説明

シュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキ

【課題】ブレーキシューと回転ドラムとの摩擦熱が従来に比較して速やかに伝達され、且つ、アジャストレバーと直接係合せずにシュー間隙の自動調節が抑制される感温変形部材を有するシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキを提供する。
【解決手段】感温変形部材66は、ストラット52のブレーキシュー18側の端部に固定されており、感温変形部材120がストラット112の中央部に配置される従来のものに比較して、制動時におけるブレーキドラム12とブレーキシュー18との摩擦熱が速やかに伝達される。温度上昇に伴って感温変形部材66が変形すると、ストラット52がブレーキシュー20に接近する方向に押圧されるので、ブレーキシュー18、20が拡開しても、感温変形部材66によってストラット52がブレーキシュー18に接近する方向に移動することが防止され、アジャストレバー54と直接係合せずにシュー間隙の自動調節が抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキに関し、特にそのシュー間隙自動調節機構におけるシュー間隙自動調節機能の信頼性を向上させる技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ドラムブレーキには、例えば図7および図8に示すように、(a) ブレーキシュー102の一端部に係合する第1係合部104aを有する長手状の第1ストラット部材104と、ブレーキシュー106の一端部に係合する第2係合部108aを有する長手状の第2ストラット部材108と、その第2ストラット108の第2係合部108aと第1ストラット部材104の第1係合部104aとの間に配設され、回動させられることによってその第1係合部104aと第2係合部108aとの間の距離を伸長させるアジャスティングホイール110とを備え、非制動時における一対のブレーキシュー102および106の待機位置を規定するストラット112と、(b) アジャスティングホイール110に係合するレバー部114aと、そのレバー部材114aとブレーキシュー102との間に張設されたスプリング115の付勢力により第1ストラット部材104の第1係合部104aに当接してストラット112を一対のブレーキシュー102および106の他方106側に付勢する当接部114bとを備え、一対のブレーキシュー102および106が前記待機位置から拡開させられることによって、ストラット112がその当接部114bにより一対のブレーキシュー102および106の他方106側に移動すると共にその移動の距離に応じてレバー部114aによりアジャスティングホイール110を一方向に回動させるアジャストレバー114とを有し、(c) アジャストレバー114によってアジャスティングホイール110が回動させられることによりストラット112が伸長し、非制動時における一対のブレーキシュー102および106と回転ドラム116との間のシュー間隙を自動的に調節するシュー間隙自動調節機構118を備えるものがある。
【0003】
一般に、ドラムブレーキの制動時における一対のブレーキシュー102および106と回転ドラム116との摩擦熱により、回転ドラム116の温度が上昇してその回転ドラム116の内径が拡径することがある。このため、上記のようなドラムブレーキには、前記摩擦熱による温度上昇によって変形して前記シュー間隙が自動的に調節されることを抑制するバイメタルで構成された感温変形部材120が備えられている。図7および図8に示すように、その感温変形部材120は、第2ストラット部材108の第2係合部108aとは反対側の端部とアジャスティングホイール110との間に配設されるものである。
【0004】
ところで、図7および図8に示す感温変形部材120は、第2ストラット部材108の第2係合部108aとは反対側の端部とアジャスティングホイール110との間にすなわちストラット112の中間部に配設されている。つまり、感温変形部材120は、ドラムブレーキ100の制動時における一対のブレーキシュー102および106と回転ドラム116との摩擦熱の発生位置である一対のブレーキシュー102および106と回転ドラム116との摩擦摺動面から離れている。そのため、前記摩擦熱による回転ドラム116の熱膨張に対して感温変形部材120が遅れて温度上昇するので、シュー間隙自動調節機構118によってオーバーアジャストしてしまう問題があった。
【0005】
これに対して、特許文献1乃至3のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキには、ストラットの中間部よりもブレーキシュー側に感温変形部材が配置されているものが記載されている。このような特許文献1乃至3の感温変形部材であれば、一対のブレーキシューと回転ドラムとの摩擦熱発生位置に近いため、感温変形部材120に比較して速やかに温度上昇し、上記問題が抑制される。
【0006】
すなわち、特許文献1および特許文献2のドラムブレーキにおいては、前記感温変形部材が温度上昇によって変形すると、その変形した感温変形部材がアジャストレバーに直接当接することにより、アジャスティングホイールに係合されていたそのアジャストレバーのレバー部がそのアジャスティングホイールから離間させられる。このため、前記アジャストレバーのレバー部がアジャスティングホイール上を空転してシュー間隙自動調節機構でシュー間隙を自動的に調節することが抑制される。特許文献3のドラムブレーキにおいては、前記感温変形部材が温度上昇によって変形すると、その変形した感温変形部材がアジャストレバーに一体に形成された係合突起と直接係止してそのアジャストレバーの回動が停止される。このため、シュー間隙自動調節機構でシュー間隙を自動的に調節することが抑制される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−21180号公報
