シフト位置検出装置
【課題】シフト位置を高い精度で検出することのできるシフト位置検出装置を提供する。
【解決手段】このシフト位置検出装置は、中立ポジションからシフトパターンに沿って設定された5つのシフト位置に操作されるシフトレバー2と、シフトレバー2のY軸方向の変位に対して直線的に変化する信号を出力する検出部とを備え、その検出信号に基づいてシフトレバーのシフト位置を検出する。ここでは、Y軸方向に互いに異なる長さをもって延伸される2つのシフト路3a,3bによってシフトパターン3を形成するとともに、5つのシフト位置のうち、4つのシフト位置をシフト路3a,3bの両端部に、残りの1つのシフト位置をシフト路3bの中央部に設定する。そして、シフトレバー2がシフト路3a,3bのいずれかに位置したとき、検出部の検出信号に対して設定される閾値を、シフトレバー2が位置するシフト路のシフト位置に対応した2つの閾値に設定する。
【解決手段】このシフト位置検出装置は、中立ポジションからシフトパターンに沿って設定された5つのシフト位置に操作されるシフトレバー2と、シフトレバー2のY軸方向の変位に対して直線的に変化する信号を出力する検出部とを備え、その検出信号に基づいてシフトレバーのシフト位置を検出する。ここでは、Y軸方向に互いに異なる長さをもって延伸される2つのシフト路3a,3bによってシフトパターン3を形成するとともに、5つのシフト位置のうち、4つのシフト位置をシフト路3a,3bの両端部に、残りの1つのシフト位置をシフト路3bの中央部に設定する。そして、シフトレバー2がシフト路3a,3bのいずれかに位置したとき、検出部の検出信号に対して設定される閾値を、シフトレバー2が位置するシフト路のシフト位置に対応した2つの閾値に設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトパターンに沿って操作されるシフトレバーのシフト位置を検出するシフト位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザによって操作される車両のシフトレバーと変速機との間の機械的な連結を排除した上で、シフトレバーの位置をセンサを通じて検出し、検出されたシフト位置に基づいて変速機のシフトレンジの切り替えを行う、いわゆるバイワイヤ式のシフト装置が周知である。車両のシフト装置としてこうしたバイワイヤ式のシフト装置を採用すれば、シフトレバーと変速機とを連結するリンク機構などを車両に設ける必要がなくなることから、シフトレバーの配設位置を自由に変更することが可能になるなど、車両設計の自由度を大きく高めることができるようになる。そして従来、この種のシフト装置としては、例えば特許文献1に記載の装置が知られている。図11及び図12は、この特許文献1に記載のシフト装置の概略構造をそれぞれ示したものである。
【0003】
同図11に示されるように、このシフト装置には、軸部20aを中心に揺動するシフトレバー20が設けられており、このシフトレバー20の揺動がシフト路21によって案内されている。そして、ユーザは、シフトレバー20をシフト路21に沿って操作することで、そのシフト位置を「D(ドライブ)ポジション」、「N(ニュートラル)ポジション」、及び「R(リバース)ポジション」に変更することが可能となっている。また、図12に示されるように、このシフト装置では、シフトレバー20の基端部に磁石22が設けられており、シフトレバー20の揺動に伴って、磁石22が図中のX軸方向に往復動する構造となっている。ちなみに、シフトレバー20がNポジションに位置しているときの磁石22の位置を図中の実線で示される基準位置Pnとすると、シフトレバー20がDポジションに位置したとき、磁石22は基準位置Pnよりも右側の第1の位置P1に移動する。また、シフトレバー20がRポジションに位置したとき、磁石22は基準位置Pnよりも左側の第2の位置P2に移動する。一方、このシフト装置には、こうした磁石22の移動に伴う磁界の変化を検出するための2つの磁気センサ23a,23bが設けられている。ちなみに、これらの磁気センサ23a,23bは、磁石22から図中のY軸方向に若干ずれた位置に設けられて且つ、上記X軸方向に沿って併設されている。また、これらの磁気センサ23a,23bは、印加される磁気ベクトルに応じて磁気抵抗効果により抵抗値を変化させる磁気抵抗効果素子からなる、いわゆる磁気抵抗効果(MRE)センサである。そして、このシフト装置では、磁気センサ23a,23bの出力電圧を差動回路に入力してそれらの差分値を演算するとともに、演算された差分値に基づいて上記磁石22の位置を、換言すればシフトレバー20の位置を検出する。
【0004】
このような構成からなるシフト装置によれば、ユーザによるシフトレバー20の操作に伴って磁石22が上記X軸方向に往復動したときに、上記差分値Vdが、図13に示すように直線的に変化する。なお、この図13では、横軸が磁石22の上記基準位置Pnからの変位を、また、縦軸が上記差分値Vdをそれぞれ示している。また、磁石22の変位量を、基準位置Pnから上記第1の位置P1に向かう側を正として示している。このように磁石22の変位に対して差分値Vdが直線的に変化すれば、差分値Vdとシフトレバー20の操作位置とを一対一に対応させることができるため、同差分値Vdに基づいてシフトレバー20のシフト位置を検出することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−222594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなシフト装置にあっては、通常、差分値Vdに基づいてシフトレバー20の位置を検出する際に、次のような方法が採用されることが多い。すなわち、先の図13に示されるように、差分値Vdに対して2つの閾値Ve11,Ve12(Ve11<Ve12)を設けた上で、以下の(a1)〜(a3)に例示する判定処理を行う。
【0007】
(a1)差分値Vdが閾値Ve11未満であるとき。このとき、シフトレバー20のシフト位置はRポジションであると判定する。
(a2)差分値Vdが閾値Ve11以上であって且つ、閾値Ve12未満であるとき。このとき、シフトレバー20のシフト位置はNポジションであると判定する。
【0008】
(a3)差分値Vdが閾値Ve12以上であるとき。このとき、シフトレバー20の位置はDポジションであると判定する。
このような判定処理を通じてシフトレバー20のシフト位置を検出すれば、差分値Vdと閾値Ve11,Ve12との比較を行うだけでシフトレバー20の位置を検出することができるため、シフト位置を容易に検出することが可能となる。
【0009】
一方、上述した特許文献1に記載のシフト装置にあっては、磁石22が上記第1の位置P1から上記第2の位置P2の範囲に位置しているときに限って差分値Vdの直線性を担保することが可能となっている。このため、差分値Vdの直線性を担保しつつシフト位置の数を増やそうとすると、差分値Vdに対して設けられる各閾値の間隔が自ずと狭くなってしまう。具体的には、例えば上述した3つのシフト位置に加え、更に2つのシフト位置を設ける場合には、先の図13に対応する図として図14を示すように、4つの閾値Ve21〜Ve24を設ける必要があり、これらの各閾値Ve21〜Ve24の間隔が上記閾値Ve11,Ve12の間隔と比較すると狭くなってしまう。そしてこのように閾値の間隔が狭くなると、例えばノイズ等の影響によって磁気センサ23a,23bの出力値が変動した際に、上記差分値Vdが閾値を超えて変化するような状況が生じ易くなり、ひいてはシフトレバー20の位置の誤検出等をも招きかねない。
【0010】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シフト位置を高い精度で検出することのできるシフト位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、シフトパターンに沿って所定方向に互いに異なる位置に設定された5つのシフト位置に操作されるシフトレバーと、該シフトレバーの前記所定方向への変位に対して直線的に変化する信号を出力する検出部とを備え、該検出部の検出信号に対して前記5つのシフト位置に対応する4つの閾値を設けるとともに、該4つの閾値と前記検出信号との比較のもとに前記シフトレバーが前記5つのシフト位置のいずれに位置しているかを検出するシフト位置検出装置において、前記所定方向に互いに異なる長さをもって延伸される第1及び第2のシフト路によって前記シフトパターンを形成するとともに、前記5つのシフト位置のうち、4つのシフト位置を前記第1及び第2のシフト路の両端部に、残りの1つのシフト位置を前記第1及び第2のシフト路のいずれか一方の中央部にそれぞれ設定し、前記シフトレバーが前記第1及び第2のシフト路のいずれかに位置したとき、前記検出信号に対して設定される閾値を、前記シフトレバーが位置するシフト路のシフト位置に対応した2つの閾値に設定することを要旨としている。
