説明

シナプス後部を標的とした化学的除神経剤およびそれらの使用方法

ヒトニューロンα7 nAChRではなくヒト筋肉α1 nAChRに対し高い結合特異性および選択性を有するポリペプチドα神経毒を含む改善された化学的除神経剤が、医薬組成物および使用方法と併せて提供される。


【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
これまで神経筋障害の治療は、ほぼ例外なく、神経筋接合部のシナプス前部(すなわちニューロン)を標的とする治療薬の開発および送達に焦点を当ててきた。特に、化学的除神経剤として、様々な天然のクロストリジウム毒素が、広く調査されてきた。しかし、残念ながら、当技術分野において支持されているシナプス前治療アプローチは、ニューロン機能の多面的な性質により、骨格筋に対する所望の効果のみならず、平滑筋シグナル伝達およびインターニューロン性シグナル伝達に悪影響を及ぼし得、その結果、望ましくない副作用および毒性を生じ得る。
【0002】
ボツリヌス毒素は、特に神経筋障害治療対してのシナプス前ターゲッティングに固有の問題を示す。過去10年間にわたり、BoTox(登録商標)を含むクロストリジウムボツリヌス毒素の商業用調製は、審美的目的および臨床的目的の両方のために、化学的除神経剤として広く使用されてきた。近年、特に臨床的神経筋障害症状の治療におけるそれらの使用は、重要な平滑筋細胞機能の喪失を引き起こす毒素の漏出を理由に、FDAにより、より厳しい精査を受けている。実際、これらの分子の審美的な使用に関しての、より一般的な毒性のいくつか、例えば持続性の口内乾燥などでさえも、やはり投与部位からの毒素の漏出や、遠位部の平滑筋細胞機能抑制に起因している。加えて、ボツリヌス毒素の初回療法が奏効した多くの患者において、その後、当治療が奏効しなくなる。したがって、多くの患者において、ボツリヌス注射では症状に対しての満足のいく長期的な治療を提供できない。これらの明白な欠点にもかかわらず、なお、代替的治療戦略は現在まで開発されていない。
【0003】
動物毒液から単離された他の神経毒はシナプス後作用機序を有することが知られている。例えば、イモガイ属マリンスネイル(Conus marine snail)毒由来のα-コノペプチドは、nAChRにシナプス後性に作用することが知られている。α神経毒として知られているヘビ毒タンパク質クラスは、nAChRの競合的拮抗薬としても知られている。α神経毒は主に4個の変異型ジスルフィド結合のために高度に保存性の折りたたみを有し、60〜62残基および4個のジスルフィドを有する「短いもの」、または63〜80残基および第5ジスルフィドを有する「長いもの」のいずれかに分類される。Walkinshaw, M. D.ら Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2400-04 (1980)(非特許文献1)を参照されたい。これらの毒素はすべて筋肉型nAChRと高親和性で結合し、長鎖毒素はさらに神経細胞型nAChRのα7受容体を高親和性で認識する(Servent D.ら; Eur J Pharmacol. 393(1-3):197-204 (2000)(非特許文献2)。
【0004】
α7サブユニット含有ニューロンnAChRへの結合が増大するよう修飾された長鎖α神経毒は、特定の神経伝達抑制に最適な治療薬として示唆されている。例えば、米国特許第6,753,315号(特許文献1)を参照されたい。しかし、残念ながら、これもやはりシナプス前標的の慣習に従い、そのような拮抗薬の介在ニューロン性シグナル伝達や平滑筋活性に問題を及ぼす影響を見過ごしている。さらに、そのような拮抗薬は、α7 nAChRの分布により免疫系に有害な影響を及ぼし得る。例えば、Wangら, "Nicotinic acetylcholine receptor alpha 7 subunit is an essential regulator of inflammation," Nature 421:384-8 (2003)(非特許文献3)を参照されたい。
【0005】
筋肉除神経および麻痺における使用のために、イモガイ属マリンスネイル毒由来のα-コノペプチドが提唱されている(Oliveraらの米国特許第4,447,356号(特許文献2))。しかし、α-コノペプチドによって引き起こされる筋肉麻痺は、高い解離速度および低い生物安定性のため、わずか15〜20分しか持続しない。効果的な筋肉除神経の治療のためには、数時間または数日間持続する長期麻痺効果が望ましい。したがって、α-コノペプチドはボツリヌス毒素を用いた従来の化学的除神経の実行可能な代替法として開発されてきておらず、従来の治療的神経毒にみられるニューロンおよび平滑筋機能に対する有害な事象を低減しつつ、効果的に骨格筋麻痺を引き起こすことができる、神経筋障害を治療するための代替的治療アプローチの必要性が残る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6,753,315号
【特許文献2】米国特許第4,447,356号
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Walkinshaw, M. D.ら Proc. Natl. Acad. Sci. USA 77:2400-04 (1980)
【非特許文献2】Servent D.ら; Eur J Pharmacol. 393(1-3):197-204 (2000)
【非特許文献3】Wangら, "Nicotinic acetylcholine receptor alpha 7 subunit is an essential regulator of inflammation," Nature 421:384-8 (2003)
【発明の概要】
【0008】
本発明者らは、当技術分野において確立された慣習に反し、即時に、一過性に、および任意で部分的に骨格筋麻痺をもたらすシナプス後作用薬を開発した。化学的除神経に対するこのシナプス後アプローチは、先行技術のシナプス前アプローチ(例えば、ボツリヌス毒素の使用)に勝る多くの利点を提供する。第1に、本発明の組成物は前シナプスに作用する神経毒に比して低い毒性を有する。本明細書に記載する、シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、骨格神経筋接合部のシナプス後膜上に選択的に作用する。神経筋接合部の筋肉成分に対する選択性および骨格筋への制限は、ボツリヌス毒素などのシナプス前部に作用する神経毒と比較して、本発明の組成物の毒性を大いに低減する。第2に、シナプス前アプローチとは異なり、本明細書に記載するシナプス後化学的除神経は投与と効果の間に潜伏期を有さない。本明細書に記載するシナプス後化学的除神経は即時である。第3に、および関連して、シナプス後化学的除神経ポリペプチドの有効量を即時に決定できる。一方、シナプス前化学的除神経は遅発効果のため、有効量を即時に測定することが不可能である。第4に、シナプス後化学的除神経は持続性だが一過性の麻痺を引き起こす。シナプス後化学的除神経の効果持続時間は、持続時間の短いα-コノトキシンと、本質的に永続的に麻痺するボツリヌス毒素などの神経毒との間にある。これは非常に望ましい効果持続時間であり、頻回に再投与せずに長期麻痺を引き起こすことができ、一過性および部分的麻痺が実現可能である。さらに、本発明は、このクラスの薬剤とともに達することが可能な麻痺の持続時間を拡大する一連の可能性を有する様々なシナプス後化学的除神経剤を提供する。
【0009】
したがって、本発明は、シナプス後化学的除神経ポリペプチド類、それらの作製方法、および神経筋障害を治療するためのそれらの使用方法を提供する。本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドは、α7/4/3/2含有ヒトニューロンnAChRではなく、ヒト筋肉nAchRに選択的に結合する長鎖α神経毒と同様に短鎖α神経毒を含む。本発明のポリペプチドは、α1サブユニット含有ヒト筋肉nAchRに対してヒトα7、α3、α4、α2サブユニットのいずれかを含有するニューロンnAChRより少なくとも100倍高い親和性、より好ましくは少なくとも500倍高い親和性、さらに一層好ましくは少なくとも1000倍高い親和性を示す。本明細書に記載するように、特定のヒト受容体に対するα神経毒の親和性は、標識毒分子を用いた受容体結合検定において測定される逆平衡解離定数(1/KD)として表すことができる。
【0010】
本発明の組成物に使用するための好ましい神経毒分子および方法は、ヒト筋肉nAChRサブタイプからの遅い平衡解離速度をさらに特徴とする。本明細書に記載する解離定数は、神経毒50%が遊離して解離した分子として存在し、残りの50%が受容体に結合しているモル濃度として表す。
【0011】
本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドには、筋肉細胞機能の非永久的かつ局所的抑制、神経筋接合部の神経伝達物質効果の低減、ならびにそれによる一過性骨格筋麻痺の誘発において組成物および方法の有利な使用がある。これらの効果は、異常もしくは望ましくない筋収縮の治療において、とりわけ顔のしわの美容治療、斜視、眼瞼痙攣、様々なジストニーならびに神経筋成分を有する他の症状において有用であり、ならびに様々な整形介入など、部分的な患者の不動化を必要とする外科的セッティングにおける筋肉の一過性麻痺においても有用である。
【0012】
いくつかの実施形態では、本明細書に説明するように、本発明の組成物は、結合定数特性を有するシナプス後化学的除神経α神経毒ポリペプチドから本質的になる。本明細書で使用する「から本質的になる」およびその文法的な同等語は、一請求の範囲を特定材料ならびに主張した本発明の基本的および新規的な特徴(単数もしくは複数)に実質的に影響を及ぼさないものに限定する。例えば、ポリペプチドから本質的になる組成物は、全体として組成物の所望の活性に物質的に影響を及ぼす要素を有さなくてもよい。
【0013】
一実施形態では、本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドは長鎖α神経毒である。長鎖α神経毒は一般的に5個のジスルフィド結合を含み、必ず10個のシステイン残基を含む(参考のため、前述したWalkinshawを参照されたい)。代表的な天然長鎖α神経毒配列を本明細書の表1に提示する。一方、本発明で使用する長鎖α神経毒分子はジスルフィド結合を4個のみ有し、ループII(フィンガーII)先端の典型的なジスルフィド結合を欠失している。一実施形態では、単離された、天然で第5ジスルフィドを欠失している天然長鎖α神経毒分子を本明細書の教示による化学的除神経剤として使用し、その例を本明細書の表2に提示する。別の実施形態では、N末端から4番目と5番目のシステイン残基の間に第5ジスルフィド結合を有する天然長鎖α神経毒を修飾して、その結合を解消する。図1に示すように、長鎖α神経毒における変化していない4個のジスルフィド結合は、ループIIの先端に形成された第5ジスルフィド結合を有するβストランドスリーフィンガー様フォールドを作りだし、それは本発明の教示に従い、欠失されるかまたは解消される。
【0014】
一実施形態では、本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドは、N末端から数えて4番目および/または5番目のシステイン残基の少なくとも一方が、システインを除くアミノ酸、好ましくはメチオニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、リジン、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンからなる群から選択されるアミノ酸と、より好ましくはセリン、アラニン、トレオニンおよびグリシンを含む群から選択されるアミノ酸と置換された長鎖α神経毒である。
【0015】
一実施形態では、本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドは短鎖α神経毒であり、より好ましくは適切な宿主/ベクター系にて発現し、均一な単独の毒素組成物として精製される組換え短鎖α神経毒である。短鎖α神経毒は4個のジスルフィド結合を含み、必ず8個のシステイン残基を含む(参考のため、前述したWalkinshawを参照されたい)。代表的な天然短鎖α神経毒配列を本明細書の表3に提示する。
【0016】
本明細書の教示により単離および/もしくは修飾できる好ましい長鎖および短鎖α神経毒分子としては、コブラ(elapidae)科のヘビ由来、好ましくはコブラ属(Naja)、マンバ属(Dendroaspis)、ブラウンスネーク属(Pseudonaja)、キングコブラ属(Ophiophaghus)、アマガサヘビ属(Bungarus)、エラブウミヘビ属(Laticauda)、オーストラリアカパーヘッド属(Austrelaps)、トゲウミヘビ属(Lapemis)、ブラックスネーク属(Pseudechis)、タイガースネーク属(Notechis)、タイパン属(Oxyuranus)、ラフスケールスネーク属(Tropidechis)、デスアダー属(Acanthophis)、サンゴコブラ属(Aspidelaps)、ハラナシウミヘビ属(Astrotia)およびムチコブラ属(Demansia)に属するコブラ科のヘビ由来のα神経毒が挙げられ、より好ましくはタイコブラ(Naja kaouthia)、インドコブラ(Naja naja)、インドネシアコブラ(Naja sputatrix)、エジプトコブラ(Naja haje haje)、カスピコブラ(Naja oxiana)、ケープコブラ(Naja nivea)、シンリンコブラ(Naja melanoleuca)、キングコブラ(Ophiophagus Hannah)、イースタンブラウンスネーク(Pseudonaja textiles)、ニシグリーンマンバ(Dendroaspis viridis)、ジェイムソンマンバ(Dendroaspis jamesoni)、ニシグリーンマンバ(Dendroaspis viridis)、ブラックマンバ(Dendroaspis polylepis)、コモンデスアダー(Acanthophis antarcticus)、ハナイタコブラ(Aspidelaps scutatus)、ハラナシウミヘビ(Astrotia stokesiim)、オーストラリアカパーヘッド(Austrelaps superbus)、マレーアマガサヘビ(Bungarus candidus)、環状水コブラ(Boulengerina annulata)、バングラス・フラビセプス(Bungarus flaviceps)、アマガサヘビ(Bungarus multicinctus)、アマガサヘビ(Bungarus multicinctus)、デマンシアヴェスティギアタ(Demansia vestigiata)、ヒロオウミヘビ(Laticauda laticaudata)、アオマダラウミヘビ (Laticauda colubrine)、トゲウミヘビ(Lapemis hardwickii)、エラブウミヘビ(Laticauda semifasciata)、タイガースネーク(Notechis scutatus)、タイパン(Oxyuranus scutellatus)、インランドタイパン(Oxyuranus microlepidotus)、キングブラウンスネーク(Pseudechis australis)、およびラフスケールスネーク(Tropidechis carinatus)由来のα神経毒が挙げられる。
