説明

シフトレバー装置

【課題】NレンジからRレンジに切り替わったことをドライバーに直感的に認識させることにより、誤操作の危険を防止することができるシフトレバー装置を提供する。
【解決手段】本発明のシフトレバー装置は、ベース1にシフト軸3によって揺動可能に枢着されたレバー取付体2に、シフトレバー7を昇降可能に支持させ、NレンジからRレンジへのシフト操作と連動してシフトレバー7を上方に移動させるものである。この上方への移動を、レバー取付体2によって駆動される揺動リンク20により行わせることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誤操作防止機能を備えたシフトレバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ATシフトレバーにおいては、ゲート式、ストレート式を問わず、ポジション選択時に誤って違うポジションを選択してしまうことがときどき発生する。ニュートラルレンジ(Nレンジ)や前進レンジ(Dレンジ)から前進レンジを誤って選択した場合にはあまり大きな問題にはならないが、前進レンジから後進レンジ(Rレンジ)、あるいは前進レンジからパーキングレンジ(Pレンジ)を誤って選択した場合には、ドライバーの意図しない方向に車両が動き出す可能性があり、危険である。
【0003】
そこで従来から特許文献1等に示すように、ATシフトレバーにセレクトボタンを取り付け、セレクトボタンを押圧したうえでなければシフトレバーを後進レンジやパーキングレンジに操作することができない構造が採用されている。
【0004】
しかし、ドライバーによっては無意識にセレクトボタンを押したままシフト操作を行うことがあり、その場合にはNレンジに入れるつもりで行き過ぎてRレンジに入れてしまう可能性がある。このためセレクトボタンだけではATシフトレバーの誤操作を確実に防止することはできなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−297304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って本発明の目的は上記した従来の問題点を解消し、セレクトボタンを押したままシフト操作を行った場合にも、NレンジからRレンジに切り替わったことをドライバーに直感的に認識させることにより、誤操作の危険を防止することができるシフトレバー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、ベースにシフト軸によって揺動可能に枢着されたレバー取付体に、シフトレバーを昇降可能に支持させるとともに、NレンジからRレンジへのシフト操作と連動してシフトレバーを上方に移動させる移動機構を設けたことを特徴とするものである。
【0008】
なお、前記移動機構は、シフト操作と連動するシフトレバーの上方への移動を、レバー取付体によって駆動される揺動リンクにより行うものとすることができ、また、前記揺動リンクは、RレンジとPレンジとの間で、シフトレバーを上方への移動位置に保持する機能を有するものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシフトレバー装置は、NレンジからRレンジへのシフト操作と連動してシフトレバーを上方に移動させる移動機構を備えた構造であるので、握ったシフトレバーのノブが持ち上がることにより、ドライバーはRレンジへのシフト操作を行ったことを認識することができる。従って無意識な誤操作を防止することができる。
【0010】
また、NレンジからRレンジへのシフト操作の際にはセレクトボタンをフルストロークする必要があるようにしておけば、これによっても無意識な誤操作を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施形態を示す全体斜視図である。
【図2】本発明の実施形態を示す正面図である。
【図3】本発明の実施形態を示す側面図である。
【図4】要部の断面図である。
【図5】Nレンジの状態図である。
【図6】Rレンジの状態図である。
【図7】Pレンジの状態図である。
【図8】ディテント溝の説明図である。
【図9】上下位置固定ピンが嵌合される溝カムの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に本発明の実施形態を説明する。以下に説明する本実施形態のシフトレバー装置は、ストレート式のATシフトレバー装置であるが、本発明の技術思想は、ゲート式のATシフトレバー装置にも適用可能である。
【0013】
図1は本発明の実施形態を示す全体斜視図、図2はその正面図、図3は側面図、図4は部分断面図である。これらの図において、1はシフトレバー装置のベース、2は水平なシフト軸3によってベース1に揺動可能に枢着されたレバー取付体である。図2に示すように、レバー取付体2の先端4に連結したワイヤ(図示せず)によってレバー取付体2の動きを変速機に伝達している。またレバー取付体1の側方には板バネ5が設けられており、その先端をベース1の外側に固定された節度プレート6の端面に接触させることにより、シフト操作時の節度感が得られる構造となっている。以上の構造は従来と同様であり、以下に本発明の特徴的構造を説明する。
【0014】
図3、図4に示されるように、レバー取付体2は上下方向に延びる貫通孔を備え、その内部に中空のシフトレバー7がスライド自在に挿入されている。シフトレバー7の外周リング8とレバー取付体2の切欠面9との間にはレバー押下げスプリング10が設けられており、シフトレバー7を常に下向きに弾発している。しかし図5に示されるようにレバー取付体2には上下方向の長孔11が形成され、シフトレバー7に固定されたピン12がこの長孔11内を貫通しているので、シフトレバー7の上下方向のストロークは長孔11によって規制され、運転中はシフトレバー7の下端位置は図3、図4の位置となっている。従ってこの状態(Nレンジ及びDレンジ)では、シフトレバー7の上端のノブ13も下がった位置にある。
【0015】
