説明

シャッター装置

【課題】シャッター部を狭ピッチで並設することのできるシャッター装置を提供すること。
【解決手段】シャッター装置1は、x軸方向に往復移動可能なシャッター部3と、シャッター部3をx軸方向へ移動させる駆動部4と、シャッター部3のx軸方向への移動を案内するガイド手段7とを有する。シャッター部3は、遮蔽部31と、遮蔽部31と駆動部4とを連結する連結部32とを有する。ガイド手段7は、y軸方向に連結部32を挟んで設けられた一対の凸部751、752を有している。遮蔽部31のy軸方向の幅をL1とし、連結部32(第1連結部321)のy軸方向の幅をL2とし、凸部751、752の離間距離をL3とすると、L1>L3>L2なる関係を満足する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャッター装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、振動子の共振周波数を調整する方法として、振動子の質量を変化させる方法が知られている。このような方法は、例えば、振動子と、イオンビームを振動子に照射することにより振動子の一部を除去して振動子の質量を減少させるイオンガンと、振動子とイオンガンとの間に設けられたシャッター装置とを有する装置を用いて行われる(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1のシャッター装置は、所定方向に並設された複数のシャッター部と、各シャッター部を駆動するアクチュエーターとを有している。ここで、近年では、より多くの振動子を一度に処理できるようにするために、シャッター部を狭ピッチにて配置し、シャッターが有するシャッター部の数を多くすることが望まれている。しかしながら、引用文献1ではシャッターの構成が不明確であり、シャッター部を狭ピッチにて配置する構成を実現することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−34719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、シャッター部を狭ピッチで並設することのできるシャッター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
本発明のシャッター装置は、開状態と閉状態とを切り替えることのできるシャッター装置であって、
互いに直交する2軸を第1軸および第2軸とし、前記第1軸と平行な方向を第1軸方向とし、前記第2軸と平行な方向を第2軸方向としたとき、
前記第1軸方向に往復移動可能なシャッター部と、
前記シャッター部を前記第1軸方向へ移動するための駆動部と、
前記シャッター部の前記第1軸方向への移動を誘導するために、第1軸と交差する方向の軸上にある二つの段差面を備えているガイド手段と、を備え、
前記シャッター部は、前記第2軸方向の幅がL1である遮蔽部と、前記二つの段差面の間にあって第1軸方向に延伸していて、前記第2軸方向の幅がL2であり、かつ前記遮蔽部と前記駆動部とを連結するための連結部と、を備え、
前記二つの段差面の前記第2軸方向の離間距離をL3とすると、L1>L3>L2なる関係を満足することを特徴とする。
これにより、シャッター部(遮蔽部)を狭ピッチで並設することのできるシャッター装置を提供することができる。
【0007】
[適用例2]
本発明のシャッター装置では、前記段差面は、凸の曲面であることが好ましい。
これにより、連結部と凸部とが接触した場合のその接触面積をより小さくすることができ、連結部と凸部との間に発生し得る摩擦力を小さくすることができる。そのため、連結部をより円滑に摺動させることができる。
【0008】
[適用例3]
本発明のシャッター装置では、前記段差面は、前記シャッター部を前記第1軸方向へ移動を誘導するために、前記連結部と摺動可能に係合するガイド溝の壁面であることが好ましい。
これにより、第1軸方向に離間する異なる2点にて連結部を支持することができるため、連結部を安定して支持することができるとともに、連結部を第1軸方向へ円滑に摺動させることができる。
【0009】
[適用例4]
本発明のシャッター装置では、前記二つの段差面は、前記第1軸方向に複数組備えていることが好ましい。
これにより、凸部の配置スペースを小さくすることができる。
[適用例5]
本発明のシャッター装置では、前記連結部と前記遮蔽部とは、別体として形成されており、
前記遮蔽部は、前記連結部に対して着脱自在であることが好ましい。
これにより、消耗品である遮蔽部の交換を簡単に行うことができる。
[適用例6]
本発明のシャッター装置は、振動デバイスの質量調整用シャッター装置であることが好ましい。
これにより、振動デバイスの質量調整をより高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施形態にかかるシャッター装置を適用した周波数調整装置の概略図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかるシャッター装置の平面図(上面図)である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかるシャッター装置の平面図(上面図)である。
【図4】図2に示すシャッター装置の側面図である。
【図5】図2に示すシャッター装置の作動を説明するための図(側面図)である。
【図6】図2に示すシャッター装置が有するガイド手段の断面図である。
【図7】図2に示すシャッター装置が有するガイド手段の断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態にかかるシャッター装置が有するガイド手段の平面図である。
【図9】本発明の第2実施形態にかかるシャッター装置が有するガイド手段の平面図である。
【図10】本発明の第3実施形態にかかるシャッター装置が有するガイド手段の平面図である。
【図11】シャッター部の変形例を示す平面図である。
【図12】シャッター部の変形例を示す平面図である。
【図13】シャッター部の変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のシャッター装置を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態にかかるシャッター装置を適用した周波数調整装置の概略図、図2および図3は、本発明の第1実施形態にかかるシャッター装置の平面図(上面図)、図4は、図2に示すシャッター装置の側面図、図5は、図2に示すシャッター装置の作動を説明するための図(側面図)、
図6および図7は、図2に示すシャッター装置が有するガイド手段の断面図である。
【0012】
なお、図1は、周波数調整装置の概略を説明するための図であるため、図1に示すシャッター装置1が有する単位シャッター装置2の数は、図2以降に示すシャッター装置が有する単位シャッター装置2の数と異なっている。また、以下では、説明の都合上、図1〜図7中の上側を「上」、下側を「下」、右側を「右」、左側を「左」として説明する。また、図1に示すように、互いに直交する3軸をx軸(第1軸)、y軸(第2軸)およびz軸(第3軸)とし、x軸と平行な方向を「x軸方向(第1軸方向)」と言い、y軸と平行な方向を「y軸方向(第2軸方向)」と言い、z軸と平行な方向を「z軸方向(第3軸方向)」と言う。
