説明

ショーケース装置

【課題】中華まんじゅうなどの商品を陳列するための収納室を含むショーケース装置を提供する。
【解決手段】商品を陳列する収納室11と、収納室11に対し隔壁35などにより実質的に隔離された蒸気発生器100と、蒸気発生器100で生成された蒸気85を収納室11の前壁61の内面に沿って吹き出す蒸気ノズル81とを有するショーケース装置1を提供する。蒸気発生器100が収納室11と隔離されているので、蒸気発生器100に収納室11の商品のカスなどが入り込みにくく、清潔であり、さらに、加圧型の蒸気発生器100を提供できるので、蒸気85を蒸気ノズル81から収納室11に吹出すことにより、収納室11の内部の条件をさらに均一にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品を陳列するための収納室を含むショーケース装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、清掃性の向上を図ることができる蒸し器を提供することが記載されている。この蒸し器は、食品を収容するショーケースと、ショーケースの下方に設けられた蒸気発生容器と、蒸気発生容器を加熱して蒸気を発生させる電磁誘導加熱装置と、蒸気発生用に用いられる水が貯留された貯水タンクと、蒸気発生容器内の残水状態を検出する温度センサと、貯水タンクが取付けられ温度センサの検出温度に基づき貯水タンクの水を蒸気発生容器に給水する水供給手段とから構成される。水供給手段は、温度センサの検出温度に基づいて開閉制御される給水弁と、この給水弁の出口側に設けられた給水用配管とから構成される。貯水タンク及び給水用配管は蒸気発生容器に対して非連通な状態にして設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−12085公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンビニエンスストア等の店頭では、蒸した中華まんじゅう、いわゆるあんまんや肉まん等の商品(食品)が販売されている。これらの商品は、加湿保温の機能を備えた蒸し器のショーケース内に収容されている。特許文献1の蒸し器においては、貯水部が蒸気発生容器に対して非連通状態に設けられているので、貯水部に貯えられている水は蒸気発生容器に存在する水と非連通な状態になる。これにより、蒸気発生容器に不純物が蓄積されても、この不純物が貯水部側に移ることを防止でき、もって、貯水部を汚れ難くすることができ、貯水部側の清掃を極力減らすことができる。しかしながら、蒸気発生容器には、食品収容室に収容された食品のカスが落ちたり、食品収容室の内壁に生じた結露水が回収される構成になっているので、不純物が蓄積され易く、臭いがこもりやすいことに変わりはない。
【0005】
したがって、さらに清潔感があり、臭いがこもりにくいショーケース装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、商品を陳列する収納室と、収納室に対し実質的に隔離された蒸気発生器と、蒸気発生器で生成された蒸気を収納室の前壁および側壁の少なくともいずれかの壁の内面に沿って吹き出す蒸気ノズルとを有するショーケース装置である。
【0007】
このショーケース装置においては、蒸気発生器は収納室に対して開放されておらず、実質的に隔離されており、収納室から食品のカスが直に蒸気発生器の内部に落ちたりすることがない。したがって、不純物が蓄積されにくく、臭いもこもりにくい。
【0008】
さらに、蒸気発生器は収納室に対し実質的に隔離されており、蒸気発生器と収納室とは等圧ではなく、蒸気発生器で加熱生成された蒸気がそのまま抵抗なく収納室に供給される状態ではない。すなわち、ショーケース装置は、加圧型の蒸気発生器を含む。したがって、このショーケース装置の蒸気発生器は器内圧を持ち、蒸気ノズルを介して蒸気を収納室内に吹出すことができる。このため、蒸気発生器で生成された蒸気を、蒸気ノズルを介して収納室の前壁および側壁の少なくともいずれかの壁の内面に沿って吹き出すことにより、収納室の商品に直に蒸気が当たることを抑制できる。したがって、非加圧型の蒸気発生器を備えたショーケース装置と異なり、商品が局部的に加熱されたり、商品に局部的な結露が発生して品質が低下することを抑制できる。
