロ環であり、n1は1または2である。
【0045】
前記化学式(1)、化学式(3)、及び化学式(4)中、CY1は含窒素ヘテロ環であり、その具体例としては、ピリジン環、ピラジン環、キノリン環、ピペリジン環などが挙げられる。
【0046】
前記化学式(1)中、CY2は芳香環、飽和環、または含窒素ヘテロ環である。芳香環の具体例としてはベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環などが挙げられ、飽和環の具体例としてはシクロペンタン環、シクロへキサン環などが挙げられる。含窒素ヘテロ環の例は、前記CY1の場合で例示したものと同様である。
【0047】
前記化学式(8)、化学式(9)、及び化学式(10)中、CY3、CY4、及びCY5は、芳香環、飽和環、またはヘテロ環である。芳香環及び飽和環の具体例は、前記CY2の場合で例示したものと同様である。ヘテロ環の具体例としてはピリジン環、ピラジン環、キノリン環、ピペリジン環、キノキサリン環、フラン環、チオフェン環などが挙げられる。
【0048】
前記化学式(1)ないし(10)中、遷移金属Mは、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、またはAuであることが好ましい。
【0049】
前記化学式(1)で表されるシクロメタル化遷移金属錯体の具体例は、下記化学式(11)で表される化合物であるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
【化12】
【0051】
本発明に係るシクロメタル化遷移金属錯体は、400nmないし650nmの間の波長領域で発光特性を有する。
【0052】
本発明に係るシクロメタル化遷移金属錯体は、シクロメタル化部分の供与体としての役割を果たす[Ir(C^N)2Cl]2誘導体を使用して、Wattsらにより報告された方法(F.O.Garces,R.J.Watts,Inorg.Chem.1988,(35),2450)によって合成可能である。
【0053】
以下、本発明の一実施形態によるシクロメタル化遷移金属錯体の合成方法を説明する。
【0054】
下記反応式を参照すれば、前記[Ir(C^N)2Cl]2誘導体、及びピラゾール−1−カルボキサミド化合物を、クロロホルム、メタノールなどの溶媒中、常温で2ないし48時間の間混合及び攪拌を行うことにより、本発明のピラゾール−1−カルボキサミド配位子含有のシクロメタル化遷移金属錯体を合成できる。
【0055】
【化13】
【0056】
前記反応式(1)中、X、R1、R2、R3、R4、CY1、及びCY2は、前記化学式(1)で定義した通りである。
【0057】
本発明の有機EL素子は、本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体を利用して有機膜、特に発光層を形成させて製造される。この時、前記化学式(1)で表されるシクロメタル化遷移金属錯体は、発光層の形成物質である燐光材料ドーパントとして非常に有効であり、青色波長領域で優れた発光特性を有する。
【0058】
本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体を燐光材料ドーパントとして使用する場合、有機膜は1種以上の高分子ホスト、高分子と低分子との混合物ホスト、低分子ホスト、及び非発光高分子マトリックスからなる群より選択される少なくとも一つを更に含みうる。ここで、高分子ホスト、低分子ホスト、非発光高分子マトリックスとしては、有機EL素子用の発光層形成時に一般的に使用されるものであれば、何れも使用できる。高分子ホストの例としては、ポリビニルカルバゾール、ポリフルオレンなどがあり、低分子ホストの例としては、4,4’−N,N’−ジカルバゾールビフェニル(CBP)、4,4’−ビス[9−(3,6−ビフェニルカルバゾリル)]−1,1’−ビフェニル、9,10−ビス[(2’,7’−t−ブチル)−9’,9”−スピロビフルオレニルアントラセン、テトラフルオレンなどがあり、非発光高分子マトリックスとしては、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンなどがあるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
発光層における本発明のシクロメタル化遷移金属錯体の含量は、発光層の形成材料の総質量を100質量部として、1ないし30質量部であることが好ましい。かかるシクロメタル化遷移金属錯体を発光層に導入する場合には、真空蒸着法、スパッタリング法、印刷法、コーティング法、インクジェット法、電子ビームを利用した方法など、公知の方法を利用できる。
【0060】
また、本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体は、緑色発光物質及び赤色発光物質と共に用いられて、白色光を発光させることができる。
【0061】
ここで、有機膜の厚さは、30ないし100nmであることが好ましい。前記有機膜は、発光層以外に電子伝達層、正孔伝達層のように、有機EL素子で一対の電極の間に形成される有機化合物からなる膜を表す。本発明の有機EL素子は、一般的に知られた正極/発光層/負極、正極/バッファ層/発光層/負極、正極/正孔伝達層/発光層/負極、正極/バッファ層/正孔伝達層/発光層/負極、正極/バッファ層/正孔伝達層/発光層/電子伝達層/負極、正極/バッファ層/正孔伝達層/発光層/正孔遮断層/負極などの構造で形成されうるが、これらに限定されるものではない。
【0062】