以下では、本発明のシャッター装置を、例えば水晶振動子などの振動子(振動デバイス)9の共振周波数を調整するための周波数調整装置100に適用した場合、すなわち本発明のシャッター装置を振動子9の質量調整用シャッター装置に適用した場合について説明する。ただし、本発明のシャッター装置の用途はこれに限定されない。
【0013】
1.周波数調整装置
図1に示す周波数調整装置100は、内部を所望の環境とすることのできるチャンバー110と、開閉状態を切り替え可能なシャッター装置1と、イオンガン120と、遮蔽板130とを有している。なお、周波数調整装置100は、これらに加えて、例えば、振動子9の所定箇所にのみ後述するイオンビームIBが照射されるように、振動子9の所定箇所以外を覆うマスク等を設けてもよい。
【0014】
イオンガン120は、例えば、Ar、Ne等の不活性ガスに電界を作用させて加速させることにより、イオンビームIBを発射するものであり、振動子9の質量を変化させる質量変化手段を構成するものである。このようなイオンガン120は、チャンバー110内にてシャッター装置1よりも下側に位置しており、上方へ向けてイオンビームIBを発射する。
【0015】
また、遮蔽板130は、チャンバー110内にてシャッター装置1よりも上側(z軸の+方向側)に位置しており、後述する複数のシャッター部3のうちの隣り合う一対のシャッター部3の隙間からから上方へ漏れるイオンビームIBを遮断する。
また、図2に示すように、シャッター装置1は、複数(本実施形態では8つ)の単位シャッター装置2と、これら複数の単位シャッター装置2を支持する支持部8とを有している。
【0016】
また、複数の単位シャッター装置2は、それぞれ、x軸方向に往復移動(摺動)可能なシャッター部3と、シャッター部3をx軸方向へ往復移動させる駆動部4と、シャッター部3の移動を規制する規制手段6と、シャッター部3の移動を案内するガイド手段7とを有している。また、シャッター部3は、イオンビームIBを遮蔽するための板状の遮蔽部31と、遮蔽部31と駆動部4とを連結し、駆動部4からの駆動力を遮蔽部31に伝達する連結部32とを有している。
複数の単位シャッター装置2は、それぞれ、独立して駆動が制御されており、イオンビームIBの通過を許容する開状態と、イオンビームIBを遮断する閉状態とを切り替えることができる。
【0017】
このような周波数調整装置100では、1つの単位シャッター装置2の上方に1つの振動子9が位置するように複数の振動子9を配置する。そして、イオンガン120からイオンビームIBを発射するとともに、単位シャッター装置2を開状態とすることにより、振動子9にイオンビームIBを照射し、振動子9の一部(例えば、電極の一部)を除去する。これにより、振動子9の質量を減らし、その共振周波数を高める。そして、イオンビームIBの照射により、振動子9の共振周波数が所定値となったら、速やかに単位シャッター装置2を閉じ、それ以上イオンビームIBが振動子9に照射されるのを阻止する。このような制御を単位シャッター装置2ごとに独立して制御することにより、各振動子9の共振周波数を独立して調整することができる。なお、周波数調整装置100を用いた振動子9の周波数調整方法については、後に詳しく説明する。
【0018】
次に、シャッター装置1について詳しく説明する。
支持部8は、第1ベース板81と、第2ベース板82と、ガイド支持部83とを有している。第1、第2ベース板81、82は、それぞれ、z軸方向を厚さ方向とし、xy平面に広がりを有する板状をなしている。また、第2ベース板82は、第1ベース板81の上方に重なって設けられており、複数の支柱84を介して第1ベース板81に固定されている。また、ガイド支持部83は、ガイド手段7が有する一対のガイド部71、72を支持しており、第1、第2ベース板81、82に対して固定的に設けられている。
【0019】
このような支持部8(第1ベース板81、第2ベース板82、ガイド支持部83)の構成材料としては、特に限定されず、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、アルミニウム、マグネシウム等の各種金属、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金または金属間化合物、さらには、これらの金属の酸化物、窒化物、炭化物等が挙げられる。
【0020】
次いで、単位シャッター装置2の構成について説明するが、複数の単位シャッター装置2の構成は、互いに同様であるため、以下では、1つの単位シャッター装置2について代表して説明し、他のシャッターについてはその説明省略する。
遮蔽部31は、z軸方向を厚さとする板状をなし、x軸方向に延在している。遮蔽部31の幅(y軸方向の長さ)としては、特に限定されず、振動子9の大きさ等によって異なるが、例えば、1mm以上、2mm以下程度であるのが好ましい。このような幅とすることにより、遮蔽部31を十分に小さくすることができる。
【0021】
このような遮蔽部31は、x軸方向に往復移動可能に設けられているが、遮蔽部31の移動距離(変位長さ)としては、特に限定されず、例えば、1〜5mm程度であるのが好ましい。これにより、イオンビームIBの通過の許容と遮断とを選択するのに十分な移動距離とすることができるとともに、遮蔽部31の移動距離を抑えることができる。そのため、より素早く短時間で、単位シャッター装置2を開状態から閉状態または閉状態から開状態とすることができる。
【0022】
このような遮蔽部31は、例えば、耐イオンエッチング性に優れる炭素、チタン等を構成材料として構成されている。これにより、イオンビームIBによる遮蔽部31の損傷や摩耗を効果的に抑制することができる。また、遮蔽部31をこのような材料で構成することにより、遮蔽部31の軽量化を図ることができ、遮蔽部31の反応性や移動速度を向上させることができる。
【0023】
なお、遮蔽部31は、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、アルミニウム、マグネシウム等の各種金属、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金または金属間化合物、さらには、これらの金属の酸化物、窒化物、炭化物等で構成された本体の表面に、耐イオンエッチング性に優れるDLC(ダイアモンドライクカーボン)膜を形成した構成とすることもできる。
駆動部4は、遮蔽部31をx軸方向に摺動(往復移動)させるための駆動源である。このような駆動部4としては、遮蔽部31をx軸方向に摺動させることができれば特に限定されない。
【0024】
本実施形態では、駆動部4として、直動型のソレノイドアクチュエーターを用いており、本体41と、本体41に対してx軸方向に往復移動することのできるシャフト42とを有している。このようなリニア型ソレノイドアクチュエーターを用いることにより、駆動部4の小型化を図ることができるとともに、駆動部4からの駆動力を効率的にシャッター部3に伝達することができる。
【0025】
