説明

シフトレバー装置

【課題】部品点数の削減と組み付け性の向上を可能とする。
【解決手段】シフトレバー装置1は、シフトレバーを左右に揺動操作することでオートマチックモードとマニュアルモードの切替が可能であり、レバー部材10とロック部材40の上端部42の係合は、レバー部材10に設けられた長穴15と、上端部42に設けられて長穴15に入る棒状部42Aとによって構成されている。ロック部材40は、レバー部材10の揺動操作により、棒状部42Aがレバー部材10の長穴15の内周面によって押されることで回動し、マニュアルモードにおいて下端部43がオートマチック用切替部材20の左側面20Lから突出して凹部33に係合することでオートマチック用切替部材20の揺動を規制し、オートマチックモードにおいて下端部43が凹部33から離脱して凹部33との係合を解除することでオートマチック用切替部材20の揺動規制を解除するように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オートマチックモードとマニュアルモードの切替が可能なシフトレバー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シフトレバーを左右に揺動操作することでオートマチックモードとマニュアルモードの切替が可能なシフトレバー装置が知られている。そして、このようなシフトレバー装置としては、例えば、特許文献1に示すように、前後および左右に揺動操作可能なシフトレバー(レバー部材)と、オートマチックモードのときにレバー部材と一体に前後に揺動してシフトポジションを切り替える伝達部材(オートマチック用切替部材)とを備えたものがある。
【0003】
上記したような構成のシフトレバー装置においては、マニュアルモードに切り替えたときに、オートマチック用切替部材が自動変速機に連結されたワイヤケーブルに引かれることなどによって回動(揺動)しようとするので、これを規制するためにロック機構が設けられている。
【0004】
このようなロック機構として、従来、オートマチック用切替部材に対し左右に回動可能となるように組み付けられたロック片と、ロック片の一端をオートマチック用切替部材のレバー部材側の側面から突出させ、他端をレバー部材側とは反対側の側面から突出させる付勢力を与えるバネとを有するロック機構が知られている。
【0005】
このような構成では、マニュアルモードのときには、ロック片の他端が車両に固定された部位に設けられた凹部に係合してオートマチック用切替部材の揺動を規制し、オートマチックモードのときには、レバー部材がロック片の一端をバネの付勢力に抗して押し込んで回動させ、他端を凹部から離脱させることでオートマチック用切替部材の揺動を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−206017号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前記したような従来のロック機構は、ロック片とバネの少なくとも2部品を必要とし、さらにバネを有するのでロック片をオートマチック用切替部材に組み付けにくいという問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような背景に鑑みてなされたものであり、部品点数の削減と組み付け性の向上を可能とするロック機構を備えるシフトレバー装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記した目的を達成するための本発明は、シフトレバーを左右に揺動操作することでオートマチックモードとマニュアルモードの切替が可能なシフトレバー装置であって、前後および左右に揺動操作可能な棒状のシフトレバーを有するレバー部材と、オートマチックモードのときに前記レバー部材と一体に前後に揺動してシフトポジションを切り替えるオートマチック用切替部材と、前記オートマチック用切替部材の前記レバー部材が配置された側とは反対側の側面に隣接する固定されたベース部材と、マニュアルモードのときに前記オートマチック用切替部材の前後への揺動を規制するロック部材とを備え、前記ロック部材は、前記シフトレバーの長手方向に略延びるとともに、前記オートマチック用切替部材に対して左右に回動可能に軸支されており、当該軸支された部分から延びて前記レバー部材に係合する一端部と、前記軸支された部分から前記一端部とは逆方向に延びる他端部とを有し、前記レバー部材と前記一端部の係合は、一方に設けられた前記シフトレバーの長手方向に長い長穴と、他方に設けられて前記長穴に入る棒状部とによって構成され、前記ベース部材は、前記他端部に対面する凹部を有しており、前記ロック部材は、前記レバー部材の揺動操作により、前記棒状部または前記長穴の内周面が前記レバー部材の前記長穴の内周面または前記棒状部によって押されることで回動し、マニュアルモードにおいて前記他端部が前記オートマチック用切替部材の前記ベース部材側の側面から突出して前記凹部に係合することで前記オートマチック用切替部材の揺動を規制し、オートマチックモードにおいて前記他端部が前記凹部から離脱して前記凹部との係合を解除することで前記オートマチック用切替部材の揺動規制を解除するように構成されたことを特徴とする。
