説明

シャッタ装置

【課題】簡易な構成によりシャッタ機構を実現すること。
【解決手段】第1シャッタ装置100においては、形状記憶合金60の形状回復力と、アーム30のバネ性とを用いて、シャッタ羽根50を開閉させる駆動力を得る。この第1シャッタ装置100におけるシャッタ羽根50は、通常時は、開放位置に位置する。被写体を撮像する場合、被写体にかかる画像データを取り込んだ後に、形状記憶合金60に駆動電流を供給し、形状回復力を発生させてアーム30を変位させることにより、シャッタ羽根50を閉鎖位置に移動する。シャッタ羽根50を閉鎖位置に移動した後、形状記憶合金による形状回復力の発生を停止させることによって、第1シャッタ装置100のバネ性により、シャッタ羽根を開放位置に移動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機構技術に関し、特に、携帯端末に内蔵されたカメラのシャッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ディジタル信号処理技術の発展により、アナログカメラに代わって、ディジタルカメラが台頭している。通常、ディジタルカメラにはシャッタが搭載され、レリーズボタンを押した後、モータやプランジャなどによって、シャッタが開閉するように設計される。しかしながら、モータやプランジャのような電磁部品の小型化には限度があり、たとえば、携帯電話などにディジタルカメラを組み込む場合、シャッタ機構を組み込むことが困難であった。従来、電磁部品を用いずに、形状記憶合金を駆動源として、シャッタを動作させる技術を開示するものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平10−123583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
一般的に、携帯電話などの精密機械を設計する場合、コスト面を考慮して、部品点数を少なくすることが好ましい。したがって、携帯電話にディジタルカメラを組み込む場合、部品点数の少ないシャッタ機構を搭載することが望ましい。
【0004】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成によりシャッタ機構を実現できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様のシャッタ装置は、露出用開口を遮蔽する閉鎖位置と、露出用開口を開放する開放位置との間で移動可能なシャッタ羽根と、バネ性を有して構成され、シャッタ羽根を支持する駆動部材と、駆動部材に接続して、駆動部材を変位させる駆動力を発生する駆動力発生部と、を備える。駆動力発生部により駆動力が発生されると、駆動部材が変位することでシャッタ羽根が閉鎖位置に移動され、駆動力の発生が停止されると、駆動部材のバネ性によりシャッタ羽根が開放位置に移動される。
【0006】
ここで、変位とは、位置が変化することや形状が変化することを含む。この態様によると、駆動力により駆動部材を変位させることによって、シャッタ羽根を閉鎖位置に移動し、また、駆動部材のバネ性によりシャッタ羽根を開放位置に戻らせることによって、簡易な構成でシャッタ装置を実現できる。
【0007】
駆動力発生部は、線状に形成された形状記憶合金を含み、その両端部が駆動部材に接続されてもよい。形状記憶合金は、駆動電流を供給されると収縮することで、駆動部材を変位させる駆動力を発生してもよい。形状記憶合金は、通電したときの電気エネルギーによって発熱し、その熱エネルギーをもとに力学的エネルギーとしての形状回復力を発生させてもよい。また、形状記憶合金は二方向性の形状記憶効果をもつものであってもよい。この場合、形状記憶合金の両端を駆動部材に接続することによって、形状記憶合金の収縮量を効率的に利用して、シャッタ羽根を移動できる。
【0008】
駆動部材は、形状記憶合金の両端部を接続される2つのアーム部と、2つのアーム部の接続点間の変位量を増幅するストローク増幅機構を有して形成されてもよい。ここで、ストローク増幅機構は、アーム部の変位量を増幅することによって、シャッタ羽根を移動させる機構を含む。この場合、2つのアーム部の接続点間の変位量を増幅することによって、効率的に、シャッタ羽根を閉鎖位置に移動できる。
【0009】
