説明

シュウ酸塩関連疾患を治療または予防するための医薬組成物および方法

本発明は、人間、動物および植物においてシュウ酸塩を減少させるための方法および組成物を含む。たとえば、本発明は、1種または複数種のシュウ酸塩低減医薬組成物を、人および動物の腸管に送達させるための方法および組成物を提供するものである。この方法および組成物は、シュウ酸塩関連症状の治療および予防に利用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、1997年5月23日に出願された米国仮特許出願第60/047,473号の優先権の利益を主張する、1998年5月22日に出願された係属中の米国特許出願第09/083,362号の一部継続出願である、1999年8月23日に出願された米国仮特許出願第60/150,259号の優先権の利益を主張する、2000年2月9日に出願された米国特許出願第09/500,500号の継続出願である、2002年3月8日に出願された米国特許出願第10/093,686号の継続出願である、2003年9月24日に出願された係属中の米国特許出願第10/671,299号の一部継続出願である、2004年6月15日に出願された米国特許出願第10/868,242号の一部継続出願である、2005年6月15日に出願された国際特許出願PCT/US05/021134号の一部継続出願である。
【0002】
(技術分野)
本発明は、シュウ酸塩関連症状を治療および予防するための組成物および方法に関する。より詳細には、本発明は、シュウ酸塩分解細菌及び酵素、またはシュウ酸塩低減細菌および酵素を含む組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
腎尿路結石症(尿石症)は、世界中に見られる大きな健康問題のひとつである。尿石症に関連する結石の大半が、シュウ酸カルシウム単独またはシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムとからなる。また、シュウ酸塩の過剰が関連している他の疾患状態もある。これらの疾患状態としては、外陰部痛、末期腎不全に関連するシュウ酸症、心臓伝導障害(cardiac conductance disorder)、クローン病および他の腸疾患状態が挙げられる。
【0004】
シュウ酸および/またはその塩であるシュウ酸塩は多種多様な食物に含まれており、したがって、人間や動物の食餌を構成する多くの要素のうちの一成分となっている。シュウ酸の含有量が高い食物を摂取すると、シュウ酸塩の吸収増加が生じることがある。ホウレンソウやルバーブなどの食物は多量のシュウ酸塩を含有することが知られているが、他の数多くの食物や飲み物にもシュウ酸塩が含まれる。シュウ酸塩はこのように多種多様な食物中に見られるため、シュウ酸塩の含有量が低く、味もよい食餌を作るのは困難である。加えて、低シュウ酸塩食の遵守は困難であることが多い。
【0005】
また、正常な組織酵素によって代謝的に産生される内因性シュウ酸塩もある。シュウ酸塩(吸収される食餌中のシュウ酸塩と代謝的に産生されるシュウ酸塩とを含む)は、組織酵素によってそれ以上代謝されることがないため、排泄される必要がある。この排泄は主に腎臓で行われる。腎臓体液中のシュウ酸塩濃度が非常に重要であり、シュウ酸塩濃度が上昇するとシュウ酸カルシウムの結晶が形成される危険性が増して、後に腎結石が形成される危険性が高くなる。
【0006】
腎結石が形成される危険性は、まだ完全には解明されていない数多くの要因による。腎結石症または尿路結石症は、欧米諸国における人口の12%もの人々に見られ、これらの結石の約70%はシュウ酸カルシウムまたはシュウ酸カルシウムとリン酸カルシウムとからなる。また、(たとえば、クローン病、炎症性腸疾患または脂肪便などの腸疾患のある患者や、空回腸バイパス手術を受けた患者など)食餌から他の人よりも多くのシュウ酸塩を吸収する人もいる。このような人では、シュウ酸塩の尿石症の発生率が著しく増加する。疾患発生率の上昇は腎臓および尿中のシュウ酸塩濃度の増加によるもので、人間では最も多く見られるこの高シュウ酸尿症候群(hyperoxaluric syndrome)は、腸管高シュウ酸尿症として知られている。シュウ酸塩は末期腎不全患者でも問題になり、尿中シュウ酸塩の増加が外陰部前庭炎(外陰部痛)にも関与しているという証拠が最近になって示されている(Solomons,C.C.、M.H.Melmed、S.M.Heitler[1991年]「Calcium citrate for vulvar vestibulitis」、Journal of Reproductive Medicine 36:879〜882)。
【0007】
シュウ酸塩を分解する細菌が人間の糞便から単離されている(Allison,M.J.、H.M.Cook、D.B.Milne、S.Gallagher、R.V.Clayman[1986年]「Oxalate degradation by gastrointestinal bacteria from humans」、J.Nutr. 116:455〜460)。これらの細菌は、多くの動物種の腸内容物から単離されているシュウ酸塩低減細菌と似ていることが明らかになった(Dawson,K.A.、M.J.Allison、P.A.Hartman[1980年]「Isolation and some characteristics of anaerobic oxalate−degrading bacteria the rumen」、Appl.Environ.Microbiol. 40:833〜839;Allison,M.J.、H.M.Cook[1981年]「Oxalate degradation by microbes of the large bowel of herbivores:the effects of dietary oxalate」、Science 212:675〜676:Daniel,S.L.、P.A.Hartman、M.J.Allison[1987年]「Microbial degradation of oxalate in the gastrointestinal tracts of rats」、Appl.Environ.Microbiol. 53:1793〜1797)。これらの細菌は、かつて説明されてきた他のどの生物とも異なり、新しい種として新しい属名が与えられている(Allison,M.J.、K.A.Dawson、W.R.Mayberry、J.G.Foss[1985年]「Oxalobacter formigenes gen.nov.,sp.nov.:oxalate−degrading anaerobes that inhabit the gastointestinal tract」、Arch.Microbiol. 141:1〜7)。
【0008】
人間であれば誰の腸管にもオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)の個体群が存在するというわけではない(Allison,M.J.、S.L.Daniel、N.A.Comick[1995年]「Oxalate−degrading bacteria」(Khan,S.R.(編)、「Calcium Oxalate in Biological Systems」、CRC Press);Doane,L.T.、M.Liebman、D.R.Caldwell[1989年]「Microbial oxalate degradation: effects on oxalate and calcium balance in humans」、Nutrition Research 9:957〜964)。空回腸バイパス手術を受けた人の糞便試料では、シュウ酸分解菌が低濃度で存在するか、あるいはまったく存在しない(Allisonら[1986年]「Oxalate degradation by gastrointestinal bacteria from humans」、J.Nutr.116:455〜460)。また、オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)のコロニーを維持できるにもかかわらず、シュウ酸塩の濃度が過剰になっている人間や動物もおり、その理由ははっきりとは分からない。
【0009】
必要なのは、人間および動物を治療して、その体内におけるシュウ酸塩濃度を下げ、シュウ酸塩関連症状を治療または予防するための方法である。望ましい方法として、シュウ酸塩低減組成物を投与することが含まれ得る。
【0010】
(発明の概要)
本発明は、シュウ酸塩関連症状を治療および予防するための組成物および方法を含む。本発明の組成物は、シュウ酸塩を減少させる微生物および/または酵素を含む医薬組成物を含む。本発明の方法は、医薬組成物を投与してシュウ酸塩関連症状を治療または予防すること、ならびに、このような医薬組成物を製造するための方法を含む。一実施形態は、消化管内におけるシュウ酸塩の量を減少させることにより、シュウ酸塩関連障害の発症の危険性を低減する方法を含む。このような消化管における減少は、全身のシュウ酸塩濃度の低下につながるため、これにより、良好な健康状態を促進することになる。
【0011】
本発明の一実施形態では、シュウ酸塩吸収の低下は、消化管にシュウ酸分解菌を供給することによって達成される。一実施形態では、これらの細菌はオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)である。これらの細菌は基質としてシュウ酸塩を利用する。このように利用されることによって、腸内の可溶性シュウ酸塩の濃度が低下し、結果として吸収されるシュウ酸塩の量も減少する。消化管内のシュウ酸塩の減少は、循環系からもシュウ酸塩が除去されることにつながり得る。本発明の方法は、個体におけるシュウ酸塩負荷の全体としての減少を企図している。
【0012】
特定の実施形態では、本発明は、シュウ酸塩関連疾患の危険性が高まっている人の消化管に生存可能な(viable)オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)を送達するための方法および組成物を提供するものである。細菌は腸管からシュウ酸塩を取り除くことにより、吸収されるシュウ酸塩の量を減少させると同時に、血液から腸へのシュウ酸塩の排泄量を増加させる。
【0013】
本発明の教示内容によれば、シュウ酸塩を基質として利用するオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)以外のシュウ酸塩分解微生物を用いて、治療的なシュウ酸塩分解を実現し、これによって尿石症および他のシュウ酸塩関連障害の危険性を下げることが可能である。このような他の微生物は、たとえば、クロストリジウム(clostridia)またはシュードモナス(pseudomonads)などの細菌であってよい。加えて、本発明は、もともとはシュウ酸塩低減酵素を産生しない微生物にシュウ酸塩低減機能を与えることのできる外来性のポリヌクレオチド配列を提供するための方法および組成物を含む。このようなポリヌクレオチド配列を利用して、本来はシュウ酸塩を減少させることができなかったこのような未処理の微生物を、シュウ酸塩を減少させることのできる微生物に形質転換することが可能である。これらの形質転換微生物は、本発明の方法および組成物に利用でき、本明細書で企図しているものである。
【0014】
本発明の一実施形態では、組成物は、シュウ酸塩を分解し、これらの微生物にシュウ酸塩を分解する能力を与える酵素を産生する微生物を含む。別の実施形態では、組成物は、形質転換後の微生物にシュウ酸塩を分解する能力を与えるポリヌクレオチド配列で形質転換される微生物を含むものであってもよい。シュウ酸塩を低減する遺伝子およびタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列が本発明で企図される。細菌または真菌などのシュウ酸塩低減微生物に見られる酵素あるいは他のシュウ酸塩低減酵素をコードするポリヌクレオチド配列を、本発明の方法に用いることができる。微生物または細胞が、天然のシュウ酸塩低減微生物よりも高いシュウ酸塩低減活性、これと同じシュウ酸塩低減活性、またはこれよりも低いシュウ酸塩低減活性を持つように、ポリヌクレオチド配列を利用して微生物または細胞を形質転換することができる。ポリヌクレオチド配列を合成系またはex vivo系で使用して、シュウ酸塩低減活性を持つタンパク質を提供してもよい。このような微生物または酵素は、本明細書で教示される医薬組成物および医薬製剤として提供される組成物の形態で提供することができるものであり、この場合、微生物または酵素は、当該技術分野において知られている賦形剤および他の医薬担体を含む医薬製剤の形態で提供することができるものである。さらに、このような医薬組成物は、人間または動物の消化管に送達させるための、粉末、カプセル、丸剤、顆粒剤または錠剤などの送達用ベヒクルを含む。
【0015】
シュウ酸塩分解において何らかの役割を担う酵素を、本発明の方法および組成物に利用することができ、これらの酵素としては、ホルミル−CoAトランスフェラーゼ、オキサリル−CoAデカルボキシラーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ、ならびに、シュウ酸塩分解経路の置換体であるか、またはシュウ酸塩代謝経路、特にシュウ酸塩低減に関与する他の酵素、補因子および補酵素が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0016】
本発明の一実施形態では、これらの酵素または酵素関連活性をコードする外来性のポリヌクレオチド配列で適切な宿主を形質転換し、この形質転換宿主にシュウ酸塩分解を増加させる能力を与えることができる。宿主は、たとえば、経口投与および/または腸でのコロニー形成に特によく適応した微生物であってもよい。あるいは、宿主は、ひとたび形質転換された後は、所望の酵素活性を産生して、これにより植物素材の摂取時にこれらの活性を腸内で利用できるようにする植物であってもよい。あるいは、形質転換後の植物は、形質転換によって得られるタンパク質の作用によって任意に、シュウ酸塩の含量が減ったものでもよく、その結果として、摂取時に非形質転換植物の場合ほどこの植物によって食餌にシュウ酸塩が含まれることはなくなる。
【0017】
本発明は、シュウ酸塩分解酵素またはシュウ酸塩低減酵素で形質転換される植物についての方法および組成物も含み、これらの植物は、植物での病原発生にシュウ酸を必要とする真菌または植物での病原発生機序としてシュウ酸を産生する真菌に対する耐性が高められている。
【0018】
また、本発明は、シュウ酸塩関連症状を治療または予防する目的で、シュウ酸塩濃度を低下させるための酵素を含む方法および組成物を含む。たとえば、シュウ酸塩濃度の低下は、シュウ酸塩を分解するよう作用する酵素を投与することによって達成される。これらの酵素は、単離および精製したものであってもよいし、あるいは、細胞溶解物として投与してもよい。細胞溶解物は、たとえばオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)など、シュウ酸塩低減能を有する微生物であればどのような微生物から作られたものであってもよい。特定の実施形態では、投与される酵素は、シュウ酸デカルボキシラーゼ、シュウ酸オキシダーゼ、ホルミル−CoAトランスフェラーゼおよびオキサリル−CoAデカルボキシラーゼなどであるがこれに限定されるものではない、本発明の酵素のうちの1種または複数種である。任意に、酵素活性を向上させる別の因子を投与することも可能である。これらの別の因子は、たとえば、オキサリルCoA、MgCl、TPP(チアミン二リン酸、すなわちビタミンBの活性型)などであってよい。酵素を含む医薬組成物は、1種または複数種の酵素と、任意に、酵素活性を高める補因子、補酵素および他の物質を、別個にまたは組み合わせで含み、医薬上許容され得る担体および賦形剤と一緒に提供される。
【0019】
本発明の一実施形態では、シュウ酸塩分解酵素を発現するように形質転換しておいた大腸菌(Escherichia coli)などの組換え微生物によって産生されるシュウ酸塩分解酵素を投与することにより、シュウ酸塩濃度の低下が達成される。組換え宿主は、生存可能な形態で投与してもよいし、非生存可能な形態で投与してもよい。本発明のさらに別の態様は、経口投与用の医薬組成物および/または栄養補助食品に関する。これらの組成物は、人間または動物の腸で、シュウ酸塩分解微生物またはシュウ酸塩分解酵素を放出する。本発明の組成物は、医薬上許容され得る製剤を含む。たとえば、本発明の方法および組成物は、レシピエントの消化管への組成物の送達など、組成物を所望の場所に提供する用量送達系を含む。本発明の組成物は、乳、肉、ヨーグルトなどの食物の構成要素として投与してもよい。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態では、シュウ酸塩を分解する微生物、植物および酵素を別個にまたは組み合わせで投与することにより、シュウ酸分解菌が不足した家畜、農業用動物または外来種の動物においてシュウ酸塩吸収の減少を達成する。
