説明

ショックアブソーバ

【課題】液滴が存在する環境下でショックアブソーバが使用されても長期間にわたり所望の衝撃吸収効果を保持し得るようにする。
【解決手段】ショックアブソーバ10のケース体11内には、軸方向に往復動自在にスリーブ20が装着され、スリーブ20内は基端部側の液体収容室21と連通室22とに区画されており、スリーブ20には後退方向のばね力が予圧ばね29により加えられている。ケース体11内には、ロッド25がその先端部を突出させて軸方向に往復動自在に装着され、ロッド25の基端部には液体収容室21内に充填された液体Lの中を移動するピストンが設けられている。液体収容室21に流入した液体によりスリーブ20が過度に前進移動したときには、スリーブ20の外周面とケース体11の内周面との間をシールするスリーブシール39はシールを解除して液体収容室21内の液体を連通室22に排出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は移動部材の移動を停止する際に移動部材に加わる衝撃力を緩和するショックアブソーバに関し、特に、液滴が飛散する雰囲気において使用可能なショックアブソーバに関する。
【背景技術】
【0002】
往復動する移動部材が往復動端の位置で停止するときに移動部材に加わる衝撃力を緩和するためにショックアブソーバつまり緩衝器が用いられている。このような用途に用いられるショックアブソーバとしては、筒状ケースの一端からロッドを突出させて移動部材をロッドに衝突させるようにし、ロッドが筒状のケース内に後退移動しながら移動部材の衝撃を吸収するようにしたタイプのものがある(特許文献1参照)。このタイプのショックアブソーバは筒状のケース内にロッドに突出方向のばね力を加えるコイルばねが組み込まれるとともに、シリコーンオイルなどからなる衝撃吸収用の液体が封入されており、ロッドに固定されたピストンがロッドの後退移動によって液体内を移動するようになっている。
【特許文献1】実開昭61−55530号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このようなショックアブソーバにおいては、ロッドの外周面からショックアブソーバ内に液体が流入するのを防止するために、シール材が組み込まれているが、ショックアブソーバが液滴の存在する環境ないし雰囲気のもとで使用される場合には、外部の液滴がシール材とロッドとの間から内部に流入することがある。特に、ショックアブソーバが切削加工装置のように切削油等の液体が使用される装置や設備に取り付けられる場合には、ショックアブソーバは液滴雰囲気に晒されるため、内部に液体が混入する可能性が高くなる。
【0004】
シール材としてVパッキンを用いると、Vパッキンはシールに方向性を有しており、Vパッキンをその開放端側を外部に向けるようにすると、外部からの液体の流入を阻止する効果は高まるが、ロッドに付着した液体がVパッキンを通過してショックアブソーバ内に流入することがある。外部からショックアブソーバ内の衝撃吸収用の液体内に過度に液体が流入すると、所望の衝撃吸収効果が得られなくなるだけでなく、ショックアブソーバが損傷することになり、ショックアブソーバの耐久性が低下することになる。
【0005】
本発明の目的は、ショックアブソーバの耐久性を向上することにある。
【0006】
本発明の他の目的は、液滴が存在する環境下でショックアブソーバが使用されても長期間にわたり所望の衝撃吸収効果を保持し得るようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のショックアブソーバは、基端部が閉塞され先端部にロッドカバーが設けられたケース体と、前記ケース体内に軸方向に往復動自在に装着され、液体が充填される基端部側の液体収容室と外部に連通する先端側の連通室とを前記ケース体内に区画するスリーブと、前記スリーブと前記ロッドカバーを貫通して前記ケース体に軸方向に往復動自在に装着され、前記スリーブとの間に設けられたロッドシールにより前記スリーブとの間がシールされるロッドと、前記ロッドの基端部に設けられ前記液体収容室内を軸方向に移動するとともに前記ロッドの突出方向のばね力が衝撃吸収ばねにより加えられるピストンと、前記連通室内に組み込まれ、外力により前記ロッドが後退移動したときに前記液体収容室の液体により前記先端部側に移動する前記スリーブに対して後退方向のばね力を加える予圧ばねと、前記ロッドシールを介して前記液体収容室に流入した液体により前記スリーブが過度に前進移動したときには、前記スリーブの外周面と前記ケース体の内周面とのシールを解除して前記液体収容室内の液体を前記連通室に排出するスリーブシールとを有することを特徴とする。