シャッタ羽根と駆動部材とは、一体成形されていてもよい。シャッタ羽根と駆動部材は、微細加工可能な材料により一体成形されてもよく、たとえば、樹脂や金属シリコンなどの材料が用いられてもよい。この場合、部品点数を減少でき、また、コストを低減できる。
【0010】
本発明の別の態様もまた、シャッタ装置である。この装置は、露出用開口を遮蔽する閉鎖位置と、露出用開口を開放する開放位置との間で移動可能な一対のシャッタ羽根と、シャッタ羽根を内側に囲う枠体と、枠体の内方向に突出する基部と、基部の突出方向に実質的に垂直な方向に延出して設けられる第1アーム部と、第1アーム部と実質的に垂直になるように、第1アーム部の一端に設けられた第2アーム部と、第1アーム部と実質的に垂直になるように、第1アーム部の他端に設けられた第3アーム部と、所定の角度で第2アーム部に設けられた第4アーム部と、所定の角度で第3アーム部に設けられた第5アーム部と、シャッタ羽根の一方と第4アーム部とを連結する第1連結部と、シャッタ羽根の他方と第5アーム部とを連結する第2連結部と、第2アーム部および第3アーム部にその両端部を固定される線状の形状記憶合金と、を備える。
【0011】
シャッタ羽根は、形状記憶合金の収縮力により、開放位置から閉鎖位置に移動してもよい。また、シャッタ羽根は、シャッタ装置全体のバネ性により、閉鎖位置から開放位置に移動してもよい。形状記憶合金は、第1アームから所定の距離を隔てて、第2アーム部および第3アーム部に接続されてもよい。第1アーム部は、第2アーム部と第3アーム部より、可撓性が高くてもよい。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、などの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、簡易な構成によりシャッタ装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明の実施形態を具体的に説明する前に、まず、概要について述べる。本実施形態は、シャッタ装置に関する。本実施形態にかかるシャッタ装置は、携帯電話等の小型の電子機器に搭載されるディジタルカメラのシャッタ装置に好適である。シャッタ装置は、露出用開口を遮蔽する閉鎖位置と、露出用開口を開放する開放位置との間で移動可能なシャッタ羽根と、バネ性を有して構成され、シャッタ羽根を支持する駆動部材と、駆動部材に接続して、駆動部材を変位させる駆動力を発生する駆動力発生部とを備える。
【0015】
一般的に、ディジタルカメラにおいては、カメラレンズを介して、被写体を撮像素子に露光させた後、撮像素子が生成した露光情報を画像データとして取り込み、取り込んだ画像データに対してディジタル画像信号処理を実施する。撮像素子に露光させてから、画像データとして取り込まれるまでの時間は、画素数などに比例して長くなる。
【0016】
ここで、画像データの取り込みが完了する前に被写体が動いたような場合、すでに露光された被写体とは異なる被写体を撮像素子に露光させることになる。そうすると、すでに画像データとして取り込まれた被写体の露光情報と、その被写体とは異なる被写体の露光情報とが、1つの画像データに重畳されて取り込まれうるため、画像がぶれたりするなどの画質の劣化が生じることとなる。
【0017】
この対策として、画像データの取り込み速度を高速化する、あるいは、レンズを遮蔽するシャッタを設けることが挙げられる。しかしながら、画素数に比例して処理時間が増加するため、画像データの取り込み時間の高速化には限界がある。そうすると、たとえば、500万画素を超えるディジタルカメラなどにおいては、シャッタを搭載させることが問題の解決手段として現実的である。一定時間露光した後にシャッタを閉じることで、画像データの取り込みが完了するまで、露光情報の変化を抑制でき、画質を向上できるからである。
【0018】
前述したように、シャッタは、モータやプランジャなどを駆動源として、開閉するように設計される。しかし、モータやプランジャのような電磁部品の小型化には限度があり、たとえば、携帯電話などにディジタルカメラを組み込む場合、シャッタを開閉する駆動部を組み込むことが難しく、結果的に画素数が制限されることとなる。また、一般的に、携帯電話などの精密機械を設計する場合、コスト面を考慮して、部品点数を少なくすることが好ましい。
【0019】