【0021】
本発明の方法は、1種または複数種のシュウ酸塩低減微生物、1種または複数種のシュウ酸塩低減酵素、またはこれらの組み合わせおよび混合物を含むシュウ酸塩低減組成物を有効量で投与することによって、人間および動物においてシュウ酸塩関連症状を治療または予防することを含む。シュウ酸塩関連症状としては、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸尿症、外陰部痛、末期腎不全に関連するシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、クローン病および潰瘍性大腸炎が挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明は、シュウ酸塩低減のための方法および組成物を含む。本発明の組成物は、シュウ酸塩を低減することのできる微生物、酵素、ポリヌクレオチド配列、ベクター、細胞、植物および動物を含む。組成物は、シュウ酸塩を低減することのできる微生物を含む。このような微生物としては、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム(Clostridia)、ラクトバチルス(Lactobicilli)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)(このうちのいくつかまたはすべてが、シュウ酸塩を低減することのできるものである)が挙げられるが、これらに限定されるものではなく、また、シュウ酸塩低減能が与えられるように外来性のポリヌクレオチド配列で形質転換された細菌または真菌などの微生物も挙げられる。加えて、本発明の微生物は、微生物が「スーパーレデューサー(super reducers)」になるように、シュウ酸塩低減酵素または関連の活性をコードする内在性または外来性のポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のシュウ酸塩低減ベクターで形質転換された微生物を含む。スーパーレデューサーは、たとえば、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)を別のシュウ酸塩低減配列で形質転換する際に、もともと持っているシュウ酸塩低減活性が高められたものであるか、あるいは、本来はシュウ酸塩低減活性を持たない微生物を、シュウ酸塩低減ペプチドをコードする1種または複数種の配列で形質転換することによりシュウ酸塩低減活性を高めたものである。シュウ酸塩低減活性コード配列は、微生物に見られるゲノムまたは他のベクター間にインターカレーションしてもよいし、しなくてもよい。このような形質転換は、シュウ酸塩低減タンパク質またはペプチドをコードする遺伝子配列を提供することを含むものであってもよく、あるいは、アンチセンスまたはiRNAなどのブロッキングヌクレオチドを提供するものであってもよい。ポリヌクレオチド配列を導入し、微生物を形質転換するための技法は当該技術分野において知られている。
【0023】
組成物は、シュウ酸塩低減経路の構成要素である酵素も含む。このような組成物は、1種または複数種の酵素を含み、補因子、補酵素、ならびに、酵素活性にとって必要または望まれる他の因子を任意に含む。組成物は、シュウ酸塩低減酵素、ならびに、植物、動物または人間に見られるシュウ酸塩代謝に関与する他の酵素が挙げられるが、これに限定されるものではない、1種または複数種の酵素を含む。組成物は、本明細書にて教示するシュウ酸塩低減酵素のうちの1種または複数種を含む。本明細書で使用する場合、「1種または複数種の酵素」という表現は、ホルミル−CoAトランスフェラーゼなどの1種類の酵素を意図しているか、または、たとえばホルミル−CoAトランスフェラーゼおよびシュウ酸デカルボキシラーゼなどの2種類以上の酵素を意図していることを意味する。当該技術分野において知られているように、この表現は1つの酵素分子を意味するものではなく、1種または複数種の酵素タイプの複数の分子を意味するものである。
【0024】
本明細書で使用する場合、シュウ酸塩分解酵素およびシュウ酸塩低減酵素という用語は同義であり、いずれも何らかの生物でのシュウ酸塩の低減もしくは分解に関与する酵素、または、シュウ酸塩を低減もしくは分解できる活性フラグメントまたは活性フラグメントを含む組換えタンパク質を示す。
【0025】
本発明の組成物は、シュウ酸塩低減経路に関与するペプチドまたはタンパク質をコードするポリヌクレオチド配列も含む。このようなポリヌクレオチド配列は、どのような起源から得られてもよく、微生物、植物または動物(全生物を含む)由来の細胞を形質転換するための方法などの、当業者に知られている方法において利用可能なものである。
【0026】
本発明の組成物は、送達用ベヒクル中に、生存可能なシュウ酸塩低減細菌と、任意に、医薬賦形剤または担体とを含む医薬組成物も含む。組成物は、送達用ベヒクル中に、1種または複数種の精製されたシュウ酸塩低減酵素(このような酵素の天然起源から精製された酵素、組換え的に産生された酵素、もしくは合成的に産生された酵素が挙げられるが、これに限定されるものではない)と、任意に、医薬賦形剤または担体を含む医薬組成物も含む。
【0027】
本発明の医薬組成物は、胃などの厳しい環境に耐えられるようにコーティングを施しておいてもよい、粉末、カプセル、丸剤、顆粒剤および錠剤が挙げられるが、これに限定されるものではない、経口送達用ベヒクルを含む。このような経口送達用ベヒクルは、生存可能なシュウ酸塩低減細菌および酵素を、本明細書にて教示する投与用量および方法で送達させるのに用いられる。このような医薬組成物は安定している。組成物は、cfuおよび酵素活性の喪失が最小限の状態で、少なくとも12ヶ月は活性を有する生存可能な細菌および酵素を提供できるものである。
【0028】
本発明の組成物は、シュウ酸塩低減機能が変化した植物および動物も含む。たとえば、このような植物には、形質転換していない植物と比較して植物中のシュウ酸塩の量が少なくなるか、またはシュウ酸の産生量が増えるように、ポリヌクレオチド組成物で形質転換された植物がある。本発明の組成物はまた、シュウ酸塩を減少させる能力が高められた動物も含む。たとえば、シュウ酸塩低減能が高められた動物を、シュウ酸塩関連症状について研究するためのin vivoモデルとして使用することが可能である。
【0029】
本発明の方法は、本発明の組成物を製造および使用することを含む。本発明の方法は、外来性のポリヌクレオチド配列を導入するための当業者に知られている方法によって、細胞、植物および動物を形質転換することを含む。このようなポリヌクレオチド配列は、どのような起源から得られてもよく、微生物、植物または動物(全生物を含む)由来の細胞を形質転換するための方法など、当業者に知られている方法において使用することが可能である。本方法は、シュウ酸塩低減活性を有する細胞溶解物を含む組成物、シュウ酸塩低減活性を有する1種または複数種の酵素を含む組成物、シュウ酸塩濃度が変化した植物または微生物から作られる食品成分を含む組成物を製造することも含む。本方法は、生存可能なシュウ酸塩低減細菌を含む、安定した経口医薬組成物を製造することを含む。
【0030】
本発明の方法は、本発明の組成物を使用することを含む。このような使用は、細胞にポリヌクレオチド配列を提供して、細胞のシュウ酸塩低減能を増強または抑制することを含む。本発明は、植物または動物のシュウ酸塩濃度を変化させるために、この植物または動物に本発明の組成物を投与する方法を含む。本方法は、食物もしくは肥料源に入れた状態で、または、食物もしくは肥料源と同時に、植物または動物に本発明の組成物を投与して、食物の消化時または植物による取り込み時に食物中のシュウ酸塩濃度を変化させるような食餌補給方法も含む。
【0031】
本発明の方法は、シュウ酸塩関連症状を治療または予防する方法を含む。本方法は、本発明の組成物を、生物におけるシュウ酸塩濃度を変化させるのに有効な量で投与することを含む。このような方法は、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸尿症、外陰部痛、末期腎不全に関連するシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、クローン病、脂肪便、空回腸バイパス手術などの消化管手術を受けた患者、抗生物質治療、および潰瘍性大腸炎が挙げられるが、これに限定されるものではない、人間および動物におけるシュウ酸塩関連症状の治療に効果的である。
【0032】
本発明は、1種または複数種のシュウ酸分解菌および/または酵素を含む組成物を、人間または動物の消化管に導入することに関し、ここで、組成物の活性は、存在するシュウ酸塩の量および/または濃度を低下させ、それによってシュウ酸塩による疾患の危険性を下げる。
【0033】
本発明は、人間および動物におけるシュウ酸塩関連症状を治療および予防するための方法および組成物を含む。シュウ酸塩症状を治療するための方法は、1種または複数種のシュウ酸塩低減酵素を含む組成物を投与することを含む。このような組成物は、人間もしくは動物のシュウ酸塩関連症状の重篤度、または消化管もしくは体液中のシュウ酸塩の量に応じて、1日以上にわたって1日1回または複数回投与できるものである。この治療は、人間または動物において望ましくない濃度のシュウ酸塩が存在するかぎり継続してよい。たとえば、この酵素組成物を1日から数年といった一定の期間にわたって1日1回または複数回投与することができる。慢性のシュウ酸塩関連症状のある人間または動物の場合、その人間または動物の残りの生涯を通じて上記の組成物を投与してもよい。
【0034】
シュウ酸塩関連症状を治療および予防するための本方法は、シュウ酸塩を低減させるためのシュウ酸塩低減酵素または酵素活性を有効量で含む組成物を投与することを含むものであってもよい。有効量は、この組成物の投与前に存在するシュウ酸塩の量と比較して、存在するシュウ酸塩の一部を減少させることになるシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位の量を含むか、または個体におけるシュウ酸塩の量を減らし始めるかもしくはシュウ酸塩の量が減った状態を維持することになる、シュウ酸塩低減酵素活性の活性単位のレベルを含む。1回用量の組成物において使用可能なシュウ酸塩低減酵素活性の活性単位の数値は、約0.0001単位から約5,000単位、約5単位から100単位、0.05から50単位、0.5から500、約0.01単位から約50単位、約0.01単位から約5単位、約1単位から約100単位、約25単位から約50単位、約30単位から約100単位、約40単位から約120単位、約60単位から約15単位、約50単位から約100単位、約100単位から約500単位、約100単位から約300単位、約100単位から約400単位、約100単位から約5,000単位、約1,000単位から約5,000単位、約2,500単位から約5,000単位、約0.001単位から約2,000単位の範囲、ならびに、ここに包含されるすべての範囲とすることが可能である。組成物は、シュウ酸塩の減少に役立つ他の酵素、補因子、基質、補酵素、鉱物、および他の物質をさらに含むものであってもよい。酵素の1単位とは、37℃で1分あたり1マイクロモルのシュウ酸塩を分解する酵素の量である。
【0035】
特定の実施形態では、本発明は、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)種のシュウ酸分解菌の細胞を含む組成物を調製し、人間または動物の消化管に投与して、腸内に存在するシュウ酸塩の量を微生物の活性によって低下させ、それによって腎臓および他の細胞液中のシュウ酸塩濃度を低下させるための方法に関する。別の実施形態では、本発明は、どのような起源由来のものであってもよい1種または複数種のシュウ酸塩分解酵素を含む組成物を調製し、人間または動物の消化管に投与して、腸内に存在するシュウ酸塩の量を1種または複数種の酵素の活性によって低下させ、腎臓および他の細胞液中のシュウ酸塩濃度を低下させるための方法を含む。導入される細胞または酵素はシュウ酸塩を分解し、細菌は、最初の細胞の子孫が腸でコロニーを形成してシュウ酸塩を除去しつづけるように、腸管内の生息場所で複製されてもよいし、複製されなくてもよい。シュウ酸塩低減細菌が存在すると、腎結石が形成される危険性、ならびに過剰なシュウ酸によって生じる他の疾患合併症の危険性が低くなる。ヒトに用いる一実施形態では、使用する特定菌株のオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)が、ヒト腸管試料から単離された菌株である。よって、これらの菌株は、健常なヒト腸管細菌叢の一部である。しかしながら、これらの菌株は誰にでも存在するわけではなく、あるいは、不十分な数でしか存在しないため、人によっては見られる欠乏状態がこれらの生物を導入することで補正される。
【0036】
特定の理論に拘泥されることを望むわけではないが、腸内容物に1種または複数種のシュウ酸分解菌またはシュウ酸塩低減酵素を富化すると、腸内容物中のシュウ酸塩が減少すると考えられる。細菌または投与された酵素によっては、吸収部位またはその付近でシュウ酸塩の分解を行うものがある。細菌または投与された酵素の活性によって、食餌性シュウ酸塩の吸収率が低下する。腸内でのシュウ酸塩濃度が低下すると、細胞および全身循環からシュウ酸塩を除去できる場合もある。より具体的には、腸内でのシュウ酸塩濃度が低下すると、血液から腸へのシュウ酸塩の分泌量が増加し、したがって尿中に排泄される必要があるシュウ酸塩の量が少なくなる場合もある。このように、シュウ酸塩低減細菌またはシュウ酸塩低減酵素を投与するための本発明の方法を利用すれば、食餌性高シュウ酸尿症の治療に加えて、原発性高シュウ酸尿症などのシュウ酸塩関連症状を治療または予防することができる。本発明の組成物および方法は、人間および動物において正常なシュウ酸塩濃度を促進していく上で特に好都合である。
【0037】
シュウ酸分解菌または1種または複数種のシュウ酸塩分解酵素を、単独または組み合わせで、消化管に導入するための医薬組成物および栄養補給用組成物は、液体またはペースト状で凍結乾燥または凍結しておいた細菌または酵素を含み、ゲルカプセルまたは他の腸溶保護用ベヒクルによるなどの経口送達用ベヒクルによって送達することができるものである。ゲルキャップ材料は、好ましくは、胃の酸性度や胃内の酵素では分解されないが、腸内のpHと胆汁酸含有量の上昇によるシュウ酸分解組成物の付随的な放出に伴って分解される、送達用丸剤またはカプセルを形成するポリマー材料である。放出された組成物は、腸内に存在するシュウ酸塩を無害な生成物に変換する。医薬担体または栄養補給用担体を細菌または酵素と組み合わせることも可能である。これらの担体としては、たとえば、生理食塩水−リン酸緩衝液または重炭酸緩衝液が挙げられる。本発明の方法は、シュウ酸塩低減組成物を人間または動物の消化管に投与することを含む。
【0038】
投与対象となる、1種もしくは複数種のシュウ酸塩低減細菌または1種もしくは複数種のシュウ酸塩低減酵素、あるいは、細菌と酵素との組み合わせを含むシュウ酸塩低減組成物は、組成物を胃酸による悪影響から保護するよう設計されたカプセルまたはマイクロカプセルとして送達することが可能である。何種類かの腸溶保護コーティング方法のうちの1つまたは複数を利用することが可能である。このような腸溶コーティングについての説明としては、酢酸フタル酸セルロース(CAP)(Yacobi,A.、E.H.Walega、1988年、Oral sustained release formulations:Dosing and evaluation、Pergammon Press)を使用することが挙げられる。封入技術に関する他の説明として、本明細書に援用する米国特許第5,286,495号明細書が挙げられる。本発明の組成物は、坐剤として製剤化することも可能である。
【0039】
1種もしくは複数種の微生物、1種もしくは複数種のシュウ酸塩低減酵素、またはその組み合わせおよび混合物を含むこれらの組成物を腸に投与する他の方法としては、食物源に直接的に組成物を加えることが挙げられる。この場合、1種または複数種の細菌は、回収直後の細胞、凍結乾燥した細胞、そうでなければ保護処理を施した細胞として添加することができる。1種または複数種の酵素は、凍結乾燥されたタンパク質、カプセル化またはマイクロカプセル化した酵素組成物、酵素活性を維持するように他の材料との間で複合体を形成した酵素として、および、活性酵素を組成物に添加するための当業者に知られている他の方法で添加することができる。食物の風味または見た目を損ねることなく、食物にシュウ酸塩分解組成物を添加することができる。これらの食物としては、たとえば、ヨーグルト、乳、ピーナッツバター、またはチョコレートが挙げられる。摂取時に、食品が消化されて腸から吸収されると、1種もしくは複数種の微生物、1種もしくは複数種の酵素、またはこれらの組み合わせを含むシュウ酸塩分解組成物が、腸内に存在するシュウ酸塩を分解し、それによって血流中に吸収されるシュウ酸塩の量を減少させる。
【0040】
上述したように、さまざまな食物にシュウ酸塩分解組成物を添加することができる。シュウ酸塩低減組成物を含有するこのような食物を製造するための方法は、食品材料とシュウ酸塩低減組成物とを混合することを含む。たとえば、シュウ酸塩低減微生物を培地中で増殖させ、遠心分離などによって培地から分離することが可能である。市販の乳製品から得られる従来のヨーグルト培養物をシュウ酸塩分解微生物培養物と混合することが可能である。次いで、この培養物の混合物を、風味または粘稠性に影響を与えることなく、基本的な乳製品であるヨーグルトプレミックスに添加することができる。続いて、従来の工業的な手法を用いてヨーグルトを製造および包装することができる。別の例では、製造後のヨーグルトにシュウ酸分解菌を添加することができる。同様の方法では、1種または複数種のシュウ酸塩低減酵素を含むシュウ酸塩低減組成物を、ヨーグルト細菌培養物またはヨーグルト食品に添加することも可能である。
【0041】
本発明の方法の別の例は、均質化および滅菌後の乳にシュウ酸塩低減組成物を添加することである。このような方法は、現在では、乳業界でラクトバチルス・アシドフィルス(Lactobacillus acidophilus)菌を乳に添加するのに用いられている。細菌を含有する任意の食物源にシュウ酸分解菌を添加して使用することも可能である。これらの食品としては、加工時に望ましい微生物が添加されたチーズまたは肉製品が挙げられる。シュウ酸塩低減酵素を含むシュウ酸塩低減組成物を含む食物は、微生物を含むこれらの食物に限定されるものではなく、活性酵素を添加することが可能なものであれば、どのような食物源であってもよい。食品材料の製造もしくは成長のどの段階においても、または、人間もしくは動物による消化のどの段階においても食品材料中に存在するシュウ酸塩に対して酵素が活性であるように、あるいは、消化管に存在するシュウ酸塩に対して酵素が活性であるように、一般に食品材料として考えられる材料を酵素用の担体材料として利用することが可能である。
【0042】
さらに他の実施形態では、本発明は、新規な酵素送達系を提供するものである。この系は、シュウ酸塩分解酵素を発現するように異種のポリヌクレオチド(1種または複数種)で形質転換された植物を含む。この酵素発現トランスジェニック植物を、たとえばサラダの具材として患者に投与してもよい。さらに、この酵素発現植物を、たとえば飼料の成分として動物に投与してもよいし、放牧地の牧草で成長させてもよい。これらの生成物を給餌できる動物としては、たとえば、ウシ、ブタ、イヌ、およびネコが挙げられる。
【0043】
このように、腸への別の投与方法として、植物を遺伝子改変してシュウ酸塩分解酵素を発現させる。これらのトランスジェニック植物を食餌に添加し、酵素の活性によってシュウ酸塩の存在量を減少させる。これらの酵素をコードするDNA配列は当業者に知られており、たとえば、国際公開第98/16632号に記載されている。
【0044】
人間または動物における正常なシュウ酸塩濃度を促進するための食餌成分として使用可能な植物に加えて、本発明は、微生物感染に対する耐性が高められた植物を提供するものである。具体的には、本発明の形質転換植物を、植物の病原性にシュウ酸塩の存在を必要とするかまたは使用する微生物から保護する。本発明の植物は、シュウ酸塩分解酵素を発現するように形質転換されたものであり、たとえば、病原性にシュウ酸塩を必要とする特定の真菌から保護されている。この酵素をコードする遺伝子を修飾して、植物における発現および/または安定性を高めるようにすることが可能である。また、発現は、特定の組織における発現を指示するプロモーターの制御下で行ってもよい。
【0045】
一実施形態では、本発明により使用される、たとえばオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)などの細菌の菌株は、健常な人間か、動物で使用する場合には健常な動物の腸内容物の希釈液を接種した嫌気性培養物から単離された純粋な培養物である。シュウ酸塩分解コロニーの検出を可能にする特別なシュウ酸カルシウム含有培地を使用することができる。一実施形態では、各菌株の純度を、その後に少なくとも2回のクローニングステップを繰り返して確認することができる。
【0046】
本発明による有用なオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)株は、いくつかの試験の結果に基づいて特徴付けされており、これらには、細胞脂肪酸のパターン、細胞タンパク質のパターン、DNAおよびRNAのパターン(Jensen,N.S.およびM.J.Allison(1995年)「Studies on the diversity among anaerobic oxalate degrading bacteria now in the species Oxalobacter formigenes」、Abstr.to the General Meeting of the Amer.Soc.Microbiol.、1〜29)、ならびに、オリゴヌクレオチドプローブに対する応答(Sidhuら、1996年)が挙げられる。これらの細菌の2つの群(I群およびII群、共に本明細書の種についての記載中に存在する)について記載されている。使用した菌株は、シュウ酸塩分解能と、人間の腸管にコロニーを形成する能力の根拠とに基づいて選択したものである。選択した菌株はI群およびII群の両方の種の代表を含む。
【0047】
本発明の一実施形態は、適切なシュウ酸分解菌を選択、調製し、多種多様な対象に投与する方法を含む。常にではないが主に、これらの対象は自らの腸内にこれらの細菌を持たない人または動物である。腸内容物に見られるものなどのような混合細菌個体群中に微生物が比較的低濃度で存在する場合であっても、オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)を迅速かつ確定的に検出できる試験を使用して、これらのコロニー形成がないか、またはコロニー形成量が少ない人または動物が同定される。また、本発明の方法を用いて、たとえば抗生物質治療によるか、または術後の状態にあることにより、シュウ酸分解菌を欠損している個体または動物を治療することもできる。また、本発明の方法を用いて、シュウ酸分解菌のコロニーを持ってはいるが、たとえば、シュウ酸塩感受性および/または内在性シュウ酸塩の過剰産生などにより、不健康なシュウ酸塩濃度である個体または動物を治療することもできる。
【0048】
本発明に使用することができる細菌は、少なくとも2通りの方法で同定可能なものである。
1)これらの細菌に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを使用することが可能である、および/または
2)10mMのシュウ酸塩を含む嫌気性培地に接種し、37℃で1から7日間インキュベーション後、シュウ酸塩の損失を測定する培養試験。
【0049】
医薬組成物の製造方法が本明細書にて教示され、細菌を増殖させるための方法は当業者に広く知られている。たとえば、オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)株の純粋培養物は大規模な発酵バッチ培養で増殖させることができ、細胞は当業者に知られている技法で回収することが可能である。選択された1つの菌株または既知の菌株の混合物に由来する細胞を適宜処理(たとえば、トレハロースまたはグリセロールで凍結乾燥するなど)して生存度を保ち、続いて、酸性の胃を通過しても細胞が保護されるように設計したカプセルに入れる(腸溶コーティングカプセル)。発酵直後の新鮮なものであるか、または凍結ストック溶液から得たものかのいずれかの細菌細胞を、担体または賦形剤と混合した後、凍結乾燥することができる。続いて、送達用ベヒクルに粉末状の組成物を充填(loaded)する。たとえば、生存可能なシュウ酸塩低減細菌の組成物を人間または動物の腸に送達させる場合、安定した医薬組成物は、腸溶コーティングが施されたカプセルである送達用ベヒクルを含むものであってもよく、カプセル内に封入されているのは、生存可能なシュウ酸塩低減細菌の粉末状の凍結乾燥組成物である。
【0050】
本明細書にて教示される医薬組成物は、個人の必要性に応じて定められる1回投与用量および全量ならびに間隔で摂取される。場合によっては、1回用量または反復用量だけしか必要ないこともあれば、定期的な摂取(例えば食事と共に)が必要になる場合もある。有効量の投与用量は本明細書にて教示される。医薬組成物は、生存可能なシュウ酸塩低減細菌および/またはシュウ酸塩低減酵素を、単独で、または生理学的に許容可能な賦形剤もしくは担体または医薬担体もしくは医薬賦形剤(これらの用語は本明細書では同義に用いられる)との組み合わせで含む。本発明の医薬組成物の用量は、有効投与量すなわち特定の時間にわたるシュウ酸塩低減用量で、構成的に製造および/または個体が摂取したシュウ酸塩の量未満、この量と同量、またはこの量を上回る量であってもよい。シュウ酸塩関連症状によっては、本発明の方法および組成物によるシュウ酸塩低減活性の投与量が、シュウ酸塩の摂取量または構成的に製造された量を下回ることもあり、低レベルのシュウ酸塩低減能を患者に補完または補充するだけでよいこともある。他の症状では、より大きなシュウ酸塩低減活性を提供する必要がある場合もある。
【0051】
たとえば、遺伝病であって高シュウ酸尿症の最も重篤な形態である原発性高シュウ酸尿症(PH)では、患者は1日あたり約100〜300mgのシュウ酸塩を産生する。PHを治療してPHの後遺症を予防する方法は、シュウ酸塩を1日あたり少なくとも100〜300mg、または1日あたり少なくとも200mg、または1日あたり300mg、または1日あたり300mgよりも多く、または1日あたり400mg減少させるのに有効な量のシュウ酸塩低減組成物を投与することを含む。このような投与計画は、経口投与経路であってもよい。たとえば、凍結乾燥されたシュウ酸塩低減細菌の組成物を含む腸溶コーティングカプセルなどの、本明細書にて開示する経口送達用ベヒクルによって提供される場合、このカプセルを少なくとも1日1回、少なくとも1日2回、少なくとも1日3回、少なくとも1日4回、または有効量のシュウ酸塩低減活性を送達する上での必要に応じて提供することができる。患者側の便宜上、服薬スケジュールは、1カプセルあたり5×10から5×10CFUの凍結乾燥されたシュウ酸塩低減細菌を含む組成物を含む腸溶コーティングカプセルの経口投与を含むものであってもよく、この用量を食事と共に1日2回から3回与える。各カプセルが少なくとも6.5〜10mgシュウ酸塩/時または120〜240mg/日のシュウ酸塩低減活性を持ち、このようなカプセル2〜3個でPH患者が1日に産生するシュウ酸塩の最大量を提供することができる。
【0052】
担体は、錠剤、カプセルまたは粉末状の製剤の場合には固体を主成分とする乾燥材料とすることができ、液体またはゲル状の製剤の場合には液体またはゲルを主成分とする材料とすることができる。この形態は、ある程度は投与経路に左右される。
【0053】
乾燥製剤用の典型的な担体としては、トレハロース、マルトデキストリン、米粉、微結晶セルロース(MCC)、ステアリン酸マグネシウム、イノシトール、FOS(フルクトオリゴサッカライド)、グルコオリゴサッカライド(GOS)、デキストロース、スクロース、これに類する担体などが挙げられる。
【0054】
液体またはゲルを主成分とする好適な担体は、水および生理食塩水、尿素、アルコールならびにグリコール(メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールおよびプロピレングリコールなど)など、当該技術分野においてよく知られている。好ましくは、水を主成分とする担体はほぼ中性のpHである。
【0055】
好適な担体としては、たとえば、白色ワセリン、ミリスチン酸イソプロピル、ラノリンまたはラノリンアルコール、鉱物油、モノオレイン酸ソルビタン、プロピレングリコール、セチルステアリルアルコール(一緒に、もしくは様々な組み合わせで)、ヒドロキシプロピルセルロース(MW=100,000から1,000,000)、界面活性剤(ステアリン酸ポリオキシルもしくはラウリル硫酸ナトリウムなど)といった、水性および油性の担体が挙げられ、これらの好適な担体は水と混合されて、ローション、ゲル、クリームまたは半固体の組成物を形成する。他の好適な担体としては、油中水型または水中油型エマルション、ならびに、乳化剤および軟化剤と、ステアリン酸スクロース、ヤシ脂肪酸スクロース(sucrose cocoate)、ジステアリン酸スクロース、鉱物油、プロピレングリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ポリオキシプロピレン−15−ステアリルエーテル、および水などの溶媒との混合物がある。たとえば、水、ステアリン酸グリセロール、グリセリン、鉱物油、合成鯨ロウ、セチルアルコール、ブチルパラベン、プロピルパラベン、およびメチルパラベンを含有するエマルションは商業入手可能である。メチルパラベン、プロピルパラベン、ベンジルアルコール、およびエチレンジアミン四酢酸塩をはじめとする保存剤を担体に含むようにしてもよい。また、よく知られている矯味剤および/または着色剤を担体に含むようにしてもよい。この組成物は、グリセリンまたはポリエチレングリコール(MW=800から20,000)などの可塑剤を含むものであってもよい。組成物中のシュウ酸塩低減細菌またはシュウ酸塩低減酵素の生存度を大幅に損ねないかぎり、この担体の組成は可変である。
【0056】
本発明の代表的な組成物は、以下の不活性成分のうちの任意のものをさらに含むことが可能である:アラビアゴム、アスパルテーム、クエン酸、D&CイエローNo.10、FD&CイエローNo.6、フレーバー(天然および/または人工)、ポリソルベート80、アルギン酸プロピレングリコール、コロイド状二酸化ケイ素、およびスクロース、およびキサンタンガム。
【0057】
組成物には以下の不活性成分を含むことも可能である:アスパルテーム、β−カロテン、クエン酸、フレーバー(天然および人工)、グリセリン、マルトール、マンニトール、およびメチルセルロース。
【0058】
本明細書にて開示する消化管への経口送達用のオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)医薬組成物の製造方法は、当業者に知られている発酵方法を用いて細菌を増殖させ、任意に、細菌細胞を凍結させ、凍結した細胞を融解させ、任意に賦形剤溶液中で混合した細菌細胞を凍結乾燥させた後、凍結乾燥された細胞を篩過して粉末にし、医薬製剤の送達用ベヒクル中に粉末を提供することを含む。
【0059】
本発明はさらに、人間または動物の消化管に、オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)細胞などのシュウ酸塩低減微生物もしくは他の起源から調製された、または、組換え手段などによる方法によって調製された、シュウ酸分解生成物または酵素を投与することに関するものである。一実施形態では、シュウ酸塩分解酵素を、経口摂取向けの医薬組成物または栄養補給用組成物として精製および調製することが可能である。好ましい実施形態では、これらの酵素は、組換え的に産生される。これらの酵素をコードするDNA配列は当業者に知られており、たとえば、国際公開第98/16632号に記載されている。これらの配列、またはシュウ酸分解タンパク質をコードする他の配列は、好適な宿主で発現させることが可能である。宿主は、たとえば、大腸菌(E.coli)またはラクトバチルス(Lactobacillus)であってよい。形質転換宿主は、適切な調節シグナルおよびトランスポーターシグナルを含み得る。本明細書にて説明したように、発現されたタンパク質は、単離、精製および投与することができる。あるいは、所望のシュウ酸分解タンパク質を発現している組換え宿主を投与してもよい。組換え宿主は、生存可能な形態で投与してもよいし、非生存可能な形態で投与してもよい。別の好ましい実施形態では、酵素が胃の中で失活せず、小腸においてそのシュウ酸分解活性を発揮するのに利用できるように、酵素にコーティングを施すか、そうでなければ製剤化または修飾して酵素を保護する。このような製剤の例は当業者に知られており、たとえば、米国特許第5,286,495号に記載されている。
【0060】