【0017】
本明細書に記載するα神経毒は、例えば、単離された天然α神経毒の翻訳後の限定的なシステイン還元、その後の還元したシステイン残基の安定的かつ化学的な修飾;または組換え体製造と併用した天然核酸配列の遺伝子工学、および/または対応する修飾されたα神経毒アミノ酸配列の化学的合成を含む、あらゆる周知技術によって製造できる。
【0018】
好ましい実施形態では、本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドは、単独のα神経毒種、または2種以上のα神経毒種の定義された混合物(defined mixture)と相同の組成物で、配列および活性が既知であるものを提供する。組換えα神経毒は特に好ましく、適切な宿主/ベクター系における組換え発現によって製造され、均一に精製される。組換えα神経毒は発現プラスミドベクターにクローニングしたcDNAから発現し得て、個々のα神経毒分子のcDNAは当技術分野において周知である標準技術を用いて毒腺の総RNAまたはmRNA調製物からクローニングできる。
【0019】
一態様では、本発明は骨格筋機能の局所的抑制のため、および神経筋接合部の神経伝達物質効果低減のための本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドの使用方法を提供する。一実施形態では、外科的処置と合わせて所望の筋肉または筋肉群を一過性に麻痺させる方法を提供する。該方法としては、望ましい期間、例えば、外科的処置の持続時間、その一定期間、または外科的処置時間を超える期間に外科的処置に併用し、筋肉もしくは筋肉群の不動化のための有効量のシナプス後化学的除神経ポリペプチドを筋肉もしくは筋肉群へ投与することが挙げられる。本発明のポリペプチドは、長期のおよび/もしくは一般の麻酔を必要とせずに組織および骨を回復させる外科医の能力を有意に向上させる。
【0020】
本発明の別の態様では、皮膚組織の弛緩もしくは緩和の増大方法を提供する。該方法としては、皮下から皮膚組織に呈する骨格筋もしくは骨格筋群の除神経を増大するための有効量を、本発明によるシナプス後化学的除神経ポリペプチドを皮膚組織へ局所投与して皮膚組織の弛緩もしくは緩和を増大することが挙げられる。いくつかの実施形態では、該ポリペプチドを皮下投与する。他の実施形態では、該ポリペプチドを筋肉内注射または経皮投与する。好ましくは皮膚組織の弛緩もしくは緩和は、皮膚のしわもしくは細かいしわの減少をもたらす。
【0021】
いくつかの実施形態では、該方法としては、ヒドロキシ酸およびレチノイドからなる群から選択された抗しわ剤の併用投与がさらに挙げられる。好ましい実施形態では、ヒドロキシ酸は線形、分枝もしくは環状ならびに飽和もしくは不飽和であり得るα-ヒドロキシ酸およびβ-ヒドロキシ酸からなる群から選択され、レチノイドはレチノイン酸、レチノール、レチノールエステル、ヒアルロン酸および/もしくはコラーゲンからなる群から選択される。
【0022】
本発明の別の態様では、対象の筋肉もしくは筋肉群の痙攣もしくは不随意収縮の治療方法を提供する。該方法としては、そのような治療を必要としている対象の筋肉もしくは筋肉群に対し、対象の筋肉もしくは筋肉群における痙攣もしくは不随意収縮を抑制するための有効量のシナプス後化学的除神経ポリペプチドを投与することが挙げられる。
【0023】
いくつかの実施形態では、そのような治療を必要としている対象は、眼瞼痙攣、斜視、痙性斜頚、局所ジストニー、顎ジストニー、職業性ジストニー、角膜潰瘍(保護下垂症)、痙攣性発声障害(喉頭ジストニー)、または顔のジスキネジア、例えばメージュ症候群、片側顔面痙攣、顔面神経の異常再生、または眼瞼開裂失行症を呈する。
【0024】
一態様では、本発明はシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドおよび製薬上許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。
【0025】
一態様では、神経筋障害の治療に有用な薬剤の製造方法を提供する。
【0026】
これらおよび本発明の他の態様、ならびに様々な利点および用途は、好ましい実施形態の詳細説明を参照することによって、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】一般的に長鎖α神経毒に見出される、フィンガーおよびループII先端部に示される第5ジスルフィドを伴う、βストランドスリーフィンガー様フォールドおよび5個のジスルフィド結合を図解する。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本明細書に詳述するとおり、本発明者らは、シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは先行技術のシナプス前性作用神経毒と比較して優れた化学的除神経剤であると決定した。本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドは、筋肉細胞機能の局所的抑制、神経筋接合部の神経伝達物質効果の低減、およびそれによる骨格筋麻痺の誘発のための組成物および方法において有効に用いられる。本明細書において「化学的除神経」と呼ばれるこれらの効果は、異常または望ましくない筋収縮の治療において、とりわけ顔のしわの美容治療、斜視、眼瞼痙攣、様々なジストニーおよび神経筋成分を有する他の症状に有用であり、ならびに様々な整形介入などの、部分的な患者の不動化を必要とする外科的セッティングにおける筋肉の一過性麻痺においても有用である。
【0029】
シナプス後化学的除神経ポリペプチド
本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドは、α1サブユニット含有nAChRに対し、α7サブユニットnAChRより少なくとも100倍高い親和性、より好ましくは少なくとも500倍高い親和性、およびさらに一層好ましくは少なくとも1000倍高い親和性を有する。
【0030】
本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの平衡解離定数(KD)は好ましくは1×10-8M未満、より好ましくは1×10-9M未満、より好ましくは1×10-10M未満、およびいくつかの実施形態では1×10-11M未満である。
【0031】
一実施形態では、本発明のシナプス後性に標的とした化学的除神経ポリペプチドの平衡解離速度(koff)は好ましくは1×10-3min-1未満、より好ましくは1×10-4min-1未満、より好ましくは1×10-5min-1未満、およびいくつかの実施形態では1×10-6min-1未満である。
【0032】
一実施形態では、本発明のシナプス後性に標的とした化学的除神経ポリペプチドの平衡結合速度定数(kon)は好ましくは1×106M-1min-1超、より好ましくは1×107M-1min-1超である。
【0033】
一実施形態では、単離された短鎖α神経毒はシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドとして提供される。別の実施形態では、シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドとして、ループIIのフィンガー先端部分における典型的ジスルフィド結合を欠失する単離された天然長鎖α神経毒を提供する。別の実施形態では、シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドとして、ループIIのフィンガー先端部分における典型的ジスルフィド結合を欠失する、単離、修飾された長鎖α神経毒を提供する。
【0034】
そのため、本発明は、単離された短鎖α神経毒、ループIIのフィンガー先端部分における典型的ジスルフィド結合(すなわち、ポリペプチドN末端から4番目と5番目のシステイン残基の間に通常は生じるジスルフィド結合)を欠失する単離された天然長鎖α神経毒、およびループIIのフィンガー先端部分における典型的ジスルフィド結合を欠失する、単離、修飾された長鎖α神経毒を含む。好ましい実施形態では、本発明のα神経毒は組換え体である。
【0035】
本明細書で使用する天然長鎖α神経毒分子の「機能的な変異型」、「変異型」または「修飾」(すなわち、「修飾された長鎖α神経毒」)は、少なくとも63個のアミノ酸残基を含み、対応する天然ポリペプチド内の5個のジスルフィド結合に比し4個のみジスルフィド結合を有する分子である。本明細書で使用する「天然」長鎖α神経毒分子は、表2に完全なアミノ酸配列を示して開示したものを含む、様々なヘビ種の毒に見出される野生型分子である。短鎖α神経毒は、天然で第5ジスルフィド結合を欠失している。変異型がα1 nAChRに選択的に結合する能力を維持し、好ましくは天然短鎖α神経毒相当の親和性を有する修飾された短鎖α神経毒(例えば、保存的アミノ酸置換を含む変異型)も、本発明に包含される。
【0036】
天然長鎖α神経毒および短鎖α神経毒をコードするDNAクローンは、公開された配列情報を使用し、従来の組換えDNA技術、例えば遺伝子合成、RNA単離、単離された総RNAもしくはmRNAからcDNAへの逆転写を使用し、公開された配列情報を基に設計された神経毒特異的プライマーを用いたポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるcDNAプールからの個々のα神経毒コード配列増幅と併用することによって、当業者は容易に入手できる。
【0037】
本発明は、シナプス後性作用機序を有する神経毒が、骨格筋麻痺に使用する優れた化学的除神経剤を提供することを初めて見出している。本発明の薬剤は、先行技術のシナプス前性作用薬に勝るいくつもの利点を提供する。これらは、より低い毒性およびより少ない副作用、麻痺効果潜時の欠如、即時に決定可能な有効量、ならびに一過性だが持続性の麻痺を含む。さらに、一連の可能性を有し、このクラスの薬剤とともに達することが可能な麻痺の持続時間を拡大する様々なシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドを提供する。
【0038】
本明細書で使用する「親和性」は、標的nAChRを伴う個々のα神経毒の逆平衡解離定数にて表す。一実施形態では、本発明の組成物および方法に使用される長鎖α神経毒のヒト筋肉nAChRは、エラブトキシン-b、またはα-コノトキシンなど典型的短鎖α神経毒より少なくとも10倍低い平衡解離定数、好ましくは少なくとも100倍低い平衡解離定数、より好ましくは少なくとも500倍低い平衡解離定数を示す。
【0039】
一実施形態では、本発明の組成物および方法に使用されるシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、少なくとも2、4もしくは6時間、より好ましくは少なくとも8、12もしくは24時間、好ましくは少なくとも48時間、より好ましくは少なくとも3〜7日間持続するインビボ(in vivo)筋肉除神経効果を示す。
【0040】
本発明の組成物は、単離された本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドを含む。ポリペプチドに関して本明細書で使用する「単離された」とは、その自然環境から分離され、かつその同定または使用が可能である十分な量存在することを意味する。単離されたとは、タンパク質もしくはポリペプチドについて言及する場合、例えば:(i)発現クローニングによって選択的に製造された、または(ii)クロマトグラフィーもしくは電気泳動法によって精製されたことを意味する。単離されたタンパク質またはポリペプチドは、実質的に純粋であってよいが、必須ではない。「実質的に純粋」という用語は、タンパク質もしくはポリペプチドが、それらの使用目的のために実用的かつ適切な範囲で自然界もしくはインビボ(in vivo)系に見出し得る他の物質を本質的に含有しないことを意味する。実質的に純粋なポリペプチドは、当技術分野において周知である技術によって製造することができる。単離されたタンパク質は製薬上の調製において製薬上許容可能な担体と混合し得るため、該タンパク質が調製物の重量%の低い割合からのみなってもよい。それでもなお、該タンパク質は生物系において結合し得る物質から分離されている、すなわち他のタンパク質から単離されている点において、単離されている。
【0041】
修飾されたα神経毒
一実施形態では、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは修飾されたα神経毒分子である。
【0042】
α神経毒分子の修飾は、ポリペプチドをコードする核酸に対して行うことができ、欠失、点突然変異、切断、アミノ酸置換およびアミノ酸付加を含むことができる。あるいは、修飾は、ジスルフィド結合におけるシステインの不可逆的、化学的還元、切断、リンカー分子付加、ビオチンなどの検出可能な部分の付加、脂肪酸の付加、ペグ化、1アミノ酸の別のものへの置換などによってポリペプチド自体に直接行うことができる。本発明のα神経毒は、ペプチド結合または修飾ペプチド結合、すなわち、ペプチドイソスターによって互いに結合しているアミノ酸から構成されることができ、20種類の遺伝子コードアミノ酸以外のアミノ酸を含んでよい。これらのα神経毒は、翻訳後プロセシングなどの自然なプロセス、または当技術分野において周知である化学的修飾技術のいずれかで修飾してよい。そのような修飾は基本的な文章およびより詳細なモノグラフ、ならびに膨大な研究文献に詳述されている。
【0043】
修飾は、ペプチド骨格、アミノ酸側鎖、およびアミノ末端もしくはカルボキシル末端を含むポリペプチド内のどこで起こってもよい。同一種類の修飾は、所与のポリペプチド内のいくつもの部位において同一または異なる程度存在してよいことが理解される。また、所与のポリペプチドは、多種類の修飾を含んでよい。ポリペプチドは例えば、ユビキチン化の結果として分枝していてよく、かつそれらは分岐を伴うまたは伴わない環状でよい。環状、分枝、および分枝環状ポリペプチドは翻訳後の自然なプロセスによるものでよく、または合成方法によって作製されてよい。修飾としては、アセチル化、アシル化、ADP-リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドもしくはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質もしくは脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有架橋形成、システイン形成、ピログルタメート形成、ホルミル化、γ-カルボキシル化、グリコシル化、GPIアンカー形成、水酸化、ヨード化、メチル化、ミリストイル化、酸化、ペグ化、タンパク質分解プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化、硫酸化、転移RNA介入のアミノ酸のタンパク質への付加、例えばアルギニン化、およびユビキチン化が挙げられる(例えば、Proteins-Structure and Molecular Properties, 第2版, T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, New York (1993); Posttranslational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson編, Academic Press, New York, pgs. 1-12 (1983); Seifterら, Meth Enzymol 182:626-646 (1990); Rattanら, Ann NY Acad Sci 663:48-62 (1992)を参照されたい)。