そこで、本実施形態のシャッタ装置においては、形状記憶合金の形状回復力と、駆動部材のバネ性とを効率的に利用し、シャッタを開閉させる駆動力を得るようにした。このシャッタ装置におけるシャッタ羽根は、通常時は、開放位置に位置する。画像を撮像する場合、画像を取り込んだ後に、形状記憶合金に駆動電流を供給し、形状回復力を発生させて駆動部材を変位させることにより、シャッタ羽根を閉鎖位置に移動する。シャッタ羽根を閉鎖位置に移動した後、形状記憶合金による形状回復力の発生を停止させ、駆動部材のバネ性によりシャッタ羽根を元の開放位置に移動する。以上の態様により、簡易な構成により、シャッタ装置を実現できることとなる。
【0020】
図1は、本発明の実施形態にかかる第1シャッタ装置100の構成例を模式的に示す第1の正面図である。第1シャッタ装置100は、枠体10と、基部20と、アーム30で代表される第1アーム30a〜第7アーム30gと、連結部40で代表される第1連結部40aと第2連結部40bと、シャッタ羽根50で代表される第1シャッタ羽根50aと第2シャッタ羽根50bと、形状記憶合金60とを含む。図示するごとく、第1の正面図は、シャッタ羽根50が開放位置に位置する場合の態様を示す。
【0021】
枠体10は、図示するごとく、シャッタ羽根50等を囲う枠であり、第1辺12と第2辺14と第3辺16と第4辺18とから構成される。各辺の長さは、ミリオーダーであり、たとえば、5mmとなる。なお、各辺の長さは均一でなくともよい。枠体10は、その内方向に基部20が設けられ、基部20を介してアーム30やシャッタ羽根50などを固定する。なお、説明の便宜上、枠体10を方形状に図示したが、枠体10は他の形状、たとえば、円形状であってもよい。
【0022】
基部20は、枠体10の第1辺12の中央付近に設けられる。また、基部20は、定常状態すなわち駆動力が加えられていない状態において、第1辺12と第1アーム30aとが実質的に平行になるように、第1アーム30aを支持する。「実質的に平行」とは、完全な平行状態だけでなく、一部分のみ平行である状態や略平行な状態を含む。たとえば、図1に示すように、第1アーム30aが変位していない場合、第1アーム30aと第1辺12とは平行となる。
【0023】
第1アーム30aは、当該第1アーム30aの中央付近で、基部20と接続される。第1アーム30aは、両端に第2アーム30bと第3アーム30cとを支持する。第2アーム30bは、第2辺14と実質的に平行になるように、第1アーム30aに対して垂直に設けられ、また、第2辺14と離間して設けられる。同様に、第3アーム30cは、第3辺16と実質的に平行になるように、第1アーム30aに対して垂直に設けられ、また、第3辺16と離間して設けられる。なお、第2アーム30b、第3アーム30cは、他のアーム30と比べ、剛性が高く、変形しにくく構成される。
【0024】
なお、第2アーム30bは、第1アーム30aに接続された端部から、第4アーム30dに接続された端部に向けて、段階的に幅が狭くなるように図示されているが、これにかぎらず、たとえば、第1シャッタ羽根50aが開閉移動する際に、第1シャッタ羽根50aに接触しないような形状で構成されていればよい。第3アーム30cについても同様である。以上により、第1シャッタ装置100を平面状に構成できるため、小スペース化を実現できることとなる。
【0025】
形状記憶合金60は、Ti−Ni系の素材などを用いて構成され、その形状は線状となる。また、形状記憶合金60は、供給された駆動電流にかかる電気エネルギーによって発熱し、その熱エネルギーをもとに力学的エネルギーとしての形状回復力を発生する。具体的には、形状記憶合金60は、駆動電流が与えられていない状態において、ゆるんだ状態となり、駆動電流が与えられた際に、収縮する性質を有する。
【0026】
形状記憶合金60は、その両端が第2アーム30bと第3アーム30cに接続される。形状記憶合金60は、図示するごとく、第1アーム30aと平行に、わずかな距離だけ離されて、それぞれのアーム30に接続される。接続される位置は、枠体10に固定されている第1アーム30aに近い位置となるため、接続点における変位量を増幅でき、第2アーム30bと第3アーム30cとを互いに近づけることができる。なお、変位量は、ストロークとも呼ばれる。
【0027】
第4アーム30dは、第2アーム30bと第1連結部40aとの間に設けられる。また、第4アーム30dは、第2アーム30bに対し、垂直に設けられる。また、第4アーム30dは、第1連結部40aの中央付近に接している。また、第4アーム30dは、第4辺18および第6アーム30fと実質的に平行となる。同様に、第5アーム30eは、第3アーム30cと第2連結部40bとの間に設けられ、第3アーム30cに対し、垂直に設けられる。また、第5アーム30eは、第2連結部40bの中央付近に接している。また、第5アーム30eは、第4辺18および第7アーム30gと実質的に平行となる。
【0028】
第1連結部40aにおける図中上方の一端は、第6アーム30fに接続され、他端は、第1シャッタ羽根50aに接続される。第6アーム30fは、第4辺18や第4アーム30dと実質的に平行になるように、一端において第1連結部40aと接続され、他端において、枠体10の一部に固定される。同様に、第2連結部40bの一端は、第7アーム30gに接続され、他端は、第2シャッタ羽根50bに接続される。第7アーム30gは、第4辺18や第5アーム30eと実質的に平行になるように、一端において第2連結部40bに接続され、他端において、枠体10の一部に固定される。
【0029】
第1シャッタ羽根50aは、第1連結部40aに接続され、その形状は半円形状をとる。同様に、第2シャッタ羽根50bは、第2連結部40bに接続され、その形状は半円形状をとる。なお、シャッタ羽根50の形状は、半円形状にかぎらず、図示しないカメラレンズを閉鎖状態において遮蔽可能な形状であればよく、たとえば、三日月状などであってもよい。また、1対のシャッタ羽根50は、定常状態では、第1シャッタ装置100全体のバネ力により、図示するごとく、露出用開口を遮蔽しないような開放位置に位置される。
【0030】
なお、枠体10と、基部20と、アーム30と、連結部40と、シャッタ羽根50とは、樹脂や金属シリコンなどの微細加工が可能な材料などにより、一体成形されていてもよい。これにより、少ない部品点数で第1シャッタ装置100を構成できる。なお、シャッタ羽根50は、別の材料により成形された後に、連結部40に接続されてもよい。
【0031】
図2は、本発明の実施形態にかかる第1シャッタ装置100の構成例を模式的に示す第2の正面図である。図示するごとく、第2の正面図は、シャッタ羽根50が閉鎖位置に位置する場合の態様を示す。
【0032】
ここでは、シャッタ羽根50が図1に示す開放位置から図2に示す閉鎖位置に移動する際のメカニズムについて説明する。なお、第1アーム30aと第4アーム30dと第5アーム30eと第6アーム30fと第7アーム30gは、第2アーム30b、第3アーム30c、連結部40よりも、可撓性が高いものとする。
【0033】
まず、形状記憶合金60が、図示しない駆動電流供給装置から駆動電流が供給されることにより収縮する。そのため、第2アーム30bと第3アーム30cとが互いに近づく方向に引っ張られながら変位する。
【0034】
ここで、第2アーム30bと第3アーム30cとに接続されている第1アーム30aは、基部20に固定されており、その可撓性は、第2アーム30bや第3アーム30cよりも高い。そのため、第2アーム30bと第3アーム30cとが互いに近づく方向に引っ張られることにより、図示するごとく、第1アーム30aは、基部20が支点となって、弓状に第4辺18に向けてたわむ。
【0035】
さらに、形状記憶合金60の第2アーム30b、第3アーム30cにおける接続点は、第1アーム30aと一定の距離だけオフセットされている。また、第2アーム30bと第3アーム30cは、第1アーム30aを介して、基部20に固定されている。したがって、第2アーム30bと第3アーム30cとは、図示するごとく、第4アーム30d、第5アーム30eと接する端部が互いに近づく方向に動くこととなる。
【0036】
ここで、第2アーム30b、第3アーム30cは、ストローク増幅機構として、形状記憶合金60との接点における変位量すなわちストロークを増幅する。一般的に、力点と支点との距離が、作用点と支点との距離よりも短い場合、力点におけるストロークは増幅され、作用点においてより大きなストロークとなる。本実施形態においては、形状記憶合金60と第2アーム30bとの接続点すなわち力点は、第2アーム30bの端部よりも、支点としての基部20により近い位置に存在するため、接続点におけるストロークが増幅され、端部においてより大きなストロークとなる。第3アーム30cの端部におけるストロークについても同様である。したがって、形状記憶合金60の収縮量が小さくても、第2アーム30bと第3アーム30cによるストローク増幅機構により、その収縮量を増幅することによって、これらの端部を大きく変位させるストロークを生成することができ、これにより、シャッタ羽根50を大きく開閉移動させることができる。さらに、形状記憶合金60の収縮量が小さくてもよいため、形状記憶合金60に供給すべき駆動電流の量を低減できる。