【特許文献2】特開2002−115733号公報
【特許文献3】特開2002−48172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記のようなシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキにおいて、前記感温変形部材は、温度上昇によって変形して例えば前記アジャストレバーに直接当接したり或いは前記アジャストレバーに直接係止したりする。このため、特許文献1および特許文献2のドラムブレーキにおいては、前記感温変形部材が高温であれば、制動時・非制動時を問わず前記アジャスティングホイールから前記アジャストレバーが離れる為、前記アジャストレバーの作動が空転する可能性がある。また、特許文献3のドラムブレーキにおいては、制動時に前記感温変形部材が高温になると前記アジャストレバーを直接係止するので、一対のブレーキシューの間隔は広がるが、その一対のブレーキシューの間に配設されたシュー間隙調節機構の両端部の間隔がそのアジャストレバーの回動が停止されることにより広がらず、前記アジャストレバーが前記一対のブレーキシューの一方に押し付けられ前記シュー間隙調節機構を前記一対のブレーキシューの他方側に付勢することもない。このため、前記シュー間隙自動調節機構に前記アジャストレバーからの付勢力が働かず車両走行中の路面からの振動等により、前記シュー間隙自動調節機構と前記一対のブレーキシューなどの別部品とで打音が発生する可能性がある。
【0009】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであって、その目的とするところは、ブレーキシューと回転ドラムとの摩擦熱が従来に比較して速やかに伝達され、且つ、アジャストレバーと直接係合せずにシュー間隙の自動調節が抑制される感温変形部材を有するシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、(a) 拡開可能な一対のブレーキシューの一方の一端部に係合する第1係合部を有する第1ストラット部材と、その一対のブレーキシューの他方の一端部に係合する第2係合部を有する第2ストラット部材と、その第2係合部と第1係合部との間に配設され、回動させられることによってその第1係合部と第2係合部との間の距離を伸長させるアジャスティングホイールとを備え、非制動時におけるその一対のブレーキシューの待機位置を規定するストラットと、(b) 前記アジャスティングホイールに係合するレバー部と、そのレバー部と前記一対のブレーキシューの一方との間に張設されたスプリングの付勢力により前記第1ストラット部材の第1係合部に当接して前記ストラットをその一対のブレーキシューの他方側に付勢する当接部とを備え、前記一対のブレーキシューが前記待機位置から拡開させられることによって、前記ストラットがその当接部によりその一対のブレーキシューの他方側に移動すると共にその移動の距離に応じて前記レバー部により前記アジャスティングホイールを一方向に回動させるアジャストレバーとを有し、(c) 前記アジャストレバーによって前記アジャスティングホイールが回動させられることにより前記ストラットが伸長し、非制動時における前記一対のブレーキシューと回転ドラムとの間のシュー間隙を自動的に調節するシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキであって、(d) 温度上昇に伴って、前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部と前記一対のブレーキシューの他方の一端部との間を離間させるように変形する感温変形部材が、前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部に固定されていることにある。
【発明の効果】
【0011】
本発明のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキによれば、(d) 温度上昇に伴って、前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部と前記一対のブレーキシューの他方の一端部との間を離間させるように変形する感温変形部材が、前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部に固定されている。このため、前記感温変形部材は、前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部に固定されており、感温変形部材がストラットの中央部に配置される従来のシュー間隙自動調節機構に比較して、制動時における前記回転ドラムと前記一対のブレーキシューの他方との摩擦熱が速やかに伝達される。また、温度上昇に伴って前記感温変形部材が前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部と前記一対のブレーキシューの他方の一端部との間を離間させるように変形すると、前記感温変形部材によって前記ストラットが前記一対のブレーキシューの一方側に押圧されるので、前記一対のブレーキシューが拡開しても、前記ストラットが前記感温変形部材によって前記一対のブレーキシューの他方側に移動することが防止される。このため、前記感温変形部材は、前記アジャストレバーと直接係合せずに、前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部と前記一対のブレーキシューの他方の一端部とを離間させるように変形して前記シュー間隙の自動調節を抑制する。したがって、前記アジャストレバーの作動が空転する可能性、或いは、前記アジャストレバーの作動が停止することによる前記シュー間隙自動調節機構と別部品とで打音が発生する可能性が解消される。
【0012】