本明細書にて使用するようなシュウ酸塩分解酵素としては、シュウ酸塩経路に関与するすべての酵素が挙げられ、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ、ホルミルCoAトランスフェラーゼ、およびオキサリル−CoAデカルボキシラーゼを含むがこれに限定されるものではない。シュウ酸オキシダーゼは、高等植物で発現し、シュウ酸塩からCOへの酸素依存性酸化を触媒し、これに伴ってHが形成される。シュウ酸オキシダーゼは、たとえば、オオムギ苗木の根および葉、ビーツの茎および葉、コムギ胚芽、ソルガムの葉、バナナの皮などの多くの起源から精製されている。オオムギの根からシュウ酸オキシダーゼを得るために高速三段階精製法が開発されている。オオムギの根のシュウ酸オキシダーゼをコードする遺伝子は、すでにクローニング、配列決定、発現されている。
【0061】
シュウ酸デカルボキシラーゼは主に、真菌に存在する。最近になって、枯草菌(B.subtilis)で細菌のシュウ酸デカルボキシラーゼが報告され、yvrk遺伝子でコードされている。シュウ酸デカルボキシラーゼは、遊離シュウ酸塩からCOおよびギ酸塩への分解を触媒する。この酵素は、ミロテシウム・ベルカリア(Myrothecium verrucaria)、アスペルギルス・ニガー(Aspergillus niger)の特定の菌株、および、白色腐朽菌、コリオルス・ベルシカラー(Coriolus versicolor)をはじめとする何種類かの真菌で報告されている。フラムリナ・ベルティペス(Flammulina velutipes)シュウ酸デカルボキシラーゼをコードする遺伝子については、すでにクローニングおよび配列決定されている。国際公開第98/42827号を参照のこと。
【0062】
オキサリル−CoAデカルボキシラーゼは、CoA活性化基質に対して活性であり、これをホルミル−CoAに変換する。ホルミル−CoAトランスフェラーゼは、その後、CoA上のギ酸(formate)とシュウ酸(oxalate)とを交換するよう作用する。これらの酵素については、土壌中に存在するシュウ酸分解菌であるシュードモナス・オキサラチカス(Pseudomonas oxalaticus)と、人間をはじめとする脊椎動物の消化管に棲むオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)で研究されている。オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)は、腸でのシュウ酸吸収ならびに血漿中のシュウ酸濃度を調節することにより、その宿主と共生していることが明らかになっている。結果として、この細菌の欠如は、空回腸バイパス手術に伴う再発性の特発性シュウ酸カルシウム尿石症および腸管高シュウ酸尿症、嚢胞性線維症、ならびに炎症性腸疾患などのシュウ酸塩関連障害における危険因子となることが明らかになっている。
【0063】
さまざまなシュウ酸塩分解酵素およびこれらの酵素をコードする遺伝子について説明している特許として、米国特許第5,912,125号、同第6,090,628号、同第6,214,980号が挙げられる。これらの特許については、その全体を本明細書で具体的に説明したのと同様に援用する。シュウ酸塩分解酵素という用語は、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ、オキサリル−CoAデカルボキシラーゼ、およびホルミル−CoAトランスフェラーゼを含むがこれに限定されるものではなく、シュウ酸塩またはシュウ酸と相互作用できる酵素を含む。これらの酵素は、天然起源由来のものであってもよいし、当該技術分野において知られている組換え手段を用いて合成したものであってもよく、そして、結合部位、活性部位、またはシュウ酸塩もしくはシュウ酸と相互作用できるフラグメントなどのすべてのフラグメントを含む。また、この用語は、酵素がシュウ酸塩またはシュウ酸と相互作用する際に必要となる、すべての必要な補因子、補酵素、金属、または結合材料もしくは基質材料を含むがこれに限定されるものではない。また、本発明は、これらの酵素のあらゆる結合パートナーも企図しており、酵素に結合するか、または酵素と相互作用する抗体および抗体フラグメントを含む。
【0064】
オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)は、好気性組織環境では増殖せず、人間または動物にとって有毒な化合物を産生することもない嫌気性生物であるため、これを用いることは特に好都合である。オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)または組換え宿主のいずれかに代わるものとして、クロストリジウム(Clostridium)、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)、シュードモナス(Pseudomonas)、ラクトバチルス(Lactobacilli)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)などの他のシュウ酸分解菌を利用してもよい。このような他の細菌から調製されるシュウ酸塩分解酵素を投与してもよいし、微生物全体を投与してもよい。
【0065】
また、上述した実施形態はいずれも、シュウ酸分解菌の数が不足している家畜、農業用動物または動物園の動物ならびに人間にも適用可能である。たとえば、イヌ、ネコ、ウサギ、フェレット、モルモット、ハムスターおよびスナネズミなどの家で飼うペット、ならびに、ウマ、ヒツジ、ウシおよびブタなどの農業用動物、あるいは、カワウソなどの繁殖目的で飼育されている野生動物にシュウ酸塩分解酵素および/または微生物を投与してもよい。シュウ酸塩を低減できる多くの動物は、捕獲されるとその能力を失ってしまう。本発明は、失われたシュウ酸塩低減活性または低下したシュウ酸塩低減活性を回復させるための方法および組成物を含む。本発明の一態様は、シュウ酸塩低減活性を失ったか、またはシュウ酸塩低減活性が低下してしまっている、野生から救出した(retrieved)動物を本明細書にて教示する組成物で治療することを含む。
【0066】
本発明は、1種もしくは複数種のシュウ酸分解菌、1種もしくは複数種の酵素、または細菌と酵素との組み合わせを含む組成物と、この組成物を人間または動物の消化管に投与するための方法とを含む。このような組成物および方法は、存在するシュウ酸塩の量および/または濃度を低下させるのに効果的である。このような方法および組成物は、シュウ酸塩関連症状を治療および予防する際に効果的である。本発明の一態様は、シュウ酸塩分解酵素を人間または動物の消化管に導入するための組成物および方法を含む。本発明は、1種または複数種のシュウ酸塩分解酵素を、医薬担体組成物および/または栄養補給用担体組成物として人間または動物の消化管に送達するための方法を含む。このような酵素としては、シュウ酸オキシダーゼ、シュウ酸デカルボキシラーゼ、オキサリル−CoAデカルボキシラーゼ、およびホルミル−CoAトランスフェラーゼが挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの酵素は、当業者に知られている起源から得られるものである。たとえば、植物酵素であるシュウ酸オキシダーゼ(OXO)はオオムギの苗木から精製することが可能であり、シュウ酸デカルボキシラーゼは細菌または真菌起源から精製することが可能である。
【0067】
あるいは、シュウ酸塩分解酵素を組換え手段を用いて得ることができる。たとえば、クローニング、発現および精製などの組換え手段を利用して、シュウ酸塩低減酵素、たとえばバチルス・スブチリス(B.subtilis)シュウ酸デカルボキシラーゼ酵素を得ることができる。このような組換え方法は当業者に知られている。たとえば、開示されているのは一般的に、バチルス・スブチリス(B.subtilis)シュウ酸デカルボキシラーゼ(YvrK)遺伝子のクローニングおよび発現である。シュウ酸デカルボキシラーゼタンパク質(YvrK)の遺伝子は、可溶性細胞質タンパク質として過剰発現させるための強力なバクテリオファージT7プロモーターの制御下で、pET−9aおよびpET−14bプラスミド(Novagen、ウィスコンシン州(WI))にクローニングされている。発現宿主には、プロテアーゼのないλDE3溶原菌であって、lacUV5制御下でT7−RNAポリメラーゼ遺伝子の染色体コピーを含有する大腸菌(E.coli)株BL 21(DE3)pLysSを用いた。また、この菌株は、細胞壁のペプチドグリカン層における結合を切断し、T7 RNAポリメラーゼを阻害する二機能性酵素であるT7リゾチームをコードするpET適合性のプラスミドを有する。これによって、非誘導性の基礎発現をそれまでよりも大きく制御できるようになり、また、凍結-融解または穏やかな界面活性剤などの、内膜を崩壊させる方法を使用することにより、細胞を効率的に溶解させることができるようになる。遺伝子産物の発現は、イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)の添加によって誘導される。したがって、本発明の一態様は、組換え微生物によって産生されたシュウ酸塩分解酵素を投与することを含む方法を含む。多種多様な発現ベクターおよび宿主を利用して、シュウ酸塩分解酵素を組換えタンパク質として産生することが可能であり、このような方法は当業者に知られている。
【0068】
本発明の別の態様は、シュウ酸分解菌を人間または動物の消化管に供給することにより、シュウ酸塩の吸収を低下させるための方法を含む。このような細菌としては、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、クロストリジウム(Clostridium)、ラクトバチルス(Lactobacilli)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)およびシュードモナス(Pseudomonas)を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)が、ヒトの糞便試験片から単離され、個々のコロニーを選択することによりクローニングされている。これには、もともとIxion Biotechnologyによって1996年にMilton Allison博士から得られた単離株HC−1が含まれる。たとえば、ヒト菌株HC−1の凍結ストック溶液を利用することが可能である。本発明の方法は、1種または複数種のシュウ酸分解菌で腸を富化し、腸内容物中のシュウ酸塩を全体として減少させ、腸におけるシュウ酸塩の吸収を低下させ、血液中および腎臓体液中のシュウ酸塩濃度を低下させ、シュウ酸塩が存在することによる身体への悪影響を減らすことを含む。
【0069】
したがって、本発明の一態様は、シュウ酸塩関連疾患および/または症状の危険性が高まった人の腸管への、シュウ酸塩を低減することのできるシュウ酸塩低減細菌およびシュウ酸塩分解酵素を供給するための組成物および方法を含む。このような疾患および症状としては、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸尿症、外陰部痛、末期腎不全に関連するシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、空回腸バイパス手術を受けた人、シュウ酸分解菌の濃度が不十分な人、他の腸疾患状態が挙げられるが、これに限定されるものではない。抗生物質治療、化学治療、または腸内細菌叢を変化させる他の治療を受けた人間および動物を、本発明の組成物および方法で治療する。本発明を利用して、腸内細菌叢が変化した人間または動物にシュウ酸塩低減能を回復させる。尿中シュウ酸塩排泄濃度が上昇することにより、腎結石の形成が促進され、腎瘢痕形成を招くため、腎不全につながることすらある。このため、本発明の一態様は、腎結石の形成量を少なくするための組成物および方法を含む。
【0070】
腸全体でのシュウ酸塩濃度が低下すると、細胞および全身循環からのシュウ酸塩の除去にもつながり得る。より具体的には、腸内でのシュウ酸塩濃度が低下すると、血液から腸へのシュウ酸塩の分泌量増加にもつながり得る。特定の理論に拘泥されることを望むわけではないが、現時点では、シュウ酸塩の腸内排出には経上皮的な勾配があると考えられている。したがって、本発明の一態様は、シュウ酸塩の血液濃度を下げるとともに、シュウ酸塩の結腸排泄についてのシュウ酸塩の経上皮的勾配を介した血液からのシュウ酸塩の排泄を促すことによって、シュウ酸塩の排泄量を増やすための組成物および方法を含む。本発明の方法は、人間または動物の腸に、人間もしくは動物のシュウ酸塩濃度またはレベルを下げるための組成物を提供することを含む。このように下げることは、腸、血液、血清、組織液、および他の体液中に見られるシュウ酸塩の量を低減することを含み得る。
【0071】
本発明の一組成物は、経口投与用に調製されたオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)のペーストを含む。多くのオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)ペーストの各々について、大規模な製造発酵において増殖を開始するために、HC−1の単一のストック溶液バイアルを使用して接種培養物を生成する。各発酵で得られる細菌を遠心分離によって回収し、凍結乾燥に対する保護のための凍結保護賦形剤と混合する。細胞ペーストを、凍結乾燥または噴霧乾燥または真空乾燥させ、力価が10から10CFU/グラムの範囲の微粉末を得ることも可能である。このようにして得られる粉末を、細菌を小腸まで安全に送達するために腸溶コーティングしたゼラチンカプセル、またはHPMCカプセルなどの他のカプセルに入れる。
【0072】
本発明の組成物は、約10から約1012cfu/グラム、約10から約1010cfu/グラム、約10から約1012cfu/グラム、約10から約1010cfu/グラム、約10から約10cfu/グラム、約10から約10cfu/グラムの範囲、ならびにこれらの間にあるすべての範囲の1種または複数種のシュウ酸塩低減細菌の抽出物から作られる組成物を含む。
【0073】
本発明の組成物はまた、シュウ酸塩を低下させる活性を有する1種または複数種の酵素を含む組成物も含む。本発明の一態様は、有効量の酵素組成物を人間または動物の消化管に投与することを含む。酵素組成物の有効量は、腸内のシュウ酸塩の一部を低減することのできる量、または、人間もしくは動物におけるシュウ酸塩濃度を組成物の投与前に測定した濃度よりも下げることができる量である。このような測定値は、食物起源から消化管内に存在するシュウ酸塩の測定値であってもよく、または血液や尿などの体液中における測定レベルであってもよい。
【0074】
本発明は、オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)を含有する組成物を人間または動物の消化管に投与することにより、シュウ酸塩関連症状を治療または予防するための方法を含む。対象には、≧10cfu/gmの生存可能なオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)細胞を含有する腸溶カプセルを投与する。このような投薬は、食事と一緒に1日少なくとも2回行うことができる。本発明は、1種もしくは複数種のシュウ酸塩低減微生物、1種もしくは複数種のシュウ酸塩低減酵素、またはこれらの組み合わせを含むシュウ酸塩低減組成物を投与するための方法も含む。本発明の方法は、有効量のシュウ酸塩低減組成物を少なくとも1日1回投与することを含み、ここで、シュウ酸塩低減組成物は、1種または複数種のシュウ酸塩低減酵素を含む。本方法はまた、このような組成物を、1日2回以上、1日3回以上、1日4回以上、1日1から15回の範囲で投与することも含む。このような投与は、シュウ酸塩関連症状を治療または予防するために、数日間、数週間、数ヶ月間または数年間毎日継続してもよいし、特定の回数行ってもよい。たとえば、人または動物に、シュウ酸塩低減組成物を数年間にわたって少なくとも1日1回投与して、シュウ酸塩関連症状を治療または予防してもよいし、人または動物に、シュウ酸塩含有食物を摂取したときにだけシュウ酸塩低減組成物を少なくとも1日1回投与してもよいし、正常な細菌叢に干渉する手法または治療を受けた後の数日間または数週間などの限られた期間投与してもよい。このような投与は、医薬の投与用として知られている経路で行うことが可能である。経口投与もしくは腸内投与、または食品材料との組み合わせでの投与が本発明で企図されている。
【0075】
本発明は、ラベルと本発明による治療用組成物とを含む容器を含むシュウ酸塩を低減するための治療システムをさらに企図しており、ここで、前記ラベルはこの組成物をシュウ酸塩の低減に用いる際の指示内容を含む。
【0076】