【0037】
第2アーム30bと第3アーム30cとが互いに近づく方向に動くことによって、第4アーム30dと第5アーム30e、および、それらを介して接続されている第1連結部40aと第2連結部40bも、互いに近づく方向に押されることとなる。ここで、第1連結部40aと第2連結部40bとは、第6アーム30f、第7アーム30gをそれぞれ介して、枠体10に固定されている。また、第4アーム30d〜第7アーム30gは、第1連結部40aと第2連結部40bより、可撓性が高い。そのため、枠体10と、第6アーム30f、第7アーム30gとのそれぞれの接点が支点となって、第4アーム30d〜第7アーム30gは、図示するように、第4辺18の中心部に向けてたわむこととなる。
【0038】
さらに、第4アーム30d〜第7アーム30gがたわむことにより、第1連結部40aと第2連結部40bとは、互いに近づきながら、第4辺18の中心部に向けて引き上げられる。これらの変位に伴い、第1連結部40aと第2連結部40bにそれぞれ接続されている第1シャッタ羽根50aと第2シャッタ羽根50bも互いに近づく方向に押されながら、第4辺18に向けて引き上げられる。
【0039】
まとめると、本実施形態における第1シャッタ装置100においては、形状記憶合金60と、第2アーム30b、第3アーム30cの接続部分の2点が力点となる。また、枠体10と基部20、第6アーム30f、第7アーム30gの接続部分の3点が支点となる。さらに、それぞれのアーム30、連結部40の可撓性の差によって、第1シャッタ羽根50a、第2シャッタ羽根50bに対して、互いに近づく方向に押される力と、第4辺18に向けて引き上げられる力とが作用する。
【0040】
互いに近づく方向に押される力と、第4辺18に向けて引き上げられる力とは、互いに重畳され、結果的に、回転する力となって、第1シャッタ羽根50a、第2シャッタ羽根50bに対して作用する。そのため、第1シャッタ羽根50a、第2シャッタ羽根50bは、図1に示す開放位置から、図2に示す閉鎖位置になるように、移動することとなる。
【0041】
つぎに、シャッタ羽根50が図2に示す閉鎖位置から図1に示す開放位置に移動する際のメカニズムについて説明する。なお、それぞれのアーム30は、形状記憶合金60による形状回復力の発生が停止された場合、第1シャッタ装置100のバネ性により、元の位置に戻るように変位するものとする。
【0042】
シャッタ羽根50が図2に示す閉鎖位置に移動した後に、形状記憶合金60に対する駆動電流の供給を停止する。そうすると、形状記憶合金60の両端に接続された第2アーム30b、第3アーム30cは、第1シャッタ装置100のバネ性により、元の位置に戻るように変位する。第2アーム30b、および、第3アーム30cが元の位置に戻ることによって、第2アーム30b、第3アーム30cに接続されている第1アーム30a、第4アーム30d、第5アーム30e、および、第6アーム30f、第7アーム30gは、元の形状に戻りながら変位する。これらの変位により、第1連結部40a、第2連結部40bも変位し、第1連結部40a、第2連結部40bに連結されている第1シャッタ羽根50a、第2シャッタ羽根50bが図1に示す開放位置に移動することとなる。
【0043】
以上の態様により、形状記憶合金60の形状回復力によりアーム30を変位させることによって、シャッタ羽根50を閉鎖位置に移動し、また、第1シャッタ装置100のバネ性によりシャッタ羽根を開放位置に戻らせることによって、簡易な構成で第1シャッタ装置100を実現できる。また、形状記憶合金60の両端を第2アーム30bと第3アーム30cとに接続することによって、形状記憶合金の収縮力を2つのアーム30に作用でき、効率的にシャッタ羽根を移動できる。また、それぞれのアーム30の可撓性の高低差、および、複数の支点を設けることによって、小さい収縮量を増幅でき、シャッタ羽根を閉鎖位置に移動できる。そのため、形状記憶合金60に供給すべき駆動電流量を低減でき、省電力化を実現できる。また、第1シャッタ装置100を平面状に構成できるため、小スペース化を実現できる。