【0008】
本発明のショックアブソーバは、前記スリーブの端面に当接し前記スリーブの後退方向の位置を規制する突き当て段部を前記ケース体に設けることを特徴とする。本発明のショックアブソーバは、前記スリーブが所定のストローク以上に過度に前進移動したときに前記スリーブシールとの間に液体通過隙間を形成する大径孔部を前記ケース体に形成することを特徴とする。また、本発明のショックアブソーバは、前記スリーブが所定のストローク以上に過度に前進移動したときに前記スリーブシールとの間に液体通過隙間を形成するガイド溝を前記ケース体に形成することを特徴とする。
【0009】
本発明のショックアブソーバにおいて、前記ロッドカバーに前記連通室を外部に連通させる螺旋状の溝を形成することを特徴とする。また、本発明のショックアブソーバは、前記ケース体に前記連通室を外部に連通させる連通孔を形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体収容室内に外部から過度の液体が混入した場合には、ロッドが後退移動する際にこの後退移動に同期してスリーブが所定のストローク以上に前進移動して液体収容室内の液体を排出する。これにより、ショックアブソーバを液滴が存在する環境下で使用し、内部に液体が混入しても、過度に混入した液体は外部に排出されるので、長期間にわたり所望の衝撃吸収効果を維持することができ、ショックアブソーバの耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明の一実施の形態であるショックアブソーバの不作動状態を示す断面図であり、図2は作動状態におけるショックアブソーバを示す断面図であり、図3は過度の液体が外部から流入した場合の作動状態におけるショックアブソーバの一部を示す拡大断面図である。
【0012】
このショックアブソーバ10は円筒形状のケース体11を有している。ケース体11は基端部がケース体11と一体となった底壁部12により閉塞され、内部には底付きの収容孔13が形成されている。収容孔13はケース体11の先端部で開口されており、開口されたケース体11の先端部にはロッドカバー14が取り付けられている。ケース体11の外周面には雄ねじ15が形成され、雄ねじ15には止めナット16,17がねじ結合されるようになっており、止めナット16,17によりショックアブソーバ10は図示しない取付部材に締結される。ただし、ショックアブソーバ10の取付方式としては、止めナット16,17を用いることなく、ケース体11にブラケットを取り付けるようにしても良い。また、ケース体11の基端部に一体に底壁部12を設けることなく、基端部にカバー部材を取り付けるようにしても良い。
【0013】
ケース体11の内部にはスリーブ20が軸方向に往復動自在に装着されており、このスリーブ20によりケース体11内の収容孔13は基端部側の液体収容室21と、外部に連通する連通室22とに区画されている。スリーブ20により連通室22と仕切られた液体収容室21には衝撃吸収用の液体Lとしてシリコーンオイル等が充填されており、液体収容室21内に液体Lを充填するためにケース体11の底壁部12には注入孔23が形成され、この注入孔23は封止ねじ24により液体注入後に封止されるようになっている。
【0014】
ケース体11にはロッド25が軸方向に往復動自在に装着されており、ロッド25の先端部はロッドカバー14の貫通孔18を貫通して外部に突出している。ロッド25はスリーブ20の中心部に形成された貫通孔26を貫通しており、スリーブ20の基端部側に形成された大径孔26aにはロッド25とスリーブ20との間をシールするロッドシール27が装着されている。このロッドシール27はゴム等の弾性材料により形成され、内側環状部27aと外側環状部27bとが軸方向一端部で一体となり、他端部に向けて分離されて開口端部となった形状のVパッキンであり、内側環状部27aと外側環状部27bの開口端が液体収容室21に対向してスリーブ20に装着されている。なお、ロッド25に環状溝を形成し、その環状溝にロッドシール27を装着するようにしても良い。
