説明

シャリ玉容器及びシャリ玉の包装方法

【課題】常温、冷蔵保存のシャリ玉の運搬に好適かつ使用時の利便性を有する容器の開発および電子レンジ加熱時に起こる問題を克服する容器形状と包装方法の開発。
【解決手段】隔壁1aをシャリ玉2の高さの50〜60%としたことで運搬時の衝撃による型崩れを抑制した。また該隔壁に切欠を設けることにより使用時の利便性を向上させた。電子レンジ加熱における結露付着およびシャリ玉の乾燥については、容器底部に棒状の突起1bを数本施し、シャリ玉に紙製のシート3を載せることによって商品価値の低下を抑制した。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、シャリ玉の運搬用および保存用の電子レンジ対応型の容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
握り寿司は日本人の嗜好に合った食品で、職人が握る寿司屋以外にも回転寿司や宅配専門店などがあり、寿司専門店の形態は消費者の需要にあわせて多様化している。また専門店以外にもファミリーレストランや居酒屋などの外食産業やスーパーやコンビニエンスストアなどの中食産業でも需要が伸びている。しかしシャリ玉を人の手で握るには長い経験と高度な技術を必要とするため、一部を除く専門店や外食産業、中食産業ではコストを削減するためにシャリ玉製造機により大量生産されたシャリ玉を仕入れ、店舗でネタをあわせて仕上げる握り寿司の製造方法が確立している。
【0003】
しかし従来流通しているシャリ玉には十分に克服されていない問題が大きく三つある。すなわち運搬時における問題、利便性の問題、加熱時に起こる問題である。
【0004】
運搬時における問題を以下に概略する。機械によって大量生産されたシャリ玉は、容器に並べられた後、用途に応じて常温、冷蔵、冷凍で保存され、流通される。冷凍保存されたシャリ玉は衝撃に対して型崩れを起こすことは皆無であるが、常温、冷蔵保存されたシャリ玉は流通する際における振動や衝撃により型崩れを起こしたり、シャリ玉同士がくっつく等の問題点があった。特許文献1では食品を型崩れすることなく効率良く有効に運搬するのに好適な運搬容器の開示がなされているが、この容器はシャリ玉間に隔壁が存在しないため、水平方向の衝撃に対して十分な対策が施されているとはいえない。
【0005】
常温保存と冷蔵保存のシャリ玉は澱粉の老化が進行すると米粒がぼろぼろになるため、老化が進んだシャリ玉は使用する際に電子レンジで加熱して澱粉の再糊化を進める必要があり、冷凍されたシャリ玉もまた老化が進行しやすい温度帯をすみやかに通過させるために電子レンジで解凍する必要がある。従来のシャリ玉容器として、ナイロン製のフィルムで冷凍保存のシャリ玉を一個ずつ仕切り、封印する包装形式がある。この形式は冷凍保存以外の常温や冷蔵保存の軟らかいシャリ玉には容器の強度が十分ではなく、また電子レンジで解凍する際にシャリ玉を一個ずつ取り出して別容器に移しかえる必要があるため利便性が優れているとはいえない。そのため利便性を考慮した際、容器ごと電子レンジ加熱が可能なものが望ましい。
【0006】
一般的な電子レンジは上部からマイクロ波を照射して加熱するため、シャリ玉全体が十分に温まるまでには上部が必要以上に過熱されてしまうためにシャリ玉の上部表面が乾燥して硬くなり、また素手で扱える温度までに冷ます間にも乾燥が進行し、商品価値の低下や喪失といった問題を引き起こしていた。さらにはシャリ玉から発生した水蒸気が容器の内側に凝集して結露となってシャリ玉に付着し、使用時にシャリ玉が崩れやすくなるために商品価値を低下させるという問題があった。
【特許文献1】特開平7−76376号広報
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本願発明では上記のように運搬時の衝撃によるシャリ玉の型崩れを防ぎつつ使用時に扱いやすい設計の容器開発を課題とした。また常温、冷蔵、冷凍保存されたシャリ玉を容器ごと電子レンジで加熱する際の問題点を克服する容器の開発を課題とした。すなわちシャリ玉上部表面の乾燥の抑制、結露付着による商品価値低下の防止である。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は底部、壁部、隔壁部等から構成される樹脂製の容器本体と、容器上部にフィルムを接着し密封する形式を主体とした電子レンジ加熱対応のシャリ玉用容器に関するものであり、その目的とする機能を有する主な要素は、容器中の隔壁の高さと幅および形状、容器底部に上向きに設けた棒状の突起物、シャリ玉上部に載せる紙製シートである。
【0009】
運搬時におけるシャリ玉の型崩れを防ぐには、シャリ玉一つ一つに対して容器中に隔壁を設けることで大きな効果が得られる。しかし隔壁が高すぎると使用時に障害となって取り出しにくく、作業効率の低下や型崩れの原因となる。そこで本願発明では隔壁を運搬時の衝撃に耐えうる最低限の高さにまで低くすることで利便性を向上させた。なおかつその隔壁に切欠を設けることでシャリ玉を容器から取り出す際に指がシャリ玉の重心より下まで通ることを可能にしたため、取出しが容易となり、型崩れの危険性を低減した。