この中空のシフトレバー7の内部には、円柱状のスライダ14が挿入されている。このスライダ14はシフトレバー7の上端のノブ13に組み込まれたセレクトボタン15とワイヤ16により連結されており、セレクトボタン15が押されるとスライダ14はシフトレバー7に対して引き上げられる。また、スライダ14は側面にディテントピン17を有し、このディテントピン17はシフトレバー7のディテント用長孔18からスライダ14の外側に突出し、図8に示すようにベース1の側面(節度プレート6が設けられた側とは反対側の側面)に形成されたディテント溝19に係合している。
【0016】
従来と同様、セレクトボタン15にはワイヤ16を押し下げるバネが設けられているので、ディテントピン17は常に押し下げられている。なおその昇降ストロークはディテント用長孔18によって規制されている。ディテント溝19は従来と同様に、NレンジからRレンジにシフトさせる場合や、Pレンジから他のレンジにシフトさせる場合には、セレクトボタン15を操作してワイヤ16を引き、スライダ14、ディテントピン17を引き上げなければシフト操作ができないように設定されている。
【0017】
図4に示すように、ベース1の下端部にはL字状の揺動リンク20が軸21によって枢着されている。この揺動リンク20はバネ22によって図4における時計方向に常に弾発され、ストッパ23に当たる角度を維持している。また図4に示されるように、レバー取付体1の下端部にはこの揺動リンク20を押圧するための突起24が形成されており、後述するようにシフト操作に連動して揺動リンク20を反時計方向に揺動させ、その先端25によってシフトレバー7を押し上げる構造となっている。
【0018】
なお、前記したシフトレバー7の外周リング8には上下位置固定ピン26が突設されており、その先端は図9に示すようにベース1の節度プレート6の上方に形成された溝カム27に嵌合されている。この溝カム27はNレンジに対応する位置で立ち上がった形状となっており、その左右に円弧状の溝が続いている。また、L字状の揺動リンク20の縦側の上端部分は略平面状部28となっている。
【0019】
次に、図5、図6、図7を参照しつつ、本実施形態のシフトレバー装置の動きを説明する。
図5はシフトレバー7がNレンジにある状態を示しており、シフトレバー7はレバー押下げスプリング10によって下側位置にある。また図6ではセレクトボタン15は押圧されており、スライダ14及びディテントピン17も上側位置に作動した状態である。
【0020】
このNレンジから図6に示すRレンジにシフトレバー7をシフトさせるためには、セレクトボタン15を押圧してディテントピン17を引上げながらシフトレバー7を動かす。このシフト動作によってレバー取付体2がシフト軸3を中心として揺動するため、レバー取付体2の下端部の突起24によって揺動リンク20が反時計方向に搖動され、シフトレバー7を上方に押し上げる。このためシフトレバー7の上端のノブ13も押し上げられ、ドライバーはシフトレバー7をNレンジからRレンジにシフトしたことを手で直接感じ取ることができる。また、このシフト動作によって上下位置固定ピン26も同時に引き上げられ、溝カム27の上段に移動する。このシフトレバー7の上昇ストロークは、例えば10mm程度とすればよい。
【0021】
ドライバーがシフトレバー7を図6に示すRレンジからさらに図7に示すPレンジにシフトさせると、レバー取付体2の下端29が揺動リンク20の略平面状部28に乗り上げる。この状態ではレバー押下げスプリング10の力は揺動リンク20に作用しない。また上下位置固定ピン26が図9に示す溝カム27の上段に深く進入する。このためシフトレバー7はRレンジとPレンジでは押し上げられたままの状態を維持する。このようなシフト動作に伴う全体の動きを図2に示した。図2に示されるように、RレンジとPレンジではノブ13は高い位置にある。
【0022】
なお、RレンジからNレンジに戻す場合には上記と逆の動きとなる。
【0023】
以上に説明したように、本発明のシフトレバー装置は、セレクトボタン15を押したままシフト操作を行った場合にも、NレンジからRレンジへのシフト操作と連動してシフトレバー7を上方に移動させ、ドライバーにRレンジへのシフト操作を行ったことを確実に認識させることができる。従って無意識な誤操作を防止することができる。
【0024】
また、ディテント溝19のストロークを図8に示したように適切に設定することにより、NレンジからRレンジへのシフト操作の際にはセレクトボタン15をフルストロークする必要があるようにしておけば、これによっても無意識な誤操作をより確実に防止することができる。
【0025】
なお、本発明のシフトレバー装置はシフトレバー7を昇降させることにより、シフト軸3とノブ13との距離が変化するため、シフトレバー7のPレンジからNレンジ間の操作において、操作力を軽減することができるという副次的な効果がある。
【符号の説明】
【0026】
1 ベース
2 レバー取付体
3 シフト軸
4 先端
5 板バネ
6 節度プレート
7 シフトレバー
8 外周リング
9 切欠面
10 レバー押下げスプリング
11 長孔
12 ピン
13 ノブ
14 スライダ
15 セレクトボタン
16 ワイヤ
17 ディテントピン
18 ディテント用長孔
19 ディテント溝
20 揺動リンク
21 軸
22 バネ
23 ストッパ
24 突起
25 先端
26 上下位置固定ピン
27 溝カム
28 略平面状部
29 下端

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースにシフト軸によって揺動可能に枢着されたレバー取付体に、シフトレバーを昇降可能に支持させるとともに、NレンジからRレンジへのシフト操作と連動してシフトレバーを上方に移動させる移動機構を設けたことを特徴とするシフトレバー装置。
【請求項2】
前記移動機構は、シフト操作と連動するシフトレバーの上方への移動を、レバー取付体によって駆動される揺動リンクにより行うことを特徴とする請求項1に記載のシフトレバー装置。
【請求項3】
前記揺動リンクは、RレンジとPレンジとの間で、シフトレバーを上方への移動位置に保持する機能を有するものであることを特徴とする請求項2に記載のシフトレバー装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate