説明

シャーリング装置の運転方法

【課題】駆動部分の耐久性を向上させることができ、且つ省エネルギーを実現できるシャーリング装置の運転方法を提供すること。
【解決手段】本発明は、長尺状のシート1をシャーリング装置3の刃部13で裁断してブランク1aとし、該ブランク1aをプレス機械20でプレスするプレス加工におけるシャーリング装置3の運転方法であって、刃部13が一体となって旋回可能な上刃13b及び下刃13aからなり、プレス機械20が、クランク機構によりプレススライド28を昇降移動させ、ブランク1aをプレスするものであり、刃部13がシート1を裁断する裁断サイクルが、刃部13を旋回させる旋回ステップAと、シート1を裁断する裁断ステップBとからなり、裁断ステップBに要する時間を一定とし、旋回ステップAに要する時間を変更可能とすることで、裁断サイクルの周期がプレススライド28の昇降移動によるプレスサイクルの周期に追従されているシャーリング装置3の運転方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャーリング装置の運転方法に関し、更に詳しくは、駆動部分の耐久性を向上させることができ、且つ省エネルギーを実現できるシャーリング装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プレス加工においては、まず、長尺状のシートが、シャーリング装置によって所望のサイズに切断されブランクとなる。
そして、ブランクは、プレス機械に搬送され、所望の形状にプレスされる。
【0003】
ここで、上記シャーリング装置としては、上刃ホルダーに保持された上刃と、下刃ホルダーに保持された下刃と、を対向配置し、両者を同時に水平旋回させ、両刃間にピッチ送りされてくる長尺状のワークを交互に傾斜状に裁断していくものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
ところで、プレス加工において、ブランクには様々な厚さのものがあり、またプレスする形状にも様々なものがあるので、プレス機械におけるプレスの速度(以下「プレス速度」という。)もそれに応じて様々に変更させるのが通常である。
そのため、シャーリング装置の刃部が旋回する速度(以下「旋回速度」という。)は、一般に、プレス速度が変わっても対応できるように、可能な範囲で最高速度としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−131927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、プレス機械のプレス速度を遅くする場合、シャーリング装置の刃部の旋回速度が最高速度となっているので、所定の位置で刃部の旋回を一定時間停止させる必要がある。
そうすると、例えば、上記特許文献1記載のシャーリング装置の刃部は、急加速、急減速することになるので、駆動部分に無理がかかり、耐久性が低下する問題がある。また、このときのエネルギーロスも大きい。
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、駆動部分の耐久性を向上させることができ、且つ省エネルギーを実現できるシャーリング装置の運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討したところ、旋回ステップに要する時間を変更可能とし、裁断サイクルの周期を、プレスサイクルの周期に追従させることにより、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明は、(1)長尺状のシートをシャーリング装置の刃部で裁断してブランクとし、該ブランクをプレス機械でプレスするプレス加工におけるシャーリング装置の運転方法であって、刃部が一体となって旋回可能な上刃及び下刃からなり、プレス機械が、クランク機構によりプレススライドを昇降移動させ、ブランクをプレスするものであり、刃部がシートを裁断する裁断サイクルが、刃部を旋回させる旋回ステップと、シートを裁断する裁断ステップとからなり、裁断ステップに要する時間を一定とし、旋回ステップに要する時間を変更可能とすることで、裁断サイクルの周期がプレススライドの昇降移動によるプレスサイクルの周期に追従されているシャーリング装置の運転方法に存する。