一般に、こうしたシステムは、本発明の治療用組成物が入ったパッケージの形態で存在するか、または包装材と併用されて存在する。包装材は、パッケージ内の成分の使用に関するラベルまたは指示内容を含む。指示内容には、本発明の方法または組成物に対する、本明細書にて説明するパッケージ成分の企図される用途が示されている。たとえば、システムは、本発明による治療用組成物を1つまたは複数の単位投与量で含むことが可能である。あるいは、システムにバルク量の治療用組成物を入れることも可能である。ラベルは、必要に応じて単位用量またはバルク形態のいずれかで治療用組成物を使用するための指示内容が書かれており、組成物の保管、対象疾患、投与量、投与経路、これに類する情報などの情報を含むものであってもよい。
【0077】
本発明は、人間および動物におけるシュウ酸塩を減少させるための医薬組成物および方法を含む。人間または動物におけるシュウ酸塩濃度を低下させるための組成物は、a)約0.5%から約95%のシュウ酸塩低減細菌と、b)約0.1%から約50%の二糖と、c)約3%から約85%のマルトデキストリンと、d)約0.5%から約25%のアルギン酸塩と、e)約1.0%から約60%のオリゴフルクトースと、を含むシュウ酸塩低減組成物を含む経口送達用ベヒクルを含む。この組成物は、カプセル、丸剤、顆粒剤、または錠剤を含む経口送達用ベヒクルを含むものであってもよい。この組成物はさらに、経口送達用ベヒクル表面に腸溶コーティングを含むものであってもよい。腸溶コーティングは、ポリマー材料であってもよい。このようなポリマー材料は、腸溶コーティングとして用いるのに当業者に知られている多くの異なるEudragit(商標)または他のポリマー材料のうちのひとつであってもよい。
【0078】
本組成物は、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム(Clostridia)、ラクトバチルス(Lactobacilli)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外来性ポリヌクレオチド配列もしくは内在性ポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のベクターで形質転換された細菌であるシュウ酸塩低減細菌を含むものであってもよく、あるいは、シュウ酸塩低減細菌がオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)である組成物、あるいは、シュウ酸塩低減細菌がオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)HC1株である組成物を含むものであってもよい。シュウ酸塩低減組成物は、凍結乾燥粉末を含むものであってもよい。粉末は、粒度が約10ミクロンから約2000ミクロン、または約100ミクロンから約1000ミクロン、または約500ミクロンから約1500ミクロン、または約500ミクロンから約1000ミクロン、500から約1500ミクロン、またはその範囲内もしくはその近辺のあらゆる範囲であってもよい。
【0079】
本組成物は、二糖、トレハロースを含むものであってもよく、あるいは、アルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムである。シュウ酸塩低減組成物は、cfu/gmが少なくとも約1E+03から約1E+13のシュウ酸塩低減細菌を含むものであってもよい。シュウ酸塩低減組成物は、シュウ酸塩酵素低減活性/gmが少なくとも約2mgのシュウ酸塩分解/時から約2500mgのシュウ酸塩分解/時であってもよい。
【0080】
人間または動物におけるシュウ酸塩濃度を低下させるための組成物は、a)約3%から約25%のシュウ酸塩低減細菌と、b)約1.5%から約6%の二糖と、c)約45%から約60%のマルトデキストリンと、d)約4%から約6%のアルギン酸塩と、e)約20%から約35%のオリゴフルクトースと、を含む組成物を含む送達用ベヒクルを含む組成物を含むシュウ酸塩低減組成物を含む経口送達用ベヒクルを含むものであってもよい。
【0081】
シュウ酸塩低減のための組成物は、a)約0.5%から約95%の生存可能な凍結乾燥されたシュウ酸塩低減細菌と、b)約95%から約0.5%の医薬上許容され得る賦形剤とを含み、医薬送達用ベヒクルをさらに含む、存在するシュウ酸塩の一部を減少させる有効量のシュウ酸塩低減活性を含む。この医薬送達用ベヒクルは、粉末、丸剤、顆粒剤、坐剤、または錠剤を含むものであってもよい。任意に、送達用ベヒクルには腸溶コーティングが施され、この腸溶コーティングは一般に、ポリマー材料である。オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム(Clostridia)、ラクトバチルス(Lactobacilli)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外来性ポリヌクレオチド配列もしくは内在性ポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のベクターで形質転換された細菌であってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)であってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)HC1株であってもよいシュウ酸塩低減細菌によって、有効量のシュウ酸塩低減活性を提供することができる。本組成物は、凍結乾燥粉末として提供されるものであってもよい。この粉末は、粒度が約10ミクロンから約2000ミクロン、または約100ミクロンから約1000ミクロン、または約500ミクロンから約1500ミクロン、または約500ミクロンから約1000ミクロン、500から約1500ミクロン、またはその範囲内もしくはその近辺のあらゆる範囲であってもよい。シュウ酸塩低減組成物は、cfu/gmが少なくとも約1E+03から約1E+13のシュウ酸塩低減細菌を含むものであってもよい。シュウ酸塩低減組成物は、シュウ酸塩酵素低減活性/gmが少なくとも約2mgのシュウ酸塩分解/時から約2500mgのシュウ酸塩分解/時であってもよい。
【0082】
本発明の方法は、人間および動物においてシュウ酸塩濃度を低下させるための方法、人間および動物におけるシュウ酸塩症状を治療する方法、人間および動物におけるシュウ酸塩症状を予防する方法、シュウ酸塩低減組成物の製造方法を含む。また、本発明は、シュウ酸塩低減のためのシステムを含む。人間または動物においてシュウ酸塩濃度を低下させるための方法は、人間または動物に、a)約0.5%から約95%のシュウ酸塩低減細菌と、b)約0.1%から約50%の二糖と、c)約3%から約85%のマルトデキストリンと、d)約0.5%から約25%のアルギン酸塩と、e)約1.0%から約60%のオリゴフルクトースと、を含むシュウ酸塩低減組成物を含む送達用ベヒクルを含む組成物を有効量で投与することを含む。送達用ベヒクルは、坐剤、粉末、丸剤、顆粒剤、または錠剤を含むものであってもよく、これはさらに、送達用ベヒクル表面に腸溶コーティングを含むものであってもよい。腸溶コーティングは、ポリマー材料であってもよい。シュウ酸塩低減細菌は、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム(Clostridia)、ラクトバチルス(Lactobicilli)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外来性ポリヌクレオチド配列もしくは内在性ポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のベクターで形質転換された細菌であってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)であってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)HC1株であってもよい。本組成物は、凍結乾燥粉末として提供されるものであってもよい。この粉末は、粒度が約10ミクロンから約2000ミクロン、または約100ミクロンから約1000ミクロン、または約500ミクロンから約1500ミクロン、または約500ミクロンから約1000ミクロン、500から約1500ミクロン、またはその範囲内もしくはその近辺のあらゆる範囲であってもよい。本組成物は、二糖、トレハロースを含むものであってもよく、あるいは、アルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムである。シュウ酸塩低減組成物は、cfu/gmが少なくとも約1E+03から約1E+13のシュウ酸塩低減細菌を含むものであってもよい。シュウ酸塩低減組成物は、シュウ酸塩酵素低減活性/gmが少なくとも約2mgのシュウ酸塩分解/時から約2500mgのシュウ酸塩分解/時であってもよい。本方法は、経口投与経路で投与することを含み得る。
【0083】
本方法はまた、本明細書にて教示される組成物を投与することを含む、シュウ酸塩関連症状を予防することを含むものであってもよい。このような方法はまた、本明細書にて教示される組成物を投与することを含む、シュウ酸塩関連症状を治療することを含むものであってもよい。シュウ酸塩関連症状としては、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸尿症、外陰部痛、末期腎不全に関連するシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、脂肪便、空回腸バイパス手術などの消化管手術を受けた患者、または抗生物質治療を受けた患者が挙げられるが、これに限定されるものではない。本方法は、本明細書にて教示される組成物を、シュウ酸塩が十分なレベルで減少するまでの期間、または継続してシュウ酸塩レベルを制御するために永久に、1日2回以上投与することを含む。本方法は、a)約0.5%から約95%の生存可能な凍結乾燥されたシュウ酸塩低減細菌と、b)約95%から約0.5%の医薬上許容され得る賦形剤と、を含み、医薬送達用ベヒクルをさらに含む、存在するシュウ酸塩の一部を減少させる有効量のシュウ酸塩低減活性を人間または動物に投与することを含む、シュウ酸塩関連症状を予防するための方法を含む。医薬送達用ベヒクルは、粉末、丸剤、顆粒剤、坐剤、または錠剤を含むものであってもよい。製薬送達用ベヒクルは、カプセルを含むものであってもよい。これらの送達用ベヒクルはいずれも、腸溶コーティングを含むものであってもよい。このような腸溶コーティングは、ポリマー材料であってもよい。シュウ酸塩低減細菌は、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム(Clostridia)、ラクトバチルス(Lactobicilli)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外来性ポリヌクレオチド配列もしくは内在性ポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のベクターで形質転換された細菌であってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)であってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)HC1株であってもよい。本組成物は、凍結乾燥粉末として提供されるものであってもよい。この粉末は、粒度が約10ミクロンから約2000ミクロン、または約100ミクロンから約1000ミクロン、または約500ミクロンから約1500ミクロン、または約500ミクロンから約1000ミクロン、500から約1500ミクロン、またはその範囲内もしくはその近辺のあらゆる範囲であってもよい。本組成物は、二糖、トレハロースを含むものであってもよく、あるいは、アルギン酸塩はアルギン酸ナトリウムである。シュウ酸塩低減組成物は、cfu/gmが少なくとも約1E+03から約1E+13のシュウ酸塩低減細菌を含むものであってもよい。シュウ酸塩低減組成物は、シュウ酸塩酵素低減活性/gmが少なくとも約2mgのシュウ酸塩分解/時から約2500mgのシュウ酸塩分解/時であってもよい。本方法は、経口投与経路で投与することを含み得る。治療または予防できるシュウ酸塩関連症状としては、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸尿症、外陰部痛、末期腎不全に関連するシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、脂肪便、空回腸バイパス手術などの消化管手術を受けた患者、または抗生物質治療を受けた患者が挙げられる。
【0084】
シュウ酸塩低減医薬組成物の製造方法は、少なくとも約1E+03から約1E+13の濃度でシュウ酸塩低減細菌を提供するステップ;任意に、シュウ酸塩低減細菌と1種または複数種の医薬上許容され得る賦形剤を混合するステップ;細菌を凍結乾燥させるステップ;細菌を医薬送達用ベヒクルに充填または提供するステップを含む。このような賦形剤は、二糖、マルトデキストリン、アルジサイド、またはオリゴフルクトースのうちの1種または複数種を含むものであってもよい。シュウ酸塩低減細菌は、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム(Clostridia)、ラクトバチルス(Lactobicilli)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外来性ポリヌクレオチド配列もしくは内在性ポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のベクターで形質転換された細菌であってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)であってもよく、あるいはオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)HC1株であってもよい。医薬送達用ベヒクルは、粉末、丸剤、顆粒剤、坐剤、または錠剤であってもよい。送達用ベヒクル表面に腸溶コーティングがあってもよい。腸溶コーティングは、Eudragit(商標)を含むコーティングなどの、ポリマー性コーティングであってもよい。
【0085】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、文脈からそうでないことが特に明確な場合を除いて、単数形「a」、「an」および「the」は複数形も含むことに注意されたい。
【0086】
本明細書に含まれるすべての特許、特許出願および参照文献については、その全体を具体的に本明細書に援用する。
【0087】
当然のことながら、上記は本発明の好ましい実施形態に関するものにすぎず、本開示に記載の本発明の趣旨および範囲から逸脱することなくこれに多数の改変または変更を施すことができる旨を理解されたい。
【0088】
以下の記載は、本発明を実施するための手法を示す実施例である。これらの実施例は、本発明の範囲を限定するものとは決して解釈されるものではない。むしろ、本発明の趣旨および/または添付の特許請求の範囲に記載の範囲を逸脱することなく、本明細書に記載の説明を読了後に当業者らに示すであろう、様々な他の実施形態、改変、およびこれらと等価なものにつながる方策を有し得ることは明らかに理解されよう。
【実施例】
【0089】
実施例1 危険性の高い患者の治療
原発性高シュウ酸尿症の患者に、オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)の凍結乾燥粉末を含有する腸溶コーティングカプセルを、好ましくは日々の2回のご馳走と一緒に1日2回与えた。サイズ2の各カプセルには、少なくとも10個のコロニー形成単位(CFU)/グラムを含有する約137mgの凍結乾燥バルク粉末が入っていた。
【0090】
危険性の高い被験者の場合、これは生涯にわたる治療であってもよい。臨床研究の被験者では、治療を中止するとコロニー形成が減少することが示された。この臨床研究では、4週間にわたって治療を実施し、2週間のフォローアップを行った。4週間の治療の結果、血中および尿中のシュウ酸塩濃度が基線レベルと比較して有意に低下した。ただし、フォローアップ期間中、大便中のオキサロバクター数が減少し、血漿中および尿中のシュウ酸塩値が上昇しはじめた。このため、シュウ酸塩症状を抑えるにはシュウ酸塩低減組成物を連続的に与える必要があろうと思われる。消化管でコロニーを形成して連続的に自活できる細菌を含む組成物を用いることにより、必要なシュウ酸塩低減組成物の投与回数を減らすことができる。
【0091】
オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)細胞の腸溶コーティングカプセルを、シュウ酸塩関連疾患の危険性の高い患者集団に摂取させることができる。これらの患者には、下記の患者が含まれる。
1.たとえば、原発性高シュウ酸尿症のような遺伝子欠損のために、内在性シュウ酸塩の産生量が多すぎる人。
2.腸疾患(腸管高シュウ酸尿症)により尿中シュウ酸塩濃度が高い尿石症の危険性のある人。
3.特発性結石疾患の多数の症状発現を伴う尿石症歴を有する人。
4.末期腎疾患により血清シュウ酸塩濃度が高い人。
5.外陰部前庭炎のある人。
6.インドおよびサウジアラビアの特定の地域および特定の季節に見られるようなシュウ酸塩濃度が高い食餌を取る人。これには、シュウ酸塩濃度の高いホウレンソウなどの食物を偶然好む人々も含まれる。
【0092】
上述した人または動物のうちのいずれかに本発明の組成物を提供する。たとえば、内在性シュウ酸塩濃度が正常値よりも高い人は、その内容物を大腸に送達するように設計されたカプセルで1日2回治療され、ここで、カプセルには、約10cfuのオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)が入っている。このカプセルを好ましくは食物と一緒に与える。
【0093】
実施例2 危険性の低い患者の治療
腸溶コーティングカプセルに入れるなどして腸溶保護したオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)細胞を、シュウ酸塩関連疾患の危険性が低い集団の個体に摂取させることもできる。シュウ酸塩低減細菌などのシュウ酸塩低減材料の組成物を含む1回または2回の治療で、これらの患者にコロニーを形成することが望ましい。これらの患者はまた、栄養補助食品として、または乳もしくはヨーグルトなどの食物に添加する形態のいずれかとして、シュウ酸塩低減材料の治療薬を日常的に服用することも可能である。これらの患者には、下記の患者が含まれる。
1.経口抗生物質による治療または下痢性疾患の発作のために正常なシュウ酸分解菌の個体群を失った人。
2.乳幼児には、競争的排除則が作用する人生のより後の時期よりも、オキサロバクター(Oxalobacter)の正常な保護個体群がより容易に確立されるように、接種することが可能である。
【0094】
危険性の低い人または動物は、その内容物を大腸に送達するよう設計されたカプセルで1日2回治療され、ここで、カプセルには、少なくとも10cfuの1種または複数種のシュウ酸塩低減微生物(オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)など)が入っている。このカプセルを好ましくは食物と一緒に与える。
【0095】
実施例3 高シュウ酸尿症の制御を目的とする、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)由来のシュウ酸塩分解酵素の使用
高シュウ酸尿症の制御を目的とする、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)由来のシュウ酸塩分解酵素の効力を評価するための試験を実施した。
【0096】
使用した動物:雄のスプラーグ・ドーリーラット(Sprague Dawley Rats):BW250〜300g
使用した食餌:通常の食餌(N.D.):Harlan Teklad TD 89222;0.5%Ca、0.4%P
使用した薬剤:オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)溶解物(酵素の供給源)とオキサリルCoA、MgClおよびTPPとの凍結乾燥混合物。
薬剤送達系(カプセル):前臨床ラット試験用のサイズ9のカプセル(Capsugel)。腸溶コーティングEudragit(商標)L−100−55(Hulls America,Inc.)。基礎的な(basal)24時間尿採取。オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)についての糞便分析−ラットはオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)のコロニーを形成しなかった。
【0097】
実験プロトコール:
A.長期試験
動物プロトコール:
I群(n=4):シュウ酸塩飼料と溶解物を与えた。ラットには毎日午後4時に2個のカプセルを投与し、一晩中シュウ酸塩飼料を与えた。日中(午前8時〜午後4時)は飼料を与えなかった。
II群(n=4):I群で説明したようにしてシュウ酸塩飼料を与えた(高シュウ酸尿症対照)。
【0098】
上記処置の7日目と9日目に24時間尿試料を採取した。
【0099】
上記に示した2つの群におけるラットの平均尿中シュウ酸塩濃度に関するデータから、オキサロバクター溶解物を与えることにより、高シュウ酸尿症の対照(II群)と比較してI群のラットの尿中シュウ酸塩濃度が低下することが明らかになった。酵素は消化管内で長期間にわたって活性を保つことができないため、以下に示すようにして短期試験を実施した。
【0100】
B.短期試験
動物プロトコール:
I群(n=4):午前8時に1カプセルを与えた。シュウ酸塩飼料を2時間与え(この間によく食べるように、ラットを一晩絶食させた)、午前10時に1カプセルを与えた。
II群(n=4):I群と同様にしてシュウ酸塩飼料を2時間与えた。
【0101】
その後の5時間、すべての動物から尿を採取し、シュウ酸塩濃度について分析した。
【0102】
これを、この試験の11日目、12日目、および15日目に実施した。
【0103】
この試験の結果から、高シュウ酸尿症対照群(II群)と比較して、オキサロバクター溶解物を与えることにより、I群のラットにシュウ酸塩と薬剤とを投与した後の5時間の尿中シュウ酸塩濃度が有意に低下することが分かる。この時点で、両群のラット間の交差試験を実施した。
【0104】
C.交差試験
動物プロトコール:
I群:午前8時〜午前10時と午後3時〜午後5時の1日2回、シュウ酸塩飼料を与えた。
II群:I群と同様にシュウ酸塩飼料を与える前に、1日2回1カプセルを与えた。
【0105】
オキサロバクター溶解物を与えることにより尿中シュウ酸塩濃度にどのような影響がおよぶかについての短期試験を、交差試験の2日後および5日後に上記のセクションBで説明したようにして実施した。
【0106】
交差試験によって、以前は高シュウ酸尿症であったII群のラットにオキサロバクター溶解物を与えたところ、尿中シュウ酸塩濃度が低下することが分かった。一方、I群のラットは、薬剤を中止したため高シュウ酸尿症に戻ってしまった。
【0107】
実施例4 ラットに対するオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)細胞による治療
オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)細胞を飼料に混ぜた場合に食餌性シュウ酸塩がどのようになるかを評価するための試験を実施した。
【0108】
方法:
2つの別の実験で、雄のウィスターラットに、通常のカルシウム(1%)、高シュウ酸塩(0.5%)の飼料、または低カルシウム(0.02%)、高シュウ酸塩(0.5%)の飼料を与えた。14C−シュウ酸塩(2.0μCi)を試験の1日目に与え、試験の7日目にも与えた。5〜11日目にラットの飲み水にオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)細胞(380mg/d)に入れて投与した。糞、尿、呼気中の14Cの分析結果に基づいて、シュウ酸塩の14Cがどのようになるのかを測定した。ラットは自己対照として機能し、(オキサロバクター細胞を与える前の)対照期間での測定を1〜4日目に実施した。(細菌細胞を与えた)実験期間中は、7〜11日目に測定を実施した。
【0109】
結果:
1.ラットに通常の(1%)カルシウム飼料を与えた場合、投与したシュウ酸塩の14Cの1%未満が呼気中に回収された(腸内の14Cシュウ酸塩から生成され、血液に吸収され、呼気に排出された二酸化炭素として)が、いずれの場合も、オキサロバクター細胞をラットに与えた期間中は、さらに多くの14Cが回収された(図1a)。これは、飼料が低カルシウム(0.02%)である場合に得られる結果と対照的であり、低カルシウムの場合は、オキサロバクター細胞をラットに与えた実験期間中に、シュウ酸塩由来の14Cが50%を上回る量で呼気中の二酸化炭素として回収された(図1b)。これらの結果は、(オキサロバクター細胞を与える前の)対照期間中に回収される非常に少量の14C(5%未満)とは著しく異なる。このように、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)細胞をラットに与えると、腸管で分解される食餌性シュウ酸塩の量が大幅に増加した。
【0110】
2.オキサロバクター細胞を与えると、尿中に排泄される14C−シュウ酸塩の量も低下した。対照期間と実験期間の両方における4日間の回収物の値を図2aに、これらの期間各々の1日の回収物の値を図2bにそれぞれ示す。ラット糞中に回収されたシュウ酸塩の量も、対照期間中に見られたものと比較すると、実験期間(オキサロバクター細胞を与えた)のほうが低かった(図2c)。
【0111】
ほとんどの実験用のラットは腸管にオキサロバクターを持っていなかった(コロニーを形成していなかった)。ここで得られた結果から、これらのシュウ酸分解菌をラットに対して意図的に投与することにより、食餌性シュウ酸塩の大部分が分解され、結果として飼料からのシュウ酸塩は少量しか尿には排泄されないことが明らかになった。
【0112】
飼料中のカルシウムがシュウ酸塩の分解に対して及ぼす影響は顕著である。カルシウムはシュウ酸塩との間で錯体を形成するので、その溶解度およびオキサロバクターによる分解の余地が制限され、ラットに高カルシウム飼料を与えたときに分解される量は、飼料中のカルシウム濃度が低いときに分解される量よりはるかに少ない。
【0113】
実施例5 オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)を与えることによるブタの尿中シュウ酸塩排泄に対する影響
ブタには本来、オキサロバクターのコロニーが形成される。飼料に抗生物質を添加することにより、実験用のブタにコロニーが形成されないようにした。ブタが簡単に食べることのできる培養ブロスにオキサロバクターを入れてブタに与えた。このブタに、ダイズ/トウモロコシを主成分とする餌にシュウ酸塩を体重1kgあたり1300mgの量で加えて与えた。基本飼料にはシュウ酸塩680mg/kgが含まれていた。3頭のブタについての結果を図3a〜図3cに示す。
【0114】
3頭のブタのいずれにおいても、オキサロバクター(Oxalobacter)を摂取している間は尿中シュウ酸塩が劇的に減少した。これらのブタでのシュウ酸塩の排泄濃度が、3頭のブタすべてにおいて約6mg/gクレアチニンという最低値にまで低下した。これは、シュウ酸塩を含まない食餌を取っている人で観察される8〜10mg/gクレアチニンの濃度に匹敵する。この濃度は、食餌による負荷を取り除いた際に人間で内因的に合成される濃度と等しい。この濃度は、ブタでの内因的な合成を反映し、オキサロバクターを用いた治療によって腸内吸収が起こらなくなるように思われる。さらに、これらの結果から、摂取したオキサロバクターによって、添加した結晶性シュウ酸塩と生体利用可能な食物由来のシュウ酸塩の両方を除去できるということが分かる。
【0115】
この実験では、それぞれのブタに朝の餌と一緒に1.0gの細胞ペーストを与えた。OD600が0.6で、生存可能な細胞数が2.1×10細胞/mlであり、これは推定で100Lあたり2.1×1013細胞である。100L容の発酵槽での実施によって、湿重量で平均50〜60gmの細胞が得られる。したがって、湿重量1gmの細胞が生存可能な細胞約3.5×1011個となる。
【0116】
上述したような生存可能な細胞3.5×1011個の量で、飼料1kgあたりに存在するシュウ酸塩約2.0gm(添加したシュウ酸塩1300mg+飼料中のシュウ酸塩680mg)の腸内吸収をなくすことができた。ブタは1回の食餌で飼料1kgを食べた。
【0117】
ブタの体重は約200ポンドであり、ブタの消化器官は人間の消化器官に極めて近いと考えられている。人間の場合、食餌の組成にもよるが、1日の平均シュウ酸塩摂取量は約100〜400mgで、これが1日3回の食事に分けられるため、食餌からのシュウ酸塩の吸収を予防するには平均で1日用量10から1010個の生存可能な細胞があれば十分であろう。
【0118】
実施例6 オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)の添加が高シュウ酸塩飼料を与えたラットの尿中シュウ酸塩排泄に対して及ぼす影響
高シュウ酸塩飼料を与えた後にIxOC−3製剤がコロニー形成状態および尿中シュウ酸塩濃度に対して及ぼす影響を判断するための実験を実施した。IxOC−3製剤は、オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)などのシュウ酸塩低減細菌の生存可能な凍結乾燥細胞を含む。この製剤は、1用量あたり約10〜10cfu/グラムを含有する。製剤は、トレハロースおよびマルトデキストリンなどの凍結保護剤も含む。
【0119】
方法:
雄のハーラン・スプラーグ・ドーリー(Harlan Sprague Dawley)ラットを無作為に3つの群(6匹/群)に振り分けた。第1群のラットを対照群として、サイズ9の腸溶コーティングされたプラセボ製剤を1日2回、用量レベル10のコロニー形成単位(CFU)で強制経口投与した。第2群および第3群のラットには、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)IxOC−3製剤をサイズ9の腸溶コーティングカプセル形態で1日2回、それぞれ用量レベル10および10CFUで強制経口投与した。カプセルの強制投与に続いて、オートクレーブ処理した水道水で3つの群すべてをきれいに洗った。初期順化期間の後、すべての群に1gあたり1%のシュウ酸塩を加えた標準飼料を与えた。
【0120】
被験材料およびプラセボ対照材料については、標準的なプロトコールに従って調製した。使用する前に、各被験材料の代表的な試料を分析して、被験カプセルの同一性、純度および力価を確認するとともに、プラセボ対照材料には投薬期間中オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)が含まれていないことを確認した。
【0121】
空腹時の胃にカプセルが確実に投与されるように、飼料を朝夕の強制投与の15分後から1時間で1日2回に制限した。水は随意に与えた。食物摂取を1日2回記録した。1日目(シュウ酸塩添加飼料摂取の前)、およびその後は1週間ごとに、糞便および24時間尿試料を回収した。平均尿パラメータの差異を調べる反復測定分析によって、投与群および時間ごとの尿データを分析した。投与群と時間との間に何らかの相互作用があるのかどうかを見極めるために、時間相互作用項による投与群も含めた。
【0122】
結果:
時間ごとの尿パラメータ特性が投与群ごとに異なることから、すべてのパラメータで投与群と時間との間に統計的に有意な相互作用(p<0.0001)があることが分析結果から明らかになった。この相互作用を解釈しやすくするために、各パラメータの時点でのデータ分析を実施し、平均尿パラメータについて投与群の間で違いがあるかどうかを判断した。この分析によって、低用量および高用量の群では、尿中シュウ酸塩が、7日間までは基線から増加(両群ともp<0.0001)したが、7日間から28日間までは増加は認められなかった(低用量群でp=0.1094、および高用量群でp=0.6910)ことが明らかになった。しかしながら、プラセボ群では、28日間までは基線から増加(p=0.0010)した。また、21日目および28日目に、プラセボの第I群で低用量群(II群)および高用量群(III群)の場合に比して平均尿中シュウ酸塩濃度が有意に高くなったが、低用量群と高用量群とでは大きな差異は見られなかった。このように、プラセボ製剤を与えたラットと比較して治療対象となったラットでは、尿中シュウ酸塩の排泄が全体として有意に減少した。
【0123】
実施例7 オキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)の経口投与が原発性高シュウ酸尿症(PH)患者の尿中シュウ酸塩濃度に与える影響
方法:
生検組織から原発性高シュウ酸尿症(PH)であることが証明された9名の患者が本研究に参加した。最初に基線評価を行った後、4週間にわたって被験者全員に主な食事と一緒にオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)1gの細胞ペースト(≧1010cfu/グラム)を投与した。この期間中、患者はいずれもそれまでと同じ薬物療法を受け続け、通常の食餌を取った上で水分摂取量を通常と同じように高く維持するよう求められた。ホウレンソウとルバーブを除いて、シュウ酸塩含有量の多い食物は禁止しなかった。オキサロバクター(Oxalobacter)のコロニー形成と、これが尿中および血漿中のシュウ酸塩濃度に及ぼす影響とを5週目および6週目に測定した。腎機能が正常な被験者では尿中シュウ酸塩排泄に関して、末期腎不全(ESRD)の被験者では血漿シュウ酸塩に関して、治療の効力を追跡調査した。
【0124】
結果:
1.治療によって、尿機能が正常な被験者の尿中シュウ酸塩が有意に低下することが示された。9名のうち7名の被験者で血漿シュウ酸塩が有意に低下した。2名のESRD被験者で血漿シュウ酸塩の劇的な減少が認められたが、これは、経上皮的な勾配に反して、消化管に入る内在性シュウ酸塩が腸内除去されるという証拠が得られた。
【0125】
2.食事1回あたり0.25gから2.0gの範囲の投与量でオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)HC1株を摂取すると、シュウ酸塩濃度が平均的または高い食餌を取っている正常な健常の志願者では十分に耐えることができた。細胞ペースト1.0gmの投与量で28日間にわたって1日2回の投与では、PH患者が十分に耐えることができた。
【0126】
実施例8 シュウ酸塩低減酵素組成物による危険性の高い患者の治療
原発性高シュウ酸尿症患者に、シュウ酸デカルボキシラーゼおよび/またはシュウ酸オキシダーゼを含む凍結乾燥シュウ酸塩低減酵素組成物を含有する1個以上の腸溶コーティングカプセルを、1日2回、好ましくは毎日2回の主な食事と一緒に与える。有効量の酵素組成物が投与される。たとえば、サイズ2のカプセル各々に、各酵素約5〜100単位を含有する。
【0127】
危険性の高い被験者の場合、これは長期間にわたる連続投与であり、おそらくは生涯を通じての治療になる。治療を中止するとコロニー形成が減少する。
【0128】
シュウ酸塩低減酵素を含むシュウ酸塩低減組成物の腸溶コーティングカプセルを、シュウ酸塩関連疾患の危険性の高い患者集団に投与することができる。これらの患者には、下記の患者が含まれる。
1.たとえば、原発性高シュウ酸尿症のような遺伝子欠損のために内在性シュウ酸塩の産生量が多すぎる人。
2.腸疾患(腸管高シュウ酸尿症)により尿中シュウ酸塩濃度が高い尿石症の危険性のある人。
3.特発性結石疾患の多数の症状発現を伴う尿石症歴を有する人。
4.末期腎疾患により血清シュウ酸塩濃度が高い人。
5.外陰部前庭炎のある人。
6.インドおよびサウジアラビアの特定の地域および特定の季節に見られるようなシュウ酸塩濃度が高い食餌を取る人。これには、シュウ酸塩濃度の高いホウレンソウなどの食物を偶然好む人々も含まれる。
【0129】
上述した人または動物のうちのいずれかに本発明の組成物を提供する。たとえば、内在性シュウ酸塩濃度が正常値よりも高い人は、その内容物を大腸に送達するよう設計されたカプセルで1日2回治療され、ここで、カプセルには、10cfuのオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)などのシュウ酸塩低減細菌で得られる酵素活性と同様の酵素活性を有する酵素組成物がほぼ同じ有効量で入っている。このカプセルは、好ましくは食物と一緒に与える。
【0130】
実施例9 シュウ酸塩低減酵素組成物による危険性の低い患者の治療
腸溶コーティングカプセルに入れるなどして腸溶保護した、シュウ酸塩低減酵素(シュウ酸デカルボキシラーゼおよび/またはシュウ酸オキシダーゼ)の混合物を含むシュウ酸塩低減組成物もまた、シュウ酸塩関連疾患の危険性が低いかまたはシュウ酸塩関連症状の危険性のある集団の個体に投与することができる。有効量の酵素組成物を所望の治療計画で投与する。
【0131】
これらの患者には、シュウ酸塩関連症状の危険性があるのならば期間を短くして、あるいはシュウ酸塩関連症状の一因となる物質と同時に、本組成物を投与すると望ましいであろう。これらの患者はまた、栄養補助食品として、または乳もしくはヨーグルトなどの食物に添加する形態のいずれかとして、シュウ酸塩低減組成物の治療薬を日常的に服用することも可能である。これらの患者には、経口抗生物質による治療もしくは下痢性疾患の発作のために正常なシュウ酸分解菌の個体群を失った人、または乳幼児が含まれる。
【0132】
危険性の低い人または動物は、その内容物を大腸に送達するよう設計されたカプセルで1日2回治療され、ここで、カプセルには有効量の酵素組成物が入っている。たとえば、サイズ2の各カプセルに各酵素約5〜100単位が入っている。このカプセルは、好ましくは食物と一緒に与える。
【0133】
実施例10 凍結乾燥オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)を含有する腸溶コーティングカプセルの製造方法
オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)細胞ペースト200グラムを使用した。この細胞ペーストは、発酵直後の新鮮なものであってもよいし、解凍した凍結ストック溶液から得たものであってもよい。100mMのトレハロース冷凍保護溶液または抗凍結溶液を細胞ペーストと混合した。この溶液を絶えず攪拌した。続いて、この混合物を賦形剤混合物と混合した。賦形剤混合物には、マルトデキストリンM500とアルギン酸ナトリウムを混合し、79%Raftilose P95溶液に加えたものを用いた。続いて、この細胞ペースト混合物を凍結乾燥トレイに注いだ。その後、充填されたトレイをEdwards Lyofast S24乾燥機(任意の好適なタイプの乾燥機を用いることができる)で、40〜65時間(製造工程によって変更可能)凍結乾燥させた。凍結乾燥後、乾燥ケーキを手で砕き、USサイズ20の篩に押し付けて通した。これによって、粒度<850μmの粉末が得られた。
【0134】
乾燥粉末を篩過すれば、カプセルに充填できる状態になる。手動のカプセル充填装置を用いてカプセルに充填したが、自動充填機などの、任意のカプセル充填方法も使用可能である。ほとんどの場合、サイズ2のカプセルを使用した。これらのカプセルに、水性コーティング工程を用いて、Eudragit(商標)(Rhom Pharma(Degussa)から商業入手可能)などの腸溶コーティングポリマーでコーティングしたが、溶媒コーティング工程を利用することも可能である。この企業は、さまざまなpHで特異的に溶解する多くの異なるタイプのEudragit(商標)ポリマーを製造している。
【0135】
標準的な技法でコーティングを実施した。Eudragit(商標)ポリマーはメタクリル酸ポリマーおよびコポリマーである。たとえば、Eudragit L100−55はメタクリル酸コポリマータイプCであり、Eudragit L30はメタクリル酸コポリマー分散液であり、Eudragit S100はメタクリル酸コポリマータイプBである。これらの腸溶コーティングおよび他の腸溶コーティングは当該技術分野において知られている。
【0136】
水性コーティング
膜形成剤であるEudragit FS30Dと膜形成剤であるEudragit L30D55とを、可塑剤、脱粘着剤、および担体(水や医薬分野で知られているものなど)などの、他の材料と一緒に使用した。
【0137】
800グラムのカプセルをコーティング懸濁液でコーティングし、USP崩壊プロファイルを持つ均一コーティングカプセルを得た。崩壊プロファイル:人工胃液(pH1.2)では1時間では崩壊が起こらず、人工腸液(pH6.8)では1時間以内に完全な崩壊が起こる。
【0138】
溶媒コーティング工程:
膜形成剤であるEudragit L100−55、および膜形成剤であるEudragit S100は、可塑剤、脱粘着剤、および担体(水や医薬分野で知られているものなど)などの、他の材料と一緒に用いることが可能である。
【0139】
800グラムのカプセルをコーティング懸濁液でコーティングし、USP崩壊プロファイルを持つ均一コーティングカプセルを得た。崩壊プロファイル:人工胃液(pH1.2)では1時間では崩壊が起こらず、人工腸液(pH6.8)では1時間以内に完全な崩壊が起こる。
【0140】
実施例11
実施例10の方法で製造した経口送達カプセルについて、1年を超える試験での7つの別々の実験で、以下のデータが得られた。このようにして製造した医薬組成物の安定性を、細菌生存度およびシュウ酸塩分解活性の観点から評価した。以下の表すなわち表1は、7つの製造工程と、生存可能なシュウ酸塩低減細菌、特にオキサロバクター・フォルミジェネス(O.formigenes)を含む腸溶コーティングカプセルを含む医薬組成物の安定性とを示す。
【0141】
【表1】

【0142】
別の例を以下の表2のデータに示す。
【0143】
【表2】

【0144】
オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)を用いて実施例10の方法で製造したシュウ酸塩低減細菌を含む凍結乾燥粉末について、、安定性データを表2Aに示す。
【0145】
【表3】

【0146】
別の製造工程では、以下のデータが得られた。
【0147】
【表4】

【0148】
実施例13 生存可能なオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)の医薬組成物の経口送達用製剤
【0149】
【表5】

【0150】
たとえば、Sigma Co.からトレハロースを得ることができる。トレハロースは二糖であり、本発明の製剤は、マルトース、ラクトース、セロビオース、スクロース、ジグルコース、またはトレハロースなどの二糖を含むものであった。マルトデキストリン QD M−500はDE値が10であり、白色粉末または顆粒状の白色粉末である。これは甘味がなく、主にα−1,4結合で連結されたD−グルコース単位からなる、栄養素である糖ポリマーである。DEは、デキストロース当量、すなわちデンプンポリマー加水分解の度合いを示す定量的尺度である。DEが高くなればなるほど、デンプン加水分解の度合いが大きくなる。アルギン酸ナトリウムなどの安定剤も本製剤の成分であるが、これはまた、安定剤、増粘剤、ゲル化剤、または乳化剤としても利用されている。アルギン酸ナトリウムは、藻から蒸留された天然アミロース炭水化物である。これは、食物、医薬品、テキスタイル、印刷および染色、製紙、日用化学品などにおいて、増粘剤、乳化剤、安定剤、および結合剤などとして広く用いられている。分子式が(CNa)である、白色または淡黄色の非晶質(vagiform)粉末であり、無臭、無味、水溶性で、エタノールおよびエーテルには不溶性である。Raftilose P95は、オリゴフルクトースDPからDPを95%と糖類(グルコース、フルクトースおよびスクロース)(5%)とからなる粉末である。
【0151】
【表6】



【0152】
本明細書にて説明した実施例および実施形態は例示目的のものにすぎず、これに照らしてさまざまな改変または変更が当業者に示唆されることになるが、これは本出願の趣旨および範囲ならびに添付の特許請求の範囲内に含まれることを理解されたい。
【図面の簡単な説明】
【0153】
【図1A】図1Aは、高カルシウム飼料から得られるデータのグラフである。
【図1B】図1Bは、低カルシウム飼料から得られるデータのグラフである。
【図2A】図2Aは、排泄されたシュウ酸塩のグラフである。
【図2B】図2Bは、排泄されたシュウ酸塩のグラフである。
【図2C】図2Cは、排泄されたシュウ酸塩のグラフである。
【図3】図3A〜3Cは、排泄されたシュウ酸塩のグラフである。
【図4】排泄されたシュウ酸塩のグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人間または動物におけるシュウ酸塩濃度を低下させるための組成物であって、
a)約0.5%から約95%のシュウ酸塩低減細菌と、
b)約0.1%から約50%の二糖と、
c)約3%から約85%のマルトデキストリンと、
d)約0.5%から約25%のアルギン酸塩と、
e)約1.0%から約60%のオリゴフルクトースと、
を含むシュウ酸塩低減組成物を含む経口送達用ベヒクルを含む組成物。
【請求項2】
前記経口送達用ベヒクルが、粉末、カプセル、丸剤、顆粒剤、または錠剤を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記経口送達用ベヒクルの表面に腸溶コーティングをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記腸溶コーティングがポリマー材料である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(pseudomonads)、クロストリジウム(clostridia)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外来性ポリヌクレオチド配列もしくは内在性ポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のベクターで形質転換された細菌である、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記シュウ酸塩低減細菌がオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)である、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記シュウ酸塩低減細菌がオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)HC1株である、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記シュウ酸塩低減組成物が凍結乾燥粉末を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記粉末の粒度が約10ミクロンから約2000ミクロンである、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記二糖がトレハロースである、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
前記アルギン酸塩がアルギン酸ナトリウムである、請求項1に記載の組成物。
【請求項12】
前記シュウ酸塩低減組成物が、少なくとも約1E+03から約1E+13 cfu/gmのシュウ酸塩低減細菌を含むものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
前記シュウ酸塩低減組成物のシュウ酸塩酵素低減活性/gmが少なくとも約2mgのシュウ酸塩分解/時から約2500mgのシュウ酸塩分解/時である、請求項1に記載の組成物。
【請求項14】
人間または動物におけるシュウ酸塩濃度を低下させるための組成物であって、
a)約3%から約25%のシュウ酸塩低減細菌と、
b)約1.5%から約6%の二糖と、
c)約45%から約60%のマルトデキストリンと、
d)約4%から約6%のアルギン酸塩と、
e)約20%から約35%のオリゴフルクトースと、
を含む組成物を含む送達用ベヒクルを含む組成物を含むシュウ酸塩低減組成物を含む経口送達用ベヒクルを含む、組成物。
【請求項15】
a)約0.5%から約95%の生存可能な凍結乾燥されたシュウ酸塩低減細菌と、
b)約95%から約0.5%の医薬上許容され得る賦形剤と、
を含む、存在するシュウ酸塩の一部を減少させる有効量のシュウ酸塩低減活性を含む、シュウ酸塩低減のための組成物。
【請求項16】
医薬送達用ベヒクルをさらに含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記医薬送達用ベヒクルが、粉末、カプセル、丸剤、顆粒剤、坐剤、または錠剤を含む、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
前記医薬送達用ベヒクルがカプセルを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記カプセルの表面に腸溶コーティングをさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記腸溶コーティングがポリマー材料である、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外来性ポリヌクレオチド配列もしくは内在性ポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のベクターで形質転換された細菌である、請求項15に記載の組成物。
【請求項22】
