説明

シックナーとしての有機酸塩

【課題】グリース組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、20ナノメーター〜2マイクロメーターの範囲の数平均粒子サイズを有する水酸化金属、10未満のHLBを有する界面活性剤、モノ−および/またはポリ−カルボン酸、および潤滑粘度のオイルからなる安定分散体の反応生成物を含むグリース組成物を提供する。反応時間、発生する泡の量および環境上の危険性の低減を含む利点を有するグリース組成物を製造する方法も開示されている。本発明は、乾燥した塩基、例えば、リチウム分散体の状態をした塩基を用いた石鹸で濃密にした潤滑グリースを製造する方法に関する。リチウム分散体を造るために乾燥水酸化金属エマルジョン技術を用いると、よりマイルドな条件下でグリースを製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、乾燥した塩基、例えば、リチウム分散体の状態をした塩基を用いた石鹸で濃密にした潤滑グリースを製造する方法に関する。リチウム分散体を造るために乾燥水酸化金属エマルジョン技術を用いると、よりマイルドな条件下でグリースを製造することができる。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
グリースは、連続的または非連続的に造ることができることはよく知られている。両プロセスは、固体または水性の塩基、例えば、水酸化リチウム1水和物を鉱油の存在下でカルボン酸と反応させる。水酸化リチウム1水和物をカルボン酸と反応させると、鉱油が濃密になりストレートのリチウム・グリースが得られる。グリースの製造において最もよく使われるカルボン酸は、12−ヒドロキシ・ステアリン酸である。
【0003】
前記グリースを造る非連続的および連続的プロセスでは、鹸化のための高温および高圧容器を必要とする。
【0004】
特許文献1は、高分子量脂肪酸を含むスラリーに添加する前に水酸化金属をまず脱水して無水のグリースを造る連続的な方法に関する。
【0005】
特許文献2は、無水水酸化リチウムまたは水酸化リチウム1水和物と脂肪酸を35〜45℃の範囲の温度で、リチウムおよび脂肪酸の90重量%がグリースを形成するのに十分な時間よく反応させてリチウム・グリースを含む潤滑剤の製造に関する。
【0006】
特許文献3は、鉱油に溶解した石油マホガニースルホン酸塩を含む油中水エマルジョンを含む脂肪酸と不溶性水酸化金属からグリースの製造に関する。
【0007】
特許文献4および特許文献5は、適切な有機酸を添加する前に潤滑油にまず水酸化カルシウムを溶解してグリースを製造する方法に関する。特許文献5で使われた有機酸は、置換アルケニルこはく酸であり、一方、特許文献4ではステアリン酸、オレイン酸、獣脂などの酸が使われている。
【0008】
特許文献6は、アルキルニトニルを含む液体反応混合物において水酸化リチウムの濃縮水溶液を用いたグリースの製造に関する。
【0009】
特許文献7は、アセトンを含む液状反応媒体において、無機塩の存在下で水酸化アルカリ金属の濃縮水溶液と有機カルボン酸、そのエステル類およびそれらの混合物との反応による石鹸およびグリースの製造方法に関する。無機塩が存在すると、石鹸またはグリースの収率が向上する。
【0010】
特許文献8は、オイルとリチウム塩基との混合物を少なくとも100℃まで加熱し、次いで、得られた混合物を濃密グリースが得られるまで110℃〜200℃の範囲の温度で加熱することからなるリチウム石鹸濃密グリースを製造するプロセスに関する。
【0011】
特許文献9は、0.1〜5重量%の低融点または液状の脂肪酸またはエステル類を用いて水酸化リチウム1水和物を被覆することによりダストフリーの水酸化リチウム1水和物を形成する方法に関する。水酸化リチウム1水和物を被覆するために脂肪酸のトリグリセリド類も使える。通常、本発明の液状脂肪酸またはエステル類の融点は38℃未満である。
【0012】
特許文献10は、グリース製造における水酸化リチウム1水和物または無水水酸化リチウムに関わる環境上の危険性を低減する方法に関する。この技術は、融点が138℃未満で厚さが0.0005〜0.001インチである単一層ポリオレフィン・フィルムの密封小袋を利用している。ポリオレフィンは潤滑油ベースに溶解する。密封小袋には、グリースの製造に使用するために前記水酸化物またはリチウム脂肪酸またはそれらの混合物が含まれている。
【0013】
「NLGI Lubricating Grease Guide,2nd Edition,1989」では、オイルの存在下界面活性剤なしで石灰と12−ヒドロキシ・ステアリン酸との反応で造られた無水カルシウム・グリースが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第2,434,539号明細書
【特許文献2】米国特許第2,444,720号明細書
【特許文献3】米国特許第2,659,695号明細書
【特許文献4】米国特許第2,708,659号明細書
【特許文献5】米国特許第2,868,729号明細書
【特許文献6】米国特許第4,075,234号明細書
【特許文献7】米国特許第4,337,209号明細書
【特許文献8】米国特許第5,236,607号明細書
【特許文献9】米国特許第5,948,736号明細書
【特許文献10】米国特許第6,153,563号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
例えば、ダストや蒸気の低い環境上の危険性が最小限であり、発泡が比較的少ない、グリース組成物および製造プロセスがあれば、望ましいであろう。さらに、このプロセスにより比較的少ないエネルギーと原料を用いて、比較的高い収率が得られるならば、望ましいことであろう。
【課題を解決するための手段】
【0016】
(発明の概要)
本発明は下記成分の反応生成物を含むグリース組成物を提供する。
【0017】
(a)約20ナノメーター〜約2マイクロメーターの範囲の数平均粒子サイズを有する水酸化金属の安定分散体と、
(b)約10未満のHLBを有する界面活性剤と、
(c)約2〜約30個の炭素原子を含むカルボン酸であって、
このカルボン酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびこれらの混合物から選択され、随意に、さらに、ヒドロキシル基、1〜約5個の炭素原子のアルコールと前記カルボン酸の反応により形成されたエステル、およびこれらの混合物から選択された基により置換されるカルボン酸と、
(d)潤滑粘度のオイル。
【0018】
本発明は、さらに、環境上の危険性、例えば、ダストや蒸気の低減したグリースの製造プロセスを提供する。本発明は、さらに、金属および/またはカルボン酸のグラムあたりの粘度調節金属石鹸(塩)の収率が向上したグリースの製造方法を提供する。本発明は、さらに、ほぼ無水の水酸化金属を提供する。本発明は、さらに、泡の量が顕著に低下することになるグリース製造プロセスを提供する。本発明は、さらに、反応時間が現在のプロセスよりも著しく短いグリース製造プロセスを提供する。本発明は、さらに、環境上の危険性が低く、反応時間が短く、泡が少なく、その上、グリースの収率が高い方法を提供する。
【0019】
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
グリース組成物であって、
(a)約20ナノメーター〜約2マイクロメーターの範囲の数平均粒子サイズを有する水酸化金属の安定分散体と、
(b)約10未満のHLBを有する界面活性剤と、
(c)約2〜約30個の炭素原子を含むカルボン酸であって、