【0015】
スリーブ20の大径孔26aの端部には突き当てリング28が取り付けられており、この突き当てリング28はケース体11の内面に形成された突き当て段部19に当接するようになっている。連通室22内には一端がロッドカバー14に当接し他端がスリーブ20に当接する圧縮コイルばねからなる予圧ばね29が連通室22内に装着されている。この予圧ばね29によりスリーブ20には後退方向のばね力が加えられており、突き当てリング28が突き当て段部19に当接することにより、スリーブ20の後退限位置が規制されるようになっている。
【0016】
ロッド25の基端部には小径の嵌合部31が形成されており、この嵌合部31にはフランジ部32とばね受けカラー33とが取り付けられている。フランジ部32にはばね受けカラー33に向かうに従って小径となったテーパ部34が設けられ、このテーパ部34の外側には環状のピストン35が設けられている。このピストン35は液体収容室21内に配置されており、ロッド25と一体となって液体収容室21内を軸方向に移動する。ばね受けカラー33と底壁部12との間には圧縮コイルばねからなる衝撃吸収ばね36が装着されており、この衝撃吸収ばね36によりロッド25およびピストン35にはロッド25の先端部がケース体11の先端から突出する方向のばね力が加えられている。図示する場合には、フランジ部32とこれに一体となったテーパ部34とロッド25の基端部に取り付けられるようになっているが、フランジ部32とテーパ部34とをロッド25に一体に形成するようにしても良い。
【0017】
図1に示すように、ショックアブソーバ10のロッド25に外力が加わっていない状態のもとでは、スリーブ20は突き当てリング28が段部19に当接した後退限位置となっており、ロッド25とピストン35は衝撃吸収ばね36のばね力によりフランジ部32がスリーブ20の突き当てリング28に突き当てられた前進限位置に設定された状態となる。このときには、衝撃吸収ばね36のばね力によりスリーブ20にはこれを前進させる方向のばね力が加えられるが、衝撃吸収ばね36よりも予圧ばね29の方がばね力つまり弾発力が大きく設定されているので、スリーブ20は突き当てリング28が段部19に当接した後退限位置を保持することになる。
【0018】
液体収容室21はピストン35と底壁部12との間であって衝撃吸収ばね36が組み込まれた衝撃吸収部21aとピストン35とスリーブ20との間の退避部21bとに仕切られている。ロッド25にこれを後退させる方向の外力が加えられると、ロッド25の後退移動に伴ってピストン35は液体収容室21の液体L内を移動することになり、ロッド25はその先端面がロッドカバー14の端面と一致する後退限位置までストロークSの範囲で移動することになる。このときには、ケース体11の内周面とピストン35の外周面との間に形成された隙間37を介して液体収容室21内の液体Lの一部は衝撃吸収部21a側から退避部21b側に移動するので、衝撃吸収部21aの容積は収縮し、退避部21bの容積は膨張することになる。このように、液体収容室21の液体L内をピストン35が移動して液体Lに隙間37を介して衝撃吸収部21aから退避部21bに向かう流れを発生させることによりロッド25に加わる衝撃が吸収される。衝撃吸収部21aから退避部21b内へ液体Lが円滑に流入するように、ロッド25の基端部にはフランジ部32に隣接させてくびれ部38が形成されている。
【0019】
収容孔13のうちピストン35が図1に示す前進限位置から図2に示す後退限位置まで移動するストロークSの範囲に対応する部分には、基端部に向かうに従って内径が徐々に小さくなるようにテーパ孔13aが形成されており、ピストン35が後退限位置に移動するに伴って隙間37は狭くなる。これにより、ロッド25が前進限位置から後退限位置に向かうに従って液体の粘性による抵抗は徐々に増加される。
【0020】