【0009】
蒸気ノズルは、側壁の内面に沿って蒸気を吹き出す側面ノズルを含むことが望ましい。前壁の内面に沿って設ける蒸気ノズルを削減または省略できるので、収納室の商品を前壁側に近づけて配置でき、商品の視認性がより高いショーケース装置を提供できる。
【0010】
ショーケース装置は、蒸気発生器に供給する水を保持する給水タンクであって、当該ショーケース装置の背面から給水タンクの少なくとも一部が見えるように配置される給水タンクをさらに有することが望ましい。たとえば、水面が一致するまで蒸気発生器へ給水する給水キャップを備えた給水カートリッジをショーケース装置の背面側から着脱できるようにすることにより、蒸気発生器内の水位を管理して空焚きを防止できる。
【0011】
また、ショーケース装置は、収納室の結露水を一時的に蓄える結露水溜まり部であって、蒸気発生器に対し実質的に隔離された結露水溜まり部をさらに有することが望ましい。結露水が発生したときに蒸気発生器とは異なる結露水溜まり部に結露水を回収できる。このため、食品のカスが収納室から蒸気発生器に溜まることを抑制でき、食品のカスが臭気の発生源となることを抑制できる。
【0012】
さらに、ショーケース装置は、結露水溜まり部の上部と蒸気発生器とをウォーターシールした状態で接続するオーバーフロー接続部を有することが望ましい。ウォーターシールすることにより、蒸気発生器と結露水溜まり部とを実質的に隔離できるので、結露水溜まり部がオーバーフローするような異常事態にならない限り結露水が蒸気発生器側に混入することを抑制できる。一方、結露水溜まり部がオーバーフローするような異常事態では、結露水をオーバーフロー接続部から蒸気発生器側に回収して蒸発処理することにより結露水がショーケース装置外へ漏れ出すことを未然に防止できる。
【0013】
ショーケース装置は、通常稼働している状態で結露水溜まり部から結露水を排水する排水システムを有することが好ましい。
【0014】
また、ショーケース装置は、収納室の内部を照明するように前壁と側壁との境界付近に配置された発光ダイオードを有するものであることが好ましい。発光ダイオードの熱を収納室の前壁に伝達する熱伝達部材を設けることにより、前壁を加熱して前壁が結露するのを抑制でき、前壁を通して商品を見やすい状態を維持しやすい。
【0015】
また、ショーケース装置は、収納室の上部に配置された露受け板であって、結露水を収納室の前壁に分散して供給するように前壁に向かって延びた凹凸の繰り返しを含む露受け板をさらに有することが有効である。前壁と側壁との境界付近に配置された発光ダイオードにより収納室内部を照明できるので、収納室上部の照明を省くことが可能となる。このため、収納室上部に、結露水を前壁に分散して供給するのに適した構造を含む露受け板を設置できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態にかかるショーケース装置を示す斜視図。
【図2】図1のショーケース装置を示す縦断面図。
【図3】図1のショーケース装置を示す横断面図。
【図4】図1のショーケース装置を背面から見た様子を示す斜視図。
【図5】蒸し加熱システムの概略構成を示す図。
【図6】機械室の構成例を示す図。
【図7】コーナー部分の構成を拡大して示す断面図。
【図8】図8(a)は露受け板を示す図、図8(b)は露受け板の一部を拡大して示す図。
【図9】異なるショーケース装置を背面から見た様子を示す斜視図。
【図10】さらに異なるショーケース装置の内部を示す横断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明の一実施形態にかかるショーケース装置を斜視図により示している。図2は、図1のショーケース装置を、図1中のII−II線に沿って切断した縦断面図により示している。図3は、図1のショーケース装置を、図1中のIII−III線に沿って切断した横断面図により示している。図4に、ショーケース装置を後方から見た様子を示している。