該カルボン酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびこれらの混合物から選択され、随意に、該カルボン酸は、さらに、ヒドロキシル基、1〜約5個の炭素原子のアルコールと該カルボン酸の反応により形成されたエステル、およびこれらの混合物から選択された基により置換される、カルボン酸と、
(d)潤滑粘度のオイルと、
の反応生成物を含む、グリース組成物。
(項目2)
項目1に記載の組成物であって、前記水酸化金属の安定分散体の量が約0.5〜約20重量%の範囲で存在し、前記カルボン酸の量が約0.1〜約30重量%の範囲で存在しおよび前記潤滑粘度のオイルの量が約50〜約96.5重量%の範囲で存在する、組成物。
(項目3)
項目2に記載の組成物であって、前記水酸化金属の金属が約2〜約16重量%の範囲で存在する、組成物。
(項目4)
項目1に記載の組成物であって、前記水酸化金属がほぼ無水である、組成物。
(項目5)
項目1に記載の組成物であって、前記水酸化金属の金属が、アルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムまたはそれらの混合物である、組成物。
(項目6)
項目3に記載の組成物であって、前記水酸化金属の金属がアルカリ金属またはアルカリ金属の混合物である、組成物。
(項目7)
項目1に記載の組成物であって、前記カルボン酸が約2〜約30個の炭素原子を含み、該カルボン酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびこれらの混合物から選択され、随意に、該カルボン酸は、さらに、ヒドロキシル基、1〜約5個の炭素原子のアルコールと該カルボン酸の反応により形成されたエステル、およびこれらの混合物から選択された基により置換される、組成物。
(項目8)
項目7のカルボン酸において、前記カルボン酸が置換または非置換のステアリン酸からなる群から選択される、カルボン酸。
(項目9)
項目7のカルボン酸において、前記カルボン酸がノナンジオン酸、デカンジオン酸またはそれらの混合物と少なくとも1つのモノカルボン酸の混合物である、カルボン酸。
(項目10)
項目1に記載のグリース組成物であって、さらに、耐磨耗剤、酸化防止剤、金属不活性化剤、さび止め剤、粘度調節剤および極圧添加剤からなる群から選択される、少なくとも1つの化合物が含まれている、グリース組成物。
(項目11)
グリース組成物を製造する方法であって、
(a)油中に水酸化金属および溶媒が存在するエマルジョンから溶媒を除去して造られた約0.5〜約20重量%の範囲で存在する水酸化金属の安定分散体と、
(b)約2〜約30個の炭素原子を含むカルボン酸であって、該カルボン酸には約2〜約30個の炭素原子が含まれ、該カルボン酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびこれらの混合物から選択され、随意に、該カルボン酸は、さらに、ヒドロキシル基、1〜約5個の炭素原子のアルコールと該カルボン酸の反応により形成されたエステルおよびこれらの混合物から選択された基により置換され、約0.1〜約30重量%の範囲で存在する、カルボン酸と、
(c)混合物を得るように約50〜約96.5重量%の範囲で存在する潤滑粘度のオイルであって、該混合物は鹸化工程でさらに処理される、オイル、および、
(d)随意に、所望の粘度を付与するために加えられる仕上げの潤滑粘度のオイルと、を任意の順番で混合することを含む、製造方法。
(項目12)
項目11に記載のプロセスであって、前記水酸化金属の分散体の溶媒含有量が、水酸化金属の重量に基づいて約0.1〜約20重量%である、プロセス。
(項目13)
項目11に記載のプロセスであって、粉末状の前記水酸化金属を用いたコントロールに比べて、前記反応時間が約20〜約90%低減する、プロセス。
(項目14)
項目11に記載のプロセスであって、前記反応温度が約80〜約215℃の範囲にある、プロセス。
(項目15)
項目11に記載のプロセスであって、粉末状の前記水酸化金属を用いたコントロールに比べて、前記発生した泡の量が約20〜約95%低減する、プロセス。
(項目16)
項目11に記載のプロセスであって、前記グリース組成物が非バッチ・プロセスにより造られる、プロセス。
(項目17)
項目11に記載のプロセスであって、NLGIグレードが1−6のいずれかについて、水酸化金属グラムあたりおよび約2〜約30個の炭素原子を含むカルボン酸グラムあたりグリース収率が向上し、その結果、粉末状の前記水酸化金属を用いた同じ化学物質から造られた同じグレードのコントロールに比べて等価な収率を達成するためには、少なくとも約8重量%少ない前記水酸化金属および少なくとも約8重量%少ないカルボン酸を必要とする、プロセス。
(項目18)
グリース・シックナーを製造するプロセスであって、
(a)約20ナノメーター〜約2マイクロメーターの範囲の数平均粒子サイズを有する水酸化金属の安定分散体と、
(b)約10未満のHLBを有する界面活性剤と、
(c)約2〜約30個の炭素原子を含むカルボン酸であって、
前記カルボン酸は約2〜約30個の炭素原子を含み、該カルボン酸はモノカルボン酸、ジカルボン酸およびこれらの混合物から選択され、随意に、該カルボン酸は、さらに、ヒドロキシル基、1〜約5個の炭素原子のアルコールと該カルボン酸の反応により形成されたエステル、およびこれらの混合物から選択された基により置換される、カルボン酸と、
(d)溶媒と、
の反応生成物を含む、プロセス。
(項目19)
項目18に記載のプロセスであって、グリース・シックナーの形成後、前記溶媒を潤滑粘度のオイルと交換し、該溶媒を蒸発、ろ過またはそれらの併用により除去する、プロセス。
(項目20)
項目18に記載のプロセスであって、前記溶媒は、水、アセトン、1〜約5個の炭素原子を含む低級アルコール、1気圧において150℃未満の沸点を有するその他のヒドロカルビルおよびそれらの混合物からなる群から選択される、プロセス。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、水酸化リチウムおよび水酸化リチウム1水和物のエマルジョンの温度プログラムされた熱分析である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(発明の詳細な説明)
グリース組成物は、下記成分の反応生成物を含むことが判明している。
【0022】
(a)約20ナノメーター〜約2マイクロメーターの範囲の数平均粒子サイズを有する水酸化金属の安定分散体と、
(b)約10未満のHLBを有する界面活性剤と、
(c)約2〜約30個の炭素原子を含むカルボン酸であって、
このカルボン酸は、モノカルボン酸、ジカルボン酸およびこれらの混合物から選択され、随意に、さらに、ヒドロキシル基、1〜約5個の炭素原子のアルコールと前記カルボン酸の反応により形成されたエステル、およびこれらの混合物から選択された基により置換されるカルボン酸と、
(d)潤滑粘度のオイル。
【0023】
(水酸化金属)
水酸化金属の安定分散体は、本明細書では、少なくとも1日、好適には1週間、より好適には少なくとも2ヶ月、より一層好適には少なくとも6ヶ月、最も好適には1年以上懸濁液にほぼ留まっている(コロイドとして安定に)分散した微細な水酸化金属の粒子を包含することを意味している。
【0024】
本発明の水酸化金属の安定分散体の数平均粒子サイズは、約20ナノメーター〜約2マイクロメーター、好適には約40ナノメーター〜約1.5マイクロメーター、より好適には約40ナノメーター〜約1マイクロメーター、より一層好適には約75ナノメーター〜約1マイクロメーター、より一層好適には約100〜約600ナノメーター、より一層好適には約150〜約550ナノメーター、最も好適には約200〜約500ナノメーターの範囲にある。