【0044】
天然のおよび修飾されたα神経毒分子の機能的変異型としては、ポリペプチド分子断片が挙げられる。本明細書で使用する断片は、天然α神経毒アミノ酸配列のアミノ酸を1つまたは複数欠失しているα神経毒分子である。断片のアミノ酸(単数もしくは複数)は、α神経毒分子の一端もしくは両端、または分子の配列内部、およびこれらの組み合わせから除去されていてよい。本発明に使用される断片は、断片を得たα神経毒分子全長(天然または修飾された長鎖α神経毒分子)の筋肉nAchR結合活性の少なくとも実質的な一部を保持していなければならない。断片の結合活性を決定するためにこれらの断片を試験することは、当業者の技能の範囲である。nAchR結合の代表的な決定方法を、そのような方法において使用される好ましい細胞系と合わせて、下の実施例に提示する。
【0045】
天然長鎖α神経毒配列がポリペプチドN末端から4番目と5番目のシステイン残基の間に形成される第5ジスルフィド結合を含む場合、好ましい修飾は、その結合を恒久的に除去してヒト筋肉nAChRに対する選択性を増大するものである。一実施形態では、単離された天然長鎖α神経毒において第5ジスルフィド結合を恒久的に除去するため、チオール反応アルキル化試薬を用いた化学的還元が使用される。代替的および好ましい実施形態では、生成ポリペプチドがジスルフィド結合を4個しか形成しないよう、天然配列のN末端から下流4番目または5番目のシステインの少なくとも一方のコード配列を変異させるために遺伝子工学技術が使用される。特に好ましい変異型は、4番目もしくは5番目システインの少なくとも一方がシステインを除くアミノ酸、好ましくはバリン、ロイシン、イソロイシン、アルギニン、リジン、アスパラギン、グルタミン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファンからなる群から選択されたアミノ酸、より好ましくはセリン、アラニン、トレオニン、メチオニンおよびグリシンを含む群から選択されたアミノ酸と置換されている。
【0046】
修飾されたα神経毒分子が結合特異性を変化させずに追加のアミノ酸置換を含む場合、保存的アミノ酸置換、すなわち、電荷、疎水性、極性、立体配座など元のアミノ酸の特性を保持する置換が典型的に好ましい。保存的アミノ酸置換の例としては、下記:(a)M、I、L、V;(b)F、Y、W;(c)K、R、H;(d)A、G;(e)S、T;(f)Q、N;および(g)E、Dの群中のアミノ酸間置換が挙げられる。そのような保存的置換は、短鎖α神経毒変異型の誘導においても行ってよい。
【0047】
本発明は、α神経毒分子の同一アミノ酸残基をコードする代替的コドンを含む核酸配列の使用も含まれる。ロイシン残基は、例えば、CUA、CUC、CUG、CUU、UUAおよびUUGコドンによってコードすることができる。該6コドンの各々はロイシン残基をコードする目的において同等である。したがって、ロイシン残基を組み込むために、ロイシンをコードする任意のヌクレオチドトリプレットをインビトロ(in vitro)またはインビボ(in vivo)でタンパク質合成装置に直接使用してよいことが当業者にとって明らかである。同様に、他のアミノ酸残基をコードするヌクレオチドトリプレット配列としては:GUA、GUC、GUGおよびGUU(バリンコドン);GGU、GGA、GGG、GGC(グリシンコドン);UACおよびUAU(チロシンコドン)が挙げられる。他のアミノ酸残基は同様に複数のヌクレオチド配列によってコードされてよい。したがって、本発明は、遺伝的コード縮重のためコドン配列中の天然α神経毒分子をコードする核酸と異なる変異核酸を抱合する。
【0048】
本発明は、発現ベクター内の配列使用、ならびに、宿主細胞および細胞系を、これらが原核生物(例えば、Escherichia coli)もしくは真核生物(例えば、Pichia pastorisおよびSaccharomyces cerevisiaeなどの酵母菌発現系、CHO細胞、COS細胞、ならびに昆虫細胞内に発現する組換えバキュロウイルス)にかかわらず、トランスフェクションすることを含むことも理解される。発現ベクターは関連配列、すなわち、前記したものがプロモーターへ作動可能に連結されることを必要とする。
【0049】
本明細書で使用する「ベクター」は、異なる遺伝的環境間の輸送のため、または宿主細胞内の発現のため、望ましい配列を制限およびライゲーションによって挿入し得るいくつかの核酸のいずれかでよい。RNAベクターも利用可能であるが、ベクターは典型的にDNAからなる。ベクターとしては、プラスミド、ファージミド、細菌ゲノムおよびウイルスのゲノムが挙げられるが、これらに限定されない。クローニングベクターは、宿主細胞内の複製もしくは宿主細胞のゲノム内への統合後の複製が可能なものであり、ベクターが確定した様式で切断されてよく、新規組換えベクターが宿主細胞内にその複製能力を保持するように所望のDNA配列をライゲーションし得る1つもしくは複数のエンドヌクレアーゼ制限部位をさらに特徴とする。プラスミドの場合、プラスミドは宿主バクテリア内の複製数を増大するかまたは宿主が有糸分裂によって再生する前に1宿主につき単回のみ増殖するため、所望の配列の複製が何度も起こり得る。ファージの場合、複製は溶解期(lytic phase)中に活発にまたは溶原期中に受動的に起こり得る。発現ベクターは、調節配列と作動可能に連結され、RNA転写物として発現し得る方法で所望のDNA配列を制限およびライゲーションによって挿入し得るものである。ベクターは、ベクターで形質転換またはトランスフェクションされている、もしくはされていない細胞の同定における使用に適切な1つまたは複数の標識配列をさらに含んでよい。標識として、例えば、抗生物質もしくは他の化合物に対する耐性もしくは感受性のいずれかを増大もしくは低減するタンパク質をコードする遺伝子、当技術分野において既知である標準検定によって活性を検出可能な酵素(例えば、β-ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼもしくはアルカリホスファターゼ)をコードする遺伝子、および形質転換もしくはトランスフェクションされた細胞、宿主、コロニーもしくはプラークの表現型に視覚的に影響を及ぼす遺伝子(例えば、緑色蛍光タンパク質)が挙げられる。好ましいベクターは、作動可能に連結されるDNAセグメントに存在する構造的遺伝子産物の自主複製および発現が可能なものである。
【0050】
本明細書で使用するコード配列および調節配列は、調節配列の影響下もしくは支配下にコード配列の発現もしくは転写を配置する方法で共有結合する場合、「作動可能に」連結されると言及される。コード配列が機能的タンパク質に翻訳されることが望ましい場合、5’調節配列内のプロモーター導入がコード配列の転写に至る場合、および2つのDNA配列間の結合の性質が(1)フレームシフト突然変異体を誘発しない、(2)プロモーター領域コード配列の転写を促す能力に干渉しない、または(3)タンパク質内に翻訳される対応RNA転写物の能力に干渉しない場合、2つのDNA配列は作動可能に連結されると言及される。したがって、生成転写物が所望のタンパク質またはポリペプチドに翻訳され得るようにプロモーター領域がDNA配列の転写を達成することができる場合、該プロモーター領域はコード配列に作動可能に連結される。
【0051】
遺伝子発現に必要な調節配列の正確な性質は、種もしくは細胞種間で異なってよいが、一般的に、必要に応じて、TATAボックス、キャッピング配列(capping sequence)、CAAT配列などの転写および翻訳の各開始に関与する5’非翻訳および5’非翻訳した配列を含むものとする。好ましくは、そのような5’非翻訳調節配列は、作動可能に連結された遺伝子の転写調整のためのプロモーター配列を含むプロモーター領域を含む。調節配列は、所望のとおりにエンハンサー配列または上流活性化配列も含んでよい。本発明のベクターは任意で5’リーダー配列つまりシグナル配列を含んでよい。好適ベクターの選択および設計は当業者の能力および裁量内にある。
【0052】
発現に必要な要素をすべて含む発現ベクターは市販されており、当業者に既知である。例えば、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989を参照されたい。細胞はシナプス後化学的除神経ポリペプチド分子をコードする非相同DNA(RNA)を細胞内に導入することによって遺伝子操作される。その非相同DNA(RNA)は宿主細胞内で非相同DNAを発現を可能にするために転写因子の作動可能な制御下に配置される。
【0053】
哺乳類細胞における好ましいmRNA発現系は、(安定的にトランスフェクションした細胞系の選択を促進する)G418耐性およびヒトサイトメガロウイルス(CMV)エンハンサープロモーター配列を付与する遺伝子などの選択可能な標識を含むpcDNA3.1(Invitrogen, Carlsbad, Calif.より入手可能)などである。
【0054】
発現ベクターは宿主生物に適合するように選択される。シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドをコードするDNAの発現のために、多種多様の宿主/発現ベクターの組み合わせを使用できる。多数の宿主細胞系、発現ベクター、および発現ベクター成分が市販されている。適合する宿主/発現ベクターの組み合わせを当業者は容易に選択できる。本発明の好ましい実施形態では、宿主生物はピキア・パストリス(Pichea pastoris)であり、発現ベクターはpPICシリーズベクター(Invitrogen; Carlsbad, Calif.;実施例項目も参照されたい)の1つである。本発明の別の実施形態では、宿主生物は大腸菌(Escherichia coli)であり、発現ベクターはpETシリーズベクター(Novagen; Madison, Wisconsin;実施例項目も参照されたい)の1つ、特に、ペリプラズム空間内への組換えα神経毒の輸送のための分泌シグナルプレシークエンスを提供するpETベクターである。
【0055】
本発明に使用するシナプス後化学的除神経ポリペプチドの好ましい入手方法は、本明細書の教示によるシナプス後化学的除神経ポリペプチドをコードする組換えDNAベクターを用いた宿主細胞の遺伝子形質転換、形質転換された宿主細胞内の組換えDNAの発現、ならびにポリペプチドの収集および精製に関与する組換え体の製造によるものである。好ましくは、該宿主生物は単細胞である。より好ましくは、該宿主生物は酵母菌、特にピキア・パストリス、または細菌、特に大腸菌である。
【0056】
天然α神経毒はヘビ毒の精製によって直接入手できるが、単独の標本から入手可能な個々のα神経毒量は比較的少ない。加えて、毒から個々のα神経毒を均質に精製することは非常に費用がかかり、困難である。ヘビ毒から有意な量の個々の神経毒を精製する試みは、いずれのヘビ毒も、物理化学的特性が類似し互いに分離することが困難であるスリーフィンガー様毒素ポリペプチドを無数に含むという事実によってもさらに妨げられる。これは、類似したスリーフィンガー様神経毒による交差汚染の可能性を伴う。異なるスリーフィンガー様毒素によって及ぼされる中毒作用の広範なスペクトルのため、そのような交差汚染は予測不可能な、かつ潜在的に重症な副作用を引き起こし得る。したがって、本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドは、好ましくは、単独のα神経毒分子の均質の組成物として、もしくは2種以上のα神経毒種の定義された混合物として提供されるが、それらの配列および活性が既知であり、かつ特徴づけられている。
【0057】
固相法を用いた化学的合成は、Mourier G.らによって成功裏に示された、実質的に純粋なシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドを入手するための別の代替法である(Protein Eng. 2000 Mar;13(3):217-25)。しかし、この発明のポリペプチドサイズはアミノ酸60〜80個の範囲にあるため、この方法は商業的製造のためにあまり好ましくない。
【0058】
実質的に純粋な、所望のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、適切な宿主生物における組換え発現と、その後のクロマトグラフ精製によって商業的に有用な量を最適、かつ実用的に入手する。該シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、当技術分野において周知である組換えDNA技術によって製造できる。そのような技術はSambrookら(1989)に記載されている。α神経毒ポリペプチドをコードする核酸配列は、従来技術を使用して単離およびクローニングできる。あるいは、α神経毒ポリペプチドをコードする核酸配列は、ポリペプチドアミノ酸配列および既知の遺伝コードの縮重に基づき合成できる。ポリペプチドのための核酸は所与の宿主系において最大発現に達するように設計できる。このように製造されたポリペプチドは、本明細書に詳述するように、単離し、必要に応じて還元し、および酸化して4個の所望のジスルフィド結合を形成する。インビボ(in vivo)の正しいフォールディングおよびジスルフィド形成のために最適化された種々の市販の宿主-ベクター系は、いずれの当業者にとっても周知であり、その目的のために使用できる。参考として本明細書に含まれるLyukmanova E. N.ら (J Biol Chem. 2007 Aug 24;282(34):24784-91.), Peng L.S.ら (Toxicon. 2003 Dec;42(7):753-61) および Wang Y.ら (J Biotechnol. 2002 Apr 1 1 ;94(3):235-44)、が大腸菌およびピキア・パストリスにおける生物学的に活性を示す長鎖および短鎖α神経毒分子の高収率発現を成功裏に示している。
【0059】
本発明のα神経毒においてジスルフィド結合を形成するひとつの方法は、低い室温下または室温下で、長期間での線形ペプチドの空気酸化である。この手順によって、生物活性的、ジスルフィド結合ペプチドが相当量形成される。該酸化ペプチドは逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)などを用いて分画し、異なる連結構造を有するペプチドを分離する。その後、これらの画分とネイティブの材料での溶出と比較するか、または簡易の検定をおこなうことのいずれかによって、生物学的な力価が最大となるための適切な結合を有する特定の画分が、容易に決定される。インビボ(in vivo)で起こる架橋および/もしくは再配列は生物学的に強力なα神経毒分子を作製することが見出されているため、インビボ(in vivo)投与のために線形ペプチドもしくは2つ以上の画分を有する酸化生成物を使用できることも見出されている。しかし、生物作用能が弱い他の画分の存在に起因する希釈のために、いくぶん高い投与量を必要とし得る。