【0010】
本発明は、(2)裁断サイクルの周期のうち、旋回ステップに要する時間の占める割合が、50〜82%である上記(1)記載のシャーリング装置の運転方法に存する。
【0011】
本発明は、(3)スライドが上死点にある時に、刃部が旋回移動しており、スライドが下死点にある時に、刃部がシートを裁断している上記(1)又は(2)に記載のシャーリング装置の運転方法に存する。
【0012】
本発明は、(4)シャーリング装置がサーボモータで駆動されている上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載のシャーリング装置の運転方法に存する。
【0013】
本発明は、(5)プレス機械には監視装置が設けられており、該監視装置が、プレスサイクルの周期をサイクル毎に演算し、演算されたデータに基づいて、裁断サイクルの周期及び旋回ステップに要する時間をサイクル毎に決定する上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載のシャーリング装置の運転方法に存する。
【発明の効果】
【0014】
本発明のシャーリング装置の運転方法においては、裁断サイクルの周期を、プレスサイクルの周期に追従させているので、プレスサイクルの周期を遅くした場合、裁断サイクルの周期も遅くなる。
【0015】
このとき、旋回ステップに要する時間が変更可能となっているので、例えば、プレスサイクルの周期が長くなった場合、旋回ステップに要する時間をプレスサイクルの周期に対応させて長くすることができる。これにより、旋回ステップ時の刃部が急加速、急減速することを極力防止できるので、駆動部分の耐久性を向上させることができる。
また、裁断ステップに要する時間を一定としているので、裁断ステップ時の裁断を一定速度で確実に行うことができる。
なお、裁断サイクルのうち、旋回ステップに要する時間の占める割合が、50〜82%である場合、効率良く、刃部がシートを裁断することができる。
【0016】
さらに、刃部の急加速、急減速は、エネルギーロスも大きいので、これらを防止することにより、省エネルギーも実現できる。
【0017】
例えば、本発明のシャーリング装置の運転方法において、裁断サイクルの周期を、プレスサイクルの周期に追従させる際、プレススライドが上死点にある時に、刃部が旋回移動するようにし、プレススライドが下死点にある時に、刃部がシートを裁断するように設定すればよい。
【0018】
本発明のシャーリング装置の運転方法においては、プレス機械には監視装置が設けられており、該監視装置が、プレスサイクルの周期をサイクル毎に演算し、演算されたデータに基づいて、裁断サイクルの周期及び旋回ステップに要する時間をサイクル毎に決定することが好ましい。この場合、サイクル毎に演算されるので、1回のプレスサイクルにおける周期が経時的に変わった場合であっても、裁断サイクルの周期を確実に追従させることができ、旋回ステップに要する時間を、刃部に負荷がかからない最適な時間とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、本実施形態に係るシャーリング装置の運転方法に用いられるシャーリング装置の一例を示す側面図である。
【図2】図2は、図1のシャーリング装置の裁断サイクルにおける裁断角度を示す説明図である。
【図3】図3は、旋回ステップにおいて、図1のシャーリング装置の刃部が旋回するときの状態を説明するための概略上面図である。
【図4】図4の(a)〜(d)は、裁断ステップにおいて、図1のシャーリング装置の刃部がシートを裁断するときの状態を説明するための概略側面図である。
【図5】図5は、本実施形態に係るシャーリング装置の運転方法に用いられるプレス機械の一例を示す側面図である。
【図6】図6は、図5のプレス機械のプレスサイクルにおけるプレス角度を示す説明図である。
【図7】図7の(a)は、従来のシャーリング装置の運転方法における旋回速度と時間との関係を示すタイムチャートであり、(b)は、本実施形態に係るシャーリング装置の運転方法における旋回速度と時間との関係を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一要素には同一符号を付すこととし、重複する説明は省略する。また、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0021】