【0025】
本発明の水酸化金属の安定分散体は、通常、グリース組成物の約1〜約50、好適には約5〜約40、より好適には約8〜約30重量%にて存在する。
【0026】
水酸化金属は、1価、2価または3価金属またはそれらの混合物である。好適には、水酸化金属はアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルミニウムまたはそれらの混合物である。より好適には、水酸化アルカリ金属は、リチウム、ナトリウム、カリウム、アルカリ土類金属は、カルシウム、マグネシウムまたはバリウムである。最も好適には、水酸化金属は、水酸化リチウム1水和物、水酸化カルシウムまたはそれらの混合物である。1つの実施形態では、水酸化金属は、水酸化リチウム1水和物であり、且つ固体または水溶液でありうる。ただし、最初のエマルジョンを作るには水溶液が好ましい。1つの実施形態では、水酸化金属は水酸化カルシウムである。1つの実施形態では、水酸化金属は水酸化カルシウムを含まない。水酸化金属は、単独または組み合わせて使用することができる。
【0027】
水酸化金属は乳化後、一般に、乾燥される。本発明の水酸化金属は、M(OH)1−3.xHOの状態にあり、式中Mは1価、2価または3価金属イオンであり、「1−3」は1、2、または3ヒドロキシル基を意味し、xは0〜1の範囲の分数である。x=1の場合、水酸化金属は1水和物の状態にある。xがゼロより大きく、1より小さい場合、水酸化金属は部分的、ほぼまたは完全に無水である。xが約0.9〜約0.5、好適には約0.85〜約0.55、最も好適には約0.6〜約0.7の範囲にある場合水酸化金属は部分的に無水である。xが約0.5より小さい場合、好適には約0.3より小さい場合、より一層好適には約0.1より小さいが約0.02より大きい場合は、水酸化金属はほぼ無水である。xが約0.02〜約0の範囲、好適にはxが約0.01〜約0の範囲、より一層好適にはxが約0である場合、水酸化金属は完全に無水である。最も好適には、水酸化金属はほぼまたは完全に無水である。
【0028】
本発明のオイル中に存在する水酸化金属の分散体の量は、グリースの製造にかなり濃縮された水酸化金属分散体が使われるならば、グリースの重量に基づいて、一般に約0.5〜約20、好適には約1〜約15、より好適には約3〜約12、最も好適には約4〜約10重量%の範囲にある。水酸化金属は、分散相の量に影響を及ぼす種々の条件により分散体の約1または約5重量%〜約60重量%を占めることができる。オイル中への水酸化金属溶液の複乳化とそれに続く乾燥により、水酸化金属の濃度を上げることができる。分散体もオイルを用いて希釈することができる。後でリストに載せたグリースの全成分は、特に指定しない限り、グリースの重量をベースにしている。
【0029】
先行技術で使われる水酸化リチウムは、通常、商業的に利用できる固体1水和物である。この固体は、取り扱う際にダストを発生し、このダストは微量でも、息苦しくしたり、非常に刺激的である。リチウム・グリースを連続的または非連続的に製造する場合、大量の水酸化リチウム1水和物が使われ、この刺激的ダストは取扱い操作や混合操作の間に環境上有害である。さらに、水酸化リチウム1水和物の大量の粉末は使用者がこぼして廃棄物になったり、呼吸器が刺激を受ける可能性がある。また、反応機に装入する間にこぼして廃棄物を生じることもあり、その結果装入量が不足して総金属石鹸濃度が所望の仕様に満たないようなグリース組成物を造ることになる。
【0030】
数平均粒子サイズが約2または5マイクロメーターより大きい先行技術の水酸化リチウム1水和物の顆粒または粉末は、水と接触したり、または湿度の高い所に貯蔵した場合に、凝集したり固着する傾向がある。このような固着は、鹸化反応の間に潤滑油の基本原料と最初に接触することができる露出表面積を低減させ、そのために反応が遅くなる。水酸化リチウムの固着が生じたり、反応条件が厳しくなると、生産量が低下したり、エネルギーの使用量が増加したり、反応時間が延びたりすることになる。現在の連続的または非連続的プロセスは、泡を多量に生じる傾向もある。
【0031】
本明細書で使われている用語「ヒドロカルビル置換基」または「ヒドロカルビル基」は、当業者にはよく知られているその用語の普通の意味で使われている。具体的には、この用語は、その分子の残りに直接結合した炭素原子および主として炭化水素性を有する基を指している。ヒドロカルビル基の例には、炭化水素置換基、すなわち、脂肪族(例えば、アルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えば、シクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、および芳香族、脂肪族、脂環式の各置換芳香族並びに環状置換基、ここで、環は分子の別の部分により完結している(例えば、2つの置換基が合体して1つの環を形成している)置換炭化水素置換基、すなわち、本発明の場合、置換基の優勢な炭化水素性を変えない非炭化水素基を含む置換基(例えば、ハロ(特にクロロおよびフロロ),ヒドロキシ,アルコキシ,メルカプト,アルキルメルカプト,ニトロ,ニトロソ,およびスルホキシ)、ヘテロ置換基、すなわち、炭化水素性を有しながら、本発明の場合、炭素原子以外の原子を含まなければ、炭素原子からなる環または鎖において炭素以外の原子を含む置換基がある。ヘテロ原子には、硫黄,酸素,窒素があり、さらに、ピリジル,フリル,チエニルおよびイミダゾリルなどの置換基を包含する。一般に、2個程度、好適には1個程度の非炭化水素置換基が、ヒドロカルビル基の10個の炭素原子毎に存在する。代表的には、ヒドロカルビル基には非炭化水素基は存在しない。
【0032】
(界面活性剤)
乾燥エマルジョンまたは分散体の界面活性剤は、乳化剤および/または分散体特性を有し、約10未満、望ましくは約1〜約8、最も好適には約2.5〜約6の範囲の親水・親油性バランス(HLB)を有するイオン性または非イオン性化合物を含む。個々のHLB値が約1〜約8、または約2.5〜約6の範囲を外れていても、界面活性剤の最終ブレンドの組成物がこれらの範囲内にあれば、これらの界面活性剤の組み合わせを使用できることは当業者であれば当然のことである。最終グリースにおいてオイル中で水酸化金属分散体を形成する界面活性剤の量は、水酸化金属の重量に基づいて約1または約2重量%乃至グリース中の水酸化金属成分に基づいて約100または約200重量%である。
【0033】
本発明に適したこれらの界面活性剤の例は、((McCutcheon’s Emulsifiers and Detergents),1993年,北米および国際版)で開示されている。一般例には、アルカノールアミド類、アルキルアリールスルホン酸塩、アミンオキサイド類、アルキレンオキサイド反復ユニットを有するブロックコポリマーを含むポリ(オキシアルキレン)化合物(例えば、Pluronic(商標))、カルボキシル化アルコール・エトキシレート類、エトキシル化アルコール類、エトキシル化アルキルフェノール類、エトキシル化アミン類およびアミド類、エトキシル化脂肪酸類、エトキシル化脂肪族エステル類およびオイル、脂肪族エステル類、グリセロール・エステル類、グリコール・エステル類、イミダゾリン誘導体、レシチンおよび誘導体、リグニンおよび誘導体、モノグリセリドおよび誘導体、オレフィン・スルホン酸塩、ホスフェート・エステル類および誘導体、プロポキシル化およびエトキシル化脂肪酸類またはアルコール類またはアルキルフェノール類、ソルビタン誘導体、スクロース・エステル類および誘導体、サルフェート類またはアルコール類またはエトキシル化アルコール類または脂肪族エステル類、ポリイソブチレンこはく酸イミドおよび誘導体、ドデシルおよびトリデシルベンゼン類または縮合ナフタレン類または石油のスルホン酸塩、スルホこはく酸塩および誘導体、およびトリデシルおよびドデシル・ベンゼンスルホン酸類がある。