【0060】
筋肉nAChR特異的なペプチド類似体およびペプチド擬態体は、本明細書に開示する教示に基づき従来の薬物モデリング、薬物設計ならびにコンビナトリアル化学を用いて調製してもよい。適切な技術としては、米国特許第5,571,698号、国際公開第95/21193号、Ecker and Cook (Bio/Technology 13:351-360 (1995), Persidis and Persidis (Bio/Technology 15:1035-1036 (1997)), Johnsonら ("Peptide Turn Mimetics" in Biotechnology and Pharmacy, Pezzatoら編, Chapman and Hall, New York (1993)), Sun and Cohen (Gene 137:127-132 (1993))およびそこに引用された参考文献に記載されているものが挙げられるが、これらに限定されない。ペプチド類似体およびペプチド擬態体の開発は、Persidis and Persidisの参考文献に記述されているものを含む、市販の薬物設計ソフトウェアを用いて用意される。これらのペプチド類似体およびペプチド擬態体は本明細書ならびに刊行物に記載されるα神経毒と同一活性を有する。ペプチド類似体および誘導体は従来技術により作製できる。ペプチド合成に適切な技術は、米国特許第5,514,774号およびそこに引用された参考文献に記載されている。ペプチド擬態体は従来技術によって同様に合成される。
【0061】
核酸に関して本明細書で使用する用語「単離された」とは:(i)例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるインビトロ(in vitro)増幅;(ii)クローニングによる組換え体製造;(iii)切断およびゲル分離による精製;または(iv)例えば、化学的合成などの合成、を意味する。単離された核酸は当技術分野において周知である組換えDNA技術によって容易に操作されるものである。したがって、5'および3'制限部位が既知である、またはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)プライマー配列が開示されているベクターに含まれるヌクレオチド配列は、単離されているとみなされるが、その自然宿主内に天然状態で存在する核酸配列は単離されているとみなされない。単離された核酸は実質的に精製されてよいが、必須ではない。例えば、クローニングまたは発現ベクター内で単離された核酸は、それが存在する細胞内の物質をほんのわずかな割合含んでいる可能性があるという点で純粋ではない。しかし、それは当業者に既知である標準技術によって容易に操作されるため、本明細書で使用する用語としては、そのような核酸は単離されている。本明細書で使用する単離された核酸は天然に存在する染色体ではない。
【0062】
変異型がα1 nAChRに選択的に結合する能力を維持し、好ましくは天然の短鎖α神経毒相当の親和性を有する修飾された短鎖α神経毒も本発明に包含される。保存的なアミノ酸置換を含むかかる変異型が好ましい。
【0063】
使用方法
本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドには、筋肉細胞機能の局所的抑制、神経筋接合部の神経伝達物質効果の低減、ならびにそれによる骨格筋麻痺の誘発において組成物および方法の使用が有効である。本明細書において「化学的除神経」と呼ばれるこれらの効果は、異常筋収縮治療、とりわけ顔のしわの美容治療、斜視、眼瞼痙攣、様々なジストニーおよび神経筋成分を有する他の症状に有用であり、ならびに様々な整形介入など、部分的な患者の不動化を必要とする外科的セッティングにおける筋肉の一過性麻痺においても有用である。
【0064】
一実施形態では、対象の筋肉もしくは筋肉群における痙攣もしくは不随意収縮の治療方法を提供する。該方法としては、そのような治療を必要としている対象の筋肉もしくは筋肉群へ、対象の筋肉もしくは筋肉群の痙攣もしくは不随意収縮を抑制するための有効量の、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドを投与することが挙げられる。
【0065】
本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの局所投与が非常に望ましい。本明細書に説明される組成物の局所投与により治療が可能な障害例としては、眉間のしわなどのしわ、片頭痛などの頭痛(headache)、頭痛(headache pain)、頸部ジストニー、限局性手ジストニー、神経性炎症、眼瞼痙攣、斜視、片側顔面痙攣、眼瞼障害、脳性麻痺、限局性痙性麻痺、肢痙縮、チック、振戦、歯ぎしり、裂肛、線維筋痛、嚥下障害、流涙、および筋肉痙攣による疼痛が挙げられるが、これらに限定されない。本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの局所投与では、患者はポリペプチド投与時に皮下のニューロン感覚疼痛を発現させる針に刺される必要がないため、患者が経験する疼痛は減少する。本明細書に開示した組成物は、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの全身投与のリスクなく、同ペプチドにより局所的緩和を提供する。
【0066】
筋肉麻痺の誘発することが望ましいいくつかの他の症状には、現在ボツリヌス毒素投与が用いられている疾患症状を含む。そのような疾患症状および投与方法の例はBorodicの米国特許第5,298,019号(脳脊髄損傷もしくは脳卒中により引き起こされる病的神経刺激に誘発された患者の筋肉もしくは筋肉群の痙攣もしくは不随意収縮の低減);Aokiらの第5,721,215号(神経筋障害の治療);Binderの第5,714,468号(片頭痛の頭痛(headache pain)の低減);Binderの第5,670,484号(皮膚細胞増殖性障害に関連した皮膚病変の治療);および上記パテントファミリーの他の特許に詳述され、それらの内容はそれらの全体を参照することにより本明細書に明白に組み込まれる。
【0067】
本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは脳性麻痺に関連した下肢痙縮(Komanら, J. Pediatr. Orthop. 20(1):108-1 15, 2000)、アカラシア(Kolbasnikら, Am. J. Gastroenterol. 94(12):3434-3439, 1999)、病的流涙(Riemannら, Ophthalmology 106(12):2322-2324, 1999)、声帯肉芽腫(Orloffら, Otolaryngol. Head Neck Surg. 121 (4):410-413, 1999)、膵分離症および急性反復性膵炎(Wehrmannら, Gastrointest. Endosc. 50(4):545-548, 1999)、急性発症内斜視(Dawsonら, Ophthalmology 106(9):1727-1730, 1999)、および他の病状の治療にも使用でき、特にそれらには異常筋肉の管理改善という利点がある。
【0068】
本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、単独で(Carruthersら, J. Am. Acad. Dermatol. 34(5 Pt 1):788-977, 1996; Frankelら, Arch. Otolaryngol Head Neck Surg. 124(3):321-323, 1998)、皮膚美容治療に有用な他の抗しわ剤、例えばボツリヌス毒素などと併用して、またはレーザリサーフェシングおよび外科的治療との併用療法(Carruthersら, Dermatol. Surg. 24(11):1244-7, 1998)を含む美容治療においても使用できる。当業者に既知であるように、抗しわ剤は、線形、分枝もしくは環状ならびに飽和もしくは不飽和であり得るα-ヒドロキシ酸およびβ-ヒドロキシ酸、レチノイン酸、レチノールおよびレチノールエステル、コラーゲンおよびヒアルロン酸などのレチノイド、ならびに米国特許第5,869,068号に記載されている薬剤を含むこともできる。
【0069】
他の適応として、A型ボツリヌス毒素が示唆されている脊柱側弯症を挙げてよい。Borodicの米国特許第5,053,005号を参照されたい。より一般的には、骨格筋弛緩の治療としてA型ボツリヌス毒素が示唆されている適応はすべて本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドによる治療が可能な本明細書の適応に含まれる。
【0070】
A型ボツリヌス毒素を用いた斜視(strabismus)の治療については、Elston, J. S.ら, British Journal of Ophthalmology, 1985, 69, 718-724 and 891-896を参照されたい。A型ボツリヌス毒素を用いた眼瞼痙攣の治療については、Adenis, J. P.ら, J. Fr. Ophthalmol., 1990, 13 (5) at pages 259-264を参照されたい。斜視(squint)の治療については、Elston, J. S., Eye, 1990, 4(4):VIIを参照されたい。痙性および口下顎骨ジストニー斜頚の治療については、Jankovicら, Neurology, 1987, 37, 616-623を参照されたい。
【0071】
痙攣性発声障害はA型ボツリヌス毒素によって治療されている。Blitzerら, Ann. Otol. Rhino. Laryngol, 1985, 94, 591-594を参照されたい。Brinら, Adv. Neurol. (1987) 50, 599-608によると、舌ジストニーはA型ボツリヌス毒素によって治療された。最後に、Cohenら, Neurology (1987) 37 (Suppl. 1), 123-4にはA型ボツリヌス毒素を用いた著者の痙攣の治療が開示されている。
【0072】
本発明による治療方法は、化学的除神経および一過性筋肉麻痺を効果的に引き起こすための本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチド投与を包含する。
【0073】
本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは有効量にて投与する。有効量とは、本発明のポリペプチドが医学上または美容上、所望の結果を十分に提供する投与量である。該有効量は治療する特定の症状、治療対象の年齢および健康状態、症状の重症度、治療の持続時間、併用療法(もしあれば)の性質、特定の投与経路ならびに健康相談医の知識および技能内の要素によって異なる。例えば、対象の筋肉もしくは筋肉群の痙攣もしくは不随意収縮の治療に関連した有効量とは、痙攣もしくは不随意収縮を抑制もしくは低減する量である。同様に、皮膚のしわもしくは細かいしわの出現を低減するための有効量とは、しわの寄った皮膚表面下の皮下に存在する筋肉群の筋肉の緊張性収縮を低減もしくは抑制して皮膚表面の弛緩を可能にし、その滑らかさを増大するのに十分な量である。したがって、下記の好ましい投与方法により本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドを上記症状の治療に使用できることが理解される。一般的に最大用量、すなわち、正しい医学的判断による最高安全用量を使用することが好ましい。「漏出」を低減して、それにより非標的組織内の不必要な効果を低減するために、低用量の反復投与が好ましい場合がある。
【0074】
有利には、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、投与と麻痺の間に潜伏期を有さない。したがって、有効量を即時に決定できる。担当者は初回投与量で治療を開始してよく、麻痺が所望の麻痺レベルに満たないことを見つけた際、所望のレベルまたは麻痺を引き起こすまで該投与量を段階的に増量してよい。
【0075】
本明細書で使用する対象は、長期間の麻痺に至るニューロン活性の抑制を必要とする症状(上記の症状)を呈する任意の哺乳動物(ヒトが好ましく、非ヒト霊長類、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコもしくは齧歯類なども含む)を指す。
【0076】
美容上のしわ低減
横走額線または鼻唇溝などの顔に発現するしわは、顔面筋の突起物の真皮への付着によって形成される。顔面筋収縮は、一般的に、微笑、しかめっ面など表情の様々な特徴形態を引き起こすことが周知である。加えて、顔のしわの誇張も老化作用に関連する。本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチド適用の一般原理は、筋緊張を低減し、表情の質および特徴を改善もしくは変化させるために顔面筋の緊張性収縮状態を制限することである。
【0077】
好ましい実施形態では、横走額線の強度は、額の上縁約5〜10mmの4個所、および眉毛の上約15mmの注射部位における拡散領域に本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドを高量注射することによって低減し得る。これは額の両側に対称的に行われる。眉間のしわ(額の中央位置の渋面線)は、5〜10mmの除神経領域を引き起こす量の眉間の筋肉を処置することにより標的とし得る。本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、額の中央位置の眉毛の線の15mm上に注射する。鼻唇溝線の強度は、頬骨弓から生じて鼻唇溝位置の対角線上に延びる大小頬骨筋を処置することによって軽減できる。これらの筋肉上縁の上5〜10mm範囲への本発明のポリペプチド注射は、このしわを効果的に軽減する。さらにまた、口唇位置は、大小頬骨筋に注射することによって調整できる。上唇突出は、これらの筋肉注射によって低減し得て、反転すらし得る。加えて、下唇突出は、中線から約5mmの位置の下唇より約15mm下の顎位置に5〜10mmの除神経領域を引き起こす量を頤筋に注射することによって低減できる。
【0078】
また、ボツリヌス毒素と比較して有利であるのは、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの送達は軽皮系においても可能であり、注射によって行われたものと類似した除神経領域を成し遂げることができる。
【0079】
該方法はさらにヒドロキシ酸およびレチノイドからなる群から選択される抗しわ剤の併用投与を含んでよい。好ましい実施形態では、ヒドロキシ酸は線形、分枝もしくは環状ならびに飽和もしくは不飽和であり得るα-ヒドロキシ酸およびβ-ヒドロキシ酸からなる群から選択され、該レチノイドはレチノイン酸、レチノール、レチノールエステル、ヒアルロン酸および/またはコラーゲンからなる群から選択される。
【0080】
歯牙摩耗の抑制