【0044】
次に、変形例を示す。なお、前述した実施形態と共通する部分については、同一の符号を付して、説明を簡略化する。
【0045】
図3は、本発明の実施形態の変形例にかかる第2シャッタ装置200の構成例を模式的に示す第1の正面図である。図示するごとく、第1の正面図は、シャッタ羽根50が開放位置に位置する場合の態様を示す。第2シャッタ装置200は、枠体10と、基部20と、アーム30で代表される第1アーム30a〜第5アーム30eと、連結部40で代表される第1連結部40aと第2連結部40bと、シャッタ羽根50で代表される第1シャッタ羽根50aと第2シャッタ羽根50bと、形状記憶合金60と、固定ピン80で代表される第1固定ピン80aと第2固定ピン80bとを含む。第1シャッタ装置100との構成上の相違点は、第2シャッタ装置200が固定ピン80を含み、また、第6アーム30fと第7アーム30gとを含まない点などである。
【0046】
枠体10は、その内方向に基部20が設けられ、基部20を介してアーム30やシャッタ羽根50などを固定する。基部20は、枠体10の第1辺12の中央付近に設けられる。また、基部20は、定常状態すなわち駆動力が加えられていない状態において、第1辺12と第1アーム30aとが実質的に平行になるように、第1アーム30aを支持する。
【0047】
第1アーム30aは、当該第1アーム30aの中央付近で、基部20と接続される。第1アーム30aは、両端に第2アーム30bと第3アーム30cとを支持する。第2アーム30bは、第2辺14と実質的に平行になるように、第1アーム30aに対して垂直に設けられ、また、第2辺14と離間して設けられる。同様に、第3アーム30cは、第3辺16と実質的に平行になるように、第1アーム30aに対して垂直に設けられ、また、第3辺16と離間して設けられる。なお、第1アーム30aは、他のアーム30よりも可撓性が高く構成されるものとする。
【0048】
形状記憶合金60は、その両端が第2アーム30bと第3アーム30cに接続される。また、形状記憶合金60は、図示するごとく、第1アーム30aと平行に、わずかな距離だけ離されて、それぞれのアーム30に接続される。接続される位置は、枠体10に固定されている第1アーム30aに近い位置となるため、接続点における変位量を増幅でき、第2アーム30bと第3アーム30cとを互いに近づけることができる。
【0049】
第4アーム30dは、一端において、第2アーム30bと接続され、他端において、第1連結部40aと接続される。同様に、第5アーム30eは、一端において、第3アーム30cと接続され、他端において、第2連結部40bと接続される。なお、第4アーム30dと第5アーム30eとは、シャッタ羽根50の開閉移動に際し、枠体10やシャッタ羽根50と接触しなければ、図示する形状に限定されない。
【0050】
第1連結部40aは、図示するような可動ピンなどにより構成され、第4アーム30dと第1シャッタ羽根50aとを連結する。同様に、第2連結部40bは、第5アーム30eと第2シャッタ羽根50bとを連結する。
【0051】
第1シャッタ羽根50aは、第1連結部40aにより、第4アーム30dと連結され、第1固定ピン80aにより、揺動可能に支持される。揺動可能とは、第1固定ピン80aを中心として、揺り動くことを含む。同様に、第2シャッタ羽根50bは、第2連結部40bにより、第5アーム30eと連結され、第2固定ピン80bにより、揺動可能に支持される。なお、第1シャッタ羽根50aと第2シャッタ羽根50bとは、三日月状の形状を有し、開放位置から閉鎖位置に移動するにつれて、双方のシャッタ羽根50により形成される開口は、円に近い形状となる。また、1対のシャッタ羽根50は、定常状態では、第2シャッタ装置200全体のバネ力により、図示するごとく、露出用開口を遮蔽しないような開放位置に位置される。
【0052】
なお、枠体10と、基部20と、アーム30とは、樹脂や金属シリコンなどの微細加工が可能な材料などにより、一体成形されていてもよい。また、固定ピン80は、図示しないカメラ本体などに固定されてもよい。
【0053】
図4は、本発明の実施形態の変形例にかかる第2シャッタ装置200の構成例を模式的に示す第2の正面図である。図示するごとく、第2の正面図は、シャッタ羽根50が閉鎖位置に位置する場合の態様を示す。