前記バッファ層の材料としては、一般的に使用される物質を使用でき、好ましくは銅フタロシアニン、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロル、ポリフェニルビニレン、またはそれらの誘導体である。
【0063】
前記正孔伝達層の材料としては、一般的に使用される物質を使用でき、好ましくは、ポリトリフェニルアミンである。
【0064】
前記電子伝達層の材料としては、一般的に使用される物質を使用でき、好ましくは、ポリオキサジアゾールである。
【0065】
前記正孔遮断層の素材としては、一般的に使用される物質を使用でき、好ましくは、LiF、BaF2、またはMgF2である。
【0066】
本発明の有機EL素子は、特別な装置や方法を必要とせず、通常の発光材料を利用した有機EL素子の製造方法によって製造可能である。
【0067】
本発明によるシクロメタル化遷移金属錯体は、400ないし650nm領域で発光できる。本発明のシクロメタル化有機金属錯体は発光ダイオードにも用いることができ、その発光ダイオードはフルカラー表示用の光源照明、バックライト、屋外掲示板、光通信、内部装飾などに使用できる。
【実施例】
【0068】
以下実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例のみに限定されるものではない。
【0069】
(参考例1)[(F2ppy)2IrCl]2ダイマーの合成
【0070】
【化14】
【0071】
500mLのサイドアームつきフラスコに19.85g(125mmol)の2−ブロモピリジン、25.00g(158mmol)の2,4−ジフルオロフェニルボロン酸、100mLのトルエン、並びにエタノール48mL及び水95mLで作製した2Mの炭酸ナトリウム溶液を加え、これを窒素雰囲気下、常温で攪拌した。次いで、前記反応混合物に4.53g(3.92mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を入れて、窒素雰囲気下で光を遮断したまま15時間還流した。
【0072】
反応終了後、反応混合物の温度を常温に調節し、酢酸エチル及び水を用いて反応混合物からの抽出を行った。その抽出物をカラムクロマトグラフィ(溶離液は質量比でトルエン:へキサン=10:1の混合溶媒)で分離精製し、薄い茶色の液体(F2ppyH)を得た。
【0073】
1H−NMR(CD2Cl2,ppm):8.69(d,1H)、8.03(m,1H)、7.70(m,2H)、7.27(m,1H)、7.00(m,2H)
前記工程によって合成した2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジン及びIrCl3・nH2Oを用いて黄色粉末である[(F2ppy)2IrCl]2ダイマーを合成した。この際、合成法は、J.Am.Che.Soc.,1984,106,6647〜6653を参照した。
【0074】
1H−NMR(CD2Cl2,ppm):9.1(d,4H)、8.3(d,4H)、7.9(t,4H)、6.9(m,4H)、6.5(m,4H)、5.3(d,4H)
(参考例2)[(MeF2ppy)2IrCl]2ダイマーの合成
【0075】
【化15】
【0076】
2−ブロモピリジンの代わりに2−ブロモ−4−メチルピリジンを使用することを除いては、参考例1と同様の方法で[(MeF2ppy)2IrCl]2ダイマーを合成した。
【0077】
1H−NMR(CD2Cl2,ppm):8.9(d,4H)、8.1(s,4H)、6.6(d,4H)、6.3(m,4H)、5.3(d,4H)、2.6(s,12H)
(参考例3)[(DMAF2ppy)2IrCl]2ダイマーの合成
【0078】
【化16】
【0079】
2−ブロモピリジンの代わりに2−ブロモ−4−ジメチルアミノピリジン25.26g(1.25x104mmol)を使用することを除いては、参考例1と同様の方法で[(DMAF2ppy)2IrCl]2ダイマーを合成した。
【0080】
1H−NMR(CD2Cl2,ppm):8.7(d,4H)、7.5(t,4H)、6.3(m,4H)、6.1(m,4H)5.4(d,4H)、3.2(s,24H)
(参考例4)[(F2CNppy)2IrCl]2ダイマーの合成
【0081】
【化17】
【0082】
2,4−ジフルオロフェニルボロン酸の代わりに2,4−ジフルオロ−3−シアノ−フェニルボロン酸22.87g(125mmol)を使用することを除いては、参考例1と同様の方法で[(F2CNppy)2IrCl]2ダイマーを合成した。
【0083】
(参考例5)[(F2ppy)PtCl]2ダイマーの合成
【0084】
【化18】
【0085】
500mLのサイドアームつきフラスコに19.85g(125mmol)の2−ブロモピリジン、25.00g(158mmol)の2,4−ジフルオロフェニルボロン酸、100mLのトルエン、並びにエタノール48mL及び水95mLを用いて作製した2Mの炭酸ナトリウム溶液を加え、これを窒素雰囲気下、常温で攪拌した。次いで、前記反応混合物に4.53g(3.92mmol)のテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)を加え、窒素雰囲気下で光を遮断したまま15時間還流した。
【0086】
反応終了後、反応混合物の温度を常温に調節した後、酢酸エチル及び水を用いて抽出した。その後カラムクロマトグラフィ(溶離液は質量比でトルエン:へキサン=10:1の混合溶媒)で分離精製を行い、薄い茶色の液体(F2ppyH)を得た。
【0087】
1H−NMR(CD2Cl2,ppm):8.69(d,1H)、8.03(m,1H)、7.70(m,2H)、7.27(m,1H)、7.00(m,2H)