【0034】
1つの実施形態では、本発明の界面活性剤は、アルキル化ベンゼンスルホン酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である。アルキル基には、8〜20個、最も好適には10〜15個の炭素原子が含まれている。最も好適には、アルキル基はドデシルである。アルカリ金属はリチウム、カリウムまたはナトリウムであり、一方、アルカリ土類金属はカルシウムまたはマグネシウムである。最も好適には、金属はカルシウムである。
【0035】
界面活性剤は、さらに、ポリオレフィンの誘導体を含むことができる。代表的なポリオレフィン類には、ポリイソブテン、ポリプロピレン、ポリエチレン、イソブテンおよびブタジエンから導かれたコポリマー、イソブテンおよびイソプレンから導かれたコポリマー、またはこれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0036】
1つの実施形態では、ポリオレフィンは、数平均分子量が少なくとも約250、300、500、600、700、または800乃至5000以上、しばしば約3000、2500、1600、1300、または1200までのポリイソブテンの誘導体である。1つの実施形態では、ポリオレフィンは無水マレイン酸と反応して無水こはく酸またはこはく酸誘導体を形成する(以後、「琥珀(succinic)」は簡単に「こはく(succan)」とする)。無水こはく酸またはこはく酸誘導体は、さらに、アルカリ金属、アルコール、アルカノール・アミン、またはアミンなどの極性基と反応して界面活性剤上に比較的大きな親水性基を形成することができる。この型の界面活性剤は、米国特許第4,708,753号などの特許でより詳細に開示されている。通常、こはく酸誘導体の製造に使われる5重量%未満のポリイソブチレンの
【0037】
【化1】

は約250未満であり、より頻繁には、こはく酸誘導体の製造に使われるポリイソブチレンの
【0038】
【化2】

は少なくとも約800である。こはく酸誘導体の製造に使われるポリイソブチレンは、好適には、少なくとも約30%、より頻繁には少なくとも約60%の末端ビニリデン基を含み、より好適には少なくとも約75%または約85%の末端ビニリデン基を含む。こはく酸誘導体の製造に使われるポリイソブチレンの多分散性、すなわち、
【0039】
【化3】

は約5より大きく、より頻繁には約6〜約20である。
【0040】
1つの実施形態では、ポリイソブチレンは無水こはく酸で置換され、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量は約1,500〜約3,000、1つの実施形態では約1,800〜約2,300、1つの実施形態では約700〜約1300、1つの実施形態では約800〜約1000であり、前記第1のポリイソブチレン置換無水こはく酸は約1.3〜約2.5、および1つの実施形態では約1.7〜約2.1で特徴づけられる。1つの実施形態では、ヒドロカルビル置換カルボン酸アシル化剤はポリイソブチレン置換無水こはく酸であり、ポリイソブチレン置換基の数平均分子量は約1,500〜約3,000、1つの実施形態では約1,800〜約2,300であり、前記第1のポリイソブチレン置換無水こはく酸は、ポリイソブチレン置換基の等価な重量あたり、約1.3〜約2.5、および1つの実施形態では約1.7〜約2.1、1つの実施形態では約1.0〜約1.3、および1つの実施形態では約1.0〜約1.2個のこはく酸基で特徴づけられる。
【0041】
1つの実施形態では、界面活性剤はペンタエリスリトールとのポリイソブテニル−ジヒドロ−2,5−フランジオン・エステルまたはそれらの混合物である。本発明の1つの実施形態では、ポリイソブチレン・こはく酸イミドまたはその誘導体などのポリイソブチレンこはく酸誘導体である。
【0042】
ポリイソブチレンこはく酸のその他の代表的誘導体には、加水分解されたエステルやジ酸がある。ポリイソブチレンこはく酸誘導体は、水酸化金属分散体の製造に好適である。ポリイソブチレンこはく酸誘導体の大きな基は、本明細書で引用により援用されている米国特許第4,708,753号で教示されている。
【0043】
(モノカルボン酸またはポリカルボン酸)
カルボン酸は、モノ−またはポリ−カルボン酸、分岐脂環式、または直鎖、飽和または不飽和、モノ−またはポリ−ヒドロキシ置換または非置換カルボン酸、酸クロライドまたは約1〜約5個の炭素原子を含むアルコールなどのアルコールと前記カルボン酸のエステルを組み合わせたものであればよい。このカルボン酸は、約2〜約30、好適には約4〜約30、より好適には約8〜約27、より一層好適には約12〜約24および最も好適には約16〜約20個の炭素原子を有する。1つの実施形態では、このカルボン酸はモノカルボン酸またはそれらの混合物である。1つの実施形態では、このカルボン酸はジカルボン酸またはそれらの混合物である。1つの実施形態では、このカルボン酸はアルカン酸である。1つの実施形態では、このカルボン酸はジカルボン酸および/またはポリカルボン酸およびモノカルボン酸の混合物であり、通常、約1:99〜99:1、または望ましくは10:90〜50:50の重量比にある。ジカルボン酸およびポリカルボン酸は、モノカルボン酸より高価であり、その結果、混合物を用いる大抵の工業プロセスは、好適にはジカルボン酸および/またはポリカルボン酸対モノカルボン酸の重量比は、約15:85〜40:60、より望ましくは20:80〜35:65、より好適には25:75〜35:65の範囲にある。多くの商業的製造者は30:70のブレンドを用いている。
【0044】
この炭素原子数を有するモノカルボン酸類は、一般に、これらの塩の形に転化された場合、約10以上、好適には約12以上および最も好適には約15以上のHLB(親水・親油性バランス)と関係づけられる。一般に、約10以上のHLBは、親油相(油相)への引力に比べて水相(親水性)への顕著な引力と関係づけられる。
【0045】
1つの好適な実施形態では、カルボン酸類はヒドロキシ置換または非置換のアルカン酸類である。通常、カルボン酸類は、約2〜約30、好適には約4〜約30、より好適には約12〜約24および最も好適には約16〜約20個の炭素原子を有する。好適には、このカルボン酸は9−ヒドロキシ、10−ヒドロキシまたは12−ヒドロキシ・ステアリン酸などのヒドロキシ・ステアリン酸またはこれらの酸のエステルであり、最も好適には12−ヒドロキシ・ステアリン酸である。
【0046】
本発明に適したその他のカルボン酸類には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、アラキン酸、ベヘン酸およびリグノセリン酸がある。
【0047】
本発明に適した不飽和カルボン酸類には、ウンデシレニン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、ガドレイン酸、エライジン酸、シス−エイコセン酸、エルシン酸、ネルボニン酸、2,4−ヘキサジエン酸、リノレイン酸、12−ヒドロキシ・テトラデカン酸、10−ヒドロキシ・テトラデカン酸、12−ヒドロキシ・ヘキサデカン酸、8−ヒドロキシ・ヘキサデカン酸、12−ヒドロキシ・イコサニン酸、16−ヒドロキシ・イコサニン酸、11,14−エイコサジエン酸、リノレニン酸、シス−8,11,14−エイコサトリエン酸、アラキドニン酸、シス−5,8,11,14,17−エイコサペンテン酸、シス−4,7,10,13,16,19−ドコサヘキセン酸、オール−トランス−レチン酸、リシノレイン酸、ラウロレイン酸、エレオステアリン酸、リカニン酸、シトロネリン酸、ネルボニン酸、アビエチン酸、およびアブシジン酸がある。最も好適な酸は、パルミトレイン酸、オレイン酸、リノレイン酸、リノレニン酸、リカニン酸およびエレオステアリン酸である。