【0054】
ここでは、シャッタ羽根50が図3に示す開放位置から図4に示す閉鎖位置に移動する際のメカニズムについて説明する。第1アーム30aは、第2アーム30b〜第5アーム30eよりも、可撓性が高いものとする。
【0055】
まず、形状記憶合金60が、駆動電流が供給されることにより、収縮する。形状記憶合金60が収縮することによって、第2アーム30bと第3アーム30cは、互いに近づく方向に引っ張られる。ここで、第1アーム30aは、第2アーム30bと第3アーム30cより可撓性が高く、また、基部20に固定されている。そのため、形状記憶合金60の両端と第2アーム30bと第3アーム30cとの接続部分が力点となり、また、基部20が支点となって、第1アーム30aの両端が第4辺18方向にたわみながら、第2アーム30bと第3アーム30cとが互いに近づくように動く。さらに、第2アーム30bと第3アーム30cとが互いに近づくように動くことによって、第4アーム30d、第5アーム30eも、互いに近づく方向に移動する。
【0056】
また、前述したように、力点と支点との距離が、作用点と支点との距離よりも短い場合、力点における変位量は増幅され、作用点においてより大きな変位量となる。本変形例においては、形状記憶合金60と第2アーム30bとの接続点すなわち力点は、第2アーム30bの端部よりも、支点としての基部20により近い位置に存在するため、接続点における変位量が増幅され、端部における変位量となる。第3アーム30cの端部における変位量についても同様である。したがって、形状記憶合金60の収縮量が小さくても、第2アーム30bと第3アーム30cによるストローク増幅機構により、その収縮量を増幅することによって、これらの端部を大きく変位させることができ、それにより、シャッタ羽根50を大きく開閉移動させることができる。さらに、形状記憶合金60の収縮量が小さくてもよいため、形状記憶合金60に供給すべき駆動電流の量を抑制できる。
【0057】
ここで、第1シャッタ羽根50aと第2シャッタ羽根50bは、それぞれ第1固定ピン80a、第2固定ピン80bにより揺動可能に支持されながら、第1連結部40a、第2連結部40bを介して、第4アーム30d、第5アーム30eと連結されている。そのため、第4アーム30dと第5アーム30eが互いに近づく方向に変位することにより、第4アーム30d、第5アーム30eと連結部40のそれぞれの連結部分がそれぞれ力点となる。また、固定ピン80が支点となって、連結部分における変位量を増幅し、第1シャッタ羽根50a、第2シャッタ羽根50bを揺動させる。以上により、第1シャッタ羽根50a、第2シャッタ羽根50bは、図3に示す開放位置から、図4に示す閉鎖位置になるように、移動することとなる。
【0058】
つぎに、シャッタ羽根50が図4に示す閉鎖位置から図3に示す開放位置に移動する際のメカニズムについて説明する。なお、第2シャッタ装置200はバネ性を有し、形状記憶合金60による形状回復力の発生が停止された場合、アーム30等は元の位置に戻るように変位するものとする。
【0059】
シャッタ羽根50が図4に示す閉鎖位置に移動した後に、形状記憶合金60に対する駆動電流の供給を停止する。そうすると、形状記憶合金60の両端に接続された第2アーム30b、第3アーム30cは、第2シャッタ装置200のバネ性により、元の位置に戻るように変位する。第2アーム30b、および、第3アーム30cが元の位置に戻ることによって、第2アーム30b、第3アーム30cに接続されている第1アーム30a、第4アーム30d、第5アーム30eも、元の位置に変位する。これらの変位により、第1連結部40a、第2連結部40bを介して第4アーム30d、第5アーム30eに連結されている第1シャッタ羽根50a、第2シャッタ羽根50bが図3に示す開放位置に移動することとなる。
【0060】
以上の態様により、簡易な構成によりシャッタ装置を実現できる。第2シャッタ装置200は、第1シャッタ装置100に比べ部品点数が多いものの、枠体10とその他の構成との接点が基部20のみであるため、枠体10の形状を柔軟に設計できる。
【0061】
以上、本発明を実施形態、変形例をもとに説明した。この実施形態、変形例は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにかかる更なる変形が可能なこと、またそうした変形も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0062】