真の歯ぎしりの特徴を示す不随意歯ぎしりは、咬筋の不随意収縮、側頭筋および翼突筋により引き起こされる。通常、咬筋および側頭筋は、化学的除神経を行う筋肉の標的である。それらは本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの浸透を筋肉の体積と量に制限するように注射する。拡散は好ましくは25〜35mm以下の範囲に制限されるべきである。好ましくは、単位用量注射はこれらの各筋肉表面の複数点に経皮的にまたは経粘膜的に投与される。もちろん、歯へのダメージ度または電位ダメージを評価する適切な歯の検診は、本発明のポリペプチドの使用前に行われるべきである。
【0081】
脳卒中および脳脊髄損傷
脳血管障害(脳卒中および脳脊髄損傷)は麻痺および痙縮の結果として痙縮および収縮を引き起こし得る。本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは麻痺を起こすが、それらは筋肉塊を低減し、痙縮を補助する上で有用となり得る。症候性痙縮は、慢性不随意運動ならびに縮まる姿勢または肢収縮困難をもたらし得る。これらの痙攣性状態への本発明のポリペプチドの使用は、肢筋肉の神経支配帯に関する知識を必要とする。異常姿勢または異常運動に関与する筋肉は、筋電図針により見つけることができる。そのような筋肉は、肢位置および運動能力に対する筋肉の収縮状態の経験および理解に基づき、姿勢奇形も引き起こすとみなすことができる。これらの筋肉は神経支配帯近位への一針で固定される。ある状況では、正しい注射位置を保証するために、テフロン被覆筋電図針による電気刺激による筋肉刺激が必要となる場合がある。本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、筋肉の神経支配帯または完全な筋肉を含む除神経領域を引き起こす上で適切な用量濃度にて注射する。長筋に対して、該筋肉に及ぼす効果を分離するために複数回の注射が必要となる場合がある。
【0082】
脳麻痺
脳麻痺は、通常は出産時の酸素欠乏症または血管不全に関連した脳損傷の様々な形態に起因する。中枢運動系の中央亀裂の破壊により不随意運動痙縮、異常姿勢、および望ましくない筋痙縮が生じる。身体的療法および時折、鎮痙薬が脳性麻痺治療に使用される。痙縮が疼痛、奇形、不随意運動、または患者の機能的能力制限と関連する状況下において、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの使用を指示してよい。その用途には、肢奇形もしくは随意運動障害を起こす筋肉など、患者の身体障害もしくは痙縮が異常姿勢を発現させると思われる状況において重要な筋肉群を標的とすることが含まれる。
【0083】
この疾患の治療のための投与量は、これらの筋肉を標的とすること、および脳血管疾患の治療に使用される製剤に類似した製剤を使用することに関連する。大筋への使用のプロトタイプは痙性斜頚である。該標的筋肉に、該筋肉の神経支配帯を含む上で十分な量を注射する。
【0084】
多発性硬化症
多発性硬化症は中枢神経系の白質疾患である。それは皮質脊髄路および脳幹内関連路の障害に至る脱髄プロセスに関与する。これは脊髄損傷に至り、痙縮を続発する。多発性硬化症の痙縮は、不随意運動、痙縮、姿勢奇形、およびある状況では、疼痛のために衰弱させ得る。そのような筋肉痙縮は本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドによって治療できる。
【0085】
この場合も、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、医師、神経科医、足病医または整形外科医によって判断される活動過多と思われる筋肉を標的とする。該筋肉またはその神経支配帯、またはその両方を容量的に含む上で十分な量を該筋肉に注射する。最適な成果を得るために、筋肉解剖、神経支配、および機能的解剖に関する生きた知識が実施者に必要とされる。
【0086】
パーキンソン病
パーキンソン病は3つの基本的な欠陥:無動(運動欠如);振戦(不随意運動);および硬直(筋肉群の筋緊張増大)を特徴とする。本発明のポリペプチドの使用は無動において禁忌であり得るが、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、パーキンソン病において呈される振戦度および硬直度の改善に使用できる。
【0087】
パーキンソン病のある状況では、重度のジストニーが患者の肢に発現する。これらの状況において、該不随意運動は肥大性、痙攣性、およびしばしば有痛性である。本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは該筋肉またはその神経支配帯またはその両方を含む上で十分な量を筋肉内注射する。それは好ましくは、筋肉中の針の正確な位置を保証するためにEMG装置の、またはEMG装置と併用した針電極の刺激によって行われる。本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、好ましくは神経支配帯の適切な包含率を保証するために大筋の複数の注射部位に投与される。
【0088】
頭痛
緊張性頭痛は、米国特許第5,714,468号に開示された骨格筋ストレスに由来し得る。本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、化学的除神経に関連しているとみなされる筋肉を標的とすることにより、頭痛症状の軽減を補助するために使用できる。
【0089】
外科手術
一過性麻痺
本明細書で使用する「一過性(temporary)麻痺」、または「一過性(transient)麻痺」とは、標的筋肉が本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドとの接触に応答して麻痺を示す、様々に生じ得る異なった期間を指す。本発明では、多数のそのようなシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの効果の幅を提供する。理論に縛られることを望むものではないが、麻痺の持続時間は、特定ポリペプチドの結合動態、利用可能な筋肉nAChR数、受容体ターンオーバーの動力学および新規受容体の存在、ならびに筋肉活性の閾値シグナルに依存する。したがって、短い持続時間の麻痺は、例えば、比較的効力の低いシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの使用、効果を得るのに必要最小限に筋肉領域上の受容体占有率を低減するための、少量でのポリペプチド投与、効果を得るのに必要最小限に筋肉領域上の受容体占有率を低減するための、ポリペプチドの短時間での投与、もしくは該ポリペプチドを単回での投与もしくは少ない回数での投与、またはこれらのアプローチの組み合わせの実施を行うことによって、達成できる。例えば、α1 nAChRに対しより高い親和性を示すおよび/またはα1 nAChRに対する不可逆的結合を示す修飾された長鎖α神経毒ではなく、短鎖α神経毒を使用のために選択してよい。α1 nAChRに対する親和性が比較的低い種類を潜在的な短鎖α神経毒種群からも選択してよい。逆に、麻痺のより長い持続時間に達するためには、比較的強力な修飾された長鎖α神経毒を使用してよく、筋肉領域上の受容体占有率を増大するためにより高用量の毒素を使用してよく、筋肉領域上の受容体占有率を経時的に増大するために投与期間(例えば、持続投与)を拡大してよく、または反復投与を行ってよく、またはこれらのアプローチの組み合わせを使用してよい。
【0090】
製剤および投与法
種々の投与経路が利用可能である。もちろん、選択される具体的な様式は、治療される症状の性質および治療効果に必要な投与量による。本発明の方法は、一般的に言えば、医学上許容可能な任意の投与方法、すなわち臨床的に受容不可能な有害事象を引き起こさない活性化合物の有効濃度を生みだす任意の様式を使用して実施してよい。典型的にそのような投与様式としては非経口経路が挙げられる。「非経口」という用語は、皮下、筋肉内注射、皮内、経皮的または局所注入を含む。経皮的、皮下および筋肉内注射の経路が最も好ましい。本発明の薬剤に関連した毒性のため、経口および静脈内投与は避けるべきである。
【0091】
したがって、シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、痙攣性筋肉などの局所、好ましくは神経筋接合部領域に直接、筋肉内注射することによって投与してよい。あるいは、シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドを適切な患部に直接送達するためには、皮下送達を使用してよい。有利には、影響を及ぼす皮膚近接部の骨格筋には、本明細書に記載するように、経皮送達および/または従来のマイクロインジェクション技術を使用してよい。シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、発熱物質を含有しない無菌水溶液もしくは分散液として、ならびに無菌溶液もしくは分散液中に再構成する無菌粉末として存在してよい。
【0092】
望ましい場合、塩化ナトリウム、グリセロールおよび様々な糖類の張度調整剤を添加でき、ヒト血清アルブミンなどの安定剤を含んでもよい。当該製剤は、保存されていないものが好ましいが、パラベンなど適切な製薬上許容可能な保存料を用いて保存してもよい。
【0093】
シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、単位投与量形態で処方するのが好ましく、例えば、それはバイアル中無菌溶液として、または生理食塩水など注射に適切なビヒクル再構成用の凍結乾燥粉末を含むバイアルもしくはサシェ剤として提供できる。
【0094】
患者へ投与するシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチド用量は、病状の重症度、例えば、治療を必要とする筋肉群数、患者の年齢およびサイズ、ならびに毒素の効力による。毒素の効力は、マウス一匹当たり体重17〜22gのSwiss-Websterマウス群50%に対して致死的である量に相当とする量をポリペプチド1単位(U)と定義した、マウスのLD50値の倍数にて表す。
【0095】
ヒトの治療的適用に使用される投与量は、注射する筋肉塊におおよそ比例する。典型的に、患者への投与量は、1患者、1治療につき、約0.01〜約1,000単位まで、例えば、約500単位まで、好ましくは約80〜約460単位の範囲で投与してよく、適切な状況においてより低用量またはより高用量投与してよい。
【0096】
医師は本生成物の使用により精通するにつれて、該用量を変更してよい。本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの投与量および投与頻度は、治療に対して責任ある医師の裁量にあり、特定のポリペプチドおよび投与様式によって生じる安全性および効果の問題による。
【0097】
有利には、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、投与と麻痺の間に潜伏期を有さない。したがって、有効量を即時に決定できる。担当者は初回投与量で治療を開始してよく、麻痺が所望のレベルに満たないこと見受けられた際は、所望のレベルまたは麻痺を引き起こすまで該投与量を段階的に増量してよい。
【0098】
医薬組成物
本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドは、単独または医薬組成物の一部として投与してよい。そのような医薬組成物は、当技術分野において既知である任意の標準的な生理上および/または製薬上許容可能な担体と組み合わせて、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドを含有してよい。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, 第18版 (1990, Mack Publishing Co., Easton, Pa.)を参照されたい。該担体は、例えば、筋肉内注射、皮下または非経口など、投与に望ましい調製形態に依存した多種多様の形態でよい。該組成物はさらに抗酸化剤、安定剤、保存料などを含んでよい。該組成物は無菌であるべきで、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの重量または容量単位において患者への投与に適切な治療上有効量を含むべきである。
【0099】
本明細書で使用する「製薬上許容可能な担体」という用語は、ヒトもしくは他の動物への投与に適切な1つもしくは複数の適合性のある固体もしくは液体フィルター、希釈剤または封入物質を意味する。「担体」という用語は、該用途を促進するために活性成分がともに組み合わされる天然もしくは合成の有機もしくは無機成分を示す。該医薬組成物成分も、互いに、実質的に望ましい製薬的効果を損なう相互作用を有さない方法で本発明の分子と混合できる。製薬上許容可能とは、細胞、細胞培養、組織、または生物などの生物学的系と適合する無毒性材料をさらに意味する。該担体の特徴は投与経路に依存する。生理的かつ製薬上許容可能な担体としては、希釈剤、充填剤、塩、緩衝液、安定剤、可溶化剤、および当技術分野において周知である他の材料が挙げられる。
【0100】
非経口投与に適切な組成物は好都合に、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの無菌の水性および非水性調製液を含む。この水性調製液は、適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁化剤を使用した既知の方法により処方してよい。水性担体は水、アルコール溶液/水溶液、エマルションもしくは生理食塩水および緩衝媒体を含む懸濁液を含む。非水性溶媒の例はプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブ油などの植物性油、およびオレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステル、および合成モノ-グリセリドもしくはジ-グリセリドを含む。無菌の注入可能な調製液は、無毒性、非経口的に許容可能な希釈剤もしくは溶媒中の無菌の注入可能な溶液もしくは懸濁液、例えば、1,3-ブタンジオール中溶液であってもよい。加えて、オレイン酸などの脂肪酸を注入可能な調製液において使用してよい。好ましい非経口ビヒクルは、塩化ナトリウム溶液、リンゲルデキストロース、デキストロースおよび塩化ナトリウム、乳酸加リンゲルまたは固定油を含む。皮下、静脈内、筋肉内注射などの投与に適切な担体製剤は、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, Paに見ることができる。保存剤および他の添加剤は、例えば、抗菌薬、酸化防止剤、キレート剤、および不活性ガスなどであってもよい。
【0101】
医薬組成物はパッケージ、キットなどの単位投与量形態として使用説明書とともに好都合に販売してもよく、製薬分野において周知の任意の方法によって調製してよい。すべての方法は、1つまたは複数の付属成分を構成する担体と、本発明の本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドを会合させる工程を抱合する。一般的に、該組成物は均一かつ密接に調製され、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドを液体担体、粉砕した固体担体、または両方と会合させ、次いで、必要に応じて、生成物の成形と関連させる。
【0102】