【0018】
本例のショーケース装置1は、中華まんじゅうなどの商品(食品)を展示販売する装置であり、蒸し器(スチーマ)としての機能を備えた小型のショーケース装置である。このショーケース装置1は、典型的には高さ700mm前後、幅450mm前後、奥行き500mm前後であり、例えば、コンビニエンスストアなどの店舗において、レジカウンタCなどの卓上に設置して使用されるサイズである。
【0019】
図2に示すように、ショーケース装置1は、商品を陳列するための収納室(陳列室、ショーケース、蒸し器)11を含む上部分10と、収納室11の内部に蒸気を供給する蒸気発生器100などを収納する機械室21を含む下部分20とを備えている。ショーケース装置1は、店舗内に設置したときに店舗の天井に向く上壁31と、レジカウンタCなどの床に向く下壁(底壁)32と、上部分10の収納室11の周りを囲む周壁33と、下部分20の機械室21の周りを囲む周壁34と、収納室11と機械室21とを分ける隔壁(床)35とを有し、これらの壁31〜35により1つの筐体(ハウジング)30が構成されている。
【0020】
収納室11の周壁33は、前壁61と、左右の側壁62Lおよび62Rと、後壁をなすドア(扉)63とを含む。前壁61および左右の側壁62Lおよび62Rは、透光性の二重壁71を含む。本例のショーケース装置1では、前方からショーケース装置1の収納室11の内部が視認しやすいように、前壁61は、垂直または上側が後方へ向かって若干傾斜している。収納室11内には、複数段、例えば、3段のメッシュ状またはスノコ状などの開口率の大きな陳列棚12が設けられている。一番下の陳列棚12は、隔壁35の上側に配置されている。これらの陳列棚12は、それぞれ、後側が前側より若干高くなっており、陳列棚12に陳列された中華まんじゅうなどの商品Mが、透光性の二重壁71を介して、前側(正面)から見やすいようになっている。また、収納室11の天井13の近傍には露受け板15が設けられており、前壁61の内側に結露水86の膜を作って曇りを除去している。
【0021】
図3に示すように、収納室11の前壁61は、ほぼ全域を覆う透光性(本例では透明)の二重壁71を含む。左右の側壁62Lおよび62Rは、それぞれ、前側の部分を覆う透光性(本例では透明)の二重壁71と、後側の部分を覆う不透明な断熱壁79とを含む。収納室11の前壁61の二重壁71および左右の側壁62Lおよび62Rの二重壁71は、それぞれ、互いに向かい合うように配置された透光性の2枚の板状部材72aおよび72bを含んでいる。二重壁71、特に内側の板状部材72aはシール部材(パッキン)95、96によりシールされている。本例では、内側の板状部材72aが、より耐熱性の高いガラス板であり、外側の板状部材72bは、透明なアクリル樹脂板である。板状部材72aおよび72bをガラス板で構成してもよく、アクリル樹脂板で構成してもよい。
【0022】
周壁33は、さらに、前壁61と側壁62Lおよび62Rとのコーナー部64をそれぞれ覆う金属製または樹脂製のブラケット(フレーム)65を含む。これらのブラケット65の内側の二重壁71の間隙(すき間)73に照明用のLED91が配置されている。
【0023】
図4に示すように、ドア63は、スイングタイプ(開き戸タイプ)であり、外部に取手63aが取り付けられている。収納室11の密閉性を高めるため、ドア63と接する部分には、シール部材(パッキン)66が設けられている。ドア63は、不透明であってもよく、また、収納室11の内部が店員などにより後方からも視認できるように、一部が透光性の窓になっていてもよい。右側の側壁62Rの断熱壁79は、蒸気発生器100へ水を供給する縦長の給水タンク120を収納するスペース129を備えており、ハウジング30の後方39より給水タンク120を着脱できるようになっている。ハウジング30の後方39の給水タンク120を収納するスペース129に面した部分38は、透明または空間となっており、給水タンク120に貯水された水(給水)128の量が視認できるようになっている。