【0010】
このような構成によれば、レバー部材とロック部材の一端部の係合が、一方に設けられたシフトレバーの長手方向に長い長穴と、他方に設けられて長穴に入る棒状部とによって構成されているので、レバー部材の揺動操作により、バネを使用することなく、ロック部材を左右に回動させることができる。その結果、マニュアルモードにおいてロック部材の他端部がオートマチック用切替部材のベース部材側の側面から突出して凹部に係合することでオートマチック用切替部材の揺動を規制し、オートマチックモードにおいて他端部が凹部から離脱して凹部との係合を解除することでオートマチック用切替部材の揺動規制を解除することが可能となる。すなわち、上記構成によれば、バネを必要としないので、ロック機構の部品点数を削減することができる。また、バネを必要としないことで、バネを有する従来のロック機構と比較して、ロック部材を容易にオートマチック用切替部材に組み付けることが可能となる。
【0011】
また、前記したシフトレバー装置において、前記オートマチック用切替部材は、当該オートマチック用切替部材が軸支する前記ロック部材を前後から挟む対面する一対の壁を有しており、前記壁のうち、一方は、前記ロック部材を左右に回動可能に軸支する軸支部を有し、他方は、少なくとも前記軸支部と対面する位置に左右に長手方向を向けた前記ロック部材の一部が入り込み可能な空間と、前記一方に軸支されて前記シフトレバーの長手方向に長手方向を向けた前記ロック部材の脱落を防止する脱落防止部とを有することが望ましい。
【0012】
このような構成によれば、左右に長手方向を向けたロック部材の一部を他方の壁に設けられた空間に挿入し、この状態でロック部材を一方の壁の軸支部に容易に組み付けることができる。また、ロック部材の長手方向をシフトレバーの長手方向に向けた後は、ロック部材の一部が一方の壁と他方の壁の脱落規制部とによって挟まれることになるので、オートマチック用切替部材からのロック部材の脱落を防止することができる。
【0013】
また、前記した各シフトレバー装置において、前記ロック部材の重心は、前記ロック部材の回動中心を通る鉛直面に対し、前後から見て、常に前記レバー部材が配置された側に位置している構成とすることができる。
【0014】
このような構成によれば、ロック部材には自重で一方向に回動しようとする力が作用することになるので、長穴の内周面のうちの左側または右側の面と棒状部は、当接した状態を維持することとなる。これにより、ロック部材のがたつきや、がたつきに伴う音の発生を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、レバー部材の揺動操作により、バネを使用することなく、ロック部材を左右に回動させることができるので、ロック機構の部品点数を減らすことができるとともに、ロック機構(ロック部材)の組み付け性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態に係るシフトレバー装置の斜視図である。
【図2】シフトレバー装置の分解斜視図である。
【図3】図2のX−X断面図に相当する図であり、オートマチックモードのときの状態を示す図(a)と、マニュアルモードのときの状態を示す図(b)である。
【図4】ロック部材とオートマチック用切替部材の組み付けを説明する図(a)〜(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明において、前後、左右、上下は、シフトレバー装置を備える車両(本実施形態では右ハンドル車とし、運転席と助手席の間にシフトレバー装置が備え付けられているものとする。)を運転する運転者を基準とする。
【0018】
また、図1に示すように、本実施形態において、オートマチックモード(以下、「Aモード」という。)は、前から順に、P位置(駐車位置)、R位置(後退位置)、N位置(中立位置)、D位置(走行位置)、2位置(2速位置)、L位置(1速位置)と前後に並んだシフトポジションを切り替えるモードである。また、マニュアルモード(以下、「Mモード」という。)は、AモードのD位置から右側(運転者側)にシフトレバー11を操作したシフトポジションであり、M位置からシフトレバー11を前(+側)に操作することでシフトアップすることができ、M位置からシフトレバー11を後(−側)に操作することでシフトダウンすることが可能なモードである。