他の送達系としては、持続放出、遅延放出または徐放送達系を挙げることができる。そのような系は本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの反復投与を回避することができ、対象および医師にとっての利便性が向上する。多種類の放出送達系が利用可能であり、当業者に既知である。それらとしては、ポリ(ラクチド-グリコリド)、コポリオキザレート、ポリカプロラクトン、ポリエステルアミド、ポリオルトエステル、ポリヒドロキシ酪酸、およびポリ無水物などのポリマー基剤系が挙げられる。上記ポリマーを含有する薬物のマイクロカプセルは、例えば、米国特許第5,075,109号に記載されている。送達系はまた、コレステロール、コレステロールエステルおよび脂肪酸などのステロールまたはモノ-、ジ-およびトリ-グリセリドなどの中性脂肪を含む脂質;ヒドロゲル放出系;サイラスティック(シリコン剤)系;ペプチドを基準とした系;ワックスコーティング;従来の結合剤および賦形剤を使用した圧縮錠剤;部分的に融合したインプラント;などの非ポリマー系も含む。特異的な例としては、(a)α神経毒分子が、米国特許第4,452,775号、第4,675,189号、および第5,736,152号に記載されているようなマトリックス内の形態に含有されている浸食系、および(b)米国特許第3,854,480号、第5,133,974号および第5,407,686号に記載されているような、活性成分が制御された速度でポリマーから浸透する拡散系、が挙げられるが、これらに限定されない。加えて、ポンプを利用したハードウエア送達系を使用し得て、そのいくつかは移植に適合している。
【0103】
長期間の徐放性放出インプラントの使用は、慢性症状の治療に特に適し得る。本明細書に使用される長期間放出とは、当該インプラントが、少なくとも30日間、好ましくは60日間、活性成分の治療濃度を送達するように構成され、配置されていることを意味する。長期持続した放出インプラントは当業者に周知であり、上記放出系の一部を含む。
【0104】
また、本発明によって提供するものは、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの化学的修飾誘導体であって、それらは該ポリペプチドの増大した溶解度、安定性および循環時間、または減少した免疫原性などのさらなる利点(例えば、米国特許第4,179,337号を参照されたい)を提供し得る。したがって、本発明は、例えば、安定化機能(例えば、溶液中のポリペプチド半減期を延長する、該ポリペプチドをより水溶性にする、該ポリペプチドの親水性または疎水性特徴を増長するなど)の役割を担い得る化合物とともに、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの誘導体化を含む。安定化物質として有用なポリマーは天然、半合成(修飾天然)物または合成物に由来してよい。代表的な天然ポリマーとしては例えば以下に述べるような天然多糖が挙げられる:例えば、アラビナン類、フルクタン類、フカン類、ガラクタン類、ガラクツロナン類、グルカン類、マンナン類、キシラン類(例えば、イヌリンなど)、レバン、フコイダン、カラギーナン、ガラクトカロロース、ペクチン酸、ペクチン類、例えばアミロース、プルラン、グリコーゲン、アミロペクチン、セルロース、デキストラン、デキストリン、デキストロース、グルコース、ポリグルコース、ポリデキストロース、プスツラン、キチン、アガロース、ケラチン、コンドロイチン、デルマタン、ヒアルロン酸、アルギン酸、キサンチンガム、デンプンおよび他の様々な天然ホモポリマーもしくはヘテロポリマー類、例えば、以下のアルドース類、ケトース類、酸類もしくはアミン類の1個もしくは複数個を含有するもの:エリトース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、アロース、アルトロース、グルコース、デキストロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、エリトルロース、リブロース、キシルロース、プシコース、フルクトース、ソルボース、タガトース、マンニトール、ソルビトール、ラクトース、サクロース、トレハロース、マルトース、セロビオース、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、グルタミン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジン、グルクロン酸、グルコン酸、グルカル酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、グルコサミン、ガラクトサミン、およびノイラミン酸、ならびにそれらの天然誘導体である。したがって、適切なポリマー類としては、例えば、アルブミンなどのタンパク質、ポリアルギネート類、およびポリラクチドコグリコリドポリマー類などが挙げられる。代表的半合成ポリマー類としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、およびメトキシセルロースが挙げられる。代表的合成ポリマー類としては、ポリホスファゼン類、ヒドロキシアパタイト類、フルオロアパタイトポリマー類、ポリエチレン類(例えば、ポリエチレングリコール(例えば、BASF, Parsippany, N. J.から市販されているPluronics(登録商標)と呼ばれる種類の化合物など)、ポリオキシエチレン、およびポリエチレンテレフタレート)、ポリプロピレン類(例えば、ポリプロピレングリコールなど)、ポリウレタン類(例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリ塩化ビニルおよびポリビニルピロリドンなど)、ナイロンを含むポリアミド類、ポリスチレン、ポリ乳酸類、フッ化炭化水素ポリマー類、フッ化炭素ポリマー類(例えば、ポリテトラフルオロエチレンなど)、アクリレート、メタクリレート、およびポリメチルメタクリレート、およびそれらの誘導体が挙げられる。安定化化合物としてポリマーを使用する本発明の誘導体化長鎖α神経毒の調製方法は、本明細書の開示を、当技術分野において既知である情報、例えばその全体が参照により本明細書に組み込まれるUngerの米国特許第5,205,290号などに記載され言及されているような情報と合わせて考慮すれば、当業者にとって容易に明らかになる。
【0105】
誘導体化の化学的部分は、ポリエチレングリコール、エチレングリコール/プロピレングリコールコポリマー類、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコールなど水溶性ポリマーから選択してよい。該ポリペプチドは分子内のランダムな位置または分子内の所定位置で修飾されていてよく、1、2、3個以上の結合化学的部分を含んでよい。
【0106】
いくつかの実施形態では、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの化学的誘導体化は、親水性ポリマー残基を使用して行われる。誘導体を含む代表的な親水性ポリマーは、例えば、ポリ(ビニルアルコール)など1つもしくは複数のヒドロキシ基を含む反復単位(ポリヒドロキシポリマー);例えば、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質およびリポタンパク質(アルブミンおよび天然リポタンパク質など)など1つもしくは複数のアミノ基を含む反復単位内ポリマー(ポリアミンポリマー);例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸およびその塩(ナトリウムおよびアルギン酸カルシウムなど)、グリコサミノグリカンおよびその塩(ヒアルロン酸塩、炭水化物のリン酸化およびスルホン化誘導体、ならびにホスホロチオエートオリゴマーなど)を含む1つもしくは複数のカルボキシ基を含む反復単位内ポリマー(ポリカルボキシポリマー);ならびに例えば、炭水化物など1つもしくは複数の糖部分を含む反復単位のポリマー(多糖類ポリマー)でよい。
【0107】
親水性ポリマーの分子量は様々でよく、一般的には約50〜約5,000,000、好ましくは分子量約100〜約50,000のポリマーである。これらのポリマーは分枝していても分枝していなくてもよい。より好ましいポリマーは分子量約150〜約10,000、さらに一層好ましくは分子量200〜約8,000を有する。
【0108】
ポリエチレングリコールにおいて、処理および製造を容易にするために好ましい分子量は約1kDa〜約100kDa(用語「約」とは、ポリエチレングリコール調製において、一部の分子の分子量は記載した分子量よりも大きく、一部は小さいことを示す)。望ましい治療プロファイル(例えば、持続放出の望ましい持続時間、もしあれば生物活性的効果、処理の容易さ、抗原性の程度もしくは欠如および治療的タンパク質もしくは類似体に対するポリエチレングリコールの他の既知の効果)によって、他のサイズを使用してよい。
【0109】
本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの誘導体化に使用してよいさらなる好ましいポリマーとしては、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(ビニルピロリジン)、ポリオキソマー、ポリソルベートおよびポリ(ビニルアルコール)が挙げられ、PEGポリマーが特に好ましい。PEGポリマーのなかでも好ましいのは分子量約100〜約10,000を有するPEGポリマーである。より好ましくは、PEGポリマーの分子量は約200〜約8,000であり、分子量各2,000、5,000および8,000を有するPEG2,000、PEG5,000およびPEG8,000がさらに一層好ましい。上記に例示したものの他に適切な親水性ポリマーは、本明細書の開示に基づき当業者にとって容易に明らかになる。一般的に、使用されるこれらのポリマーはアルキル化またはアシル化反応を介して本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドに結合できるポリマーを含んでよい。
【0110】
ポリエチレングリコール分子(または他の化学的部分)は、タンパク質の機能的または抗原性領域に対する効果を考慮して、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドに結合されるべきである。当業者にとって利用可能ないくつかの結合方法、例えば、参照することにより本明細書に組み込まれるEP 0 401 384(PEGのG-CSFへのカップリング)などがあり、Malikら, Exp. Hematol. 20:1028-1035 (1992)(トレシルクロリドを使用し、GM-CSFペグ化を報告している)も参照されたい。例えば、ポリエチレングリコールは遊離アミノ基またはカルボキシル基などの反応基を介してアミノ酸残基と共有結合し得る。反応基は活性化ポリエチレングリコール分子が結合し得るものである。遊離アミノ基を有するアミノ酸残基はリジン残基およびN末端アミノ酸残基を含んでよい;遊離カルボキシル基を有するものは、アスパラギン酸残基、グルタミン酸残基およびC末端アミノ酸残基を含んでよい。スルフヒドリル基をポリエチレングリコール分子に結合する反応基として使用してもよい。治療目的に好ましいものは、N末端またはリジン基への結合など、アミノ基での結合である。
【0111】
N末端部で化学的に修飾されたタンパク質が特に望ましい場合がある。本明細書の組成物の例証としてポリエチレングリコールを使用し、(分子量、分岐などによって)様々なポリエチレングリコール分子から、反応混合物におけるタンパク質(ポリペプチド)分子に対するポリエチレングリコール分子の割合、行われるペグ化反応の種類、および選択したN末端でペグ化したタンパク質の入手方法を選択してよい。N末端でペグ化した調製物の入手方法(すなわち、必要に応じて、この部分を他のモノペグ化部分から分離)は、ペグ化タンパク質分子集団からのN末端でペグ化した物質の精製によってよい。N末端修飾部で化学的に修飾された選択的タンパク質は、特定のタンパク質における誘導体化のために利用可能である異なる種類の主要なアミノ基の異なる反応性(リジン対N末端)を活用する還元アルキル化によって成し遂げてよい。適切な反応条件下において、ポリマー含有カルボニル基によるN末端におけるタンパク質の実質的に選択的な誘導体化を達成する。
【0112】
上記に例示した様々なポリマーのように、ポリマー残基は、例えば、本発明のポリペプチドへのポリマー残基の結合に典型的に関与するものの他に、官能基を含んでよいと考えられる。そのような官能基としては、例えば、カルボキシル基、アミン基、ヒドロキシ基およびチオール基が挙げられる。ポリマー残基上のこれらの官能基は、望ましければ、一般的にそのような官能基と反応し、例えば、疾患組織を含む体内の特定の組織の標的化を補助できる材料とさらに反応できる。追加官能基と反応できる代表的材料として、例えば、抗体を含むタンパク質、炭水化物、ペプチド、グリコペプチド、糖脂質、レクチン、およびヌクレオシドが挙げられる。
【0113】
親水性ポリマー残基の他に、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの誘導体化に使用される化学物質は糖類残基であってよい。生成できる代表的糖類としては、例えば、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、フルクトース、ソルビトール、マンニトールおよびセドヘプツロースなどの単糖類もしくは糖類アルコール、好ましくはフルクトース、マンノース、キシロース、アラビノース、マンニトールおよびソルビトールである単糖類;およびラクトース、サクロース、マルトースおよびセロビオースなどの二糖類が挙げられる。他の糖類として、例えば、イノシトールおよびガングリオシドの頭基が挙げられる。上記に例示したものの他に適切な糖類は、本明細書の開示に基づき当業者にとって容易に明らかになる。一般的に、誘導体化のために使用してよい糖類としては、アルキル化もしくはアシル化反応を介して本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドに結合できる糖類が挙げられる。多糖類、例えば、キトサンとの誘導体化も含まれる。
【0114】
さらに、本発明は、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドと、例えば、脂質(陽イオン性、陰イオン性、ポリマー化、電荷性、合成、飽和、不飽和、および上の任意の組み合わせなどを含む)安定剤との誘導体化も含む。
【0115】
さらに、本発明は本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの追加修飾を含む。そのような追加修飾は当技術分野において既知であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第6,028,066号に、誘導体化の方法などとともに具体的に提示されている。
【0116】