【0012】
同構成によれば、検出部の検出信号に対してその都度設定される閾値の数を2つにすることができるため、上述のように検出部の検出信号に対して4つの閾値を設定して5つのシフト位置を検出する場合と比較すると、閾値の間隔を広げることができるようになる。このため、仮にノイズ等の影響によって検出部の検出信号が変動したとしても、同検出部の検出信号が閾値を超えて変化するような状況が生じ難くなるため、シフトレバーのシフト位置を適切に検出することができるようになる。
【0013】
そしてこの場合、具体的には、請求項2に記載の発明によるように、前記シフトパターンを、前記第1及び第2のシフト路とこれらの中央部を互いに連結するセレクト路とによって変形H字形状に形成すれば、同シフトパターンを容易に形成することができるようになる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のシフト位置検出装置において、前記第1及び第2のシフト路のうち、長いシフト路に沿ってオートマチックモードに対応したシフト位置が設定されるとともに、短いシフト路に沿ってマニュアルモードに対応したシフト位置が設定されることを要旨としている。
【0015】
同構成によれば、オートマチックモードに対応する各シフト位置の間隔を広げることができるため、ユーザがオートマチックモードのシフト操作を行う際には、例えばシフトレバーを誤ったシフト位置に操作してしまうなど、ユーザにとって好ましくない状況を回避することができるようになる。また、マニュアルモードに対応する各シフト位置の間隔を狭くすることができるため、ユーザがマニュアルモードのシフト操作を行う状況、すなわちユーザがシフトレバーのシフト位置を頻繁に切り替える状況にあっては、シフト位置を変更する際のシフトレバーの操作量を小さくすることができる。このため、ユーザの操作性を的確に確保することができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるシフト位置検出装置によれば、シフト位置を高い精度で検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかるシフト位置検出装置の一実施形態について同シフト位置検出装置が搭載されるシフト装置の斜視構造を示す斜視図。
【図2】同実施形態のシフト位置検出装置についてその分解斜視構造を示す斜視図。
【図3】同実施形態のシフト位置検出装置についてその平面構造を示す平面図。
【図4】図3のA−A線に沿った断面構造を示す断面図。
【図5】同実施形態のシフト位置検出装置に設けられる接触スイッチの動作例を示す断面図。
【図6】(a),(b)は、同実施形態のシフト位置検出装置の動作例をそれぞれ示す平面図。
【図7】同実施形態のシフト位置検出装置についてそのシステム構成を示すブロック図。
【図8】同実施形態のシフト位置検出装置における2つの磁気センサの出力信号と磁石の変位量との関係、並びにそれらの出力信号の差分値と磁石の変位量との関係を示すグラフ。
【図9】(a),(b)は、同実施形態のシフト位置検出装置におけるシフト位置の検出態様をそれぞれ示すグラフ。
【図10】(a),(b)は、同実施形態のシフト位置検出装置の変形例について同シフト位置検出装置が搭載されるシフト装置の斜視構造をそれぞれ示す斜視図。
【図11】従来のシフト装置についてその斜視構造を示す斜視図。
【図12】同従来のシフト装置におけるシフトレバーの基端部に設けられる磁石と2つの磁気センサとの位置関係を模式的に示す平面図。
【図13】同従来のシフト装置における2つの磁気センサの出力信号の差分値と磁石の変位量との関係を示すグラフ。
【図14】同従来のシフト装置における5つのシフト位置を検出する方法を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかるシフト位置検出装置を具体化した一実施形態について図1〜図9を参照して説明する。図1は、本実施形態にかかるシフト位置検出装置を搭載したシフト装置の斜視構造を示したものであり、はじめに、同図1を参照して、このシフト装置の概略構成について説明する。
【0019】
図1に示されるように、このシフト装置は、車両に固定されるレバーユニット1と、このレバーユニット1に基端部が支持されて車両の変速機のシフトレンジを切り替える際にユーザによって操作されるシフトレバー2と、このシフトレバー2の移動を案内するシフトパターン3が形成されたシフトパネル4とを基本的に備える構成となっている。ここで、シフトパターン3は、図中のY軸方向に互いに異なる長さをもって延伸されるMTシフト路3a及びATシフト路3bと、これらのシフト路3a,3bの中央部を互いに連結するセレクト路3cとによって構成されており、全体として変形H字形状に形成されている。そして、このシフト装置では、このようなシフトパターン3に対して、MTシフト路3aにマニュアルモードに対応した各シフト位置、すなわち「−(マイナス)ポジション」、「中立ポジション」、及び「+(プラス)ポジション」が設定されている。また、ATシフト路3bにオートマチックモードに対応した各シフト位置、すなわち「Dポジション」、「Nポジション」、及び「Rポジション」が設定されている。ここで、シフトレバー2は、中立ポジションを基準位置として、マイナスポジション、プラスポジション、Dポジション、Nポジション、及びRポジションの各シフト位置に操作されると、自動変速機のシフトレンジがこれら各シフト位置に対応するシフトレンジに設定される。その後、運転者によってシフトレバー2の把持が解除されると、シフトレバー2は基準位置である中立ポジションに戻るが、上記設定されたシフトレンジはそのまま維持される。また、上記マニュアルモードにおける「マイナスポジション」及び「プラスポジション」の切り替えは、シフトレバー2を「Dポジション」に一旦操作した後にのみ可能となっている。
【0020】
このように各シフト路3a,3bに対してシフト位置を設定すれば、オートマチックモードに対応する各シフト位置の間隔を広げることができるため、ユーザがオートマチックモードのシフト操作を行う際には、例えばシフトレバー2を誤ったシフト位置に操作してしまうなど、ユーザにとって好ましくない状況を回避することができるようになる。また、マニュアルモードに対応する各シフト位置の間隔を狭くすることができるため、ユーザがマニュアルモードのシフト操作を行う状況、すなわちユーザがシフトレバー2のシフト位置を頻繁に切り替えるような状況にあっては、シフト位置を変更する際のシフトレバー2の操作量を小さくすることができる。このため、ユーザの操作性を的確に確保することができるようになる。
【0021】
一方、このシフト装置では、レバーユニット1の内部に設けられているシフト位置検出装置を通じて、シフトレバー2が中立ポジションを除く5つのシフト位置のいずれに位置しているかを検出する。
【0022】
図2は、このシフト位置検出装置の分解斜視構造を、また、図3は、同シフト位置検出装置の平面構造を、さらに、図4は、図3のA−A線に沿った断面構造を示したものであり、次に、これら図2〜図4を参照して、シフト位置検出装置の構造について具体的に説明する。ちなみに、図2〜図4では、上記シフトレバー2が中立ポジションに位置している場合について例示している。また、図2〜図4では、便宜上、上述したシフトレバー2を各シフト位置から中立ポジションに復帰させる復帰構造については割愛している。
【0023】
同図2及び図3に示されるように、このシフト位置検出装置には、上記セレクト路3cに沿って、すなわち図中のX軸方向に沿って延伸されるスライダ5が設けられており、このスライダ5のX軸方向の両端部が、同じくシフト位置検出装置に設けられる支持部材6によって支持されている。このスライダ5には、上記セレクト路3cに沿って延伸されるとともに上方に開口する溝部5aが形成されており、この溝部5aに、上記シフトレバー2の基端部に設けられた板状の台座2aが収容されている。すなわち、上記シフトレバー2がセレクト路3cに沿って移動するとき、台座2aがスライダ5の内部をスライド移動して、シフトレバー2がスライダ5に対して相対移動する構造となっている。また、図4に示されるように、この溝部5aのATシフト路3b側の端部には、上記台座2a側に突出するかたちで設けられた突出部10aが押圧されることでオン状態となる接触スイッチ10が配置されている。すなわち、図5に示すように、この接触スイッチ10は、シフトレバー2がATシフト路3bに操作されたときに上記台座2aによって突出部10aが押圧されることでオン状態となるスイッチング素子であり、同接触スイッチ10のオン/オフ信号に基づいてシフトレバー2がATシフト路3bに位置しているか否かを検出することが可能となっている。さらに、同図4及び図5に示されるように、スライダ5の底部には、Z軸方向に着磁された円柱状の磁石7が一体的に取り付けられている。