ここで、好適には、(a) 前記感温変形部材には、前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部の一部がかしめられることによってその感温変形部材が固定される固定部と、その固定部から回曲されて先端部が前記一対のブレーキシューの他方の一端部に係合する係合部とが備えられており、(b) 前記感温変形部材の係合部は、温度上昇に伴って、その係合部の先端部が前記ストラットから離間する方向に曲げられ前記ストラットを前記一対のブレーキシューの一方側に押圧するものである。このため、前記感温変形部材の係合部は、前記一対のブレーキシューの他方の一端部に係合していることから、制動時における前記摩擦熱が前記一対のブレーキシューの他方から直接前記感温変形部材の係合部に伝達されるので、前記回転ドラムの熱膨張時における前記シュー間隙自動調節機構によるオーバーアジャストが抑制される。
【0013】
また、好適には、(a) 前記一対のブレーキシューの他方には、基端部が回動可能に連結されたブレーキレバーが備えられ、(b) 前記ブレーキレバーの先端部には、前記一対のブレーキシューの他方のシューリムの内周面に当接するように突き出された突部が形成されており、(c) 前記感温変形部材には、前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部の一部がかしめられることによってその感温変形部材が固定される固定部と、その固定部から回曲されて先端部が前記ブレーキレバーの基端部に係合する係合部とが備えられており、(d) 前記感温変形部材の係合部は、温度上昇に伴って、その係合部の先端部が前記ストラットから離間する方向に曲げられ前記ストラットを前記一対のブレーキシューの一方側に押圧するものである。このため、温度上昇に伴って、前記感温変形部材の係合部の先端部が前記ストラットから離間する方向に曲げられて前記ストラットを前記一対のブレーキシューの一方側に押圧するので、前記一対のブレーキシューが拡開しても、前記ストラットが前記感温変形部材によって前記一対のブレーキシューの他方側に移動することが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施例のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキの全体的な構成を示す正面図である。
【図2】図1のII-II視断面図であり、図1のシュー間隙自動調節機構の構成を説明する図である。
【図3】図2のシュー間隙自動調節機構に備えられた感温変形部材を拡大する拡大図であり、図2のブレーキシューおよびパーキングブレーキレバーを省略させた図である。
【図4】図2のIV矢視の感温変形部材を示す斜視図である。
【図5】本発明の他の実施例の感温変形部材を示す斜視図であり、図2のリターンスプリングを省略させた図である。
【図6】本発明の他の実施例の感温変形部材を示す斜視図であり、図2のリターンスプリングを省略させた図である。
【図7】従来のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキおいて、そのシュー間隙自動調節機構に備えられた感温変形部材の問題点を説明する図である。
【図8】図7のVIII-VIII視断面図であり、図7のシュー間隙自動調節機構の構成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において図は理解を容易とするために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比および形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【実施例1】
【0016】
図1は、本発明の一実施例のパーキングロック機能を備えたシュー間隙自動調節機構付ドラムブレーキであるリーディング・トレーリング型の車両用ドラムブレーキ(以下、ドラムブレーキという)10であって、ブレーキドラム(回転ドラム)12を取り外して示す正面図である。ブレーキドラム12は、図1の1点鎖線で示す2つの同心円で表されており、その2つの円のうちの中心側の円はブレーキドラム12の内周面14を示している。
【0017】
ドラムブレーキ10には、図1に示すように、略円板形状を成し、たとえば図示しない車軸管、アクスルハウジング、サスペンション装置などの車体側部材すなわち非回転部材に一体的に固設されたバッキングプレート16が備えられている。
【0018】
ドラムブレーキ10には、図1に示すように、バッキングプレート16の外周部に凸側が外側になる姿勢で互いに接近離間可能に略対称的に配設された円弧形状の一対のブレーキシュー18および20と、その一対のブレーキシュー18および20の一端部すなわち図1の上端部の間においてバッキングプレート16に位置固定に設けられたホイールシリンダ22と、一対のブレーキシュー18および20の一端部を互いに接近する方向に常時付勢するために、その一端部間に張設されたコイル状のリターンスプリング24と、そのコイル状のリターンスプリング24の内部を挿通するように一対のブレーキシュー18および20の一端部間に掛け渡され、非制動時における一対のブレーキシュー18および20とブレーキドラム12との間すなわちシュー間隙を自動的に調節するシュー間隙自動調節機構26と、一対のブレーキシュー18および20の他端部すなわち図1の下端部の間に位置固定に設けられたアンカ28と、一対のブレーキシュー18および20の下端部間に張設されてそれら下端部をアンカ28に常時当接させるスプリング30とが備えられている。
【0019】
一対のブレーキシュー18および20は、何れも、バッキングプレート16の平板部16aと略平行な平板状を成し且つ図1に示す正面図において全体が円弧形状に湾曲した形状に打ち抜かれたシューウェブ32および34と、それらの円弧形状を成す外周側端縁に沿って断面が略T字状を成すように一体的に固設された帯板状のシューリム36および38と、それらシューリム36および38の外周面に接着剤などで一体的に固着された摩擦材から成るライニング40および42とによってそれぞれ構成されている。