ロッド25が後退限位置にまでストロークS移動すると、ロッド25のストロークSに相当する体積が液体収容室21内に入り込むことになるので、その体積分だけ液体収容室21の容積は増加することになる。この増加分の容積に対応するストロークTだけスリーブ20は先端部に向けて図2に示すように摺動することになる。この摺動に際して、液体収容室21内の液体Lは突き当てリング28とくびれ部38との間からVパッキンからなるロッドシール27の内側環状部27aと外側環状部27bとの間に入り込んで、これらを押し広げる方向にロッドシール27に圧力を加えることになるので、ロッド25とロッドシール27からの液体の漏れが防止される。
【0021】
スリーブ20の外周面とケース体11の収容孔13の内周面との間をシールするために、Oリングからなるスリーブシール39がスリーブ20の外周面に形成された環状溝に装着されている。これにより、液体収容室21内に適正量の液体Lが充填された状態のもとで、ロッド25が図1に示す前進限位置から図2に示すように後退限位置まで衝撃力により移動するときには、スリーブ20は設定された適正なストロークTの範囲で往復動することになり、このストロークTの範囲ではスリーブシール39は収容孔13の内周面に接触して液体収容室21内の液体が外部に漏出することが防止される。
【0022】
連通室22はケース体11に形成された連通孔41により外部に連通している。ロッドカバー14は、貫通孔18が形成された内側筒体14aと、この内側筒体14aとケース体11との間に嵌合される外側筒体14bとを有している。内側筒体14aの内方端部には外側筒体14bの内方端面に突き当てられるフランジ部42が設けられ、外側筒体14bの外方端部にはケース体11の先端面に突き当てられるフランジ部43が設けられており、このフランジ部43の端面とロッド25の先端面とが一致する位置までロッド25は後退移動することになる。
【0023】
内側筒体14aの貫通孔18には螺旋状の溝44が連通室22と外部とを連ならせて形成されており、連通室22は複数の連通孔41と螺旋状の溝44とにより外部に連通されている。このように、連通室22は外部と連通しているので、スリーブ20が図1に示す後退限位置から前進移動する際には連通室22内の空気は外部に排出され、逆方向に移動する際には外部から連通室22内に外気が流入する。なお、螺旋状の溝44に代えて内側筒体14aの貫通孔18に直線状の複数の溝を形成するようにしても良く、これらの溝を形成することなく、連通孔41のみにより連通室22を外部に連通させるようにしても良く、連通孔41を形成することなく溝のみにより連通させるようにしても良い。
【0024】
上述のように、液体収容室21内に適正量の液体Lが充填された状態のもとでは、ロッド25に図示しない移動部材により加わる外力によってロッド25が前進限位置から後退限位置まで移動するときには、スリーブ20は設定されたストロークTの範囲で往復動することになり、このストロークTの範囲ではスリーブシール39は収容孔13の内周面に接触してスリーブ20とケース体11の内周面との間はシールされる。ショックアブソーバ10が液滴の存在する環境下で使用されると、その液滴が外部から連通室22内に混入するおそれがある。ショックアブソーバ10が水平状態で使用される際には、連通孔41が下側となるようにすると、連通室22内に混入した液滴は連通孔41から外部に排出されることになる。これに対し、ショックアブソーバ10がロッド25を上向きとした垂直状態で使用される際には、ロッド25とロッドカバー14との間を介して外部から液滴が連通室22内に混入するおそれがあるが、ロッドカバー14に螺旋状の溝44を形成することにより、ロッド25のロッドカバー14から加わる摺動抵抗を少なくしてロッド25を円滑に往復動させるための隙間を確保しつつ、外部からの液滴の混入を低減することができる。
【0025】
ロッド25を上向きとしてショックアブソーバ10が使用されると、連通孔41や螺旋状の溝44から連通室22内に液滴が混入される可能性が高くなる。連通室22内に液滴が混入すると、液滴がロッド25の外周面に膜状に付着し、ロッド25が移動部材により後退移動する際に、ロッドシール27を介して液体収容室21内に混入する可能性がある。液滴の混入量が増加すると、ロッド25が後退限位置に移動したときにおけるスリーブ20の前進移動のストロークが上述した適正なストロークTよりも大きくなる。
【0026】