【0019】
<シフトレバー装置の構成>
図1に示すように、シフトレバー装置1は、レバー部材10と、オートマチック用切替部材20と、ベース部材30(図2参照(図1では図示省略))と、ロック部材40とを主に備え、シフトレバー11を左右に揺動操作することでAモードとMモードの切替が可能に構成されている。より詳細に、本実施形態のシフトレバー装置1は、D位置からシフトレバー11を右に揺動操作することでMモード(M位置)に切り替えることができ、M位置からシフトレバー11を左に揺動操作することでAモード(D位置)に切り替えることができるように構成されている。
【0020】
レバー部材10は、運転者が操作するシフトレバー11と、上フレーム13と、下フレーム14とを主に有している。
シフトレバー11は、運転者が把持するシフトノブ11Aと、棒状のロッド11Bとを主に有しており、上フレーム13の上部に固定されている。
【0021】
上フレーム13は、下フレーム14に対し左右に揺動可能に支持されている(図3参照)。図2に示すように、上フレーム13の前面の中央部付近には、略上下方向(シフトレバー11の長手方向)に長い略長円状の長穴15が設けられている。この長穴15には、ロック部材40の後述する棒状部42Aが係合する。
【0022】
下フレーム14は、略円筒状の軸受部14Aを有しており、この軸受部14Aがベース部材30の回動軸32に係合することで、ベース部材30に対して前後に回動可能に支持される。
【0023】
以上のように、下フレーム14がベース部材30に対して前後に回動可能に支持され、上フレーム13が下フレーム14に対し左右に揺動可能に支持されていることで、シフトレバー11は、前後および左右に揺動操作可能となっている。なお、車両に取り付けられたシフトレバー装置1は、Mモードのとき、シフトレバー11を前(+側)または後(−側)に揺動操作することで、上フレーム13が変速機のギヤ段を切り変えるマニュアルスイッチ(図示省略)に当接するようになっている。
【0024】
図3(a),(b)に示すように、上フレーム13の左側面の上部には、左方(オートマチック用切替部材20)に向けて突出する連動凸部16が設けられている。この連動凸部16は、図3(a)に示すAモードにおいてオートマチック用切替部材20に設けられた連動穴23に係合し、図3(b)に示すMモードにおいて連動穴23から離脱する。このような構成により、Aモードのときにはレバー部材10とオートマチック用切替部材20が一体に前後に揺動可能となり、Mモードのときにはレバー部材10が単独で前後に揺動可能となっている。
【0025】
図2に示すように、オートマチック用切替部材20は、側面視略三角形様のプレート状の部材であり、Aモードのときにレバー部材10と一体に前後に揺動してシフトポジションを切り替える。このオートマチック用切替部材20は、軸受部21と、ケーブル取付部22と、レバー部材10の連動凸部16と係合可能な連動穴23と、収容穴24とを主に有している。
【0026】
軸受部21は、オートマチック用切替部材20の下部に設けられた略円筒状の部分であり、レバー部材10の軸受部14Aの一部が回動可能に係合するとともに、ベース部材30の回動軸32に係合する。これにより、オートマチック用切替部材20が、ベース部材30に対して前後に回動可能に支持される。
【0027】
ケーブル取付部22は、オートマチック用切替部材20の上部前側に設けられた右方に向けて突出するボス状の部分であり、Aモードのときに変速機のギヤ段を切り替えるためのプッシュプルケーブル50(図1参照)が取り付けられる。
【0028】
このような構成により、オートマチック用切替部材20がレバー部材10と一体に揺動するAモードのときには、シフトレバー11を前後に揺動操作することで、プッシュプルケーブル50が押し引きされて自動変速(シフトポジションの切り替え)が実現されるようになっている。なお、オートマチック用切替部材20とレバー部材10の連動が解除されるMモードのときには、シフトレバー11を前後に揺動操作してもオートマチック用切替部材20は揺動しないため、プッシュプルケーブル50によるシフトポジションの切り替えは行われない。
【0029】
収容穴24は、軸受部21とケーブル取付部22の間に設けられた略上下方向に長い貫通孔であり、ロック部材40が入り込んだ状態で配置される(図1参照)。この収容穴24は、内周の壁として、ロック部材40を前後から挟む対向する一対の壁、具体的には、後壁25(壁のうちの一方)と前壁26(壁のうちの他方)を有している。
【0030】
後壁25には、軸支部の一例としての軸支穴25Aが設けられている。後壁25は、軸支穴25Aにロック部材40の後述する軸部41が係合することで、ロック部材40を左右に回動可能に軸支する。
【0031】