【0048】
ポリカルボン酸、特にジカルボン酸が複雑なグリースに存在し、これらのカルボン酸の適切な例には、イソオクタンジオン酸、オクタンジオン酸、ノナンジオン酸(アゼライン酸)、デカンジオン酸(セバシン酸)、ウンデカンジオン酸、ドデカンジオン酸、トリデカンジオン酸、テトラデカンジオン酸、ペンタデカンジオン酸およびこれらの混合物があるが、これらに限定されない。1つの実施形態では、ポリカルボン酸はノナンジオン酸(アゼライン酸)またはそれらの混合物である。1つの実施形態では、ポリカルボン酸はデカンジオン酸(セバシン酸)またはそれらの混合物である。
【0049】
本発明において存在するモノ−またはポリ−カルボン酸の量は、通常、グリース組成物の約0.1〜約30、好適には約3〜約30、より好適には約3〜約25、より一層好適には約4〜約20、および最も好適には約5〜約18重量%の範囲にある。
【0050】
存在する場合、ポリカルボン酸の量は、通常、約0.1〜約15、好適には約0.3〜約12、より好適には約0.7〜約8、および最も好適には約1〜約6重量%の範囲で存在する。1つの実施形態では、ポリカルボン酸は、グリース組成物の約1.7重量%である。1つの実施形態では、ポリカルボン酸は、グリース組成物の約3重量%である。1つの実施形態では、ポリカルボン酸は、グリース組成物の約4重量%である。
【0051】
(潤滑粘度のオイル)
本発明の潤滑組成物および機能性流体は、天然および合成潤滑油およびそれらの混合物を含む多様な潤滑粘度のオイルをベースにしている。合成オイルは、ガスを液体へ転化する反応から形成されたオイルを含むFischer−Tropsch反応により製造される。
【0052】
本発明の潤滑油および機能性流体を製造する場合に有用な天然オイルには、動物油および植物油(例えば、ひまし油,ラード油)並びに液状石油オイルおよびパラフィン、ナフテンまたはパラフィン−ナフテン混合型の溶媒処理または酸処理鉱物性潤滑油がある。石炭または頁岩から誘導された潤滑粘度のオイルも有用である。合成潤滑油は有用であり、合成潤滑油には、重合および共重合オレフィン(例えば、ポリブチレン,ポリプロピレン,プロピレン−イソブチレン・コポリマー)、ポリ(1−ヘキセン)、ポリ(1−オクテン)、ポリ(1−デセン)、およびこれらの混合物などの炭化水素油、アルキルベンゼン類(例えば、ドデシルベンゼン,テトラデシルベンゼン,ジノニルベンゼン,ジ−(2−エチルヘキシル)−ベンゼン)、ポリフェニル類(例えば、ビフェニル,ターフェニル,アルキル化ポリフェニル)、アルキル化ジフェニル・エーテル類、およびアルキル化ジフェニル・サルファイド類およびこれらの誘導体、類似体および同族体がある。
【0053】
末端ヒドロキシル基がエステル化およびエーテル化により変性されているアルキレン・オキサイド・ポリマーおよび共重合体およびそれらの誘導体は、使用可能な別種の既知の合成潤滑油である。これらの例には、エチレンオキサイドまたはプロピレンオキサイドの重合により造られたオイル、これらのポリオキシアルキレン・ポリマーのアルキルおよびアリール・エーテル類(例えば、数平均分子量1000のメチル−ポリイソプロピレン・グリコールエーテル、分子量500−1000のポリエチレングリコールのジフェニルエーテル,分子量1000−1500のポリプロピレングリコールのジエチルエーテル)またはこれらのモノ−およびポリカルボン酸エステル類、例えば、テトラエチレン・グリコールの酢酸エステル類、混合C3−8脂肪酸エステル類、またはC13オキソ酸ジエステル類がある。
【0054】
使用可能な適切な別種の合成潤滑油には、ジカルボン酸類(例えば、フタル酸,こはく酸,アルキルこはく酸類,アルケニルこはく酸類,マレイン酸,アゼライン酸,スベリン酸,セバシン酸,フマル酸,アジピン酸,リノレイン酸ダイマー,マロン酸,アルキルマロン酸類,およびアルケニルマロン酸類)と種々のアルコール類(例えば、ブチルアルコール,ヘキシルアルコール,ドデシルアルコール,2−エチルヘキシル・アルコール,エチレングリコール,ジエチレングリコール・モノエーテル,およびプロピレングリコール)のエステル類がある。これらのエステル類の具体的な例には、ジブチル・アジペート、ジ−(2−エチルヘキシル)セバケート、ジ−n−ヘキシル・フマレート、ジオクチル・セバケート、ジイソオクチル・アゼレート、ジイソデシル・アゼレート、ジオクチル・フタレート、ジデシル・フタレート、ジエイコシル・セバケート、リノレイン酸ダイマーの2−エチルヘキシル・ジエステル、および2モルのテトラエチレングリコールと1モルのセバシン酸および2モルの2−エチルヘキサン酸との反応により形成された複雑なエステルがある。
【0055】
合成油として有用なエステル類には、C5〜C12モノカルボン酸およびネオペンチル・グリコール、トリメチロール・プロパン、およびペンタエリスリトールなどのポリオール、またはジペンタエリスリトールおよびトリペンタエリスリトールなどのポリオール・エーテル類もある。
【0056】
ポリアルキル−、ポリアリール−、ポリアルコキシ−、またはポリアリールオキシ−シロキサン油などの珪素ベースのオイルおよびシリケート・オイルには有用な別種の合成潤滑油(例えば、テトラエチル・シリケート,テトライソプロピル・シリケート,テトラ−(2−エチルヘキシル)シリケート,テトラ−(4−メチルヘキシル)シリケート,テトラ−(p−tert−ブチルフェニル)シリケート,ヘキシル−(4−メチル−2−ペントキシ)ジシロキサン,ポリ(メチル)シロキサン,およびポリ−(メチルフェニル)シロキサン)がある。その他の合成潤滑油には、りん含有酸類の液状エステル類(例えば、トリクレジル・ホスフェート,トリオクチル・ホスフェート,およびデカンホスホン酸のジエチルエステル)、およびポリマー性テトラヒドロフラン類がある。
【0057】
本明細書の上で開示された型の未精製、精製および再精製オイル、天然か合成(並びにこれらのいずれかの2つ以上の混合物)は、本発明の潤滑油として使用することができる。未精製オイルは、天然または合成資源から、さらなる浄化処理なしに直接得られたオイルである。例えば、レトルト操作から直接得られた頁岩油は、一次蒸留から直接得られた石油オイルまたはエステル化プロセスから直接得られたエステルオイルおよびさらなる処理無しに使われたオイルは、未精製オイルになる。精製オイルは、1つ以上の特性を改良するために1つ以上の浄化工程でさらに処理されたことを除くと未精製油に類似している。溶媒抽出、二次蒸留、酸または塩基抽出、ろ過、固体抽出、などの多くのこの種の浄化技法が当業者に知られており、再精製オイルは、すでに使われ、現在使用している精製油に適用された精製油を得るために使われたプロセスに類似したプロセスにより得られる。この種の再精製オイルは、再生または再処理オイルとしても知られ、消費された添加剤およびオイルの分解生成物の除去に関する技法により追加処理されることが多い。
【0058】
潤滑粘度のオイルは、米国石油協会(API)ベースオイル互換性指針で指定された通りに定義することもできる。5つの群のベースオイルは下記の通りである。
【0059】
【化4】