駆動部4を構成するソレノイドアクチュエーターとしては、さらには、自己保持型のソレノイドアクチュエーターであるのが好ましい。自己保持型ソレノイドアクチュエーターとは、例えば、ソレノイドアクチュエーターに永久磁石を内蔵させたものであり、無通電状態でも永久磁石の磁力による吸着保持力(無励磁吸着力)が得られ、長時間の連続保持が可能となる。また、永久磁石の吸着力を利用するため、吸着方向へのシャフト42の移動速度を高めることができる。また、作動時のみの通電であるため、省電力駆動を実現することができ、さらには、コイルの発熱が抑えられる。
【0026】
このような自己保持型ソレノイドアクチュエーターでは、内蔵の永久磁石の磁気力に励磁コイルによる電磁力が加算されるように通電し、吸引力を増加させ可動鉄芯を吸引する。一方、無励時保持(吸着状態)の可動鉄芯を復帰(開放)させるには、永久磁石の磁力を打ち消すように、吸引動作と逆極性の電流をコイルに加えて吸着保持力を小さくし、スプリング等(バネ)の戻し力によって可動鉄芯を引き離す。このような可動鉄心の移動を利用してシャフト42をx軸方向に移動させる。
【0027】
後述するように、駆動部4のシャフト42は、連結部32を介して遮蔽部31と連結している。そのため、駆動部4のシャフト42を本体41から突出させるように図2中右側(x軸の+方向側)へ移動させると、それに連動してシャッター部3が図2中右側に移動し、当該移動によって、単位シャッター装置2が開状態から閉状態となる。これと反対に、駆動部4のシャフト42を本体41内へ退避させるように図2中左側(x軸の−方向側)へ移動させると、それに連動してシャッター部3が図2中右側に移動し、当該移動によって、単位シャッター装置2が閉状態から開状態となる。
【0028】
駆動部4では、シャフト42の図2中右側への移動を、バネの戻し力によって行うのが好ましい。永久磁石の吸着力を利用する場合の可動鉄芯の移動速度と、バネの戻し力を利用する場合の可動鉄芯の移動速度とでは、バネの戻し力を利用する場合の方が早い。そのため、より短い時間で、単位シャッター装置2を開状態から閉状態とすることができ、振動子9が所定の共振周波数となった際にイオンビームIBをより素早く遮断することができる。すなわち、単位シャッター装置2を閉状態とする命令(信号)を出した時刻と、その命令を受けて単位シャッター装置2が実際に閉状態となった時刻との時間差をより短くすることができるため、振動子9の周波数をより精度よく所定値に合わせ込むことができる。
【0029】
連結部32は、駆動部4のシャフト42と遮蔽部31とを連結し、駆動部4からの駆動力、すなわちシャフト42のx軸方向への変位を遮蔽部31に伝達する機能を有する。図2に示すように、このような連結部32は、略「L」字状をなしており、第1連結部321と第2連結部322とにより構成されている。
第1連結部321は、x軸方向に延在し、その先端部にて遮蔽部31を支持している。具体的には、図4に示すように、第1連結部321の先端部には、x軸方向に離間するとともに、上側(z軸の+方向側)に突出する一対の突起321a、321bが形成されている。一方、遮蔽部31には、一対の突起321a、321bに係合する一対の貫通孔311、312が形成されており、この貫通孔311、312内に突起321a、321bを挿入することにより、遮蔽部31が第1連結部321に支持されている。ここで、遮蔽部31は、第1連結部321に対して着脱自在に支持されているのが好ましい。これにより、消耗品である遮蔽部31の交換を簡単に行うことができる。
【0030】
また、第1連結部321の幅(y軸方向の長さ)は、遮蔽部31の幅(y軸方向の長さ)よりも小さく設計されている。また、遮蔽部31の平面視(xy平面視)にて、第1連結部321の中心軸は、遮蔽部31の中心軸と一致している。
第2連結部322は、y軸方向に延在しており、第1連結部321の基端部とシャフト42とを連結している。
【0031】
このような形状の連結部32によれば、簡単な構成で、駆動部4のシャフト42と、シャッター部3の遮蔽部31とをy軸方向にずらすことができる。より具体的には、図2に示すように、シャフト42の駆動軸(中心軸)x1と、遮蔽部31の駆動軸(中心軸)x2とをy軸方向にずらすことができる。そのため、駆動部4の大きさに関わらず、複数の単位シャッター装置2の遮蔽部31をy軸方向に狭いピッチで並設することができる。
【0032】
また、本実施形態の連結部32では、第1連結部321と第2連結部322とが一体的に形成されている。これにより、連結部32を簡単に形成することができる。このような連結部32は、例えば、板状の長尺部材を、その途中で略直角に折り曲げることにより簡単に形成することができる。
なお、図4に示すように、連結部32は、遮蔽部31とシャフト42とのz軸方向の位置ずれを補正するために、必要に応じて、その途中にてz軸方向(z軸成分を含む方向)に延在する部分を有していてもよい。言い換えれば、連結部32は、z軸方向に段差を有するような形状であってもよい。
【0033】
このような連結部32の構成材料としては、特に限定されず、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、アルミニウム、マグネシウム等の各種金属を用いることができる。これらの中でも、アルミニウムのような軽量で加工性の良い材料を用いるのが好ましい。
このような連結部32は、一対のガイド部71、72によって支持されているとともに、その移動が案内されている。一対のガイド部71、72については、後に詳細に説明する。
【0034】
規制手段6は、シャッター部3の移動を規制する機能を有する。図2に示すように、このような規制手段6は、第2連結部322をx軸方向にて挟むようにして支持部8に設けられた一対のストッパー61、62を有している。そのため、第2連結部322は、一対のストッパー61、62間にてx軸方向の移動が可能となる。
具体的には、第2連結部322がストッパー61に接触することにより、シャフト42のそれ以上の突出(先端側への移動)、すなわちシャッター部3のそれ以上の先端側への移動が規制される。
【0035】
反対に、第2連結部322がストッパー62に接触することにより、シャフト42のそれ以上の退避(基端側への移動)、すなわちシャッター部3のそれ以上の基端側への移動が規制される。
これにより、シャッター部3の移動を規制することができ、シャッター部3を毎回同様の移動距離で移動させることができる。そのため、振動子9の共振周波数の調整を毎回同様に行うことができ、高精度な周波数調整が可能となる。
【0036】
なお、仮に、シャッター部3の移動距離が変化すると、単位シャッター装置2が開状態から閉状態となるまでにかかる時間、より具体的には、単位シャッター装置2を閉状態とするための命令(信号)を出した時刻から、その命令を受けて実際に単位シャッター装置2が完全に閉状態となるまでの時間が変化する。このように単位シャッター装置2が開状態から閉状態となるまでにかかる時間が変化すると、それに伴って、振動子9へのイオンビームIBの照射時間が変化し、振動子9の質量が必要以上に減少したり、目的値まで減少していなかったりし、振動子9の共振周波数が所定の周波数からずれてしまう。すなわち、シャッター部3の移動距離が変化してしまうと、振動子9の共振周波数を高精度に調整することができなくなるおそれがある。
【0037】