【0024】
機械室21の周囲を構成する周壁34は、前壁と左右の側壁と後壁とを有し、機械室21は略直方体状(ボックス状)に形成されている。前壁、左右の側壁、後壁は、いずれも不透明な壁となっており、機械室21の内部は外から見えないようになっている。機械室21と収納室11とを区切る隔壁35の前壁61の直後に複数の蒸気吹出口(蒸気ノズル)81が設けられ、隔壁35の後側のドア63の手前に幅方向に延びたスリット状の結露水回収口82が設けられている。機械室21に設置された蒸気発生器100により生成された蒸気85が蒸気ノズル81を介して収納室11内に吹出される。蒸気ノズル81から吹出された蒸気85は、収納室11の前壁61、具体的には二重壁71の内側のガラス板72aの内面に沿って収納室11内を循環する。
【0025】
収納室11の内部で結露した結露水(ドレン)86は、収納室11の前壁61、左右の側壁62Lおよび62Rなどを伝わって隔壁35に達する。隔壁35は、後方の回収口82に向かって傾斜しているので、結露水86は回収口82を介して機械室21の結露水溜まり部130に回収される。図2に示すように、機械室21には、蒸し加熱システム140が収納されており、具体的には、蒸気85を生成する蒸気発生器100と、蒸気発生器100を制御する制御ユニット110と、結露水86を一時的に蓄える結露水溜まり部130とが配置されている。
【0026】
図5に、ショーケース装置1の蒸気発生および結露水回収を含む蒸し加熱システム140の概略構成を示している。蒸し加熱システム140は、蒸気発生器100と、蒸気発生器100に水を給水する給水ユニット121と、結露水溜まり部130とを含む。蒸気発生器100は、水84を蓄える蒸発釜101と、蒸発釜101内の水84を加熱するヒーター(シーズヒータ)102と、蒸気85を一時的に蓄える蒸気溜り103とを含み、これらは収納室11に対して隔壁35などにより実質的に隔離されている。すなわち、この蒸気発生器100は加圧型であり、蒸発釜101は、収納室11に対して開放されておらず、蒸発釜101で発生した蒸気85は、蒸発釜101の収納室11から隔離された蒸気溜り103でいったん蓄えられ、蒸気溜り103から蒸気ノズル81を介して収納室11に吹出す。
【0027】
したがって、蒸発釜101および蒸気溜り103の内圧P1は、蒸気ノズル81から蒸気85が吹出す差圧分だけ大気、すなわち、収納室11の内圧P2より高くなる。このため、蒸気発生器100から収納室11の内部へ、蒸気85を蒸気ノズル81に集中させて噴出させることができる。したがって、蒸気発生器100内の沸騰時の蒸気圧力を利用して、自然対流を上回る初速度で蒸気85を蒸気ノズル81から収納室11内に噴出させ、ファンを利用せずに省エネルギーで蒸気85を庫内に強制的に循環させることができる。
【0028】
従来の蒸発釜が収納室にオープンなショーケース装置では、蒸気は蒸発釜から収納室内に分散して供給され、蒸気は自然対流で庫内に充満する。このため、蒸発釜に近い収納室の下部では、多量の蒸気が商品に直に集中して当たるので商品が水っぽくなり、品質が劣化しやすい。また、蒸発釜の輻射熱を受ける部分では、商品が輻射熱により逆に乾燥し、商品の品質が劣化しやすい。また、蒸発釜が庫内に開放されているので、商品からのカスが蒸発釜に入りやすく、蒸発釜を清潔に保つことが難しかった。
【0029】
本例のショーケース装置1においては、蒸気85を蒸気ノズル81により前壁61に沿って強制的に吹出し、蒸気85が集中して特定の商品Mに当たるのを抑制しつつ、蒸気85が強制的に収納室11の内部を循環するようにしている。このため、商品Mが劣化するのを抑制しながら十分な量の蒸気85を収納室11内(庫内)に、より均等に供給することができる。したがって、庫内の温度および湿度をより均一にすることが可能となり、収納室11内のすべての段(陳列棚)12に展示された商品Mの品質の劣化を抑制できる。このため、中華まんじゅうなどの商品Mを蒸し上げた時点により近いおいしさで顧客に提供できる。また、蒸発釜101に商品のカスが入りにくいので、蒸発釜101を清潔に保つことができる。