群I、II、およびIIIは鉱物油ベース原料である。好適には、潤滑粘度のオイルは、群I、II、III、IV、またはVのオイルまたはそれらの混合物である。より好適には、潤滑粘度のオイルは、群I、IIまたはIIIのオイルまたはそれらの混合物である。1つの実施形態では、潤滑粘度のオイルは群Iである。1つの実施形態では、潤滑粘度のオイルは群IIIである。
【0060】
潤滑粘度のオイルの量は、50〜96.5、好適には60〜94、より好適には68〜90および最も好適には72〜86重量%の範囲で存在する。
【0061】
(随意のグリース添加剤)
(金属不活性化剤)
潤滑油組成物において有用な金属誘導体は、当該技術分野で知られており、且つこれらの金属誘導体には、ベンゾトリアゾール類、ベンズイミダゾール、2−アルキルジチオベンズイミダゾール類、2−アルキルジチオベンゾチアゾール類、2−(N,N−ジアルキルジチオカルバモイル)−ベンゾチアゾール類、2,5−ビス(アルキル−ジチオ)−1,3,4−チアジアゾール類、2,5−ビス(N,N−ジアルキルジチオカルバモイル)−1,3,4−チアジアゾール類、2−アルキルチオ−5−メルカプト・チアジアゾール類またはこれらの混合物がある。
【0062】
特に好適な種類の金属不活性化剤はベンゾトリアゾール類である。このベンゾトリアゾール化合物には、次のような環の位置、1−、2−、4−、5−、6−または7−ベンゾトリアゾール類の1つ以上におけるヒドロカルビル置換体がある。ヒドロカルビル基には、1〜約30個の炭素、より好適には1〜約15個の炭素、より一層好適には1〜約7個の炭素が含まれ、最も好適には金属不活性化剤は5−メチルベンゾトリアゾールである。
【0063】
金属不活性化剤は、0〜約5重量%の範囲で存在する。より好適には、金属不活性化剤は、約0.0002〜約2重量%の範囲で存在する。最も好適には、金属不活性化剤は、約0.001〜約1重量%の範囲で存在する。
【0064】
(酸化防止剤)
本発明に適した酸化防止剤には、硫化フェノレート類、りん硫化テルペン類、硫化エステル類、芳香族アミン類、立体障害のあるフェノール類を含む種々の型の化学物質がある。
【0065】
特に好適な酸化防止剤は、立体障害のあるアルキル化フェノール類である。通常、アルキル化基は、1〜約24個の炭素原子、好適には約4〜約18個の炭素原子、最も好適には約4〜約12個の炭素原子を含む、それぞれ、分岐しているかまたは直鎖アルキル基である。アルキル化基は、直鎖か分岐鎖かのいずれかであり、一般に、分岐鎖が好ましい。好適には、フェノールは2個のt−ブチル基を含むブチル置換フェノールである。t−ブチル基が2,6−位置を占める場合は、フェノールは立体障害がある。さらに、フェノール類は、ヒドロカルビル基、またはこの種の2つの芳香族基の間に橋かけ基の形態で追加の置換を有することができる。パラ位置の橋かけ基には、−CH−(メチレン橋)および−CHOCH−(エーテル橋)がある。
【0066】
別種の好適な酸化防止剤はジフェニルアミン類である。これらの化合物の化学式は次式で表すことができる。
【0067】
【化5】

式中、RおよびRは、それぞれ、水素またはアリールアルキル基または1〜約24個の炭素原子を含む直鎖または分岐アルキル基であり、少なくとも1つの芳香族環にアリールアルキル基または直鎖または分岐アルキル基が含まれるならば、hは、それぞれ、0、1、2、または3である。好適には、RおよびRは、約4〜約20個の炭素原子を含むアルキル基である。好適な実施形態は、モノ−またはジ−ノニル化ジフェニルアミンなどのアルキル化ジフェニルアミンである。
【0068】
酸化防止剤は、約0〜約12重量%の範囲で存在する。より好適には、酸化防止剤は、約0.1〜約6重量%の範囲で存在する。最も好適には、酸化防止剤は、約0.25〜約3重量%の範囲で存在する。
【0069】
(耐磨耗剤)
潤滑剤は、さらに、耐磨耗剤を含むことができる。有用な耐磨耗剤には、金属チオホスフェート、特に亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、燐酸エステルまたはその塩、ホスファイト、およびりん含有カルボン酸エステル、エーテル、またはアミドがあるが、これらに限定されない。耐磨耗剤として適切なりん含有化合物のより詳細な説明および例は欧州特許第612839号に記載されている。
【0070】
(さび止め剤)
さび止め剤は当該技術分野で知られており、さび止め剤にはカルシウム・スルホネートまたはマグネシウム・スルホネートなどの金属スルホネート類、オクチルアミン・オクタノエートなどのカルボン酸類のアミン塩類、ドデセニルこはく酸または無水物およびオレイン酸などの脂肪酸とポリアミン、例えば、トリエチレンテトラミンなどのポリアルキレン・ポリアミンの縮合生成物、およびアルケニル基に8〜24個の炭素原子が含まれているアルケニルこはく酸とポリグリコール類などのアルコール類との半エステル類がある。
【0071】
さび止め剤は、約0〜約4重量%の範囲で存在する。より好適には、さび止め剤は、約0.02〜約2重量%の範囲で存在する。最も好適には、さび止め剤は、約0.05〜約1重量%の範囲で存在する。
【0072】
(粘度調節剤)
粘度調節剤は既知であり、且つ通常は、スチレン−ブタジエン・ゴム類、エチレン−プロピレン・コポリマー、ポリイソブテン、水素化スチレン−イソプレン・ポリマー、水素化ラジカルイソプレン・ポリマー、ポリメタクリレート酸エステル類、ポリアクリレート酸エステル類、ポリアルキルスチレン類、アルケニルアリール共役ジエンコポリマー、ポリオレフィン類、ポリアルキルメタクリレート類、無水マレイン酸−スチレン・コポリマーのエステル類およびそれらの混合物である。
【0073】
一部のポリマーも、分散特性を示すので、分散体粘度調節剤(しばしばDVMと呼ばれる)としても記載される。通常、この型のポリマーには、無水マレイン酸とアミンの反応生成物により機能化されるポリオレフィン類、例えば、エチレン−プロピレン・コポリマーがある。別種のポリマーは、アミンにより機能化されるポリメタクリレートである(この型もメタクリレート重合において窒素含有コモノマーを組み込むことにより造ることができる)。
【0074】
粘度調節剤は、約0〜約10重量%の範囲で存在する。より好適には、さび止め剤は約0.5〜約7重量%の範囲で存在する。最も好適には、さび止め剤は約1〜約5重量%の範囲で存在する。
【0075】
(極圧添加剤)
オイルに溶解する極圧(EP)添加剤には、硫黄または塩素化硫黄EP添加剤、塩素化炭化水素EP添加剤、またはりんEP添加剤、またはそれらの混合物がある。この種のEP添加剤の例は、塩素化ワックス、ベンジルジサルファイド、ビス−(クロロベンジル)ジサルファイド、ジブチル・テトラサルファイド、硫化まっこう鯨油、オレイン酸の硫化メチルエステル、硫化アルキルフェノール、硫化ジテルペン、硫化テルペン、および硫化ディールス−アルダー付加物などの有機サルファイド類およびポリサルファイド類、テレビン油またはメチルオレエートと硫化りんの反応生成物などの硫化りん炭化水素類、ジヒドロ炭素およびトリヒドロ炭素ホスファイト、すなわち、ジブチル・ホスファイト、ジヘプチル・ホスファイト、ジシクロヘキシル・ホスファイト、ペンチルフェニル・ホスファイト、ジペンチルフェニル・ホスファイト、トリデシル・ホスファイト、ジステアリル・ホスファイトおよびポリプロピレン置換フェノール・ホスファイトなどのりん含有エステル類、亜鉛ジオクチルジチオカーバメートなどの金属チオカーバメート類、および亜鉛ジシクロヘキシル・ホスホロジチオエートおよびホスホロジチオイック酸の亜鉛塩の組み合わせなどのバリウム・ヘプチルフェノール・ジ酸が使える。
【0076】
油溶性の極圧添加剤は約0〜約10重量%の範囲で存在する。より好適には、極圧添加剤は約0.25〜約5重量%の範囲で存在する。最も好適には、極圧添加剤は約0.5〜約2.5重量%の範囲で存在する。