当技術分野において有意に、かつ従来使用されているボツリヌス毒素とは異なり、本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドは、本明細書のポリペプチドにて得られる有意なサイズの縮小および安定性の改善に鑑み、経皮送達方法によって有利に投与してもよい。米国特許第6,306,423号および第6,312,708号に記載されているようなバイオ適合するインプラント、ならびに経皮的パッチ系(例えば、米国特許出願公開第2004/0009180号など)および固溶体穿孔器(例えば、米国特許出願公開第2006/0074376号など)などには、有利な使用があり得る。Martantoら, Pharm. Res. 21:947 (2004); Wangら, J. Inv. Derm. 126:1080-87 (2006) および Xieら, Nanomedicine, Biotechnology and Medicine, 1:1-190 (200)に記載されているような従来のマイクロインジェクション技術を本明細書に提供するα神経毒組成物および方法と合わせて使用してもよい。Mitragotriら, Science 5225:850-853 (1995)に記載されているような超音波技術を本明細書に記載する組成物および方法と併せて使用してもよい。
【0117】
さらに、または代替的に、Chenら Nature Biotechnology, 24:455-60 (2006) および/または Prausnitz, Nature Biotechnology 24:416-17 (2006)に記載されているようなペプチドシャペロンの併用投与にも有利な使用があり得る。一実施形態では、経皮的ペプチド配列ACSSSPSKHCGとの併用投与は、均一サイズのタンパク質分子の無傷の皮膚を貫通した有効な経皮的タンパク質薬物送達を促進することが既に示されているため、特に考慮される。前述したChenらを参照されたい。
【0118】
本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドは、任意の従来の経路、例えば注射、反復注射、局所適用などにより、経時的に単独投与しても上記の薬物療法と組み合わせて投与(併用投与)してもよい。該投与は、例えば、腹腔内、筋肉内注射、腔内、皮下、または経皮的でよい。本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドの使用時は、注射投与など患部(例えば、不随意痙攣の筋肉、しわなど)への直接投与が好ましい。
【0119】
「併用投与される」という用語は、別の薬剤と実質的に同時投与されることを意味する。実質的に同時とは、シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドを他剤(例えば、抗しわ剤など)投与時とほぼ同時に対象に投与することを意味する。他剤は、シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドとは異なる製剤でも同一製剤の一部でもよい。
【0120】
併用薬は所望の効果(例えば、しわの減少)を生じさせるため、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドと協調的、付加的または相乗的に作用できる。他剤は有効量投与される。そのような量は、該薬剤を単独投与し、本発明のシナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドと併用しない場合に治療的有益性を提供する上での十分な量に満たなくてよい。当業者は必要な有効量を決定できる。
【0121】
本発明は下記の実施例を参照することによって、より完全に理解される。しかし、これらの実施例は、単に本発明の実施形態を例証することを意図しており、本発明の範囲を限定するものではない。
【0122】
(表1)長鎖α神経毒ポリペプチドを下に開示する。これらのポリペプチドの単離および/または修飾形態は、本明細書に記載する組成物および方法と合わせて使用できる。




【0123】
(表2)ループIIの先端領域の第5ジスルフィド結合を欠失し、本明細書に記載する組成物および方法と併せて使用できる天然長鎖α神経毒ポリペプチドを開示する。

【0124】
(表3)短鎖α神経毒ポリペプチドを開示する。これらのポリペプチドの単離および/または修飾形態は、本明細書に記載する組成物および方法と合わせて使用できる。

【実施例1】
【0125】
実験
ヘビ毒腺由来α神経毒をコードするcDNAの分子クローニング
下記の実験手順は、生体源としてアジアのコブラである タイコブラ(Naja kaouthia)を使用した長鎖α神経毒コーディングcDNAプールの分子クローニングを例示する。提供された神経毒ユニバーサルプライマー配列を用いた本手順は、コブラ科およびハイドロフィリダエ(Hydrofilidae)分類の任意の種からの類似配列のクローニングのために使用できることを当業者は理解する。
【0126】
単独のタイコブラ標本の毒腺を、該動物の断頭術直後、頭蓋骨から外科的に取り出した。抽出した腺は、氷上に置いたペトリ皿上でかみそりの刃によって即時に切開した。切開した腺組織は溶解緩衝液(10μL緩衝液/1mg組織)含有の2mLエッペンドルフチューブ中に移した。腺組織の溶解は、Thermomixer(Eppendorf AG, Hamburg Germany)上の溶解懸濁液を最大速度、4℃で、30分間ボルテックスにかけて完成させた。総RNAは、tRNAを付加しない以外はChomszinsky and Sacchi (Chomczynski, P., and Sacchi, N. (1987) Single-step method of RNA isolation by acid guanidinium thiocyanate-phenol-chloroform extraction. Anal. Biochem. 162, 156-159.)の方法に従い、抽出した。エタノール沈殿後、無菌のRNase未含有水50μL中にRNAペレットを溶解した。総RNAの完全性は変性ゲル電気泳動法によって検証した。該RNAは使用時まで−80℃でpH5.5の5mMクエン酸ナトリウム中に保存した。
【0127】
長鎖α神経毒をコードするcDNAプールは、二段階のnested RT-PCRプロトコールを用いて、タイコブラ由来の総毒RNA(total venom RNA)からクローニングした。1mM dNTPおよびオリゴ(d)T20プライマー(0.5μg;Invitrogen)の存在下にて、総毒RNA約2μgを65℃で5分間変性し、次いで氷上に置いた。逆転写(RT)反応を、RNase未含有水20μL、15U cMaster(登録商標)RT酵素(AMV RT, Eppendorf)、2U Prime(登録商標)RNase阻害剤(Eppendorf)および4μL 5X RTplusPCR(登録商標)緩衝液中でおこなった。該RT反応は42℃で1時間インキュベーションした。1.25U Taq DNAポリメラーゼ(Eppendorf)、200μM dNTP(Eppendorf)、1×Tuning(登録商標)緩衝液(Eppendorf)、2.5mM酢酸マグネシウム、0.2μM スリーフィンガー様毒素順方向ユニバーサルプライマー(ATGAAAACTCTGCTGCTGACC)および0.2μM スリーフィンガー様毒素逆方向ユニバーサルプライマー(CTCAAACTACAGAACTAGCAG)を含むPRC反応混合物50μLにRT反応混合物2μLを添加し、連続PCRの1回目を実施した。94℃で2分間初回鋳型変性後、Eppendorf(登録商標)Mastercyclerで下記の温度サイクルプログラム:94℃-15秒、59℃-30秒、68℃-60秒、を35サイクル実施した。第2のnested PCR工程のため、第1のPCR工程の反応液を、反応完了後にH2Oで1:100希釈した。その後、希釈反応混合物0.5μLを2回目のPCR反応の鋳型として使用した。
【0128】
2回目のPCRを、0.2μM特異的長鎖α神経毒順方向プライマー(GACTTAGGATACACCATAAG)および0.2μM特異的長鎖α神経毒逆方向プライマー(TTGAGTTTTGCTCTCATCCATC)を使用した以外は1回目のPCRと同条件で実施した。PerfectPrep(登録商標)Gel Clean-Up Kit(Eppendorf AG, Germany)を用いて、その後のクローニングのために300bpサイズの最終PCR生成物をゲル精製した。当業者に既知であるDNA断片ライゲーション、大腸菌形質転換、コロニースクリーニングおよびプラスミドDNA単離の標準手順を用いて、精製したPCR生成物をpGEM-Tプラスミドベクター(Promega, Madison, Wl)内に直接クローニングした。タイコブラ由来の長鎖α神経毒の正確なコード配列を決定するDNA配列決定のために計192の組換えクローンを選択した。タイコブラの毒腺からクローン化し、同定した独特な長鎖α神経毒配列をすべて表3に掲載する。
【0129】
(表4)タイコブラ毒腺からクローン化した独特な短鎖および長鎖α神経毒mRNAのアミノ酸配列。下の4番目の配列において、高度に保存された5番目システイン残基がアルギニンに置換され、ループII先端部においてニューロンnAChR内α7サブユニット結合にとって重要なジスルフィド結合形成を阻止している点に留意されたい。

【実施例2】
【0130】
ヒト筋肉nAChR(αl、βl、γ、δ)を発現するヒト胎児性骨格筋細胞の細胞培養
当技術分野において既知である任意の哺乳類細胞培養技術をヒト胎児性HSkMC培養に使用できる(pre-screened HSkMC, Cell Applications Inc., San Diego, Cat# S150-05f)。
【0131】
好ましいHSkMC細胞増殖技術は"Skeletal Muscle Cell Growth Medium" (Cell Applications Inc., San Diego, Cat# 151-500)を細胞供給者の推奨に従い90%大気および5%CO2雰囲気下、37℃で使用する。
【0132】
低用量を、1.5mL培地中3×105細胞の接種量を用いて35mm皿上で増殖させる。該培地を3日後に取り替え、6または7日目に最適AChR収率を得る。
【0133】
高用量では、プラスチックローラーボトル(Falcon Labware, Becton-Dickinson, Inc., Oxnard, California U.S.A.)を使用する。850cm2ボトルの場合、3×107細胞を培地150mL内に接種する;一方、1750cm2ボトルの場合、6×107細胞を培地300mL内に接種する。該培地は5日目に取り替え、9〜10日目に最適AChR収率を得る。
【実施例3】
【0134】
タイコブラ由来の長鎖α-コブラトキシン1の第5ジスルフィド結合の選択的還元およびアルキル化
ループIIにおける第5ジスルフィド結合選択的還元のため、1.2mM毒素をpH8.5、0.2Mトリス緩衝液、1mg/mL EDTA中2.5mMジチオトレイトールと4℃で90分間インキュベーションする。その後、メタノールに溶解した2,2'-ジチオピリジンを追加して最終濃度15mMとし、室温で1時間インキュベーションする。得られたアルキル化コブラトキシン-ジチオピリジンをゲルろ過(Bio-Gel P-2)およびHPLCクロマトグラフィー(Vydac C8)によって精製する。本手順はα-ブンガロトキシンおよびα-コブラトキシンと一般的なスリーフィンガー様フォールドを共有する任意の長鎖α神経毒の選択的還元に使用できることを当業者は理解する。例示した毒素はそれらの精製形態での商業的入手性に基づいて選択したに過ぎない。
【実施例4】
【0135】
結合検定のための細胞からのアセチルコリン受容体複合体の単離
AChRは、より高用量の培養も容易に同時進行できるが、典型的には850cm2ローラーボトル6または7本の培養物から一度に単離される。ヒト胎児性HSkMC培養からのAChR単離のために、以下の手順が通常使用される。そのサンプルはCell Applications Inc., San Diego, under catalogue No.151-500より入手可能である。
【0136】
培養の各850cm2ボトルに、9または10日目、実施例2に記載するように、増殖後、25mL回収用緩衝液(100mM NaCl、10mM Naリン酸緩衝液、10mM NaN3、15mM EDTA、2mM PMSF(フェニルメタンスルホニルフルオライド)、15mM IAA(ヨード酢酸)、および5mMベンズアミジン、pH7.5)を追加する。次いで細胞がプラスチックから離れるまでボトルを激しく振る。ボトル表面に付着したままの細胞は、無菌プラスチック細胞スクレーパーで慎重にこすり取る。緩衝液および細胞を氷上のボトル内に収集し、追加の100mL回収用緩衝液をボトルからボトルに移してローラーボトルを洗浄後、残りとともにプールする。次いでポリトロンホモジナイザーを使用し、発泡が起こる直前の速度で15秒間細胞を分離する。ホモジェネートを300,000g、4℃で30分間遠心分離して細胞膜および他の微粒子を収集する。典型的に、850cm2ボトルごとに約1.5gのペレットを回収する。これらのペレットを抽出用緩衝液(10mM Naリン酸塩、5mM EDTA、5mM EGTA、5mM IAA、5mMベンズアミジン、2mM PMSF、2%トリトンX-100、pH7.5)4容量中に入れ、ポリトロンで15秒間静かに懸濁する。4℃で静かに振って30分間抽出後、先のように調製物を遠心分離する。次いで抽出したnAChRを含む上清を吸引し、等分し、液体窒素中、−80℃で衝撃凍結し、さらに保存する。該nAChR抽出体のタンパク質濃度はBCA(登録商標)Protein Assay Kit-Reducing Agent Compatible(Pierce, Cat#3250)を用いて決定できる。
【実施例5】
【0137】
α神経毒結合特異性を決定する結合検定
結合検定は本質的に、マイクロタイターウェルプレートをコーティングするためにヒトnAChR(ニューロンまたは筋肉型)および標識トレーサーとしてのFITC標識α-ブンガロトキシン(Sigma-Aldrich, Cat#T9641)で濃縮された細胞抽出体を用いたELISAである。検出した定量シグナルは、Fluorescence Microtiter Plate Scanner上525nm RF単位で測定した標識トレーサー蛍光である。あるいは、より高い感受性のため、FITC標識トレーサーは、モノクローナル抗FITC抗体(Sigma-Aldrich, Cat#F5636)、抗マウスIgG(全分子)-バイオチン抗体(Sigma-Aldrich, Cat#B7264)およびストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ共役および化学発光ホスファターゼ基質(Sigma-Aldrich, Cat#S2890; Cat#)のサンドイッチ体で比色定量的に検出もできる。定量化のため、正確なモル濃度で重量測定的に調合したストックにて、0.1〜20nM範囲の一連のFITC標識α-ブンガロトキシン希釈液の蛍光(または化学発光)を記録することによって、蛍光RF単位を標識トレーサー毒素のモル濃度に関連づける。生成した蛍光検定曲線によって、測定した蛍光シグナルからの標識トレーサーのモル濃度の偏差が可能になる。それはまた当該検定の感受性閾値を決定するために使用する。ELISA検定用の96ウェルポリスチレンマイクロタイタープレートを準備するため、各ウェルをPBS(2〜5nMα1)で希釈したnAChR抽出体でコーティングする。したがって希釈した抽出体50〜150μL/ウェルを4℃で一晩インキュベーションする。続いて、3%BSA含有PBS 100〜150μL/ウェルにより4℃で2時間振とうするインキュベーションによって、ウェル内の非特異的結合部位を遮断する。nAChR抽出体の各バッチのため、飽和トレーサー濃度を実験的に決定する必要があり、該飽和トレーサー濃度で各ウェルのすべての特異的な毒素結合部位が使用される。したがって、各ロットにつき1プレートを1〜10nM範囲の標識トレーサー毒素の一連の希釈液によってインキュベーションし、蛍光シグナルの飽和に達した時にトレーサー濃度を決定する(通常2〜5nM)。達した蛍光シグナル飽和時の最低トレーサー濃度は、nAChR抽出体の同一バッチを共有するすべてのウェルに使用する。