本実施形態に係るシャーリング装置の運転方法は、長尺状のシートをシャーリング装置の刃部で裁断してブランクとし、該ブランクをプレス機械でプレスするプレス加工に用いられる。
【0022】
図1は、本実施形態に係るシャーリング装置の運転方法に用いられるシャーリング装置の一例を示す側面図である。
図1に示すように、シャーリング装置3は、固定されたベース11と、該ベース11上に設けられた軸受18を介して旋回可能となるように配置された下刃ホルダー12aと、該下刃ホルダー12aに取り付けられた下刃13aと、シート体1を切断可能となるように下刃13aに対応する位置に取り付けられた上刃13bと、該上刃13bを支持する上刃ホルダー12bと、該上刃ホルダー12bを支持するスライド14と、上刃ホルダー12b及び下刃ホルダー12aそれぞれを支持するガイドポスト15と、を備える。なお、本発明のシャーリング装置において、「上刃及び下刃」を「刃部」ともいう。
【0023】
また、シャーリング装置3においては、上刃ホルダー12bは、下刃ホルダー12aに対して、ガイドポスト15に案内されて、上下方向に昇降移動可能となっており、且つ水平方向に旋回不能となっている。すなわち、上刃ホルダー12b及び上刃13bがスライド14に支持され、スライド14が昇降移動可能となっている。これにより、スライド14の昇降移動に伴って、上刃13bの位置が変動するようになっている。
【0024】
さらに、シャーリング装置3において、上刃ホルダー12bと下刃ホルダー12aとがガイドポスト15により支持されているので、一体となって旋回するようになっている。すなわち、上記シャーリング装置3は、一体となって旋回可能な上刃13b及び下刃13aからなる刃部13を有することとなる。なお、本実施形態においては、上刃ホルダー12bがガイドポスト15により支持されているが、ガイドポスト15の代わりにバネ等を用い、該バネにより上刃ホルダーを支持してもよい。
【0025】
さらにまた、シャーリング装置3は、図示しないサーボモータで駆動される。
【0026】
次に、シャーリング装置3の駆動について説明する。
シャーリング装置3は、裁断サイクルに基づいて運転されている。
図2は、図1のシャーリング装置の裁断サイクルにおける裁断角度を示す説明図である。
図2に示すように、シャーリング装置における裁断角度の裁断サイクルは、刃部13を旋回させる旋回ステップAと、上刃を昇降移動させてシートを裁断する裁断ステップBとからなる。なお、旋回ステップAと裁断ステップBとは、連続して繰り返される。
【0027】
旋回ステップAは、シャーリング装置3の刃部13を旋回させるステップである。
図3は、旋回ステップにおいて、図1のシャーリング装置の刃部が旋回するときの状態を説明するための概略上面図である。
図3に示すように、シャーリング装置3においては、刃部13(上刃13b及び下刃13a)が、左旋回及び右旋回が対称となるように所定角度、交互に旋回するようになっている。すなわち、旋回ステップにおいては、刃部13が、左旋回し、又は、右旋回する。
【0028】
裁断ステップBは、シャーリング装置3の刃部13でシートを裁断するステップである。
図4の(a)〜(d)は、裁断ステップにおいて、図1のシャーリング装置の刃部がシートを裁断するときの状態を説明するための概略側面図である。
図4の(a)に示すように、シャーリング装置3においては、上刃13bと下刃13aとの間に長尺状のシート1が配置され、図4の(b)に示すように、スライド14を下降移動させることにより、上刃13bが下降し、図4の(c)に示すように、上刃13bと下刃13aとでシート1を挟み込むことによって、シート1が裁断される。そして、図4の(d)に示すように、スライド14を上昇移動させることにより、上刃13bが上昇し、元の位置に戻る。すなわち、裁断ステップBにおいては、刃部13の旋回が停止した状態で、シート1を裁断する。
【0029】
図3に戻り、シャーリング装置3においては、例えば、旋回ステップAにおいて、シャーリング装置3の刃部13が左旋回し停止した後に、裁断ステップBにおいて、スライド14が下降移動し、上刃13bと下刃13aとにより、シート1が傾斜切断され(以下「正傾斜切断」という。)、その後、スライド14(すなわち上刃13b)が上昇移動し、刃部13が元の位置に戻る。