【0024】
一方、図2及び図3に示されるように、上記支持部材6の上記スライダ5が着座する部分には、図中のY軸方向に延びるかたちで段差部6a,6bが形成されている。そして、この段差部6a,6bによって、上記スライダ5のX軸方向の移動が規制されるとともに、そのY軸方向の移動が許容されている。したがって、図6(a)に示すように、シフトレバー2が上記中立ポジションに位置しているときの磁石7の位置を基準位置Poとすると、シフトレバー2がマイナスポジション、あるいはプラスポジションに操作された場合、磁石7は、基準位置Poよりも下側のマイナス位置Pm、あるいは上側のプラス位置Ppに移動する。すなわちこの場合には、磁石7の中心軸mは、Y軸に平行な軸線Y1上を距離S1だけ移動する。一方、図6(b)に示すように、シフトレバー2がNポジションに操作されたときにも磁石7は基準位置Poに位置し、その位置からシフトレバー2がDポジション、あるいはRポジションに操作された場合、磁石7は、基準位置Poよりも下側のD位置Pd、あるいは上側のR位置Prに移動する。すなわちこの場合には、磁石7の中心軸mは、軸線Y1上を上記移動距離S1よりも長いS2だけ移動する。
【0025】
さらに、図2及び図3に示されるように、上記支持部材6の磁石7が対向する部分には、2つの磁気センサ9a,9bを含めて各種電子部品が実装された基板8が設けられている。これらの磁気センサ9a,9bは、印加される磁気ベクトルに応じて磁気抵抗効果により抵抗値が変化する、いわゆる磁気抵抗効果素子によって構成される磁気抵抗効果(MRE)センサである。より具体的には、磁気抵抗効果素子が直列に接続されたハーフブリッジ回路が信号処理回路と共に1チップに集積化されたものである。また、図6(a)に示されるように、この磁気センサ9a,9bは、上記磁石7に対して以下の(b1)〜(b3)に示す配置関係を有している。
【0026】
(b1)磁気センサ9a,9bは、磁石7の中心軸mからX軸方向に所定距離Dxだけずれた位置に配置されている。
(b2)磁気センサ9a,9bは、Y軸方向に沿って並設されている。
【0027】
(b3)磁気センサ9a,9bは、磁石7が図中の基準位置Poに位置している状態において、同磁石7の中心軸mを通ってX軸に平行な軸線X1を基準に線対称となるように設けられている。ちなみに、磁気センサ9a,9bの間の距離は、上記シフトレバー2がATシフト路3bに沿って操作された際の磁石7の中心軸mの移動距離S2と同等の長さに設定されている。
【0028】
そして、このシフト位置検出装置では、先の図6(a),(b)に示されるように、シフトレバー2のシフト位置の変化に伴って磁石7が軸線Y1上を移動すると、各磁気センサ9a,9bに付与される磁界が変化することとなり、各センサ9a,9bの出力電圧(センサ出力)が変化する。
【0029】
図7は、このようなシフト位置検出装置のシステム構成をブロック図として示したものであり、次に、同図7を参照して、このシフト位置検出装置のシステム構成について具体的に説明する。
【0030】
同図7に示されるように、このシフト位置検出装置では、上記磁気センサ9a,9bのそれぞれの出力電圧V1,V2が、信号処理回路としての差動回路11に入力されてそれらの差分値(=V1−V2)が演算された後、同差分値が検出信号Scとして、マイクロコンピュータを中心に構成されるシフト制御装置12に取り込まれる。また、このシフト制御装置12には、上記接触スイッチ10のオン/オフ信号も取り込まれている。このシフト制御装置12では、接触スイッチ10からオフ信号が出力されているとき、すなわちシフトレバー2がMTシフト路3aに位置しているときには、上記検出信号Scに対して第1及び第2の閾値Ve1,Ve2が設定され、これら2つの閾値Ve1,Ve2と検出信号Scとの比較のもとにシフトレバー2のシフト位置を検出する。また、接触スイッチ10からオン信号が出力されているとき、すなわちシフトレバー2がATシフト路3bに位置しているときには、上記検出信号Scに対して第3及び第4の閾値Ve3,Ve4が設定され、これら2つの閾値Ve3,Ve4と検出信号Scとの比較のもとにシフトレバー2のシフト位置を検出する。そして、シフト制御装置12は、検出されたシフト位置に応じて変速機13に指令信号を出力し、変速機13内部の動力伝達経路の接続状態の切り替えを行わせる。
【0031】
次に、図8及び図9を併せ参照して、第1〜第4の閾値Ve1〜Ve4について説明するとともに、シフトレバー2のシフト位置を把握する方法について説明する。
まず、図8を参照して、シフトレバー2の操作に伴って磁石7が上記軸線Y1に沿って移動した際の上記磁気センサ9a,9bの出力信号の変化、並びに上記検出信号Scの変化について説明する。図8は、上記磁石7の基準位置Poからの変位量を横軸に、上記磁気センサ9a,9bの出力電圧V1,V2及び検出信号Scを縦軸にとって、両者の関係を示したグラフである。なお、図8では、磁石7の変位量を、基準位置Poからプラス位置Ppに向かう側、あるいはR位置に向かう側を正として表している。
【0032】
同図8に示されるように、磁石7が、上記D位置Pd、マイナス位置Pm、基準位置Po、プラス位置Pp、及びR位置Prの順で移動したとすると、磁気センサ9a,9bの出力電圧V1,V2は、図中に一点鎖線及び二点鎖線でそれぞれ示されるように、互いに半周期だけ位相がずれる態様にて正弦波状に変化する。ちなみに、本実施形態では、このように出力電圧V1,V2の位相が半周期だけずれるように磁気センサ9a,9bの向き等が調整されている。また、このように変化する出力電圧V1,V2に対して、検出信号Scは、磁石7が各シフト位置に変位する範囲で直線的に変化する値となる。
【0033】
次に、図9を参照して、このように変化する検出信号Scに対して設定されている上記第1〜第4の閾値Ve1〜Ve4について説明するとともに、これらの閾値Ve1〜Ve4に基づいてシフトレバー2のシフト位置を検出する方法について説明する。
【0034】
同図9(a)に示されるように、接触スイッチ10がオフ状態である場合、すなわちシフトレバー2が上記MTシフト路3aに位置している場合には、磁石7はマイナス位置Pmからプラス位置Ppまでの範囲で変位する、すなわち図中の実線の範囲で変化する。したがって、上記検出信号Scは、マイナス位置Pmに対応する電圧値Vdmからプラス位置Ppに対応する電圧値Vdpまでの範囲で変化する。ここで、上記シフト制御装置12では、接触スイッチ10がオフ状態であるとき、電圧値Vdmの半分の値を第1の閾値Ve1(=Vdm/2)に、また、電圧値Vdpの半分の値を第2の閾値Ve2(=Vdp/2)に設定し、以下の(c1),(c2)に示すようにシフトレバー2のシフト位置を判定する。
【0035】
(c1)検出信号Scが第1の閾値Ve1未満であるとき。このとき、シフトレバー2のシフト位置は、マイナスポジションであると判定する。
(c2)検出信号Scが第2の閾値Ve2以上であるとき。このとき、シフトレバー2のシフト位置は、プラスポジションであると判定する。
【0036】
一方、同図9(b)に示されるように、接触スイッチ10がオン状態である場合、すなわちシフトレバー2が上記ATシフト路3bに位置している場合には、磁石7はD位置PdからR位置Prまでの範囲で変位するため、上記検出信号Scは、D位置Pdに対応する電圧値VddからR位置Prに対応する電圧値Vdrまでの範囲で変化する。ここで、上記シフト制御装置12では、接触スイッチ10がオン状態であるとき、電圧値Vddの半分の値を第3の閾値Ve3(=Vdd/2)に、また、電圧値Vdrの半分の値を第4の閾値Ve4(=Vdr/2)に設定し、以下の(d1)〜(d3)に示すようにシフトレバー2のシフト位置を判定する。
【0037】
(d1)検出信号Scが第3の閾値Ve3未満であるとき。このとき、シフトレバー2のシフト位置は、Dポジションであると判定する。
(d2)検出信号Scが第3の閾値Ve3以上であって且つ、第4の閾値Ve4未満であるとき。このとき、シフトレバー2のシフト位置は、Nポジションであると判断する。
【0038】
(d3)検出信号Scが第4の閾値Ve4以上であるとき。このとき、シフトレバー2のシフト位置は、Rポジションであると判定する。