【0138】
当該検定の第1工程において、1pM〜2nM範囲の連続希釈(100〜150μL)したアルキル化および非修飾の長鎖神経毒コンペティター(Sigma-Aldrich;α-コブラトキシン, Cat# C6903;α-ブンガロトキシン, Cat#T3019)を、室温で、PBS緩衝液中に少なくとも30分間インキュベーションする。コンペティター毒素でインキュベーションした後、飽和濃度(全ウェルにて等価)にFITC標識α-ブンガロトキシン(トレーサー)を追加し、さらに30分間インキュベーションする。525nmで残りの蛍光を測定する前に、各ウェルを150μL PBSで3回洗浄する。ヒルの式により、競合データを調整して計算した保護定数は先行技術(6)に示されたKd値に相当する。
【実施例6】
【0139】
化学的除神経効果の評価
a)後肢局所的化学的除神経検定:
本発明のシナプス後化学的除神経ポリペプチドのマウス腓腹筋内注射は、後肢機能にいくつかの効果をもたらす。肢麻痺は低用量にて観察され、α神経毒のより高用量の注射にも早期に一部応答する。本明細書で使用する「完全な肢麻痺」という語は、マウスが肢を握ることができないことと定義する。より高用量では、注射した肢のより全般的な一部機能損傷にさらに進行し、最終的には完全な後肢麻痺を発現する。「完全な後肢麻痺」は注射した肢における随意運動の完全な欠如と定義する。
【0140】
したがって、除神経程度の2測定法を利用するが、1つは完全な後肢麻痺であり、もう1つは完全な肢麻痺である。本明細書で使用する部分麻痺は肢麻痺も意味し、完全な麻痺は後肢麻痺も意味する。
【0141】
所与の調製物におけるシナプス後化学的除神経ポリペプチド量は、生物学的活性の異なる2単位を用いて測定する。神経毒の従来の検定標準活性単位は、マウスのLD50であり、1.0LD50は活性1.0単位に相当する。代替的な検定単位は中央値麻痺単位(MPU)であり、本明細書で使用する1.0MPUとはマウス集団50%に完全な後肢麻痺を起こすα神経毒の量である。これらの活性単位の決定方法を下記に詳述する。
【0142】
(b)中央値麻痺単位の決定:
マウス後肢麻痺は、Pearceら (1994) 128 Toxicol. App. Pharmacology 69.によって先に記載されているものに類似しており、当技術分野において認められている方法を用いた本発明のポリペプチドの筋肉内注射によって引き起こされる。簡単に述べると、18〜22gマウスの後肢の腓腹筋に本発明のα神経毒を注射する。神経毒活性は、右後肢の完全な麻痺を示すマウスの画分を評価(evaluating)することによって評価(assessed)する。完全な麻痺は、マウスの右後肢により体重を支えることまたは逃走することが不可能となって顕在化する。いったん完全な麻痺が起こると、通常、後肢は体に対して持ち上げられるかまたは引きずられる。これらの姿勢は完全な麻痺の主徴とみなされる。
【0143】
α神経毒の5〜6希釈を1希釈につきマウス10匹に注射する。α神経毒用量は1.25倍で等比級数的に増量する。用量は、対称的設計を得るために、周知の統計的考察を応用してED50(中央値有効量)を中心とする(Finney, D. J. (1978) Statistical Method in Biological Assay Charles Griffin & Co., London)。バイアスを避けるため、ED50決定前に死亡が発生しない神経毒用量のみプロビット解析に利用する。麻痺率はα神経毒の各用量にて決定し、統計的パッケージSPSS-X(SPSS, Inc., Chicago, III.)に備わるプロビットプログラムを使用したデータに基づき標準的なプロビット解析を実施する(Bliss, C. I. (1938) 11 Q.J. Pharm. Pharmac. 192-216)。このプログラムは回帰分析による最良線を推定し、切片値およびスロープ値を最大尤度法によって推定する。この推定が有意である場合、標準的なカイ二乗適合度検定を使用し、次いで異質性因子を信頼限界の計算に使用する。この種の実験から得られたED50は、本明細書において特に中央値麻痺単位(MPU)と呼ぶ。
【0144】
(c)LD50の決定:
α神経毒サンプルを希釈する。一般的に、α神経毒の5希釈および1希釈につきマウス5匹もしくは10匹を使用する。いくつもの異なる連続希釈を使用し、連続的用量間の比率を決定する。希釈は、Finney, D. J. (1978) Statistical Method in Biological Assay (Charles Griffin & Co., London)に記載されているものに類似した周知の統計的手法を用いて、対称性設計に達するようにほぼ等比級数的に増大する。α神経毒の希釈サンプルは18〜22gのマウスへ腹腔内注射によって投与する。注射後、該マウスを4日間観察する。
【0145】
死亡率は各神経毒用量で決定し、上記プロビットプログラムを使用してデータにプロビット解析を実行する。従来の統計的実施を踏まえ、Finney, D. J., (1971) Probit Analysis (第3版) University Press, Cambridgeに記載されているものに類似した当技術分野において認められている方法を用いてLD50推定の95%信頼区間を決定した。再度、この場合もピアソンのカイ二乗適合度検定を使用し、この推定が有意である場合は、異質性因子(heterogeneity factor)を信頼限界の計算に使用する。
【実施例7】
【0146】
用量効果試験および比較
ラット計50匹を試験する(5群、各10匹)。全動物を腹腔内投与したペントバルビタール(60mg/kg)で麻酔し、生理的モニタリング変数で決定した補足用量で維持する。気管切開術を実施し、PCO2を約35トルに保った室内空気をラットに呼吸させる。血圧および動脈血液ガス測定のために頚動脈にカニューレを挿入する。静脈内注射およびさらなる薬物投与のために右頚静脈にカニューレを挿入する。実験全体を通して、体温は36〜38℃に維持する。膝窩の坐骨神経を露出させ、それをDigistim神経刺激装置を用いて4連刺激で刺激する。誘発された応答を記録するためラット後肢をアイソメトリックフォーストランスデューサー(isometric force transducer)に結合させて前脛骨筋収縮を測定する。シナプス後化学的除神経ポリペプチドの投与前、血圧、心拍数および筋収縮力のベースライン測定値を5分間および試験期間中5分間隔で測定する。
【0147】
上の実施例6に記載するように、分析の初回投与量はマウスにて決定した生物学的有効量に基づく。最初に試験した動物の発現時、最大効果および効果の持続時間に基づき、次の動物の用量を倍量または半量のいずれか一方にする。弛緩度が本初回投与時から20分間を超えて最大レベルで維持された場合、次に試験する用量を倍量にする。この過程は、見出されたほぼ最大の筋肉弛緩を引き起こす用量が見出されるまで継続する。
【0148】
2つのシナプス後化学的除神経ポリペプチドを初回試験にて試験し、従来のシナプス前標的剤と比較する。試験した各化合物において、筋肉弛緩の発現、弛緩の持続時間およびED50推定値を、誘発されたフォーストランスデューサーの応答から決定する。弛緩の発現時は、誘発された応答が投薬前ベースラインの5%まで低下した時点と定義する。加えて、臨床的持続時間は、薬剤投与時から誘発された筋肉応答がその投薬前ベースラインの25%まで回復するまでの時間と定義され、回復時間(誘発された応答がベースラインの75%まで回復するまでの時間と定義)も決定する。データを各化合物に対して要約する。これらの結果は、該ポリペプチドが神経筋接合部において生物学的活性を有し、麻酔中に投与される従来の非脱分極性神経筋遮断薬にみられる応答の擬態である骨格筋麻痺を引き起こすことを示す。
【実施例8】
【0149】
α神経毒の化学的除神経効果のインビボ評価
実験は、腹腔内注射したα-クロラロース(80mg kg-1)およびペントバルビトンナトリウム(5mg kg-1)の混合物によって麻酔した雌雄両性のネコを用いて行う。動物は、1回の呼吸量を13mL kg-1とし、1分間に26回の呼吸数で室内空気を呼吸させる。左右の後肢は、足首および膝の関節に挿入したドリルによって固定する。坐骨神経刺激時の前脛骨筋およびヒラメ筋の収縮応答を記録する。坐骨神経の刺激は、持続時間0.2ミリ秒、最大攣縮を起こすのに必要な強度よりも強い矩形波パルスを使用し、0.1Hz〜200Hzの周波数で行う。動脈血圧はStatham PC45型圧力変換器を用いて頚動脈から記録する。心拍数を表示するカルジオタコグラフを始動させるには、血圧パルスを使用する。いくつかの実験では、両迷走神経を結紮し、100秒間隔で、周波数2〜5Hz、パルス持続時間0.5ミリ秒で、心拍数を最も低下させるに必要な強度よりも強い強度のパルスで10秒ずつ右迷走神経を刺激する。頚部交感神経の節前を、5Hzの周波数で10秒間ずつ刺激し、かつ瞬膜を最も強く収縮する刺激を加えて、100秒ごとに瞬膜の収縮を引き起こす。筋肉の収縮応答はGrass FT03C型およびFT10C型力変位変換器を用いて記録する。すべての応答はGrass model 5インク記録式オシログラフで表示する。
【0150】
本発明のシナプス後性標的ポリペプチドの有効性評価において、両前脛骨筋筋肉、すなわち注射した筋肉および溢出評価対照としての役割を果たす反対側の筋肉の応答を記録する。本発明のシナプス後性標的ポリペプチドは神経筋接合部の筋肉アセチルコリン受容体に対し高い特異性を有する。したがって、自律刺激に対する組織応答において毒素に起因する効果は何も観察されないことが期待される。全身性循環への溢出がない点も、自律作用の欠如に寄与する一因であることが期待される。
【0151】
本明細書に引用されたすべての参考文献および特許は、その全体を参照することにより本明細書に明白に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離されたシナプス後化学的除神経(postsynaptic chemodenervation)ポリペプチドであって、該ポリペプチドが、α7nAChR、α3nAChR、α4nAChR、およびα2nAChRを含むニューロンnAChRのいずれかに対するKDよりも、α1含有ヒト筋肉nAChRに対して少なくとも100倍低いKDを示す、単離されたシナプス後化学的除神経ポリペプチド。
【請求項2】
前記化学的除神経ポリペプチドが、天然の短鎖α神経毒を含む、請求項1に記載の化学的除神経ポリペプチド。
【請求項3】
前記化学的除神経ポリペプチドが、スリーフィンガー様フォールドのループIIにおける第5ジスルフィド結合を欠失した天然の長鎖α神経毒を含む、請求項1に記載の化学的除神経ポリペプチド。
【請求項4】
前記化学的除神経ポリペプチドが、スリーフィンガー様フォールドのループIIにおける第5ジスルフィド結合を欠失した、修飾された長鎖α神経毒を含む、請求項1に記載の化学的除神経ポリペプチド。
【請求項5】
組換えα神経毒を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の化学的除神経ポリペプチド。
【請求項6】
前記シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドが、10-8M-1未満の平衡解離定数(KD)にて、α1含有ヒト筋肉ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)から解離する、請求項1に記載の化学的除神経ポリペプチド。
【請求項7】
前記シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドが、10-4min-1未満の平衡解離速度(koff)にて、α1含有ヒト筋肉ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)と本質的に不可逆的な結合を行う、請求項1に記載の化学的除神経ポリペプチド。
【請求項8】
前記シナプス後部を標的とした化学的除神経ポリペプチドが、106M-1min-1超の平衡結合速度(kon)にて、α1含有ヒト筋肉ニコチン性アセチルコリン受容体(nAChR)と即時に結合する、請求項1に記載の化学的除神経ポリペプチド。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか一項に記載のシナプス後化学的除神経ポリペプチドを含む医薬組成物。
【請求項10】
前記化学的除神経ポリペプチドが、単独のα神経毒種である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項11】
前記化学的除神経ポリペプチドが、2種以上のα神経毒種の定義された混合物(defined mixture)である、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項12】
経皮的ペプチドをさらに含む、請求項9に記載の医薬組成物。
【請求項13】
前記経皮的ペプチドが、配列ACSSSPSKHCGを含む、請求項12に記載の医薬組成物。
【請求項14】
骨格筋の神経筋接合部における筋肉α1nAChRを選択的に遮断することによって、一過性の骨格筋麻痺を誘発する方法であって、それを必要としている患者へ請求項9から13のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することを含む、方法。
【請求項15】
前記患者が外科手術を施行され、かつ、外科手術の前、間、または後に前記医薬組成物を投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
皮膚組織の弛緩または緩和を増大するために、皮下から皮膚組織に存在する骨格筋または骨格筋群の除神経を増大するための有効量で、請求項9から12のいずれか一項に記載の医薬組成物を患者の皮膚組織に局所投与することを含む、皮膚組織の弛緩方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−523935(P2011−523935A)
【公表日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−547761(P2010−547761)
【出願日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/034578
【国際公開番号】WO2009/105585
【国際公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(510224413)マイオセプト インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】