そして、再び、旋回ステップAにおいて、右旋回し停止した後、裁断ステップBにおいて、スライド14が下降移動し、上刃13bと下刃13aとにより、シート1が傾斜切断され(以下「逆傾斜切断」という。)、その後、スライド14(すなわち上刃13b)が上昇移動する。以下、これを繰り返すことになる。
【0030】
このように、シャーリング装置3においては、裁断サイクル(旋回ステップA及び裁断ステップB)を繰り返すことにより、刃部13がシート1に対し、交互に正傾斜切断及び逆傾斜切断を順次行っていくことになる。その結果、台形状のブランク1aと、逆向きの台形状のブランク1aが交互に形成配置されることになる。
【0031】
図5は、本実施形態に係るシャーリング装置の運転方法に用いられるプレス機械の一例を示す側面図である。
図5に示すように、プレス機械20は、クラウン21と、該クラウン21に設けられた軸23と、該軸23を中心として回動自在に取付けられたメインギア22と、メインギア22の回動に基づいて回動するコンロッド24と、コンロッド24にプランジャ26を介して接続され、コンロッド24の回動に基づいて昇降移動するプレススライド28と、プレススライド28の下面に設けられた上金型29aと、該上金型29aに対応する形状の下金型29bと、該下金型29bを支持固定するボルスタ27とを備える。
【0032】
また、プレス機械20においては、コンロッド24の回動に基づいて、プレススライド28が昇降移動可能となっており、これにより、上金型29aと下金型29bとの間で、ブランク1aがプレスされることになる。すなわち、プレス機械20は、クランク機構によりプレススライド28を昇降移動させ、ブランク1aをプレス加工するものである。
【0033】
次に、プレス機械20の駆動について説明する。
プレス機械20は、プレススライド28の昇降移動によるプレスサイクルに基づいて運転されている。
図6は、図5のプレス機械のプレスサイクルにおけるプレス角度を示す説明図である。
図6に示すように、プレス機械20におけるプレス角度のプレスサイクルは、プレススライド28が上死点A1から下降し、下死点B1に到達した後、今度は逆に下死点B1から上昇し、元の上死点A1に到達するサイクルである。なお、このプレスサイクルは、連続して繰り返される。
【0034】
プレス機械20においては、下金型29bの上に図示しないブランクを載置した状態で、プレスサイクルを施すことにより、下死点B1においてブランクがプレスされることになる。なお、ブランクがプレスされた後は、図示しないロボット等により、プレスされたブランクが搬出され、別のロボット等により、新たなブランクがプレス機械20の下金型29bの上に搬入される。
【0035】
本実施形態に係るシャーリング装置3の運転方法においては、上述したシャーリング装置3における裁断サイクルの周期が、上述したプレス機械20におけるプレスサイクルの周期に追従されている。すなわち、裁断サイクルの1サイクルの周期と、プレスサイクルの1サイクルの周期とが同じになっている。
また、裁断サイクルのうち、上述した旋回ステップに要する時間が変更可能であり、裁断ステップに要する時間が一定となっている。
このため、例えば、プレスサイクルの周期が長くなった場合、旋回ステップに要する時間をプレスサイクルの周期に対応させて長くすることができる。これにより、旋回ステップ時の刃部が急加速、急減速することを極力防止できるので、駆動部分の耐久性を向上させることができる。
また、裁断ステップに要する時間を一定としているので、裁断ステップ時の裁断を一定速度で確実に行うことができる。
【0036】
言い換えると、本実施形態に係るシャーリング装置3の運転方法においては、旋回ステップに要する時間の割合を増減して、裁断サイクルの周期がプレスサイクルの周期に追従するようにしている。
例えば、プレスサイクル及び裁断サイクルの周期が長い場合、旋回ステップに要する時間の割合を増やして旋回ステップに要する時間を長くし、裁断ステップに要する時間の割合を減らして裁断ステップに要する時間を一定とすればよい。逆に、プレスサイクル及び裁断サイクルの周期が短い場合、旋回ステップに要する時間の割合を減らして旋回ステップに要する時間を短くし、裁断ステップに要する時間の割合を増やして裁断ステップに要する時間を一定にすればよい。
【0037】