前壁26は、脱落防止部26Aと、空間26Bとを有している。
脱落防止部26Aは、前壁26の下側部分を構成しており、後壁25との間で、後壁25に軸支されて略上下方向に長手方向を向けたロック部材40(図4(c)の実線参照)の後述する下端部43を挟むことで、軸支穴25Aからのロック部材40の脱落を防止する。
【0032】
空間26Bは、脱落防止部26Aの上側であって軸支穴25Aと対面する位置に形成された凹状の空間である。この空間26Bは、その上下の幅が、図4(a),(b)に示すように、左右に長手方向を向けたロック部材40の一部(下端部43)が入り込むことができるような幅となっている。
【0033】
図2に示すように、ベース部材30は、車両(車台やフレームなど)に対し固定された部材である。このベース部材30は、オートマチック用切替部材20の左側面20L(レバー部材10が配置された側とは反対側の側面(図3参照))に隣接する隣接部31を有し、当該隣接部31に回動軸32と凹部33が設けられている。
【0034】
回動軸32は、右方に向けて突出するように設けられており、前記したように、オートマチック用切替部材20の軸受部21とレバー部材10の軸受部14Aを前後に回動可能に支持する。
【0035】
凹部33は、図3(a)に示すように、Aモードにおいて、隣接部31のロック部材40(下端部43)と対面する位置に設けられている。この凹部33には、後述するように、Mモードにおいて、ロック部材40の下端部43が係合する(図3(b)参照)。凹部33の前後の幅は、下端部43が係合したときに下端部43(ロック部材40)が前後に大きく動かないような幅となっている。
【0036】
ロック部材40は、Mモードのときにオートマチック用切替部材20の前後への揺動を規制する部材であり、オートマチック用切替部材20の収容穴24に配置されている。図2に示すように、ロック部材40は、上下方向(シフトレバー11の長手方向)に略延びており、後方へ向けて突出する円柱状の軸部41と、上端部42(一端部)と、下端部43(他端部)とを主に有している。
【0037】
軸部41は、オートマチック用切替部材20の軸支穴25Aに係合する。これにより、ロック部材40がオートマチック用切替部材20に対して左右に回動可能に軸支されることとなる。
【0038】
上端部42は、軸部41の基端部付近(オートマチック用切替部材20に軸支された部分)から略上方(右斜め上方)に向けて延びており、レバー部材10に係合する。より詳細に、レバー部材10と上端部42の係合は、レバー部材10に設けられた略上下方向に長い長穴15と、上端部42の上部後面に後方に向けて突出するように設けられて長穴15に入る棒状部42Aとによって構成されている。棒状部42Aは、レバー部材10の左右への揺動に伴って、長穴15内を長穴15が延びる方向に沿って移動することができるように係合している。
【0039】
下端部43は、軸部41の基端部付近から上端部42とは逆方向である下方に向けて延びている。この下端部43は、レバー部材10の左右への揺動に伴ってロック部材40が左右に回動することで、図3(b)に示すMモードにおいて、オートマチック用切替部材20の左側面20L(ベース部材側の側面)から突出し、図3(a)に示すAモードにおいて、左側面20Lに対して没入する(略面一となる)ようになっている。
【0040】
図3(a),(b)に示すように、ロック部材40の重心Gは、ロック部材40(軸部41)の回動中心Cを通る鉛直面PLに対し、前後から見て、常に(モードを問わずに)レバー部材10が配置された右側に位置している。これによれば、ロック部材40には自重で一方向(図3の反時計回り方向)に回動しようとする力が作用することになるので、長穴15の内周面のうちの右側の面と棒状部42Aは、モードを問わずに、当接した状態を維持することとなる。
【0041】
その結果、ロック部材40のがたつきや、がたつきに伴う音(がたつき音)の発生を抑制することが可能となる。なお、本実施形態においては、長穴15の内周面と棒状部42Aの間に図示しない潤滑剤(グリスなど)が塗られているので、より確実にがたつき音を抑制することができるようになっている。
【0042】
ちなみに、本実施形態(図3)においては、ロック部材40の重心Gが上端部42にあるが、これに限定されず、下端部43にあってもよい。
【0043】
<シフトレバー装置の動作>
次に、シフトレバー装置1の動作、より詳細には、ロック部材40の動作と作用について説明する。
【0044】
図3(a)に示すAモードの状態(D位置)から、図3(b)に示すように、運転者がシフトレバー11(レバー部材10)を右に揺動操作すると、棒状部42Aがレバー部材10の長穴15の内周面の左側の面に押されることで、ロック部材40が反時計回り方向に回動する。
【0045】