以上、単位シャッター装置2の構成について詳細に説明した。このような構成の単位シャッター装置2は、第2連結部322がストッパー61に当接した状態、すなわち図5(a)に示す状態がイオンビームIBの振動子9への照射を遮断する閉状態である。そのため、閉状態から、駆動部4を駆動してシャッター部3を基端側へ移動させると、第2連結部322がストッパー62に当接し、図5(b)に示すように、遮蔽部31がイオンビームIBの振動子9への照射を許容する開状態となる。反対に、開状態から、駆動部4を駆動して遮蔽部31を先端側へ移動させると、第2連結部322がストッパー61に当接し、図5(a)に示すように前述した閉状態となる。
【0038】
次いで、複数の単位シャッター装置2の配置について説明する。
図2に示すように、複数のシャッター部3の遮蔽部31は、y軸方向に沿って並設されている。なお、隣り合う一対の遮蔽部31の離間距離としては、特に限定されないが、0.1mm以上、0.5mm以下程度であるのが好ましい。これにより、複数の遮蔽部31を十分に狭いピッチで配列することができるため、シャッター装置1の小型化を図ることができる。また、定められた領域内により多くの遮蔽部31を配置することができるため、同時に共振周波数を調整することのできる振動子9の数を多くすることができ、振動子9の共振周波数調整を効率的に行うことができる。
【0039】
また、複数の遮蔽部31は、xy平面(x軸とy軸とで形成される面)と平行な同一平面上に位置している。これにより、遮蔽部31とそれに対応する振動子9との離間距離を、複数のシャッター部3間で互いに等しくすることができる。そのため、各振動子9にイオンビームIBを等しい条件で照射することができ、振動子9の共振周波数調整を効率的に行うことができる。
【0040】
仮に、シャッター部3の遮蔽部31と振動子9との離間距離が複数のシャッター部3間で異なっている場合、すなわち、ある単位シャッター装置2では遮蔽部31と振動子9との離間距離が短く、他の単位シャッター装置2では遮蔽部31と振動子9との離間距離が長い場合、次のような問題が生じる。
離間距離が長い方の単位シャッター装置2では、離間距離が短い方の単位シャッター装置2よりも、開状態のシャッター部3を通過したイオンビームIBの回り込みが大きくなる。イオンビームIBの回り込みが大きくなるに連れて、イオンビームIBが振動子9の所定位置に効率的に照射されず振動子9の単位時間当たりの質量減少量が減少したり、振動子9の側面や裏面等の除去を望んでいない部分が除去されたりし、振動子9の共振周波数調整の精度が悪化する。そのため、複数の単位シャッター装置2間で遮蔽部31と振動子9との離間距離が異なっていると、複数の振動子9間で質量が減少する速度や、除去される領域が異なり、複数の振動子9を等しい条件で処理することができない。これにより、振動子9の共振周波数調整の精度が低下したり、共振周波数調整が煩雑化したりする。
【0041】
次いで、複数の駆動部4の配置について説明する。
第1ベース板81には、図2、図3中の下側から奇数番目に当たる複数のシャッター部3(3’)と連結する駆動部4(4’)が、シャッター部3’の並び順と同順で配置されている。一方、第2ベース板82には、図2、図3中の下側から偶数番目に当たる複数のシャッター部3(3”)と連結する駆動部4(4”)が、シャッター部3”の並び順と同順で配置されている。
【0042】
第1ベース板81に配置されている複数の駆動部4’について説明すると、各駆動部4’の幅(y軸方向の長さ)は、シャッター部3’の遮蔽部31’の幅よりも広い。また、隣り合う一対の駆動部4’の離間距離は、隣り合う一対のシャッター部3’の遮蔽部31’の離間距離よりも広い。そのため、複数の駆動部4’は、複数のシャッター部3’よりもy軸方向に広い領域に広がって配置されている。
【0043】
また、駆動部4’のシャフト42の移動軸x1と当該駆動部4’に対応するシャッター部3’の遮蔽部31’の移動軸x2のy軸方向の離間距離は、図3中下側の単位シャッター装置2’から上側の単位シャッター装置2’に向けて漸増している。そのため、これらを連結する連結部32’の第2連結部322’の長さも、図3中下側の単位シャッター装置2’から上側の単位シャッター装置2’に向けて漸増している。
【0044】
また、複数の駆動部4’は、x軸およびy軸に対して傾いた方向に沿って配列されており、駆動部4’と当該駆動部4’に対応するシャッター部3’の遮蔽部31’とのx軸方向の離間距離は、図3中下側(y軸の+方向側)の単位シャッター装置2’から上側(y軸の−方向側)の単位シャッター装置2’に向けて漸減している。そのため、これらを連結する連結部32’の第1連結部321’の長さも、図3中下側の単位シャッター装置2’から上側の単位シャッター装置2’に向けて漸減している。
【0045】
このように、複数の連結部32’を、第2連結部322’の長さが長くなるに連れて、第1連結部321’の長さが短くなるように構成することにより、複数の単位シャッター装置2’間での、連結部32’の全長(第1連結部321’の長さと第2連結部322’の長さの和)のずれを少なくすることができる。そのため、複数の単位シャッター装置2’間で、例えば、連結部32’の重量のずれを少なくすることができ、複数の単位シャッター装置’の動作性(シャッター部3’の移動速度等)を互いにほぼ等しくすることができる。なお、複数の連結部32’の全長は、互いに等しいのが好ましい。これにより、上記の効果がより顕著となる。
【0046】
これと同様に、第2ベース板82に配置されている複数の駆動部4”について説明すると、各駆動部4”の幅(y軸方向の長さ)は、シャッター部3”の遮蔽部31”の幅よりも広く、隣り合う一対の駆動部4”の離間距離は、隣り合う一対のシャッター部3”の遮蔽部31”の離間距離よりも広い。そのため、複数の駆動部4”は、複数のシャッター部3”よりもy軸方向に広い領域に広がって配置されている。
【0047】
また、駆動部4”のシャフト42の移動軸x1と当該駆動部4”に対応するシャッター部3”の遮蔽部31”の移動軸x2のy軸方向の離間距離は、図2中下側(y軸の+方向側)の単位シャッター装置2”から上側(y軸の−方向側)の単位シャッター装置2”に向けて漸増している。そのため、これらを連結する連結部32”の第2連結部322”の長さも、図2中下側の単位シャッター装置2”から上側の単位シャッター装置2”に向けて漸増している。
【0048】
また、複数の駆動部4”は、x軸およびy軸に対して傾いた方向に沿って配列されており、駆動部4”と当該駆動部4”に対応するシャッター部3”の遮蔽部31”とのx軸方向の離間距離は、図2中下側の単位シャッター装置2”から上側の単位シャッター装置2”に向けて漸減している。そのため、これらを連結する連結部32”の第1連結部321”の長さも、図2中下側の単位シャッター装置2”から上側の単位シャッター装置2”に向けて漸減している。
【0049】