前記工程によって合成した2−(4,6−ジフルオロフェニル)ピリジン、及びK2[PtCl]4を用いて、参考例1と同様の方法で緑色粉末である[(F2ppy)PtCl]2ダイマーを合成した。この際、合成法は、J.Am.Che.Soc.,1984,106,6647〜6653を参照した。
【0088】
(実施例1)下記化学式(12)の化合物の合成(F2PZNH)
【0089】
【化19】
【0090】
温度計、機械式攪拌器、及び還流器が装着された100mlの2口フラスコに、窒素雰囲気下で、参考例1で製造した[(F2ppy)2IrCl]20.605g(0.5mmol)、及び3,5−ジメチルピラゾ−ル−1−カルボキサミド0.160g(1.25mmol)を、メタノール及びクロロホルムの混合溶液30mlに溶解させ、常温で約2時間攪拌させた後、反応温度を徐々に上げて8時間還流させた。反応終了後、反応混合物を室温まで冷却し、溶解していない未反応出発物質をろ過によって除去した。ろ過した母液を、ロータリーエバポレータを用いて溶媒を除去し、ジエチルエーテルを滴下した。系内の緑色の固体をろ過によって回収した後、ジエチルエーテル及びへキサンで数回洗浄した。その後固体を30℃の真空オーブンで十分に乾燥させて、標題化合物0.55g(収率87%)を純粋な緑色の固体として得た。この化合物の溶融点は255℃であった。得られた化合物を、1H−NMR及び質量分析法(MS)(図1参照)により同定した。
【0091】
(実施例2)下記化学式(13)の化合物の合成(MeF2PZNH)
【0092】
【化20】
【0093】
[(F2ppy)2IrCl]2の代わりに参考例2で合成した[(MeF2ppy)2IrCl]2の0.65g(0.5mmol)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で合成し、標題化合物0.575g(収率85%)を純粋な淡緑色の固体として得た。この化合物の溶融点は260℃であった。得られた化合物を、1H−NMR及びMS(図1参照)により同定した。
【0094】
(実施例3)下記化学式(14)の化合物の合成(DMAF2PZNH)
【0095】
【化21】
【0096】
[(F2ppy)2IrCl]2の代わりに参考例3で合成した[(DMAF2ppy)2IrCl]20.71g(0.5mmol)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で合成し、標題化合物0.63g(収率85%)が純粋な淡緑色の固体として得た。この化合物の溶融点は255℃であった。得られた化合物を、1H−NMR及びMS(図1参照)により同定した。
【0097】
(実施例4)下記化学式(15)の化合物の合成(F2CNPZNH)
【0098】
【化22】
【0099】
[(F2ppy)2IrCl]2の代わりに参考例4で合成した[(F2CNppy)2IrCl]2の0.67g(0.5mmol)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法で合成し、標題化合物0.580g(収率83%)を淡緑色固体として得た。得られた化合物を、1H−NMR及びMSにより同定した。
【0100】
(実施例5)下記化学式(16)の化合物の合成(F2PZNH(Pt))
【0101】
【化23】
【0102】
[(F2ppy)2IrCl]2の代わりに参考例5で合成した[(F2ppy)PtCl]20.84g(1mmol)を使用したことを除いては、実施例1と同様の方法標題化合物0.690g(収率80%)を得た。得られた化合物を、1H−NMR及びMSにより同定した。
【0103】
前記実施例の化合物の発光特性は、下記の方法によって調べた。
【0104】
第一の方法は、前記化合物を塩化メチレンに溶解させて10−4Mの溶液とし、塩化メチレン溶液状態での発光特性を調べる方法である。第二の方法は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)94重量部、及び前記化合物6重量部を溶媒に溶かし、スピンコーティングによりフィルムを製造してフィルム状態での発光特性を調べる方法である。
【0105】
前記実施例で得られた化合物の最大発光波長、色座標(CIE)、分解温度、及びHOMOレベルを下記表1にまとめた。
【0106】
【表1】
【0107】
前記実施例で合成した化合物を用いて有機EL素子を作製した。この有機EL素子は下記の構造(詳細は図6を参照)を有し、発光面積は9mm2であった。
【0108】
基板/第1電極/正孔輸送層/発光層/ホール抑制層/電子輸送層/電子注入層/第2電極=
ガラス/ITO/NBP(40nm)/mcP:5wt%F2PZNH(40nm)/BAlq(40nm)/LiF(2nm)/Al(200nm)
素子の製作方法は下記の通りである。
【0109】
あらかじめ洗浄されたITOにNPB(4−(4−二トロベンジル)ピリジン)を40nmの厚さに蒸着した後、F2PZNH及びホスト(mCP::1,3−ビス(カルバゾルリル)ベンゼン)を5:95の質量比で混合したものをコーティングした。ここに熱蒸着方式でホールブロッキング層となるBAlqを40nmの厚さで塗布し、次に電子輸送層となるLiFを2nmの厚さで塗布し、最後に正極となるAlを200nmの厚さで塗布した。
【0110】
この有機EL素子の性能の評価結果(最大発光波長、色座標、輝度、寿命など)を表2にまとめた。
【0111】
【表2】
【0112】
図1は本発明の実施例1及び実施例3による化合物の質量スペクトルである。
【0113】