シフト位置検出装置としてのこうした構成によれば、検出信号Scに対してその都度設定される閾値の数を2つにすることができるため、上述のように検出信号Scに対して4つの閾値を設定して5つのシフト位置を検出する場合と比較すると、閾値の間隔を広げることができるようになる。このため、仮にノイズ等の影響によって検出信号Scが変動したとしても、同検出信号Scが各閾値を超えて変化するような状況が生じ難くなるため、シフトレバー2の操作位置を適切に検出することができるようになる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態にかかるシフト位置検出装置によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)シフトレバー2がMTシフト路3a及びATシフト路3bのいずれかに位置したとき、検出信号Scに対して設定される閾値を、シフトレバー2が位置するシフト路の2つのシフト位置に対応した2つの閾値に設定するようにした。これにより、閾値の間隔を広げることができるようになるため、例えばノイズ等の影響によって検出信号Scが閾値を超えて変化するような状況が生じ難くなり、ひいてはシフトレバー2のシフト位置を適切に検出することができるようになる。
【0040】
(2)2つのシフト路3a,3bのうち、短いシフト路3aに沿ってマニュアルモードに対応したシフト位置を設定するとともに、長いシフト路3bに沿ってオートマチックモードに対応したシフト位置を設定するようにした。これにより、ユーザがオートマチックモードのシフト操作をする際には、例えばシフトレバー2を誤ったシフト位置に操作してしまうなど、ユーザにとってこのましくない状況を回避することができるようになる。また、ユーザがマニュアルモードでシフト操作をする際には、ユーザの操作性を的確に確保することができるようになる。
【0041】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、互いに長さの異なる2つのシフト路3a,3bを形成すべく、シフトパターン3を変形H字形状に形成するようにしたが、これに代えて、例えば図10に示すような構造を採用することもできる。まず、同図10(a)に示されるように、Y軸方向に延伸される第1のシフト路14aを設ける。また、図10(b)に示されるように、同第1のシフト路14aのY軸方向の長さをその両端部よりも内側の領域に制限することで同シフト路14aよりも短い第2のシフト路14bを形成する制限構造15を設ける。そして、第1のシフト路14aの両端部及び中央部に、上記Dポジション、Nポジション、及びRポジションをそれぞれ設定するとともに、第2のシフト路14bの両端部及び中央部に、上記マイナスポジション、中立ポジション、及びプラスポジションを設定する。このような構成によれば、上述のようにシフトパターン3を変形H字形状に形成する場合と比較すると、シフトパターン3のX軸方向の長さを短くすることができるため、シフト位置検出装置の小型化を図ることが可能となる。ちなみに、このような制限構造15を設けた場合には、例えば同図10,(a),(b)に示されるように、シフトレバー2にスイッチ部2bを設けた上で、制限構造15による第1のシフト路14aの制限、及びその解除をスイッチ部2bに対するユーザの操作に基づいて行うといった構造を併せて搭載することが有効である。こうした構成によれば、ユーザはシフトレバー2の操作の際に第1及び第2のシフト路14a,14bの切り替えを行うことができるようになるため、ユーザの操作性を向上させることができるようになる。なおこの場合には、上記第1及び第2の閾値Ve1,Ve2と上記第3及び第4の閾値Ve3,Ve4との切り替えも、スイッチ部2bの操作に基づいて行うようにしてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、第1〜第4の閾値Ve1〜Ve4の値を、各シフト位置に対応する検出信号Scの値の半分の値に設定するようにしたが、これに代えて、例えば第1の閾値Ve1の値を、マイナス位置Pmに対応する検出信号Scの電圧値Vdmの3/4の値に設定したり、あるいはその1/4の値に設定することも可能である。このように各閾値Ve1〜Ve4の値を変更すれば、ユーザがシフトレバー2を操作した際に、シフト位置が切り替わるタイミングを調整することが可能となる。
【0043】
・上記実施形態では、シフトレバー2のY軸方向の変位に対して直線的に変化する信号を出力する検出部を、2つの磁気センサ9a,9b及び差動回路11によって構成するようにした。これに代えて、例えば2つの磁気センサ9a,9bの出力信号をシフト制御装置12に直接取り込んで、同制御装置12で磁気センサ9a,9bの差分値を演算するようにしてもよい。
【0044】
・上記実施形態では、シフトレバー2がATシフト路3bに位置しているか否かの検出を接触スイッチ10を通じて行うようにした。これに代えて、例えばシフトレバー2と一体となって移動する磁石と、同磁石の磁界の変化を検出する磁気センサを設けた上で、同磁気センサを通じて検出される磁界の変化に基づいてシフトレバー2がATシフト路3bに位置しているか否かを検出するようにしてもよい。
【0045】
・2つのシフト路3a,3bのうち、短いシフト路3aに沿ってオートマチックモードに対応したシフト位置を設定するとともに、長いシフト路3bに沿ってマニュアルモードに対応したシフト位置を設定するようにしてもよい。
(付記)
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
【0046】
(イ)請求項1に記載のシフト位置検出装置において、前記所定方向に延伸される第1のシフト路と、同第1のシフト路の前記所定方向の長さをその両端部よりも内側の領域に制限することで前記第1のシフト路よりも短い第2のシフト路を形成する制限構造とを備えることを特徴とするシフト位置検出装置。同構成によれば、上述のようにシフトパターンを変形H字形状に形成する場合と比較すると、所定方向に直交する方向のシフトパターンの長さを短くすることができるため、シフト位置検出装置の小型化を図ることが可能となる。
【0047】
(ロ)請求項1〜3、及び付記イに記載のシフト位置検出装置において、前記検出部は、前記シフトレバーの前記所定方向に沿った方向への操作に伴って変位する磁石と、該磁石の変位に伴い同磁石から発せられる磁界の変化を検出する磁気センサと、該磁気センサの出力信号を所要に処理することで前記シフトレバーの前記所定方向への変位に対して直線的に変化する信号を出力する信号処理回路とを有するものであることを特徴とするシフト位置検出装置。同構成によれば、簡易な構成ながらも、シフトレバーの所定方向への変位に対して直線的に変化する信号を出力することができるようになる。
【0048】
(ハ)付記ロに記載のシフト位置検出装置において、前記磁気センサは、印加される磁気ベクトルに応じて磁気抵抗効果により抵抗値を変化させる磁気抵抗効果素子からなる磁気抵抗効果センサであることを特徴とするシフト位置検出装置。付記ロに記載のシフト位置検出装置において、磁気ベクトルの変化を検知するために用いる磁気センサとしては、例えば磁気抵抗効果センサなどの磁気検出素子を採用することができる。
【0049】
(ニ)付記イに記載のシフト位置検出装置において、前記シフトレバーには、ユーザによって操作されるスイッチ部が設けられ、前記制限構造による前記第1のシフト路の制限、及びその解除が、前記スイッチ部に対するユーザの操作に基づいて行われることを特徴とするシフト位置検出装置。同構成によれば、ユーザはシフトレバーの操作の際にシフト路の長さを切り替えることができるため、ユーザの操作性を向上させることができるようになる。
【符号の説明】
【0050】
m…中心軸、1…レバーユニット、2,20…シフトレバー、2a…台座、2b…スイッチ部、3…シフトパターン、3a…MTシフト路、3b…ATシフト路、3c…セレクト路、4…シフトパネル、5…スライダ、5a…溝部、6…支持部材、6a,6b…段差部、7,22…磁石、8…基板、9a,9b,23a,23b…磁気センサ、10…接触スイッチ、10a…突出部、11…差動回路、12…シフト制御装置、13…変速機、14a…第1のシフト路、14b…第2のシフト路、15…制限構造、20a…軸部、21…シフト路。
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフトパターンに沿って操作されるシフトレバーのシフト位置を検出するシフト位置検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザによって操作される車両のシフトレバーと変速機との間の機械的な連結を排除した上で、シフトレバーの位置をセンサを通じて検出し、検出されたシフト位置に基づいて変速機のシフトレンジの切り替えを行う、いわゆるバイワイヤ式のシフト装置が周知である。車両のシフト装置としてこうしたバイワイヤ式のシフト装置を採用すれば、シフトレバーと変速機とを連結するリンク機構などを車両に設ける必要がなくなることから、シフトレバーの配設位置を自由に変更することが可能になるなど、車両設計の自由度を大きく高めることができるようになる。そして従来、この種のシフト装置としては、例えば特許文献1に記載の装置が知られている。図11及び図12は、この特許文献1に記載のシフト装置の概略構造をそれぞれ示したものである。