このように、複数の連結部32”を、第2連結部322”の長さが長くなるに連れて、第1連結部321”の長さが短くなるように構成することにより、複数の単位シャッター装置2”間での、連結部32”の全長(第1連結部321”の長さと第2連結部322”の長さの和)のずれを少なくすることができる。そのため、複数の単位シャッター装置2”間で、例えば、連結部32”の重量のずれを少なくすることができ、複数の単位シャッター装置2”の動作性(シャッター部3”の移動速度等)を互いにほぼ等しくすることができる。なお、複数の連結部32”の全長は、互いに等しいのが好ましく、また、連結部32’の全長とも等しいのがさらに好ましい。これにより、上記の効果がより顕著となる。
以上、複数の単位シャッター装置2の配置について説明した。
【0050】
前述したように、各単位シャッター装置2は、駆動部4の移動軸x1とシャッター部3の遮蔽部31の移動軸x2とがy軸方向にずれている。移動軸x1、x2のy軸方向へのずれ量(離間距離)は、連結部32の第2連結部322の長さを調節することにより、各単位シャッター装置2で独立して設定することができる。このような構成によれば、複数の遮蔽部31の配置と、それに対応する複数の駆動部4の配置とを独立して設定することができる。言い換えれば、複数の遮蔽部31の配置を設定する際に、複数の駆動部4の配置を考慮する必要がない。
【0051】
したがって、複数の遮蔽部31をy軸方向により狭いピッチで並設(配列)することができる。これにより、シャッター装置1の小型化を図ることができる。また、定められた領域内により多くのシャッター部3を配置することができる。
また、本実施形態では、複数の駆動部4が、z軸方向に複数段(2段)に分かれて支持部8に支持されているため、シャッター装置1のxy平面の広がりを抑えることができ、より一層の小型化を図ることができる。なお、複数の駆動部4は、3段以上に分かれて支持部8に支持されていてもよいし、1段にすべてが支持されていてもよい。何段に分けて支持するかは、チャンバー110の形状や、駆動部4の数、大きさ等によって適宜設定することができる。
【0052】
また、本実施形態では、例えば、第1ベース板81において、所定の駆動部4’に対応する連結部32’は、一対のストッパー61、62によって、そのx軸方向への移動が規制されている。ストッパー61は、前記所定の駆動部4’の図2中上側に隣り合う駆動部4’に対応する連結部32’のストッパー62として機能し、ストッパー62は、前記所定の駆動部4’の図2中下側に隣り合う駆動部4’に対応する連結部32’のストッパー61として機能してもよい。これは、第2ベース板82に支持されている駆動部4”についても同様である。このように、所定の単位シャッター装置2のストッパー61およびストッパー62が、他の単位シャッター装置2のストッパー62およびストッパー61を兼ねることにより、シャッター装置1の構成部品の点数を削減することができる。そのため、シャッター装置1の小型化を図ることができる。
【0053】
次に、各単位シャッター装置2のシャッター部3を案内するガイド手段7について説明する。
ガイド手段7は、一対のガイド部71、72と、ガイド部71、72を回転させる回転手段73、74を有している。一対のガイド部71、72は、連結部32(第1連結部321)にてシャッター部3を支持し、第1連結部321の移動をx軸方向に案内することにより遮蔽部31の移動を案内するよう構成されている。これら一対のガイド部71、72は、x軸方向に離間して設けられている。これにより、x軸方向に離間する異なる2点にて第1連結部321を支持することができるため、第1連結部321を安定して支持することができるとともに、第1連結部321をz軸方向の変位を抑えつつ、ガイド部71、72に対してx軸方向へ円滑に摺動させることができる。
【0054】
以下、ガイド部71、72について説明するが、一対のガイド部71、72は、互いに同様の構成であるため、以下では、1つのガイド部71について説明し、ガイド部72については、その説明省略する。
図6および図7に示すように、ガイド部71は、柱状の本体711と、本体711の側面(外周)に開放する複数のガイド溝(凹部)712とで構成されている。言い換えれば、ガイド部71は、柱状の本体711と、本体711の側面から突出し、互いにy軸方向に離間して設けられた複数の凸部719とを有し、隣り合う一対の凸部719によってガイド溝712が形成されている。各単位シャッター装置2のガイド手段7は、1つのガイド溝712を有している。
【0055】
本体711は、y軸方向に延在する円柱状をなしている。このような本体711は、その両端にてガイド支持部83に中心軸y1まわりに回動可能に支持されている。このような本体711の構成材料としては特に限定されず、例えば、鉄、ニッケル、コバルト、銅、マンガン、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、鉛、錫、チタン、タングステン等の各種金属、またはこれらのうちの少なくとも1種を含む合金または金属間化合物等が挙げられる。このうち、合金としては、例えば、ステンレス鋼、一般構造用圧延鋼材(JIS G 3101)、インコネル、その他ジュラルミン等の各種アルミニウム系合金が挙げられる。
【0056】
複数のガイド溝712は、それぞれ、本体711の側面に開放し、本体711の周方向に延在する円環状(リング状)をなしている。また、複数のガイド溝712は、y軸方向に離間して等ピッチで形成されている。これら各ガイド溝712には、第1連結部321が摺動可能に係合している。これにより、各ガイド溝712は、第1連結部321のx軸方向への移動を案内するガイドとして機能する。
【0057】
図6に示すように、ガイド溝712は、横断面形状が略U字型であり、底面712aと底面712aに対して直交するとともにy軸方向に対向する一対の側面(段差面)712bとを有している。このような溝712には、第1連結部321が摺動可能に係合しており、ガイド溝712の底面712aと第1連結部321の下面とが接触している。これにより、第1連結部321は、底面712aによってz軸方向の変位が防止されるとともに、一対の側面712bによってy軸方向の変位が防止された状態でガイド溝712に支持される。そのため、第1連結部321をガイド溝712に対して円滑かつ安定してx軸方向に摺動させることができる。
【0058】
また、ガイド溝712は、中心軸y1を中心軸とするリング状をなしているため、底面712aと第1連結部321の下面とはy軸方向に延在して線接触している。すなわち、底面712aと第1連結部321との接触部300は、y軸方向に延在する線状(直線状)をなしている。これにより、底面712aと第1連結部321の接触面積が小さくなり、底面712aと第1連結部321との間に発生するx軸方向の摩擦力を小さくすることができる。そのため、ガイド溝712に対して第1連結部321を円滑に摺動させることができ、これにより、シャッター部3を安定してx軸方向に移動させることができるとともに、その移動速度を高めることができる。
【0059】
なお、前記「線接触」とは、x軸方向にある程度の幅を有しており、この幅は、例えば0.5mm以下である。言い換えれば、前記「線接触」には、接触部300のx軸方向の長さが0.5mm以下のものが含まれる。
このように、ガイド溝712がリング状をなしていることにより、簡単に接触部300をy軸方向に延在する線状にすることができる。
【0060】