【0020】
一対のブレーキシュー18および20は、シューウェブ32およびシューウェブ34にそれぞれ配設されたシューホールドダウン装置44および46によってバッキングプレート16側へ押圧されることによりそのバッキングプレート16に対して面方向の相対移動可能に保持されている。図1に示すように、ブレーキシュー18の一端部には、長手平板状のパーキングブレーキレバー(ブレーキレバー)48の基端部48aがピン50により相対回動可能に連結されている。パーキングブレーキレバー48の先端部48bには、その先端部48bから一体にシューリム36の内周面に接近する方向に突き出されそのシューリム36の内周面に当接する突部48cが形成されている。
【0021】
シュー間隙自動調節機構26には、図2に示すように、一対のブレーキシュー18および20の一端部間に掛け渡たされ、ドラムブレーキ10の非制動時における一対のブレーキシュー18および20の接近を阻止してそれらの待機位置を規定するストラット52と、そのストラット52に備えられたアジャストレバー54とが備えられている。
【0022】
ストラット52は、図2に示すように、シューウェブ34の一端部に係合する第1係合部56aを有する長手状の第1ストラット部材56と、シューウェブ32の一端部およびパーキングブレーキレバー48の基端部48aに係合する第2係合部58aを有する第2ストラット部材58と、その第2ストラット部材58と第1ストラット部材56との間に配設され第2ストラット部材58と螺合する長手形状の調節軸60と、その調節軸60の第1ストラット部材56の第1係合部56aと第2ストラット部材58の第2係合部58aとの間に固定され、その調節軸60の径より大径に形成された略円板形状のアジャスティングホイール60aとを備えている。
【0023】
第2ストラット部材58の第2係合部58aは、図1および図2に示すように平板形状に形成されている。第2係合部58aには、図2および図3に示すように、シューウェブ32の一端部およびパーキングブレーキレバー48の基端部48aが嵌め入れられるように矩形状に切り欠かれた切欠58bが形成されている。
【0024】
ストラット52は、図2および図3に示すように、リターンスプリング24の付勢力によって、パーキングブレーキレバー48の基端部48aにおける内周側端面48bの一部が第2ストラット部材58の第2係合部58aにおける切欠58bによって形成された当接面58cに当接されると共に、シューウェブ34の一端部が第1ストラット部材56の第1係合部56aに当接されることにより、ドラムブレーキ10の非制動時における一対のブレーキシュー18および20の待機位置が規定される。
【0025】
調節軸60には、図2に示すように、略円板形状のアジャスティングホイール60aの中心部からブレーキシュー20に接近する方向に略円柱形状に突き出す嵌合軸部60bと、略円板形状のアジャスティングホイール60aの中心部からその嵌合軸部60bとは反対方向に略円柱形状に突設するとともにその外周面に螺刻された雄ねじ部60cを有するねじ軸部60dとが備えられている。調節軸60において、ねじ軸部60dは第2ストラット部材58に形成された雌ねじ穴58dと螺合し、嵌合軸部60bは第1ストラット部材56に形成された略円柱形状の嵌合穴56bに相対回転可能に嵌め入れられている。
【0026】
そのため、ストラット52は、アジャストレバー54によってアジャスティングホイール60aが所定方向例えば調節軸60のねじ軸部60dが右ねじであれば左回りの方向に回動させられると、調節軸60のねじ軸部60dに形成された雄ねじと第2ストラット部材58の雌ねじ穴58dの内周部に形成された雌ねじとのねじの作用によって、第2ストラット部材58が第1ストラット部材56から離間する方向に移動させられ、第1ストラット部材56の第1係合部56aと第2ストラット部材58の第2係合部58aとの間の距離すなわちストラット52の長手方向の距離が伸長する。
【0027】
アジャストレバー54は、例えば鋼板からプレス加工により成形されている。図1に示すように、アジャストレバー54は、そのアジャストレバー54の基端部54aに貫通された貫通穴54bにシューウェブ34からバッキングプレート16に接近する方向に突設された略円柱形状の軸部材62が相対回転可能に嵌め入れられている。このため、アジャストレバー54は、その軸部材62の軸心回りに回動可能にブレーキシュー20のシューウェブ34に配設される。
【0028】
アジャストレバー54は、図1および図2に示すように、基端部54aからアジャスティングホイール60aに接近する方向に長手状に延長されたレバー部54cと、そのレバー部54cの先端部から略円板形状のアジャスティングホイール60aの外周面に備えられた複数の係合歯の一つに伸長し且つ図示しないブレーキペダルの操作によるドラムブレーキ10の制動時にその係合歯と係合する平板状の係合板54dと、レバー部54cの中間部から第1ストラット部材56の第1係合部56aに接近する方向に伸長してその第1ストラット部材56の第1係合部56aに当接する当接部54eとを一体に備えている。アジャストレバー54には、図1に示すように、そのアジャストレバー54を軸部材62の軸心回り矢印F方向に回動するように常時付勢するために、レバー部54cの中間部とブレーキシュー20の他端部との間に張設されたコイル状のスプリング64が備えられている。このため、アジャストレバー54の当接部54eは、コイル状のスプリング64の付勢力によって、第1ストラット部材56すなわちストラット52を一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー18側に常時付勢する。コイル状のスプリング64の付勢力は、リターンスプリング24の付勢力より小さいものである。
【0029】
図2乃至図4に示すように、ストラット52のブレーキシュー18側の端部には、温度上昇に伴って、ストラット52のブレーキシュー18側の端部とブレーキシュー18の一端部との間を離間するように変形する感温変形部材66がストラット52のブレーキシュー18側の端部に固定されている。