そうすると、Mモードにおいて、ロック部材40の下端部43がオートマチック用切替部材20の左側面20Lから突出して、ベース部材30の凹部33に係合する。これにより、ロック部材40およびロック部材40を支持するオートマチック用切替部材20の前後への揺動が規制されることとなる。
【0046】
また、このとき、レバー部材10の連動凸部16とオートマチック用切替部材20の連動穴23との係合が解除されるので、レバー部材10は単独で前後に揺動可能となる。これにより、運転者は、シフトレバー11(レバー部材10)を、M位置から前に操作してシフトアップしたり、M位置から後に操作してシフトダウンしたりすることができる。
【0047】
なお、Mモードにおいて、シフトレバー11をM位置から後に揺動操作すると、長穴15がロック部材40の棒状部42Aから抜ける方向にレバー部材10が揺動することとなる。そこで、本実施形態においては、シフトレバー11をM位置から後に揺動操作した場合であっても、長穴15と棒状部42Aが抜けないように、長穴15の深さや棒状部42Aの長さがそれぞれ設定されている。
【0048】
図3(b)に示すMモードの状態(M位置)から、図3(a)に示すように、運転者がシフトレバー11(レバー部材10)を左に揺動操作すると、棒状部42Aがレバー部材10の長穴15の内周面の右側の面に押されることで、ロック部材40が時計回り方向に回動する。
【0049】
そうすると、Aモードにおいて、ロック部材40の下端部43がオートマチック用切替部材20の左側面20Lに対して没入して、ベース部材30の凹部33から離脱する。これにより、ロック部材40とベース部材30(凹部33)との係合が解除されるので、オートマチック用切替部材20の前後への揺動規制が解除されることとなる。
【0050】
また、このとき、レバー部材10の連動凸部16とオートマチック用切替部材20の連動穴23とが係合するので、レバー部材10とオートマチック用切替部材20が一体に前後に揺動可能となる。これにより、運転者は、シフトレバー11(レバー部材10)を前後に操作することで、シフトポジションをD位置からN位置や2位置などに切り替えることができる。
【0051】
以上説明したように、本実施形態のシフトレバー装置1によれば、レバー部材10とロック部材40(上端部42)の係合が、レバー部材10に設けられた長穴15と、ロック部材40に設けられた棒状部42Aとによって構成されているので、レバー部材10の揺動操作により、バネを使用することなく、ロック部材40を左右に回動させることができる。そして、このような構成により、Mモードにおいてオートマチック用切替部材20の揺動を規制し、Aモードにおいてオートマチック用切替部材20の揺動規制を解除することが可能となっている。
【0052】
したがって、本実施形態によれば、シフトレバー装置1のロック機構は、バネを必要としないので、ロック機構の部品点数を削減することができる。また、バネを必要としないことで、バネを有する従来のロック機構と比較して、ロック部材40を容易にオートマチック用切替部材20に組み付けることができる。
【0053】
<シフトレバー装置の組み立て>
ここで、ロック部材40とオートマチック用切替部材20の組み付けを中心とした、シフトレバー装置1の組み立てについて説明する。
【0054】
図4(a)に示すように、ロック部材40をオートマチック用切替部材20に組み付けるとき、まず、ロック部材40の長手方向を左右に向け、その状態で、ロック部材40を下端部43側から収容穴24の空間26B(図4(b)参照)に挿入する。そして、図4(b)に示すように、ロック部材40の軸部41とオートマチック用切替部材20の軸支穴25Aの位置を合わせ、軸部41と軸支穴25Aを係合する。その後、図4(c)に示すように、ロック部材40を回動させて、その長手方向を上下方向に向けることで、ロック部材40をオートマチック用切替部材20に組み付けることができる。
【0055】
本実施形態においては、収容穴24の前壁26に形成された空間26Bにより、上記したように、ロック部材40をオートマチック用切替部材20に容易に組み付けることができる。なお、ロック部材40とオートマチック用切替部材20を組み付けた後(ロック部材40の長手方向を上下方向に向けた後)は、下端部43の一部が常に収容穴24の後壁25と脱落防止部26A(前壁26の下側部分)とによって挟まれることになるので、オートマチック用切替部材20からのロック部材40の脱落を防止することができるようになっている。
【0056】