また、本実施形態では、本体711が円柱状をなしているため、ガイド溝712の側面712bと第1連結部321の接触面積を小さく抑えることができる。そのため、第1連結部321がガイド溝712に対して摺動する際の、第1連結部321と側面712bとの接触に発生し得る摩擦力を極力抑えることができる。これにより、ガイド溝712に対して第1連結部321をより円滑に摺動させることができる。
【0061】
また、前述したように、第1連結部321は、その幅(y軸方向の長さ)L2が遮蔽部31の幅L1よりも短く設定されている。そのため、接触部300のy軸方向の長さを短くすることができ、底面712aと第1連結部321の接触面積をより小さくすることができる。これにより、底面712aと第1連結部321との間に発生するx軸方向の摩擦力をより小さくすることができ、ガイド溝712に対して第1連結部321をより円滑に摺動させることができる。
【0062】
なお、第1連結部321の幅L2としては、遮蔽部31の幅L1よりも小さければ特に限定されないが、0.3mm以上、1.0mm以下程度であるのが好ましい。これにより、第1連結部321の機械的強度を維持しつつ、上記効果をより効果的に発揮することができる。なお、幅L2としては、ガイド溝712内に位置し得る部分が、後述するL1>L3>L2なる関係を満足していればよく、その他の部分については、L3以上であってもよい。
【0063】
また、ガイド溝712の幅L3は、第1連結部321の幅L2よりも若干大きいのが好ましい。具体的には、ガイド溝712の幅L2は、第1連結部321の幅L2よりも0.05mm以上、0.2mm以下程度大きいのが好ましい。これにより、第1連結部321がガイド溝712に対して摺動する際の、第1連結部321と側面712bとの過度な接触が防止され、第1連結部321と側面712bとの間に発生し得る摩擦力を極力抑えることができる。また、第1連結部321と側面712bとの間に過度に大きい隙間が形成されるのが防止され、第1連結部321のy軸方向の変位を効果的に抑制することができる。そのため、第1連結部321をガイド溝712に対してx軸方向に円滑かつ安定して摺動させることができる。
【0064】
また、図6に示すように、ガイド溝712の幅(隣り合う一対の凸部719の離間距離)L3は、遮蔽部31の幅L2よりも小さい。すなわち、L1〜L3は、L1>L3>L2なる関係を満足している。これにより、遮蔽部31の配設ピッチに合わせてガイド溝712を形成することができるため、言い換えれば、複数の遮蔽部31をより狭いピッチにてy軸方向に並設することができる。そのため、シャッター装置1の小型化を図ることができる。仮に、ガイド溝712の幅L3が遮蔽部31の幅L1よりも大きいと、ガイド溝712の形成ピッチに合わせて遮蔽部31をy軸方向に並設しなければならないため、遮蔽部31の配設ピッチが大きくなってしまい、シャッター装置1の小型化を図ることができない。
【0065】
また、図6に示すように、ガイド溝712は、それぞれ、y軸方向において、遮蔽部31の内側に位置している。言い換えれば、遮蔽部31のy軸方向両端と交わりz軸方向に延在する一対の直線A1、A2の間にガイド溝712が位置している。これにより、複数の遮蔽部31をより狭いピッチにてy軸方向に並設することができる。そのため、シャッター装置1の小型化を図ることができる。
【0066】
なお、ガイド溝712の深さは、特に限定されないが、0.1mm以上、1mm以下程度であるのが好ましい。これにより、側面712bの高さがシャッター部3のx軸方向の移動を案内するのに十分な高さとなるとともに、側面712bと第1連結部321とが接触した場合のその接触面積を小さく抑え、これらの間に発生し得る摩擦力の過度な増大を抑制することができる。そのため、第1連結部321と側面712bとの間に発生し得る摩擦力を極力抑えつつ、第1連結部321をガイド溝712に対してx軸方向に円滑かつ安定して摺動させることができる。
【0067】
本実施形態では、このような溝712の内面に、第1連結部321との間に発生する摩擦抵抗を低減する被覆層713が形成されている。これにより、第1連結部321とガイド溝712との間に発生する摩擦力をより低減することができ、第1連結部321をガイド溝712に対してx軸方向により円滑かつ安定して摺動させることができる。
被覆層713は、例えば、金属メッキ膜で構成することができる。金属メッキ膜により被覆層713を構成することにより、被覆層713に低摩擦性に加えて耐摩耗性を付与することができる。そのため、第1連結部321との摺動による被覆層713の摩耗、劣化を効果的に抑制することができ、ガイド溝712に対する第1連結部321の摺動性の経時変化を抑制することができる。
【0068】
金属メッキ膜としては、特に限定されず、例えば、ニッケルメッキ、モリブデンメッキ、スズメッキ、クロムメッキ、カニフロンメッキ、カニゼンメッキ、鉄系合金メッキ、アルミニウム系合金メッキ及び銅系合金メッキからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。特に、これらの中でも、カニフロンメッキが好ましい。カニフロンメッキは、他の金属メッキ膜と比較して低摩擦性と耐摩耗性のバランスがよく、これらを同時に十分に高いレベルで発揮することができる。金属メッキ膜の製法として、例えば電解メッキや無電解メッキを用いることができる。
【0069】
なお、被覆層713は、金属メッキ膜で構成されているのに限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)、またはこれらの複合材料から構成されている樹脂膜であってもよい。このような樹脂膜によっても、低摩擦性を発揮することができる。
【0070】
本体711の直径としては、特に限定されず、例えば、3mm以上、10mm以下程度であるのが好ましい。これにより、ガイド溝712の深さを過度に深くしなくても、すなわち前述した好ましい範囲である0.1〜1mmの範囲としたときにも、ガイド溝712の底面712aの曲率を十分に大きくすることができる。そのため、第1連結部321と底面712aとの接触面積(接触部300のx軸方向の長さ)をより小さくすることができ、これらの間の摩擦抵抗をより低減することができる。そのため、第1連結部321をガイド溝712に対してより円滑かつ安定して摺動させることができる。
以上、ガイド部71について説明した。
【0071】
このような構成のガイド部71、72は、その両端にてガイド支持部83に回転可能に支持(軸支)されている。これらガイド部71、72は、回転手段73、74によって回転させることができる。
回転手段73、74は、モーター(例えば、ステッピングモーター)等の駆動源を有しており、この駆動源の駆動によってガイド部71、72をy軸(中心軸)まわりに回転させることができる。これら回転手段73、74は、独立して制御可能であり、ガイド部71、72を独立して回転させることができる。このような回転手段73、74を有することにより、次のような効果を発揮することができる。
【0072】
すなわち、ガイド溝712の底面712aに対して第1連結部321が摺動し、その摺動が繰り返されることにより、摺動により発生する摩擦によって底面712aの接触部300が摩耗し、接触部300の表面粗さが荒くなったり、接触部300が平坦化したりする。このような問題が生じると、底面712aと第1連結部321との間の摩擦抵抗が増大し、ガイド溝712に対する第1連結部321の摺動性が悪化する。