図2はそれぞれ本発明の実施例1ないし実施例4による化合物の発光(PL)スペクトルである。
【0114】
図3は本発明の実施例1によるEL強度を表す。
【0115】
図4は、本発明の実施例1及び実施例3に係る化合物の熱重量分析(TGA)グラフである。
【0116】
図5Aは本発明の実施例1による化合物、図5Bは実施例4による化合物のそれぞれのサイクリックボルタンメトリーを表したグラフである。このグラフから化合物のHOMOレベルが分かり、これらの化合物が半可逆性であることが分かる。
【0117】
図7は、本発明の実施例1による化合物を利用した有機EL素子のI−V−L特性を表すグラフであり、ターンオン電圧が低いことが分かる。
【0118】
図8ないし図10は、本発明の実施例1に係る化合物を利用したデバイスの外部量子効率、輝度効率及び寿命(2.5mA/cm2)を表すグラフである。
【0119】
前記結果から、シクロメタル化遷移金属錯体にピラゾール−1−カルボキサミド配位子を導入すると、優れた燐光特性を有するドーパントが形成され、青色燐光材料として適しているということが分かる。さらに、多様な配位子を導入することにより、赤色、緑色、及び青色の組み合わせによるフルカラーの具現が可能であるということが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0120】
本発明は、有機EL素子に関連した技術分野に好適に適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】本発明の実施例1及び実施例3による化合物の質量スペクトルである。
【図2】本発明の実施例1ないし4による化合物のPLスペクトルである。
【図3】本発明の実施例1による化合物のELスペクトルである。
【図4】本発明の実施例1及び実施例3による化合物のTGAグラフである。
【図5A】本発明の実施例1による化合物の酸化性循環電圧電流度及びHOMOレベルを表すグラフである。
【図5B】本発明の実施例4による化合物の酸化性循環電圧電流度及びHOMOレベルを表すグラフである。
【図6】本発明の実施例1による化合物を利用した有機EL素子の構造を概略的に示す図面である。
【図7】本発明の実施例1による化合物を利用した有機EL素子のI−V−L特性を表すグラフである。
【図8】本発明の実施例1による化合物を利用した有機EL素子の外部量子効率を表すグラフである。
【図9】本発明の実施例1による化合物の輝度効率を表すグラフである。
【図10】本発明の実施例1による化合物を利用した有機EL素子の2.5mA/cm2での寿命を表すグラフである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式(1)で表されるシクロメタル化遷移金属錯体:
【化1】
前記化学式(1)中、
Mは遷移金属であり、
R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
XはNまたはCであり、
CY1は含窒素ヘテロ環であり、
CY2は芳香環、飽和環、または含窒素ヘテロ環であり、
n1は1または2である。
【請求項2】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(2)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化2】
前記化学式(2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
n1は1または2である。
【請求項3】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(3)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化3】
前記化学式(3)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
n1は1または2であり、
CY1は含窒素ヘテロ環である。
【請求項4】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(4)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化4】
前記化学式(4)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
n1は1または2であり、
CY1は含窒素ヘテロ環である。
【請求項5】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(5)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化5】
前記化学式(5)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
XはC、N、O、S、またはP原子であり、
n1は1または2である。
【請求項6】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(6)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化6】
前記化学式(6)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
XはC、N、O、S、またはP原子であり、
n1は1または2である。