【0030】
感温変形部材66には、図3および図4に示すように、第2ストラット部材58の第2係合部58aから突き出した突部58eがかしめ変形されることによってその感温変形部材66がその第2係合部58aに固定される平板形状の固定部66aと、先端部がパーキングブレーキレバー48の基端部48aにおける内周側端面48dの一部に係合する長手平板形状の係合部66bと、その係合部66bと固定部66aとを連結する円弧形状に曲成された連結部66cとが備えられている。図4に示すように、感温変形部材66の係合部66bは、その係合部66bの先端部が第2ストラット部材58の第2係合部58aとの干渉を避けるようにその両側へ2つに分岐したものであり、それぞれの係合部66bの先端部がブレーキレバー48の基端部48aにおける内周側端面48dの一部に係合するものである。
【0031】
図3に示すように、第2ストラット部材58の第2係合部58aには、その第2係合部58aにおいて、切欠58bによって形成された当接面58cに沿って延長された延長線68を境とするブレーキシュー20側とは反対側の部分からバッキングプレート16に接近する方向に一体に突き出された断面が矩形状の突部58eが形成されている。また、図3に示すように、感温変形部材66の固定部66aには、第2ストラット部材58の突部58eを嵌め入れるその突部58eの断面形状と同じ形状に貫通した貫通穴66dが備えられている。図3の一点鎖線で示す突部58eは、その突部58eの先端部がかしめられる前の状態を示すものである。かしめられる前の第2ストラット部材58の突部58eに感温変形部材66の固定部66aの貫通穴66dが嵌め入れられて、固定部66aの貫通穴66dから突き出された突部58eの先端部が例えば打撃工具等によってかしめられることによって、感温変形部材66が第2ストラット部材58の第2係合部58aに固定される。また、感温変形部材66は、本実施例のようにパーキングブレーキレバー48がシューウェブ32に対して車両内側に配設されるものであれば、感温変形部材66が第2ストラット部材58の第2係合部58aのバッキングプレート16側の部分すなわち第2係合部58aの突部58eに取り付けられる。また、例えば本実施例とは異なりパーキングブレーキレバー48がシューウェブ32に対して車両外側に配設されるものであれば、第2ストラット部材58の第2係合部58aのバッキングプレート16と反対側に取り付ける為に、感温変形部材66は、図2に示すように、その第2ストラット部材58の第2係合部58aからバッキングプレート16に対して離間するように突き出す突部58fに取り付けられる。
【0032】
感温変形部材66は、図3に示すように、熱膨張率の異なる2枚の薄い板を合わせた状態で、圧延等で相互に高圧力で接合された所謂バイメタルである。本実施例では、感温変形部材66の外周部Aに熱膨張率が高い部材を使用し、感温変形部材66の内周部Bに熱膨張率が低い部材を使用している。このため、感温変形部材66は、図3に示すように、温度上昇によって、その感温変形部材66の係合部66bの先端部がストラット52から離間する方向すなわち矢印F1方向に曲げられる。つまり、感温変形部材66は、第2ストラット部材58の第2係合部58aとパーキングブレーキレバー48の基端部48aとの間を離間させるように変形する。図3の2点鎖線で示す感温変形部材66の係合部66bは、温度上昇によって感温変形部材66の係合部66bが曲げられた状態を示すものである。
【0033】
以上のように構成されたドラムブレーキ10は、図示されていないブレーキペダル操作に伴ってホイールシリンダ22のピストンが突き出されることにより一対のブレーキシュー18および20の一端部が互いに離隔する方向に拡開され制動力が発生する。そして、ブレーキペダル操作が繰り返し使用されてライニング40および42が摩耗しシュー間隙が大きくなると、ホイールシリンダ22により一対のブレーキシュー18および20が待機位置から拡開させられることによって、ストラット52がアジャストレバー54の当接部54eにより一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー18側に移動すると共にその移動の距離に応じてレバー部54cの先端部に形成された係合板54dによりアジャスティングホイール60aが所定方向例えば調節軸60のねじ軸部60dが右ねじであれば左回りの方向に回動される。それにより、ストラット52が伸長させられシュー間隙が調節される。
【0034】
例えば、車両走行中においてブレーキペダルを頻繁に使用せずその使用回数が少ない場合には、ブレーキドラム12の内周面14とライニング40および42との間から発生する摩擦熱の量が比較的に少なく感温変形部材66に伝達される前記摩擦熱の量が少ないので感温変形部材66は変形しない。そのため、ライニング40および42が摩耗してシュー間隙が大きくなると制動時においてシュー間隙自動調節機構26が作動して前述したようにシュー間隙が調節される。
【0035】
しかし、車両走行中においてブレーキペダルを頻繁に使用して、ブレーキドラム12の内周面14とライニング40および42との間から発生する摩擦熱の量が比較的に多くなった場合には、感温変形部材66に伝達される前記摩擦熱の量が多くなるので、感温変形部材66が温度上昇して、その感温変形部材66の係合部66bの先端部が、図3の2点鎖線に示すようにストラット52から離間する方向に曲げられる。
【0036】