【0073】
そこで、例えば接触部300の摩耗が許容範囲を超えた場合に、回転手段73、74によってガイド部71、72を回転させ、底面712aの異なる位置を新たな接触部300として使用することにより、接触部300の摩耗に起因する底面712aと第1連結部321との間の摩擦抵抗の増大を抑制することができる。そのため、ガイド溝712に対する第1連結部321の優れた摺動性を維持することができる。
【0074】
特に、ガイド溝712は、円環状をなし、その延在方向の全域にて底面712aの曲率が等しい。また、その深さ(側面712bの高さ)もガイド溝712の延在方向の全域にて等しい。すなわち、横断面形状がガイド溝712の延在方向の全域にて等しい。そのため、底面712aの各部位は、互いに等しい条件にて第1連結部321と接触することができる。したがって、底面712aの延在方向の全域を同じ条件にて新たな接触部300として利用することができ、ガイド部71の長寿命化を図ることができる。
以上、ガイド手段7について説明したが、回転手段73、74によるガイド71、72の回転は必要時にもみ行い、それ以外では、ガイド部71、72は、回転が生じないようにガイド支持部83に支持されている。
以上、周波数調整装置100について説明した。
【0075】
2.周波数調整方法
次に、前述した周波数調整装置100を用いた振動子9の周波数調整方法について説明する。
周波数調整装置100による振動子9の周波数調整は、1つの遮蔽部31の直上に1つの振動子9が位置するように、複数の振動子9をチャンバー110内に配置し、チャンバー110内を減圧状態(好ましくは、真空状態)とした状態にて行われる。また、振動子9の共振周波数を断続的に検知しながら行われ、この検知結果は、リアルタイムに図示しない制御手段に送られる。
【0076】
複数の振動子9は、それぞれ、板状またはシート状のキャリアに支持されているのが好ましい。そして、この状態にて、以下のようにして、振動子9の周波数を調整する。各振動子9の周波数調整の方法は、互いに同様であるため、以下では、1つの振動子9の周波数を調整する方法について説明し、他の振動子9の周波数を調整する方法については、その説明を省略する。
【0077】
まず、単位シャッター装置2を閉状態とする。次に、イオンガン120をONとし、イオンビームIBを上方に向けて発射する。そして、イオンビームIBが安定するまで、単位シャッター装置2を閉状態としたまま放置する。次に、単位シャッター装置2を開状態とする。単位シャッター装置2を開状態とすると、イオンビームIBが振動子9に照射され、振動子9の一部、より具体的には電極の一部が除去され、これに伴う振動子9の質量の減少によって、振動子9の共振周波数が徐々に上昇する。次に、振動子9の共振周波数が所定の周波数となったときに、単位シャッター装置2を閉状態とする。以上の工程により、振動子9の共振周波数の調整が終了する。
このように、シャッター装置1を用いて振動子9の周波数調整(質量調整)を行うことにより、チャンバー110の小型化を図ることができるため、効率的に、振動子9の周波数調整を行うことができる。
【0078】
また、前述したように、ガイド溝712に対する第1連結部321の摺動性が優れており、シャッター部3の移動速度が速いため、例えば、周波数調整を終了するために、単位シャッター装置2を閉状態する命令(信号)を出力した時刻から、その命令を受けて単位シャッター装置2が閉状態となる時刻までの時間差をより小さくすることができる。その結果、振動子9の共振周波数の目的値からのずれをより小さくすることができ、振動子9の周波数調整を高精度に行うことができる。
【0079】
また、連結部32のガイド溝712に対する摺動性の低下を抑制することができ、シャッター部3の移動速度をほぼ一定に保つことができる。そのため、単位シャッター装置2を閉状態する命令(信号)を出力した時刻から、その命令を受けて単位シャッター装置2が閉状態となる時刻までの時間差を毎回ほぼ一定に保つことができる。これにより、前記時間差に基づいた前記命令の出力タイミングの補正を簡単に行うことができ、振動子9の周波数調整を高精度に行うことができる。
【0080】
<第2実施形態>
次に、本発明のシャッター装置の第2実施形態について説明する。
図8および図9は、本発明の第2実施形態にかかるシャッター装置が有するガイド手段の平面図である。
以下、第2実施形態のシャッター装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0081】
本発明の第2実施形態にかかるシャッター装置は、ガイド手段の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。なお、各単位シャッター装置が有するガイド手段は、互いに同様の構成であるため、以下では、説明の便宜上、1つの単位シャッター装置が有するガイド手段について代表して説明する。
図8および図9に示すように、本実施形態では、シャッター部3は、第1ベース板81に支持されている。
【0082】
また、各単位シャッター装置2が有するガイド手段7は、第1ベース板81に設けられた一対の凸部751、752と、一対の凸部761、762とを有している。一対の凸部751、752は、y軸方向に離間しており、その間に連結部32(第1の連結部321)が位置している。同様に、一対の凸部761、762もy軸方向に離間しており、その間に連結部32(第1の連結部321)が位置している。また、凸部751、761は、x軸方向に並んで配置されており、凸部752、762もx軸方向に並んで配置されている。一対の凸部751、752と、一対の凸部761、762は、互いに同様の構成であるため、以下では、一対の凸部751、752について代表して説明し、一対の凸部761、762については、その説明を省略する。
【0083】
凸部751、752は、それぞれ、第1ベース板81の上面からz軸方向へ突出するように設けられており、その側面が段差面を構成する。また、凸部751、752は、それぞれ、略円柱形状をなしている。このような凸部751、752の離間距離L3は、第1連結部321の幅L2より大きく、遮蔽部31の幅L1より小さい。すなわち、L1〜L3は、L1>L3>L2なる関係を満足している。また、凸部751、752の間の空間Sは、y軸方向において、遮蔽部31の内側に位置している。言い換えれば、遮蔽部31のy軸方向両端と交わりx軸方向に延在する一対の直線A1、A2の間に空間Sが位置している。
これにより、前述した第1実施形態と同様に、遮蔽部31の配設ピッチに合わせて凸部731、732を形成することができるため、複数の遮蔽部31をより狭いピッチにてy軸方向に並設することができる。そのため、シャッター装置1の小型化を図ることができる。
【0084】