【0003】
同図11に示されるように、このシフト装置には、軸部20aを中心に揺動するシフトレバー20が設けられており、このシフトレバー20の揺動がシフト路21によって案内されている。そして、ユーザは、シフトレバー20をシフト路21に沿って操作することで、そのシフト位置を「D(ドライブ)ポジション」、「N(ニュートラル)ポジション」、及び「R(リバース)ポジション」に変更することが可能となっている。また、図12に示されるように、このシフト装置では、シフトレバー20の基端部に磁石22が設けられており、シフトレバー20の揺動に伴って、磁石22が図中のX軸方向に往復動する構造となっている。ちなみに、シフトレバー20がNポジションに位置しているときの磁石22の位置を図中の実線で示される基準位置Pnとすると、シフトレバー20がDポジションに位置したとき、磁石22は基準位置Pnよりも右側の第1の位置P1に移動する。また、シフトレバー20がRポジションに位置したとき、磁石22は基準位置Pnよりも左側の第2の位置P2に移動する。一方、このシフト装置には、こうした磁石22の移動に伴う磁界の変化を検出するための2つの磁気センサ23a,23bが設けられている。ちなみに、これらの磁気センサ23a,23bは、磁石22から図中のY軸方向に若干ずれた位置に設けられて且つ、上記X軸方向に沿って併設されている。また、これらの磁気センサ23a,23bは、印加される磁気ベクトルに応じて磁気抵抗効果により抵抗値を変化させる磁気抵抗効果素子からなる、いわゆる磁気抵抗効果(MRE)センサである。そして、このシフト装置では、磁気センサ23a,23bの出力電圧を差動回路に入力してそれらの差分値を演算するとともに、演算された差分値に基づいて上記磁石22の位置を、換言すればシフトレバー20の位置を検出する。
【0004】
このような構成からなるシフト装置によれば、ユーザによるシフトレバー20の操作に伴って磁石22が上記X軸方向に往復動したときに、上記差分値Vdが、図13に示すように直線的に変化する。なお、この図13では、横軸が磁石22の上記基準位置Pnからの変位を、また、縦軸が上記差分値Vdをそれぞれ示している。また、磁石22の変位量を、基準位置Pnから上記第1の位置P1に向かう側を正として示している。このように磁石22の変位に対して差分値Vdが直線的に変化すれば、差分値Vdとシフトレバー20の操作位置とを一対一に対応させることができるため、同差分値Vdに基づいてシフトレバー20のシフト位置を検出することができるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−222594号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、このようなシフト装置にあっては、通常、差分値Vdに基づいてシフトレバー20の位置を検出する際に、次のような方法が採用されることが多い。すなわち、先の図13に示されるように、差分値Vdに対して2つの閾値Ve11,Ve12(Ve11<Ve12)を設けた上で、以下の(a1)〜(a3)に例示する判定処理を行う。
【0007】
(a1)差分値Vdが閾値Ve11未満であるとき。このとき、シフトレバー20のシフト位置はRポジションであると判定する。
(a2)差分値Vdが閾値Ve11以上であって且つ、閾値Ve12未満であるとき。このとき、シフトレバー20のシフト位置はNポジションであると判定する。
【0008】
(a3)差分値Vdが閾値Ve12以上であるとき。このとき、シフトレバー20の位置はDポジションであると判定する。
このような判定処理を通じてシフトレバー20のシフト位置を検出すれば、差分値Vdと閾値Ve11,Ve12との比較を行うだけでシフトレバー20の位置を検出することができるため、シフト位置を容易に検出することが可能となる。
【0009】
一方、上述した特許文献1に記載のシフト装置にあっては、磁石22が上記第1の位置P1から上記第2の位置P2の範囲に位置しているときに限って差分値Vdの直線性を担保することが可能となっている。このため、差分値Vdの直線性を担保しつつシフト位置の数を増やそうとすると、差分値Vdに対して設けられる各閾値の間隔が自ずと狭くなってしまう。具体的には、例えば上述した3つのシフト位置に加え、更に2つのシフト位置を設ける場合には、先の図13に対応する図として図14を示すように、4つの閾値Ve21〜Ve24を設ける必要があり、これらの各閾値Ve21〜Ve24の間隔が上記閾値Ve11,Ve12の間隔と比較すると狭くなってしまう。そしてこのように閾値の間隔が狭くなると、例えばノイズ等の影響によって磁気センサ23a,23bの出力値が変動した際に、上記差分値Vdが閾値を超えて変化するような状況が生じ易くなり、ひいてはシフトレバー20の位置の誤検出等をも招きかねない。
【0010】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、シフト位置を高い精度で検出することのできるシフト位置検出装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、シフトパターンに沿って所定方向に互いに異なる位置に設定された5つのシフト位置に操作されるシフトレバーと、該シフトレバーの前記所定方向への変位に対して直線的に変化する信号を出力する検出部とを備え、該検出部の検出信号に対して前記5つのシフト位置に対応する4つの閾値を設けるとともに、該4つの閾値と前記検出信号との比較のもとに前記シフトレバーが前記5つのシフト位置のいずれに位置しているかを検出するシフト位置検出装置において、前記所定方向に互いに異なる長さをもって延伸される第1及び第2のシフト路によって前記シフトパターンを形成するとともに、前記5つのシフト位置のうち、4つのシフト位置を前記第1及び第2のシフト路の両端部に、残りの1つのシフト位置を前記第1及び第2のシフト路のいずれか一方の中央部にそれぞれ設定し、前記シフトレバーが前記第1及び第2のシフト路のいずれかに位置したとき、前記検出信号に対して設定される閾値を、前記シフトレバーが位置するシフト路のシフト位置に対応した2つの閾値に設定することを要旨としている。
【0012】
同構成によれば、検出部の検出信号に対してその都度設定される閾値の数を2つにすることができるため、上述のように検出部の検出信号に対して4つの閾値を設定して5つのシフト位置を検出する場合と比較すると、閾値の間隔を広げることができるようになる。このため、仮にノイズ等の影響によって検出部の検出信号が変動したとしても、同検出部の検出信号が閾値を超えて変化するような状況が生じ難くなるため、シフトレバーのシフト位置を適切に検出することができるようになる。
【0013】
そしてこの場合、具体的には、請求項2に記載の発明によるように、前記シフトパターンを、前記第1及び第2のシフト路とこれらの中央部を互いに連結するセレクト路とによって変形H字形状に形成すれば、同シフトパターンを容易に形成することができるようになる。
【0014】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のシフト位置検出装置において、前記第1及び第2のシフト路のうち、長いシフト路に沿ってオートマチックモードに対応したシフト位置が設定されるとともに、短いシフト路に沿ってマニュアルモードに対応したシフト位置が設定されることを要旨としている。
【0015】
同構成によれば、オートマチックモードに対応する各シフト位置の間隔を広げることができるため、ユーザがオートマチックモードのシフト操作を行う際には、例えばシフトレバーを誤ったシフト位置に操作してしまうなど、ユーザにとって好ましくない状況を回避することができるようになる。また、マニュアルモードに対応する各シフト位置の間隔を狭くすることができるため、ユーザがマニュアルモードのシフト操作を行う状況、すなわちユーザがシフトレバーのシフト位置を頻繁に切り替える状況にあっては、シフト位置を変更する際のシフトレバーの操作量を小さくすることができる。このため、ユーザの操作性を的確に確保することができるようになる。
【発明の効果】
【0016】
本発明にかかるシフト位置検出装置によれば、シフト位置を高い精度で検出することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかるシフト位置検出装置の一実施形態について同シフト位置検出装置が搭載されるシフト装置の斜視構造を示す斜視図。
【図2】同実施形態のシフト位置検出装置についてその分解斜視構造を示す斜視図。
【図3】同実施形態のシフト位置検出装置についてその平面構造を示す平面図。
【図4】図3のA−A線に沿った断面構造を示す断面図。
【図5】同実施形態のシフト位置検出装置に設けられる接触スイッチの動作例を示す断面図。