次に、図2を参照しながら説明すると、レバー部材10の長穴15の外周壁とオートマチック用切替部材20に組み付けられたロック部材40の棒状部42Aとが互いに干渉しないような角度で、レバー部材10の軸受部14Aとオートマチック用切替部材20の軸受部21を係合し、その後、レバー部材10またはオートマチック用切替部材20を回動させて棒状部42Aと長穴15を係合する。そして、レバー部材10の連動凸部16(図3参照)とオートマチック用切替部材20の連動穴23が係合するように、レバー部材10をオートマチック用切替部材20に対して回動させる(図1参照)。これにより、レバー部材10、オートマチック用切替部材20およびロック部材40を互いに組み付けることができる。
【0057】
最後に、ベース部材30の回動軸32にレバー部材10の軸受部14Aとオートマチック用切替部材20の軸受部21を係合させ、ベース部材30にレバー部材10とオートマチック用切替部材20を組み付けることで、本実施形態に係るシフトレバー装置1を組み立てることができる。
【0058】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではない。具体的な構成については、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。
【0059】
前記実施形態で示した各部材の構成(形状など)は一例であり、同等の作用効果を発揮するものであれば、本発明は前記実施形態の構成に限定されるものではない。具体的には、前記実施形態では、オートマチック用切替部材20は、側面視略三角形様の形状をなしていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、細長い板状をなしていてもよい。また、前記実施形態では、レバー部材10は、下フレーム14が前後に回動可能に支持され、上フレーム13が左右に揺動可能に支持されることで、前後および左右に揺動可能となっていたが、本発明はこれに限定されず、例えば、ピボット軸を備えていてもよい。
【0060】
前記実施形態では、ロック部材40の重心Gが、ロック部材40の回動中心Cを通る鉛直面PLに対し、前後から見て、常に右側(レバー部材10が配置された側)に位置していたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ロック部材の重心は、ロック部材の回動中心を通る鉛直面に対し、前後から見て、常にレバー部材が配置された側とは反対側に位置していてもよい。
【0061】
なお、前記実施形態のように、ロック部材40の重心Gが常にレバーに配置された側に位置していると、棒状部42Aは常に長穴15の内周面の右側の面に当接することとなる。シフトレバー11を揺動操作したとき、棒状部42Aは長穴15の内周面の右側の面に沿って移動するので、棒状部42Aが常に長穴15の内周面の右側の面に当接していることで、ロック部材40の動作を安定させることができるとともに、がたつき音をより確実に抑制することができる。
【0062】
前記実施形態では、オートマチック用切替部材20の一対の壁のうち、後壁25が軸支穴25A(軸支部)を有し、前壁26が脱落防止部26Aと空間26Bとを有する構成であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、前壁26が軸支部を有し、後壁25が空間と脱落防止部とを有する構成であってもよい。
【0063】
前記実施形態では、オートマチック用切替部材20の軸支部として、軸支穴25Aを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、軸支部は突出した軸であってもよい。この場合、ロック部材のオートマチック用切替部材に軸支される部分は、オートマチック用切替部材の軸支部(軸)と係合する穴(凹部)とすることが望ましい。
【0064】
前記実施形態では、オートマチック用切替部材20の空間26Bとして、軸支穴25A(軸支部)と対面する位置に形成された凹状の空間(凹部)を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、オートマチック用切替部材の空間は、軸支部と対面する位置に形成された切欠(図2において凹状の空間26Bの底部(前壁)がないような構成)であってもよい。なお、本発明において、空間は、ロック部材の組み付け性向上のために、少なくとも軸支部と対面する位置に形成されていれば足りるが、これに限定されず、例えば、脱落防止部の上方が開放されているような構成(すべて空間であるというような構成)であってもよい。
【0065】
前記実施形態では、車両(車台やフレームなど)に固定されたベース部材30を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベース部材30は車台やフレームそのものであってもよい。なお、本発明において、ベース部材の凹部は、貫通孔であってもよいし、底のある穴や切欠などであってもよい。
【0066】