【0077】
本発明は、さらに、下記物質を任意の順番で混合することを含むグリース組成物を製造する方法を提供する。
【0078】
(a)油中に水酸化金属および溶媒が存在するエマルジョンから溶媒を除去して造られた約0.5〜約20重量%の範囲で存在する水酸化金属の安定分散体と、
(b)約2〜約30個の炭素原子を含むカルボン酸であって、
このカルボン酸は、モノカルボン酸、ポリカルボン酸およびこれらの混合物から選択され、随意に、このカルボン酸は、さらに、ヒドロキシル基、エステル、およびこれらの混合物から選択された基により置換され、約0.1〜約30重量%の範囲で存在するカルボン酸と、
(c)混合物を得るように約50〜約96.5重量%の範囲で存在する潤滑粘度のオイルであって、前記混合物は鹸化工程でさらに処理されるオイルと、
(d)随意に、所望の粘度を付与するために加えられる残りの量の潤滑粘度のオイル。
【0079】
本発明は、さらに、下記反応生成物を含むグリース・シックナーを製造するプロセスを提供する。
【0080】
(a)約20ナノメーター〜約2マイクロメーターの範囲の数平均粒子サイズを有する水酸化金属の安定分散体と、
(b)約10未満のHLBを有する界面活性剤と、
(c)約2〜約30個の炭素原子を含むカルボン酸であって、
このカルボン酸は、モノカルボン酸、ポリカルボン酸およびこれらの混合物から選択され、随意に、このカルボン酸は、さらに、ヒドロキシル基、エステル、およびこれらの混合物から選択された基により置換されるカルボン酸と、
(d)溶媒。
【0081】
この溶媒は、固体シックナーの形成後潤滑粘度のオイルと交換され、この溶媒は、蒸発、ろ過またはこれらの併用により除去することができる。本発明の水酸化金属乾燥分散体を形成するのに適した溶媒には、水(種々の純度の水、例えば、蒸留水を含む)、アセトン、低級アルコール類、および1気圧において150℃未満、より望ましくは100℃未満の沸点を有するその他のヒドロカルビルがある。通常、低級アルコール類は、1〜約5個の炭素原子、好適には1〜約3個の炭素原子を有する。代表的な例には、メタノール、エタノール、プロパン−1−オール、プロパン−2−オールおよびプロップ−1−エノールがある。いくつかの例では、炭素鎖は、ハロゲンや追加のヒドロキシ基のような追加の置換基を有することができる。
【0082】
前記水酸化金属の乾燥分散体の溶媒含有量は、水酸化金属の重量に基づいて約0.1〜約20、好適には約0.2〜約10、最も好適には約0.3〜約5重量%である。
【0083】
グリース組成物を製造する前記方法は、既知の方法に比べて反応条件の厳しさを和げることができる。その結果、グリース・シックナー金属石鹸であるカルボン酸の金属塩を形成する反応温度は、約80〜約250、好適には約80〜約215、より好適には約90〜約190、より一層好適には約110〜約180および最も好適には約120〜約170℃の範囲の温度に下げることができる。1つの実施形態では、反応温度は約90〜約240℃の範囲にある。1つの実施形態では、反応温度は約110〜約230℃の範囲にある。1つの実施形態では、反応温度は約120〜約225℃の範囲にある。
【0084】
グリース組成物またはその金属塩成分を製造する前記方法では、粉末状の前記水酸化金属を用いたコントロールと比べて、反応時間は、約20〜約90、好適には約30〜約80、より好適には約35〜約70、より一層好適には約40〜約60、最も好適には約45〜約55%短縮される。当業者は、反応時間の短縮は、水酸化金属の水和度および分散相の表面積と関連していると認識しているであろう。水和度が高いほど、反応速度は遅くなる。したがって、反応時間を短縮するためには、本明細書では過度に水和した水酸化金属の存在は回避するのが好ましい。
【0085】
グリース組成物を製造する前記方法において、粉末状の前記水酸化金属を用いたコントロールと比べて、造られる泡の量は、約2〜約100、好適には約20〜約95、より好適には約30〜約90、より一層好適には約35〜約85および最も好適には約40〜約80容量%低減する。
【0086】
グリース組成物を製造する前記方法において、このプロセスは、バッチ、半連続すなわち非バッチ・プロセスのいずれかでよい。グリース組成物は、非バッチすなわち半連続プロセスを用いて造るのが好ましい。1つの実施形態では、グリース組成物は半連続プロセスを用いて造られる。
【0087】
本発明のグリース組成物を製造する方法では、粉末状の前記水酸化金属を用いた同じ化学物質から造られる同じグレードのコントロールに比べて、グリース収率は、水酸化金属グラムあたりおよび約2〜約30個の炭素原子を含むカルボン酸グラムあたり向上し、少なくとも約8、好適には少なくとも約6、より好適には少なくとも約4および最も好適には少なくとも2重量%少ない前記水酸化金属および/または前記カルボン酸を用いてNLGIグレード1−6のいずれかが製造される。
【0088】
グリース組成物のグリース・シックナーを製造する方法は、溶媒は存在するが潤滑粘度のオイルが存在しない時に達成される(シックナーを形成している間に存在する潤滑粘度のオイルを有することが望ましくない場合に、時々なされることがある)。次いで、溶媒は、除去され得るか、または潤滑粘度のオイルが溶媒と交換されて、グリースを形成し得る。
【0089】
(工業的用途)
本発明の組成物は、ほぼ唯一のモノカルボン酸を用いて造られたリチウム石鹸グリース、コンプレックス石鹸グリース、コンプレックスリチウム石鹸グリース、カルシウム石鹸グリース、低ノイズ石鹸グリース(時々、直径約2マイクロメーターより大きい残留水酸化金属粒子の欠如により特徴づけられる)、および短繊維高石鹸含有量グリースを含み、これらに限定されない多様な既知のグリースにおいて使用することができる。好適には、これらのグリースには、リチウム石鹸グリース、コンプレックス石鹸グリース、コンプレックスリチウム石鹸グリース、低ノイズ石鹸グリースおよび短繊維高石鹸含有量グリースが含まれ、これらに限定される。
【0090】
低ノイズ・グリースは既知であり、通常、ポンプや圧縮機などの回転機器の軸受けで使われる。コンプレックス石鹸グリースはよく知られており、滑らかであるかまたは粒状になっている。さらに、コンプレックスグリースには、ポリカルボン酸、通常は、ジカルボン酸が含まれている。短繊維高石鹸含有量のグリースは知られており、特殊な用途で使用することができる。
【実施例】
【0091】
次の実施例により本発明を説明する。しかし、これらの実施例は、完全なものではなく、本発明の範囲を限定する意図もない。
【0092】
(実施例1−8.2重量%の無水水酸化リチウムを用いた油中水/乾燥水酸化リチウムの製造)
約11重量%の水酸化リチウム1水和物溶液を脱イオン水を用いて製造する。この溶液を約24.4重量%のポリイソブチレン−こはく酸イミド(分子量約1550のポリイソブチレン−こはく酸をトリエチルテトラミンと反応させる)と共にWaring(商標)ブレンド装置に入れ、100℃において4.05mm/秒(cSt)である100N API群2ベースオイルに溶解するとポリイソブチレン−こはく酸イミドを形成する。混合物全体には、約6.6重量%の水酸化リチウム、約53.41重量%の脱イオン水、9重量%のポリイソブチレン−こはく酸イミドおよび約31重量%のベースオイルが含まれている。水と油相の比は約60:40である。Waring(商標)ブレンド装置を用いて、高せん断を用い出発物質を約10分間ブレンドする。この試料を約10分間冷却する。せん断プロセスは、油中水エマルジョンが造られるまで、2度以上反復する。
【0093】