【図6】(a),(b)は、同実施形態のシフト位置検出装置の動作例をそれぞれ示す平面図。
【図7】同実施形態のシフト位置検出装置についてそのシステム構成を示すブロック図。
【図8】同実施形態のシフト位置検出装置における2つの磁気センサの出力信号と磁石の変位量との関係、並びにそれらの出力信号の差分値と磁石の変位量との関係を示すグラフ。
【図9】(a),(b)は、同実施形態のシフト位置検出装置におけるシフト位置の検出態様をそれぞれ示すグラフ。
【図10】(a),(b)は、同実施形態のシフト位置検出装置の変形例について同シフト位置検出装置が搭載されるシフト装置の斜視構造をそれぞれ示す斜視図。
【図11】従来のシフト装置についてその斜視構造を示す斜視図。
【図12】同従来のシフト装置におけるシフトレバーの基端部に設けられる磁石と2つの磁気センサとの位置関係を模式的に示す平面図。
【図13】同従来のシフト装置における2つの磁気センサの出力信号の差分値と磁石の変位量との関係を示すグラフ。
【図14】同従来のシフト装置における5つのシフト位置を検出する方法を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明にかかるシフト位置検出装置を具体化した一実施形態について図1〜図9を参照して説明する。図1は、本実施形態にかかるシフト位置検出装置を搭載したシフト装置の斜視構造を示したものであり、はじめに、同図1を参照して、このシフト装置の概略構成について説明する。
【0019】
図1に示されるように、このシフト装置は、車両に固定されるレバーユニット1と、このレバーユニット1に基端部が支持されて車両の変速機のシフトレンジを切り替える際にユーザによって操作されるシフトレバー2と、このシフトレバー2の移動を案内するシフトパターン3が形成されたシフトパネル4とを基本的に備える構成となっている。ここで、シフトパターン3は、図中のY軸方向に互いに異なる長さをもって延伸されるMTシフト路3a及びATシフト路3bと、これらのシフト路3a,3bの中央部を互いに連結するセレクト路3cとによって構成されており、全体として変形H字形状に形成されている。そして、このシフト装置では、このようなシフトパターン3に対して、MTシフト路3aにマニュアルモードに対応した各シフト位置、すなわち「−(マイナス)ポジション」、「中立ポジション」、及び「+(プラス)ポジション」が設定されている。また、ATシフト路3bにオートマチックモードに対応した各シフト位置、すなわち「Dポジション」、「Nポジション」、及び「Rポジション」が設定されている。ここで、シフトレバー2は、中立ポジションを基準位置として、マイナスポジション、プラスポジション、Dポジション、Nポジション、及びRポジションの各シフト位置に操作されると、自動変速機のシフトレンジがこれら各シフト位置に対応するシフトレンジに設定される。その後、運転者によってシフトレバー2の把持が解除されると、シフトレバー2は基準位置である中立ポジションに戻るが、上記設定されたシフトレンジはそのまま維持される。また、上記マニュアルモードにおける「マイナスポジション」及び「プラスポジション」の切り替えは、シフトレバー2を「Dポジション」に一旦操作した後にのみ可能となっている。
【0020】
このように各シフト路3a,3bに対してシフト位置を設定すれば、オートマチックモードに対応する各シフト位置の間隔を広げることができるため、ユーザがオートマチックモードのシフト操作を行う際には、例えばシフトレバー2を誤ったシフト位置に操作してしまうなど、ユーザにとって好ましくない状況を回避することができるようになる。また、マニュアルモードに対応する各シフト位置の間隔を狭くすることができるため、ユーザがマニュアルモードのシフト操作を行う状況、すなわちユーザがシフトレバー2のシフト位置を頻繁に切り替えるような状況にあっては、シフト位置を変更する際のシフトレバー2の操作量を小さくすることができる。このため、ユーザの操作性を的確に確保することができるようになる。
【0021】
一方、このシフト装置では、レバーユニット1の内部に設けられているシフト位置検出装置を通じて、シフトレバー2が中立ポジションを除く5つのシフト位置のいずれに位置しているかを検出する。
【0022】
図2は、このシフト位置検出装置の分解斜視構造を、また、図3は、同シフト位置検出装置の平面構造を、さらに、図4は、図3のA−A線に沿った断面構造を示したものであり、次に、これら図2〜図4を参照して、シフト位置検出装置の構造について具体的に説明する。ちなみに、図2〜図4では、上記シフトレバー2が中立ポジションに位置している場合について例示している。また、図2〜図4では、便宜上、上述したシフトレバー2を各シフト位置から中立ポジションに復帰させる復帰構造については割愛している。
【0023】
同図2及び図3に示されるように、このシフト位置検出装置には、上記セレクト路3cに沿って、すなわち図中のX軸方向に沿って延伸されるスライダ5が設けられており、このスライダ5のX軸方向の両端部が、同じくシフト位置検出装置に設けられる支持部材6によって支持されている。このスライダ5には、上記セレクト路3cに沿って延伸されるとともに上方に開口する溝部5aが形成されており、この溝部5aに、上記シフトレバー2の基端部に設けられた板状の台座2aが収容されている。すなわち、上記シフトレバー2がセレクト路3cに沿って移動するとき、台座2aがスライダ5の内部をスライド移動して、シフトレバー2がスライダ5に対して相対移動する構造となっている。また、図4に示されるように、この溝部5aのATシフト路3b側の端部には、上記台座2a側に突出するかたちで設けられた突出部10aが押圧されることでオン状態となる接触スイッチ10が配置されている。すなわち、図5に示すように、この接触スイッチ10は、シフトレバー2がATシフト路3bに操作されたときに上記台座2aによって突出部10aが押圧されることでオン状態となるスイッチング素子であり、同接触スイッチ10のオン/オフ信号に基づいてシフトレバー2がATシフト路3bに位置しているか否かを検出することが可能となっている。さらに、同図4及び図5に示されるように、スライダ5の底部には、Z軸方向に着磁された円柱状の磁石7が一体的に取り付けられている。
【0024】
一方、図2及び図3に示されるように、上記支持部材6の上記スライダ5が着座する部分には、図中のY軸方向に延びるかたちで段差部6a,6bが形成されている。そして、この段差部6a,6bによって、上記スライダ5のX軸方向の移動が規制されるとともに、そのY軸方向の移動が許容されている。したがって、図6(a)に示すように、シフトレバー2が上記中立ポジションに位置しているときの磁石7の位置を基準位置Poとすると、シフトレバー2がマイナスポジション、あるいはプラスポジションに操作された場合、磁石7は、基準位置Poよりも下側のマイナス位置Pm、あるいは上側のプラス位置Ppに移動する。すなわちこの場合には、磁石7の中心軸mは、Y軸に平行な軸線Y1上を距離S1だけ移動する。一方、図6(b)に示すように、シフトレバー2がNポジションに操作されたときにも磁石7は基準位置Poに位置し、その位置からシフトレバー2がDポジション、あるいはRポジションに操作された場合、磁石7は、基準位置Poよりも下側のD位置Pd、あるいは上側のR位置Prに移動する。すなわちこの場合には、磁石7の中心軸mは、軸線Y1上を上記移動距離S1よりも長いS2だけ移動する。
【0025】
さらに、図2及び図3に示されるように、上記支持部材6の磁石7が対向する部分には、2つの磁気センサ9a,9bを含めて各種電子部品が実装された基板8が設けられている。これらの磁気センサ9a,9bは、印加される磁気ベクトルに応じて磁気抵抗効果により抵抗値が変化する、いわゆる磁気抵抗効果素子によって構成される磁気抵抗効果(MRE)センサである。より具体的には、磁気抵抗効果素子が直列に接続されたハーフブリッジ回路が信号処理回路と共に1チップに集積化されたものである。また、図6(a)に示されるように、この磁気センサ9a,9bは、上記磁石7に対して以下の(b1)〜(b3)に示す配置関係を有している。
【0026】
(b1)磁気センサ9a,9bは、磁石7の中心軸mからX軸方向に所定距離Dxだけずれた位置に配置されている。
(b2)磁気センサ9a,9bは、Y軸方向に沿って並設されている。
【0027】
(b3)磁気センサ9a,9bは、磁石7が図中の基準位置Poに位置している状態において、同磁石7の中心軸mを通ってX軸に平行な軸線X1を基準に線対称となるように設けられている。ちなみに、磁気センサ9a,9bの間の距離は、上記シフトレバー2がATシフト路3bに沿って操作された際の磁石7の中心軸mの移動距離S2と同等の長さに設定されている。
【0028】
そして、このシフト位置検出装置では、先の図6(a),(b)に示されるように、シフトレバー2のシフト位置の変化に伴って磁石7が軸線Y1上を移動すると、各磁気センサ9a,9bに付与される磁界が変化することとなり、各センサ9a,9bの出力電圧(センサ出力)が変化する。