【0010】
電子レンジで過熱する際に容器底部に溜まる結露については、容器底部に棒状の突起を施すことによって解決した。すなわち容器底部に溝を容器内向きに施したことでシャリ玉と容器本体底部との間に隙間が出来、その隙間に水滴が溜まるため結露付着による商品価値低下を克服した。
【0011】
電子レンジは前述のとおり加熱対象物を上部から温めるため、対象となる食品が固体であればその上部が乾燥しやすくなる。しかしシャリ玉に紙製シートを載せることで、加熱時にシャリ玉から発生する水蒸気が紙製シートに吸収されて適度な湿度を保つため、シャリ玉上部の乾燥を抑制することができる。また水蒸気が吸収されることで結露発生も低減でき、さらにはフィルムを開封する際に落下する水滴を受け止めることができる。以上、紙製シートはシャリ玉上部の乾燥の抑制、加熱時の水蒸気吸収による結露発生の抑制、トップフィルムから落下する水滴の吸収という三つの機能を有し、電子レンジ加熱時に起こる商品価値低下の抑制に多大な効果をもたらすものである。
【発明の効果】
【0012】
以上から本願発明によればシャリ玉を運搬する際の型崩れを抑制でき、利便性を向上させ、電子レンジ加熱による問題を克服することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1にあるように容器本体は合成樹脂の薄板を成形したものであり、底部と隔壁により形成された複数のシャリ玉収容部と棒状の突起、周壁によって一体に形成されている。包装は図2に示す順にシャリ玉を容器本体に収納した後、紙製シートを載せ、容器開放側をフィルムで接着する形態をとっており、包装後は図3の横断面図に示す通りとなる。
【0014】
本願発明では容器本体ごとシャリ玉を電子レンジ加熱することを前提とするため、その材質は、電子レンジで過熱する際にマイクロ波をよく透過し、分子極性を持たないポリプロピレンが好ましい。
【0015】
容器開放側には利便性、経済性、衝撃吸収の観点から樹脂製のフィルムを接着することが好ましく、材質はポリエチレンやポリエチレンテレフタラートが好ましい。
【0016】
紙製シートには水蒸気を吸収する、適度な湿度をシャリ玉に保たせ乾燥を防ぐ、フィルムから落下する水滴を吸収するという目的がある。その素材は本願発明の目的を完遂するものであれば特に指定はないが、吸湿性と放湿性に優れ、また熱に強い性質を持つレーヨンが好ましい。また紙製シートに抗菌加工を施すことも随意である。
【0017】
一般的なシャリ玉のサイズは、高さが22mm前後、幅が25mm前後、長さが50mm前後であるが、それぞれのサイズは商品ごとに異なる。容器各部位の多くはシャリ玉の大きさによって決定付けられるため、本発明における容器のサイズはその限りにおいて、シャリ玉の高さ(Hmm)、幅(Wmm)、長さ(Lmm)の変数とそれぞれの係数で表す。
【0018】
シャリ玉の形状は直方体に近く、その重心は底辺から0.5Hmmの高さまたはそれよりやや下にあると考えてよい。従って隔壁の高さが0.5Hmmあれば水平方向の弱い振動や衝撃によって隔壁を越えてシャリ玉がはみ出すことは皆無である。よって隔壁の高さは0.5Hmm以上必要となる。しかし使用時の利便性を考慮した際、隔壁の高さは低いほうが望ましいことから隔壁の高さは0.5〜0.6Hmmが好ましい。
【0019】
周壁の高さは、はみ出しと垂直方向の振動による型崩れを抑制するためになるべく低いほうが好ましい。また紙製シートを載せる空間確保の観点から、棒状の突起の高さ+Hmm+2.0mm〜3.0mmが好ましい。
【0020】
シャリ玉は飯粒が不規則な配列で押し固められ、その底面は凸凹している。そのため容器底部に設ける突起物は点で支持する形式であると飯粒の隙間に入り込み、容器底部にシャリ玉が接触する可能性がある。線で支持する形式であれば容器底部にシャリ玉が容器底部に接触することが皆無なため棒状の突起が好ましい。また一般的なご飯粒の短径が2.8mm以上であることから、棒状の突起物間の幅はご飯粒が突起の間に入り込まないよう、2.8mm以下にすることが好ましい。棒状の突起の本数は、シャリ玉と結露の接触面積を低減させるためにはより少ないほうが望ましい。しかし少なすぎると自重による型崩れの原因となるため、重力を分散させるよう等間隔に数本施すことが好ましい。突起の高さは1.5mm以上あれば電子レンジ加熱時において容器底部に生ずる結露がシャリ玉に付着することは皆無である。
【0021】
隔壁に設ける切欠は使用時の型崩れを抑制するためと作業効率の向上のために指が通りやすくするための物である。よってその幅は一般成人男性の指でも容易に通りやすいよう24.0mm〜30.0mmが好ましい。この範囲以下では指通りが悪くなり、この範囲以上にすると隔壁の型崩れ抑制機能が損なわれる。