裁断サイクルの周期をプレスサイクルの周期に追従させた場合、プレス機械20のプレススライド28が上死点A1にある時に、シャーリング装置3の刃部13が旋回移動しており、プレススライド28が下死点B1にある時に、刃部13がシート1を裁断しているように設定すればよい。プレス機械20によるプレスとシャーリング装置3による裁断とのタイミングを合致させることにより、プレス又は裁断に伴う速度変化によるエラーを目視にて確認することが可能となる。
【0038】
ここで、裁断サイクルの周期のうち、旋回ステップに要する時間の占める割合が、50〜82%であることが好ましく、70〜75%であることがより好ましい。
旋回ステップに要する時間の占める割合が50%未満であると、割合が上記範囲内にある場合と比較して、旋回に要する時間が短すぎるため、旋回の速度が速くなり、駆動部分の耐久性を十分に向上させることができない場合があり、旋回ステップに要する時間の占める割合が82%を超えると、割合が上記範囲内にある場合と比較して、裁断に要する時間が短すぎるため、十分に裁断が行われなかったり、シートが刃部13に引っ掛かってしまう等の問題が生じる場合がある。なお、裁断サイクルの周期のうち、旋回ステップに要する時間以外は、裁断ステップに要する時間である。
【0039】
図7の(a)は、従来のシャーリング装置の運転方法における旋回速度と時間との関係を示すタイムチャートであり、(b)は、本実施形態に係るシャーリング装置の運転方法における旋回速度と時間との関係を示すタイムチャートである。なお、図7中、S1は裁断サイクルの周期を示し、S2は旋回ステップに要する時間を示し、S3は裁断ステップに要する時間を示す。なお、図示しないが、裁断サイクルの周期は、プレスサイクルの周期と同じになっている。
【0040】
図7の(a)に示すように、従来のシャーリング装置においては、裁断サイクルの起動は、プレスサイクルの起動時に追従させているものの、旋回速度は、最高速度で運転されているので、急加速で立ち上がり(スロープP1)、急減速で停止する(スロープP2)。このため、旋回動作が早く終了し、刃部を停止させる時間t1が長くなる。すなわち、旋回ステップに要する時間S2に対して、時間t1のロスが生じる。
【0041】
一方、図7の(b)に示すように、本実施形態に係るシャーリング装置においては、裁断サイクルの周期がプレスサイクルに追従されているので、裁断ステップに要する時間S2の分だけ緩やかに立ち上がり(スロープQ1)、緩やかに停止させる(スロープQ2)ことができる。このため、旋回ステップに要する時間S2に対しては、時間t2しかロスが生じない。なお、時間t2は0としないことが好ましい。例えば、プレス機械の連続運転の際にズレが生じたり、また、経時的にオーバーシュートが発生したりした場合に、遊びの時間(t2)を設けることにより、ズレやオーバーシュートを吸収することができる。これにより、異常が発生しても設備を停止させずに生産を継続することができる。
【0042】
したがって、本実施形態に係るシャーリング装置3の運転方法によれば、旋回ステップに要する時間を変更することにより、裁断サイクルの周期をプレスサイクルの周期に追従させているので、駆動するシャーリング装置3の刃部13の加速及び減速を緩やかなものとすることができる。すなわち、刃部13が急加速、急減速することを極力防止できるので、駆動部分の耐久性を向上させることができる。
また、刃部13を一定時間停止させることによるロスを最低限とすることができる。
さらに、刃部13の急加速、急減速は、エネルギーロスも大きいので、これらを防止することにより、省エネルギーも実現できる。
【0043】
本実施形態に係るシャーリング装置3の運転方法において、プレス機械20には監視装置が設けられている。
かかる監視装置は、プレス機械20における1回のプレスサイクルの周期を取得し、取得した速度から所定のプログラムに基づいて演算し、シャーリング装置3の1回の裁断サイクルの周期、及び、旋回ステップと裁断ステップの時間割を算出する。そして、シャーリング装置はその算出された情報に基づいて駆動する。なお、監視装置による演算及び算出は、瞬時に行われる。
【0044】
ここで、監視装置による演算及び算出は、サイクル毎に行われる。したがって、1回のプレスサイクルの周期が経時的に変わった場合であっても、裁断サイクルの周期及び旋回ステップに要する時間を確実に追従させることができる。