【0030】
また、蒸気発生器100が隔壁35により収納室11に対して隔離されているので、蒸気発生器100の輻射熱が商品Mに直に作用することもなく、蒸気発生器100が高温になっても、それにより商品Mが乾きやすくなることは少ない。したがって、収納室11内に展示されている商品Mの品質劣化を抑制できる。
【0031】
蒸気発生器100から収納室11に適当な圧力で蒸気85を吹出させるために蒸気ノズル81は適当な差圧が発生するものであることが望ましい。たとえば、蒸気ノズル81は、収納室11の前壁61に沿った方向にスリット状の開口を備えたものである。また、蒸気ノズル81は、収納室11の前壁61に沿った方向に複数の孔が設けられたものであってもよい。さらに、蒸気ノズル81は、前壁61とともに、あるいは前壁61とは別に、両側壁62Rおよび62Lに沿って配置されているものであってもよい。
【0032】
本例のショーケース装置1の蒸し加熱システム140は、蒸気発生器100の蒸発釜101の水84の量を一定に保持するための給水ユニット121を含む。ショーケース装置1の定常運転時の蒸発釜101の水84の量(水位)を一定に保持することにより、収納室11内に供給される蒸気85の量をほぼ一定にすることが可能であり、収納室11内の商品(食材)Mの保存状態に差が発生するのを抑制できる。これにより、収納室11内に展示されている商品Mの品質を一定に保持することが容易になる。
【0033】
たとえば、蒸発釜101の水位が低くなると、蒸発量が多くなり、収納室11内の湿度が上がったり、結露する量が増えるので、商品Mが吸水してべとべとな食感になってしまうことがある。一方、蒸発釜101の水位が高くなると、蒸発量が減り、収納室11内の湿度が低下して商品Mが乾燥したり、温度が低下しやすい。収納室11内の適当な位置に温度センサーを設け、蒸発釜101を加熱するシーズヒーター102をオンオフあるいは出力制御することが可能であり、蒸発釜101の水位を一定に保持することにより、収納室11内の温度とともに湿度あるいは蒸気量を一定になるように制御することが可能となる。
【0034】
給水ユニット121は、給水タンク120と、給水タンク120を着脱するタンク装着部122と、タンク装着部122と蒸気発生器100とを接続する給水配管123とを含む。タンク装着部122には水面125が形成され、給水タンク120の給水キャップ(口金)127は、この水面125の高さが一定になるように給水タンク120内の水128を供給する。ショーケース装置1の定常運転時は、蒸気発生器100の器内圧P1は大気圧より高くなる。したがって、タンク装着部122の水面125と、蒸気発生器100内の水面105とにはヘッド差hが発生する。タンク装着部122は、ショーケース装置1内のヘッド差hが生じてもよい位置に設けられており、ヘッド差hにより蒸気発生器100を大気から実質的に隔離して、蒸気発生器100の器内圧P1を確保して蒸気85を収納室11に吹出せるようにしている。
【0035】
本例のショーケース装置1の蒸し加熱システム140は、さらに、収納室11内で発生した結露水86を一時的に蓄える結露水溜まり部130を含む。図4に示すように、ショーケース装置1の後方39には、結露水溜まり部130から結露水86を排出するための排出ホース139および排出コック138が設けられている。これにより、結露水溜まり部130に回収された結露水86は、排出ホース139を介して定常運転中にショーケース装置1の外に排出できる。このため、このショーケース装置1の蒸し加熱システム140においては、結露水溜まり部130は、蒸気発生器100とは実質的に隔離されており、原則として結露水86は蒸気85には再利用されず、廃棄される。
【0036】
庫内で結露した水を蒸発釜に回収して再利用するシステムは、水の使用効率は良いとしても、結露水に含まれる商品の成分、たとえば、中華まんじゅうの成分が蒸発釜で濃縮されることにより庫内の臭いが強くなる。それにより、収納室内の商品の臭いが、本来の商品の臭い以上に強くなったり、収納室内から商品を取り出す際に店内に放出される臭いが強くなりすぎたりして、顧客の購買意欲を削ぐ可能性がある。また、結露水を介してカスが蒸発釜に入るので、蒸発釜を清潔に維持するのが難しくなる。