感温変形部材66が温度上昇によってその係合部66bが曲げられると、ストラット52が一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー20側に押圧される。このため、一対のブレーキシュー18および20が拡開しても、感温変形部材66によってストラット52が一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー20側に押圧されているので、アジャストレバー54の当接部54eによってストラット52を一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー18側に移動することが防止されて、シュー間隙自動調節機構26によるシュー間隙の自動調節が抑制される。なお、感温変形部材66が変形してストラット52を押圧する力の大きさは、アジャストレバー54の当接部54eによってストラット52を押圧する力の大きさよりも大きいものである。これによって、ブレーキドラム12の内周面14とライニング40および42との間から発生する摩擦熱の量が比較的に多く、ブレーキドラム12の温度が上昇してそのブレーキドラム12の内径が拡径してしまう場合には、制動時においてシュー間隙自動調節機構26のシュー間隙の自動調節が抑制される。
【0037】
本実施例のシュー間隙自動調節機構26を備えたドラムブレーキ10によれば、温度上昇に伴って、ストラット52のブレーキシュー18側の端部とブレーキシュー18の一端部との間を離間させるように変形する感温変形部材66が、ストラット52のブレーキシュー18側の端部に固定されている。このため、感温変形部材66は、ストラット52のブレーキシュー18側の端部に固定されており、感温変形部材120がストラット112の中央部に配置される従来のシュー間隙自動調節機構118に比較して、制動時におけるブレーキドラム12とブレーキシュー18との摩擦熱が速やかに伝達される。また、温度上昇に伴って感温変形部材66がストラット52のブレーキシュー18側の端部とブレーキシュー18の一端部との間を離間させるように変形すると、感温変形部材66によってストラット52が一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー20側に押圧されるので、一対のブレーキシュー18および20が拡開しても、ストラット52がその感温変形部材66によって一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー18側に移動することが防止される。このため、感温変形部材66は、アジャストレバー54と直接係合せずに、ストラット52のブレーキシュー18側の端部とブレーキシュー18の一端部との間を離間させるように変形してシュー間隙の自動調節を抑制する。したがって、従来のような、感温変形部材が温度上昇によって変形してアジャストレバーに直接当接或いは直接係止するドラムブレーキに比べ、アジャストレバー54の作動が空転する可能性、或いは、アジャストレバー54の作動が停止することによるシュー間隙自動調節機構26のストラット52の両端部と一対のブレーキシュー18および20の一端部などの別部品とで打音が発生する可能性が解消される。
【0038】
また、本実施例のシュー間隙自動調節機構26を備えたドラムブレーキ10によれば、ブレーキシュー18には、基端部48aが回動可能に連結されたパーキングブレーキレバー48が備えられ、そのパーキングブレーキレバー48の先端部48bには、ブレーキシュー18のシューリム36の内周面に当接するように突き出された突部48cが形成されており、感温変形部材66には、ストラット52のブレーキシュー18側の端部の一部がかしめられることによってその感温変形部材66が固定される固定部66aと、その固定部66aから回曲されて先端部がパーキングブレーキレバー48の基端部48aに係合する係合部66bとが備えられており、感温変形部材66の係合部66bは、温度上昇に伴って、その係合部66bの先端部がストラット52から離間する方向に曲げられストラット52を一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー20側に押圧するものである。このため、温度上昇に伴って、感温変形部材66の係合部66bの先端部がストラット52から離間する方向に曲げられてストラット52を一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー20側に押圧するので、一対のブレーキシュー18および20が拡開しても、ストラット52が感温変形部材66によって一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー18側に移動することが防止される。
【0039】
また、本実施例のシュー間隙自動調節機構26を備えたドラムブレーキ10によれば、感温変形部材66が、ストラット52のブレーキシュー18側の端部に固定される。このため、感温変形部材66が配置されるスペースが、図7および図8に示す感温変形部材120がホイールシリンダー、ベアリングケースから近いストラット112の中央付近に配置される従来のドラムブレーキ100に比較して、前記ホイールシリンダー、前記ベアリングケースから干渉し難い位置に配置されるという利点がある。
【0040】
また、本実施例のシュー間隙自動調節機構26を備えたドラムブレーキ10によれば、感温変形部材66が、ストラット52のブレーキシュー18側の端部に固定される。このため、感温変形部材66が、ストラット52のブレーキシュー18側の端部に固定されてアジャストレバー54と干渉しない位置に配設されるので、図7および図8に示す感温変形部材120のように、アジャストレバー114との干渉を防止するために回り止めなどの施策を打つ必要が無くなる。
【実施例2】
【0041】
次に、本発明の他の実施例を説明する。なお、以下の説明において実施例相互間で共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。
【0042】
本実施例のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキは、前述の感温変形部材66の係合部66bがパーキングブレーキレバー48の基端部48aに係合した実施例1のシュー間隙自動調節機構26を備えたドラムブレーキ10に比較して、感温変形部材70の係合部70aがブレーキシュー18のシューウェブ32の一端部に係合されている点で相違し、それ以外は略同様に構成されている。