図3は液体収容室21内に過度の液体が外部から混入ないし流入した状態のもとでスリーブ20が前進移動した状態を示す。このときには、上述した適正なストロークTよりも排出ストロークTaの分だけ増加したストロークでスリーブ20は前進移動することになる。スリーブ20が排出ストロークTa増加して前進移動すると、スリーブシール39はケース体11の収容孔13に形成された大径孔部13bに到達することになる。大径孔部13bはスリーブシール39の外径よりも大きく設定されており、大径孔部13bとスリーブシール39との間には、液体通過隙間45が形成され、液体収容室21内の過度の液体は液体通過隙間45を介して連通室22内に戻される。連通室22内に戻された液体は連通孔41から外部に排出される。
【0027】
したがって、このショックアブソーバ10が切削加工装置のように切削油等の液体が使用される装置や設備に取り付けられ、液滴の存在する環境ないし雰囲気のもとで使用されることによって、液体収容室21内に外部の液体が混入しても、過度に液体が混入すると、スリーブ20の移動ストロークの増加によって液体収容室21内の液体が外部に排出される。これにより、ショックアブソーバ10は長期間にわたって所望の衝撃吸収効果を維持することができ、ショックアブソーバの耐久性を向上させることができる。
【0028】
なお、収容孔13のうち、液体収容室21内の液体Lが適正油量の場合にスリーブシール39が摺動接触する部分と、大径孔部13bとの間はテーパ面46となっており、スリーブ20の前進方向に排出ストロークTaの量が大きくなると液体通過隙間45は大きくなる。
【0029】
上述したショックアブソーバ10は、図示するように水平状態や垂直状態として軸方向に往復動する部材や静止した部材に取り付けられ、ショックアブソーバ10に対して相対的に移動する移動部材がロッド25に衝突する際に、移動部材の衝撃を吸収することになる。移動部材がロッド25に衝突すると、ロッド25は後退移動することになり、その時にはピストン35が液体収容室21内の液体Lの中を移動して、移動部材の衝撃力が液体Lにより吸収される。ロッド25が図2に示す後退限位置まで移動すると、移動部材はショックアブソーバ10の先端面を形成するロッドカバー14の端面に突き当てられて移動部材のショックアブソーバ10に対する移動限の位置が規制される。
【0030】
ロッド25が図1に示す前進限位置から図2に示す後退限位置まで移動する過程では、ピストン35は収容孔13のテーパ孔13aを移動するので、ロッド25が後退限位置に到達するに従って隙間37は徐々に狭くなり、ロッド25およびピストン35は液体収容室21内を移動する液体Lの粘性による抵抗は徐々に大きくなる。この移動過程においては、衝撃吸収ばね36のばね力によっても衝撃が吸収される。移動部材がロッド25から離れると、衝撃吸収ばね36のばね力によりロッド25はフランジ部32がスリーブ20の突き当てリング28に当接する前進限位置まで移動することになる。液体収容室21内の液体が適正油量の場合には、ロッド25が前進限位置から後退限位置に移動する際には、スリーブ20は適正なストロークTの範囲を移動するので、スリーブシール39はケース体11内の収容孔13の内面にシール接触した状態を保持し続け、液体収容室21内の液体が外部に漏れることは防止される。
【0031】
このショックアブソーバ10が液滴の存在する環境下で使用された場合には、液滴が連通室22内に入り込み、スリーブ20の貫通孔26とロッド25との間からロッドシール27を貫通して液体収容室21内に混入するおそれがある。液体収容室21内に液体が混入すると、液体収容室21内の液体量は増加することになるが、液体収容室21内に過度の液体が混入すると、ロッド25が作動するときにおけるスリーブ20の前進移動ストロークは通常の移動ストロークTよりも大きくなり、スリーブ20は排出ストロークTaだけ増加して移動することになる。これにより、液体収容室21内の液体は外部に排出されるので、液体収容室21内の液体量は常に適正状態に保持され、ショックアブソーバ10は長期間にわたって所定の衝撃吸収特性を保持することができる。
【0032】
図4は本発明の他の実施の形態であるショックアブソーバの一部を示す拡大断面図である。上述したショックアブソーバ10においては、収容孔13のうち連通室22に対応する部分に大径孔部13bを形成することによって、スリーブ20が排出ストロークTaまで過度に前進移動したときに、液体通過隙間45を形成するようにしているが、図4に示すショックアブソーバ10においては、収容孔13のうち連通孔22に対応する部分に軸方向に延びるガイド溝45aを1本または複数本形成することにより液体通過隙間45を形成するようにしている。