【0037】
このショーケース装置1においては、原則として結露水86は廃棄し、給水ユニット121から供給される水128を蒸発させた蒸気85を使用する。このため、蒸し加熱システム140で臭いが濃縮されることを抑制でき、商品の品質劣化を抑制できる。また、蒸発釜101にカスが入り込みにくいので、蒸発釜101を清潔に保つのが容易となる。
【0038】
しかしながら、結露水溜まり部130から結露水86が廃棄されず、結露水86が溢れるような事態は避けることが望ましい。この蒸し加熱システム140は、結露水溜まり部130の上部132と、蒸気発生器100の蒸発釜101とを接続するオーバーフロー管135を含む。オーバーフロー管135は蒸発釜101の給水84によりウォーターシール(水封)されており、蒸発釜101と結露水溜まり部130とは隔離されている。また、結露水溜まり部130およびオーバーフロー管135は大気圧になるので、オーバーフロー管135は蒸発釜101との間でヘッド差hが確保できる高さに設けられている。
【0039】
ショーケース装置1のユーザーが結露水の排水を忘れた場合は、結露水溜まり130からオーバーフローした結露水は、オーバーフロー管135を介して蒸発釜101に回収され、蒸発釜101で再度蒸発される。したがって、結露水溜まり130からショーケース装置1の外に結露水が漏れる事態を防止できる。
【0040】
図6に、ショーケース装置1の機械室21のアレンジの一例を示している。機械室21に、底が斜めになった結露水溜まり部(ドレンパン)130が構成され、その一部に蒸発釜101が結露水溜まり部130から壁により隔離された状態で設けられている。蒸発釜101と結露水溜まり部130とは、水封されたオーバーフロー管135を介して接続されており、蒸発釜101と結露水溜まり部130は実質的に隔離されているが、結露水86が溜まりすぎると蒸発釜101に回収して蒸発処理できる。結露水溜まり部130に回収された結露水86は、通常は、排水コック138および排水管139を介して外部に廃棄される。
【0041】
図7に、図3に示した右側のコーナー部64を部分的に拡大して示している。左側のコーナー部64の構成は左右対称である。左右の側壁62Lおよび62Rの一部を形成する透光性の二重壁71の間(間隙)73のそれぞれのコーナー部64に、複数(例えば38個)の発光ダイオード(LED)91が収納室11の室内を向くように配置され、収納室11の照明装置(照明手段)となっている。前壁61と側壁62Rおよび62Lとの境界付近に配置されたLED91は、コーナー部64の外側に設けられたブラケット65により覆われ、ショーケース装置1の外側から見えにくく、LED91から出力される光が二重壁71の内側の壁72aに反射しても、それが直に外側には漏れにくい。したがって、ショーケース装置1を外から見たときに眩しさを感じない、または感じにくい構成となっている。
【0042】
各LED91は、熱伝達率の高い金属製、たとえばアルミニウム製の熱伝達部材92を介して前壁61の内側のガラス板72aおよび側壁62Rの内側のガラス板72aに接続されている。したがって、透光性の2枚のガラス板72aおよびアクリル板72bの間73に配置されたLED91の熱を、熱伝達部材92を介してガラス板72aに逃がすことによりLED91の過熱を避け、十分な寿命を確保できるようにしている。また、LED91の排熱によりガラス板72aを加熱し、ガラス板72aの温度を上げることによりガラス板72aが結露するのを抑制している。
【0043】
収納室11の内部は、蒸気85により水蒸気圧が飽和または過飽和の状態であり、収納室11の内面は結露しやすい状態となっている。収納室11の前壁61のガラス板72aの内面や側壁62Rおよび62Lのガラス板72aの内面に結露水86が発生すると、前壁61および側壁62Rおよび62Lを通して内部に陳列された商品Mが見えにくくなる。このショーケース装置1においては、LED91の排熱を利用してガラス板72aを加熱し、ガラス板72aの内面に結露水86が発生するのを抑制できる。したがって、収納室11の内部の湿度が非常に高くても、透明な前壁61および側壁62R、62Lを通して商品Mをいっそうクリアーに見せることができる。