【0043】
図5に示すように、感温変形部材70には、実施例1の固定部66aと同様の図示しない固定部と、先端部がシューウェブ32の一端部における内周側端面32aの一部に係合する長手平板形状の係合部70aと、その係合部70aと前記固定部とを連結する円弧形状に曲成された連結部70bとが備えられている。図5に示すように、感温変形部材70の係合部70aは、その係合部70aの先端部が第2ストラット部材58の第2係合部58aとの干渉を避けるようにその両側へ2つに分岐したものであり、それぞれの係合部70aの先端部がシューウェブ32の一端部における内周側端面32aの一部に係合するものである。
【0044】
感温変形部材70は、実施例1の感温変形部材66と同様に、熱膨張率の異なる2枚の薄い板を合わせて、例えば、圧延等の高圧力で接合された所謂バイメタルである。感温変形部材70は、図5に示すように、温度上昇によって、その感温変形部材70の係合部70aの先端部がストラット52から離間する方向すなわち矢印F2方向に曲げられるものである。つまり、感温変形部材70は、第2ストラット部材58の第2係合部58aとシューウェブ32の一端部との間を離間するように変形する。感温変形部材70は、実施例1の感温変形部材66と同様に、温度上昇に伴って、その感温変形部材70の係合部70aが曲げられストラット52を一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー20側に押圧するものである。
【0045】
本実施例のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキによれば、感温変形部材70には、ストラット52のブレーキシュー18側の端部の一部がかしめられることによってその感温変形部材70が固定される実施例1の固定部66aと同様の固定部と、その固定部から回曲されて先端部がブレーキシュー18のシューウェブ32の一端部に係合する係合部70aとが備えられており、感温変形部材70の係合部70aは、温度上昇に伴って、その係合部70aの先端部がストラット52から離間する方向に曲げられストラット52を一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー20側に押圧するものである。このため、感温変形部材70の係合部70aは、ブレーキシュー18のシューウェブ32の一端部に係合していることから、制動時における摩擦熱がそのブレーキシュー18のシューウェブ32から直接感温変形部材70の係合部70aに伝達されるので、ブレーキドラム12の熱膨張時におけるシュー間隙自動調節機構26によるオーバーアジャストが抑制される。
【実施例3】
【0046】
図6に示すように、本実施例のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキは、実施例2のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキに比較して、感温変形部材72の固定部72aが第2ストラット部材58の第2係合部58aにおけるバッキングプレート16側とは反対側に固定されている点で相違し、それ以外は略同様に構成されている。
【0047】
感温変形部材72には、図6に示すように、第2ストラット部材58の第2係合部58aの一部がかしめられることによってその感温変形部材72がその第2ストラット部材58の第2係合部58aに固定される平板形状の固定部72aと、先端部がシューウェブ32の一端部における内周側端面32aの一部に係合する長手平板形状の係合部72bと、その係合部72bと固定部72aとを連結する円弧形状に曲成された連結部72cとが備えられている。
【0048】
図6に示すように、第2ストラット部材58の第2係合部58aには、その第2係合部58aからバッキングプレート16から離間する方向に一体に突き出された断面が矩形状の突部58fが形成されている。また、図6に示すように、感温変形部材72の固定部72aには、第2ストラット部材58の突部58fを嵌め入れるために貫通した貫通穴が形成されており、その貫通穴に第2ストラット部材58の突部58fが嵌め入れられ、その突部58eの先端部が例えばハンマー等によってかしめられる。
【0049】
感温変形部材72は、実施例2の感温変形部材70と同様に、熱膨張率の異なる2枚の薄い板を合わせて、例えば、圧延等の高圧力で接合された所謂バイメタルである。感温変形部材72は、図6に示すように、温度上昇によって、その感温変形部材72の係合部72bの先端部がストラット52から離間する方向すなわち矢印F3方向に曲げられるものである。感温変形部材72は、実施例2の感温変形部材72と同様に、温度上昇に伴って、その感温変形部材72の係合部72bが曲げられストラット52を一対のブレーキシュー18および20のブレーキシュー20側に押圧するものである。
【0050】
以上、本発明の一実施例を図面に基づいて説明したが、本発明はその他の態様においても適用される。
【0051】
たとえば、本実施例のシュー間隙自動調節機構26を備えたドラムブレーキ10において、そのシュー間隙自動調節機構26は、ブレーキペダルの操作時において、アジャストレバー54の係合板54dがアジャスティングホイール60aの係合歯に噛み合ってそのアジャスティングホール60aを回動させていた。しかし、シュー間隙自動調節機構26は、ブレーキペダルの操作時において、アジャストレバー54の係合板54dがアジャスティングホイール60aの係合歯と噛み合わずその係合歯を乗り越え、その後のブレーキペダルの操作解除時において、アジャストレバー54の係合板54dが元の位置に戻る際にアジャスティングホイール60aの係合歯に噛み合ってそのアジャスティングホール60aを回動させるようにしても良い。
【0052】