前記シュウ酸塩低減細菌がオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記シュウ酸塩低減細菌がオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)HC1株である、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記組成物が粉末である、請求項15に記載の組成物。
【請求項25】
前記粉末の粒度が約10ミクロンから約2000ミクロンである、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
前記組成物が、少なくとも約1E+03から約1E+13 cfu/gmのシュウ酸塩低減細菌を含むものである、請求項15に記載の組成物。
【請求項27】
前記組成物のシュウ酸塩酵素低減活性/gmが少なくとも約2mgのシュウ酸塩分解/時から約2500mgのシュウ酸塩分解/時である、請求項15に記載の組成物。
【請求項28】
人間または動物においてシュウ酸塩濃度を低下させるための方法であって、
人間または動物に、
a)約0.5%から約95%または3%から約25%のシュウ酸塩低減細菌と、
b)約0.1%から約50%または1.5%から約6%の二糖と、
c)約3%から約85%または45%から約60%のマルトデキストリンと、
d)約0.5%から約25%または4%から約6%のアルギン酸塩と、
e)約1.0%から約60%または20%から約35%のオリゴフルクトースと、
を含むシュウ酸塩低減組成物を含む送達用ベヒクルを含む組成物を有効量で投与することを含む、前記方法。
【請求項29】
前記送達用ベヒクルが、坐剤、カプセル、丸剤、顆粒剤、または錠剤を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記送達用ベヒクルの表面に腸溶コーティングをさらに含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記腸溶コーティングがポリマー材料である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外来性ポリヌクレオチド配列もしくは内在性ポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のベクターで形質転換された細菌である、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記シュウ酸塩低減細菌がオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記シュウ酸塩低減細菌がオキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)HC1株である、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記経口送達用ベヒクルが、凍結乾燥粉末を含むシュウ酸塩低減組成物を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記粉末の粒度が約10ミクロンから約2000ミクロンである、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記二糖がトレハロースである、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記アルギン酸塩がアルギン酸ナトリウムである、請求項28に記載の方法。
【請求項39】
前記シュウ酸塩低減組成物が、少なくとも約1E+03から約1E+13 cfu/gmのシュウ酸塩低減細菌を含むものである、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
前記シュウ酸塩低減組成物のシュウ酸塩酵素低減活性/gmが少なくとも約2mgのシュウ酸塩分解/時から約2500mgのシュウ酸塩分解/時である、請求項28に記載の方法。
【請求項41】
前記投与することが、経口経路の投与によるものである、請求項28に記載の方法。
【請求項42】
シュウ酸塩関連症状を予防するための方法であって、
人間または動物に、
a)約0.5%から約95%または3%から約25%のシュウ酸塩低減細菌と、
b)約0.1%から約50%または1.5%から約6%の二糖と、
c)約3%から約85%または45%から約60%のマルトデキストリンと、
d)約0.5%から約25%または4%から約6%のアルギン酸塩と、
e)約1.0%から約60%または20%から約35%のオリゴフルクトースと、
を含むシュウ酸塩低減組成物を含む経口送達用ベヒクルを含む組成物を有効量で投与することを含む、前記方法。
【請求項43】
前記経口送達用ベヒクルが、カプセル、丸剤、顆粒剤、または錠剤を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記経口送達用ベヒクルの表面に腸溶コーティングをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記腸溶コーティングがポリマー材料である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記経口送達用ベヒクルが、ポリマー材料を含む腸溶コーティングが施されたカプセルを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項47】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外来性ポリヌクレオチド配列もしくは内在性ポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のベクターで形質転換された細菌である、請求項42に記載の方法。
【請求項48】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)HC1株である、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記経口送達用ベヒクルが、凍結乾燥粉末を含むシュウ酸塩低減組成物を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項51】
前記粉末の粒度が約10ミクロンから約2000ミクロンである、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記二糖がトレハロースである、請求項42に記載の方法。
【請求項53】
前記アルギン酸塩がアルギン酸ナトリウムである、請求項42に記載の方法。
【請求項54】
前記シュウ酸塩低減組成物が、少なくとも約1E+03から約1E+13 cfu/gmのシュウ酸塩低減細菌を含むものである、請求項42に記載の方法。
【請求項55】
前記シュウ酸塩低減組成物のシュウ酸塩酵素低減活性/gmが少なくとも約2mgのシュウ酸塩分解/時から約2500mgのシュウ酸塩分解/時である、請求項42に記載の方法。
【請求項56】
前記シュウ酸塩関連症状が、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸尿症、外陰部痛、末期腎不全に関連するシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、脂肪便、空回腸バイパス手術などの消化管手術を受けた患者、または抗生物質治療を受けた患者である、請求項42に記載の方法。
【請求項57】
前記組成物が1日2回以上投与される、請求項42に記載の方法。
【請求項58】
人間または動物においてシュウ酸塩関連症状を治療するための方法であって、
人間または動物に、
a)約0.5%から約95%または3%から約25%のシュウ酸塩低減細菌と、
b)約0.1%から約50%または1.5%から約6%の二糖と、
c)約3%から約85%または45%から約60%のマルトデキストリンと、
d)約0.5%から約25%または4%から約6%のアルギン酸塩と、
e)約1.0%から約60%または20%から約35%のオリゴフルクトースと、
を含むシュウ酸塩低減組成物を含む経口送達用ベヒクルを含む組成物を有効量で投与することを含む、前記方法。
【請求項59】
前記経口送達用ベヒクルが、粉末、カプセル、丸剤、顆粒剤、または錠剤を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記経口送達用ベヒクルの表面に腸溶コーティングをさらに含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記腸溶コーティングがポリマー材料である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記経口送達用ベヒクルが、ポリマー材料を含む腸溶コーティングが施されたカプセルを含む、請求項58に記載の方法。
【請求項63】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外来性ポリヌクレオチド配列もしくは内在性ポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のベクターで形質転換された細菌である、請求項58に記載の方法。
【請求項64】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)HC1株である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記経口送達用ベヒクルが、凍結乾燥粉末を含むシュウ酸塩低減組成物を含む、請求項58に記載の方法。
【請求項67】
前記粉末の粒度が約10ミクロンから約2000ミクロンである、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記二糖がトレハロースである、請求項58に記載の方法。
【請求項69】
前記アルギン酸塩がアルギン酸ナトリウムである、請求項58に記載の方法。
【請求項70】
前記シュウ酸塩低減組成物が、少なくとも約1E+03から約1E+13 cfu/gmのシュウ酸塩低減細菌を含むものである、請求項58に記載の方法。
【請求項71】
前記シュウ酸塩低減組成物のシュウ酸塩酵素低減活性/gmが少なくとも約2mgのシュウ酸塩分解/時から約2500mgのシュウ酸塩分解/時である、請求項58に記載の方法。
【請求項72】
前記シュウ酸塩関連症状が、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸尿症、外陰部痛、末期腎不全に関連するシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、脂肪便、空回腸バイパス手術などの消化管手術を受けた患者、または抗生物質治療を受けた患者である、請求項58に記載の方法。
【請求項73】
前記組成物が1日2回以上投与される、請求項58に記載の方法。
【請求項74】
シュウ酸塩関連症状を予防するための方法であって、
人間または動物に、
a)約0.5%から約95%の生存可能な凍結乾燥されたシュウ酸塩低減細菌と、
b)約95%から約0.5%の医薬上許容され得る賦形剤と、
を含む、存在するシュウ酸塩の一部を減少させる有効量のシュウ酸塩低減活性を投与することを含む、前記方法。
【請求項75】
医薬送達用ベヒクルをさらに含む、請求項74に記載の方法。
【請求項76】
前記医薬送達用ベヒクルが、粉末、カプセル、丸剤、顆粒剤、坐剤、または錠剤を含む、請求項75に記載の方法。
【請求項77】
前記医薬送達用ベヒクルがカプセルを含む、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
前記カプセルの表面に腸溶コーティングをさらに含む、請求項77に記載の方法。
【請求項79】
前記腸溶コーティングがポリマー材料である、請求項78に記載の方法。
【請求項80】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム(Clostridia)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外来性ポリヌクレオチド配列もしくは内在性ポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のベクターで形質転換された細菌である、請求項74に記載の方法。
【請求項81】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)である、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)HC1株である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
前記組成物が粉末である、請求項74に記載の方法。
【請求項84】
前記粉末の粒度が約10ミクロンから約2000ミクロンである、請求項83に記載の方法。
【請求項85】
前記組成物が、少なくとも約1E+03から約1E+13 cfu/gmのシュウ酸塩低減細菌を含むものである、請求項74に記載の方法。
【請求項86】
前記組成物のシュウ酸塩酵素低減活性/gmが少なくとも約2mgのシュウ酸塩分解/時から約2500mgのシュウ酸塩分解/時である、請求項74に記載の方法。
【請求項87】
前記シュウ酸塩関連症状が、高シュウ酸尿症、原発性高シュウ酸尿症、特発性シュウ酸カルシウム腎石症(尿石症)、腸管高シュウ酸尿症、外陰部痛、末期腎不全に関連するシュウ酸症、心臓伝導障害、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、クローン病、脂肪便、空回腸バイパス手術などの消化管手術を受けた患者、または抗生物質治療を受けた患者である、請求項74に記載の方法。
【請求項88】
シュウ酸塩低減医薬組成物の製造方法であって、
a)少なくとも約1E+03から約1E+13の濃度でシュウ酸塩低減細菌を提供するステップ、
b)任意に、前記シュウ酸塩低減細菌と1種または複数種の医薬上許容され得る賦形剤とを混合するステップ、
c)前記細菌を凍結乾燥させるステップ、
d)前記細菌を医薬送達用ベヒクルに充填するステップ
を含む、前記方法。
【請求項89】
前記賦形剤が、二糖、マルトデキストリン、アルジサイド、またはオリゴフルクトースのうちの1種または複数種を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項90】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)、シュードモナス(Pseudomonas)、クロストリジウム(Clostridia)、ラクトバチルス(Lactobacillus)、ビフィドバクテリウム(Bifidobacteria)、またはシュウ酸塩低減酵素をコードする外来性ポリヌクレオチド配列もしくは内在性ポリヌクレオチド配列を含む1種または複数種のベクターで形質転換された細菌である、請求項88に記載の方法。
【請求項91】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記シュウ酸塩低減細菌が、オキサロバクター・フォルミジェネス(Oxalobacter formigenes)HC1株である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
前記医薬送達用ベヒクルが、粉末、カプセル、丸剤、顆粒剤、坐剤、または錠剤を含む、請求項88に記載の方法。
【請求項94】
前記医薬送達用ベヒクルがカプセルを含む、請求項93に記載の方法。
【請求項95】
e)前記カプセルの表面に腸溶コーティングを施すステップをさらに含む、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
前記腸溶コーティングがポリマー材料である、請求項95に記載の方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−519333(P2009−519333A)
【公表日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−545553(P2008−545553)
【出願日】平成17年12月14日(2005.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2005/045457
【国際公開番号】WO2007/070052
【国際公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【出願人】(508178191)オクセラ インコーポレイテッド (4)
【出願人】(508178180)
【Fターム(参考)】