【請求項7】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(7)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化7】
前記化学式(7)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
XはC、N、O、S、またはP原子であり、
n1は1または2である。
【請求項8】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(8)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化8】
前記化学式(8)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
XはC、N、O、S、またはP原子であり、
CY3は芳香環、飽和環、またはヘテロ環であり、
n1は1または2である。
【請求項9】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(9)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化9】
前記化学式(9)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
XはC、N、O、SまたはP原子であり、
CY4は芳香環または飽和環、またはヘテロ環であり、
n1は1または2である。
【請求項10】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(10)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化10】
前記化学式(10)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
XはC、N、O、S、またはP原子であり、
CY5は芳香環飽和環、またはヘテロ環であり、
n1は1または2である。
【請求項11】
Mは、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、またはAuであることを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載のシクロメタル化遷移金属錯体。
【請求項12】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(11)で表される化合物からなる群より選択される何れか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体。
【化11】
【請求項13】
一対の電極の間に有機膜を含む有機電界発光素子であって、
前記有機膜が請求項1ないし13の何れか1項に記載のIr(III)錯体を含むことを特徴とする、有機電界発光素子。
【請求項14】
前記有機膜が1種以上の高分子ホスト、高分子ホストと低分子ホストとの混合物、低分子ホスト、及び非発光高分子マトリックスからなる群から選択される少なくとも一つを更に含むことを特徴とする、請求項13に記載の有機電界発光素子。
【請求項15】
前記有機膜は、緑色発光物質及び/または赤色発光物質を更に含むことを特徴とする、請求項13または14に記載の有機電界発光素子。
【請求項1】
下記化学式(1)で表されるシクロメタル化遷移金属錯体:
【化1】
前記化学式(1)中、
Mは遷移金属であり、
R1、R2、R3、及びR4はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
XはNまたはCであり、
CY1は含窒素ヘテロ環であり、
CY2は芳香環、飽和環、または含窒素ヘテロ環であり、
n1は1または2である。
【請求項2】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(2)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化2】
前記化学式(2)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
n1は1または2である。
【請求項3】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(3)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化3】
前記化学式(3)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
n1は1または2であり、
CY1は含窒素ヘテロ環である。
【請求項4】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(4)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化4】
前記化学式(4)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
n1は1または2であり、
CY1は含窒素ヘテロ環である。
【請求項5】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(5)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化5】
前記化学式(5)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
XはC、N、O、S、またはP原子であり、
n1は1または2である。