また、本実施例のシュー間隙自動調節機構26を備えたドラムブレーキ10において、シュー間隙自動調節機構26には、図1および図2に示すように、第1ストラット部材56と、第2ストラット部材58と、調節軸60と、アジャスティングホイール60aとが備えられ、アジャスティングホイール60aがアジャストレバー54によって回動させられることによって、調節軸60が回転すると共にその調節軸60と螺合された第2ストラット部材58が第1ストラット部材56から離間する方向に移動して、ストラット52が伸長するものであった。しかしながら、本実施例において、シュー間隙自動調節機構26は、感温変形部材120を取り外した図7および図8に示すシュー間隙自動調節機構118にも適用可能である。
【0053】
また、本実施例のシュー間隙自動調節機構26を備えたドラムブレーキ10において、感温変形部材66は、第2ストラット部材58の第2係合部58aの一部がかしめられることによって固定された。しかしながら、本実施例において、感温変形部材66は、かしめによって第2ストラット部材58の第2係合部58aに固定されるものに限定されなく、例えば、溶接等によって感温変形部材66が第2ストラット部材58の第2係合部58aに固定されても良い。
【0054】
その他一々例示はしないが、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
【符号の説明】
【0055】
10:ドラムブレーキ
12:ブレーキドラム(回転ドラム)
18、20:一対のブレーキシュー
26:シュー間隙自動調節機構
36:シューリム
48:パーキングブレーキレバー(ブレーキレバー)
48a:基端部
48b:先端部
48c:突部
52:ストラット
54:アジャストレバー
54c:レバー部
54e:当接部
56:第1ストラット部材
56a:第1係合部
58:第2ストラット部材
58a:第2係合部
60a:アジャスティングホイール
64:スプリング
66、70、72:感温変形部材
66a、72a:固定部
66b、70a、72b:係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡開可能な一対のブレーキシューの一方の一端部に係合する第1係合部を有する第1ストラット部材と、該一対のブレーキシューの他方の一端部に係合する第2係合部を有する第2ストラット部材と、該第2係合部と第1係合部との間に配設され、回動させられることによって該第1係合部と第2係合部との間の距離を伸長させるアジャスティングホイールとを備え、非制動時における該一対のブレーキシューの待機位置を規定するストラットと、
前記アジャスティングホイールに係合するレバー部と、該レバー部と前記一対のブレーキシューの一方との間に張設されたスプリングの付勢力により前記第1ストラット部材の第1係合部に当接して前記ストラットを該一対のブレーキシューの他方側に付勢する当接部とを備え、前記一対のブレーキシューが前記待機位置から拡開させられることによって、前記ストラットが該当接部により該一対のブレーキシューの他方側に移動すると共にその移動の距離に応じて前記レバー部により前記アジャスティングホイールを一方向に回動させるアジャストレバーとを有し、
前記アジャストレバーによって前記アジャスティングホイールが回動させられることにより前記ストラットが伸長し、非制動時における前記一対のブレーキシューと回転ドラムとの間のシュー間隙を自動的に調節するシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキであって、
温度上昇に伴って、前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部と前記一対のブレーキシューの他方の一端部との間を離間するように変形する感温変形部材が、前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部に固定されていることを特徴とするシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキ。
【請求項2】
前記感温変形部材には、前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部の一部がかしめられることによって該感温変形部材が固定される固定部と、該固定部から回曲されて先端部が前記一対のブレーキシューの他方の一端部に係合する係合部とが備えられており、
前記感温変形部材の係合部は、温度上昇に伴って、該係合部の先端部が前記ストラットから離間する方向に曲げられ前記ストラットを前記一対のブレーキシューの一方側に押圧するものである請求項1のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキ。
【請求項3】
前記一対のブレーキシューの他方には、基端部が回動可能に連結されたブレーキレバーが備えられ、
前記ブレーキレバーの先端部には、前記一対のブレーキシューの他方のシューリムの内周面に当接するように突き出された突部が形成されており、
前記感温変形部材には、前記ストラットの前記一対のブレーキシューの他方側の端部の一部がかしめられることによって該感温変形部材が固定される固定部と、該固定部から回曲されて先端部が前記ブレーキレバーの基端部に係合する係合部とが備えられており、
前記感温変形部材の係合部は、温度上昇に伴って、該係合部の先端部が前記ストラットから離間する方向に曲げられ前記ストラットを前記一対のブレーキシューの一方側に押圧するものである請求項1のシュー間隙自動調節機構を備えたドラムブレーキ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−72482(P2013−72482A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211534(P2011−211534)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(390005670)豊生ブレーキ工業株式会社 (104)
【Fターム(参考)】