【0029】
図7は、このようなシフト位置検出装置のシステム構成をブロック図として示したものであり、次に、同図7を参照して、このシフト位置検出装置のシステム構成について具体的に説明する。
【0030】
同図7に示されるように、このシフト位置検出装置では、上記磁気センサ9a,9bのそれぞれの出力電圧V1,V2が、信号処理回路としての差動回路11に入力されてそれらの差分値(=V1−V2)が演算された後、同差分値が検出信号Scとして、マイクロコンピュータを中心に構成されるシフト制御装置12に取り込まれる。また、このシフト制御装置12には、上記接触スイッチ10のオン/オフ信号も取り込まれている。このシフト制御装置12では、接触スイッチ10からオフ信号が出力されているとき、すなわちシフトレバー2がMTシフト路3aに位置しているときには、上記検出信号Scに対して第1及び第2の閾値Ve1,Ve2が設定され、これら2つの閾値Ve1,Ve2と検出信号Scとの比較のもとにシフトレバー2のシフト位置を検出する。また、接触スイッチ10からオン信号が出力されているとき、すなわちシフトレバー2がATシフト路3bに位置しているときには、上記検出信号Scに対して第3及び第4の閾値Ve3,Ve4が設定され、これら2つの閾値Ve3,Ve4と検出信号Scとの比較のもとにシフトレバー2のシフト位置を検出する。そして、シフト制御装置12は、検出されたシフト位置に応じて変速機13に指令信号を出力し、変速機13内部の動力伝達経路の接続状態の切り替えを行わせる。
【0031】
次に、図8及び図9を併せ参照して、第1〜第4の閾値Ve1〜Ve4について説明するとともに、シフトレバー2のシフト位置を把握する方法について説明する。
まず、図8を参照して、シフトレバー2の操作に伴って磁石7が上記軸線Y1に沿って移動した際の上記磁気センサ9a,9bの出力信号の変化、並びに上記検出信号Scの変化について説明する。図8は、上記磁石7の基準位置Poからの変位量を横軸に、上記磁気センサ9a,9bの出力電圧V1,V2及び検出信号Scを縦軸にとって、両者の関係を示したグラフである。なお、図8では、磁石7の変位量を、基準位置Poからプラス位置Ppに向かう側、あるいはR位置に向かう側を正として表している。
【0032】
同図8に示されるように、磁石7が、上記D位置Pd、マイナス位置Pm、基準位置Po、プラス位置Pp、及びR位置Prの順で移動したとすると、磁気センサ9a,9bの出力電圧V1,V2は、図中に一点鎖線及び二点鎖線でそれぞれ示されるように、互いに半周期だけ位相がずれる態様にて正弦波状に変化する。ちなみに、本実施形態では、このように出力電圧V1,V2の位相が半周期だけずれるように磁気センサ9a,9bの向き等が調整されている。また、このように変化する出力電圧V1,V2に対して、検出信号Scは、磁石7が各シフト位置に変位する範囲で直線的に変化する値となる。
【0033】
次に、図9を参照して、このように変化する検出信号Scに対して設定されている上記第1〜第4の閾値Ve1〜Ve4について説明するとともに、これらの閾値Ve1〜Ve4に基づいてシフトレバー2のシフト位置を検出する方法について説明する。
【0034】
同図9(a)に示されるように、接触スイッチ10がオフ状態である場合、すなわちシフトレバー2が上記MTシフト路3aに位置している場合には、磁石7はマイナス位置Pmからプラス位置Ppまでの範囲で変位する、すなわち図中の実線の範囲で変化する。したがって、上記検出信号Scは、マイナス位置Pmに対応する電圧値Vdmからプラス位置Ppに対応する電圧値Vdpまでの範囲で変化する。ここで、上記シフト制御装置12では、接触スイッチ10がオフ状態であるとき、電圧値Vdmの半分の値を第1の閾値Ve1(=Vdm/2)に、また、電圧値Vdpの半分の値を第2の閾値Ve2(=Vdp/2)に設定し、以下の(c1),(c2)に示すようにシフトレバー2のシフト位置を判定する。
【0035】
(c1)検出信号Scが第1の閾値Ve1未満であるとき。このとき、シフトレバー2のシフト位置は、マイナスポジションであると判定する。
(c2)検出信号Scが第2の閾値Ve2以上であるとき。このとき、シフトレバー2のシフト位置は、プラスポジションであると判定する。
【0036】
一方、同図9(b)に示されるように、接触スイッチ10がオン状態である場合、すなわちシフトレバー2が上記ATシフト路3bに位置している場合には、磁石7はD位置PdからR位置Prまでの範囲で変位するため、上記検出信号Scは、D位置Pdに対応する電圧値VddからR位置Prに対応する電圧値Vdrまでの範囲で変化する。ここで、上記シフト制御装置12では、接触スイッチ10がオン状態であるとき、電圧値Vddの半分の値を第3の閾値Ve3(=Vdd/2)に、また、電圧値Vdrの半分の値を第4の閾値Ve4(=Vdr/2)に設定し、以下の(d1)〜(d3)に示すようにシフトレバー2のシフト位置を判定する。
【0037】
(d1)検出信号Scが第3の閾値Ve3未満であるとき。このとき、シフトレバー2のシフト位置は、Dポジションであると判定する。
(d2)検出信号Scが第3の閾値Ve3以上であって且つ、第4の閾値Ve4未満であるとき。このとき、シフトレバー2のシフト位置は、Nポジションであると判断する。
【0038】
(d3)検出信号Scが第4の閾値Ve4以上であるとき。このとき、シフトレバー2のシフト位置は、Rポジションであると判定する。
シフト位置検出装置としてのこうした構成によれば、検出信号Scに対してその都度設定される閾値の数を2つにすることができるため、上述のように検出信号Scに対して4つの閾値を設定して5つのシフト位置を検出する場合と比較すると、閾値の間隔を広げることができるようになる。このため、仮にノイズ等の影響によって検出信号Scが変動したとしても、同検出信号Scが各閾値を超えて変化するような状況が生じ難くなるため、シフトレバー2の操作位置を適切に検出することができるようになる。
【0039】
以上説明したように、本実施形態にかかるシフト位置検出装置によれば、以下のような効果が得られるようになる。
(1)シフトレバー2がMTシフト路3a及びATシフト路3bのいずれかに位置したとき、検出信号Scに対して設定される閾値を、シフトレバー2が位置するシフト路の2つのシフト位置に対応した2つの閾値に設定するようにした。これにより、閾値の間隔を広げることができるようになるため、例えばノイズ等の影響によって検出信号Scが閾値を超えて変化するような状況が生じ難くなり、ひいてはシフトレバー2のシフト位置を適切に検出することができるようになる。
【0040】
(2)2つのシフト路3a,3bのうち、短いシフト路3aに沿ってマニュアルモードに対応したシフト位置を設定するとともに、長いシフト路3bに沿ってオートマチックモードに対応したシフト位置を設定するようにした。これにより、ユーザがオートマチックモードのシフト操作をする際には、例えばシフトレバー2を誤ったシフト位置に操作してしまうなど、ユーザにとってこのましくない状況を回避することができるようになる。また、ユーザがマニュアルモードでシフト操作をする際には、ユーザの操作性を的確に確保することができるようになる。
【0041】
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することもできる。
・上記実施形態では、互いに長さの異なる2つのシフト路3a,3bを形成すべく、シフトパターン3を変形H字形状に形成するようにしたが、これに代えて、例えば図10に示すような構造を採用することもできる。まず、同図10(a)に示されるように、Y軸方向に延伸される第1のシフト路14aを設ける。また、図10(b)に示されるように、同第1のシフト路14aのY軸方向の長さをその両端部よりも内側の領域に制限することで同シフト路14aよりも短い第2のシフト路14bを形成する制限構造15を設ける。そして、第1のシフト路14aの両端部及び中央部に、上記Dポジション、Nポジション、及びRポジションをそれぞれ設定するとともに、第2のシフト路14bの両端部及び中央部に、上記マイナスポジション、中立ポジション、及びプラスポジションを設定する。このような構成によれば、上述のようにシフトパターン3を変形H字形状に形成する場合と比較すると、シフトパターン3のX軸方向の長さを短くすることができるため、シフト位置検出装置の小型化を図ることが可能となる。ちなみに、このような制限構造15を設けた場合には、例えば同図10,(a),(b)に示されるように、シフトレバー2にスイッチ部2bを設けた上で、制限構造15による第1のシフト路14aの制限、及びその解除をスイッチ部2bに対するユーザの操作に基づいて行うといった構造を併せて搭載することが有効である。こうした構成によれば、ユーザはシフトレバー2の操作の際に第1及び第2のシフト路14a,14bの切り替えを行うことができるようになるため、ユーザの操作性を向上させることができるようになる。なおこの場合には、上記第1及び第2の閾値Ve1,Ve2と上記第3及び第4の閾値Ve3,Ve4との切り替えも、スイッチ部2bの操作に基づいて行うようにしてもよい。