前記実施形態では、レバー部材10とオートマチック用切替部材20がベース部材30に回動可能に支持されていたが、本発明はこれに限定されず、レバー部材とオートマチック用切替部材は車両に設けられる他の部材に回動可能に支持されていてもよい。
【0067】
前記実施形態では、レバー部材10に長穴15が設けられ、ロック部材40の上端部42(一端部)に棒状部42Aが設けられた構成であったが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、レバー部材に棒状部が設けられ、ロック部材の一端部に長穴が設けられていてもよい。
【0068】
前記実施形態では、ロック部材40の一端部(上端部42)が上側に位置し、他端部(下端部43)が下側に位置する構成を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。すなわち、本発明は、ロック部材の一端部が下側に位置し、他端部が上側に位置する構成であってもよい。
【0069】
前記実施形態では、シフトレバー11を運転席側(右側)に操作することでMモードに切り替える構成であったが、本発明はこれに限定されず、例えば、シフトレバーを助手席側(左側)に操作することでMモードに切り替える構成としてもよい。また、本発明のシフトレバー装置は、左ハンドル車に使用してもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 シフトレバー装置
10 レバー部材
11 シフトレバー
15 長穴
20 オートマチック用切替部材
20L 左側面
24 収容穴
25 後壁
25A 軸支穴
26 前壁
26A 脱落防止部
26B 空間
30 ベース部材
31 隣接部
33 凹部
40 ロック部材
41 軸部
42 上端部
42A 棒状部
43 下端部
C 回動中心
G 重心
PL 鉛直面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトレバーを左右に揺動操作することでオートマチックモードとマニュアルモードの切替が可能なシフトレバー装置であって、
前後および左右に揺動操作可能な棒状のシフトレバーを有するレバー部材と、
オートマチックモードのときに前記レバー部材と一体に前後に揺動してシフトポジションを切り替えるオートマチック用切替部材と、
前記オートマチック用切替部材の前記レバー部材が配置された側とは反対側の側面に隣接する固定されたベース部材と、
マニュアルモードのときに前記オートマチック用切替部材の前後への揺動を規制するロック部材とを備え、
前記ロック部材は、前記シフトレバーの長手方向に略延びるとともに、前記オートマチック用切替部材に対して左右に回動可能に軸支されており、当該軸支された部分から延びて前記レバー部材に係合する一端部と、前記軸支された部分から前記一端部とは逆方向に延びる他端部とを有し、
前記レバー部材と前記一端部の係合は、一方に設けられた前記シフトレバーの長手方向に長い長穴と、他方に設けられて前記長穴に入る棒状部とによって構成され、
前記ベース部材は、前記他端部に対面する凹部を有しており、
前記ロック部材は、前記レバー部材の揺動操作により、前記棒状部または前記長穴の内周面が前記レバー部材の前記長穴の内周面または前記棒状部によって押されることで回動し、マニュアルモードにおいて前記他端部が前記オートマチック用切替部材の前記ベース部材側の側面から突出して前記凹部に係合することで前記オートマチック用切替部材の揺動を規制し、オートマチックモードにおいて前記他端部が前記凹部から離脱して前記凹部との係合を解除することで前記オートマチック用切替部材の揺動規制を解除するように構成されたことを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項2】
前記オートマチック用切替部材は、当該オートマチック用切替部材が軸支する前記ロック部材を前後から挟む対面する一対の壁を有しており、
前記壁のうち、一方は、前記ロック部材を左右に回動可能に軸支する軸支部を有し、他方は、少なくとも前記軸支部と対面する位置に左右に長手方向を向けた前記ロック部材の一部が入り込み可能な空間と、前記一方に軸支されて前記シフトレバーの長手方向に長手方向を向けた前記ロック部材の脱落を防止する脱落防止部とを有することを特徴とする請求項1に記載のシフトレバー装置。
【請求項3】
前記ロック部材の重心は、前記ロック部材の回動中心を通る鉛直面に対し、前後から見て、常に前記レバー部材が配置された側に位置していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のシフトレバー装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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