油中水エマルジョンは、水含有量が1重量%未満になるように約110℃である程度の時間をかけて真空環境中でゆっくり添加する。最終生成物は、水が0重量%、試料gあたり約203mgKOHのTBN(トータル塩基数)、約8.2重量%の無水水酸化リチウムに相当する約2.4重量%のリチウムを有する。
【0094】
(実施例2−16.6重量%の無水水酸化リチウムを用いた油中水/乾燥水酸化リチウムの製造)
約19.2重量%の水酸化リチウム1水和物溶液を脱イオン水を用いて製造する。この溶液を約24.4重量%のポリイソブチレン−こはく酸イミド(分子量約1550のポリイソブチレン−こはく酸をトリエチルテトラミンと反応させる)と共にWaring(商標)ブレンド装置に入れ、100℃において4.05mm/秒(cSt)である100N API群2ベースオイルに溶解するとポリイソブチレン−こはく酸イミドを形成する。混合物全体には、約11.56重量%の水酸化リチウム1水和物、約48.44重量%の脱イオン水、9重量%のポリイソブチレン−こはく酸イミドおよび約31重量%のベースオイルが含まれている。水と油相の比は約60:40である。Waring(商標)ブレンド装置を用いて、高せん断を用い出発物質を約10分間ブレンドする。この試料を約10分間冷却する。せん断プロセスは、油中水エマルジョンが造られるまで、2度以上反復する。
【0095】
油中水エマルジョンは、水含有量が1重量%未満になるように約110℃である程度の時間をかけて真空環境中でゆっくり添加する。最終生成物は、水が0重量%、試料gあたり約325mgKOHのTBN(トータル塩基数)、約12.78重量%の無水水酸化リチウムに相当する約3.74重量%のリチウムを有する。
【0096】
(実施例3−乾燥水酸化リチウム分散体を用いたグリースの製造)
約46.17グラムの乾燥水酸化リチウム、約44.17グラムの12−ヒドロキシ・ステアリン酸および100℃で13mm/秒(cSt)の100N API群3ベースオイル約213.82グラムを、鋼鉄攪拌機、窒素導入口、水冷ガラスコンデンサーを備えたDean−Starkトラップ、および電子温度制御装置に接続した温度プローブを備えた1kgのガラス製丸底反応フラスコに入れる。フラスコの内容物は、約80℃で約500rpmにて攪拌する。石鹸が生成したら、攪拌速度を1000rpmに上げ、温度を約5℃/分の速度で約215℃に上げる。この温度を約15分間約215℃にて一定に保持する。100℃で13mm/秒(cSt)の100N API群3ベースオイル約79.5グラムを、約10分間かけて加え、温度を約188℃に下げると、反応混合物は石鹸形成により不動になる。温度が約150℃まで下がると、ここで、約161.5gの残りのオイル(100℃で13mm/秒(cSt)の100N API群3ベースオイル)を約10分かけて加える。次いで、反応物を約80℃まで下げ、かき混ぜる。
【0097】
上に記載した方法により、反応時間約105分、形成中の発泡が最小、予想された石鹸含有量が約8.3%未満、WP60=235/mmおよび滴下点が約200℃のNLGI数3のグリースが得られる。滴下点の測定方法はASTMD2265に記載されている。
【0098】
(実施例3の比較例−普通の水酸化リチウムにより造られたグリース)
約6.65gの水に溶解した約9.92グラムの水酸化リチウム、約67.6グラムの12−ヒドロキシ・ステアリン酸および100℃で13mm/秒(cSt)の100N
API群3ベースオイル約320.1グラムを、鋼鉄攪拌機、窒素導入口、水冷ガラスコンデンサーを備えたDean−Starkトラップ、および電子温度制御装置に接続した温度プローブを備えた1kgのガラス製丸底反応フラスコに入れる。フラスコの内容物を、約80℃にて約750rpmで攪拌する。約80℃で、12−ヒドロキシ・ステアリン酸が溶解すると、攪拌速度を約900rpmに上げ、温度を105℃に上げると、高度の発泡が生じる。約1℃/分の速度で温度を約125℃まで上げ、次いで、約2℃/分の速度で温度を約205℃まで上げ、約30分間205℃に保持する。温度を約215℃まで上げ、そこで100℃で13mm/秒(cSt)の100N API群3ベースオイルを約119.1g約10分かけて加える。
【0099】
温度を約188℃まで冷却すると、石鹸生成により反応混合物は不動になる。温度を約150℃まで下げ、そこで100℃で13mm/秒(cSt)の100N API群3ベースオイル約241.8gを約10分かけて加える。次いで、反応物を約80℃まで冷却する。
【0100】
上に記載した反応により、反応時間約185分、形成中の高度な発泡、石鹸含有量9.2%、WP60=228/mmおよび滴下点が約211℃のNLGI数3のグリースが得られる。滴下点の測定方法はASTMD2265に記載されている。
【0101】
(実施例4−乾燥水酸化リチウム分散体を用いたコンプレックスグリースの製造)
約4gの12−ヒドロキシ・ステアリン酸、約1.88gのアゼライン酸および約23.51gの希釈オイルを250mlのビーカーに入れ、約80℃まで加熱して酸類を溶解する。これらの酸類を溶解後、約8.80gの乾燥水酸化リチウムを加え、得られた混合物を混合してグリース状の物質を形成する。次いで、このビーカーを約180℃に約10分間加熱する。次いで、この反応物を約80℃まで冷却する。
【0102】
上に記載した反応により、形成中の発泡が少ないNLGI数2のグリースが得られる。石鹸含有量は15.9%および滴下点は約285℃を超える。
【0103】
(テスト1温度プログラムした熱分析)
約20ミリグラムの試料を試料ホルダーに入れ、TA Instruments製の2950TGAに挿入する。この試料は、窒素雰囲気中約30℃で一定重量になるまで貯蔵する。この試料は約5℃/分にて約750℃になるまで加熱すると、窒素雰囲気中で一定質量になる。
【0104】
テストした試料は、(a)水酸化リチウム1水和物、(b)真空にする前に実施例1で形成された生成物(非乾燥エマルジョン)、(c)真空後に実施例1から形成された乾燥エマルジョン、および(d)真空後に実施例2から形成された乾燥エマルジョン。熱分析の結果は、図1に示す。これらの結果は、水酸化リチウム1水和物は約126℃で約39.5重量%を失い、これは結晶水の離脱に相当することを示している。非乾燥エマルジョンは約126℃で約33重量%を失い、これは結晶水および製造プロセスから存在するその他の水の離脱に相当する。試料(c)および(d)の乾燥エマルジョンは、結晶水を失わず、試料はほぼまたは完全に無水であることを示している。
【0105】
本発明の好ましい実施形態に関連して本発明の説明を行ったが、当業者は本明細書を読むと実施形態の種々の変更形態が明らかになる。したがって、本明細書で開示された発明は、添付した特許請求の範囲の範囲に入るような変更形態を網羅する意図はない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−255004(P2010−255004A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181950(P2010−181950)
【出願日】平成22年8月16日(2010.8.16)
【分割の表示】特願2004−541475(P2004−541475)の分割
【原出願日】平成15年8月14日(2003.8.14)
【出願人】(591131338)ザ ルブリゾル コーポレイション (203)
【氏名又は名称原語表記】THE LUBRIZOL CORPORATION
【住所又は居所原語表記】29400 Lakeland Boulevard, Wickliffe, Ohio 44092, United States of America
【Fターム(参考)】