【請求項6】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(6)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化6】
前記化学式(6)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
XはC、N、O、S、またはP原子であり、
n1は1または2である。
【請求項7】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(7)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化7】
前記化学式(7)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
XはC、N、O、S、またはP原子であり、
n1は1または2である。
【請求項8】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(8)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化8】
前記化学式(8)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
XはC、N、O、S、またはP原子であり、
CY3は芳香環、飽和環、またはヘテロ環であり、
n1は1または2である。
【請求項9】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(9)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化9】
前記化学式(9)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、及びR12はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
XはC、N、O、SまたはP原子であり、
CY4は芳香環または飽和環、またはヘテロ環であり、
n1は1または2である。
【請求項10】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(10)で表される化合物であることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体:
【化10】
前記化学式(10)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、及びR10はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アミノ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、複素環オキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アシルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルホニルアミノ基、スルファモイル基、カルバモイル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、複素環チオ基、スルホニル基、スルフィニル基、ウレイド基、燐酸アミノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、ヒドロキサム酸基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、複素環基、シリル基、及びシリルオキシ基からなる群より選択される何れか一つの置換基であり、
Mは遷移金属であり、
XはC、N、O、S、またはP原子であり、
CY5は芳香環飽和環、またはヘテロ環であり、
n1は1または2である。
【請求項11】
Mは、Ru、Rh、Os、Ir、Pt、またはAuであることを特徴とする、請求項1〜10の何れか1項に記載のシクロメタル化遷移金属錯体。
【請求項12】
前記化学式(1)の化合物は、下記化学式(11)で表される化合物からなる群より選択される何れか一つであることを特徴とする、請求項1に記載のシクロメタル化遷移金属錯体。
【化11】
【請求項13】
一対の電極の間に有機膜を含む有機電界発光素子であって、
前記有機膜が請求項1ないし13の何れか1項に記載のIr(III)錯体を含むことを特徴とする、有機電界発光素子。
【請求項14】
前記有機膜が1種以上の高分子ホスト、高分子ホストと低分子ホストとの混合物、低分子ホスト、及び非発光高分子マトリックスからなる群から選択される少なくとも一つを更に含むことを特徴とする、請求項13に記載の有機電界発光素子。
【請求項15】
前記有機膜は、緑色発光物質及び/または赤色発光物質を更に含むことを特徴とする、請求項13または14に記載の有機電界発光素子。
【図2】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【図3】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図1】
【公開番号】特開2006−111623(P2006−111623A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−294203(P2005−294203)
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]