本実施形態では、所定の第1連結部321(321A)を挟んで設けられた一対の凸部751、752のうちの凸部751は、隣(図8中上側)に位置する第1連結部321に対応する凸部752を兼ねており、凸部752は、反対側の隣(図8中下側)に位置する第1連結部322に対応する凸部751を兼ねている。言い換えれば、所定の単位シャッター装置2が有する凸部751と、その隣(図8中上側)に位置する単位シャッター装置2が有する凸部752とが一体的に形成されており、前記所定の単位シャッター装置2が有する凸部752と、その隣(図8中下側)に位置する単位シャッター装置2が有する凸部751とが一体的に形成されている。これにより、一体的に形成しない場合と比較して、凸部731、732の配置スペースを小さくすることができる。そのため、複数の遮蔽部31をより狭いピッチにてy軸方向に並設することができる。
【0085】
また、前述したように、本実施形態の凸部751、752は、それぞれ円柱形状をなしている。すなわち、凸部751、752の側面(第1連結部321と対向する面)は、第1連結部321に向けて凸の湾曲凸面で構成されている。そのため、凸部751、752と第1連結部321とが接触する場合、これらはz軸方向に延在するように線接触する。これにより、第1連結部321と凸部751、752とが接触した場合のその接触面積をより小さくすることができ、第1連結部321と凸部751、752との間に発生し得る摩擦力を小さくすることができる。そのため、第1連結部321をより円滑に摺動させることができる。
このような第2実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0086】
<第3実施形態>
次に、本発明のシャッター装置の第3実施形態について説明する。
図10は、本発明の第3実施形態にかかるシャッター装置が有するシャッター部の平面図である。
以下、第3実施形態のシャッター装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0087】
本発明の第3実施形態にかかるシャッター装置は、各単位シャッター装置が有するシャッター部の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。また、各単位シャッター装置が有するシャッター部は、互いに同様の構成であるため、以下では、説明の便宜上、1つの単位シャッター装置が有するシャッター部について代表して説明する。
【0088】
図10に示すように、本実施形態のシャッター部3では、第1連結部321の下側部の幅(y軸方向の長さ)が下側に向けて漸減している。言い換えれば、第1連結部321の下端部(第1ベース板81と接触している部分)の幅がそれより上側の幅よりも小さい。これにより、例えば、前述した第2実施形態と比較して、第1連結部321と第1ベース板81との接触面積が減少するため、第1連結部321の摺動性が向上する。そのため、シャッター部3をより円滑に、x軸方向に移動させることができる。
【0089】
このような第3実施形態によっても、前述した第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
以上、本発明のシャッター装置について、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。また、各実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【0090】
また、前述した実施形態では、イオンビームによって振動子の質量を減少させることにより振動子の共振周波数を変更する方法について説明したが、これに限定されず、例えば蒸着によって金属粒子を振動子に付着させ、振動子の質量を増加させることにより、振動子の共振周波数を変更してもよい。
また、前述した実施形態では、連結部32と遮蔽部31とが別体として形成されている構成について説明したが、図11、図12に示すように、連結部32と遮蔽部31とを一体的に形成してもよい。また、図13に示すように、第1連結部321の幅(y軸方向の長さ)がz軸方向に変化している構成であってもよい。
【符号の説明】
【0091】
1……シャッター装置 2、2’、2”……単位シャッター装置 3、3’、3”……シャッター部 31、31’、31”……遮断部 311、312…貫通孔 32、32’、32”……連結部 321、321’、321”……第1連結部 321a、321b……突起 322、322’、322”……第2連結部 4、4’、4”……駆動部 41……本体 42……シャフト 6……規制手段 61、62……ストッパー 7……ガイド手段 71、72……ガイド部 711……本体 712……ガイド溝 712a……底面 712b……側面 713……被覆層 719……凸部 73、74……回転手段 751、752、761、762……凸部 8……支持部 81……第1ベース板 82……第2ベース板 83……ガイド支持部 84……支柱 9…振動子 10……シャッター集合体 100……周波数調整装置 110……チャンバー 120……イオンガン 130……遮蔽板 300……接触部 x1……移動軸 x2……移動軸 y1……中心軸 L1、L2、L3……幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開状態と閉状態とを切り替えることのできるシャッター装置であって、
互いに直交する2軸を第1軸および第2軸とし、前記第1軸と平行な方向を第1軸方向とし、前記第2軸と平行な方向を第2軸方向としたとき、
前記第1軸方向に往復移動可能なシャッター部と、
前記シャッター部を前記第1軸方向へ移動するための駆動部と、
前記シャッター部の前記第1軸方向への移動を誘導するために、第1軸と交差する方向の軸上にある二つの段差面を備えているガイド手段と、を備え、
前記シャッター部は、前記第2軸方向の幅がL1である遮蔽部と、前記二つの段差面の間にあって第1軸方向に延伸していて、前記第2軸方向の幅がL2であり、かつ前記遮蔽部と前記駆動部とを連結するための連結部と、を備え、
前記二つの段差面の前記第2軸方向の離間距離をL3とすると、L1>L3>L2なる関係を満足することを特徴とするシャッター装置。
【請求項2】
前記段差面は、凸の曲面である請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項3】
前記段差面は、前記シャッター部を前記第1軸方向へ移動を誘導するために、前記連結部と摺動可能に係合するガイド溝の壁面であることを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項4】
前記二つの段差面は、前記第1軸方向に複数組備えている請求項1ないし3のいずれかに記載のシャッター装置。
【請求項5】
前記連結部と前記遮蔽部とは、別体として形成されており、
前記遮蔽部は、前記連結部に対して着脱自在である請求項1ないし4のいずれかに記載のシャッター装置。
【請求項6】
前記シャッター装置は、振動デバイスの質量調整用シャッター装置である請求項1ないし5のいずれかに記載のシャッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−90103(P2013−90103A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228073(P2011−228073)
【出願日】平成23年10月17日(2011.10.17)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】