本発明の実施形態、および、その変形例において、第1アーム30aは、当該第1アーム30aの中央付近で、基部20に接続されるとして説明した。この接続の態様は、たとえば、図5に示すような態様であってもよい。図5は、基部20と第1アーム30aの接続態様の変形例を示す図である。第1アーム30aは、2つのアーム部32を含む。2つのアーム部32のそれぞれは、枠体10と、基部20の先端部分との間に、基部20の突出方向に実質的に垂直な方向に延出して設けられる。このような態様であっても、前述した実施形態、および、その変形例と同等の効果を奏することができることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態にかかる第1シャッタ装置の構成例を模式的に示す第1の正面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかる第1シャッタ装置の構成例を模式的に示す第2の正面図である。
【図3】本発明の実施形態の変形例にかかる第2シャッタ装置の構成例を模式的に示す第1の正面図である。
【図4】本発明の実施形態の変形例にかかる第2シャッタ装置の構成例を模式的に示す第2の正面図である。
【図5】基部と第1アームの接続態様の変形例を示す図である。
【符号の説明】
【0064】
10 枠体、 12 第1辺、 14 第2辺、 16 第3辺、 18 第4辺、 20 基部、 30 アーム、 40 連結部、 50 シャッタ羽根、 60 形状記憶合金、 80 固定ピン、 100 第1シャッタ装置、 200 第2シャッタ装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
露出用開口を遮蔽する閉鎖位置と、露出用開口を開放する開放位置との間で移動可能なシャッタ羽根と、
バネ性を有して構成され、前記シャッタ羽根を支持する駆動部材と、
前記駆動部材に接続して、前記駆動部材を変位させる駆動力を発生する駆動力発生部と、を備え、
前記駆動力発生部により駆動力が発生されると、前記駆動部材が変位することで前記シャッタ羽根が閉鎖位置に移動され、前記駆動力の発生が停止されると、前記駆動部材のバネ性により前記シャッタ羽根が開放位置に移動されることを特徴とするシャッタ装置。
【請求項2】
前記駆動力発生部は、線状に形成された形状記憶合金を含み、その両端部が前記駆動部材に接続されることを特徴とする請求項1に記載のシャッタ装置。
【請求項3】
前記形状記憶合金は、駆動電流を供給されると収縮することで、前記駆動部材を変位させる駆動力を発生することを特徴とする請求項2に記載のシャッタ装置。
【請求項4】
前記駆動部材は、形状記憶合金の両端部を接続される2つのアーム部と、2つのアーム部の接続点間の変位量を増幅するストローク増幅機構を有して形成されることを特徴とする請求項2または3に記載のシャッタ装置。
【請求項5】
前記シャッタ羽根と前記駆動部材とは、一体成形されていることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のシャッタ装置。
【請求項6】
露出用開口を遮蔽する閉鎖位置と、露出用開口を開放する開放位置との間で移動可能な一対のシャッタ羽根と、
前記シャッタ羽根を内側に囲う枠体と、
前記枠体の内方向に突出する基部と、
前記基部の突出方向に実質的に垂直な方向に延出して設けられる第1アーム部と、
前記第1アーム部と実質的に垂直になるように、前記第1アーム部の一端に設けられた第2アーム部と、
前記第1アーム部と実質的に垂直になるように、前記第1アーム部の他端に設けられた第3アーム部と、
所定の角度で前記第2アーム部に設けられた第4アーム部と、
所定の角度で前記第3アーム部に設けられた第5アーム部と、
シャッタ羽根の一方と前記第4アーム部とを連結する第1連結部と、
シャッタ羽根の他方と前記第5アーム部とを連結する第2連結部と、
前記第2アーム部および前記第3アーム部にその両端部を固定される線状の形状記憶合金と、
を備えたことを特徴とするシャッタ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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