【0022】
収容部の幅と長さは振動による型崩れを抑制するためにできるだけ狭いほうが良い。それぞれW+1mm、L+1mmであれば収容時、使用時共に障害となることは皆無である。
【0023】
収容部数はそれぞれの用途に合わせて設計することが望ましく、収容部の数にあわせて容器本体にリブ等で容器の強度を適切に補強することが望ましい。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例により説明するが、本実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
衝撃に対する型崩れ抑制評価には、平均幅25mm、高さ22mm、長さ52mmの製造1日後の常温保存されたシャリ玉を用いた。表1に示す通り比較例1は隔壁の幅および高さを5mm、実施例1は幅および高さをそれぞれ5mmと11mm、実施例2は実施例1の隔壁に切欠を24mm設け、収容部数3×4のポリプロピレン製容器本体にシャリ玉を収容し、容器開放側をポリエチレンフィルムで接着した。収容部の幅と長さはそれぞれ26mm、53mm、容器本体の高さは26mmとして各比較例、実施例で統一した。加える衝撃については容器本体を3つ、シャリ玉計36個をダンボール詰めした後、30cmの高さから図1に示す矢印Aの方向に落下し、目視により型崩れしたシャリ玉とはみ出したシャリ玉を計数した。
【0026】
【表1】

【0027】
【表2】

【0028】
表2から明らかなように、型崩れしたシャリ玉の数、収容部からはみ出した数はともに隔壁の高さが高い実施例1および2で比較例1より低い値を示した。また切欠を設けても型崩れやはみ出しに大きなマイナス要因とはならないことが示唆された。
【0029】
冷凍保存されたシャリ玉を表3に示すポリプロピレン製容器及び包装方法により、家庭用電子レンジ(500ワット)で3分間加熱した後、官能試験によって乾燥による硬化具合を評価した。評価は1:程よい軟らかさを保持しており、食用として適当である。2:やや硬いが食用として合格。3:硬いが食用として最低限度の品質を保っている。4:食品として不適。とし、を加熱直後と常温放置15分後に8名のパネラーにより評価し、その平均を小数点第一位で表4に示す。
【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
表4の結果より紙製シートを載せずに加熱した比較例2ではシャリ玉の上部が加熱終了直後から乾燥によって最低限度に近い品質となっており、15分後にはさらに硬化が進行し、食品としての商品価値が喪失された状態になった。それに対し紙製シートを載せた実施例3では加熱終了15分後でも十分な軟らかさを保持していた。本実施例から、紙製シートを載せることにより、電子レンジ加熱による商品価値の低下を抑制できることが示された。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本願発明による電子レンジ対応型の容器および紙製シートで構成される食品の包装方法はシャリ玉のほかにもたこ焼き、餃子、ハンバーガーなどの電子レンジで加熱する冷凍、冷蔵食品にも応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明におけるシャリ玉容器本体の平面図の一例。
【図2】本願発明の容器本体の斜視図および包装形態の略図。
【図3】包装完了後の容器の横断面図。
【符号の説明】
1 容器本体
1a 隔壁
1b 棒状の突起
1c 隔壁に設けられた切欠部位
1d 周壁
2 シャリ玉
3 紙製シート
4 樹脂性フィルム
A 実施例中の型崩れ抑制評価試験時における落下方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部と隔壁により形成されてなる複数の収容部と、前記収容部の開放側に接着され、前記収容部を密封するフィルムを有するシャリ玉用容器において、隣接する前記収容部間を連通する切欠が前記隔壁に設けられ、少なくとも一つの棒状の突起が前記底部に設けられてなることを特徴とするシャリ玉用容器。
【請求項2】
請求項1に記載のシャリ玉用容器における前記収容部のそれぞれにシャリ玉を充填し、前記シャリ玉の上に紙製のシートを載せ、前記収容部の開放側にフィルムを接着し、収容部を密封することを特徴とするシャリ玉の包装方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−292536(P2009−292536A)
【公開日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−177361(P2008−177361)
【出願日】平成20年6月9日(2008.6.9)
【出願人】(507043449)株式会社フードケアリ (3)
【Fターム(参考)】