【0044】
図8(a)に、収納室11の上壁31の側の天井13に設けられた露受け板15を抜き出して示している。露受け板15は、天井13の近傍に、前壁61の側が低くなるように傾いて設置されており、前壁61に向かって延びた複数の凹凸の繰り返し16を含む。収納室11の下方に配置された蒸気ノズル81から収納室11の内部に吹出された蒸気85は、収納室11の内部の様々な個所で結露する可能性がある。
【0045】
図8(b)に拡大して示すように、露受け板15においては、結露水86は、繰り返し形成された凹凸16の凹部(溝)16aにそれぞれ集められ、それらの凹部16aを流れて前壁61のガラス板72aの内面に供給される。複数の凹部16aにより前壁61のガラス板72aの内面に分散するように供給された結露水86は、ガラス板72aの内面を分散して流れ、前壁61のより広い範囲に、より均一の水膜87を形成する。ガラス板72aの内面に水膜87が形成されると、微小な水滴による曇りが除去され、ガラス板72aを通して収納室11の内部をよりクリアーに見ることができる。したがって、収納室11の視認性が向上し、展示されている商品Mをより鮮明に顧客に見せることができる。
【0046】
天井13に近いところに設置された露受け板15は、結露水86が展示されている商品Mに垂れないように、前壁61を使って回収する機能を含む。従来のショーケースでは天井に照明が設置されていたため、商品を照明光により効率よく照らすには露受け板は透明な平板、たとえば透明なガラス板であることが要求されていた。ガラス板の露受け板では、前壁のガラス板に分散して結露水を供給できず、ガラス板の限られた範囲にしか水膜を形成できなかった。
【0047】
このショーケース装置1においては、前壁61と側壁62Rおよび62Lとのそれぞれのコーナー部64に照明用のLED91が配置されている。このため、天井からの照明は不要となり、露受け板15も透明なガラス板である必要はない。したがって、凹凸16が連続した透明または不透明の板を露受け板15として設けることが可能となり、凹凸模様16により、結露水86を前壁61のガラス板72aの所望の箇所に導くことが可能となった。凹凸模様16は、波形(三角波も含む)であっても、凸部(ランド)と凹部(グルーブ)とが繰り返し現れる形状であってもよい。
【0048】
図9に、異なる例のショーケース装置1を後方から見た様子を示している。このショーケース装置1は、給水タンク120を収納するスペース129が機械室21の後方39に設けられており、横長の給水タンク120を着脱できるようになっている。
【0049】
図10に、さらに異なる例のショーケース装置1の内部を、上述した図3に相当する横断面図により示している。このショーケース装置1も、収納室11の前壁61と、左右の側壁62Lおよび62Rの前側の部分とは透光性で、収納室11の内部に陳列棚12が配置されている。収納室11には、さらに、左右の側壁62Lおよび62Rの内側に沿って、隔壁35に複数の蒸気吹出口(蒸気ノズル、側面ノズル)81が設けられ、図3に示した前壁61の内面に沿った蒸気ノズル(前面ノズル)は省略されている。その他の構成は図3に示したショーケース装置1と共通するので説明は省略する。
【0050】
このショーケース装置1においては、前壁61の内面に沿って配置された蒸気ノズルが省略されているので、前壁61に沿って上昇する蒸気の量はほとんどない。したがって、図3に示したショーケース装置では蒸気との干渉を考慮して配置されていた陳列棚12を前壁61の側に延長またはシフトして配置することができる。このため、前壁61により近い位置に商品を陳列でき、顧客に対し商品をよりアピールしやすいショーケース装置1を提供できる。
【0051】