【0045】
なお、監視装置は、各機能を実現する制御プログラムの命令を実行するCPU、上記プログラムを格納したROM(read only memory)、上記プログラムを展開するRAM(random access memory)、上記プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)等を備えている。
【0046】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0047】
例えば、本実施形態に係るシャーリング装置の運転方法において、シート1はシャーリング装置3によって台形状のブランク1aに裁断しているが、ブランクの形状はこれに限定されない。例えば、矩形、平行四辺形、ひし形等であってもよい。
【0048】
本実施形態に係るシャーリング装置の運転方法においては、シャーリング装置3とプレス機械20とを備えているが、これらの間に、パイラー装置やロボット等を備えていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るシャーリング装置の運転方法は、例えば、シートを裁断したブランクをプレスするプレス加工の分野において、好適に用いられる。本発明によれば、シャーリング装置の駆動部分の耐久性を向上させることができ、且つ省エネルギーを実現できる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・シート
1a・・・ブランク
3・・・シャーリング装置
11・・・ベース
12a・・・下刃ホルダー
12b・・・上刃ホルダー
13・・・刃部
13a・・・下刃
13b・・・上刃
14・・・スライド
15・・・ガイドポスト
18・・・軸受
20・・・プレス機械
21・・・クラウン
22・・・メインギア
23・・・軸
24・・・コンロッド
26・・・プランジャ
27・・・ボルスタ
28・・・プレススライド
29a・・・上金型
29b・・・下金型
A・・・旋回ステップ
B・・・裁断ステップ
A1・・・上死点
B1・・・下死点
P1,P2,Q1,Q2・・・スロープ
S1・・・裁断サイクルの周期
S2・・・旋回ステップに要する時間
S3・・・裁断ステップに要する時間
t1,t2・・・時間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のシートをシャーリング装置の刃部で裁断してブランクとし、該ブランクをプレス機械でプレスするプレス加工におけるシャーリング装置の運転方法であって、
前記刃部が一体となって旋回可能な上刃及び下刃からなり、
前記プレス機械が、クランク機構によりプレススライドを昇降移動させ、前記ブランクをプレスするものであり、
前記刃部が前記シートを裁断する裁断サイクルが、前記刃部を旋回させる旋回ステップと、前記シートを裁断する裁断ステップとからなり、
前記裁断ステップに要する時間を一定とし、前記旋回ステップに要する時間を変更可能とすることで、前記裁断サイクルの周期が前記プレススライドの昇降移動によるプレスサイクルの周期に追従されているシャーリング装置の運転方法。
【請求項2】
前記裁断サイクルの周期のうち、前記旋回ステップに要する時間の占める割合が、50〜82%である請求項1記載のシャーリング装置の運転方法。
【請求項3】
前記スライドが上死点にある時に、前記刃部が旋回移動しており、
前記スライドが下死点にある時に、前記刃部が前記シートを裁断している請求項1又は2に記載のシャーリング装置の運転方法。
【請求項4】
前記シャーリング装置がサーボモータで駆動されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のシャーリング装置の運転方法。
【請求項5】
プレス機械には監視装置が設けられており、
該監視装置が、前記プレスサイクルの周期をサイクル毎に演算し、演算されたデータに基づいて、前記裁断サイクルの周期及び前記旋回ステップに要する時間をサイクル毎に決定する請求項1〜4のいずれか一項に記載のシャーリング装置の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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