【0033】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の一実施の形態であるショックアブソーバの不作動状態を示す断面図である。
【図2】作動状態におけるショックアブソーバを示す断面図である。
【図3】過度の液体が外部から流入した場合の作動状態におけるショックアブソーバの一部を示す拡大断面図である。
【図4】本発明の他の実施の形態であるショックアブソーバの一部を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0035】
10 ショックアブソーバ
11 ケース体
13 収容孔
14 ロッドカバー
18 貫通孔
19 突き当て段部
20 スリーブ
21 液体収容室
21a 衝撃吸収部
21b 退避部
22 連通室
25 ロッド
26 貫通孔
27 ロッドシール
29 予圧ばね
35 ピストン
36 衝撃吸収ばね
37 隙間
39 スリーブシール
41 連通孔
44 螺旋状の溝
45 液体通過隙間
45a ガイド溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端部が閉塞され先端部にロッドカバーが設けられたケース体と、
前記ケース体内に軸方向に往復動自在に装着され、液体が充填される基端部側の液体収容室と外部に連通する先端側の連通室とを前記ケース体内に区画するスリーブと、
前記スリーブと前記ロッドカバーを貫通して前記ケース体に軸方向に往復動自在に装着され、前記スリーブとの間に設けられたロッドシールにより前記スリーブとの間がシールされるロッドと、
前記ロッドの基端部に設けられ前記液体収容室内を軸方向に移動するとともに前記ロッドの突出方向のばね力が衝撃吸収ばねにより加えられるピストンと、
前記連通室内に組み込まれ、外力により前記ロッドが後退移動したときに前記液体収容室の液体により前記先端部側に移動する前記スリーブに対して後退方向のばね力を加える予圧ばねと、
前記ロッドシールを介して前記液体収容室に流入した液体により前記スリーブが過度に前進移動したときには、前記スリーブの外周面と前記ケース体の内周面とのシールを解除して前記液体収容室内の液体を前記連通室に排出するスリーブシールとを有することを特徴とするショックアブソーバ。
【請求項2】
請求項1記載のショックアブソーバにおいて、前記スリーブの端面に当接し前記スリーブの後退方向の位置を規制する突き当て段部を前記ケース体に設けることを特徴とするショックアブソーバ。
【請求項3】
請求項1または2記載のショックアブソーバにおいて、前記スリーブが所定のストローク以上に過度に前進移動したときに前記スリーブシールとの間に液体通過隙間を形成する大径孔部を前記ケース体に形成することを特徴とするショックアブソーバ。
【請求項4】
請求項1または2記載のショックアブソーバにおいて、前記スリーブが所定のストローク以上に過度に前進移動したときに前記スリーブシールとの間に液体通過隙間を形成するガイド溝を前記ケース体に形成することを特徴とするショックアブソーバ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のショックアブソーバにおいて、前記ロッドカバーに前記連通室を外部に連通させる螺旋状の溝を形成することを特徴とするショックアブソーバ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のショックアブソーバにおいて、前記ケース体に前記連通室を外部に連通させる連通孔を形成することを特徴とするショックアブソーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−270585(P2009−270585A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118666(P2008−118666)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000145611)株式会社コガネイ (142)
【Fターム(参考)】