一方、蒸気ノズル81は側壁62Lおよび62Rの内面に沿って配置されているので、蒸気ノズル81を介して収納室11内に吹出された蒸気85は、収納室11の側壁62Lおよび62R、具体的には二重壁71の内側のガラス板72aの内面に沿って収納室11内を循環する。このため、上述したショーケース装置と同様に収納室11内を加湿できる。
【0052】
なお、蒸気ノズル81は、上述したように前壁61の内面に沿って設けてもよく、左右の側壁62Lおよび62Rの内面に沿って設けてもよく、さらに、左右の側壁62Lまたは63Rの一方の内面に沿って設けてもよく、前壁61の内面と左右の側壁62Lおよび/または62Rの内面とに沿って分散して配置してもよい。また、上記では、収納室11の側方に照明用のLED91を設けたショーケース装置1を例に、加圧型の蒸気発生器100を備え、強制的に蒸気85を収納室11に供給する蒸し加熱システム140を説明したが、天井13にLEDまたは蛍光灯などの照明を設けたショーケース装置であっても上記に説明した蒸し加熱システム140を適用できる。
【0053】
また、LED91の排熱を用いたり、凹凸が連続した露受け板15を用いて視認性を向上させることは、加圧型の蒸気発生器100を備えたショーケース装置1に限らず、非加圧型、すなわち開放型の蒸気発生器100を備えたショーケース装置にも適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 ショーケース装置、 11 収納室、 33 周壁
61 前壁、 62L、62R 側壁
91 発光ダイオード(LED)
100 蒸気発生器、 120 給水タンク、 130 結露水溜まり部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
商品を陳列する収納室と、
前記収納室に対し実質的に隔離された蒸気発生器と、
前記蒸気発生器で生成された蒸気を前記収納室の前壁および側壁の少なくともいずれかの壁の内面に沿って吹き出す蒸気ノズルとを有するショーケース装置。
【請求項2】
請求項1において、前記蒸気ノズルは、前記側壁の内面に沿って蒸気を吹き出す側面ノズルを含む、ショーケース装置。
【請求項3】
請求項1または2において、前記蒸気発生器に供給する水を保持する給水タンクであって、当該ショーケース装置の背面から前記給水タンクの少なくとも一部が見えるように配置される給水タンクをさらに有するショーケース装置。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかにおいて、前記収納室の結露水を一時的に蓄える結露水溜まり部であって、前記蒸気発生器に対し実質的に隔離された結露水溜まり部をさらに有するショーケース装置。
【請求項5】
請求項4において、前記結露水溜まり部の上部と前記蒸気発生器とをウォーターシールした状態で接続するオーバーフロー接続部をさらに有するショーケース装置。
【請求項6】
請求項4または5において、前記結露水溜まり部から結露水を排水する排水システムをさらに有するショーケース装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかにおいて、
前記収納室の内部を照明するように前記前壁と前記側壁との境界付近に配置された発光ダイオードをさらに有するショーケース装置。
【請求項8】
請求項7において、前記発光ダイオードの熱を前記前壁に伝達する熱伝達部材をさらに有するショーケース装置。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかにおいて、前記収納室の上部に配置された露受け板であって、結露水を前記前壁に分散して供給するように前記前壁に向かって延びた凹凸の繰り返しを含む露受け板をさらに有するショーケース装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−81773(P2013−81773A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−219665(P2012−219665)
【出願日】平成24年10月1日(2012.10.1)
【出願人】(591150797)GAC株式会社 (69)
【Fターム(参考)】