【0042】
・上記実施形態では、第1〜第4の閾値Ve1〜Ve4の値を、各シフト位置に対応する検出信号Scの値の半分の値に設定するようにしたが、これに代えて、例えば第1の閾値Ve1の値を、マイナス位置Pmに対応する検出信号Scの電圧値Vdmの3/4の値に設定したり、あるいはその1/4の値に設定することも可能である。このように各閾値Ve1〜Ve4の値を変更すれば、ユーザがシフトレバー2を操作した際に、シフト位置が切り替わるタイミングを調整することが可能となる。
【0043】
・上記実施形態では、シフトレバー2のY軸方向の変位に対して直線的に変化する信号を出力する検出部を、2つの磁気センサ9a,9b及び差動回路11によって構成するようにした。これに代えて、例えば2つの磁気センサ9a,9bの出力信号をシフト制御装置12に直接取り込んで、同制御装置12で磁気センサ9a,9bの差分値を演算するようにしてもよい。
【0044】
・上記実施形態では、シフトレバー2がATシフト路3bに位置しているか否かの検出を接触スイッチ10を通じて行うようにした。これに代えて、例えばシフトレバー2と一体となって移動する磁石と、同磁石の磁界の変化を検出する磁気センサを設けた上で、同磁気センサを通じて検出される磁界の変化に基づいてシフトレバー2がATシフト路3bに位置しているか否かを検出するようにしてもよい。
【0045】
・2つのシフト路3a,3bのうち、短いシフト路3aに沿ってオートマチックモードに対応したシフト位置を設定するとともに、長いシフト路3bに沿ってマニュアルモードに対応したシフト位置を設定するようにしてもよい。
(付記)
次に、上記実施形態及びその変形例から把握できる技術的思想について追記する。
【0046】
(イ)請求項1に記載のシフト位置検出装置において、前記所定方向に延伸される第1のシフト路と、同第1のシフト路の前記所定方向の長さをその両端部よりも内側の領域に制限することで前記第1のシフト路よりも短い第2のシフト路を形成する制限構造とを備えることを特徴とするシフト位置検出装置。同構成によれば、上述のようにシフトパターンを変形H字形状に形成する場合と比較すると、所定方向に直交する方向のシフトパターンの長さを短くすることができるため、シフト位置検出装置の小型化を図ることが可能となる。
【0047】
(ロ)請求項1〜3、及び付記イに記載のシフト位置検出装置において、前記検出部は、前記シフトレバーの前記所定方向に沿った方向への操作に伴って変位する磁石と、該磁石の変位に伴い同磁石から発せられる磁界の変化を検出する磁気センサと、該磁気センサの出力信号を所要に処理することで前記シフトレバーの前記所定方向への変位に対して直線的に変化する信号を出力する信号処理回路とを有するものであることを特徴とするシフト位置検出装置。同構成によれば、簡易な構成ながらも、シフトレバーの所定方向への変位に対して直線的に変化する信号を出力することができるようになる。
【0048】
(ハ)付記ロに記載のシフト位置検出装置において、前記磁気センサは、印加される磁気ベクトルに応じて磁気抵抗効果により抵抗値を変化させる磁気抵抗効果素子からなる磁気抵抗効果センサであることを特徴とするシフト位置検出装置。付記ロに記載のシフト位置検出装置において、磁気ベクトルの変化を検知するために用いる磁気センサとしては、例えば磁気抵抗効果センサなどの磁気検出素子を採用することができる。
【0049】
(ニ)付記イに記載のシフト位置検出装置において、前記シフトレバーには、ユーザによって操作されるスイッチ部が設けられ、前記制限構造による前記第1のシフト路の制限、及びその解除が、前記スイッチ部に対するユーザの操作に基づいて行われることを特徴とするシフト位置検出装置。同構成によれば、ユーザはシフトレバーの操作の際にシフト路の長さを切り替えることができるため、ユーザの操作性を向上させることができるようになる。
【符号の説明】
【0050】
m…中心軸、1…レバーユニット、2,20…シフトレバー、2a…台座、2b…スイッチ部、3…シフトパターン、3a…MTシフト路、3b…ATシフト路、3c…セレクト路、4…シフトパネル、5…スライダ、5a…溝部、6…支持部材、6a,6b…段差部、7,22…磁石、8…基板、9a,9b,23a,23b…磁気センサ、10…接触スイッチ、10a…突出部、11…差動回路、12…シフト制御装置、13…変速機、14a…第1のシフト路、14b…第2のシフト路、15…制限構造、20a…軸部、21…シフト路。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シフトパターンに沿って所定方向に互いに異なる位置に設定された5つのシフト位置に操作されるシフトレバーと、該シフトレバーの前記所定方向への変位に対して直線的に変化する信号を出力する検出部とを備え、該検出部の検出信号に対して前記5つのシフト位置に対応する4つの閾値を設けるとともに、該4つの閾値と前記検出信号との比較のもとに前記シフトレバーが前記5つのシフト位置のいずれに位置しているかを検出するシフト位置検出装置において、
前記所定方向に互いに異なる長さをもって延伸される第1及び第2のシフト路によって前記シフトパターンを形成するとともに、前記5つのシフト位置のうち、4つのシフト位置を前記第1及び第2のシフト路の両端部に、残りの1つのシフト位置を前記第1及び第2のシフト路のいずれか一方の中央部にそれぞれ設定し、前記シフトレバーが前記第1及び第2のシフト路のいずれかに位置したとき、前記検出信号に対して設定される閾値を、前記シフトレバーが位置するシフト路のシフト位置に対応した2つの閾値に設定する
ことを特徴とするシフト位置検出装置。
【請求項2】
前記シフトパターンは、前記第1及び第2のシフト路とこれらの中央部を互いに連結するセレクト路とによって変形H字形状に形成されてなる
請求項1に記載のシフト位置検出装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のシフト路のうち、長いシフト路に沿ってオートマチックモードに対応したシフト位置が設定されるとともに、短いシフト路に沿ってマニュアルモードに対応したシフト位置が設定されてなる
請求項1又は2に記載のシフト位置検出装置。
【請求項1】
シフトパターンに沿って所定方向に互いに異なる位置に設定された5つのシフト位置に操作されるシフトレバーと、該シフトレバーの前記所定方向への変位に対して直線的に変化する信号を出力する検出部とを備え、該検出部の検出信号に対して前記5つのシフト位置に対応する4つの閾値を設けるとともに、該4つの閾値と前記検出信号との比較のもとに前記シフトレバーが前記5つのシフト位置のいずれに位置しているかを検出するシフト位置検出装置において、
前記所定方向に互いに異なる長さをもって延伸される第1及び第2のシフト路によって前記シフトパターンを形成するとともに、前記5つのシフト位置のうち、4つのシフト位置を前記第1及び第2のシフト路の両端部に、残りの1つのシフト位置を前記第1及び第2のシフト路のいずれか一方の中央部にそれぞれ設定し、前記シフトレバーが前記第1及び第2のシフト路のいずれかに位置したとき、前記検出信号に対して設定される閾値を、前記シフトレバーが位置するシフト路のシフト位置に対応した2つの閾値に設定する
ことを特徴とするシフト位置検出装置。
【請求項2】
前記シフトパターンは、前記第1及び第2のシフト路とこれらの中央部を互いに連結するセレクト路とによって変形H字形状に形成されてなる
請求項1に記載のシフト位置検出装置。
【請求項3】
前記第1及び第2のシフト路のうち、長いシフト路に沿ってオートマチックモードに対応したシフト位置が設定されるとともに、短いシフト路に沿ってマニュアルモードに対応したシフト位置が設定されてなる
請求項1又は2に記載のシフト位置検出装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−105166(P2011−105166A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263052(P2009−263052)
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月18日(2009.11.18)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】
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